(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042758
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】CO2回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20240322BHJP
C01D 7/06 20060101ALI20240322BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240322BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B01D53/18 110
C01D7/06 ZAB
B01D53/62
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147543
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南里 浩太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久高
(72)【発明者】
【氏名】松山 純也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA04
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA12
4D002EA13
4D002FA04
4D002GA01
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC06
4D020CB02
4D020CC03
4D020CC05
4D020DA03
4D020DB12
(57)【要約】
【課題】CO
2排出抑制効果に優れたCO
2回収装置を提供する。
【解決手段】CO
2回収装置1は、反応槽10、CO
2含有ガス流通部41、吹き出し部30を備える。反応槽10は、アルカリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液にCO
2含有ガスを接触させる。CO
2含有ガス流通部41は、反応槽10内で鉛直方向に延びる先端部411を有し、CO
2含有ガスを流通させる。吹き出し部30は、CO
2含有ガス流通部41の先端部411を回転軸とする軸受け装置20を介して先端部411に接続されて、CO
2含有ガス流通部41を通じて供給されたCO
2含有ガスを反応槽10内に吹き出す吹き出し口31を有する。そして、吹き出し部30は、CO
2含有ガスの吹き出し圧によって軸受け装置20を介して回転可能に構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液にCO2含有ガスを接触させる反応槽と、
上記反応槽内で鉛直方向に延びる先端部を有し、上記CO2含有ガスを流通させるCO2含有ガス流通部と、
上記CO2含有ガス流通部の上記先端部を回転軸とする軸受け装置を介して上記先端部に接続されて、上記CO2含有ガス流通部を通じて供給された上記CO2含有ガスを上記反応槽内に吹き出す吹き出し口を有する吹き出し部と、を備え、
上記吹き出し部は、上記CO2含有ガスの吹き出し圧によって上記軸受け装置を介して回転可能に構成されている、CO2回収装置。
【請求項2】
上記吹き出し部は、上記吹き出し口を複数備えており、鉛直方向から見たとき、上記吹き出し口は上記回転軸を中心として等間隔に位置している、請求項1に記載のCO2回収装置。
【請求項3】
鉛直方向から見て、上記吹き出し口から上記CO2含有ガスの吹き出し方向に向かうベクトルと、上記吹き出し口から上記回転軸に向かうベクトルとのなす角が90°以下である、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項4】
鉛直方向から見て、上記吹き出し口から上記CO2含有ガスの吹き出し方向に向かうベクトルは、上記吹き出し口から上記回転軸に近づくとともに上記回転軸から偏心した位置を通過する、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項5】
上記吹き出し部は、鉛直方向から見て、上記CO2含有ガス流通部の上記先端部からU字形状又はJ字形状に延びた延在部を有しており、該延在部の先端に上記吹き出し口を有している、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項6】
水平方向から見て、上記吹き出し口における吹き出し方向は上記回転軸に対して鉛直方向下方に傾斜している、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項7】
水平方向から見て、上記吹き出し口における吹き出し方向と上記回転軸とのなす角は直角である、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項8】
上記CO2含有ガス流通部の上記先端部にはカバー部材が接続されており、
該カバー部材の外縁は、鉛直方向から見て、上記吹き出し部が回転することにより描かれる回転軌跡よりも、該回転軌跡の径方向外側に位置している、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項9】
上記CO2含有ガス流通部の上記先端部又は上記吹き出し部には重り部材が取り付けられている、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項10】
上記反応槽は可搬性を有するとともに上端に開口部を備えており、
上記吹き出し部及び上記CO2含有ガス流通部の上記先端部は、上記開口部を介して上記反応槽に対して挿入及び取出しが可能に構成されている、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項11】
上記軸受け装置は、上記CO2含有ガス流通部を通じて供給された上記CO2含有ガスを用いた流体軸受けからなる、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項12】
上記吹き出し部は、上記CO2含有ガス流通部の上記先端部から延在する延在部を有し、該延在部の先端に上記吹き出し口が配置されており、
上記延在部は、上記CO2含有ガスの吹き出し圧によって上記軸受け装置を介して上記吹き出し部が回転することにより生じる遠心力により変形又は変位して、上記吹き出し口の回転径を拡大させるように構成されている、請求項1又は2に記載のCO2回収装置。
【請求項13】
上記延在部は可撓性を有し、上記遠心力により回転径方向外方に変形するように構成されている、請求項12に記載のCO2回収装置。
【請求項14】
上記延在部と上記CO2含有ガス流通部の上記先端部との接続部は、上記遠心力により上記延在部が回転径方向外方に回動して変位するように構成されている、請求項12に記載のCO2回収装置。
【請求項15】
上記吹き出し口の回転径が所定値以上に拡大することを規制する拡大規制部を有する、請求項12に記載のCO2回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスとしてのCO2ガスの排出を抑制することが求められており、CO2ガスを回収する装置が種々検討されている。例えば、特許文献1には、CO2回収装置として、CO2を含有する排ガスを反応槽に貯留されたNaOH水溶液に吹き込んで、NaOHまたはNa2CO3とCO2との反応によりNaHCO3を生成して回収する構成が開示されている。そして、特許文献1に開示の構成では、反応槽内に吹き込んだ排ガスと反応槽内の水溶液との接触効率を向上するために、撹拌装置により反応槽内の水溶液を撹拌するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、撹拌装置を駆動するために電力が必要となる。そして、当該撹拌装置を駆動させる電力として化石燃料を用いて生成された電力を使用した場合には、装置全体としては当該電力の発電のために生じたCO2を排出したことと同義となる。その結果、装置全体としてのCO2排出の抑制効果が低減されてしまう。さらに当該電力の発電によるCO2排出量が当該CO2回収装置によるCO2回収量を超えれば、装置全体としてCO2の排出抑制を達成することができない。特に装置が大型化すると、撹拌装置における電力消費量も大きくなり、CO2の排出抑制が一層難しくなる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、CO2排出抑制効果に優れたCO2回収装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、アルカリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液にCO2含有ガスを接触させる反応槽と、
上記CO2含有ガスを流通させるとともに、上記反応槽内に位置して鉛直方向に延びる先端部を有するCO2含有ガス流通部と、
上記CO2含有ガス流通部の上記先端部を回転軸とする軸受け装置を介して上記先端部に接続されて、上記CO2含有ガス流通部を通じて供給された上記CO2含有ガスを吹き出す吹き出し口を有する吹き出し部と、を備え、
上記吹き出し部は、上記吹き出し口から吹き出される上記CO2含有ガスの吹き出し圧によって上記軸受け装置を介して回転可能に構成されている、CO2回収装置にある。
【発明の効果】
【0007】
上記CO2回収装置では、吹き出し部は反応槽内に位置するCO2含有ガス流通部の先端部に軸受け装置を介して接続されており、吹き出し部の吹き出し口からCO2含有ガスが吹き出ることにより、吹き出し部は軸受け装置を介して回転可能となっている。これにより、吹き出し部の回転により反応槽内の水溶液を撹拌することができる。これとともに、回転する吹き出し部から吹き出されたガスは反応槽の水溶液内をらせん状に上昇していくため、直線的に上昇する場合に比べて水溶液内での滞在時間が長くなることから、水溶液とガスとの接触頻度及び接触時間を高めることができる。これらの結果、反応槽内の反応を促してCO2排出抑制効果を向上できる。
【0008】
さらに、吹き出し部の回転のために別途電力を消費する必要がない。そのため、電力生成のための化石燃料を用いることによるCO2の排出がなくて済むことから、CO2排出抑制効果に優れたCO2回収装置とすることができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、CO2排出抑制効果に優れたCO2回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、CO
2回収装置を示す斜視図。
【
図3】実施形態1における、(a)吹き出し部及びその近傍の断面拡大図、(b)鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念図。
【
図4】(a)変形形態1における鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念図、(b)変形形態2における鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念図。
【
図5】実施形態2における、(a)吹き出し部及びその近傍の断面拡大図、(b)鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念図。
【
図6】実施形態3における、(a)吹き出し部及びその近傍の断面拡大図、(b)鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念図、(c)鉛直方向上方から見た吹き出し部の概念斜視図。
【
図9】実施形態5における、他の反応槽の側面透過図。
【
図10】実施形態5における、鉛直方向下方から見た吹き出し部の概念図。
【
図11】実施形態5における、(a)側方から見た回転前の吹き出し部の概念図、(b)側方から見た回転中の吹き出し部の概念図。
【
図12】実施形態5における、軸受け装置の断面図。
【
図13】変形形態3における、側方から見た回転中の吹き出し部の概念図。
【
図14】実施形態6における、(a)側方から見た回転前の吹き出し部の概念図、(b)側方から見た回転中の吹き出し部の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
上記CO
2回収装置1の本実施形態1について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態のCO
2回収装置1は、主として、反応槽10、本体40、CO
2含有ガス流通部41、CO
2除去ガス排出部42を備え、
図2に示すように、さらに、反応槽10内において、CO
2含有ガス流通部41の先端には、軸受け装置20を介して、吹き出し部30が設けられている。
【0012】
1.本体40
図1に示すように、本体40は鉛直方向Zに立設された側部40cと、側部40cの上側に位置する上部40aと、側部40cの下側に位置する下部40bとを有し、これらにより略コ字状をなすように構成されている。上部40aには貫通孔43を介して、CO
2含有ガス流通部41、CO
2除去ガス排出部42が取り付けられている。下部40bには反応槽10が載置される。なお、
図1において、幅方向をX、前後方向をY、鉛直方向をZとする。
【0013】
本実施形態では、本体40の上部40aは鉛直方向Zにスライド可能であるとともに本体40の下部40bは前後方向Yにスライド可能となっており、本体40に対して後述の反応槽10を容易に着脱可能となっている。
【0014】
2.反応槽10
反応槽10は、中空の円柱形状を有している。反応槽10には、水溶液Lとしてアルカリ金属水酸化物水溶液又はアルカリ土類金属水酸化物水溶液が投入される。当該水溶液Lは、例えば、NaOH水溶液、KOH水溶液、Ca(OH)2水溶液、Mg(OH)2水溶液などを例示でき、本実施形態では、NaOH水溶液を用いる。
【0015】
反応槽10の材質は耐アルカリ性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス製とすることができ、樹脂ライニングなどの表面処理を施した金属製とすることもできる。また、ポリエチレン樹脂製、ポリカーボネート樹脂製などの樹脂製とすることもできる。本実施形態では、ステンレス製の反応槽10を採用している。
【0016】
本実施形態1では、
図2に示すように、反応槽10の上面に設けられた第1開口部11には、後述のCO
2含有ガス流通部41が挿通されており、CO
2含有ガス流通部41の先端部411が反応槽10内に位置している。また、反応槽10の上面に設けられた第2開口部(図示せず)にCO
2除去ガス排出部42が挿通されている。
【0017】
3.CO2含有ガス流通部41
CO2含有ガス流通部41はCO2含有ガスを流通させる。なお、本明細書では、「CO2含有ガス」とは、構成成分としてCO2を含有するガスを指すものとする。当該CO2含有ガスは、構成成分としてCO2のみを含むガスであってもよいし、さらに不可避的不純物を含むガスであってもよい。また、CO2含有ガスは、構成成分としてCO2とその他の物質とが混在する混合ガスであってよい。混合ガスにおいてCO2が占める割合は限定されず、混合ガスにおいて占める割合が最も多い主成分はCO2であってもよいし、CO2以外の物質であってもよい。
【0018】
CO2含有ガスは、CO2含有ガス流通部41に接続された図示しないCO2含有ガス供給源から供給される。CO2含有ガス供給源は限定されないが、例えば、CO2含有ガスを排ガスとして排出するCO2含有ガス排出設備とすることができる。CO2含有ガス排出設備としては、ボイラを有する設備、燃料電池、焼却炉、熱処理設備などを例示することができる。上述の通り、CO2含有ガス流通部41の先端部411は、反応槽10内に鉛直方向Zに並行に延在している。先端部411の下端には後述する軸受け装置20及び吹き出し部30が設けられている。
【0019】
4.軸受け装置20
軸受け装置20は、CO
2含有ガス流通部41の先端部411に対して、後述する吹き出し部30を軸受け支持する。軸受け装置20の構成は限定されず、玉軸受、ころ軸受、滑り軸受とすることができる。本実施形態1では、軸受け装置20は、
図3に示すように外輪21、内輪22、ボール23及び保持器24を備える深溝玉軸受であり、外輪21と内輪22とが保持器24に保持されたボール23を介して相対的に回転可能となっている。
【0020】
そして、本実施形態1では、外輪21がCO2含有ガス流通部41の先端部411と接続されており、内輪22が後述する吹き出し部30に接続されている。これにより、軸受け装置20は、鉛直方向Zに延びる先端部411を回転軸として、先端部411に対して吹き出し部30が相対的に回転可能としている。
【0021】
5.吹き出し部30
図2に示すように、吹き出し部30はCO
2含有ガス流通部41の先端部411に接続されて、反応槽10内の底部13の近傍に位置しており、CO
2含有ガス流通部41を流通するCO
2含有ガスを反応槽10内の水溶液Lに吹き出すように構成されている。
【0022】
本実施形態1では、吹き出し部30は、
図3(a)に示すように縦断面において逆T字状をなしてり、鉛直方向に延びる第1延在部301と、水平方向に延びる第2延在部302とを有する。第1延在部301は軸受け装置20の内輪22内に嵌入されて内輪22と接続されている。
【0023】
そして、
図3(b)に示すように、第2延在部302は、第1延在部301から幅方向Xの一方側に延びてから前後方向Yの一方側に延びた後、幅方向Xの他方側に延びた形状であって、90°折れる部分を二か所有する角張ったU字形状又はJ字形状をなしている。そして、第2延在部302の先端は開口しており、CO
2含有ガスを吹き出す吹き出し口31を形成している。なお、当該第2延在部302の形状は、90°折れる部分を二か所有する角張ったU字形状又はJ字形状に限らず、滑らかに180°湾曲したU字形状又はJ字形状であってもよい。
【0024】
吹き出し口31の数は限定されず、1つ又は複数とすることができる。吹き出し口31を複数設ける場合は、CO2含有ガス流通部41の先端部411を中心に、等間隔に配置することが好ましい。本実施形態1では、第2延在部302は、先端部411の中心軸412を中心に点対称に2つ設けられており、これにより吹き出し口31も第1吹き出し口311と第2吹き出し口312の2つが点対称に設けられている。
【0025】
第1吹き出し口311からCO
2含有ガスF1が吹き出される。そして、
図3(a)に示すように、水平方向から見て、第1吹き出し口311の吹き出し方向P1と回転軸としての先端部411とのなす角は直角となっている。そして、
図3(b)に示すように、鉛直方向Zから見て第1吹き出し口311の吹き出し方向P1のベクトルV1と、第1吹き出し口311の中心から回転軸としての先端部411の中心軸412に向かうベクトルV2とのなす角θは90°以下とすることができ、より好ましくは90°未満とすることができ、本実施形態では、60°としている。
【0026】
また、
図3(b)に示すように、鉛直方向から見て、第1吹き出し口311からCO
2含有ガスの吹き出し方向P1に向かうベクトルV1は、第1吹き出し口311から回転軸としての先端部411の中心軸412に近づくとともに中心軸412から偏心した位置Q1を通過している。
【0027】
なお、第2吹き出し口312は、第1吹き出し口311を180°回転させた状態と一致しており、図示しないが第2吹き出し口312の吹き出し方向P2も、水平方向から見て回転軸としての先端部411とのなす角は直角となっている。そして、
図3(b)に示すように、吹き出し方向P2のベクトルV3と、第2吹き出し口312の中心から回転軸としての先端部411の中心軸412に向かうベクトルV4とのなす角θも90℃以下とすることができ、より好ましくは90°未満とすることができ、本実施形態では、60°としている。
【0028】
また、
図3(b)に示すように、鉛直方向Zから見て、第2吹き出し口312から吹CO
2含有ガスのき出し方向P2に向かうベクトルV3は、第2吹き出し口312から回転軸としての先端部411の中心軸412に近づくとともに中心軸412から偏心した位置Q2を通過している。
【0029】
そして、第1吹き出し口311及び第2吹き出し口312からCO
2含有ガスF1の吹き出しにより、吹き出し部30はベクトルV1と反対方向のベクトルとして示すことができる吹き出し圧を受けることとなる。吹き出し部30は上述の通り、軸受け装置20によって中心軸412を回転中心として回転可能となっているため、吹き出し部30は当該吹き出し圧がかかることにより、
図3(b)において矢印R1で示すように中心軸412を中心とする周方向に回転することなる。従って、CO
2含有ガスF1は水溶液L内において、回転する吹き出し口311、312から吹き出されることとなる。なお、吹き出し部30の回転における最外径部303は当該回転によって符号C1で示す回転軌跡を示す。
【0030】
6.CO2固定化反応
次に、反応槽10におけるCO2固定化反応について説明する。上述のように、CO2含有ガスF1が反応槽10内の水溶液Lに吹き出されることにより、CO2固定化反応が進行する。本実施形態1では、水溶液LとしてNaOH水溶液を用いる場合について説明する。
【0031】
反応槽10内でのCO2固定化反応として、下記の式1の反応が行われた後、式2の反応が行われる。
2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O (式1)
Na2CO3+CO2+H2O→ 2NaHCO3 (式2)
【0032】
上記反応の開始前は、反応槽10内にはNaHCO3及びNa2CO3は存在していない状態であるが、上記反応の進行状態に応じて、Na2CO3が生成されてNaHCO3が存在しない状態と、一部のNa2CO3がさらにCO2と反応してNaHCO3が生成されて両者がともに存在する状態と、すべてのNa2CO3がNaHCO3に変換されてNa2CO3がなくなりNaHCO3が存在する状態とのいずれかとなる。上記反応により生じるNaHCO3及びNa2CO3はいずれも、反応槽10内の水に溶解して水溶液の状態となっている。本明細書ではNaHCO3、Na2CO3及び両者の混合物を総称して「生成物」とい、これらの水溶液を総称して「生成物水溶液」というものとする。そして、反応槽10から回収した生成物水溶液の脱水・乾燥を行うことで、固体の状態で回収することができる。回収された当該生成物は資源として利用することができる。
【0033】
そして、上記反応によってCO
2が除去されたCO
2除去ガスは、
図1に示すCO
2除去ガス排出部42から反応槽10外に排出される。なお、CO
2除去ガスに有害成分が含まれうる場合は、CO
2除去ガス排出部42に当該有害成分を捕集するためのフィルタを設けてもよい。
【0034】
7.作用効果
次に、本実施形態のCO2回収装置1における作用効果について詳述する。本実施形態のCO2回収装置1によれば、吹き出し部30は反応槽10内に位置するCO2含有ガス流通部41の先端部411に軸受け装置20を介して接続されており、吹き出し部30の吹き出し口311、312からCO2含有ガスF1が吹き出ることにより、吹き出し部30は軸受け装置20を介して回転可能となっている。これにより、吹き出し部30の回転により反応槽10内の水溶液Lを撹拌することができる。これとともに、回転する吹き出し部30から吹き出されたガスは反応槽10の水溶液L内をらせん状に上昇していくため、直線的に上昇する場合に比べて水溶液L内での滞在時間が長くなることから、水溶液とガスとの接触頻度及び接触時間を高めることができる。これらの結果、反応槽10内の反応を促してCO2排出抑制効果を向上できる。
【0035】
さらに、吹き出し部30の回転のために別途電力を消費する必要がない。そのため、電力生成のための化石燃料を用いることによるCO2の排出がなくて済むことから、CO2排出抑制効果に優れたCO2回収装置1とすることができる。
【0036】
また、本実施形態1では、吹き出し部30は、吹き出し口311、312を複数備えており、鉛直方向Zから見たとき、吹き出し口311、312は回転軸としてのCO2含有ガス流通部41の先端部411を中心として等間隔に位置している。これにより、各吹き出し口311、312に均等に吹き出し圧がかかることにより、回転軸を中心とする吹き出し部30の回転が促されるためCO2排出抑制効果を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態1では、鉛直方向Zから見て、吹き出し口311、312における吹き出し方向に平行なベクトルV1と、吹き出し口311、312から回転軸としてのCO2含有ガス流通部41の先端部411に向かうベクトルV2とのなす角が90°以下となっている。これにより、吹き出し口311、312からのガスの吹き出しによって、回転軸となる先端部411の周囲の水溶液Lに旋回流を発生させやすくなる。そして、当該旋回流により、吹き出し部30の回転方向R1の力をより大きくすることができるため、CO2排出抑制効果を一層向上することができる。
【0038】
また、本実施形態1では、鉛直方向Zから見て、吹き出し口311、312からCO2含有ガスF1の吹き出し方向に向かうベクトルV1は、吹き出し口311、312か回転軸としての先端部411の中心軸412に近づくとともに中心軸412から偏心した位置Q1、Q2を通過する。これによって、吹き出し口311、312からのガスの吹き出しによって、回転軸としての先端部411の周囲の水溶液Lに旋回流を発生させやすくなり、当該旋回流によって吹き出し部30の回転方向R1の力をより大きくすることができるため、CO2排出抑制効果を一層向上することができる。
【0039】
また、本実施形態1では、上記吹き出し部は、鉛直方向から見て、上記CO2含有ガス流通部の上記先端部からU字形状又はJ字形状に延びた第2延在部302を有しており、第2延在部302の先端に吹き出し口311、312を有している。これにより、吹き出し口311、312からのガスの吹き出しによって回転軸としての先端部411の周囲で水溶液Lの移動が発生し、先端部411の周囲の水溶液Lに旋回流を発生させやすくなる。そのため、当該旋回流によって吹き出し部30の回転方向R1の力をより大きくすることができ、CO2排出抑制効果を一層向上することができる。
【0040】
また、本実施形態1では、水平方向から見て、吹き出し口311、312における吹き出し方向F1と回転軸としての先端部411とのなす角は直角となっている。これにより、吹き出し口311、312からのガスの吹き出しによって生じる吹き出し部30の回転方向R1の力をより大きくすることができるため、CO2排出抑制効果を一層向上することができる。
【0041】
なお、本実施形態1では、吹き出し部30における第2延在部302は、
図3(b)に示すように鉛直方向から見て、U字形状又はJ字形状としたが、これに限らず、吹き出し口311、312からの吹き出し圧によって吹き出し部30に回転方向R1の力を付与可能な形状であればよい。例えば、第2延在部302の形状は、
図4(a)に示す変形形態1のように、鉛直方向から見て、吹き出し部30における第2延在部302は、第1延在部301から幅方向Xの一方に延びるとともに前後方向の一方に緩やかに湾曲する形状、すなわち、緩やかに90°折れ曲がった形状であってもよい。なお、変形形態1においても、第2延在部302は回転軸としての先端部411を中心に点対称に2つ設けられており、吹き出し口312、313も回転軸としての先端部411を中心に点対称すなわち等間隔に2つ設けられている。変形形態1においても実施形態1の場合と同様の作用効果を有する。
【0042】
さらに、吹き出し部30は、
図4(b)に示す変形形態2のように、鉛直方向から見て、第1延在部301から緩やかに90°折れ曲がった延びた形状の第2延在部302が先端部411を中心に等間隔に4つ設けられており、吹き出し口311、312、313、314も先端部411を中心に等間隔に4つ設けられていてもよい。変形形態2においても実施形態1の場合と同様の作用効果を有する。
【0043】
以上のごとく、本実施態様1及び変形形態1、2によれば、CO2排出抑制効果に優れたCO2回収装置1を提供することができる。
【0044】
(実施形態2)
上記実施形態1では、水平方向から見て、吹き出し口311、312における吹き出し方向F1と回転軸としての先端部411とのなす角を直角としたが、これに替えて、本実施形態2では、
図5(a)に示すように、水平方向から見て、吹き出し口311、312における吹き出し方向P1、P2は回転軸としての先端部411に対して鉛直方向Zの下方Z2に傾斜している。本実施形態2おいても、実施形態1の場合と同等に、
図5(b)に示すように矢印R1で示すように中心軸412を中心とする周方向に回転することなる。なお、実施形態2におけるその他の構成は実施形態1の場合と同等であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施形態2では、吹き出し口311、312における吹き出し方向P1が鉛直方向Zの下方Z2に傾斜していることにより、反応槽10の下方に水溶液Lに向けてCO2含有ガスF1を吹き出すことができるため、反応槽10の底部13近傍においてCO2含有ガスF1と水溶液Lとの接触を促すことができ、CO2排出抑制効果を高めることができる。なお、本実施形態2においても実施形態1の同様の作用効果を奏する。
【0046】
(実施形態3)
本実施形態3では、
図6(a)に示すように、CO
2含有ガス流通部41の先端部411にはカバー部材50が接続されている。なお、本実施形態では、カバー部材50は軸受け装置20の外輪21を介して先端部411に接続されている。そして、
図6(b)に示すように、カバー部材50の外縁50aは、鉛直方向Z1から見て、吹き出し部30が回転することにより描かれる回転軌跡C1よりも、回転軌跡C1の径方向外側に位置している。
【0047】
そして、カバー部材50には、鉛直方向Z(カバー部材50の厚さ方向)に貫通する複数の貫通孔51が設けられている。吹き出し部30の吹き出し口311、312から吹き出されたガスは、当該貫通孔51を通過して反応槽10の上方に移動可能となっている。なお、カバー部材50は、複数の貫通孔51に替えて、カバー部材50をメッシュ部材により形成して、吹き出し口311、312から吹き出されたガスがカバー部材50を通過して上方に移動可能なようにしてもよい。
【0048】
さらに、
図6(a)及び
図6(c)に示すように、CO
2含有ガス流通部41の先端部411又は吹き出し部30には重り部材55が取り付けられている。本実施形態3では、重り部材55は、複数の支柱52を介してカバー部材50に取り付けられているとともに、軸受け装置25を介して吹き出し部30の下方に設置されている。重り部材55は所定の重量を有しており、本実施形態3ではカバー部材50の外形と略同一の外形を有している。
【0049】
軸受け装置25は、重り部材55と接続された外輪26と、吹き出し部30の底部と接続された内輪27とが、保持器29に保持されたボール28を介して相対的に回転可能となっており、先端部411の中心軸412が外輪26及び内輪27の回転中心となっている。当該軸受け装置25により、吹き出し部30の回転に伴って重り部材55が回転しないようにすることができ、重り部材55が吹き出し部30の回転を妨げるのを防止することができる。なお、本実施形態3におけるその他の構成は、実施形態1の場合と同様であって、実施形態1の場合と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
本実施形態3によれば、外縁50aが吹き出し部30の回転軌跡C1よりも外側に位置するカバー部材50を有することにより、回転する吹き出し部30が反応槽10の内壁に接触して内壁を損傷することを防止することができる。さらに、重り部材55を有することにより、回転する吹き出し部30が反応槽10内で暴れることを防止して反応槽10内の底部13近傍位置に位置させることができる。これによっても、回転する吹き出し部30が反応槽10の内壁に接触して内壁を損傷することを防止することができる。なお、本実施形態3においても、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0051】
(実施形態4)
上記実施形態1では、反応槽10として、ステンレス製の円筒容器を用いたが、これに替えて、
図7に示す実施形態4では、反応槽10として、可搬性を有するポリエチレン製の容器であって、いわゆる市販品の汎用型のポリタンクを使用する。反応槽10として使用するポリタンクは、例えば、飲料水、灯油、排水などの液体を入れて運搬、保存するための容器としての利用が想定されているものであってよく、その容量は限定されず、10~20Lのものを利用することができる。
【0052】
本実施形態4では、反応槽10は、第1開口部11と第2開口部12を有する。そして、反応槽10は、タイヤ403を有する台車404に載置されており、拘束バンド405により台車404に対して位置ずれしないように台車404に拘束されている。反応槽10は水溶液Lが貯留された状態でも、台車404を介して移動しやすくなっている。また、反応槽10の上面において、第1開口部11と第2開口部12との間には、ハンドル16が設けられている。ハンドル16は、反応槽10において一体成型されている。なお、本実施形態4では、
図7に示すように、CO
2含有ガス流通部41は第1蓋部材14に取り付けられており、CO
2除去ガス排出部42は第2蓋部材15に取り付けられている。
【0053】
本実施形態4では、CO2含有ガス流通部41は可撓性を有する部材で構成されており、CO2含有ガス流通部41の先端部411は、反応槽10内で湾曲させる可能となっている。しかしながら、CO2含有ガス流通部41の先端部411には重り部材55が設けられているため、先端部411は反応槽10内において、概ね鉛直方向に延びている。
【0054】
本実施形態4では、吹き出し部30及びCO2含有ガス流通部41の先端部411の外形は第1開口部11の開口径D2よりも小さくなっている。これにより、吹き出し部30及びCO2含有ガス流通部41の先端部411を、第1開口部11を介して反応槽10に対して挿入及び取出しが可能となっている。
【0055】
また、本実施形態4では、先端部411に設けられたカバー部材50及び重り部材55の外径D1も第1開口部11の開口径D2よりも小さくなっているため、先端部411にカバー部材50及び重り部材55を取り付けた状態においても、吹き出し部30及びCO2含有ガス流通部41の先端部411は第1開口部11を介して反応槽10に対して挿入及び取出しが可能となっている。なお、本実施形態4におけるその他の構成は、実施形態1~3の場合と同等であって、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
本実施形態4では、吹き出し部30及びCO2含有ガス流通部41の先端部411が第1開口部11を介して反応槽10に対して挿入及び取出しが可能となっているため、反応槽10の取り付け及び取り外しが容易となり、作業性が向上する。なお、本実施形態4においても、実施形態1~3と同等の作用効果を奏する。
【0057】
(実施形態5)
本実施形態5では、
図8に示すように反応槽10として、上記実施形態4と同様に、可搬性を有するポリエチレン製の容器であって、いわゆる市販品の汎用型のポリタンクを使用する。そして、CO
2含有ガス流通部41の先端部411には、軸受け装置200を介して吹き出し部30が回転可能に設けられている。吹き出し部30は、鉛直方向に延びる第1延在部305と、第1延在部305から分岐して延在する複数の第2延在部306とを有する。第2延在部306は、先端に向かうほど互いに離間するように先広がり状に配置されている。複数の第2延在部306の先端にはそれぞれ吹き出し口31が配置されている。
【0058】
第2延在部306は、可撓性を有するチューブからなり、通常状態では、
図8に示すように、吹き出し部30の最大径D1(
図10に示す最外径部303を通る仮想円C1の直径)は、ポリタンク(反応槽10)の第1開口部11の開口径D2よりも大きいが、
図9に示すように、第2延在部306の可撓性を利用して第2延在部306を撓ませて変形することにより、吹き出し口31を変位させて吹き出し口31の位置の最大径D1を開口径D2以下にすることができる、これにより、吹き出し部30及びCO
2含有ガス流通部41の先端部411を、第1開口部11を介して反応槽10に対して挿入及び取出しを容易に行うことができる。
【0059】
なお、第2延在部306における可撓性の程度は、限定されないが、後述するように吹き出し部30の回転により変形可能であって、回転していない通常状態においては、各吹き出し口31の姿勢が維持できるとともに、反応槽10への挿入及び取出しの際には上述のごとく変形可能な程度とすることができる。
【0060】
図10に示すように、本実施形態5では、4個の第2延在部306が、中心軸412を中心に点対称に設けられている。それぞれの第2延在部306の先端に位置する吹き出し口31は、中心軸方向412から見て、中心軸412を中心とする仮想円C1の接線方向に対して若干内側に傾斜した方向となっている。そして、それぞれの吹き出し口31からCO
2含有ガスF1が吹き出されることで吹き出し部30に吹き出し圧がかかることにより、矢印R1で示すように、吹き出し部30が軸受け装置200を介して中心軸412を中心とする周方向に回転することとなる。
【0061】
吹き出し部30が回転することにより遠心力が発生する。当該遠心力により、それぞれの第2延在部306は撓んで先端が互いに離れるように変形し、その結果、
図11(a)に示す回転前の状態(通常状態)に比べて、
図11(b)に示す回転中の状態では、吹き出し口31の回転径D1は拡大することとなる。
【0062】
本実施形態5では、軸受け装置200は、CO
2含有ガス流通部41を通じて供給されたCO
2含有ガスF1を支持流体として用いた流体軸受けからなる。
図12に示すように、軸受け装置200は、外輪210、内輪220及びハウジング230を備える。外輪210は略円筒状をなしており、上端には径方向外方に突出した鍔部211が形成されている。外輪210は鍔部211がハウジング230の内壁に形成された溝部231に嵌入されることによりハウジング230に取り付けられている。ハウジング230の上端にはCO
2含有ガス流通部41が接続されている。
【0063】
内輪220は筒状をなしており、外周面には周方向に連続して溝状をなす凹部222が2か所形成されている。凹部222は貫通孔221を介して、内輪220の内空部223と連通している。貫通孔221は複数設けることができ、例えば、周方向に等間隔に配置することができる。内輪220の上端には径方向外方に突出した鍔部224が形成されている。内輪220は鍔部224が外輪210の内壁に形成された段差部212の上に乗った状態で係合することにより、内輪220が外輪210の内側から軸方向の脱落することが防止されている。そして、内輪220において、外輪210の径方向に対向する領域の内、2つの凹部222を除く領域の外径は、外輪210の内径よりも僅かに小さくなっている。これにより、外輪210の内壁と内輪220の外周面との間には全域に亘って微小間隙240が形成されている。なお、本実施形態5では、内輪220は、第1延在部305と一体的に形成されている。
【0064】
そして、CO2含有ガスF1がCO2含有ガス流通部41を流通することにより、CO2含有ガスF1の一部は、内輪220の内空部223から貫通孔221から吹き出て、凹部222に流入してさらに微小間隙240に流入することとなる。凹部222は内輪220の周方向全域に形成されており、凹部222及び微小間隙240に流入するCO2含有ガスF1のガス圧によって、内輪220の外周面は径向において外輪210の内周面から離間した状態に維持され、軸受け装置200は流体軸受けを構成することとなる。
【0065】
なお、本実施形態5では、凹部222は周方向に連続するように形成したが、これに限らず、複数の凹部222が周方向に断続的に並ぶように形成されていてもよい。この場合は、複数の凹部222のそれぞれに貫通孔221を設けることが好ましい。また、本実施形態5では、貫通孔221から吹き出たCO2含有ガスF1は、凹部222に流入してさらに微小間隙240に流入することとしたが、これに限らず、凹部222を有さずに貫通孔221から吹き出たCO2含有ガスF1が直接微小間隙240に流入する構成であってもよい。なお、本実施形態5におけるその他の構成について、実施形態1~4の場合と同等の構成は同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
本実施形態5における作用効果について以下に説明する。上述のように本実施形態5では、吹き出し部30は、CO2含有ガス流通部41の先端部411から延在する第1延在部305及び第2延在部306を有し、第2延在部306の先端に吹き出し口31が配置されている。そして、第2延在部306は、CO2含有ガスF1の吹き出し圧によって軸受け装置200を介して吹き出し部30が回転することにより生じる遠心力により変形又は変位して、吹き出し口31の回転径D1を拡大させるように構成されている。反応槽10内において互いの吹き出し口31の位置が離間することにより、吹き出し口31から反応槽10内の水溶液L内の広い範囲にガスが吹き出されることとなり、水溶液Lとガスとの接触頻度を高めることができ、反応槽10内の反応を促してCO2排出抑制効果を向上できる。
【0067】
さらに、本実施形態5では、第2延在部306は可撓性を有し、遠心力により回転径方向外方に変形するように構成されている。これにより、簡易な構成で、吹き出し圧による吹き出し口31の回転径D1の拡大を実現することができるとともに、反応槽10に取り付け又は取り外す際に、第2延在部306の可撓性を利用して第2延在部306の先端の最大径を小さくなるように変形させることで、反応槽10の開口径が小さい場合でも容易に反応槽10への取り付け又は取り外しを行うことができる。
【0068】
さらに、本実施形態5では、軸受け装置200は、CO2含有ガス流通部41を通じて供給されたCO2含有ガスF1を用いた流体軸受けからなる。これにより、軸受け装置200において外輪210と内輪220との間にグリスなどの潤滑剤を介在させたり潤滑剤の漏れを防止するためのシール部材を設けたりする必要がないため、部品点数の削減を図ることができる。また、当該潤滑剤を用いないことにより、反応槽10内に潤滑剤が漏洩することもない。また、外輪210と内輪220との接触抵抗を小さくすることができるため、吹き出し部30の回転を一層促進し、反応槽10内の反応を促してCO2排出抑制効果の向上が期待できる。
【0069】
なお、
図13に示す変形形態3のように、吹き出し口31の回転径D1が所定値以上に拡大することを規制する拡大規制部307を有していてもよい。当該変形形態3では、拡大規制部307として、周方向に隣り合う第2延在部306の先端部を互いにつなぐ紐状部材307が備えられている。当該紐状部材307の長さを調整することで吹き出し口31の回転径D1が所定値以上に拡大することを規制することができる。
【0070】
変形形態3では、吹き出し口31の回転径D1が所定値以上に拡大することを規制することにより、吹き出し口31の回転径D1が所定値以上に拡大して反応槽10の内側面に接触することを防止することができる。さらに、可撓性を有する第2延在部306に大きな遠心力が付与された場合に第2延在部306が過度に変形して破損することを防止することができる。また、第2延在部306のいずれかが脱落したとしても、当該紐状部材307により他の第2延在部306とつながった状態となるため、脱落した第2延在部306が反応槽10内に落下することを防止することができる。なお、本実施形態1においても実施形態1~4と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
(実施形態6)
上述の実施形態5では、第2延在部306が可撓性を有するものとしたが、本実施形態6では、これに替えて、第2延在部306は剛体であって実質的に可撓性を有していないとともに、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、第2延在部306と第1延在部305との接続部はベアリング機構308を有しており、遠心力により第2延在部306が回動して第2延在部306の先端が回転径方向外方に変位するように構成されている。なお、ベアリング機構308の構成は限定されず、公知の構成を採用することができる。
【0072】
本実施形態6では、
図14(a)に示す回転前の通常状態に比べて、
図14(b)に示す回転中の状態では、それぞれの第2延在部306はベアリング機構308を介して、第2延在部306の先端が互いに離間するように第2延在部306が回転径方向外方に変位することとなる。その結果、実施形態5の場合と同様に吹き出し口31の回転径D1を拡大させることができる。なお、本実施形態6においても実施形態1~5の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:CO2回収装置、10:反応槽、20:軸受け装置、21:外輪、22:内輪、23:ボール、24:保持器、25:軸受け装置、30:吹き出し部、41:CO2含有ガス流通部、411:先端部、42:除去ガス排出部、50:カバー部材、50a:外縁、55:重り部材、200:軸受け装置、307:拡大規制部(紐状部材)