(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042761
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】半導体装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20240322BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20240322BHJP
H10B 41/50 20230101ALI20240322BHJP
H10B 43/50 20230101ALI20240322BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240322BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L27/11548
H01L27/11575
H01L29/78 371
H01L29/78 301P
H01L27/088 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147548
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船迫 友之
【テーマコード(参考)】
5F048
5F083
5F101
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA05
5F048AB01
5F048AC01
5F048BA01
5F048BB05
5F048BC06
5F048BC18
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5F101BA00
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5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH15
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5F140AA25
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5F140BD19
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5F140BF04
5F140BG02
5F140BH15
5F140BH45
5F140BJ08
5F140BJ27
5F140BK05
5F140BK08
5F140BK13
5F140BK34
(57)【要約】
【課題】電気的特性の向上を図ることができる半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、基板と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、を備える。前記第1トランジスタは、第1拡散層領域および第2拡散層領域と、第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1シリサイド層とを有する。前記第1シリサイド層は、前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上に設けられている。第2トランジスタは、第3拡散層領域および第4拡散層領域と、第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート電極と、第2シリサイド層とを有する。前記第2シリサイド層は、前記第3拡散層領域上および前記第4拡散層領域上に設けられている。前記第1シリサイド層と前記第1ゲート絶縁膜との間の距離は、前記第2シリサイド層と前記第2ゲート絶縁膜との間の距離よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた第1拡散層領域および第2拡散層領域と、前記基板上に設けられ、少なくとも一部が前記第1拡散層領域と前記第2拡散層領域との間の領域に面した第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜に対して前記基板とは反対側に位置した第1ゲート電極と、前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上に設けられた第1シリサイド層とを有した第1トランジスタと、
前記基板に設けられた第3拡散層領域および第4拡散層領域と、前記基板上に設けられ、少なくとも一部が前記第3拡散層領域と前記第4拡散層領域との間の領域に面した第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜に対して前記基板とは反対側に位置した第2ゲート電極と、前記第3拡散層領域上および前記第4拡散層領域上に設けられた第2シリサイド層とを有した第2トランジスタと、
を備え、
前記第1シリサイド層は、前記第1ゲート絶縁膜から離れて設けられ、
前記第1シリサイド層と前記第1ゲート絶縁膜との間の距離は、前記第2シリサイド層と前記第2ゲート絶縁膜との間の距離よりも大きい、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとは、同サイズのトランジスタである、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1拡散層領域から前記第2拡散層領域に向かう方向における前記第1シリサイド層と前記第1ゲート電極との間の距離は、前記第3拡散層領域から前記第4拡散層領域に向かう方向における前記第2シリサイド層と前記第2ゲート電極との間の距離よりも大きい、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタは、
前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上で前記第1シリサイド層と前記第1ゲート絶縁膜との間に設けられ、前記第1ゲート絶縁膜と連続した第1絶縁膜を有し、
前記第1ゲート絶縁膜および前記第1絶縁膜は、酸化膜である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜の少なくとも一部は、前記第1ゲート絶縁膜と比べて、前記基板の厚さ方向における前記基板の内側に位置する、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1絶縁膜の成分は、前記第1ゲート絶縁膜の成分と異なる、
前記第1絶縁膜は、前記第1拡散層領域の不純物と同じ極性の不純物を含む、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板の厚さ方向を第1方向とする場合、
前記第1絶縁膜の前記第1方向の厚さは、前記第1ゲート絶縁膜の前記第1方向の厚さよりも小さい、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1絶縁膜の前記第1方向の厚さは、前記第2ゲート絶縁膜の前記第1方向の厚さよりも小さい、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1拡散層領域から前記第2拡散層領域に向かう方向を第2方向とする場合、
前記第1絶縁膜の前記第2方向の長さは、前記第1絶縁膜の前記第1方向の厚さよりも大きい、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記基板の厚さ方向に延びて、前記第1シリサイド層に接した第1コンタクト電極をさらに備え、
前記第1絶縁膜は、前記第1シリサイド層と接する第1端を有し、
前記第1端と前記第1ゲート絶縁膜との間の距離は、前記第1端と前記第1コンタクト電極との間の距離よりも大きい、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1トランジスタの前記第1拡散層領域と前記第2拡散層領域との間に印加される最大電位差は、前記第2トランジスタの前記第3拡散層領域と前記第4拡散層領域との間に印加される最大電位差よりも大きい、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1トランジスタの導電形と前記第2トランジスタの導電形とは、異なる、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1トランジスタは、n型のトランジスタであり、
前記第2トランジスタは、p型のトランジスタである、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
基板と、
前記基板に設けられた第1拡散層領域および第2拡散層領域と、前記基板上に設けられ、少なくとも一部が前記第1拡散層領域と前記第2拡散層領域との間の領域に面したゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に対して前記基板とは反対側に位置したゲート電極と、前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上に設けられたシリサイド層とを有したトランジスタと、
を備え、
前記トランジスタは、
前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上で前記シリサイド層と前記ゲート絶縁膜との間に設けられ、前記第1ゲート絶縁膜と連続した第1絶縁膜を有し、
前記第1絶縁膜の成分は、前記第1ゲート絶縁膜の成分と異なり、
前記第1絶縁膜は、前記第1拡散層領域の不純物と同じ極性の不純物を含む、
半導体装置。
【請求項15】
基板上に第1不純物をドープすることにより、互いに離間した第1低濃度拡散層領域および第2低濃度拡散層領域を形成し、
前記第1低濃度拡散層領域のうち前記第2低濃度拡散層領域側に位置する一部に、前記第1不純物と同じ極性の第2不純物を、前記第1低濃度拡散層領域にドープされた前記第1不純物よりも高濃度にドープすることにより、第1高濃度拡散層領域を形成し、
前記第2低濃度拡散層領域のうち前記第1低濃度拡散層領域側に位置する一部に、前記第2不純物を、前記第2低濃度拡散層領域にドープされた前記第1不純物よりも高濃度にドープすることにより、第2高濃度拡散層領域を形成し、
前記第1高濃度拡散層領域および前記第2高濃度拡散層領域を形成した後に、前記基板上の表面を酸化して第1酸化膜を形成し、
前記第1酸化膜上にマスクを設けて前記第1酸化膜の第1部分を除去するとともに、前記マスク下の領域に位置する前記第1酸化膜の第2部分および前記マスク下の領域に隣接する領域に位置する前記第1酸化膜の第3部分を残留させ、
前記第1酸化膜の前記第2部分上にゲート電極を形成し、
前記第1酸化膜の前記第1部分を除去することで露出した前記基板上の領域にシリサイド層を形成する、
ことを含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板と、半導体基板に設けられたトランジスタとを備えた半導体装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、電気的特性の向上を図ることができる半導体装置、および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、基板と、第1トランジスタと、第2トランジスタとを備える。前記第1トランジスタは、第1拡散層領域および第2拡散層領域と、第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1シリサイド層とを有する。前記第1拡散層領域および前記第2拡散層領域は、前記基板に設けられている。前記第1ゲート絶縁膜は、前記基板上に設けられ、少なくとも一部が前記第1拡散層領域と前記第2拡散層領域との間の領域に面する。前記第1ゲート電極は、前記第1ゲート絶縁膜に対して前記基板とは反対側に位置している。前記第1シリサイド層は、前記第1拡散層領域上および前記第2拡散層領域上に設けられている。第2トランジスタは、第3拡散層領域および第4拡散層領域と、第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート電極と、第2シリサイド層とを有する。前記第3拡散層領域および前記第4拡散層領域は、前記基板に設けられている。前記第2ゲート絶縁膜は、前記基板上に設けられ、少なくとも一部が前記第3拡散層領域と前記第4拡散層領域との間の領域に面する。前記第2ゲート電極は、前記第2ゲート絶縁膜に対して前記基板とは反対側に位置している。前記第2シリサイド層は、前記第3拡散層領域上および前記第4拡散層領域上に設けられている。前記第1シリサイド層は、前記第1ゲート絶縁膜から離れて設けられている。前記第1シリサイド層と前記第1ゲート絶縁膜との間の第1距離は、前記第2シリサイド層と前記第2ゲート絶縁膜との間の第2距離よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の半導体装置の構成例を示す断面図。
【
図2】実施形態の半導体基板および第1トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図3】実施形態の半導体基板および第2トランジスタの構成例を示す断面図。
【
図4】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【
図5】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【
図6】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【
図7】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【
図8】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【
図9】実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の半導体装置および半導体装置の製造方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。「平行」、「直交」、または「同じ」とは、それぞれ「略平行」、「略直交」、または「略同じ」である場合を含み得る。「接続」とは、機械的な接続に限定されず、電気的な接続を含み得る。すなわち「接続」とは、複数の要素が直接に接続される場合に限定されず、複数の要素が別の要素を間に介在させて接続される場合を含み得る。「面する」とは、ある方向で見た場合に2つの部材が重なることを意味し、上記2つの部材の間に別の部材が存在する場合も含み得る。
【0008】
先に、X方向、Y方向、およびZ方向について定義する。X方向およびY方向は、後述する半導体基板20の表面に沿う方向である(
図2、
図3参照)。X方向は、後述する第1トランジスタ30においてソース領域31からドレイン領域32に向かう方向であり(
図2参照)、後述する第2トランジスタ40においてソース領域41からドレイン領域42に向かう方向である(
図3参照)。Y方向は、X方向とは交差する(例えば直交する)方向である。Z方向は、X方向およびY方向とは交差する(例えば直交する)方向である。Z方向は、半導体基板20の厚さ方向である(
図2、
図3参照)。以下の説明では、半導体基板20に対してトランジスタTrが位置する側を「上」、その反対側を「下」と称する場合がある。ただしこれら表現は、便宜上のものであり、重力方向を規定するものではない。Z方向は、「第1方向」の一例である。X方向は、「第2方向」の一例である。
【0009】
(実施形態)
<1. 半導体装置の構成例>
図1は、実施形態の半導体装置1の構成例を示す断面図である。半導体装置1は、例えば、NAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置である。半導体装置1は、例えば、アレイチップ2と、回路チップ3とを有する。
【0010】
アレイチップ2は、情報を記憶可能なチップである。アレイチップ2は、例えば、積層体11と、複数のメモリピラー12と、ソース線SLと、複数のビット線BLとを含む。積層体11は、複数のワード線11aと、複数の絶縁層11bとを含む。複数のワード線11aと複数の絶縁層11bとは、Z方向に1層ずつ交互に積層されている。
【0011】
複数のメモリピラー12は、積層体11内をZ方向に延びている。各メモリピラー12は、メモリピラー12の中心部から外周側に向けて、絶縁部、チャネル層、トンネル絶縁膜、電荷蓄積部、およびブロック絶縁膜を含む。各メモリピラー12の一端部は、ソース線SLと接続されている。各メモリピラー12の他端部は、ビット線BLと接続されている。各メモリピラー12と各ワード線11aとの交差部分には、メモリセルトランジスタMCが形成されている。メモリセルトランジスタMCは、電荷が蓄積されることで情報を記憶可能な記憶素子である。
【0012】
回路チップ3は、アレイチップ2の動作を制御する制御回路である。回路チップ3は、例えば、半導体基板20と、複数のトランジスタTrと、複数の配線Lとを備える。複数のトランジスタTrは、半導体基板20上に設けられている。配線Lは、トランジスタTrとアレイチップ2とを接続している。
【0013】
<2.半導体基板およびトランジスタの構成>
次に、半導体基板20およびトランジスタTrの構成について詳しく説明する。
【0014】
<2.1 半導体基板>
図2は、半導体基板20および後述する第1トランジスタ30の構成例を示す断面図である。
図3は、半導体基板20および後述する第2トランジスタ40の構成例を示す断面図である。
半導体基板20は、例えば、シリコン基板である。半導体基板20は、「基板」の一例である。
図2、
図3に示すように、半導体基板20は、例えば、基板本体21と、素子分離部22とを有する。
【0015】
基板本体21は、トランジスタTrが設けられる土台となる部分である。基板本体21は、シリコン材料を含む。基板本体21は、少なくともトランジスタTrが設けられる領域の一部に、後述するトランジスタTrのソース領域およびドレイン領域とは異なる極性(異なる導電形)のウェル領域21aを有する。
【0016】
素子分離部22は、半導体基板20に設けられる複数のトランジスタTrを電気的に分離する分離部である。素子分離部22は、半導体基板20では、各トランジスタTrの活性化領域Aを囲むように設けられている。
【0017】
<2.2 トランジスタ>
複数のトランジスタTrは、第1トランジスタ30(
図2参照)と、第2トランジスタ40(
図3参照)とを含む。第1トランジスタ30および第2トランジスタ40の各々は、電界効果型トランジスタであり、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor-Field-Effect-Transistor)である。
【0018】
第1トランジスタ30および第2トランジスタ40は、半導体装置1において高い電圧(例えば20V以上の電圧)が印加される高電圧トランジスタである。第1トランジスタ30および第2トランジスタ40は、同サイズのトランジスタである。本出願で「トランジスタが同サイズ」とは、後述するゲート絶縁膜(例えばゲート絶縁膜33,43)のZ方向の厚さの違いが10%以下であることを意味する。別の観点で述べると、「トランジスタが同サイズ」とは、後述するゲート電極(例えばゲート電極34,44)のZ方向の厚さの違いが10%以下であることを意味してもよい。同サイズである第1トランジスタ30および第2トランジスタ40は、例えば共通した工程によりトランジスタTrの構成の一部(例えばゲート電極34,44)が一括して形成される。本実施形態では、第1トランジスタ30の導電形と第2トランジスタ40の導電形とは、互いに異なる。
【0019】
<2.2.1 第1トランジスタ>
第1トランジスタ30は、例えばn型の高電圧トランジスタである。
図2に示すように、第1トランジスタ30は、ソース領域31と、ドレイン領域32と、ゲート絶縁膜33と、ゲート電極34と、第1シリサイド層35と、第1絶縁膜36とを有する。
【0020】
ソース領域31およびドレイン領域32は、半導体基板20の上部の一部として設けられている。ソース領域31およびドレイン領域32は、第1トランジスタ30に対応する活性化領域Aに設けられている。ソース領域31およびドレイン領域32は、X方向に互いに離れている。ソース領域31およびドレイン領域32は、半導体基板20の上部にn型の不純物を、例えばイオン注入によりドープすることで形成されている。本実施形態では、ソース領域31およびドレイン領域32の各々に、P(リン)がドープされている。ソース領域31は、「第1拡散層領域」の一例である。ドレイン領域32は、「第2拡散層領域」の一例である。
【0021】
ソース領域31の上方には、コンタクト電極C1が設けられている。コンタクト電極C1は、Z方向でソース領域31に接続されている。本実施形態では、コンタクト電極C1は、Z方向に延びて第1シリサイド層35に接し、第1シリサイド層35を介してソース領域31に接続されている。コンタクト電極C1は、「第1コンタクト電極」の一例である。ドレイン領域32の上方には、コンタクト電極C2が設けられている。コンタクト電極C2は、Z方向でドレイン領域32に接続されている。本実施形態では、コンタクト電極C2は、Z方向に延びて第1シリサイド層35に接し、第1シリサイド層35を介してドレイン領域32に接続されている。
【0022】
ゲート絶縁膜33は、半導体基板20とゲート電極34との間に位置し、半導体基板20とゲート電極34とを電気的に絶縁する絶縁膜である。ゲート絶縁膜33は、半導体基板20の表面上に設けられている。ゲート絶縁膜33の少なくとも一部は、ソース領域31とドレイン領域32との間の領域にZ方向で面する。ゲート絶縁膜33は、例えばシリコン酸化物により形成されている。ゲート絶縁膜33は、「第1ゲート絶縁膜」の一例である。本出願で「ゲート絶縁膜」とは、ゲート電極と基板との間に配置され、Z方向の厚さが一定の絶縁部(例えば
図2で厚さD11を有する部分、
図3で厚さD12を有する部分)を意味する。
【0023】
ゲート電極34は、ゲート絶縁膜33に対して半導体基板20とは反対側に位置する。
ゲート電極34の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜33を間に挟んで半導体基板20のソース領域31とドレイン領域32との間の領域にZ方向で面する。ゲート電極34は、例えば、不純物を含むポリシリコンにより形成されている。ゲート電極34は、「第1ゲート電極」の一例である。ゲート電極34の上方には、コンタクト電極C3が設けられている。コンタクト電極C3は、Z方向でゲート電極34に接続されている。
【0024】
第1シリサイド層35は、ソース領域31上およびドレイン領域32上に設けられている。第1シリサイド層35は、ゲート絶縁膜33およびゲート電極34から離間している。
【0025】
第1絶縁膜36は、ソース領域31上およびドレイン領域32上で第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間に設けられている。第1絶縁膜36は、第1シリサイド層35の形成を阻害するブロック膜として機能する。第1絶縁膜36は、ゲート絶縁膜33と繋がり、連続している。ゲート絶縁膜33および第1絶縁膜36は、酸化膜である。
【0026】
ソース領域31上では、第1絶縁膜36は、ゲート絶縁膜33から、ゲート電極34とコンタクト電極C1との間の中間地点Pc1よりもコンタクト電極C1側の領域まで延在している。また、ドレイン領域32上では、第1絶縁膜36は、ゲート絶縁膜33から、ゲート電極34とコンタクト電極C2との間の中間地点Pc2よりもコンタクト電極C2側の領域まで延在している。
【0027】
第1絶縁膜36のZ方向の厚さD1は、例えば、10nm以上30nm以下である。第1絶縁膜36のZ方向の厚さD1は、ゲート絶縁膜33のZ方向の厚さD11よりも小さい。第1絶縁膜36のZ方向の厚さD1は、ゲート絶縁膜43のZ方向の厚さD12よりも小さい。第1絶縁膜36のZ方向の厚さD1は、シリサイド層35のZ方向の厚さD13よりも大きい。
【0028】
また、第1絶縁膜36のX方向の長さ(後述する距離L1に相当)は、第1絶縁膜のZ方向の厚さD1よりも大きい。また、第1絶縁膜36は、シリサイド層35と接する第1端36eを有する。第1端36eとゲート絶縁膜33との間の距離L5は、第1端36eとコンタクト電極C1との間の距離L6よりも大きい。距離L5は、後述する距離L1に相当する距離である。距離L6は、X方向(ソース領域31からドレイン領域32に向かう方向)における第1端36eとコンタクト電極C1との間の距離であり、例えば、X方向における第1端36eとコンタクト電極C1との間の最短距離である。
【0029】
第1絶縁膜36の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜33よりも半導体基板20の内側(Z方向における内側)に位置している。例えば、第1絶縁膜36の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜33と半導体基板20との界面Bよりも半導体基板20の内側(Z方向における内側)に位置している。
【0030】
より詳細には、第1絶縁膜36は、Z方向で、例えば深さD2=20nm程度、ゲート絶縁膜33と半導体基板20との界面Bよりも半導体基板20の内側に深く形成されている。また、第1絶縁膜36は、半導体基板20とは反対側に向いた表面S1を有する。ゲート絶縁膜33は、半導体基板20とは反対側に向いた表面S2を有する。第1絶縁膜36の表面S1は、ゲート絶縁膜33の表面S2よりもZ方向で半導体基板20側に位置する。第1シリサイド層35は、半導体基板20側に向いた表面S3を有する。第1絶縁膜36の表面S1は、第1シリサイド層35の表面S3よりもZ方向で半導体基板20から離間した位置にある。
【0031】
第1絶縁膜36は、ゲート絶縁膜33と同様にシリコン酸化物により形成されている。ただし、第1絶縁膜36の成分は、ゲート絶縁膜33の成分と異なる。第1絶縁膜36は、ソース領域31およびドレイン領域32の不純物と同じ極性の不純物を含む。本実施形態では、第1絶縁膜36は、ソース領域31およびドレイン領域32の不純物と同じ極性の不純物として、As(ヒ素)を含む。
【0032】
上述の第1トランジスタ30では、ソース領域31とドレイン領域32との間に印加される電位差(最大電位差)が、例えば20V以上に設定されている。
【0033】
<2.2.2 第2トランジスタ>
第2トランジスタ40は、例えばp型の高電圧トランジスタである。
図3に示すように、第2トランジスタ40は、ソース領域41と、ドレイン領域42と、ゲート絶縁膜43と、ゲート電極44と、第2シリサイド層45とを有する。
【0034】
ソース領域41およびドレイン領域42は、半導体基板20の上部の一部として設けられている。ソース領域41およびドレイン領域42は、第2トランジスタ40に対応する活性化領域Aに設けられている。ソース領域41およびドレイン領域42は、X方向に互いに離れている。ソース領域41およびドレイン領域42は、半導体基板20の上部に不純物を、例えばイオン注入によりドープすることで形成されている。本実施形態では、ソース領域41およびドレイン領域42の各々に、B(ボロン)がドープされている。ソース領域41は、「第3拡散層領域」の一例である。ドレイン領域42は、「第4拡散層領域」の一例である。
【0035】
ソース領域41の上方には、コンタクト電極C4が設けられている。コンタクト電極C4は、Z方向でソース領域41に接続されている。本実施形態では、コンタクト電極C4は、Z方向に延びて第2シリサイド層45に接し、第2シリサイド層45を介してソース領域41に接続されている。ドレイン領域42の上方には、コンタクト電極C5が設けられている。コンタクト電極C5は、Z方向でドレイン領域42に接続されている。本実施形態では、コンタクト電極C5は、Z方向に延びて第2シリサイド層45に接し、第2シリサイド層45を介してドレイン領域42に接続されている。
【0036】
ゲート絶縁膜43は、半導体基板20とゲート電極44との間に位置し、半導体基板20とゲート電極44とを電気的に絶縁する絶縁膜である。ゲート絶縁膜43は、半導体基板20の表面上に設けられている。ゲート絶縁膜43の少なくとも一部は、ソース領域41とドレイン領域42との間の領域にZ方向で面する。ゲート絶縁膜43は、例えばシリコン酸化物により形成されている。ゲート絶縁膜43は、「第2ゲート絶縁膜」の一例である。
【0037】
ゲート電極44は、ゲート絶縁膜43に対して半導体基板20とは反対側に位置する。ゲート電極44の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜43を間に挟んで半導体基板20のソース領域41とドレイン領域42との間の領域にZ方向で面する。ゲート電極44は、例えば、不純物を含むポリシリコンにより形成されている。ゲート電極44は、「第2ゲート電極」の一例である。ゲート電極44の上方には、コンタクト電極C6が設けられている。コンタクト電極C6は、Z方向でゲート電極44に接続されている。
【0038】
第2シリサイド層45は、ソース領域41上およびドレイン領域42上に設けられている。第2シリサイド層45は、例えば、ソース領域41上およびドレイン領域42の全面(例えば、ソース領域41上およびドレイン領域42の各々の一部がゲート絶縁膜43の下方に位置する場合は、当該一部を除いた全面)にわたって設けられている。第2シリサイド層45は、ゲート絶縁膜43と接している。
【0039】
上述の第2トランジスタ40では、ソース領域41とドレイン領域42との間に印加される電位差(例えば最大電位差)が、例えば20V以上に設定されている。
【0040】
<2.2.2 第1・第2トランジスタの相違点>
続いて、
図2、
図3の両方を参照し、第1トランジスタ30と第2トランジスタ40との相違点について説明する。
【0041】
上述したように、第1トランジスタ30は、第1絶縁膜36を有している。このため、第2トランジスタ40におけるゲート絶縁膜43および第2シリサイド層45と異なり、第1トランジスタ30では、ゲート絶縁膜33と第1シリサイド層35とが離間している。第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間の第1距離L1は、第2シリサイド層45とゲート絶縁膜43との第2距離L2よりも大きい。第1距離L1は、X方向(ソース領域31からドレイン領域32に向かう方向)における第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間の距離であり、例えば、X方向における第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間の最短距離である。第2距離L2は、X方向(ソース領域41からドレイン領域42に向かう方向)における第2シリサイド層45とゲート絶縁膜43との間の距離であり、例えば、X方向における第2シリサイド層45とゲート絶縁膜43との間の最短距離である。本実施形態では、第2シリサイド層45とゲート絶縁膜43とが接している。この場合、第2距離L2は、ゼロである。ただし、第2距離L2はゼロに限定されず、第2シリサイド層45はゲート絶縁膜43から離れていてもよい。
【0042】
別の観点で述べると、第1シリサイド層35とゲート電極34との間の第3距離L3は、第2シリサイド層45とゲート電極44との第2距離L4よりも大きい。第1距離L3は、X方向(ソース領域31からドレイン領域32に向かう方向)における第1シリサイド層35とゲート電極34との間の距離であり、例えば、X方向における第1シリサイド層35とゲート電極34との間の最短距離である。第4距離L4は、X方向(ソース領域41からドレイン領域42に向かう方向)における第2シリサイド層45とゲート電極44との間の距離であり、例えば、第2シリサイド層45とゲート電極44との間の最短距離である。
【0043】
また、第1トランジスタ30および第2トランジスタ40は、ともに例えばメモリセルトランジスタMCの書き込み若しくは消去、または、ワード線11aに電圧を印加するためのワードラインドライバやセレクトゲートトランジスタとして使用される。ただし、第1トランジスタ30においてソース領域31とドレイン領域32との間に印加される電位差(例えば最大電位差)は、第2トランジスタ40においてソース領域41とドレイン領域42との間に印加される電位差(例えば最大電位差)よりも大きい。
【0044】
<3 半導体装置の製造方法>
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。ここでは、第1トランジスタ30、および第2トランジスタ40に関する製造方法について説明する。半導体装置1の他の構成の製造工程については、公知の方法を用いることができる。
【0045】
図4から
図9は、半導体装置1の製造方法を説明するための図である。
以下では、第1トランジスタ30が形成される領域を第1領域101と称し、第2トランジスタ40が形成される領域を第2領域102と称して説明する。
【0046】
まず、
図4に示すように、第1領域101、および第2領域102ともに、半導体基板20に素子分離部22が設けられる。
【0047】
まず、第2領域102で、半導体基板20上の2つの素子分離部22の間の領域に不純物(本実施形態では、ボロン(B))をドープする。このとき、半導体基板20の表面上にレジストパターンを設けた状態でイオン注入を行うことにより、不純物ドープが行われる。不純物は2つの素子分離部22のうち一方の素子分離部22側寄りの領域と、他方の素子分離部22側の領域とにそれぞれドープされる。これにより、2つの素子分離部22の間の領域には、X方向に互いに離間した第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114が形成される。第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114は、いわゆる低濃度不純物ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)である。第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114における不純物のドープ量は、例えば1012~1013cm-2である。
【0048】
第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114を形成するためにドープされる不純物は、ボロン(B)に限られない。
【0049】
続いて、第1領域101で、半導体基板20上の2つの素子分離部22の間の領域に第1不純物(本実施形態では、リン(P))をドープする。このとき、例えばレジストパターンを新しく設けてイオン注入を行うことにより、不純物ドープが行われる。第1不純物は2つの素子分離部22のうち一方の素子分離部22側寄りの領域と、他方の素子分離部22側の領域とにそれぞれドープされる。これにより、2つの素子分離部22の間の領域には、X方向に互いに離間した第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112が形成される。第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112は、いわゆるLDDである。第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112における第1不純物のドープ量は、例えば1012~1013cm-2である。
【0050】
第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112を形成するためにドープされる第1不純物は、リン(P)に限られない。
【0051】
次に、
図5に示すように、第1領域101では、レジストパターンをさらに張り直し、イオン注入を行う。これにより、第1低濃度拡散層領域111のうち第2低濃度拡散層領域112側に位置した一部に、第1不純物と同じ極性の第2不純物(本実施形態ではヒ素(As))を、第1低濃度拡散層領域111にドープされた第1不純物よりも高濃度にドープする。これにより、第1低濃度拡散層領域111のうち第2低濃度拡散層領域112側に位置した一部には、第1高濃度拡散層領域121が形成される。
【0052】
同時に、第2低濃度拡散層領域112のうち第1低濃度拡散層領域111側に位置した一部に、第2不純物を、第2低濃度拡散層領域112にドープされた第1不純物よりも高濃度にドープする。これにより、第2低濃度拡散層領域112のうち第1低濃度拡散層領域111側に位置した一部には、第2高濃度拡散層領域122が形成される。
【0053】
第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122は、いわゆる高濃度不純物ドレイン(HDD:Hightly Doped Drain)である。第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122における第2不純物のドープ量は、例えば1014~1015cm-2である。第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122における第2不純物のドープ量は、第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112における第1不純物のドープ量よりも、少なくとも×10倍以上多くなっている。
【0054】
第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122を形成するためにドープされる第2不純物は、ヒ素(As)に限られない。第2不純物は、第1不純物と極性が同じであればよい。本実施形態の場合、第2不純物は、例えばリン(P)であってもよい。
【0055】
次に、
図6に示すように、第1領域101では、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122を形成した後に、半導体基板20上の表面を加熱して酸化する。これにより、第1酸化膜131が形成される。このとき、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122が酸化して生じた第1酸化膜131の一部(例えば第1酸化膜131の第3部分131c)は、ドープされた第2不純物の存在によって、半導体基板20上の他の部分(例えば第1酸化膜131の第1部分131a)よりも厚くなる。第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122以外の領域(第1酸化膜131の第1部分131a)では、第1酸化膜131は、一様な厚さとなる。
【0056】
第2領域102でも、半導体基板20上の表面を加熱して酸化する。これにより、一様な厚さの第2酸化膜132が形成される。
【0057】
次に、
図7に示すように、第1領域101では、第1酸化膜131の不要部分(第1酸化膜131の第1部分131a)が除去される。第1酸化膜131の不要部分の除去は、例えばウェットエッチングにより行われる。この時、第1低濃度拡散層領域111と第2低濃度拡散層領域112との間に位置した第1酸化膜131(例えば第1酸化膜131の第2部分131b)を、マスクMを用いてマスクする。このマスクMは、第1高濃度拡散層領域121と第2高濃度拡散層領域122との間の領域に設置される。マスクM下に位置した領域の第1酸化膜131は除去されない。マスクM下の除去されずに残留した第1酸化膜131(例えば第1酸化膜131の第2部分131b)がゲート絶縁膜33となる。
【0058】
また、上述したように、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122に対応する領域、すなわちマスクM下の領域に隣接する領域の第1酸化膜131(例えば第1酸化膜131の第3部分131c)は、他の領域よりも厚い。このため、マスクM下の領域に隣接する領域の第1酸化膜131(例えば第1酸化膜131の第3部分131c)は、全て除去されずに一部が残留する。このマスクM下の第1酸化膜131に隣接する第1酸化膜131により第1絶縁膜36が形成される。
【0059】
エッチングが完了すると、第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112のうち酸化していない部分の一部が露出する。
【0060】
一方で、第2領域102では、第2酸化膜132の不要部分が除去される。第2酸化膜132の不要部分の除去は、例えばウェットエッチングにより行われる。この時、第3低濃度拡散層領域113と第4低濃度拡散層領域114との間の第2酸化膜132を、マスクMを用いてマスクする。マスクM下の第2酸化膜132は除去されない。マスクM下の除去されずに残留した第2酸化膜132がゲート絶縁膜43となる。
【0061】
エッチングが完了すると、第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114のうち酸化していない部分の一部が露出する。
【0062】
次に、
図8に示すように、第1領域101では、マスクM下の領域に残留した第1酸化膜131(ゲート絶縁膜33)上にゲート電極34を形成する。第2領域102でも、第3低濃度拡散層領域113と第4低濃度拡散層領域114との間に残留した第2酸化膜132(ゲート絶縁膜43)上にゲート電極44を形成する。
【0063】
次に、
図9に示すように、第1領域101では、露出した第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112に、例えばイオン注入により同じ極性の不純物をさらにドープする。これにより、第1低濃度拡散層領域111がソース領域31となり、第2低濃度拡散層領域112がドレイン領域32となる。その後、半導体基板20上に金属を散布して半導体基板20と反応させて、第1酸化膜131を除去されて露出した半導体基板20上の領域(ソース領域31およびドレイン領域32の表面)に第1シリサイド層35を形成する。第1シリサイド層35の形成のために散布される金属は、特に限定されないが、例えばNi、Pt、Co、Ti等が挙げられる。第1シリサイド層35が形成される金属は、Ni中に少量のPtを添加したものであることが望ましい。
【0064】
第2領域102では、露出した第3低濃度拡散層領域113および第4低濃度拡散層領域114に、例えばイオン注入により同じ極性の不純物をさらにドープする。これにより、第3低濃度拡散層領域113がソース領域41となり、第4低濃度拡散層領域114がドレイン領域42となる。その後、半導体基板20上に金属を散布して半導体基板20と反応させて、第2酸化膜132を除去されて露出した半導体基板20上の領域(ソース領域41およびドレイン領域42の表面)に第2シリサイド層45を形成する。第2シリサイド層45の形成のために散布される金属は、特に限定されないが、例えばNi、Pt、Co、Ti等が挙げられる。第2シリサイド層45が形成される金属は、Ni中に少量のPtを添加したものであることが望ましい。
【0065】
次に、第1領域101では、ソース領域31と重なる第1シリサイド層35上にコンタクト電極C1を形成し、ドレイン領域32と重なる第1シリサイド層35上にコンタクト電極C2を形成する。さらに、ゲート電極34上にコンタクト電極C3を形成する。このようにして、
図2に示す第1トランジスタ30の製造が完了する。
【0066】
第2領域102でも同様に、ソース領域41と重なる第2シリサイド層45上にコンタクト電極C4を形成し、ドレイン領域42と重なる第2シリサイド層45上にコンタクト電極C5を形成する。さらに、ゲート電極44上にコンタクト電極C6を形成する。このようにして、
図3に示す第2トランジスタ40の製造が完了する。
【0067】
<4 利点>
例えば、トランジスタのコンタクト抵抗(コンタクト電極と、ソース領域またはドレイン領域との間の抵抗)を低減するため、ソース領域およびドレイン領域の表面全域にシリサイド層を形成する場合がある。しかしながら、このようなトランジスタでは、ゲート絶縁膜とシリサイド層とが接触する。このため、トランジスタの駆動時にゲート絶縁膜下の空乏層(不図示)がソース領域およびドレイン領域側に延び、空乏層とシリサイド層中の不純物とが接触しやすくなる。空乏層とシリサイド層中の不純物とが接触すると、空乏層とシリサイド層との間に電流のリークパスが生じる。これにより、トランジスタの耐圧が劣化し、リーク電流が増大してしまう。このように、電気的特性の向上の観点から改善の余地が残されている。
【0068】
そこで、本実施形態では、第1トランジスタ30における第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間の第1距離L1が、第2トランジスタ40における第2シリサイド層45とゲート絶縁膜43との間の第2距離L2よりも大きくなるように、第1トランジスタ30および第2トランジスタ40が設計されている。
【0069】
これにより、第1トランジスタ30では、第1シリサイド層35と駆動時に生じる空乏層との距離が増大する。第1トランジスタ30の駆動時にゲート絶縁膜33下の空乏層がソース領域31およびドレイン領域32側に伸びたとしても、空乏層とゲート絶縁膜33との接触が抑制される。よって、空乏層と第1シリサイド層35間のリークパスの発生が抑制される。したがって、第1シリサイド層35によってコンタクト抵抗を低減しつつ、第1トランジスタ30の耐圧劣化と、リーク電流の発生が抑制され、電気的特性が向上される。
【0070】
一方で、第2トランジスタ40では、ソース領域41とドレイン領域42との全面にわたって第2シリサイド層45を形成することができる。これにより、第2トランジスタ40では、第2シリサイド層45によってコンタクト抵抗をより一層低減させ、駆動時のオン電流を向上させることできる。
【0071】
本実施形態では、第1トランジスタ30は、第1絶縁膜36を有する。第1絶縁膜36は、ソース領域31上およびドレイン領域32上で第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との間に設けられ、ゲート絶縁膜33と連続している。ゲート絶縁膜33および第1絶縁膜36は、酸化膜である。
これにより、半導体基板20の表面の酸化によってゲート絶縁膜33および第1絶縁膜36を一括に形成することができる。さらに、第1絶縁膜36の形成箇所では、第1シリサイド層35の形成工程で、散布された金属が半導体基板20の表面と接触することができず、シリサイド化反応が生じない。このため、第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33とが確実に離間される。よって、ゲート絶縁膜33下の空乏層と第1シリサイド層35間のリークパスの発生が抑制される。すなわち、第1トランジスタ30の耐圧劣化と、リーク電流の発生を簡単に抑制し、電気的特性を向上させることができる。
【0072】
本実施形態では、第1絶縁膜36の少なくとも一部は、ゲート絶縁膜33と比べて、半導体基板20の厚さ方向(Z方向)における半導体基板20の内側に位置する。これにより、第1シリサイド層35と空乏層との距離がより一層増大する。より確実にリークパスの発生を抑制できる。また、第1酸化膜131の不要部分を除去する工程では、第1絶縁膜36が半導体基板20上に残留し易くなる。
【0073】
本実施形態では、第1絶縁膜36の成分は、ゲート絶縁膜33の成分と異なる。第1絶縁膜36は、ソース領域31の第1不純物と同じ極性の第2不純物を含む。これにより、第1絶縁膜36の製造工程の前に、第2不純物をドープして半導体基板20表面を熱酸化するだけの簡単な方法で、第1絶縁膜36となる部分の第1酸化膜131を厚くし、第1酸化膜131の不要部分を除去する工程では、第1絶縁膜36を残留し易くできる。
【0074】
本実施形態では、第1トランジスタ30のソース領域31とドレイン領域32との間に印加される最大電位差は、第2トランジスタ40のソース領域41とドレイン領域42との間に印加される最大電位差よりも大きい。これにより、電位差が大きく、空乏層と第1シリサイド層35とが接触して耐圧劣化やリーク電流が生じやすい第1トランジスタ30のみ、第1シリサイド層35とゲート絶縁膜33との第1距離L1を多くできる。
一方で、第2トランジスタ40は、第1トランジスタ30と比較して、ソース領域41とドレイン領域42との間の電位差が小さいため、ゲート絶縁膜43下の空乏層と第2シリサイド層45との接触によるリークが発生しづらい。このため、第2トランジスタ40では、第2シリサイド層45をソース領域41およびドレイン領域42に全面形成できる。したがって、第1トランジスタ30のみ効率良く耐圧劣化とリーク電流の発生を抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、第1トランジスタ30の導電形と第2トランジスタ40の導電形とは、異なる。これにより、一方の導電形のトランジスタのみゲート絶縁膜とシリサイド層との距離を長くできるので、仕様に応じて効率良く耐圧劣化とリーク電流の発生を抑制することができる。
【0076】
本実施形態では、第1トランジスタ30はn型のトランジスタであり、第2トランジスタ40はp型のトランジスタである。これにより、ソース領域とドレイン領域との間の電位差が大きく、空乏層が伸長し易い傾向にあるn型のトランジスタのみゲート絶縁膜とシリサイド層との距離を長くできるので、効率良く耐圧劣化とリーク電流の発生を抑制することができる。
【0077】
本実施形態の半導体装置1の製造方法では、まず、半導体基板20上に第1不純物をドープすることにより、互いに離間した第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112を形成する。続いて、第1低濃度拡散層領域111のうち第2低濃度拡散層領域112側に位置する一部に、第1不純物と同じ極性の第2不純物を、第1低濃度拡散層領域111にドープされた第1不純物よりも高濃度にドープすることにより、第1高濃度拡散層領域121を形成する。また、第2低濃度拡散層領域112のうち第1低濃度拡散層領域111側に位置する一部に、第2不純物を、第2低濃度拡散層領域112にドープされた第1不純物よりも高濃度にドープすることにより、第2高濃度拡散層領域122を形成する。続いて、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122を形成した後に、半導体基板20上の表面を酸化して第1酸化膜131を形成する。そして、第1酸化膜131上にマスクMを設けて、第1酸化膜131の第1部分131aを除去するとともに、マスクM下の領域に位置する第1酸化膜131の第2部分131bおよびマスクM下の領域に隣接する領域に位置する第1酸化膜131の第3部分131cを残留させる。次に、第1酸化膜131の第2部分131b上にゲート電極34を形成する。その後、第1酸化膜131を除去することで露出した半導体基板20上の領域に第1シリサイド層35を形成する。
【0078】
ところで、半導体基板の表面を熱酸化して酸化膜を形成する場合、一般に、半導体基板中に不純物が存在している方が、半導体基板中に不純物が存在しない場合と比較して、酸化速度が上昇する。このため、ドープする不純物の濃度が高くなる程、酸化速度が上昇し酸化膜が厚くなる。
【0079】
本実施形態では、第1低濃度拡散層領域111中に第2不純物をさらにドープして第1高濃度拡散層領域121を形成し、第2低濃度拡散層領域112中に第2不純物をさらにドープして第2高濃度拡散層領域122を形成する。この状態で、半導体基板20の表面を酸化して第1酸化膜131を形成しているため、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122が反応して生じた第1酸化膜131が厚くなる。この状態で、第1酸化膜131の不要部分を除去する工程を行うと、マスクM下の領域以外では、第1高濃度拡散層領域121および第2高濃度拡散層領域122が反応して生じた第1酸化膜131が残留する。マスクM下の領域以外でこの残留した第1酸化膜131が第1絶縁膜36となる。この第1絶縁膜36によって、第1シリサイド層35を形成する工程で、第1絶縁膜36の形成箇所のみシリサイド化反応が阻害される。このため、第1シリサイド層35は、ゲート絶縁膜33から離間した位置に形成される。
【0080】
なお、第1低濃度拡散層領域111および第2低濃度拡散層領域112中にドープされる第2不純物は、酸化膜中に吸収されにくい不純物であることが望ましい。これは、半導体基板と酸化膜との界面に存在する不純物が、酸化膜の形成に伴って減少しにくく、酸化膜増膜の効果が維持され易いためである。ヒ素(As)は、特に酸化膜に吸収されにくいため、他のリン(P)等の不純物と比較して酸化膜の増膜に適している。
【0081】
以上、実施形態について説明した。ただし、実施形態は上述した例に限定されない。
【0082】
実施形態では、半導体装置1が第1トランジスタ30と第2トランジスタ40とを備える場合について、説明したがこれに限られない。半導体装置1は、第1トランジスタ30を備えていれば、第2トランジスタ40を備えていなくてもよい。
【0083】
実施形態では、第1トランジスタ30がn型のトランジスタであり、第2トランジスタ40がp型のトランジスタである場合について説明したが、これに限られない。第1トランジスタ30がp型のトランジスタであり、第2トランジスタ40がn型のトランジスタであってもよい。
【0084】
実施形態では、第1拡散層領域がソース領域31であり、第2拡散層領域がドレイン領域32である場合について説明したがこれに限られない。第1拡散層領域がドレイン領域であり、第2拡散層領域がソース領域であってもよい。同様に、第3拡散層領域がソース領域41であり、第4拡散層領域がドレイン領域42である場合について説明したがこれに限られない。第3拡散層領域がドレイン領域であり、第4拡散層領域がソース領域であってもよい。
【0085】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、半導体装置は、基板と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、を備える。第1トランジスタは、第1拡散層領域および第2拡散層領域と、第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1シリサイド層とを有する。第1シリサイド層は、第1拡散層領域上および第2拡散層領域上に設けられている。第2トランジスタは、第3拡散層領域および第4拡散層領域と、第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート電極と、第2シリサイド層とを有する。第2シリサイド層は、第3拡散層領域上および第4拡散層領域上に設けられている。第1シリサイド層は、第1ゲート絶縁膜から離れて設けられている。第1シリサイド層と第1ゲート絶縁膜との間の第1距離は、第2シリサイド層と第2ゲート絶縁膜との間の第2距離よりも大きい。このような構成によれば、電気的特性の向上を図ることができる。
【0086】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…半導体装置、20…半導体基板(基板)、30…第1トランジスタ、31…ソース領域(第1拡散層領域)、32…ドレイン領域(第2拡散層領域)、33…ゲート絶縁膜(第1ゲート絶縁膜)、34…ゲート電極(第1ゲート電極)、35…第1シリサイド層、36…第1絶縁膜、40…第2トランジスタ、41…ソース領域(第3拡散層領域)、42…ドレイン領域(第4拡散層領域)、43…ゲート絶縁膜(第2ゲート絶縁膜)、44…ゲート電極(第2ゲート電極)、45…第2シリサイド層、111…第1低濃度拡散層領域、112…第2低濃度拡散層領域、121…第1高濃度拡散層領域、122…第2高濃度拡散層領域、131…第1酸化膜、131a…第1部分、131b…第2部分、131c…第3部分、M…マスク