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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042783
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】着色液
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20240322BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20240322BHJP
   C09B 1/34 20060101ALI20240322BHJP
   C09B 1/32 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09B67/20 F
C09D11/328
C09B1/34
C09B1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147609
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永塚 由桂
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 里麻
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC35
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA35
4J039EA38
4J039EA40
4J039EA41
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、着色液及びそれを用いた着色液セット、着色された記録メディア及び着色方法の提供を課題とする。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物、及び、(1,4-Bis-(2-bromo-4-butyl-O-toluidino)anthraquinoneを含む着色液。

(式(1)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物を含む着色液。
【化1】
(式(1)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
【化2】
【請求項2】
上記着色液が染料液又はインクである請求項1に記載の着色液。
【請求項3】
さらに水溶性有機溶剤を含む請求項1又は2のいずれか一項に記載の着色液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の着色液を含む着色液セット。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の着色液、あるいは請求項4に記載の着色液セットのいずれかで着色された記録メディア。
【請求項6】
上記記録メディアが繊維である請求項5に記載の記録メディア。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の着色液、あるいは請求項4に記載の着色液セットのいずれかで着色を行う着色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色液及びそれを用いた着色液セット、着色された記録メディア及び着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多くの染料や顔料の開発が行われ、その一部についてはカラーインデックス番号が付与されるなど、市販化されている。例えば、アンスラキノン色素はその存在を古くから知られ、工業的に合成されるなどして広く利用されている。特に、書籍の印刷、衣服、食用色素、家具、建材などといった、現代の生活に欠かせない各種製品に使われている。近年では、インクジェット印刷用のインクや機能性色素など幅広い分野での活用が進められている。
一方で、インクジェット印刷等の精密な電子機器装置に使用される場合、着色液のろ過性や保存安定性の確保など、クリアしなくてはいけない重要な課題がいくつもある。その解決に向け様々な手法が研究されているが、特定の化合物を添加することによって、着色液の性能を向上させ、さらには印刷物の性能をも向上させる効果を有することはこれまでに知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、再溶解性に優れた着色液及びインクを提供し、かつ、堅牢性に優れた印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物を含む着色液が、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【化1】
(式(1)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
【0006】
【化2】
【0007】
より具体的には、上記式(1)で表される化合物、及び、上記式(2)で表される化合物を含有させることにより、上記式(1)で表される化合物の溶解性や溶解の安定性に寄与し、その結果、着色液のろ過性を良好にしてフィルター詰まりを防止、乾燥などの要因によって特定の色素が不本意に析出をするのを防止、また、一度乾燥してしまった着色液を再溶解させることも容易になる。これらの性能向上により、例えば、着色液をインクジェットプリンタのインクとして使用した場合に、ヘッドフィルターやノズルの詰まり等が生じるのを効果的に防止できるため、インクの吐出安定性にも良い効果がある。
【0008】
さらに、堅牢性向上にも効果があり、例えば、着色物が布であれば汗堅牢度、洗濯堅牢度、写真用紙を含む紙であれば耐水性及び耐オゾン性を向上させることができる。
【0009】
即ち本発明は、以下の1)~7)に関する。
1)
下記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物を含む着色液。
【0010】
【化3】
(式(1)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
【0011】
【化4】
【0012】
2)
上記着色液が染料液又はインクである1)に記載の着色液。
3)
さらに水溶性有機溶剤を含む1)又は2)のいずれか一項に記載の着色液。
4)
1)~3)のいずれか一項に記載の着色液を含む着色液セット。
5)
1)~3)のいずれか一項に記載の着色液、あるいは4)に記載の着色液セットのいずれかで着色された記録メディア。
6)
上記記録メディアが繊維である5)に記載の記録メディア。
7)
1)~3)のいずれか一項に記載の着色液、あるいは4)に記載の着色液セットのいずれかで着色を行う着色方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、再溶解性に優れた着色液及びインクを提供し、かつ、堅牢性に優れた印刷物を提供可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書においては実施例等を含めて、特に断りの無い限り「部」及び「%」は、いずれも質量基準である。また、C.I.はカラーインデックスの略を表す。
【0015】
本発明における着色液は、上記式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0016】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、C.I.アシッドブルー 140が挙げられ、該C.I.アシッドブルー 140は、文献公知の方法またはそれを応用して製造することもでき、あるいは、市販されているものを使用しても良い。
【0017】
上記式(1)における、Mは、水素、あるいは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アミンのオニウムイオン又はアンモニウムイオンを示す。
上記式(1)における、Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アミンのオニウムイオン又はアンモニウムイオンである場合、上記式(1)で表される化合物は、無機又は有機の陽イオンの塩となる。該無機塩の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩またはアンモニウム塩である。上記有機の陽イオンの塩としては、例えば、下記式(3)で示される4級アンモニウムイオンがあげられるがこれらに限定されるものではない。また遊離酸、その互変異性体、およびそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えば、ナトリウム塩とアンモニウム塩の混合物、遊離酸とナトリウム塩の混合物、リチウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩の混合物など、いずれの組み合わせを用いても良い。塩の種類によって溶解性などの物性値が異なる場合も有り、適宜塩の種類を選択したり、あるいは、複数の塩などを含む場合にはその比率を変化させること等、目的に合わせ選択することができる。
【0018】
【化5】
【0019】
一般式(3)においてZ、Z、Z、Zは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
一般式(3)におけるZ、Z、Z、Zのアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等のヒドロキシC1-C4アルキル基が挙げられ、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、例えば、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、2-ヒドロキシエトキシプロピル基、4-ヒドロキシエトキシブチル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル基等、ヒドロキシC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基が挙げられ、これらのうち、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基等、ヒドロキシエトキシC1-C4アルキルが好ましい。一般式(3)におけるZ、Z、Z、Zとして、特に好ましいものとしては、水素原子;メチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等のヒドロキシC1-C4アルキル基、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、2-ヒドロキシエトキシプロピル基、4-ヒドロキシエトキシブチル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル基等のヒドロキシエトキシC1-C4アルキル基が挙げられる。
【0020】
一般式(3)として好ましい化合物のZ、Z、Z及びZの組み合わせの具体例を下記表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
上記式(1)で表される化合物の塩を得るには、例えば、反応後、所望の無機塩または有機の陽イオンの塩を反応液に添加することにより塩析するか、或いは塩酸など鉱酸の添加により遊離酸の形で単離し、これを水、酸性の水または水性有機媒体などを必要に応じ用いて洗浄することにより無機塩を除去後、水性の媒体中で所望の無機又は有機の塩基により中和することで対応する塩の溶液とすることが出来る。ここで酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また水性有機媒体とは、水を含有する水と混和可能な有機物質および水と混和可能ないわゆる有機溶剤などをいい、具体例としては後述する水溶性有機溶剤などが挙げられるが、通常溶剤として分類されない有機物質であっても水と混和可能なものであれば必要に応じて使用することが可能である。この通常溶剤として分類されない有機物質の例としては、尿素や糖類などを挙げることができる。無機塩の例としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等アルカリ金属塩、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられ、有機の陽イオンの塩の例としては、有機アミンのハロゲン塩等が挙げられる。無機の塩基の例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられ、有機の塩基の例としては、有機アミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの前記した一般式(3)で表される4級アンモニウム類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。そのカウンターカチオンは、無機金属、アンモニア(NH3)又は有機塩基の各カチオンと塩を形成するのが好ましい。
【0023】
上記式(2)で表される化合物は、製品、1,4-Bis-(2-bromo-4-butyl-O-toluidino)anthraquinone(米国Alfa Chemistry社製)、1,4-Bis((2-Bromo-4-Butyl-6-Methylphenyl)Amino)Anthracene-9,10-Dione(中国Chemieliva Pharmaceutical社製)、1,4-bis(2-bromo-4-butyl-6-methylanilino)anthracene-9,10-dione(中国Atomax Chemicals社製)として入手することができる。
【0024】
上記着色液中において、上記式(1)で表される化合物の含有量を100部とした場合、上記式(2)で表される化合物の含有量が、0.00001部以上かつ2.0部未満であることが好ましく、0.00002部以上かつ1.5部未満であることがより好ましく、0.00005部以上かつ1.0部以下であることがさらに好ましく、0.01部以上かつ0.5部以下であることが特に好ましく、0.02部以上かつ0.15部以下であることが極めて好ましい。
【0025】
上記着色液は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、例えば、上記着色液をシアン着色液として用い、マゼンタ着色液、イエロー着色液との3原色の着色液セット、さらにはこれにブラック着色液を加えた4色の着色液セットとして使用することも可能である。また、より高精細な画像を形成するために、例えば、上記着色液をブルー着色液として使用し、これと、マゼンタ着色液、ライトマゼンタ着色液、レッド着色液、グリーン着色液、オレンジ着色液、ダークイエロー着色液、グレー着色液等と、を併用した着色液セットとしても使用できる。特に、上記着色液をブルー着色液またはシアン着色液として用いることが好ましい。上記着色液を、ブルー着色液又はシアン着色液として用い、用いた着色液以外の着色液とのセットとして用いても良い。例えば、上記着色液をブルー着色液とし、シアン着色液とセットにしたり、上記着色液をシアン着色液とし、ブルー着色液とセットにしたりすることも可能である。上記着色液とセットにする着色液が含む色素は、公知のイエロー色素、公知のマゼンタ色素、公知のシアン色素、公知のブラック色素等が挙げられる。
【0026】
上記公知のイエロー色素としては、例えば、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;ベンジリデン色素やモノメチンオキソノール色素等のメチン系色素;ナフトキノン色素、アントラキノン色素等のキノン系色素;キノフタロン系色素;ニトロ・ニトロソ系色素;アクリジン系色素;アクリジノン系色素;等が挙げられる。
【0027】
上記公知のマゼンタ色素としては、例えば、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等が挙げられる。
【0028】
上記公知のシアン色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アリール及び/又はヘテロアリールを有するアゾ系色素;アゾメチン系色素;アリーリデン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、シアニン色素、オキソノール色素等のようなメチン系色素;ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素等のようなカルボニウム系色素;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドン等のようなキノン系色素;ジオキサジン色素等のような縮合多環系色素;等が挙げられる。
【0029】
上記公知のブラック色素としては、例えば、含金属アゾ化合物、ジスアゾ、トリスアゾ又はテトラアゾ等のアゾ系色素;硫化染料;カーボンブラックの分散体;等が挙げられる。
【0030】
上記着色液を、ブルー着色液又はシアン着色液として用いる場合、上記着色液以外の着色液(以下、他の着色液と略記する場合がある)は、C.I.アシッドブルー 140以外の構造を有する色素を、それぞれ任意で選択し用いる。
【0031】
上記着色液は、上記式(1)で表される化合物、及び、上記式(2)で表される化合物以外として、さらに、上記した各種色素の中から任意に選択・混合し、調色して使用しても良い。また、上記着色液と組み合わせることが可能な、上記他の着色液も、上記した各種色素の中から任意に選択・混合し、調色して使用しても良い。
【0032】
本明細書中において着色液とは、染色(捺染、浸染)、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング等の各種の記録に使用する溶液であり、これらの中でも繊維を染めるための染料液やインクジェットプリンタに使用するインクに適する。上記着色液を、前記染料液あるいは前記インクとして用いても良い。
【0033】
上記着色液は、さらに水溶性有機溶剤を含んでいても良い。
【0034】
上記水溶性有機溶剤としては、特に限定は無いが、例えば、アルコール類、ピロリドン類、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル等が挙げられる。上記着色液中における、その含有量は、着色液の総質量に対して通常0~50%、好ましくは1~50%、より好ましくは5~40%である。アルコール類としては、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等のヒドロキシ基を2つ~3つ有するC2-C6アルコール;ジグリセリン、ポリグリセリン等のポリグリセリルエーテル;ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等のポリオキシC2-C3アルキレンポリグリセリルエーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、モノ、ジまたはトリC2-C3アルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、繰り返し単位が4以上で、分子量が約20,000以下程度のポリC2-C3アルキレングリコール(好ましくは液状のもの);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1-エトキシ-2-プロパノール)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(1-(1-メチル-2-プロポキシエトキシ)-2-プロパノール)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(1-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロパン-2-オール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ヘキシルカルビトール)等の、多価アルコールのC1-C6モノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルカルビトール)等の、多価アルコールのC1-C6ジアルキルエーテル、3-メトキシ―1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールモノエーテル、プロピレングリコール(モノ)フェニルエーテル(1-フェノキシ-2-プロパノール)等のグリコールフェニルエーテル;等が挙げられる。ピロリドン類としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン等のピロリドン類; ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルとしては、いずれも阪本薬品工業株式会社製商品名SC-P400、SC-P750、SC-P1000、SC-P1200、SC-P1600等のポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル;SC-E450、SC-E750、SC-E1000、SC-E1500、SC-E2000等のポリオキシエチレンジグリセリルエーテル;等が挙げられる。
これらの中ではグリセリン、ジグリセリン、2,4ージエチルー1,5ーペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン及び2-ピロリドンが好ましい。水溶性有機溶剤は、単独で使用することも併用することもできる。
【0035】
上記着色液は、さらにその他添加剤を含んでいても良い。
【0036】
上記その他添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、防腐防黴剤、ヒドロトロピー剤、保湿剤、染料溶解剤等を、必要に応じて含有することができる。
【0037】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、及びノニオンの各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではカチオン界面活性剤が好ましい。アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸またはその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール系;他の具体例として、例えば、日信化学社製の商品名サーフィノール104E、104H、104A、104PA、104PG50、DF110D、82、420、440、465、485、オルフィンSTG;等が挙げられる。これらの中ではサーフィノールが好ましく、サーフィノール104PG50、DF110D、420、440、465がより好ましい。
【0038】
pH調整剤としては、インクのpHを6.0~11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミントリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);または、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;等が挙げられる。これらの中ではトリエタノールアミンが好ましい。インクの総質量中におけるpH調整剤の含有量は通常0.01~2%、好ましくは0.05~1%である。
【0039】
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩、ランクセス社製Biox P520LP、Preventol BIT 20N、ダウ・ケミカル社製ROCIMA 640、TROY社製Mergal K-20、ロンザ社製プロキセルGXL等、好ましくはプロキセルGXL、プロキセルXL2;等が挙げられる。
【0040】
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε-カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0041】
ヒドロトロピー剤としては、例えば尿素、チオ尿素、シアノグアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等が挙げられる。
【0042】
保湿剤としては、例えば尿素、グリセリン、等が挙げられる。
【0043】
上記着色液の調製方法について以下に記載する。
上記式(1)で表される化合物、および、上記式(2)で表される化合物は、購入あるいは合成により得ることができる。また、上記着色液中における、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物の配合量調整として、例えば、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とを任意の割合で配合、あるいは、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とが配合された混合物を、後述する精製方法等により、その配合比を調整することも可能である。精製方法としては、例えば、一般的に知られている色素の精製方法や化学物質の精製方法が使用できる。具体的な精製方法には、例えば、非特許文献(有機合成化学協会誌、1955年、第13巻、第4号、106ページ)に記載の再結晶法、昇華法、透析法、塩析法、イオン交換樹脂法、カラムクロマトグラフィーまたは薄層クロマトグラフィーまたはペーパークロマトグラフィーによる方法に加え、吸着剤による方法、限外ろ過法、逆浸透膜法、蒸留法、等が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、等が挙げられる。吸着剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、珪藻土、セルロース粒子、セルロース繊維、キレート繊維、合成吸着剤、等が挙げられる。イオン交換樹脂法や吸着剤による方法は、水、または適切な有機溶剤、またはインク等に色素を溶解または分散して作成した色素液に、イオン交換樹脂や吸着剤を混合して攪拌した後、濾別するか、あるいはイオン交換樹脂や吸着剤が充填されたカラム中を通液させても良い。
ここに挙げた方法を単独または複数を組み合わせて行うことにより、上記式(1)で表される化合物、および、上記式(2)で表される化合物をそれぞれ調製することができる。ただし、本発明は、ここに例示した精製方法に限定されるものではない。
【0044】
上記式(1)で表される化合物、および、上記式(2)で表される化合物を、検出、定量する方法には、有機化合物を測定する一般的な分析方法が使用でき、例えば、核磁気共鳴分析、高速液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー/質量分析、ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/質量分析、ゲル浸透クロマトグラフィー、元素分析、赤外分光分析、赤外・可視分光分析等が挙げられる。
【0045】
上記で調製した上記式(1)で表される化合物、および、上記式(2)で表される化合物を水等の溶媒に溶解させることにより、上記着色液を得ることができる。
【0046】
上記着色液を複数含む着色液セット、及び、上記着色液と上記着色液以外の着色液とを含む着色液セット、も本願発明に含まれる。
【0047】
上記着色液、あるいは上記着色液セットのいずれかで着色された記録メディアも本願発明に含まれる。
【0048】
上記記録メディアのうち、インクジェット記録に用いられるものとしては、特に限定はなく、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材に、インク受容層を設けたものや、繊維が好ましい。インク受容層は、例えば前記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の、インク中の色素を吸収し得る無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に前記基材表面に塗工する方法;等により設けられる。このようなインク受容層を設けた記録メディアは、通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。この中でも、オゾンガス等の空気中の酸化作用を持つガスに対して影響を受けやすいとされているのが、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子を基材表面に塗工しているタイプのインクジェット専用紙である。市販品として入手できる前記専用紙の代表的な例としては、キヤノン(株)製、商品名 写真用紙・光沢プロ「プラチナグレード」、写真用紙・光沢ゴールド;セイコーエプソン(株)製、商品名 写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名 アドバンスフォト用紙(光沢);ブラザー(株)製、商品名 プレミアムプラスグロッシィフォトペーパー;等がある。なお、普通紙も当然利用でき、具体的にはキヤノン(株)製、商品名 PBペーパーGF500;セイコーエプソン(株)製、商品名 両面上質普通紙;PPC(プレインペーパーコピー)用紙;等が挙げられるが、本発明のインク組成物の用途としては、これらに限られるものではない。
上記記録メディアとしては、繊維、樹脂(プラスチック)フィルム、紙等のシート状の物が好適に用いられるが、シート状以外の球状、直方体形状等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
上記記録メディアが繊維であることが特に好ましい。繊維の種類としては、本発明の効果を十分に発揮できる観点から、ポリアミド系繊維、ポリアミド系繊維を含有する混紡繊維、セルロース系繊維、セルロース系繊維を含有する混紡繊維等が好ましく用いられる。セルロース系繊維としては、綿、麻、レーヨン、ポリノジック等が挙げられる。ポリアミド系繊維としては、シルク、毛、ナイロン等が挙げられる。混紡繊維としては、これらのポリアミド系繊維またはセルロース系繊維を少なくとも含有し、他の繊維と混紡したものが挙げられる。上記繊維としては繊維の構造体も含まれ、上記の繊維から成る布帛等が好ましく挙げられる。
【0049】
上記着色液、あるいは上記着色液セットのいずれかで着色を行う着色方法も本願発明に含まれる。
【0050】
上記着色液、あるいは上記着色液に任意の添加剤を加えたものをインクとして用いても良い。上記インクは、上記の成分を混合して溶液とし、必要に応じてメンブランフィルター等で得られた溶液を濾過することにより得られる。インクジェット捺染用インクとしては、メンブランフィルター等で溶液を濾過する方が好ましい。メンブランフィルターの孔径は通常0.1μm~1μm、好ましくは0.1μm~0.5μmである。
【0051】
上記インクの25℃における粘度は、E型粘度計にて測定したときに3~20mPa・s;表面張力は、プレート法にて測定したときに20~45mN/m;の各範囲内であるのが好ましい。インクの粘度及び表面張力は上記の範囲で、プリンタの吐出量;応答速度;インク液滴の飛行特性;及び、インクジェットヘッドの特性;等を考慮し、適切な値に調整することができる。
【0052】
上記着色方法は、上記着色液をインクとして用い、少なくとも以下の工程A~工程Cの3工程を順次行うことを含む、繊維の着色方法、すなわち捺染方法である。
[工程A]
インクを、インクジェット方式、スクリーン捺染、浸染及び連続染色の方法のうちから選択される方法で繊維に付着させる工程。
[工程B]
工程Aにより繊維に付着させたインクの色素を、繊維に固着させる工程。
[工程C]
繊維に残存する未固着の色素を洗浄する工程。
【0053】
また、上記工程A~Cの3工程に加えて、色素のにじみ防止等を目的とし、繊維に対して前処理を施す工程を、上記工程Aの前にさらに含むことができる。ポリアミド繊維またはセルロース繊維の捺染を行う場合、前処理工程を含む方が好ましい。
【0054】
上記捺染方法に用いる繊維としては、上記繊維が好ましい例として挙げられる。
【0055】
上記工程Aに使用できるインクジェットプリンタとしては、例えば、機械的振動を利用したピエゾ方式;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等を利用したものが挙げられる。
【0056】
上記工程Bとしては、インクが付着した繊維を室温~130℃に0.5~30分程度放置して予備乾燥させた後、スチーミング処理を施して湿熱条件下に該繊維に色素を固着させる方法等が挙げられる。スチーミング処理としては、湿度80~100%、温度95~105℃の環境に、5~30分置くことが好ましい。
【0057】
上記工程Cとしては、色素を固着させた後の繊維を、水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際して、界面活性剤を含有する水で洗浄しても良い。上記工程Cを行った後、洗浄した繊維を通常40~120℃で、5~30分乾燥し、乾燥された染色物を得ることができる。
【0058】
上記工程Cで使用できる界面活性剤としては、上記その他添加剤の項で述べたものと同じで良い。
【0059】
必要に応じ、染色物に対し後処理として、耐光堅牢度、湿潤堅牢度または塩素堅牢度を向上させる目的で、ポリアミン系、ポリカチオン系フィックス剤、タンニンまたは合成タンニン系フィックス剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を用いて処理を行うこともできる。
【0060】
上記後処理に用いる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
【0061】
上記後処理に用いる酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸(別名、ビタミンC)、エリソルビン酸、α-トコフェロール(別名、ビタミンE)などが挙げられる。
【0062】
上記工程Aの前に行う繊維の前処理工程としては、一種類以上の糊材、及び前処理用のpH調整剤の両者を少なくとも含有する水溶液を繊維の処理液とし、予め工程Aを行う前の繊維に付与する工程が挙げられる。該繊維の処理液中には、さらにヒドロトロピー剤を含むのが好ましい。繊維の処理液中に含有する糊剤、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤等は、「前処理剤」等と呼称されることもある。繊維の処理液を繊維に付与する方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40~90%程度が好ましく、より好ましくは60~80%程度である。
【0063】
上記繊維の処理液に含有する糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類;澱粉類;アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類;ペクチン酸等の植物皮類;メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体;カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉;シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊;等が挙げられる。これらの中ではグアー、ローカストビーン等の天然ガム類;シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類;等が好ましい。
【0064】
上記繊維の処理液に含有する前処理用のpH調整剤としては、具体的には炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ性のナトリウム塩、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、及び酢酸アンモニウム等の酸性のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0065】
上記繊維の処理液に含有するヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等が挙げられ、尿素であることが好ましい。上記前処理剤は、それぞれの一種類を単独で用いることも、それぞれの二種類以上を併用することもでき、後者が好ましい。
【0066】
上記繊維の処理液に含有する前処理剤の含有量は、例えば混紡繊維を用いるとき、混紡繊維の混紡比率等により一概に決めることは難しいが、その目安として、繊維の処理液の総質量に対して、いずれも質量基準で糊剤が0.5~5%、前処理用のpH調整剤が0.5~5%、残部が水であることが挙げられる。ヒドロトロピー剤をさらに含有するときは、同様に1~20%であり、残部が水であることが挙げられる。また、繊維の処理液は酸性であることが好ましい。そのpHの範囲としては通常7以下、好ましくは5~7である。
【実施例0067】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により、本発明が限定されるものではない。なお、各実施例におけるインクは、いずれも上記着色液に含まれる。
【0068】
[実施例1]
上記式(2)で表される化合物(1,4-Bis-(2-bromo-4-butyl-O-toluidino)anthraquinone、米国Alfa Chemistry社製)5部を濃硫酸30部に加え140℃に加熱し、40分攪拌した。得られた反応液を氷水50部に投入したのち、ヌッチェ(MTブフナロート、関谷理化(株)製)で濾過し、ヌッチェ上に残った固体を乾燥し、式(1)で表される化合物を1部得た。得られた式(1)で表される化合物を、イオン交換水に溶解させ、活性炭ろ過、精密ろ過及び限外ろ過により精製した。得られた精製液から式(1)で表される化合物を、固体として取り出した。各化合物を表2に示すような組成になるように調整し、実施例1~14、比較例1の着色液とした。
得られた着色液を外径32ミリメートルのガラスシャーレ(東京硝子器械社製FINEシャーレ)上に1部乗せ、60℃の乾燥機に静置し、乾燥させた。実施例1~14の着色液はいずれも、乾燥後も流動性を保ったままであった。
上記のようにして各着色液を乾燥させたシャーレ上に水0.5部を添加し、「再溶解性」を評価した。結果を2に示す。
また、実施例1~14の着色液はいずれも、φ47mm、孔径0.2μmのミックスセルロースフィルター(アドバンテック)で全量ろ過を行った際、ろ過性が良く、また、フィルター上に異物や着色が残りにくく、良好な結果を示した。
【0069】
各判定基準は以下のとおり。
[判定基準]
1-1)再溶解性
A:5分以内に再溶解する
B:5分を超え、かつ、10分以内に再溶解する
C:10分を超え、かつ、30分以内に再溶解する
D:30分経っても溶け残り、再溶解できない
【0070】
各着色液の再溶解性の評価結果を表2に示す。上記「再溶解性」の評価がC以下の場合、実用性に欠ける。
上記「再溶解性」とは,インク中の揮発成分の蒸発等による固形分濃度の上昇により、不安定化した溶解・分散成分が凝集・析出によりノズル等の閉塞に近い現象が起きたとき、新たなインクの供給等により,容易に再溶解・再分散によってノズルの機能を回復する目安となると考えている。(日本画像学会誌 第41巻 第2号(2002)182ページを参照)
【0071】
【表2】
【0072】
各着色液中に含まれる、上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物の配合割合は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用い、波長254nmでのピーク面積比から算出した。
【0073】
上記表2結果から、本願実施例の着色液は、ろ過性及び再溶解性を兼ね備えることが分かる。
【0074】
下記表3に示す各インクを作製し、インクとしての再溶解性の評価を行った。
表3中、各略語はそれぞれ以下を表す。
サーフィノール 465:界面活性剤(日信化学工業社製)
プロキセル XL2:防腐防黴剤(ロンザ社製)
TEA:トリエタノールアミン(三井化学社製)
PG:プロピレングリコール(純正化学社製)
Gly:グリセリン(純正化学社製)
[試験染布の調製]
グアー2部、硫酸アンモニウム2部、尿素5部、及び水91部を含む繊維の処理液を調製し、パッド法によりシルク布1(絹羽二重)に前処理工程を行った。すなわち、シルク布を繊維の処理液に浸漬し、ゴムローラーにて余分な液を絞り落とした後、60℃にて乾燥した。
上記のようにして得たシルク布1に対して、実施例1、5、6、8、11、14の着色液を使用して作成したインクを使用して、インクジェットプリンタ(商品名:PX-205、セイコーエプソン社製)にてベタ柄を100%の階調でインクジェット捺染し、印捺物を得た。この印捺物を60~80℃で予備乾燥後、湿度90%以上、100~103℃で30分間スチーミング処理を行った。得られた印捺物を冷水で5分間洗浄した後、乾燥することにより試験染布を得た。この試験染布を実施例15~20とする。
実施例15~20のインクの代わりに、比較例2のインクを用いる以外は実施例15~20と同様にして、各試験染布を得た。
[染色布の耐光性試験]
上記のようにして得た各染布を、JIS L0843 A法に従って耐光性試験を行った。すなわち、ブラックパネル温度63℃、槽内温度38℃、相対湿度50%、放射照度50W/m2(300-400nm)、インナーフィルター石英、アウターフィルターソーダライムガラスの条件で、キセノンウェザーメーター SUGA NX75(スガ試験機社製)を用い、前記のようにして得た各染布に光源キセノンアークで39.4時間、光照射した。その結果、いずれの実施例も良好な結果を示した。
[染色布のアルカリ汗試験]
上記のようにして得た各染布を、JIS L0848法(アルカリ性)に従ってアルカリ汗試験を行った。試験後、試験前後の絹添付布の汚染の度合いを判定した。
[判定基準]
染色布のアルカリ汗試験
A:3級以上
B:2級以上3級未満
C:2級未満
[染色布の洗濯堅牢度試験]
上記のようにして得た各染布を、JIS L 0844法に従って洗濯堅牢度試験を行った。試験後、試験前後の絹添付布を測色機で測定し、色素残存率、及び色差(ΔE)を下記式(I)及び式(II)により算出し、4段階で評価した。

色素残存率=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%) 式(I)

ΔE=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 式(II)
[判定基準]
染色布の洗濯堅牢度試験
A:ΔE7.0未満
B:ΔE7.0以上17.0未満
C:ΔE17.0以上27.0未満
D:ΔE27.0以上
[写真用紙の耐水性試験、耐オゾン性試験]
さらに、写真用紙(セイコーエプソン社製)にベタ印刷を行い、耐水性試験、耐オゾン性試験を行った。耐水性試験としては、具体的には、各試験片を水に1時間浸し、その後取り出して自然乾燥させた。
試験後、試験前後の各試験片を測色機で測定し、色素残存率、及び色差(ΔE)を上記式(I)及び式(II)により算出し、4段階で評価した。

耐オゾン性試験は、オゾンウェザーメータOMS-H(スガ試験機社製)を用い、オゾン濃度1ppm、槽内温度23℃、湿度50%RHの試験条件下、各試験片を16時間放置した。試験後、試験前後の各試験片を測色機で測定し、色素残存率、及び色差(ΔE)を下記式(1)及び式(2)により算出し、4段階で評価した。

染色布、試験片は測色機SectroEye(GretagMacbeth社製)を用いて測色した。
【0075】
[判定基準]
写真用紙の耐オゾン性
A:ΔE2.0未満
B:ΔE2.0以上5.0未満
C:ΔE5.0以上8.0未満
D:ΔE8.0以上
写真用紙の耐水性
A:ΔE5.0未満
B:ΔE5.0以上8.0未満
C:ΔE8.0以上11.0未満
D:ΔE11.0以上
【0076】
【表3】
【0077】
実施例15~20のインクは、インクジェットプリンタPX-205(セイコーエプソン社製)でノズルチェックパターン印刷を行った際に、印刷が欠けることが少なく、良好な印刷物を得ることができた。
【0078】
上記表2及び表3結果から、本願実施例の着色液は、再溶解性の評価は全てAであり、実用性を備え、プリンタヘッドのノズル詰まりの予防及び復帰に優れる。加えて、本願実施例は再溶解性のバランスがよく、さらに、光沢紙では耐光性、耐オゾン性の向上効果がみられた。また、ろ過時間やフィルターの着色等のろ過性、インク吐出性も良好であることが分かった。また、上記評価において、上記シルク布1(絹羽二重)を6,6-ナイロンに変更した場合も、各実施例の着色液を用い染色した染色布は、いずれも耐光性が良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の着色液は、再溶解性に優れ、かつ、堅牢性に優れた印刷物を提供できる。特に、インクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染用インクセットとして極めて有用である。