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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042767
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20240322BHJP
   B23B 31/107 20060101ALI20240322BHJP
   B25D 17/08 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
B25B21/00 Q
B23B31/107 B
B25D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147562
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】中澤 茉奈美
(72)【発明者】
【氏名】村上 卓宏
【テーマコード(参考)】
2D058
3C032
【Fターム(参考)】
2D058BA08
3C032BB11
3C032BB22
(57)【要約】
【課題】耐久性の良好な工具保持装置を備えた作業機を提供する。
【解決手段】作業機1の工具保持装置は、ビット70の挿入過程において、エラストマ50の弾性変形により金属球39がビット挿入穴37の径方向外側に退避することを許容し、かつエラストマ50の弾性変形の復元力により金属球39をビット70の溝部72に係合させる構成であって、エラストマ50がガイドスリーブ40によって支持される構成である。エラストマ50は、ガイドスリーブ40が後方位置にあり金属球39が後方位置にあるときに、アンビル33の径方向において金属球39の外側に位置し、後方位置にある金属球39が前記径方向における外側に移動すると弾性変形する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータによって回転される工具保持装置と、
を有する作業機であって、
前記工具保持装置は、
前後方向に延びるツールホルダであって、前方から後方に向かってビットを挿入可能な挿入穴と、前記ビットと係合可能な係合部材を前方位置と後方位置の間で移動可能に支持する長孔と、を有するツールホルダと、
前記ツールホルダの外周において前方位置と後方位置の間で移動可能なガイドスリーブであって、前記ガイドスリーブが後方位置にあり前記係合部材が前方位置にあるときに、前記ツールホルダの径方向において前記係合部材の外側に位置して前記係合部材の前記径方向における外側への移動を規制する規制部を有するガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブが後方位置にあり前記係合部材が前記後方位置にあるときに、前記径方向において前記係合部材の外側に位置する弾性部材であって、前記後方位置にある前記係合部材が前記径方向における外側に移動すると弾性変形する弾性部材と、
を有し、
前記弾性部材は、前記ガイドスリーブによって支持されている、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記弾性部材は、前記ガイドスリーブに固定され又は前記ガイドスリーブと一体に設けられたエラストマである、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機であって、
前記エラストマは前記ガイドスリーブの内周部と外周部に一体的に設けられている、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機であって、
前記工具保持装置は、前記エラストマの内周部に設けられた保護部材であって前記エラストマより高い強度を備えた保護部材を有する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機であって、
前記弾性部材は、弾性リングであって、内径が前記ツールホルダのうち前記弾性リングの内側に位置する部分の外径よりも大きく、前記ガイドスリーブに拡径可能に支持されている、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】

請求項1に記載の作業機であって、
前記ガイドスリーブが後方位置にあり前記係合部材が前方位置にあるときに、前後方向において前記係合部材の重心と前記規制部の存在範囲とがオーバーラップする、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機であって、
前記挿入穴にビットを挿入する際に必要な最大荷重が10N以下である、
ことを特徴とする作業機。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機であって、
前記弾性部材は、コイルスプリングである、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の図10-16には、インパクトドライバにおける工具保持装置であって、ツールスリーブを操作することなくビットを装着可能な工具保持装置を開示する。この工具保持装置は、ビットを挿入可能なツールホルダと、ツールホルダの長孔に移動可能に設けられた係合部材であってビットをツールホルダに挿入すると径方向外側に移動する係合部材と、係合部材が径方向外側に移動すると拡径するリング状の弾性部材と、を備える。ツールホルダの外周には長孔と交わる溝が全周に亘って形成され、この溝に弾性部材が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-218412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、次の課題を見出した。すなわち、特許文献1の工具保持装置では、リング状の弾性部材がツールホルダの溝に嵌まってツールホルダに支持され、ビットの挿入の度にツールホルダ及び長孔の開口縁部と摺動するため、摩耗しやすい。このため、工具保持装置として耐久性が低くなる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、耐久性の良好な工具保持装置を備えた作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
前記モータによって回転される工具保持装置と、
を有する作業機であって、
前記工具保持装置は、
前後方向に延びるツールホルダであって、前方から後方に向かってビットを挿入可能な挿入穴と、前記ビットと係合可能な係合部材を前方位置と後方位置の間で移動可能に支持する長孔と、を有するツールホルダと、
前記ツールホルダの外周において前方位置と後方位置の間で移動可能なガイドスリーブであって、前記ガイドスリーブが後方位置にあり前記係合部材が前方位置にあるときに、前記ツールホルダの径方向において前記係合部材の外側に位置して前記係合部材の前記径方向における外側への移動を規制する規制部を有するガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブが後方位置にあり前記係合部材が前記後方位置にあるときに、前記径方向において前記係合部材の外側に位置する弾性部材であって、前記後方位置にある前記係合部材が前記径方向における外側に移動すると弾性変形する弾性部材と、
を有し、
前記弾性部材は、前記ガイドスリーブによって支持されている。
【0007】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐久性の良好な工具保持装置を備えた作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る作業機1の側断面図。
図2】(A)は、作業機1の工具保持装置の側断面図。(B)は、図2(A)のガイドスリーブ40の斜視図。
図3】作業機1の工具保持装置にビット70を挿入する途中の断面図。
図4】作業機1の工具保持装置にビット70を挿入した状態の断面図。
図5】作業機1の工具保持装置からビット70を引き抜く途中の断面図。
図6】(A)は、本発明の実施の形態2の作業機の工具保持装置の側断面図。(B)は、図6(A)のエラストマ50とその内周面に設けられた金属部材51の斜視図。
図7】(A)は、本発明の実施の形態3の作業機の工具保持装置の側断面図。(B)は、図7(A)のコイルスプリング58の斜視図。
図8】(A)は、本発明の実施の形態4の作業機の工具保持装置の側断面図。(B)は、図8(A)のセットリング59の斜視図。
図9】(A)は、本発明の実施の形態5の作業機の工具保持装置の側断面図。(B)は、本発明の実施の形態6の作業機の工具保持装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1図5は、本発明の実施の形態1に係る作業機1に関する。作業機1は、インパクトドライバである。図1により、作業機1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。前後方向は、モータ軸21と平行な方向である。
【0011】
作業機1は、ハウジング10を有する。ハウジング10は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体である。ハウジング10は、モータ収容部11、ハンドル部12、及び電池パック装着部13を含む。
【0012】
モータ収容部11は、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。ハンドル部12は、上端がモータ収容部11の前後方向の中間部に接続されて前記中間部から下方に延びる。電池パック装着部13は、ハンドル部12の下端に設けられ、電池パック17を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック17の電力で動作する。
【0013】
作業機1は、モータ収容部11の後側の開口に接続されて当該開口を覆うテールカバー14を有する。テールカバー14は、ねじ止め等によりモータ収容部11に固定される。
【0014】
作業機1は、モータ収容部11の前部に接続されたハンマケース18を有する。ハンマケース18は、例えば金属製、例えばアルミ製であり、モータ収容部11に保持されてモータ収容部11から前方に延びる。
【0015】
作業機1は、ハンドル部12の上端部に、ユーザがモータ20の駆動、停止を切り替えるためのトリガスイッチ15を有する。作業機1は、モータ収容部11とハンドル部12との境界部付近に、ユーザがモータ20の正転、逆転を切り替えるための正逆切替スイッチ16を有する。作業機1は、電池パック装着部13内に第1制御基板35を有する。第1制御基板35は、モータ20の駆動を制御するマイコン等の制御部を搭載する。
【0016】
作業機1は、モータ収容部11及びハンマケース18の内側に、モータ20、減速機構28、スピンドル29、回転打撃機構30、ファン34、第2制御基板36を有する。
【0017】
モータ20は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、前後方向と平行なモータ軸21を有する。
【0018】
ファン34は、モータ20のうちモータ軸21を除く部分(以下「モータ本体」)の後方においてモータ軸21に取り付けられ、モータ軸21と一体に回転し、モータ20等を冷却する冷却風を発生する。
【0019】
第2制御基板36は、モータ本体の前方に設けられる。第2制御基板36は、モータ20の回転位置を検出するためのホールIC等の磁気センサや、ステータコイル24に駆動電流を供給するためのスイッチング素子(インバータ回路)を搭載する。
【0020】
減速機構28は、モータ20の回転を減速してスピンドル29に伝達する。スピンドル29は、回転打撃機構30を駆動する。回転打撃機構30は、作業機1の出力部であってモータ20により駆動される。
【0021】
回転打撃機構30は、スプリング31、ハンマ32、アンビル33を含む。ハンマ32は、スピンドル29とカム係合し、かつスプリング31によって前方に付勢される。スピンドル29によって駆動されるハンマ32がアンビル33を回転打撃する。アンビル33は、前端部にビット挿入穴37を有する。ビット挿入穴37は、前方に開口し、図3図5に示すビット70等の先端工具を保持する。
【0022】
作業機1は、ビット70等の先端工具を保持する工具保持装置に特徴を有する。
【0023】
図2(A)に示すように、作業機1の工具保持装置は、ツールホルダとしてのアンビル33、係合部材としての金属球39、ガイドスリーブ40、バネ43、弾性部材としてのエラストマ50を有する。
【0024】
アンビル33は、前後方向に延びる金属体であり、ビット挿入穴37に対して前方から後方に向かってビット70を挿入可能に構成される。アンビル33は、ビット挿入穴37の側周部の上部と下部にそれぞれ長孔38を有する。長孔38は、ビット70の溝部72と係合可能な金属球39を前方位置と後方位置の間で移動可能に支持(収容)する。溝部72は、例えば円弧状に湾曲した断面形状を有し、ビット70の外周面を一周する
【0025】
金属球39は、アンビル33の径方向において最も内側に位置するときは、長孔38の開口であってアンビル33の径方向における内側の開口から所定長だけ突出し、部分的にビット挿入穴37の内側に延在する。
【0026】
ガイドスリーブ40は、略円筒状に形成された金属であり、アンビル33の前端部(筒部)の外周部を覆うようにアンビル33に取り付けられる。ガイドスリーブ40は、アンビル33の外周において前方位置と後方位置の間で移動可能である。ガイドスリーブ40の後端部がアンビル33の外周部の段差部46(図5)と当接(係合)することで、ガイドスリーブ40の後端位置が定められる。
【0027】
ガイドスリーブ40は、溝部41と、規制部としての凸部42と、を有する。
【0028】
溝部41は、ガイドスリーブ40の後部内周面を周方向に一周する凹部(凹条部)である。溝部41内に後述のエラストマ50が設けられる。溝部41は、図2(A)に示すようにガイドスリーブ40が後方位置にあるとき、長孔38の後部と対面する。溝部41は、図5に示すようにガイドスリーブ40が前方位置にあるとき、長孔38の前部と対面する。
【0029】
凸部42は、ガイドスリーブ40の後部内周面を周方向に一周する凸条部である。凸部42は、溝部41の前壁部を成し、ガイドスリーブ40の内周面から径方向内側に突出する突出部である。凸部42は、図2(A)に示すようにガイドスリーブ40が後方位置にあり金属球39が前方位置にあるとき、溝部41の前方において長孔38と対面すると共に、アンビル33の径方向において金属球39の外側に位置して金属球39の前記径方向における外側への移動を規制する。図2(A)の状態のとき、前後方向において金属球39の重心と凸部42の存在範囲がオーバーラップする。凸部42は、図5に示すようにガイドスリーブ40が前方位置にあるとき、長孔38より前方に位置して長孔38と対面せず、金属球39の前記径方向における外側への移動を規制しない。
【0030】
バネ43は、中心軸方向がアンビル33の中心軸方向、すなわち前後方向と平行な圧縮コイルバネである。バネ43は、ガイドスリーブ40をアンビル33に対して後方に付勢、すなわちガイドスリーブ40を後方位置に向けて付勢する。バネ43は、ガイドスリーブ40の内周面とアンビル33の外周面との間に設けられる。バネ43の後端は、ガイドスリーブ40の凸部42に支持される。バネ43の前端は、アンビル33の前端部に設けられたバネ受け部材44に支持される。バネ43は、凸部42及びバネ受け部材44により前後方向に圧縮される。バネ受け部材44は、アンビル33の前端部に設けられた止め輪45により、アンビル33に対する前方への移動が規制されている。これにより、バネ43およびバネ受け部材44はアンビル33から脱落しないよう構成されている。
【0031】
エラストマ50は、リング状ないし円筒状の例えばゴムであり、ガイドスリーブ40の溝部41内に例えば一体成形により設けられる。エラストマ50は、ガイドスリーブ40の溝部41の内面に例えば接着等により固定されてもよい。エラストマ50は、図3に示すようにガイドスリーブ40が後方位置にあり金属球39が後方位置にあるときに、アンビル33の径方向において金属球39の外側に位置し、後方位置にある金属球39が前記径方向における外側に移動すると弾性変形する。
【0032】
ビット挿入穴37にビット70を挿入する際、金属球39は、ビット70の後端部の傾斜形状部(テーパー形状部)に押され、図3に示すように長孔38の後部、すなわち後方位置へ移動する。これにより金属球39は、凸部42よりも後方に位置してエラストマ50と対面し、アンビル33の径方向において外側に移動可能となる。
【0033】
更にビット70を挿入していくと、金属球39は、ビット70の後端部の傾斜形状部(テーパー形状部)に沿って、アンビル33の径方向において外側に押され、エラストマ50を弾性変形させながら、図3に示すようにアンビル33の径方向において外側に移動し、図3に示すようにビット70の更なる挿入を妨げない位置関係となる。
【0034】
更にビット70を挿入していくと、ビット70の溝部72が前後方向において長孔38と重なる位置となり、溝部72と長孔38が対面する。すると金属球39は、エラストマ50の反発力を受け、溝部72の表面形状に沿って、図4に示すようにアンビル33の径方向において内側に移動する。
【0035】
図4の状態において金属球39は、ビット70の溝部72及びガイドスリーブ40の凸部42と係合し、ビット70をロックする。図4の状態からビット70を前方に引き抜こうとすると、金属球39は、溝部72の表面形状に沿ってアンビル33の径方向において外側に移動しようとするが、凸部42によって外側への移動が規制される。よって金属球39はビット70の溝部72に引っ掛かる。このためガイドスリーブ40を操作しない限り、ビット70は図4の状態から前方に抜けない。
【0036】
ビット70を引き抜く際には、まずガイドスリーブ40を前方に引っ張り、前方位置に移動させる。すると、ガイドスリーブ40の凸部42が金属球39よりも前方に移動し、エラストマ50が金属球39と対面した状態となる。この状態でビット70を前方に引っ張ると、金属球39は、溝部72の表面形状に沿って、エラストマ50を弾性変形させながらアンビル33の径方向において外側に移動し、図5に示すようにビット70の更なる引抜を妨げない位置関係となる。更にビット70を前方に引っ張れば、ビット70をビット挿入穴37から取り外せる。
【0037】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0038】
(1) 作業機1の工具保持装置は、図2(A)、図3図4に示すビット70の挿入過程において、エラストマ50の弾性変形により金属球39がビット挿入穴37の径方向外側に退避することを許容し、かつエラストマ50の弾性変形の復元力により金属球39をビット70の溝部72に係合させる構成であって、エラストマ50がガイドスリーブ40によって支持される構成である。よって、エラストマ50がアンビル33の外周に設けられる場合と異なり、エラストマ50が長孔38の開口縁部と接触しない構成となる。このため、エラストマ50の摩耗が抑制され、工具保持装置として耐久性が高められる。長孔38の開口縁部は、角張っていたり、カエリ(バリ)があったりして、エラストマ50が接触したり摺動したりするとエラストマ50を急激に摩耗させる。本実施の形態はこのようなエラストマ50の摩耗を好適に抑制するものである。
【0039】
(2) エラストマ50の材質や厚さ、溝部41の深さ等の組合せにより、ビット70の挿入に必要な荷重を任意に設定でき、ビット70の挿入作業性を高めやすい。エラストマ50をアンビル33の外周に設ける構成の場合、上述した摩耗の問題から、エラストマ50と比較的剛性が高く厚いものを採用せざるを得ず、ビット70の挿入に必要な荷重を小さめに設定することが難しい。本実施の形態はそのような問題を好適に解決するものである。本実施の形態によれば、ビット挿入穴37にビット70を挿入する際に必要な最大挿入荷重を例えば10N以下にでき、ビット70の挿入作業性が良い。
【0040】
(3) 弾性体50はガイドスリーブ40と一体成形でき、そうすることで工具保持装置の組立工数の増加を抑制できる。
【0041】
(実施の形態2)
図6(A)は、本発明の実施の形態2の作業機の工具保持装置の側断面図である。本実施の形態は、実施の形態1のエラストマ50の内周面に、エラストマ50より高い強度(耐久性)を備えた保護部材としての金属部材51を設けたものである。金属部材51は、例えば、C型ないしO型の金属板、あるいは金属テープである。図6(B)の例では、金属部材51は、半周分ずつ2つに分かれ、周方向に2箇所の隙間52があるようにエラストマ50の内周面に設けられる。本実施の形態によれば、金属部材51が金属球39とエラストマ50との間に介在し、エラストマ50と金属球39との直接接触が抑制されるため、エラストマ50の摩耗を一層抑制できる。
【0042】
(実施の形態3)
図7(A)は、本発明の実施の形態3の作業機の工具保持装置の側断面図である。本実施の形態は、実施の形態1のエラストマ50に替えてコイルスプリング58を弾性部材としたものである。コイルスプリング58は、外力が無い状態で図7(B)に示すように所定の外径、内径を有し、弾性的に拡径、縮径できる弾性リングである。
【0043】
外力が無い状態でのコイルスプリング58の外径は、溝部41の前後におけるガイドスリーブ40の内径よりも大きく、溝部41の位置におけるガイドスリーブ40の内径よりも小さい。コイルスプリング58は、弾性的に縮径させた状態でガイドスリーブ40の内周側に入れ込んで溝部41の位置にセットされ、自然径(外力が無いときの径)の状態で溝部41内に支持される。コイルスプリング58の内周部が金属球39に押されると、コイルスプリング58が溝部41内で弾性的に拡径される。
【0044】
外力が無い状態でのコイルスプリング58の内径は、アンビル33のうちコイルスプリング58の内周部と対向する部分の外径よりも大きいとよい。これによりコイルスプリング58の内周部が長孔38の開口縁部に接触することを抑制し、コイルスプリング58の摩耗を抑制できる。
【0045】
(実施の形態4)
図8(A)は、本発明の実施の形態4の作業機の工具保持装置の側断面図である。本実施の形態は、実施の形態1のエラストマ50に替えて金属製のセットリング59を弾性部材としたものである。図8(B)に示すように、セットリング59は、切欠60を有し、切欠60の長さが変わることで弾性的に拡径、縮径できる弾性リングである。
【0046】
外力が無い状態でのセットリング59の外径は、溝部41の前後におけるガイドスリーブ40の内径よりも大きく、溝部41の位置におけるガイドスリーブ40の内径よりも小さい。セットリング59は、弾性的に縮径させた状態でガイドスリーブ40の内周側に入れ込んで溝部41の位置にセットされ、自然径の状態で溝部41内に支持される。セットリング59の内周部が金属球39に押されると、セットリング59が溝部41内で弾性的に拡径される。
【0047】
外力が無い状態でのセットリング59の内径は、アンビル33のうちセットリング59の内周部と対向する部分の外径よりも大きいとよい。これによりセットリング59の内周部が長孔38の開口縁部に接触することを抑制し、セットリング59の摩耗を抑制できる。
【0048】
(実施の形態5)
図9(A)は、本発明の実施の形態5の作業機の工具保持装置の側断面図である。本実施の形態は、実施の形態1のエラストマ50に替えてOリング61を弾性部材としたものである。複数のOリング61を溝部41内で前後に並べることで、エラストマ50と同等の機能を実現できる。
【0049】
(実施の形態6)
図9(B)は、本発明の実施の形態6の作業機の工具保持装置の側断面図である。本実施の形態は、実施の形態1の構成においてガイドスリーブ40の外周部にエラストマ56を追加したものである。エラストマ56は、エラストマ50と共に、ガイドスリーブ40と一体成形できるため、組み立て工数が増加することがない。エラストマ56は滑り止めとして機能し、例えば軍手をした作業者にとってもガイドスリーブ40を操作しやすくなる。
【0050】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
ガイドスリーブ40は、樹脂成形体としてもよい。これによれば、エラストマの一体成形が容易となる。この場合において、ガイドスリーブ40のうち金属球39との係合による摩耗が懸念される箇所、例えば凸部42を複合成型により金属にしてもよい。長孔38の位置は、ビット挿入穴37の側周部の左部と右部に変更してもよい。長孔38及び金属球39の個数は1つにしてもよい。本発明は、インパクトドライバに限定されず、ビット等の先端工具を保持する任意の作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…作業機、10…ハウジング、11…モータ収容部、12…ハンドル部、13…電池パック装着部、14…テールカバー、15…トリガスイッチ、16…正逆切替スイッチ、17…電池パック、18…ハンマケース、20…モータ、21…モータ軸、28…減速機構、29…スピンドル、30…回転打撃機構、31…スプリング、32…ハンマ、33…アンビル(ツールホルダ)、34…ファン、35…第1制御基板、36…第2制御基板、37…ビット挿入穴、38…長孔、39…金属球(係合部材)、40…ガイドスリーブ、41…溝部(凹部)、42…凸部(規制部)、43…バネ、44…バネ受け部材、45…止め輪、50…エラストマ(弾性部材)、51…金属テープ(保護部材)、52…隙間、56…エラストマ、58…コイルスプリング(弾性リング)、59…セットリング(弾性リング)、60…切欠、61…Oリング(弾性部材)、70…ビット(先端工具)、72…溝部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9