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  • 特開-圧電デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042747
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147527
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡島 幸弘
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079BA49
5J079HA02
5J079HA12
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】従来に比べ耐震性を再現し易い新規な耐震構造を有した圧電デバイスを提供する
【解決手段】圧電デバイス10は、容器11a、容器に内蔵された水晶振動子11b及び発振回路11cを有する圧電素子部11と、圧電素子部を内包している筐体13と、を備える。さらに、圧電デバイスは、容器の外壁の、圧電素子部の重心Gから見て反対方向に位置する互いに対向関係となる少なくとも2カ所を容器側接続点17と定義し、これら容器側接続点を結ぶ線分の延長線上に当たる前記筐体の少なくとも2カ所を筐体側接続点19と定義したとき、容器側接続点と筐体側接続点との間に、容器側接続点及び筐体側接続点の間で緊張状態を形成している線状弾性体15を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器及びこの容器に内蔵された圧電素子を有する圧電素子部と、この圧電素子部を内包している筐体と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記容器の外壁の、前記圧電素子部の重心から見て反対方向に位置する互いに対向関係となる少なくとも2カ所を容器側接続点と定義し、これら容器側接続点を結ぶ線分の延長線上に当たる前記筐体の少なくとも2カ所を筐体側接続点と定義したとき、
前記容器側接続点と前記筐体側接続点との間に、前記容器側接続点及び筐体側接続点の間で緊張状態を形成している線状弾性体を備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記圧電素子部の容器および前記筐体各々を、直方体状のものとし、前記線状弾性体を、前記直方体状の容器の外側6面と前記直方体状の筐体の内側6面との間に、それぞれ設けてあることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
互いに反対方向に緊張状態を形成している2つの線状弾性体を第1の線状弾性体及び第2の線状弾性体と定義したとき、
前記第1の線状弾性体及び前記第2の線状弾性体各々を、筐体側接続点を経由した端部で接合されているループ状の線状弾性体としてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記ループ状の一部を弾性部材で構成し、それ以外の部分を剛性の高い部材で構成してあることを特徴とする請求項3に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子、水晶発振器、弾性表面波素子等の圧電デバイスの、耐衝撃性の向上を図るための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛翔体では、通信や内部に備わる各種電子機器の制御のため、圧電デバイスは必須の部品である。飛翔体には、日常生活では経験し得ない大きな衝撃が加わる。従って、飛翔体で使用される圧電デバイスでは、上記衝撃に耐え得る構造が必要になる。
そのような構造を有する圧電デバイスの一例が、例えば特許文献1に、開示されている。具体的には、水晶振動子を実装したプリント基板を、その周縁部のみに沿って2分割型の中空ケースで挟持し、かつ、中空ケースと外部筐体との間に非発泡構造のゲル材からなる帯状の複数の防振部材を、互いに離間させ配置した耐震型水晶発振器が開示されている。防振部材は、プリント基板の表裏面および周縁部の各一辺につき、少なくとも2箇所に圧縮状態で接触配置されている(特許文献1の特許請求の範囲)。
【0003】
この耐震型水晶発振器によれば、ゲル材からなる帯状の防振部材を適切に設定することによって、水晶発振器に伝達される振動エネルギーを低減かつ最小にできるという(特許文献1の段落8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4282125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の耐震構造の場合、ゲル材からなる帯状の防振部材の入れ方の違いによって耐震特性が変動し易いため、防振部材を入れる際に熟練工の感覚に頼る等の不安定要素があると考えられる。
この発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、従来に比べ耐震性を再現し易い新規な耐震構造を有した圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、容器及びこの容器に内蔵された圧電素子を有する圧電素子部と、この圧電素子部を内包している筐体と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記容器の外壁の、前記圧電素子部の重心から見て反対方向に位置する互いに対向関係となる少なくとも2カ所を容器側接続点と定義し、これら容器側接続点を結ぶ線分の延長線上に当たる前記筐体の少なくとも2カ所を筐体側接続点と定義したとき、容器側接続点と筐体側接続点との間に、前記容器側接続点及び筐体側接続点の間で緊張状態を形成している線状弾性体を備えることを特徴とする。
ここで線状弾性体とは、具体的には、全部又は一部がゴム、バネ、若しくは弾性を有する樹脂等、本発明の目的に適合する種々の部材である。また、全部又は一部とは、線状弾性体の全部を、ゴム、バネ、又は、弾性を有する樹脂等で構成する場合、若しくは、線状弾性体の一部をゴム、バネ、又は、弾性を有する樹脂等で構成し、残りの部分を金属ワイヤー等の剛性の高い部材で構成する場合でも良い。線状弾性体の一部をゴム、バネ、又は、弾性を有する樹脂等で構成し、残りの部分を金属ワイヤー等の剛性の高い部材で構成すると、後述するループ状の線状弾性体を用いた場合、剛性の高い部分を滑車や摺動性の高い部材等に接触させて、ループ状の線状弾性体を摺動し易くできるので、好ましい。
【0007】
この圧電デバイスの発明を実施するに当たり、前記圧電素子部の容器および前記筐体各々を、直方体状(立方体状も含む)のものとし、前記線状弾性体を、前記直方体状の容器の外側6面と前記直方体状の筐体の内側6面との間にそれぞれ設けることが好ましい。こうすれば、圧電素子部は、互いに直交するX、Y、Zの3方向に沿って、筐体側に引かれた状態で、宙づり状態になるので、そうしない場合に比べ、衝撃緩和を有効に行える。
【0008】
この圧電デバイスの発明を実施するに当たり、互いに反対方向に緊張状態を形成している2つの線状弾性体を第1の線状弾性体及び第2の線状弾性体と定義したとき、第1の線状弾性体及び第2の線状弾性体各々は、筐体側接続点を経由した端部で接合されているループ状の線状弾性体とすることが好ましい。こうすれば、圧電素子部の容器を反対方向に引いている力(反対方向の緊張状態)を平衡化できるので、そうしない場合に比べ、容器を安定に宙づり状態にできる。なお、ループ状の線状弾性体を用いる場合、筐体側接続点は、ループ状線状の弾性体が摺動し易いような構造、例えば滑車状のものや、摩擦係数が低い材料で構成した環状のもの等とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明の圧電デバイスによれば、圧電素子部は圧電素子部の重心から見て反対方向に配置された線状弾性体によって宙づり状態に保持される。然も、外部から筐体に及ぶ振動は線状弾性体によって減衰できる。また、ゲル材からなる帯状の防振部材を圧電発振器と筐体との間に入れていた従来技術に比べ、本発明における容器側接続点、筐体側接続点のそれぞれの位置や、線状の弾性体の材料・寸法等は、再現良く準備できる。従って、圧電デバイスの耐震性を従来に比べ再現し易い新規な耐震構造を有した圧電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態の圧電デバイス10を説明するための図である。
図2図2は、第2の実施形態の圧電デバイス30を説明するための図である。
図3図3は、第3の実施形態の圧電デバイス50を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
1.第1の実施形態
図1を参照して、第1の実施形態の圧電デバイス10について説明する。ここで、図1中の(A)図は、第1の実施形態の圧電デバイス10の概要を示す斜視図、(B)図は、圧電デバイス10を図1(A)中のP方向から見た側面図である。
【0013】
第1の実施形態の圧電デバイス10は、圧電素子部11と、筐体13と、線状弾性体15と、を備えている。なお、図1の例では、線状弾性体を6本設ける例を示してあるので、線状弾性体15として、6本の線状弾性体15a,15b,15c,15d,15e、15fを示してある。
圧電素子部11は、容器11aと、容器11aに内蔵された圧電素子としての水晶振動子11bと、水晶振動子11b用の発振回路11cとを有している。従って、この圧電素子部11は、水晶発振器を構成している例である。
容器11aは、任意好適な材料で構成でき、任意好適な形状のものとできる。例えば、セラミック製の容器でも良いし、金属製の容器でも良い。ただし、この実施形態では、容器11aの形状は、直方体状(立方体状も含む。以下、同様)としてある。従って、容器11aは6面で構成された容器となっている。
【0014】
圧電素子としての水晶振動子11bは、典型的には、厚みすべりモードで振動する水晶振動子、例えばATカットの水晶振動子、または、SCカット等に代表される2回回転カットの水晶振動子である。もちろん、他の振動モードの水晶振動子の場合があっても良い。水晶振動子11bは、それ自体で封止された完成品の例としてある。
【0015】
発振回路11cは、任意好適な回路で構成できる。なお、圧電素子部11は、恒温槽型の水晶発振器等、他の構造のものでも良い。圧電素子部11を、恒温槽型の水晶発振器とする場合は、水晶振動子及び発振回路を内包する恒温槽等の他の装置を、筐体13内に、内蔵する。
【0016】
筐体13は、容器11aを内包できるものであれば、例えば金属製、セラミック製等の任意好適な材料のもので構成でき、また、任意の形状のもので良い。ただし、この実施形態では、圧電素子部11を内包できる大きさを有した直方体状(立方体状)の形状のものとしてある。従って、筐体13は、6つ面を有したものとなり、かつ、筐体13bの6つの内壁は、圧電素子部11の容器11aの6つの外壁に対向する構造になっている。
【0017】
線状弾性体15は、この実施形態の場合、6本の線状弾性体15a~15fで構成してある。そして、この場合の線状弾性体15a~15fは、容器11aの外壁の、圧電素子部11の重心G(図1(A)参照)から見て反対方向に位置する互いに対向関係となる箇所を容器側接続点17a~17fと定義し、これら容器側接続点を結ぶ線分の延長線上に当たる筐体15の箇所を筐体側接続点19a~19fと定義したとき、対応する容器側接続点と筐体側接続点との間に、これら容器側接続点及び筐体側接続点の間で緊張状態を形成するように設けてある。
【0018】
より具体的には、図1(A)に示したように、線状弾性体15aと線状弾性体15bとは、対の関係のものであり、圧電素子部11を、図1(A)中のX方向に沿って、互いに逆方向に引いている。同様に、線状弾性体15cと線状弾性体15dとは、対の関係のものであり、線状弾性体15eと線状弾性体15fとは、対の関係のものである。6本の線状弾性体15a~15fは、、互いが平衡となるように、弾性率や材料を設定したものである。従って、この実施形態の圧電デバイス10場合、圧電素子部11は、互いに直交するX,X,Zの3方向に沿って、かつ、各々反対方向に引かれる状態で宙づり状態になっている。
【0019】
このため、本発明の構造を有しない場合に比べ、圧電素子部11は外部からの衝撃の影響を受けにくくなるので、圧電デバイス10は、衝撃耐性に優れるものになる。また、線状弾性体15a~15fの材質、弾性率等の設定、容器側接続点17a~17f及び筐体側接続点19a~19f各々の位置精度等の管理は、比較的容易であるから、線状弾性体15a~15fの再現性、容器側接続点17a~17f及び筐体側接続点19a~19f各々の再現性も高くなるため、従来に比べ耐震性を再現し易い新規な耐震構造を有した圧電デバイスを提供できる。
なお、図1(A)、(B)において、21a、21b、21cで示すものは、圧電デバイス10の出力線、電源線、グランド線である。これら出力線、電源線、グランド線各々は、圧電素子部11の宙づり状態への影響が少ないような構造にするのが良い。また、出力線、電源線、グランド線等の部材の内、無線化ができるものは、無線化しても良い。
【0020】
2.第2の実施形態
次に、図2を参照して、第2の実施形態の圧電デバイス30について説明する。ここで、図2は、圧電デバイス30の、図1(B)と同様な状態での側面図である。
第1の実施形態では、線状弾性体は、容器側接続点と、これと対向する筐体側接続点との間に、他の線状弾性体と独立した関係で設けていた。これに対し、第2実施形態の圧電デバイス30では、互いに反対方向に緊張状態を形成している2つの線状弾性体を第1の線状性体及び第2の線状の弾性体と定義したとき、例えば第1の線状性体15a及び第2の線状弾性体15bの例で考えたとき、各々を、図2に示したように、筐体側接続点31を経由した端部で接合させてループ状の線状弾性体33としてある。
【0021】
こうすれば、圧電素子部の容器を反対方向に引いている力(反対方向の緊張状態)を平衡化できるので、そうしない場合に比べ、容器11aを安定に宙づり状態にできる。なお、線状弾性体としてループ状の線状弾性体33を用いる場合、筐体側接続点31は、ループ状線状の弾性体33が摺動し易いような構造、例えば滑車状のものや、摩擦係数が低い材料で構成した環状のもの等とすることが好ましい。
【0022】
3.第3の実施形態
次に、図3を参照して第3の実施形態の圧電デバイス50について説明する。ここで、図3は、圧電デバイス50の、図1(B)と同様な状態での側面図である。
第2の実施形態では、ループ状の線状弾性体33は、全体が弾性体である場合を想定したものである。これに対し、第3の実施形態の圧電デバイス50では、ループ状の線状弾性体の一部をゴム、バネ、又は、弾性を有する樹脂等で構成し、残りの部分を金属ワイヤー等の剛性の高い部材で構成した例である。一例で具体的に説明すると、図3に示したように、容器11aの対向する2つ面のうちの一方の面の容器側接続点に、線状弾性体15aを接続し、他方の面の容器側接続点に、線状弾性体15bを接続し、かつ、線状弾性体15a及び、線状弾性体15b各々の容器11aとは反対端同士を、剛性の高い部材51例えば金属ワイヤー、樹脂ワイヤー等で接続して、ループ状の線状部材を構成してある。
こうすると、剛性の高い部材51が、滑車や摺動性の高い部材等から成る筐体側接続点と接触できるので、ループ状の線状弾性体を摺動し易くできるので、好ましい。
【符号の説明】
【0023】
10:第1の実施形態の圧電デバイス 11:圧電素子部
11a:圧電素子(水晶振動子) 11b:発振回路
13:筐体
15、15a~15f:線状弾性体 G:圧電素子部の重心
17a~17f:容器側接続点 19a~19f:筐体側接続点
30:第2実施形態の圧電デバイス 31:筐体側接続点(摺動性部材)
33:ループ状の線状弾性体
50:第3の実施形態の圧電デバイス 51:剛性の高い部材
図1
図2
図3