(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042786
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの隠しマークの検出システム及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147620
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭二
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006DA05
(57)【要約】
【課題】使用者の視認に影響のないように眼鏡レンズに描かれた隠しマークを検出するための検出システム及び検出方法を提供すること。
【解決手段】隠しマークが施された眼鏡レンズ11のレンズ面に対向する一方に配置されるモニター画面13aと、眼鏡レンズ11のレンズ面に対向する他方に配置されるデジタルカメラ12とを備え、モニター画面13aはコントラストを有し、コントラストはレンズ面を横切る方向に移動するように構成され、コントラストの移動に伴って複数の画像をデジタルカメラ12によってレンズ面を通して撮像し、得られた複数の画像データについて画素ごとに輝度に応じた複数の画素値を得るようにし、画素ごとに得られた複数の画素値についてコントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値を平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示させるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠しマークが施された眼鏡レンズのレンズ面に対向する一方に配置される撮像対象と、前記眼鏡レンズの前記レンズ面に対向する他方に配置される撮像装置とを備え、
前記撮像対象はコントラストを有し、前記レンズ面を横切る方向に前記コントラストが移動するように構成され、
前記コントラストの移動に伴って複数の画像を前記撮像手段によって前記レンズ面を通して撮像し、得られた複数の画像データについて画素ごとに輝度に応じた複数の画素値を得るようにし、
画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値を平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示させるようにしたことを特徴とする眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項2】
前記撮像装置は前記撮像対象の移動する前記コントラストが一旦停止するタイミングで前記画像を撮像することを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項3】
前記撮像装置は前記レンズに焦点を合わせるように撮像することを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項4】
前記撮像対象は表示装置のモニター画面であって、前記モニター画面に前記コントラストが移動する画像が表示されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項5】
前記隠しマークの位置は表示装置のモニター画面上に表示されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項6】
前記撮像装置はテレセントリックレンズを光学系として備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出システム。
【請求項7】
隠しマークが施された眼鏡レンズのレンズ面を挟んだ位置に撮像対象と撮像手段とをそれぞれ配置し、コントラストを有する前記撮像対象の前記コントラストを前記レンズ面を横切る方向に移動させ、
前記コントラストの移動に伴って複数の画像を前記撮像手段によって前記レンズ面を通して撮像し、得られた複数の画像データについて画素ごとに輝度に応じた複数の画素値を得るようにし、
画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値を平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示させるようにしたことを特徴とする眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項8】
前記撮像手段は前記撮像対象の移動する前記コントラストが一旦停止するタイミングで前記画像を撮像することを特徴とする請求項7に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項9】
前記撮像手段は前記眼鏡レンズに焦点を合わせるように撮像することを特徴とする請求項7に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項10】
画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部に対応した画素値をカットするようにしたことを特徴とする請求項7に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項11】
画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの暗部に対応した画素値をカットするようにしたことを特徴とする請求項10に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項12】
得られた前記画像についてエッジ強調のための補正処理をすることを特徴とする請求項7~11に記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【請求項13】
前記レンズ面を横切る方向を変えてコントラストを移動させるように撮像することを特徴とする請求項7~11のいずれかに記載の眼鏡レンズの隠しマークの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の視認に影響のないように眼鏡レンズに描かれた隠しマークを検出するための検出システム及び検出方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりJIS規格に従って眼鏡レンズのレンズ面には、例えば、レンズのメーカーや種類の情報、アライメント基準マーク、累進屈折力レンズの加入屈折力等の情報等の付加情報が描かれるようになっている。付加情報はレンズの使用者の視認に影響のないように非常に低いコントラストとなる、いわゆる「隠しマーク」として描かれる必要がある。隠しマークは例えば、ごく細い針によるけがきによる手段、レンズ成形用の成形型に刻印して転写する手段、薬品によってレンズ面を加工する手段、レーザー光線によって文字を印字する手段等によって描かれている。
しかし、一方で、眼鏡レンズの加工の途中段階において隠しマークの向きを考慮して加工しなければならない場合に、作業者が隠しマークを視認しにくいことが作業上支障を生じさせる場合がある。例えば、レンズをグラデーションのあるように着色加工する際や、フレーム形状に併せて玉型加工をする際には隠しマークの向きを認識した上でそれを考慮して加工しなければならないからである。その際にいちいち作業者がレンズを手に取って隠しマークを確認しようとしても中々容易ではなく、そのため作業効率が非常に悪くなっていた。
このようなことから、従来から眼鏡レンズの隠しマークを検出するための装置がいくつか提案されている。このような装置の一例として特許文献1を挙げる。特許文献1は隠しマークの検出光学系を備えた眼鏡レンズの自動装着装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置は、多数の光学部品から構成された比較的大型の装置として構成されているため、構成は複雑で重量があり高額である。また、特許文献1の装置以外にもカメラで取り込んだレンズの画像を分析することで隠しマークを検出する装置があるが、取り込んだ画像のS/N比が低いため隠しマークの誤検出や見逃し等をしてしまう可能性が高いという課題もあった。そのため、構成が簡単で安価に提供でき、隠しマークの誤検出や見逃しの可能性が低い眼鏡レンズの隠しマークの検出装置や検出方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、手段1では、隠しマークが施された眼鏡レンズのレンズ面に対向する一方に配置される撮像対象と、前記眼鏡レンズの前記レンズ面に対向する他方に配置される撮像装置とを備え、前記撮像対象はコントラストを有し、前記レンズ面を横切る方向に前記コントラストが移動するように構成され、前記コントラストの移動に伴って複数の画像を前記撮像手段によって前記レンズ面を通して撮像し、得られた複数の画像データについて画素ごとに輝度に応じた複数の画素値を得るようにし、画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値を平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示させるようにした。
これによって、眼鏡レンズの隠しマークをレンズを撮像した画像上に明瞭に表示させることができることとなり、簡単な構造で誤検出のない隠しマークの検出が可能となる。
より詳しく隠しマークが現れる原理を説明する。
図7A~
図7Dに示すように、眼鏡レンズのレンズ面を挟んで撮像装置と撮像対象が配置されている。撮像装置によって撮像素子上に得られる画像は撮像対象のコントラストに応じた明部あるいは暗部からの光の反射に基づく。
図7Aに示すように、撮像装置の撮像素子のある受光素子の前方に撮像対象のコントラストの暗部があればその位置は暗く撮像されて、対応した画素(ピクセルという場合もある)についてその暗部の輝度(濃度、明度という場合もある)に応じた画素値を得ることとなる。また、
図7Bに示すように、撮像装置の撮像素子のある受光素子の前方にコントラストの明部があればその位置の画素は明るい輝度に応じた画素値を得ることとなる。今、
図7Cに示すように、レンズのある位置に隠しマークが描かれているとする。この隠しマークはコントラストの明部の光を乱反射させたり屈折させたりする。そして、
図7Cのように背景が暗部であると隠しマークの光が撮像素子に入射することとなる。つまり、隠しマークが明部由来の乱反射光や屈折光は明部よりも暗いグレースケールの輝度として現れることとなる。本発明はこのグレースケールとして現れる輝度を用いるものである。
一方、
図7Dのように背景が明部であるとグレースケールの輝度は明部の明るい輝度によってハレーションを起こしてかき消されてしまうためグレースケールの画素値の情報は得られない(
図7Dにおいて破線で示すように光が受光素子に達する)。つまり、
図7Cのように背景が暗部となる場合にグレースケールの画素値の情報が得られることとなる。尚、撮像においては実際には焦点はレンズに合っているため、コントラストの明部と暗部の境界部分は明瞭ではない。そのため境界部分の輝度レベルが十分低い場合には隠しマークのグレースケールの情報が得られる。
【0006】
「撮像装置」は、例えばデジタルスチールカメラや、デジタルビデオカメラのようなデジタル画像を連続的に取得できる機能のある装置である。撮像装置は撮像素子を備えている。撮像素子としては、例えば受光部としてフォトダイオードを用いた、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semi-conductor)センサ等を用いることがよい。
撮像素子は受光素子の集合体である。光信号は受光素子によって電気信号に変換される。電気信号はメモリに格納され、所定の出力手段によって画像として出力される。撮像素子は多数の受光素子を備え、少なくとも光の強弱を濃淡として記録することができる。カラーフィルターを備えたカラー画像を取得する撮像素子を用いてもよい。一般に1つの受光素子は画像に出力する際の1ドットの画素に対応する。
「画素」は、撮像素子によって取得した光信号を電気信号に変換した後にアナログ・デジタル変換によって標本化、量子化して得られたデジタル画像において最小単位となる二次元的な行列の要素である。画素の輝度(濃度あるいは明度ともいう)は画素値がLビットで表される場合、2のL乗通りの輝度レベルとなる。一般的な濃淡画像では画素値は8ビットで現わされるため画素値は0~255の256通りである。本発明の実施の形態では画素値0がもっとも暗い状態を現わしている。
「撮像対象」は、コントラストを有していてそのコントラストが移動するような構成であればよい。例えば、コンピューター装置に附属するモニター装置の表示画面がよい。表示画面上でコントラストが移動するような動画を表示させるように構成することがよい。また、コントラストが描かれた二次元的な面がスライド移動したり、無限軌道として前後輪に無端のコントラストが描かれたベルトを掛け、回転させるようにしたりする装置がよい。二次元的な面のコントラストの移動量は例えばエンコーダーのような検出装置によって検出することがよい。コントラストとしては例えば縞模様がよい。縞模様であるとある受光素子に対する明暗が頻繁に変化して情報が多く得られるからである。もちろん、縞模様でなくともよい。縞模様の幅は例えば1mm~10mmほどで、縞模様の幅はできるだけ狭いほうがよい。
「コントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値」は、上記のように隠しマークに明部由来の光が当たることによってその光が乱反射や屈折してグレースケールとして撮像された際の輝度に対応した画素値である。
「平均化」は、画素ごとに得られた複数の画素値の単純な算術平均値でもよく、例えば中央値、最頻値、中点値、標準偏差等を用いてもよい。例えばある画素についてn個のサンプルを取得したとして、それぞれの画素値の積算値をnで除すれば算術平均値となるが、nが十分大きな数の場合には例えばn+α(α:小さな整数)で除すようにしてもよい。
「平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示する」際には、モニター画面に表示させてもよく、プリンター装置から画像を印刷して出力させるようにしてもよい。また、画素値データを転送して他のコンピューター装置に出力し、他のコンピューター装置経由でモニター画面に表示させたり画像を印刷させたりしてもよい。
【0007】
また、手段2では、前記撮像装置は前記撮像対象の移動する前記コントラストが一旦停止するタイミングで前記画像を撮像するようにした。
撮像対象を静止させた状態で画像を撮像・取得するほうが、よりぼけのないシャープなグレースケールの画像を取得することができるからである。尚、シャッタースピードに対してコントラストの移動スピードが相対的にかなり遅ければ必ずしもコントラストの移動を一旦停止させなくともぼけのない画像を取得することは可能である。
また、手段3では、前記撮像装置を前記レンズに焦点を合わせるように撮像するようにした。
撮像装置は眼鏡レンズの隠しマークを撮像するため、眼鏡レンズに焦点が合うことがよい。撮像装置の被写界深度によっては必ずしも隠しマークに焦点がなくともよい。被写界深度が十分深ければ眼鏡レンズ上に焦点がなくともよい。尚、撮像装置は眼鏡レンズに完全に焦点が合っていなくとも撮像した画像データについて公知の画像処理をすることによって隠しマークの位置を特定することが可能である。
また、手段4では、前記撮像対象は表示装置のモニター画面であって、前記モニター画面に前記コントラストが移動する画像が表示されるようにした。
つまり、コンピューター装置等の機器に接続あるいは附属する表示装置のモニター画面にコントラストが移動する動画が表示されて画像が移動することで明暗を与えるようにした場合である。このような構成であれば、実際にコントラストのある物体が移動するような構成に対して機械的な構成が不要となるため実現がより簡単となる。
また、手段5では、前記隠しマークの位置が表示装置のモニター画面上に表示されるようにした。
つまり、コンピューター装置等の機器に接続あるいは附属する表示装置のモニター画面に検出した隠しマークの位置が表示される場合である。隠しマークはレンズ面のどの位置にあるかがわかるように例えばレンズ面の外郭とともに表示されることがよい。
また、手段6では、前記撮像装置がテレセントリックレンズを光学系として備えているようにした。
テレセントリックレンズは主光線がレンズ光軸に対して平行になるように設計されているため、撮像装置をレンズ面に正対させて撮像する際に使用するレンズとして歪みの少ない正確なレンズ面の画像を取得できる。
【0008】
また、手段7では、隠しマークが施された眼鏡レンズのレンズ面を挟んだ位置に撮像対象と撮像手段とをそれぞれ配置し、コントラストを有する前記撮像対象の前記コントラストを前記レンズ面を横切る方向に移動させ、前記コントラストの移動に伴って複数の画像を前記撮像手段によって前記レンズ面を通して撮像し、得られた複数の前記画像データについて画素ごとに輝度に応じた複数の画素値を得るようにし、画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部と暗部に対応した画素値以外の画素値を平均化して得られた画素値に基づいて隠しマークを表示させるようにした。
また、手段8では、前記撮像手段は前記撮像対象の移動する前記コントラストが一旦停止するタイミングで前記画像を撮像するようにした。
また、手段9では、前記撮像手段を前記眼鏡レンズに焦点を合わせるように撮像するようにした。
手段7~9は手段1~3を方法的に表現したものである。
また、手段10では、画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの明部に対応した画素値をカットするようにした。
レンズの画像においてはコントラストの明部に対応した画素値は背景として明るくなってしまいグレースケールを見る際に邪魔となるためである。
また、手段11では、画素ごとに得られた複数の画素値について前記コントラストの暗部に対応した画素値をカットするようにした。
黒側もカット することで、画素値を0に近づけることができ背景がもっとも黒くなるのでよりグレースケールを際立たせることができる。
また、手段12では、得られた前記画像についてエッジ強調のための補正処理をするようにした。
これによって、グレースケールを際立たせることができる。具体的には補正処理とは撮像手段によって取得した濃淡画像の画像処理である。グレースケールを含む二次元画像について、ある画素に対してエッジフィルターを適用して計算することがよい。具体的には、横方向と縦方向で微分(差分:引き算による差)を取り、両方の結果を合成するようにして補正する。このような補正計算を行うための公知のエッジフィルターとして、例えば一階微分フィルターとしてプレヴィットフィルター、ソーベルフィルター、ロバーツフィルター等が挙げられる。二階微分フィルターとしてラプラシアンフィルターが挙げられる。
また、手段13では、前記レンズ面を横切る方向を変えてコントラストを移動させるように撮像するようにした。
これによって、様々な方向から隠しマークに対して光を乱反射・屈折させることができ隠しマーク位置のグレースケールの光をまんべんなく捉えることができる。
【0009】
上述の各手段に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、手段1に示した発明の全てまたは一部の構成に手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、手段1に示した発明に、手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、手段1から手段13に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、眼鏡レンズの隠しマークをレンズを撮像した画像上に明瞭に表示させることができることとなり、簡単な構造で誤検出のない隠しマークの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態における眼鏡レンズの隠しマークの検出システムの概要を説明する模式図。
【
図2】(a)はモニター画面に表示される横縞の縞模様の平面図、(b)は同じく縦縞の縞模様の平面図。
【
図3】実施の形態1における電気的構成を説明するブロック図。。
【
図4】実施の形態1における隠しマークを検出するためのメインルーチンを説明するフローチャート。
【
図5】実施の形態1における取得した画像データの画像処理のサブルーチンを説明するフローチャート。
【
図6】実施の形態2における眼鏡レンズの隠しマークの検出システムの概要を説明する模式図。
【
図7A】隠しマークが現れる原理を説明する説明図。
【
図7B】隠しマークが現れる原理を説明する説明図。
【
図7C】隠しマークが現れる原理を説明する説明図。
【
図7D】隠しマークが現れる原理を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1の眼鏡レンズの隠しマークの検出システムの概要を説明する図である。
図1において本発明とは直接関係のない構成については省略する。検出システムは、検出対象となる眼鏡レンズ11の上方に配置される光学系としてテレセントリックレンズを備えたデジタルカメラ12と、眼鏡レンズ11の下方に配置される第1のモニター装置13とを備えている。デジタルカメラ12は8ビットの画素値となるCCD型の撮像素子を備えた電子シャッターを備えたカメラである。デジタルカメラ12は架台14に支持された状態で、対物レンズが下方、つまり眼鏡レンズ11のレンズ面方向を向くように配置されている。眼鏡レンズ11は第1のモニター装置13に附属するホルダー15によって光軸が垂直方向となるように支持されている。デジタルカメラ12の光軸方向と眼鏡レンズ11の光軸方向は一致する。第1のモニター装置13はデジタルカメラ12の撮像対象であり、そのモニター画面13aには明度の大きく異なるコントラストとなる縞模様が移動する動画が表示される。モニター画面13aに表示される縞模様は
図2(a)(b)に示すような彩度のない白と黒の同幅の横縞と縦縞の模様であり、これらの縞模様がごく短い間隔で幅方向(白と黒が交互に繰り返される方向)に移動→停止→移動を繰り返す動画が表示される。移動開始から停止するまでの一回の縞模様の移動距離は画面上で数十μm~1000μm(1mm)程度とされ、この移動距離は適宜変更可能とされている。また、デジタルカメラ12の電子シャッターの連写スピード(撮像するタイミング)との同期をさせるために移動速度も適宜変更可能とされている。
【0013】
デジタルカメラ12と第1のモニター装置13はそれぞれケーブル20でコンピュータ装置16に接続されている。コンピュータ装置16は第2のモニター装置17、入力手段としてのキーボード18、入力手段としてのマウス19とを備えている。第2のモニター装置17はデジタルカメラ12で撮像された眼鏡レンズ11の画像データについてコンピュータ装置16内で画像処理された後の画像を表示するための表示手段(あるいは出力手段)となる。
このような構成において、デジタルカメラ12は眼鏡レンズ11に焦点が合った状態で第1のモニター装置13のモニター画面13aを連写モードで撮像する。モニター画面13aには縞模様の幅方向に1ピクセル移動してその後停止するという動作を繰り返す動画を表示させる。デジタルカメラ12は動画の停止タイミングで繰り返し撮像していくこととなる。
この際に作業者は、コンピュータ装置16を操作してモニター画面13aの停止タイミングで撮像が実行され、かつ連写スピードと縞模様の移動速度とを同期させるように初期設定する。撮像工程においては、眼鏡レンズ11とデジタルカメラ12が静止しているため眼鏡レンズ11は常に外形的に変わらない画像として撮像される。各画像データはすべて同じ眼鏡レンズ11の画像であるが、背景となる縞模様が移動するため、各画像における画素の輝度(画素値)は画像ごとに少しずつ異なる。
所定の回数の撮像が終了した段階で画像処理をした画像データに基づいて眼鏡レンズ11の画像が第2のモニター装置17に表示される。
【0014】
次に、
図3のブロック図に基づいてコンピュータ装置16の電気的な構成を説明する。尚、本発明とは直接関係のない構成については省略する。
コンピュータ装置16のコントローラMCにはデジタルカメラ12、第1のモニター装置13、第2のモニター装置17、キーボード18、マウス19等がそれぞれ接続されている。
制御手段、算出手段としてのコントローラMCは周知のCPUやROM及びRAM等のメモリ、タイマ等から構成されている。コントローラMC内のROM内にはデジタルカメラ12の撮像を実行するための撮像プログラム、デジタルカメラ12で撮影して得られた画像データを画像処理をするための画像処理プログラム、第1のモニター装置13縞模様が移動する動画を表示させるための変動表示プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラム、第1のモニター装置13のモニター画面13aに表示させるための縞模様オブジェクトデータ、マスター画像データ等が記憶されている。
コントローラMC内のRAM内にはデジタルカメラ12で撮像した多数の画像データや第1のモニター装置13のモニター画面13aの縞模様画像や画像処理プログラムを実行する際の計算データ等が一旦記憶される。
【0015】
次に、
図4及び
図5のフローチャートに基づいてコントローラMCが実行する本システムによる隠しマークの検出のルーチンについて説明する。
まず、ステップS1の工程においてコントローラMCは、第1のモニター装置13を制御してそのモニター画面13aに明暗(白黒)の縞模様が移動する動画の表示を開始させる。より具体的には本実施の形態では、ROMからマスター画像データと縞模様オブジェクトデータを呼び出してマスター画像上に
図2(a)の横縞の縞模様オブジェクトを表示させ、例えば1ピクセルずつ上方から下方へと変動する動画を表示させる。コントローラMCは表示画像を1ピクセルを移動させたとことで一旦画像を停止させ一定の時間停止させた後に再び1ピクセルを移動させる動作を繰り返すように制御する。本実施の形態ではモニター画面13aを停止させるタイミングでシャッター開放され、かつモニター画面13aにおいて1ピクセルを移動させる時間と一回の停止時間との合算とデジタルカメラ12の電子シャッターの連写する際の撮像タイミングとを同期させるように設定する。
次いで、ステップS2の工程においてコントローラMCは、連写モードのデジタルカメラ12を制御して第1のモニター装置13の縞模様オブジェクトが停止するタイミングで電子シャッターが起動するように制御する。そして、デジタルカメラ12によって取得した画像データを画素ごとにアドレスをつけてRAMに格納させていく。ここで得られる画像データは眼鏡レンズ11とデジタルカメラ12が静止状態であるため、すべての画像データをn個取得すると、例えばある画素Xについてn個の画素数のデータを得ることとなる。
次いで、コントローラMCはステップS3で所定の第1の時間が経過したかどうか判断し、経過したと判断するとステップS4の工程においてコントローラMCは、
図2(a)の横縞の縞模様オブジェクトを
図2(b)の縦縞の縞模様オブジェクトに切り替えてステップS1と同様に1ピクセルずつ左右方向に変動する移動と停止を繰り返す動画をモニター画面13aに表示させる。
次いで、コントローラMCはステップS5で所定の第2の時間が経過したかどうか判断し、経過したと判断するとステップS6でモニター画面13aにおいて縞模様が移動する動画の表示を終了するように制御し、同時にデジタルカメラ12の撮像を停止制御する。
次いで、コントローラMCはステップS7において、取得した画像データに基づいて画像処理のサブルーチンを実行し、ステップS8においてその結果として検出した隠しマークを隠しマークをグレースケールの輝度で、それ以外の部分を黒の輝度で第2のモニター装置17上に表示させルーチンは終了する。
【0016】
次に、ステップS7で実行される画像処理のサブルーチンについて説明する。
ステップS71の工程において、取得したすべての画像データのすべての画素について50よりも小さく200よりも大きな画素値となるものについてカットするようにコントローラMCは論理フィルターを適用して計算する。具体的には50よりも小さく200よりも大きな画素値を有する画素について画素値を0に書き換える処理をする。この工程はグレースケールの輝度の背景を画素値0とするためである。これによって隠しマーク位置以外の画像領域について背景を黒くすることができ、グレースケールを際立たせることができる。輝度について50よりも小さく200よりも大きな画素値を有する画素は画素値0であってすべてを積算しても0であるため算術平均値は求めない。
そして、続くステップS72で、コントローラMCはすべての取得した画像の画素について50以上200以下の画素値となるものを画素ごとにカウントするとともに、カウントした画素ごとのトータルの画素値を積算する。50以上200以下の画素値はつまり輝度としてグレースケールとなる画素値であって、縞模様の明るい部分からの光を隠しマークで乱反射したり屈折したりした光の濃淡が現れたものとされる。この工程ではグレースケールの輝度を有する画素のみを選択し画素ごとに積算する。つまり、ある画素Xについて1~n個のグレースケールの輝度となる画素値が得られるとした場合に1~nのすべての画素値を積算することとなる。
次いで、ステップS73でコントローラMCは画素ごとに積算されたトータルの画素数をカウント数で除して数値を得るようにする。つまり、ある画素Xについて画素値Lとして1~n個の画素値が得られたとし、下記数1の式で算術平均値を求め、その結果を当該画素に適用する。
次いで、ステップS74でコントローラMCは得られた画像処理をした眼鏡レンズ11の画像の画像データに対してエッジ強調の補正を実行してサブルーチンは終了する。エッジ強調として眼鏡レンズ11の画像のすべての画素に対して公知の一階微分フィルタを適用する。
【0017】
【0018】
上記のような構成とすることで本実施の形態1は次のような効果が奏される。
(1)肉眼では視認しにくい隠しマークの位置がS/N比の高いグレースケールで明瞭に確認することができるため誤検出がない。
(2)基本的に検出システムは、デジタルカメラ12と、第1のモニター装置13だけあればグレースケールを検出できるため、システムとして構造が簡単で大型化しないため、レンズ加工工程で導入しやすい。
(3)第1のモニター装置13に表示される縞模様は横縞と縦縞という異なる方向に移動する構成であるため、隠しマークに乱反射したり屈折したりする光が多様化して隠しマークの位置を示す輝度のデータが得やすくなる。
【0019】
実施の形態1に基づく実施例
上記システムにおいて、以下の条件で実施した結果を表1に示す。表1では背景が黒で隠しマークがグレースケールで現れている。
・撮像対象:画面上1.5mm間隔で配置された縞模様を1ピクセルずつ動かし撮像、途中で撮像枚数が18枚に達した時間で縞模様の移動方向を横縞方向から縦縞方向に90度変更する
・撮像装置:テレセントリックレンズを備えた画素数約900万画素のCCD型デジタルカメラにて撮像
・撮像枚数:36枚
【0020】
【0021】
(実施の形態2)
実施の形態2は
図6に示すように撮像対象が実施の形態1の第1のモニター装置13の代わりに一軸の電動アクチュエーター21を用いた例である。以下では主として電動アクチュエーター21の概要を説明し、実施の形態1の構成と同じ部材については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
電動アクチュエーター21は架台22に支持されたモーターユニット23を備えている。モーターユニット23はDCモーター24とロータリーエンコーダー25とを備えている。
モーターユニット23から水平方向にボールねじ26が延出されている。ボールねじ26にはボールねじ26の雄ネジ26aと噛み合うコマ部材27が配設されている。ロータリーエンコーダー25はボールねじ26の回転量を検出し、検出した回転量に基づいてコマ部材27のボールねじ26上の位置(進出量)が計算される。コマ部材27にはブラケット28を介して水平プレート29が装着されている。水平プレート29の表面には白と黒のコントラストの縞模様が描かれている。コントラストはコマ部材27の進退方向が幅方向となるようにセットされている。
デジタルカメラ12とDCモーター24とロータリーエンコーダー25はコンピュータ装置16に接続されている。
【0022】
このような構成において、デジタルカメラ12は眼鏡レンズ11に焦点が合った状態で電動アクチュエーター21の水平プレート29の縞模様を撮像することとなる。電動アクチュエーター21はボールねじ26を回転させてわずかずつ水平プレート29を進出させる。具体的には実施の形態1と同様に縞模様の幅方向に1ピクセル移動させてその後停止するという動作を繰り返すようにDCモーター24を制御する。デジタルカメラ12は水平プレート29の停止タイミングで繰り返し撮像していくこととなる。
この際に作業者は、コンピュータ装置16を操作して水平プレート29の停止タイミングで撮像が実行され、かつ連写スピードと縞模様の移動速度とを同期させるように初期設定する。
撮像工程においては、眼鏡レンズ11とデジタルカメラ12が静止しているため眼鏡レンズ11は常に外形的に変わらない画像として撮像されるため、画像データはすべて同じ眼鏡レンズ11の画像であるが、背景となる縞模様が移動するため、各画像における画素の輝度(画素値)は画像ごとに少しずつ異なる。
所定の回数の撮像が終了した段階で画像処理をした画像データに基づいて眼鏡レンズ11の画像が第2のモニター装置17に表示される。
実施の形態2では得られた画像データの処理は実施の形態1と同様である。このような構成でも実施の形態1のシステムと同様の効果が奏される。
【0023】
上記実施の形態は本発明の原理及びその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態では、グレースケールの輝度の画素について積算された画素数をカウント数で除して数値を得るようにしていたが、グレースケール以外が黒く表れるため、これを背景としてグレースケールが明るい色として現れればよく、それゆえ必ずしもカウント数で除す必要はない。要は隠しマークの情報が明瞭に見ることができればよい。実施の形態では画素値は8ビットで表されるため、もっとも明るい画素値は255となるためこれ以下の数値となるように適宜調整するようにしてもよい。
あるいは、実際の処理後の画像を第2のモニター装置17上で目視し、カウント数で除す場合に暗すぎる場合には適宜除数を小さくするようにしてもよい。
・上記実施の形態では画像処理をした画像データに基づいて眼鏡レンズ11の画像を第2のモニター装置17に表示させるようにしたが、第2のモニター装置17以外に画像データをプリンタや他の装置へデータを転送するようにしてもよい。
・上記実施の形態では撮像したデータをまず、すべて格納するようにしてから平均化する(所定の除数で割る)計算をするようにしていたが、撮像する度に直近の画像データとのみとの間で平均化をするようにして、過去の画像データを保存しないようにして処理速度を上げるようにしてもよい。
・上記実施の形態では取得したすべての画像データの画素の輝度について50よりも小さく200よりも大きな画素値についてカットするように論理フィルターを適用したが、カットする画素値のしきい値は適宜変更可能である。
・上記実施の形態のルーチンでは時間経過によって繰り返す画像データの取得を停止するようにしていたが、画像データの取得数が一定に達することで画像データの取得を停止するようにしてもよい。また、上記実施の形態のルーチンでは第1の時間が経過することで
図2(a)の横縞の縞模様オブジェクトを
図2(b)の縦縞の縞模様オブジェクトに切り替えるようにしていたが、切り替えタイミングを時間ではなく撮像枚数の所定の取得数としてもよい。
・上記実施の形態では横縞と縦縞の2種類のコントラストオブジェクトを用意したが、向きの違うコントラストオブジェクト(例えば45度方向)を用意して、乱反射光等の多様化をより図るようにしてもよい。
・コントラストオブジェクトの移動制御として上記実施の形態では一例として、1ピクセルずつ変動させたが、一回の移動としてもっと大きく移動させるようにしてもよい。
・コントラストの白と黒の数やその幅は適宜変更可能である。
・撮像手段としてデジタルカメラ12のカメラレンズはテレセントリックレンズを用いたが、テレセントリックレンズ以外のレンズを用いてもよい。
・コントラストは白黒でなくとも明暗があればよい。つまり、濃淡画像でなくカラー画像であっても輝度の違いが画素値として区別して得られるのであればよい。
・上記では白と黒のコントラストの部分をカットするような画像処理をしたが、白側だけをカットしてもよい。
・実施の形態1のような動画ではなく実施の形態2では実際にコントラストの縞模様が描かれた物体が動く例として電動アクチュエーター21を挙げたがこれは一例である。例えば無限軌道として前後輪に無端の外面にコントラストが描かれたベルトを掛け、これを回転させるようにしてもよい。
本願発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素、又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材とてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
11…眼鏡レンズ、12…撮像装置としてのデジタルカメラ、13a…撮像対象としてのモニター画面、29…撮像対象としての水平プレート。