(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042781
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】パネル型スピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/40 20060101AFI20240322BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20240322BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H04R1/40 310
H04R1/32 310A
H04R7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147606
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白戸 博紀
【テーマコード(参考)】
5D016
5D018
【Fターム(参考)】
5D016AA04
5D018AF01
5D018AF21
(57)【要約】
【課題】複数のアクチュエータによって加振されたパネルの各領域から放音される音同士の干渉を抑制する技術を提供する。
【解決手段】パネルスピーカが、単一のパネルと、前記パネルの後面に接続され、入力信号に応じて振動し、当該振動を前記パネルに伝えることにより、前記パネルの前面から放音させる複数のアクチュエータと、を備え、前記複数のアクチュエータから前記パネルに振動が伝達される際の、振動方向の軸が、前記パネルの法線方向となす角が個々のアクチュエータごとに互いに異なるように、前記パネルと接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のパネルと、
前記パネルの後面に接続され、入力信号に応じて振動し、当該振動を前記パネルに伝えることにより、前記パネルの前面から放音させる複数のアクチュエータと、
を備え、
前記複数のアクチュエータから前記パネルに振動が伝達される際の、振動方向の軸が、前記パネルの法線方向となす角が個々のアクチュエータごとに互いに異なるように、前記パネルと接続されている、
パネルスピーカ。
【請求項2】
前記パネルと、前記複数のアクチュエータとを接続する複数の接続部材を備え、
前記複数のアクチュエータから前記複数の接続部材に振動が伝達される際の、振動方向の軸が、個々のアクチュエータごとに前記パネルの法線方向となす角を互いに異ならせるように、前記接続部材に接続されている、
請求項1に記載のパネルスピーカ。
【請求項3】
前記複数の接続部材は、前記複数のアクチュエータと接続する接続面を有し、前記接続面の法線方向と前記パネルの法線方向とのなす角が、個々の接続部材ごとに互いに異なる、請求項1又は2に記載のパネルスピーカ。
【請求項4】
前記複数のアクチュエータは、前記パネルの平面視左右方向における、中央より右側の領域と、中央より左側の領域に、それぞれ接続される一対のアクチュエータを含み、
前記一対のアクチュエータは、前記パネルの前面側に位置し前記パネルの表面と平行な仮想的な平面と前記一対のアクチュエータのそれぞれの振動方向の軸とが交わる、二つの交点の間の距離が、前記パネルの表面と前記仮想的な平面との間の距離が増加するほど、前記パネルの平面視左右方向に離れるように単調に増加するように、前記パネルに接続されている、
請求項1に記載のパネルスピーカ。
【請求項5】
前記一対のアクチュエータは、前記パネルを、平面視における、中央より右側の領域と中央より左側の領域に分割する中心線に対して対称位置に接続されている、
請求項4に記載のパネルスピーカ。
【請求項6】
前記一対のアクチュエータには、ステレオの入力信号のうち、左チャネル用の信号と、右チャネル用の信号がそれぞれ入力される請求項4または5に記載のパネルスピーカ。
【請求項7】
前面が前記パネルに接着され、後面に前記複数のアクチュエータが接続される接続プレートを備え、
前記接続プレートの後面は、前記パネルの平面視左右方向における中央から両端に向かうにつれ、前記パネルの前面側から後面側へ向かう方向に曲がっている請求項1に記載のパネルスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネルを振動させて音響を発生させる形態のパネルスピーカが提案されている。例えば、特許文献1では、映像を表示するように構成される表示パネルと、複数の音響出力領域内の、表示パネルを直接振動させて音響を発生させる複数の音響発生アクチュエータと、複数の音響出力領域の少なくとも1つを囲む隔壁部を有する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一枚のパネルに対して複数のアクチュエータを設けたパネルスピーカにおいて、各アクチュエータへステレオの左チャネル用信号と右チャネル用信号のように位相の異なる信号を入力した場合、パネルから出力される音が互いのチャネルで干渉して減衰してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、複数のアクチュエータによって加振されたパネルの各領域から放音される音同士の干渉を抑制する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のパネルスピーカは、
単一のパネルと、
前記パネルの後面に接続され、入力信号に応じて振動し、当該振動を前記パネルに伝えることにより、前記パネルの前面から放音させる複数のアクチュエータと、
を備え、
前記複数のアクチュエータから前記パネルに振動が伝達される際の、振動方向の軸が、前記パネルの法線方向となす角が個々のアクチュエータごとに互いに異なるように、前記パネルと接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のアクチュエータによって加振されたパネルの各領域から放音される音同士の干渉を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ディスプレイスピーカを上方から見下ろした断面図である。
【
図2】
図2は、ディスプレイスピーカを後面側から見た図である。
【
図3】
図3は、ディスプレイスピーカを側方から見た図である。
【
図4】
図4は、ディスプレイスピーカのアクチュエータ付近を示す分解図である。
【
図5】
図5は、複数の振動アクチュエータの振動方向と音出力の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例としてのディスプレイスピーカにおける振動アクチュエータの振動方向と音出力の関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、第二実施形態に係るディスプレイスピーカの構成を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、第二実施形態における振動伝達部の別例を示す図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係るディスプレイスピーカの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0010】
ここでは、アクチュエータによってパネルを振動させて、当該パネルから音波を出力させるパネルスピーカについて説明する。以下の実施形態では、主にアクチュエータが、ディスプレイパネルを振動させることにより、ディスプレイパネルから音波を出力(放出)させ、ディスプレイスピーカとして機能させる例について説明する。
【0011】
〈第一実施形態〉
図1~
図4は本実施形態のディスプレイスピーカ10の構成例を示す図である。
図1は、ディスプレイスピーカ10を上方から見下ろした断面図、
図2は、ディスプレイスピーカ10を後面側から見た図、
図3は、ディスプレイスピーカ10を左側方から見た図、
図4は、振動伝達部200、アクチュエータ300、及び係合部400を示す分解図である。ディスプレイスピーカ10は、ディスプレイパネル100、振動伝達部200、振動アクチュエータ300、係合部400を含む。ここで、
図1の右から左の方向をx方向、
図1の紙面の裏面から表面の方向をy方向、
図1の下から上の方向(振動アクチュエータ300からディスプレイパネル100の方向)をz方向とする。ディスプレイスピーカ10と、x方向、y方向、z方向との位置関係は、他の図においても同様である。なお、この方向は、説明の便宜上示すものであり、この方向に限定されるものではない。例えば、ディスプレイスピーカ10の姿勢が、この方向に限定されるものではない。たとえばディスプレイスピーカ10を搭載した製品は、
図1における左右方向(x方向)が上下方向(地面に対して垂直方向)になるように設置されまたは使用されることがあり得る。ディスプレイパネル100は、パネルの一例である。ディスプレイスピーカは、パネルスピーカの一例である。振動アクチュエータ300は、アクチュエータの一例である。
【0012】
ディスプレイパネル100は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等などの表示素子であり、映像信号が入力された場合に映像を表示出力する。ディスプレイパネル100は、概ね平板状で、映像の表示面(前面)とは反対側の面(後面)に、アクチュエータ300が振動伝達部200を介して接続されている。ディスプレイパネル100は、振動アクチュエータ300によって加振されるパネルの一例である。
【0013】
振動伝達部200は、一端がディスプレイパネル100に接続され、他端が振動アクチュエータ300に接続される柱状の部材であり、振動アクチュエータ300の振動をディスプレイパネル100に伝達する。振動伝達部200は、ディスプレイパネル100の法線に対して傾きを有するように、ディスプレイパネル100の後面101に立設されている。また、振動伝達部200は、自由端側にネジ受け部210(被締結部)が設けられている。振動伝達部200は、例えば長手軸方向と直交する断面が円形の円柱状であるが、これに限らず、断面が四角形や多角形の角柱状や、断面が楕円形の楕円柱状であってもよい。振動伝達部200の材料は、特段限定されるものではないが、例えば、樹脂、金属、セラミックなどであってもよい。
【0014】
振動伝達部200は、ディスプレイパネル100の後面101と一体に形成されても、後面101と別体に形成されて接着、溶接、ロウ付け等によってディスプレイパネル10
0の後面101に接続されてもよい。
【0015】
本実施形態の振動アクチュエータ300は、ステレオの入力信号(以下、音響信号とも称す)のうち、左チャネル用の音響信号が入力される左用アクチュエータ30Lと、右チャネル用の音響信号が入力される右用アクチュエータ30R、即ち一対のアクチュエータを有している。これら左用アクチュエータ30Lと右用アクチュエータ30Rとは、ディスプレイパネル100の平面視左右方向における中心線10Cに対して対称に配置される。また、左用アクチュエータ30Lと右用アクチュエータ30Rとは、左右対称に構成されているため、共通の構成については、左右の区別なく振動アクチュエータ300の構成として説明する。振動アクチュエータ300は、振動板310、振動板310のディスプレイパネル側の面(第1面とする)に貼り付けられる圧電素子320、振動板310の第1面と反対側の面(第2面とする)に貼り付けられる圧電素子330を含む。振動アクチュエータ300の振動板310は、振動伝達部200を介して、ディスプレイパネル100に結合される。
【0016】
なお、左用アクチュエータ30Lと右用アクチュエータ30Rとは、ディスプレイパネル100の平面視左右方向における中心線10Cに対して厳密に対称に配置されていなくてもよく、概ね中心線10Cの左側の領域と右側の領域に分かれて配置されていてもよい。また、中心線10Cの左側の領域と右側の領域にそれぞれ2個以上の左用アクチュエータ30Lや右用アクチュエータ30Rが配置されていてもよく、また、左用アクチュエータ30Lにも右用アクチュエータ30Rにも属さない振動アクチュエータが配置されていてもよい。例えば、ディスプレイパネル100の平面視左右方向(および/または上下方向)における中央部分に図示しないセンター用アクチュエータが配置されていてもよい。
【0017】
振動アクチュエータ300の振動板310は、例えば長方形の平板状の部材であって、ディスプレイパネル側に配置される表面(第1面)と、その反対側の裏面(第2面)を有する。振動板310の形状は、円形や楕円形であってもよい。また、振動板310の形状は、他の形状であってもよいが、概ね平面視において上下左右が対称の形状が好ましい。振動板310の表面は、裏面にほぼ平行である。また、振動板310は、振動板310の表面が振動伝達部200の長軸方向と直交するように、即ちディスプレイパネル100の後面101に対して傾けて配置される。
【0018】
圧電素子320、330は、電圧を印加すると、電圧に応じて変形する圧電素子である。圧電素子320、330は、例えば、圧電効果を示すセラミックなどの板状の材料による素子である。圧電素子320、330には、電圧を印加するための電極が取り付けられる。左用アクチュエータ30Lの圧電素子320、330は、電極を介して左チャネル用の音響信号が入力され、右用アクチュエータ30Rは、電極を介して右チャネル用の音響信号が入力される。
【0019】
圧電素子320は、振動板310の第1面に貼り付けられる。圧電素子330は、振動板310の第2面に貼り付けられる。圧電素子320は、振動板310の中央部分が第1面側から見て露出するように、開口部を有する。圧電素子320は、中央部分に開口部を有する。振動板310は、圧電素子320の開口部により、振動板310の第1面の中央部分に露出する部分(露出部分)を有する。当該開口部に、振動伝達部200のアクチュエータ側当接面が接続される。このとき、圧電素子320と振動伝達部200とは接触しない。なお、圧電素子320、330の一方を省略した構成としてもよい。
【0020】
振動板310の形状が長方形である場合、振動板310の第1面(第2面)の中心は、長方形の2つの対角線の交点である。また、振動板310の形状が円形または楕円形である場合、振動板310の第1面(第2面)の中心は、円形または楕円形の中心である。振
動板310の形状が他の形状であっても、振動板310の第1面(第2面)の中心は、例えば重心などによって定義され得る。また、振動板310の中央付近には、係合部400を通すための貫通孔311が設けられている。
【0021】
係合部400は、雄ネジ部410と、頭部420とを有するボルト(締結部材)である。
図1の例では、1つの振動アクチュエータ300に対して1つの係合部400が用いられ、その雄ネジ部410が、振動板310の第2面側から貫通孔311を貫通し、振動伝達部200のネジ受け部210に対して螺入され、頭部420が振動板310の第2面に突き当たるまで締め込まれる。これにより、振動伝達部200と、振動アクチュエータ300と、係合部400とが締結される。即ち、振動アクチュエータ300が、係合部400によって振動伝達部200と接合される。
【0022】
なお、振動アクチュエータ300と、振動伝達部200とはボルトによって結合される以外にも、例えば接着や圧入によって接合されてもよい。また、アクチュエータ300の形状によっては振動伝達部200を省略してアクチュエータを直接ディスプレイパネル100に接合してもよい。
【0023】
図5は、複数の振動アクチュエータ300の振動方向と音出力の関係を示す図である。上述のように、本実施形態のディスプレイスピーカ10は、一枚のディスプレイパネル100に対して複数の振動アクチュエータ30L,30Rが接続され、且つ、個々の振動アクチュエータ30L,30Rがディスプレイパネル100の後面101に対して傾けて配置されている。この場合、各振動アクチュエータ30L,30Rは、音響信号が入力されると、それぞれ振動アクチュエータ30L,30Rの法線方向に振動する。具体的には、振動板310に沿って設けられた圧電素子320,330が振動板310の面内方向に伸縮するように振動することにより、振動板310にはその厚み方向の両側に交互に曲げようとする力が働き、結果として振動板310の面内方向に伝播するたわみ振動が発生する。このたわみ振動は振動アクチュエータ300と振動伝達部200との接合部分(すなわち、振動アクチュエータ300が、振動伝達部200を介してディスプレイパネル100を加振する加振点)が、振動アクチュエータ300(振動板310)の法線方向に変位する振動である。このため、各振動アクチュエータ30L,30Rの振動方向の軸(以下、振動軸とも称す)32Wは、ディスプレイパネル100の法線方向10Hに対して傾斜している。
【0024】
なお、ここでいう「振動方向の軸」とは、振動アクチュエータ300がディスプレイパネル100を加振する際に、加振点(典型的には振動アクチュエータ300と振動伝達部200との接合部分。振動伝達部200を省略する場合には振動アクチュエータ300とディスプレイパネル100の接合部分)が振動によって変位する際の、変位方向に平行な方向の仮想的な軸であって、実施形態においては概ね振動アクチュエータ300の振動板310の法線方向に平行な方向の軸である。
【0025】
また、振動アクチュエータとしては、実施形態のような圧電素子を用いた圧電型のアクチュエータのほかにも、ボイスコイル型(動電型)や、電歪素子、磁歪素子など他の振動素子を用いたものも使用可能であるが、その場合でも「振動方向の軸」とは、加振点、すなわちアクチュエータと振動伝達部(またはアクチュエータとディスプレイパネル)との接合部分が振動によって変位する際の、変位方向に平行な方向の仮想的な軸として定義可能である。
【0026】
例えば、
図5では、左用アクチュエータ30Lの振動軸32Wが、ディスプレイパネル100の法線方向10Hに対して時計回りに20°傾斜しているのに対し、右用アクチュエータ30Rの振動軸32Wが、ディスプレイパネル100の法線方向10Hに対して-
20°傾斜し、各振動アクチュエータ30L,30Rが互いに異なる角度で傾斜するように配置されている。特に、
図5の例では、左用アクチュエータ30Lにおける振動軸32Wと右用アクチュエータ30Rにおける振動軸32Wとの間隔が、ディスプレイパネル100の後側から前側にかけて左右へ開くように、各振動アクチュエータ30L,30Rが配置されている。換言すると、左用アクチュエータ30Lにおける振動軸32Wと右用アクチュエータ30Rにおける振動軸32Wは、音の出力方向に向けて左右へ開くように配置されている。より正確には、ディスプレイパネル100の前側(ディスプレイパネル100を前側から見る人にとって、自分とディスプレイパネル100との間)に、ディスプレイパネル100の表面と平行な仮想的な平面Sを置き、振動アクチュエータ30Lと30Rのそれぞれの振動軸と平面Sとが交わる交点を、それぞれ点XL、点XRとすると、平面Sとディスプレイパネル100の表面との距離が大きくなるにつれ(つまり平面Sがディスプレイパネル100を前面から見る人に近づくにつれ)平面S上における点XLと点XRとの距離が、左右に開くように単調に(途中で減少に転じるようなことがないように)に大きくなってゆくことを意味する。
【0027】
図6は、比較例としてのディスプレイスピーカ10Xにおける振動アクチュエータ300の振動方向と音出力の関係を示す図である。ディスプレイスピーカ10Xでは、複数の振動アクチュエータ30L,30Rの振動軸Wがディスプレイパネル100の法線方向10Hと平行となるように配置されている。このため、ディスプレイスピーカ10Xでは、左用アクチュエータ30Lが接続されたディスプレイパネル100の前面側の領域4Lから振動軸32Wを中心に破線で示すように左チャネルの音が放出される。また、右用アクチュエータ30Rが接続されたディスプレイパネル100の前面側の領域4Rから振動軸32Wを中心に二点鎖線で示すように右チャネルの音が放出される。この場合、破線と二点鎖線の重なる部分で、左右の音が干渉し、音圧が低下する、左右の音の分離(広がり)が悪くなる、音場感が低下するなどの問題が生じることがある。
【0028】
一方、
図5に示すように、本実施形態のディスプレイスピーカ10では、左用アクチュエータ30Lが接続されたディスプレイパネル100の前面側の領域5Lから振動軸32Wを中心に破線で示すように左チャネルの音が放出される。また、右用アクチュエータ30Rが接続されたディスプレイパネル100の前面側の領域5Rから振動軸32Wを中心に二点鎖線で示すように右チャネルの音が放出される。このように本実施形態のディスプレイスピーカ10では、振動アクチュエータ30L,30Rの振動軸Wが音の出力方向に向けて左右へ広がるように配置されており、破線と二点鎖線の重なる部分が、比較例より少ない。このため、本実施形態のディスプレイスピーカ10は、複数の振動アクチュエータ30L,30Rによって加振されたディスプレイスピーカ10パネルの各領域5L,5Rから放音される音同士の干渉を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態では、振動アクチュエータ300が、ステレオの入力信号のうち、左チャネル用の信号が入力される左用アクチュエータ30Lと、右チャネル用の信号が入力される右用アクチュエータ30Rとを含み、当該左用アクチュエータ30Lと右用アクチュエータ30Rとが、ディスプレイパネル100の平面視左右方向における中心線に対して対称に配置され、且つ、左用アクチュエータ30Lにおける振動方向の軸と右用アクチュエータ30Rにおける振動方向の軸との間隔が、ディスプレイパネル100の後側から前側にかけて左右へ開くように、左用アクチュエータ30L及び右用アクチュエータ30Rが配置されている。
【0030】
これにより、本実施形態のディスプレイスピーカ10は、左チャネルの音と右チャネルの音の干渉を抑制し、音圧の低下を抑制することや、左右の音の分離(広がり)を向上させること、音場感を向上させることができる。
【0031】
〈第二実施形態〉
図7Aは、第二実施形態に係るディスプレイスピーカ10Aの構成を示す図である。本実施形態は、前述の第一実施形態と比べて、振動伝達部200Aが楔状の接続部材250と軸状部260とを備えた構成が異なっている。なお、この他の構成は、前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0032】
軸状部260は、前端面261が接続部材250に接続され、後端面262が振動アクチュエータ300に接続される柱状の部材である。前端面261と後端面262は、互いに平行であり、軸状部260の軸方向に対して直交するように形成されている。軸状部260は、例えば長手軸方向と直交する断面が円形の円柱状であるが、これに限らず、断面が四角形や多角形の角柱状や、断面が楕円形の楕円柱状であってもよい。軸状部260の後端面262には、前述の第一実施形態と同様に、ネジ受け部210が設けられている。
【0033】
接続部材250は、ディスプレイパネル100の後面101と接する第一面251と、第一面251に対して傾斜した第二面252を有する楔状である。軸状部260は、前端面261が接続部材250の第二面(接続面)252に突き当てられた状態で接続される。
【0034】
接続部材250の第一面251とディスプレイパネル100の後面101との接続、及び接続部材250の第二面252と軸状部260の前端面261との接続は、例えば、接着、溶接、ロウ付け等によって行われる。また、接続部材250とディスプレイパネル100の後面101、又は接続部材250と軸状部260とは、一体に成形されてもよい。
【0035】
係合部400は、雄ネジ部410が、振動板310の第2面側から貫通孔311を貫通し、振動伝達部200Aのネジ受け部210に対して螺入され、頭部420が振動板310の第2面に突き当たるまで締め込まれる。これにより、振動伝達部200Aと、振動アクチュエータ300と、係合部400とが締結される。
【0036】
このように本実施形態のディスプレイスピーカ10Aでは、振動伝達部200Aの軸状部260が楔状または台形状の接続部材250を介して接続され、振動伝達部200Aの軸状部260がディスプレイパネル100に対して傾斜して設けられている。このため、軸状部260の後端面262に接続された振動アクチュエータ300もディスプレイパネル100に対して傾斜して設けられている。従って、複数のアクチュエータ30L,30Rにおける振動軸32Wが、ディスプレイパネル100の法線方向10Hに対して互いに異なる角度で傾斜するように配置されている。
【0037】
本実施形態では、ディスプレイパネル100の後面101と接続部材250の第一面251とを突き当て、接続部材250の第二面252と軸状部260の前端面261とを突き当てた状態で接続されるため、ディスプレイパネル100に対する軸状部260及び振動アクチュエータ300の角度が精度良く保たれ、歩留まりの向上や音響性能の向上を図ることができる。
【0038】
なお、本実施形態では
図7Aのように軸状部260で接続部材250の第二面と振動アクチュエータ300との間を接続しているが、
図7Bのように振動伝達部200Aの軸状部260を省略し、接続部材250の第二面252と振動アクチュエータ300とを直接接続してもよい。その場合は台形状の接続部材250自体が振動伝達部200Aとなる。
【0039】
〈第三実施形態〉
図8は、第三実施形態に係るディスプレイスピーカ10Bの構成を示す図である。本実施形態は、前述の第一実施形態と比べて、振動伝達部200Bが接続プレート270と軸
状部280とを備えた構成が異なっている。なお、この他の構成は、前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0040】
軸状部280は、前端面281が接続プレート270に接続され、後端面282が振動アクチュエータ300に接続される柱状の部材である。前端面281は、接続プレート270の後面に沿う形状であって、その法線が軸状部280の長軸方向となるように形成される。後端面282は、軸状部280の長軸方向に対して直交するように形成されている。軸状部280は、例えば長手軸方向と直交する断面が円形の円柱状であるが、これに限らず、断面が四角形や多角形の角柱状や、断面が楕円形の楕円柱状であってもよい。軸状部280の後端面282には、前述の第一実施形態と同様に、ネジ受け部210が設けられている。
【0041】
接続プレート270は、左右方向において湾曲した板状の部材であり、接着層290を介してディスプレイパネル100の後面101と接着される第一面271と、第一面271と反対側(後側)に位置する第二面272とを有する。ディスプレイパネル100の後面101が平面であるのに対し、接続プレート270は湾曲しているため、接続プレート270が、接着層290を介してディスプレイパネル100の後面101に接着される場合、平面視左右方向における中心部分27Cと比べて複数のアクチュエータ300が接続される接続部分27L、27Rにおける接着層290の厚さが厚くなるように構成される。ここで接続プレート270における接続部分27L、27Rの法線は、ディスプレイパネル100の法線に対して所定の傾斜を有するように形成される。
【0042】
なお、接着層290の厚さを中心部分27Cからの距離に応じて厚くする以外にも、接着層290の厚さを一定として、接続プレート270の厚さを中心部分27Cからの距離に応じて厚くしてもよい。要するに、接続プレート270における接続部分27L、27Rの法線がディスプレイパネル100の法線に対して所定の傾斜を有するように形成されていればよい。
【0043】
このように本実施形態のディスプレイスピーカ10Bでは、振動伝達部200Bの軸状部280が接続プレート270に接続され、振動伝達部200Bの軸状部280がディスプレイパネル100に対して傾斜して設けられている。このため、軸状部280の後端面282に接続された振動アクチュエータ300もディスプレイパネル100に対して傾斜して設けられている。これにより、複数のアクチュエータ30L,30Rにおける振動軸32Wが、ディスプレイパネル100の法線方向10Hに対して互いに異なる角度で傾斜するように配置されている。
【0044】
本実施形態では、接続プレート270の第二面272と軸状部280の前端面281とが突き当てた状態で接続されるため、ディスプレイパネル100に対する軸状部280及び振動アクチュエータ300の角度が精度良く保たれ、歩留まりの向上や音響性能の向上を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、一つのディスプレイパネル100に対して二つの振動アクチュエータ300を設けた例を示したが、これに限らず、振動アクチュエータ300は、三つ以上設けられてもよい。例えば、一つのディスプレイパネル100に対して複数の左用アクチュエータ30Lと複数の右用アクチュエータ30Rとを設けてもよい。
【0046】
また、前述の実施形態では、左用アクチュエータ30Lにおける振動軸32Wと右用ア
クチュエータ30Rにおける振動軸32Wとの間隔が、音の出力方向に向けて狭まるように各振動アクチュエータ300が配置されてもよい。この場合、各振動アクチュエータ300に同相の音響信号を入力することにより、各振動アクチュエータ300によって加振されたディスプレイパネル100の各領域から放音される音同士が抑制されるのではなく、強め合うことで、指向性の高い音出力を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B ディスプレイスピーカ
10X ディスプレイスピーカ(比較例)
27L、27R 接続部分
30L 左用アクチュエータ
30L 左用アクチュエータ
300(30L,30R) 振動アクチュエータ
32W 振動軸
100 ディスプレイパネル
101 後面
200,200A,200B 振動伝達部
210 ネジ受け部
250 接続部材
251 第一面
252 第二面
260 軸状部
261 前端面
262 後端面
270 接続プレート
271 第一面
272 第二面
280 軸状部
281 前端面
282 後端面
290 接着層
310 振動板
311 貫通孔
320,330 圧電素子
400 係合部
410 雄ネジ部
420 頭部