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特開2024-42782空気入りタイヤの製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042782
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/24 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
B29D30/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147607
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 天亮
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AM32
4F215AP06
4F215AP11
4F215AR12
4F215VA02
4F215VD03
4F215VD07
4F215VD10
4F215VK53
4F215VL11
4F215VQ07
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】ビード部を保持するチャックの離間距離を適切に算出して、成形時の不具合の発生を低減可能な空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】対のビード部を有する第1ケース体を生成し、ベルトを含む第2ケース体を生成し、第1ケース体と第2ケース体とが一体化した状態におけるビード部の内端からベルトの外端までのタイヤ径方向に沿った立ち上がり高さとビード部の内端からベルトの外端に向かう立ち上がり角度とに基づいて、ベルトの外端からビード部の内端までのタイヤ軸方向の第1距離を算出し、ベルトのタイヤ軸方向の両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ第1距離をベルトのタイヤ軸方向寸法に加算することで第2距離を算出し、第1ケース体を膨らませつつ、対のチャックが保持するビード部同士のタイヤ軸方向に沿った離間距離を第2距離に縮め、第1ケース体と第2ケース体とを一体化させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナー及びカーカスを含む複数のタイヤ部材をカーカスバンドドラムに巻き付けて対のビード部を有する筒状の第1ケース体を生成することと、
トレッドゴム及びベルトを含む複数のタイヤ部材をベルトドラムに巻き付けて筒状の第2ケース体を生成することと、
前記第1ケース体と前記第2ケース体とが一体化した状態における前記ビード部の内端から前記ベルトの外端までのタイヤ径方向に沿った立ち上がり高さと前記ビード部の内端から前記ベルトの外端に向かう立ち上がり角度とに基づいて、前記ベルトの外端から前記ビード部の内端までのタイヤ軸方向の第1距離を算出することと、
前記ベルトのタイヤ軸方向の両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ前記第1距離を前記ベルトのタイヤ軸方向寸法に加算することで第2距離を算出することと、
前記第1ケース体の前記対のビード部をそれぞれ対のチャックで保持した状態で、前記第1ケース体を膨らませつつ、前記対のチャックが保持するビード部同士のタイヤ軸方向に沿った離間距離を第2距離に縮め、前記第1ケース体と前記第2ケース体とを一体化させることと、
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記立ち上がり高さは、前記カーカスバンドドラム及び前記ベルトドラムの径差に基づき算出し、前記立ち上がり角度は、タイヤ加硫後のタイヤ断面高さに基づいて算出する、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記立ち上がり角度と前記タイヤ断面高さとを関連付けた複数のデータに基づき、指定されたタイヤ断面高さに対応する前記立ち上がり角度を特定し、特定した前記立ち上がり角度を用いて前記第1距離を算出する、請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記タイヤ断面高さが100mm未満に対して前記立ち上がり角度が85度であることが関連付けられ、前記タイヤ断面高さが100mm以上且つ120mm未満に対して前記立ち上がり角度が80度であることが関連付けられ、前記タイヤ断面高さが120mm以上且つ140mm以下に対して前記立ち上がり角度が75度であることが関連付けられている、請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
インナーライナー及びカーカスを含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて対のビード部を有する筒状の第1ケース体が生成されるカーカスバンドドラムと、
トレッドゴム及びベルトを含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて筒状の第2ケース体が生成されるベルトドラムと、を備え、
前記第1ケース体の前記対のビード部をそれぞれ対のチャックで保持した状態で、前記第1ケース体を膨らませつつ、前記対のチャックのタイヤ軸方向に沿った離間距離を第2距離に縮め、前記第1ケース体と前記第2ケース体とを一体化させるように構成されており、
前記第1ケース体と前記第2ケース体とが一体化した状態における前記ビード部の内端から前記ベルトの外端までのタイヤ径方向に沿った立ち上がり高さと前記ビード部の内端から前記ベルトの外端に向かう立ち上がり角度とに基づいて、前記ベルトの外端から前記ビード部の内端までのタイヤ軸方向の第1距離が算出され、
前記ベルトのタイヤ軸方向の両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ前記第1距離を前記ベルトのタイヤ軸方向寸法に加算することで前記第2距離が算出される、空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、カーカスなどの複数のタイヤ部材を成形した第1ケース体と、トレッドゴム及びベルトなどの複数のタイヤ部材を成形した第2ケース体と、を一体化して1つのグリーンタイヤ(生タイヤ)に成形し、その後、グリーンタイヤをモールド内にて加熱、加圧して加硫成形することにより製造されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-41666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示すように、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを1つのグリーンタイヤに成形する工程について説明する。第1ケース体T1のタイヤ径方向RDの外側に第2ケース体T2が位置している状態で、第1ケース体T1のビード部1が成形装置の対のチャック510に保持される。インフレート前のビード部1同士の離間距離が初期距離L3となる。次に、第1ケース体T1がインフレートされながら、ビード部1同士の離間距離が第2距離L2になるまで対のチャック510が近づき、第1ケース体T1と第2ケース体T2とが一体化される。この後、一体化された第1ケース体T1及び第2ケース体T2が対のチャック510で保持されている状態で、サイドウォールゴムが貼り付けられる場合がある。
【0005】
図9に示すように、第2距離L2は、第2距離L2を直径とする円の円周の半分の長さと初期距離L3とが一致するように決定されていた。そうすると、第2距離L2が、タイヤ軸方向ADに沿ったベルト6のタイヤ軸方向寸法L0よりも小さくなる場合がある。この場合、インフレートされた第1ケース体T1及び第2ケース体T2は踏ん張りがきかず、ふらつきやすく、一体化された第1ケース体T1のビード部1がチャック510から外れてしまい、成形工程が止まってしまう等の不具合が発生し得る。
【0006】
本開示は、ビード部を保持するチャックの離間距離を適切に算出して、成形時の不具合の発生を低減可能な空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の空気入りタイヤの製造方法は、インナーライナー及びカーカスを含む複数のタイヤ部材をカーカスバンドドラムに巻き付けて対のビード部を有する筒状の第1ケース体を生成することと、トレッドゴム及びベルトを含む複数のタイヤ部材をベルトドラムに巻き付けて筒状の第2ケース体を生成することと、前記第1ケース体と前記第2ケース体とが一体化した状態における前記ビード部の内端から前記ベルトの外端までのタイヤ径方向に沿った立ち上がり高さと前記ビード部の内端から前記ベルトの外端に向かう立ち上がり角度とに基づいて、前記ベルトの外端から前記ビード部の内端までのタイヤ軸方向の第1距離を算出することと、前記ベルトのタイヤ軸方向の両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ前記第1距離を前記ベルトのタイヤ軸方向寸法に加算することで第2距離を算出することと、前記第1ケース体の前記対のビード部をそれぞれ対のチャックで保持した状態で、前記第1ケース体を膨らませつつ、前記対のチャックが保持するビード部同士のタイヤ軸方向に沿った離間距離を第2距離に縮め、前記第1ケース体と前記第2ケース体とを一体化させることと、を含む。
【0008】
本開示の空気入りタイヤの製造装置は、インナーライナー及びカーカスを含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて対のビード部を有する筒状の第1ケース体が生成されるカーカスバンドドラムと、トレッドゴム及びベルトを含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて筒状の第2ケース体が生成されるベルトドラムと、を備え、前記第1ケース体の前記対のビード部をそれぞれ対のチャックで保持した状態で、前記第1ケース体を膨らませつつ、前記対のチャックのタイヤ軸方向に沿った離間距離を第2距離に縮め、前記第1ケース体と前記第2ケース体とを一体化させるように構成されており、前記第1ケース体と前記第2ケース体とが一体化した状態における前記ビード部の内端から前記ベルトの外端までのタイヤ径方向に沿った立ち上がり高さと前記ビード部の内端から前記ベルトの外端に向かう立ち上がり角度とに基づいて、前記ベルトの外端から前記ビード部の内端までのタイヤ軸方向の第1距離が算出され、前記ベルトのタイヤ軸方向の両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ前記第1距離を前記ベルトのタイヤ軸方向寸法に加算することで前記第2距離が算出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】グリーンタイヤの構造を模式的に示すタイヤ子午線断面図。
図2】第1ケース体の成形工程を示す図。
図3】空気入りタイヤの製造システムを構成する各装置の動作を示す図。
図4】第2ケース体の成形工程を示す図。
図5】第1ケース体と第2ケース体とを一体化する工程に関する説明図。
図6】第1ケース体と第2ケース体とを一体化する工程に関する説明図。
図7】第2距離の決定方法に関する説明図。
図8】第2距離の決定方法に関する説明図。
図9】従来の第2距離の決定方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
[グリーンタイヤT3(生タイヤ)の構造]
図1は、グリーンタイヤT3の構造を模式的に示すタイヤ子午線断面図である。同図では、理解を容易にするために、一部のタイヤ部材の間に隙間を設けて図示している。図1に示すように、グリーンタイヤT3は、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール2と、サイドウォール2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラ1bと、ビードコア1a回りを被覆するチェーハ1cとが配置されている。また、グリーンタイヤT3は、一対のビード部1の間に架け渡されるように配され、トレッド3からサイドウォール2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス4を備える。カーカス4は、少なくとも一枚設けられ、カーカス4の端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナー5が配置されている。トレッド3におけるカーカス4の外周には、たが効果によりカーカス4を補強する複数(本実施形態では2枚)のベルト6が配置されている。複数のベルト6は、それぞれタイヤ周方向に対して所定角度で傾斜して延びる金属コードを有する。複数のベルト6は、それぞれ互いに金属コードが互いに逆向き交差するように積層されている。複数のベルト6の外周側には、樹脂コード等の非金属コードを有するベルト補強層7が配され、更にその外周側表面には、トレッドゴム8が配置されている。サイドウォール2におけるカーカス4の外周には、タイヤ側面を形成するサイドウォールゴム9が配置されている。
【0012】
[空気入りタイヤの製造方法]
空気入りタイヤの製造方法は、複数のタイヤ部材を積層してグリーンタイヤT3を製造する工程と、グリーンタイヤT3をモールド内にて加熱及び加圧して加硫成形する工程と、を含む。グリーンタイヤT3の製造方法は、ファーストケースとも呼ばれる第1ケース体T1を成形する工程と、セカンドケースとも呼ばれる第2ケース体T2を成形する工程と、第1ケース体T1をインフレートして第2ケース体T2と結合してグリーンタイヤT3を得る工程と、を含む。
【0013】
[第1ケース体T1(ファーストケース)の成形]
第1ケース体T1を成形する工程を、図2を用いて説明する。図2は、第1ケース体T1の成形工程を示す図である。図2に示すように、カーカスバンドドラム50に、インナーライナー5、チェーハ1c及びカーカス4を巻き付ける。その後、カーカス4の両端にビードフィラ1b及びビードコア1aを配置し、第1ケース体T1を成形する。場合によって、サイドウォールゴム9の全部または一部が一体化される。成形された第1ケース体T1は、図3に示すように、カーカスバンドドラム50から成形装置51(シェービングドラムとも呼ばれる)へカーカストランスファー52によって搬送される。図3は、空気入りタイヤの製造システムを構成する各装置の動作を示す図である。
【0014】
[第2ケース体T2(セカンドケース)の成形]
第2ケース体T2を成形する工程を、図4を用いて説明する。図4は、第2ケース体T2の成形工程を示す図である。図4に示すように、ベルトドラム53にベルト6及びベルト補強層7(同図では非図示)を巻き付けた後、トレッドゴム8をタイヤ一周分巻き付けて第2ケース体T2を得る。成形された第2ケース体T2は、図3に示すように、ベルトドラム53から成形装置51へベルトトランスファー54によって搬送される。
【0015】
[第1ケース体T1と第2ケース体T2の結合]
図5~6は、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを一体化する工程に関する説明図である。図5に示すように、成形装置51の一対のチャック510が、第1ケース体T1のビード部1を保持しており、対のチャック510で保持されるビード部1同士の離間距離が初期距離L3に設定されている。ビード部1同士の離間距離は、ビード部1の内端P2(図7参照、タイヤ径方向内側及びタイヤ軸方向内側の端)同士の間のタイヤ軸方向ADに沿った距離である。初期距離L3は、インフレート前の第1ケース体T1のビード部1同士の間に距離に応じて設定される。第2ケース体T2は、ベルトトランスファー54に保持され、第1ケース体T1のタイヤ径方向外側RD1にタイヤ赤道面を一致させた状態で配置されている。
【0016】
次に、ターンアップブラダ(非図示)で第1ケース体T1のカーカス4を巻き上げ、図6に示すように、インフレートブラダ(非図示)で第1ケース体T1をインフレートさせながら、ビード部1同士のタイヤ軸方向ADに沿った離間距離を第2距離L2に縮める。次に、ステッチャ(非図示)で第2ケース体T2を第1ケース体T1に押さえつけて第2ケース体T2と第1ケース体T1とを結合して、グリーンタイヤT3を成形する。本実施形態では、図示しないものの、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを一体化した後で、サイドウォールゴム9を貼り付けている。
【0017】
上記の工程において、次のように第2距離L2を定めている。図7及び図8は、第2距離L2の決定方法に関する説明図である。図7及び図8に示すように、第1ケース体T1と第2ケース体T2とが一体化した状態におけるビード部1の内端P2からベルト6の外端P1(ベルト6のうちのタイヤ軸方向ADの最も外側の端)までのタイヤ径方向RDに沿った立ち上がり高さH1を特定する。立ち上がり高さH1は、ベルトドラム53の直径φ1とカーカスバンドドラム50の直径φ2とに基づき算出可能である。具体的には、ベルトドラム53とカーカスバンドドラム50の径差、すなわち、H1=(φ1-φ2)/2 で算出可能である。本実施形態において立ち上がり高さH1の特定基準となるベルト6は、第1ベルト(タイヤ径方向RDの内側から外側に向けて第1、第2と数える)であるが、第1ベルトに限定されない。例えば、金属コードを有する複数のベルト6のうちタイヤ軸方向長さが最も長いベルト6が対象となる。後述する立ち上がり角度θの特定基準となるベルト6も同様である。
【0018】
また、ビード部1の内端P2からベルト6の外端P1に向かう立ち上がり角度θを特定する。立ち上がり角度θは、タイヤ加硫後のタイヤ断面高さに基づいて算出可能である。タイヤ加硫後のタイヤ断面高さは、タイヤ加硫前のグリーンタイヤT3のタイヤ断面高さとほぼ同じであるために利用可能である。具体的には、成形装置51のメモリに、タイヤ断面高さと立ち上がり角度θとを関連付けた複数のデータが記憶されている。例えば、タイヤ断面高さが100mm未満に対して立ち上がり角度θが85度であることが関連付けられ、タイヤ断面高さが100mm以上且つ120mm未満に対して立ち上がり角度θが80度であることが関連付けられ、タイヤ断面高さが120mm以上且つ140mm以下に対して立ち上がり角度θが75度であることが関連付けられている。成形装置51は、複数のデータに基づき、ユーザに指定されたタイヤ断面高さに対応する立ち上がり角度θを特定する。
【0019】
次に、立ち上がり高さH1と立ち上がり角度θとに基づいて、ベルト6の外端P1からビード部1の内端P2までのタイヤ軸方向ADの第1距離L1を算出する。第1距離L1は、L1=H1/tanθで算出可能である。
【0020】
次に、ベルト6のタイヤ軸方向ADの両端からタイヤ軸方向外側に向けて、それぞれ第1距離L1をベルト6のタイヤ軸方向寸法L0に加算することで第2距離L2を算出する。すなわち、L2=L0+L1×2 である。これで適切な第2距離L2を算出可能となる。
【0021】
[変形例]
(A)上記実施形態では、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを一体化した後で、サイドウォールゴム9を貼り付けているが、これに限定されない。第1ケース体T1にサイドウォールゴム9の全部または一部を予め貼り付けておいてもよい。
【0022】
(B)上記実施形態のタイヤは、乗用車用(パッセンジャー)であるが、これに限定されない。例えば、ライトトラック(LT)用であってもよい。
【0023】
[1]
以上のように、空気入りタイヤの製造方法は、インナーライナー5及びカーカス4を含む複数のタイヤ部材をカーカスバンドドラム50に巻き付けて対のビード部1を有する筒状の第1ケース体T1を生成することと、トレッドゴム8及びベルト6を含む複数のタイヤ部材をベルトドラム53に巻き付けて筒状の第2ケース体T2を生成することと、第1ケース体T1と第2ケース体T2とが一体化した状態におけるビード部1の内端P2からベルト6の外端P1までのタイヤ径方向RDに沿った立ち上がり高さH1とビード部1の内端P2からベルト6の外端P1に向かう立ち上がり角度θとに基づいて、ベルト6の外端P1からビード部1の内端P2までのタイヤ軸方向ADの第1距離L1を算出することと、ベルト6のタイヤ軸方向ADの両端(P1,P1)からタイヤ軸方向AD外側に向けて、それぞれ第1距離L1をベルト6のタイヤ軸方向寸法L0に加算することで第2距離L2を算出することと、第1ケース体T1の対のビード部1をそれぞれ対のチャック510で保持した状態で、第1ケース体T1を膨らませつつ、対のチャック510が保持するビード部1同士のタイヤ軸方向ADに沿った離間距離を第2距離L2に縮め、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを一体化させることと、を含む、としてもよい。
【0024】
このように、ビード部1の内端同士の離間距離である第2距離L2は、ベルト6のタイヤ軸方向ADの両端(P1,P1)からタイヤ軸方向AD外側に向けて第1距離L1を加算したものとなる。よって、グリーンタイヤT3のふらつきを抑制して、ふらつきによる不具合の発生を抑制可能となる。
【0025】
[2]
上記[1]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、立ち上がり高さH1は、カーカスバンドドラム50及びベルトドラム53の径差に基づき算出し、立ち上がり角度θは、タイヤ加硫後のタイヤ断面高さに基づいて算出する、としてもよい。
このように、加硫後のタイヤの仕様(タイヤ断面高さ)および加硫後のタイヤに合わせた製造装置の製造条件(カーカスバンドドラム50及びベルトドラム53の径差)に基づき、値を算出可能となるので、第2距離L2を画一的に決定可能となる。
【0026】
[3]
上記[2]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、立ち上がり角度θとタイヤ断面高さとを関連付けた複数のデータに基づき、指定されたタイヤ断面高さに対応する立ち上がり角度θを特定し、特定した立ち上がり角度θを用いて第1距離L1を算出する、としてもよい。
このようにすれば、複数種類のタイヤサイズに対応可能となる。
【0027】
[4]
上記[3]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、タイヤ断面高さが99mm以下に対して立ち上がり角度θが85度であることが関連付けられ、タイヤ断面高さが100mm以上且つ119mm以下に対して立ち上がり角度θが80度であることが関連付けられ、タイヤ断面高さが120mm以上且つ140mm以下に対して立ち上がり角度θが75度であることが関連付けられている、としてもよい。好ましい一例である。
【0028】
[5]
本実施形態の空気入りタイヤの製造装置は、インナーライナー5及びカーカス4を含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて対のビード部1を有する筒状の第1ケース体T1が生成されるカーカスバンドドラム50と、トレッドゴム8及びベルト6を含む複数のタイヤ部材が巻き付けられて筒状の第2ケース体T2が生成されるベルトドラム53と、を備え、第1ケース体T1の対のビード部1をそれぞれ対のチャック510で保持した状態で、第1ケース体T1を膨らませつつ、対のチャック510のタイヤ軸方向ADに沿った離間距離を第2距離L2に縮め、第1ケース体T1と第2ケース体T2とを一体化させるように構成されており、第1ケース体T1と第2ケース体T2とが一体化した状態におけるビード部1の内端P2からベルト6の外端P1までのタイヤ径方向RDに沿った立ち上がり高さH1とビード部1の内端P2からベルト6の外端P1に向かう立ち上がり角度θとに基づいて、ベルト6の外端P1からビード部1の内端P2までのタイヤ軸方向ADの第1距離L1が算出され、ベルト6のタイヤ軸方向ADの両端(P1,P1)からタイヤ軸方向AD外側に向けて、それぞれ第1距離L1をベルト6のタイヤ軸方向寸法L0に加算することで第2距離L2が算出される、としてもよい。
【0029】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0030】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0031】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 :ビード部
3 :トレッド
4 :カーカス
5 :インナーライナー
6 :ベルト
8 :トレッドゴム
50 :カーカスバンドドラム
53 :ベルトドラム
510 :チャック
AD :タイヤ軸方向
H1 :立ち上がり高さ
L0 :タイヤ軸方向寸法
L1 :第1距離
L2 :第2距離
P1 :ベルト6の外端
P2 :ビード部1の内端
RD :タイヤ径方向
T1 :第1ケース体
T2 :第2ケース体
θ :立ち上がり角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9