(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042799
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】複合フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240322BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147652
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 康宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 直
(72)【発明者】
【氏名】前田 健太
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA18
5J097BB02
5J097BB15
5J097DD05
5J097DD07
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5J097DD27
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5J097FF04
5J097FF05
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5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK03
5J097KK10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】共振子の配置の自由度を損ねることなくフィルタ特性の急峻性を高められる、複合フィルタ装置を提供する。
【解決手段】ラダー型である第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bを備える複合フィルタ装置10であって、第1のフィルタ1Aに含まれる第1の弾性波共振子と、支持体5と、第2のフィルタ1Bに含まれる第2の弾性波共振子3Bと、を備える。圧電性基板2Aの第1の主面2a、圧電性基板2Bの第3の主面2c及び支持体5により囲まれた空間内に第1の弾性波共振子及び第2の弾性波共振子3Bが位置している。第2の弾性波共振子3Bが、第2のフィルタ1Bにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子及び第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、第2の弾性波共振子3Bと配線電極4とが重なっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの直列腕共振子及び少なくとも1つの並列腕共振子をそれぞれ含む、第1のフィルタ及び第2のフィルタを備える複合フィルタ装置であって、
互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する第1の圧電性基板と、
前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられている機能電極を含み、前記第1のフィルタに含まれる第1の弾性波共振子と、
前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられており、信号電位に接続されない、配線電極と、
前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に、前記第1の弾性波共振子を囲むように設けられている支持体と、
前記支持体上に設けられており、前記支持体側に位置している第3の主面、及び前記第3の主面と対向している第4の主面を有する第2の圧電性基板と、
前記第2の圧電性基板の前記第3の主面に設けられている機能電極を含み、前記第2のフィルタに含まれる第2の弾性波共振子と、
を備え、
前記第1の圧電性基板の前記第1の主面、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面及び前記支持体により囲まれた空間が構成されており、該空間内に前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が位置しており、
前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び前記第2のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、前記第2の弾性波共振子と前記配線電極とが重なっている、複合フィルタ装置。
【請求項2】
前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である、請求項1に記載の複合フィルタ装置。
【請求項3】
前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である、請求項1に記載の複合フィルタ装置。
【請求項4】
前記配線電極が、基準電位に接続される、請求項2または3に記載の複合フィルタ装置。
【請求項5】
前記配線電極が、基準電位及び信号電位に接続されない、請求項2または3に記載の複合フィルタ装置。
【請求項6】
前記第2の弾性波共振子の前記機能電極が、1対のバスバー及び複数の電極指を含むIDT電極であり、
平面視において、前記配線電極が、前記1対のバスバーの双方と重なっている、請求項2または3に記載の複合フィルタ装置。
【請求項7】
前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられている絶縁膜をさらに備え、
前記配線電極の少なくとも一部が、前記絶縁膜上に設けられており、
平面視において、前記配線電極における前記絶縁膜上に設けられている部分と、前記第2の弾性波共振子とが重なっている、請求項2または3に記載の複合フィルタ装置。
【請求項8】
前記配線電極が第1の配線電極であり、
前記第2の圧電性基板の前記第3の主面に設けられており、信号電位に接続されない、第2の配線電極をさらに備え、
前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び前記第1のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、前記第1の弾性波共振子と前記第2の配線電極とが重なっている、請求項2または3に記載の複合フィルタ装置。
【請求項9】
前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である、請求項8に記載の複合フィルタ装置。
【請求項10】
前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である、請求項8に記載の複合フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振子を有する複合フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波共振子を有する複合フィルタ装置は、携帯電話機のフィルタなどとして広く用いられている。下記の特許文献1には、複合フィルタ装置としての、電子部品の例が開示されている。特許文献1に記載された複合フィルタ装置の一例は、具体的には、デュプレクサである。このデュプレクサにおいては、1対の圧電基板が、接着層により貼り合わされている。1対の圧電基板の間には、空隙が形成されている。空隙内に位置するように、それぞれの圧電基板の主面にIDT(Interdigital Transducer)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合フィルタ装置におけるフィルタには、通過帯域の高域側または低域側の端部付近において、良好な急峻性が求められる。急峻性が良好であれば、通過帯域付近の周波数帯域においても、不要な信号の通過がより確実に抑制される。急峻性を改善するために、例えば、フィルタにおける共振子に並列に、容量素子などが接続される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような複合フィルタ装置において、共振子に並列に容量素子を接続する場合、圧電基板には、容量素子を配置するための領域が必要となる。そのため、圧電基板における共振子の配置の自由度が損なわれるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる、複合フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複合フィルタ装置は、少なくとも1つの直列腕共振子及び少なくとも1つの並列腕共振子をそれぞれ含む、第1のフィルタ及び第2のフィルタを備える複合フィルタ装置であって、互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する第1の圧電性基板と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられている機能電極を含み、前記第1のフィルタに含まれる第1の弾性波共振子と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられており、信号電位に接続されない、配線電極と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に、前記第1の弾性波共振子を囲むように設けられている支持体と、前記支持体上に設けられており、前記支持体側に位置している第3の主面、及び前記第3の主面と対向している第4の主面を有する第2の圧電性基板と、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面に設けられている機能電極を含み、前記第2のフィルタに含まれる第2の弾性波共振子とを備え、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面及び前記支持体により囲まれた空間が構成されており、該空間内に前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が位置しており、前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び前記第2のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、前記第2の弾性波共振子と前記配線電極とが重なっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る複合フィルタ装置によれば、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である
【
図2】本発明の第1の実施形態における第1の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における第1の圧電性基板上、及び第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における、第2の弾性波共振子を含む等価回路を示す模式的回路図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態及び比較例における、第2の弾性波共振子のインピーダンス周波数特性を示す図である。
【
図7】本発明の第2の弾性波共振子の電極構成を示す透視平面図である。
【
図8】
図2中のII-II線に沿う略図的断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態における第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的平面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態における第1の圧電性基板上、及び第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0011】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
図1においては、各共振子を、矩形に2本の対角線を加えた略図により示す。他の略図的断面図や略図的平面図においても同様である。
【0013】
複合フィルタ装置10は第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bを有する。第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bはそれぞれ、ラダー型フィルタである。よって、第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bはそれぞれ、少なくとも1つの直列腕共振子及び少なくとも1つの並列腕共振子を有する。本実施形態においては、第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bの直列腕共振子及び並列腕共振子は、いずれも弾性波共振子である。第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bはそれぞれ、送信フィルタであってもよく、受信フィルタであってもよい。以下において、複合フィルタ装置10の具体的な構成を説明する。
【0014】
複合フィルタ装置10は第1の圧電性基板2Aを有する。第1の圧電性基板2Aは、圧電材料のみからなる基板である。第1の圧電性基板2Aは第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2a及び第2の主面2bは互いに対向している。なお、第1の圧電性基板2Aは、圧電体層を含む積層基板であってもよい。
【0015】
図2は、第1の実施形態における第1の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。
図2においては、後述する配線電極以外の配線を省略している。
図2以外の略図的平面図においても同様である。
【0016】
第1の圧電性基板2Aにおいて、複数の弾性波共振子が構成されている。具体的には、第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aに、複数の機能電極が設けられている。複数の弾性波共振子はそれぞれ、機能電極を含む。本実施形態では、第1の圧電性基板2Aに設けられた各機能電極は、IDT電極である。第1の圧電性基板2Aにおいて構成された複数の弾性波共振子は、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子を含む。該複数の弾性波共振子により、第1のフィルタ1Aが構成されている。第1のフィルタ1Aの複数の弾性波共振子は、第1の弾性波共振子3Aを含む。第1の弾性波共振子3Aは、直列腕共振子であってもよく、並列腕共振子であってもよい。
【0017】
第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aには、配線電極4が設けられている。配線電極4は、基準電位に接続される。本実施形態では、配線電極4は並列腕共振子に接続されている。なお、配線電極4は、並列腕共振子に接続されていなくともよい。
【0018】
第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aに、支持体5が設けられている。支持体5は、第1の圧電性基板2Aにおいて構成された複数の弾性波共振子を囲むように設けられている。より具体的には、支持体5は、第1の主面2aに設けられた複数の機能電極を囲んでいる。本実施形態では、支持体5は枠状の形状を有する。もっとも、第1の主面2aには、柱状の複数の支持体が、上記複数の弾性波共振子を囲むように設けられていてもよい。
【0019】
図1に戻り、支持体5上に第2の圧電性基板2Bが設けられている。第2の圧電性基板2Bは、圧電材料のみからなる基板である。第2の圧電性基板2Bは第3の主面2c及び第4の主面2dを有する。第3の主面2c及び第4の主面2dは互いに対向している。なお、第2の圧電性基板2Bは、圧電体層を含む積層基板であってもよい。
【0020】
図3は、第1の実施形態における第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的平面図である。
図4は、第1の実施形態における第1の圧電性基板上、及び第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。なお、上記
図1は、
図2、
図3及び
図4中のI-I線に沿う略図的断面図である。
【0021】
図3に示すように、第2の圧電性基板2Bにおいて、複数の弾性波共振子が構成されている。具体的には、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cに、複数の機能電極が設けられている。複数の弾性波共振子はそれぞれ、機能電極を含む。本実施形態では、第2の圧電性基板2Bに設けられた各機能電極は、IDT電極である。第2の圧電性基板2Bにおいて構成された複数の弾性波共振子は、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子を含む。該複数の弾性波共振子により、第2のフィルタ1Bが構成されている。第2のフィルタ1Bの複数の弾性波共振子は、第2の弾性波共振子3Bを含む。
【0022】
本実施形態の特徴は、第2の弾性波共振子3Bが、第2のフィルタ1Bにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子であり、
図4に示すように、平面視において、第2の弾性波共振子3Bと配線電極4とが重なっていることにある。もっとも、第2の弾性波共振子3Bは、第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子であってもよい。複合フィルタ装置10が上記の構成を有することによって、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる。これを以下において説明する。
【0023】
なお、本明細書において平面視とは、
図1における上方に相当する方向から複合フィルタ装置10を見ることをいう。
図1においては、例えば、第1の圧電性基板2A側及び第2の圧電性基板2B側のうち、第1の圧電性基板2A側が上方である。本明細書において急峻性が高いとは、通過帯域の端部付近において、ある一定の減衰量の変化量に対して、周波数の変化量が小さいことをいう。
【0024】
第2のフィルタ1Bのようなラダー型フィルタにおいては、通過帯域を構成している並列腕共振子の反共振周波数が通過帯域内に位置している。一方で、該並列腕共振子の共振周波数は、通過帯域よりも低域側に位置している。なお、並列腕共振子における共振周波数が高いほど、該共振周波数は、ラダー型フィルタの通過帯域に近い。そのため、ラダー型フィルタの並列腕共振子のうち、共振周波数が最も高い並列腕共振子は、フィルタ特性における急峻性に対する影響が大きい。この並列腕共振子における共振周波数及び反共振周波数の差が小さい場合、通過帯域の低域側の端部付近において、急峻性が高くなる。
【0025】
そして、並列腕共振子などの弾性波共振子に、並列に容量部が接続されている構成においては、該弾性波共振子に該容量部の静電容量が付与されている。それによって、該弾性波共振子における共振周波数及び反共振周波数の差が小さくなる。ここで、本実施形態では、平面視において、第2の弾性波共振子3Bと配線電極4とが重なっている。よって、
図1に示すように、第2の弾性波共振子3B及び配線電極4は互いに対向している。これにより、第2のフィルタ1Bの回路構成が、第2の弾性波共振子3Bに並列に容量部が接続された回路構成と等価な構成とされている。
【0026】
図5は、第1の実施形態における、第2の弾性波共振子を含む等価回路を示す模式的回路図である。
【0027】
上記のように、第2の弾性波共振子3B及び配線電極4は互いに対向している。それによって、第2の弾性波共振子3B及び配線電極4の間に、破線Aにより示す容量結合が生じている。より具体的には、第2の弾性波共振子3Bにおける高い電位側、及び低い電位側の双方において容量結合が生じている。これにより、第2のフィルタ1Bの回路構成は、第2の弾性波共振子3Bに、容量部が並列に接続された回路構成と等価となる。そのため、第2の弾性波共振子3Bに静電容量が付与されている。それによって、第2の弾性波共振子3Bにおける共振周波数及び反共振周波数の差を小さくすることができる。これを、第2の弾性波共振子3B及び配線電極4が互いに対向している場合と、対向していない場合とにおいて、インピーダンス周波数特性を比較することにより示す。なお、第2の弾性波共振子3B及び配線電極4が対向していない場合を比較例とする。
【0028】
図6は、第1の実施形態及び比較例における、第2の弾性波共振子のインピーダンス周波数特性を示す図である。
【0029】
図6に示すように、第1の実施形態においては、比較例よりも第2の弾性波共振子3Bの共振周波数及び反共振周波数の差が小さくなっていることがわかる。そして、第2の弾性波共振子3Bは、第2のフィルタ1Bの並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い共振子である。よって、第1の実施形態では、第2のフィルタ1Bにおける通過帯域の低域側の端部付近において、急峻性を高めることができる。
【0030】
なお、
図2に示すように、配線電極4は、第1のフィルタ1Aにおける並列腕共振子を基準電位に接続するために用いることができる。このように、第1の実施形態では、容量部のみのための配線を設けずして、第2のフィルタ1Bの回路構成を、該容量部が第2の弾性波共振子3Bに並列に接続された構成と等価な回路構成とすることができる。従って、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0031】
以下において、本実施形態の構成をより詳細に説明する。
【0032】
図7は、第2の弾性波共振子の電極構成を示す透視平面図である。
【0033】
並列腕共振子である第2の弾性波共振子3Bは、IDT電極15と、1対の反射器13及び反射器14を有する。第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cに、IDT電極15と、反射器13及び反射器14とが設けられている。
【0034】
IDT電極15は、1対のバスバーと、複数の電極指とを有する。1対のバスバーは、具体的には、第1のバスバー16及び第2のバスバー17である。第1のバスバー16及び第2のバスバー17は互いに対向している。複数の電極指は、具体的には、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19である。第1のバスバー16に、複数の第1の電極指18の一端がそれぞれ接続されている。第2のバスバー17に、複数の第2の電極指19の一端がそれぞれ接続されている。複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19は互いに間挿し合っている。第1の電極指18及び第2の電極指19は、互いに異なる電位に接続される。
【0035】
以下においては、第1の電極指18及び第2の電極指19を、単に電極指と記載することがある。IDT電極15の複数の電極指が延びる方向を電極指延伸方向とする。1対の反射器は、電極指延伸方向と直交する方向において、IDT電極15を挟み互いに対向している。IDT電極15に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。なお、本実施形態では、弾性波伝搬方向は、電極指延伸方向と直交する。
【0036】
第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bにおける、第2の弾性波共振子3B以外の各並列腕共振子及び各直列腕共振子も、第2の弾性波共振子3Bと同様に、IDT電極及び1対の反射器を有する。第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bにおける各並列腕共振子及び各直列腕共振子は、弾性表面波共振子である。第2のフィルタ1Bの並列腕共振子及び直列腕共振子は、第2の圧電性基板2Bを共有している。他方、第1のフィルタ1Aの並列腕共振子及び直列腕共振子は、第1の圧電性基板2Aを共有している。
【0037】
本実施形態においては、
図4に示す配線電極4は、平面視において、第2の弾性波共振子3Bにおける1対のバスバーの双方と重なっている。これにより、第2の弾性波共振子3Bに付与される静電容量を、より確実に大きくすることができる。よって、フィルタ特性における急峻性をより確実に、効果的に高くすることができる。なお、配線電極4は、平面視において、第2の弾性波共振子3Bの少なくとも一部と重なっていればよい。
【0038】
図1に示すように、第2の圧電性基板2Bを貫通するように、複数の貫通電極7Aが設けられている。各貫通電極7Aの一方端は支持体5に接続されている。支持体5は複数の金属層の積層体である。よって、支持体5は、貫通電極7Aと電気的に接続されている。各貫通電極7Aの他方端にはバンプ9が接合されている。
【0039】
図示しないが、支持体5には、第1のフィルタ1Aの弾性波共振子または第2のフィルタ1Bの弾性波共振子が接続されている。よって、第1のフィルタ1Aまたは第2のフィルタ1Bの弾性波共振子のうち一部は、支持体5、貫通電極7A及びバンプ9を介して外部に電気的に接続される。なお、支持体5は、弾性波共振子に、必ずしも電気的に接続されていなくともよい。
【0040】
図2に示すように、第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aには、複数の第1の電極パッド6Aが設けられている。複数の第1の電極パッド6Aは、平面視において、支持体5により囲まれている。図示しないが、第1の電極パッド6Aには、第1のフィルタ1Aの弾性波共振子が電気的に接続されている。なお、複数の第1の電極パッド6Aは、弾性波共振子に電気的に接続されていない第1の電極パッド6Aを含んでいてもよい。
【0041】
同様に、
図3に示すように、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cには、複数の第2の電極パッド6Bが設けられている。複数の第2の電極パッド6Bは、平面視において、支持体5により囲まれている。図示しないが、第2の電極パッド6Bには、第2のフィルタ1Bの弾性波共振子が電気的に接続されている。なお、複数の第2の電極パッド6Bは、弾性波共振子に電気的に接続されていない第2の電極パッド6Bを含んでいてもよい。
【0042】
図8は、
図2中のII-II線に沿う略図的断面図である。
【0043】
複合フィルタ装置10は複数の柱部材8を有する。第1の圧電性基板2A及び第2の圧電性基板2Bは、支持体5と共に、複数の柱部材8によっても支持されている。柱部材8の一方端は、第1の圧電性基板2Aに設けられた第1の電極パッド6Aに接続されている。柱部材8の他方端は、第2の圧電性基板2Bに設けられた第2の電極パッド6Bに接続されている。各柱部材8は複数の金属層の積層体である。よって、第1の電極パッド6A及び第2の電極パッド6Bは、柱部材8により、電気的に接続されている。
【0044】
第2の圧電性基板2Bを貫通するように、複数の貫通電極7Bが設けられている。各貫通電極7Bの一方端は第2の電極パッド6Bに接続されている。各貫通電極7Bの他方端にはバンプ9が接合されている。
【0045】
上記のように、複数の第1の電極パッド6Aは、第1のフィルタ1Aの弾性波共振子が接続された第1の電極パッド6Aを含む。複数の第2の電極パッド6Bは、第2のフィルタ1Bの弾性波共振子が接続された第2の電極パッド6Bを含む。よって、第1のフィルタ1A及び第2のフィルタ1Bの弾性波共振子のうち一部は、柱部材8、貫通電極7B及びバンプ9を介して外部に電気的に接続される。
【0046】
複数の貫通電極7Bは、第2の圧電性基板2Bではなく、第1の圧電性基板2Aに設けられていてもよい。同様に、
図1に示す複数の貫通電極7Aも、第2の圧電性基板2Bではなく、第1の圧電性基板2Aに設けられていてもよい。この場合において、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cに設けられた第2の弾性波共振子3Bと、配線電極4とが、平面視において重なっていてもよい。
【0047】
第1の実施形態のように、配線電極4が基準電位に接続されることが好ましい。この場合には、容量結合を介して、第2の弾性波共振子3Bから配線電極4に不要な信号が伝搬した場合に、該信号を外部の基準電位側に伝搬させることができる。それによって、減衰特性の劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、配線電極4は、浮き電極であってもよい。浮き電極とは、信号電位及び基準電位のいずれにも接続されない電極である。
【0049】
上記のように、第1の圧電性基板2A及び第2の圧電性基板2Bはそれぞれ、圧電材料のみからなる基板である。上記圧電材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、またはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることができる。
【0050】
もっとも、第1の圧電性基板2A及び第2の圧電性基板2Bはそれぞれ、圧電体層を含む積層基板であってもよい。例えば、
図9に示す第1の実施形態の変形例においては、第1の圧電性基板22Aは、第1の支持基板23A、第1の中間層24A及び第1の圧電体層25Aを有する。第1の支持基板23A上に第1の中間層24Aが設けられている。第1の中間層24A上に第1の圧電体層25Aが設けられている。
【0051】
第1の圧電性基板22Aの第1の主面22aは、第1の圧電性基板22Aにおける、最も第2の圧電性基板22B側に位置している主面である。本変形例では、第1の圧電体層25Aの主面が第1の主面22aである。もっとも、第1の主面22aは、少なくとも第1の圧電体層25Aの主面を含んでいればよい。例えば、第1の主面22aは、第1の圧電体層25Aの主面、並びに第1の中間層24Aの主面または第1の支持基板23Aの主面を含んでいてもよい。
【0052】
第1の圧電性基板22Aの第2の主面22bは、第1の主面22aと対向しており、かつ第1の圧電性基板22Aの最も外側に位置している主面である。よって、本変形例においては、第2の主面22bは、第1の支持基板23Aの、第1の圧電性基板22Aにおける最も外側に位置している主面である。
【0053】
同様に、第2の圧電性基板22Bは、第2の支持基板23B、第2の中間層24B及び第2の圧電性基板25Bの積層基板である。第2の圧電性基板22Bの第3の主面22cは、第2の圧電性基板22Bにおける、最も第1の圧電性基板22A側に位置している主面である。本変形例では、第2の圧電体層25Bの主面が第3の主面22cである。もっとも、第3の主面22cは、少なくとも第2の圧電体層25Bの主面を含んでいればよい。例えば、第3の主面22cは、第2の圧電体層25Bの主面、並びに第2の中間層24Bの主面または第2の支持基板23Bの主面を含んでいてもよい。
【0054】
第2の圧電性基板22Bの第4の主面22dは、第3の主面22cと対向しており、かつ第2の圧電性基板22Bの最も外側に位置している主面である。よって、本変形例においては、第4の主面22dは、第2の支持基板23Bの、第2の圧電性基板22Bにおける最も外側に位置している主面である。
【0055】
第1の支持基板23A及び第2の支持基板23Bの材料としては、例えば、シリコンなどの半導体や、酸化アルミニウムなどのセラミックスなどを用いることができる。第1の中間層24A及び第2の中間層24Bの材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸化タンタルなどの誘電体を用いることができる。なお、第1の中間層24A及び第2の中間層24Bは、複数の誘電体層の積層体であってもよい。第1の圧電体層25A及び第2の圧電体層25Bの材料としては、上記において、第1の実施形態における第1の圧電性基板2A及び第2の圧電性基板2Bに用いられる例として挙げた圧電材料を用いることができる。
【0056】
なお、第1のフィルタ及び第2のフィルタは、縦結合共振子型弾性波フィルタを有していてもよい。この場合には、例えば、縦結合共振子型弾性波フィルタに、直列腕共振子及び並列腕共振子が電気的に接続されていてもよい。本発明においては、第1のフィルタ及び第2のフィルタがそれぞれ、少なくとも1つの直列腕共振子及び少なくとも1つの並列腕共振子を有していればよい。
【0057】
図1に戻り、第1の実施形態においては、第1のフィルタ1Aの弾性波共振子は、全て第1の圧電性基板2Aにおいて構成されている。一方で、第2のフィルタ1Bの弾性波共振子は、全て第2の圧電性基板2Bにおいて構成されている。もっとも、本発明においては、第1のフィルタの弾性波共振子の一部が、第2の圧電性基板において構成されていてもよい。第2のフィルタの弾性波共振子の一部が、第1の圧電性基板において構成されていてもよい。
【0058】
ところで、弾性表面波共振子同士の共振周波数は、電極指ピッチ及びデューティ比を用いて比較することができる。なお、電極指ピッチとは、互いに異なる電位に接続される、隣り合う電極指同士の、弾性波伝搬方向における中心間距離である。例えば、弾性表面波共振子同士の電極指の厚みが同じである場合には、電極指ピッチ及びデューティ比の積の逆数が大きい方の弾性表面波共振子の共振周波数が、他方の弾性表面波共振子の共振周波数よりも高い。
【0059】
第2のフィルタ1Bにおける全ての並列腕共振子において、第2の弾性波共振子3BにおけるIDT電極15の電極指ピッチ及びデューティ比の積の逆数が最も大きいことが好ましい。それによって、第2のフィルタ1Bにおける全ての並列腕共振子において、第2の弾性波共振子3Bの共振周波数を、より確実に最も高くさせることができる。
【0060】
第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aには、各弾性波共振子のIDT電極を覆うように、誘電体膜が設けられていてもよい。それによって、第1のフィルタ1Aにおける各弾性波共振子が破損し難い。同様に、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cには、各弾性波共振子のIDT電極を覆うように、誘電体膜が設けられていてもよい。それによって、第2のフィルタ1Bの各弾性波共振子が破損し難い。なお、本発明における、第1の実施形態以外の構成においても、第1の面または第3の面に、機能電極を覆うように誘電体膜が設けられた構成を採用することができる。
【0061】
誘電体膜を有する弾性表面波共振子同士の誘電体膜の厚みが同じであり、かつ電極指の厚みが同じである場合には、電極指ピッチ及びデューティ比の積の逆数が大きい方の弾性表面波共振子の共振周波数が、他方の弾性表面波共振子の共振周波数よりも高い。
【0062】
以下において、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態の説明においては、第1の実施形態の説明に用いた図面を援用することとする。
【0063】
第2の実施形態は、
図3に示す第2の弾性波共振子3Bが、第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第2の実施形態の複合フィルタ装置は、第1の実施形態の複合フィルタ装置10と同様の構成を有する。
【0064】
第2のフィルタ1Bのようなラダー型フィルタにおいては、通過帯域を構成している直列腕共振子の共振周波数が通過帯域内に位置している。一方で、該直列腕共振子の反共振周波数は、通過帯域よりも高域側に位置している。なお、直列腕共振子における反共振周波数が低いほど、該反共振周波数は通過帯域に近い。そのため、ラダー型フィルタの直列腕共振子のうち、共振周波数が最も低く、反共振周波数が低い直列腕共振子は、フィルタ特性における急峻性に対する影響が大きい。この直列腕共振子における共振周波数及び反共振周波数の差が小さい場合、通過帯域の高域側付近において、急峻性が高くなる。
【0065】
そして、第1の実施形態と同様に、平面視において、第2の弾性波共振子3Bと配線電極4とが重なっている。それによって、第2の弾性波共振子3Bに静電容量が付与されている。これにより、第2の弾性波共振子3Bにおける共振周波数及び反共振周波数の差を小さくすることができる。よって、第2のフィルタ1Bにおける通過帯域の高域側の端部付近において、急峻性を高めることができる。さらに、容量部のみのための配線を設けずして、第2のフィルタ1Bの回路構成を、該容量部が第2の弾性波共振子3Bに並列に接続された構成と等価な回路構成とすることができる。従って、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0066】
第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子において、第2の弾性波共振子3BにおけるIDT電極15の電極指ピッチ及びデューティ比の積の逆数が最も小さいことが好ましい。それによって、第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子において、第2の弾性波共振子3Bの共振周波数を、より確実に最も低くさせることができる。
【0067】
第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子において、第2の弾性波共振子3BにおけるIDT電極15の電極指ピッチが最も広いことが好ましい。それによって、第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子において、第2の弾性波共振子3Bの反共振周波数を、より確実に最も低くさせることができる。
【0068】
本発明においては、第2の弾性波共振子3Bが、第2のフィルタ1Bにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び第2のフィルタ1Bにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であればよい。この第2の弾性波共振子3Bと配線電極4とが、平面視において重なっていればよい。
【0069】
図10は、第3の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
【0070】
本実施形態は、第1の圧電性基板2A及び配線電極4の間に絶縁膜36が設けられている点において、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の複合フィルタ装置は第1の実施形態の複合フィルタ装置10と同様の構成を有する。
【0071】
具体的には、第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aに絶縁膜36が設けられている。絶縁膜36は、第1の圧電性基板2Aの第1の主面2a、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2c及び支持体5により囲まれた空間内に位置している。本実施形態では、絶縁膜36は、第1の圧電性基板2Aにおいて構成された弾性波共振子には至らないように設けられている。そして、絶縁膜36上に、配線電極4の一部が設けられている。平面視において、配線電極4における絶縁膜36上に設けられている部分と、第2の弾性波共振子3Bとが重なっている。それによって、第2の弾性波共振子3Bと、配線電極4との間の距離を短くすることができる。
【0072】
ここで、第1の実施形態と同様に、第2のフィルタの回路構成は、第2の弾性波共振子3Bに並列に容量部が接続された構成と等価である。上記のように、第2の弾性波共振子3Bと、配線電極4との間の距離を短くすることができるため、上記容量部の静電容量を、効果的に大きくすることができる。よって、第2の弾性波共振子3Bに付与される静電容量を効果的に大きくすることができる。従って、フィルタ特性における急峻性を効果的に高くすることができる。
【0073】
なお、絶縁膜36上に配線電極4の全ての部分が設けられていてもよい。配線電極4の少なくとも一部が、絶縁膜36上に設けられていればよい。絶縁膜36の配置は特に限定されない。例えば、平面視したときに、絶縁膜36と、第1の圧電性基板2Aにおいて構成された弾性波共振子とが重なっていても構わない。絶縁膜36の材料としては、適宜の無機絶縁体を用いてもよく、適宜の樹脂を用いてもよい。
【0074】
以下においては、
図1などに示した、第1の圧電性基板2Aに設けられた上記配線電極4を第1の配線電極とする。
【0075】
図11は、第4の実施形態に係る複合フィルタ装置の略図的正面断面図である。
図12は、第4の実施形態における第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的平面図である。
図13は、
図12中のI-I線に沿う略図的断面図である。
図14は、第4の実施形態における第1の圧電性基板上、及び第2の圧電性基板上の電極構成を示す、略図的透視平面図である。なお、
図11は、
図12中のIII-III線に沿う略図的断面図である。
【0076】
図11に示すように、本実施形態の複合フィルタ装置40は、第1のフィルタ41A及び第2のフィルタ41Bを有する。本実施形態は、第1の弾性波共振子3Aが、第1のフィルタ41Aにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である点において、第1の実施形態と異なる。
図12に示すように、本実施形態は、第2の圧電性基板2B上における配線の配置においても、第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の複合フィルタ装置40は第1の実施形態の複合フィルタ装置10と同様の構成を有する。
【0077】
図13に示すように、第1のフィルタ41Aにおける第1の圧電性基板2Aの第1の主面2aには、第1の配線電極44Aが設けられている。ここで、第1のフィルタ41Aにおける配線の配置は、
図2に示した第1の実施形態の第1のフィルタ1Aにおける配線の配置と同じである。よって、
図13に示す第1の配線電極44Aは、第1の実施形態の配線電極4と同様に配置されている。平面視において、第1の配線電極44Aは、第2の弾性波共振子3Bと重なっている。
【0078】
図12に示すように、第2の圧電性基板2Bの第3の主面2cには、第2の配線電極44Bが設けられている。本実施形態では、第2の配線電極44Bは基準電位に接続される。なお、第2の配線電極44Bは浮き電極であってもよい。
【0079】
図14に示すように、平面視において、第2の配線電極44Bは、第1の弾性波共振子3Aと重なっている。これにより、第1のフィルタ41Aの回路構成は、第1の弾性波共振子3Aに容量部が並列に接続された構成と等価な回路構成とされている。そのため、第1の弾性波共振子3Aの共振周波数及び反共振周波数の差が小さくなっている。そして、本実施形態においては、第1の弾性波共振子3Aは、第1のフィルタ41Aにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である。よって、第1のフィルタ41Aにおける通過帯域の低域側の端部付近において、急峻性を高めることができる。
【0080】
なお、第2の配線電極44Bは、第2のフィルタ41Bにおける並列腕共振子及び基準電位を接続するために用いることができる。このように、本実施形態では、容量部のみのための配線を設けずして、第1のフィルタ41Aの回路構成を、該容量部が第1の弾性波共振子3Aに並列に接続された構成と等価な回路構成とすることができる。従って、共振子の配置の自由度を損ねることなく、第1のフィルタ41Aのフィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0081】
加えて、平面視において、第1の配線電極44A及び第2の弾性波共振子3Bが重なっている。それによって、第1の実施形態と同様に、共振子の配置の自由度を損ねることなく、第2のフィルタ41Bのフィルタ特性における急峻性を高めることができる。以上のように、本実施形態では、第1のフィルタ41A及び第2のフィルタ41Bの双方のフィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0082】
ところで、第1の弾性波共振子3AはIDT電極を有する。該IDT電極の1対のバスバーの双方が、平面視において第2の配線電極44Bと重なっていることが好ましい。それによって、第1の弾性波共振子3Aに付与される静電容量を、より確実に大きくすることができる。よって、フィルタ特性における急峻性をより確実に、効果的に高くすることができる。もっとも、第2の配線電極44Bは、平面視において、第1の弾性波共振子3Aの少なくとも一部と重なっていればよい。
【0083】
以下において、第5の実施形態について説明する。なお、第5の実施形態の基本的な構成は第4の実施形態と同様である。そのため、第5の実施形態の説明においては、第4の実施形態の説明に用いた図面を援用することとする。
【0084】
第5の実施形態は、
図12に示す第2の弾性波共振子3Bが、第2のフィルタ41Bにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である点において、第4の実施形態と異なる。上記の点以外においては、第5の実施形態の複合フィルタ装置は第4の実施形態の複合フィルタ装置40と同様の構成を有する。
【0085】
第2の弾性波共振子3Bは、第2のフィルタ41Bにおける、共振周波数が最も低い直列腕共振子であるため、反共振周波数も低い。上述したように、直列腕共振子における反共振周波数が低いほど、通過帯域の高域側の端部付近における急峻性に対する影響が大きい。そして、反共振周波数が低い直列腕共振子において、共振周波数及び反共振周波数の差が小さい場合には、上記急峻性が特に高くなる。
【0086】
図11に示すように、平面視において、第1の弾性波共振子3Aと第2の配線電極44Bとが重なっている。それによって、第1のフィルタ41Aの回路構成が、第1の弾性波共振子3Aに容量部が並列に接続された構成と等価な回路構成とされている。これにより、第1の弾性波共振子3Aの共振周波数及び反共振周波数の差を小さくすることができる。よって、第1のフィルタ41Aにおける通過帯域の高域側の端部付近において、急峻性を高めることができる。さらに、容量部のみのための配線を設けずして、第1のフィルタ41Aの回路構成を、該容量部が第1の弾性波共振子3Aに並列に接続された構成と等価な回路構成とすることができる。従って、共振子の配置の自由度を損ねることなく、フィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0087】
加えて、
図13に示すように、平面視において、第1の配線電極44A及び第2の弾性波共振子3Bが重なっている。それによって、第4の実施形態と同様に、共振子の配置の自由度を損ねることなく、第2のフィルタ41Bのフィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0088】
第1の弾性波共振子3Aが、第1のフィルタ41Aにおける全ての並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び第1のフィルタ41Aにおける全ての直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であることが好ましい。それによって、第4の実施形態及び第5の実施形態のように、第2のフィルタ41Bのフィルタ特性における急峻性に加えて、第1のフィルタ41Aのフィルタ特性における急峻性を高めることができる。
【0089】
以下において、本発明に係る複合フィルタ装置の形態の例をまとめて記載する。
【0090】
<1>少なくとも1つの直列腕共振子及び少なくとも1つの並列腕共振子をそれぞれ含む、第1のフィルタ及び第2のフィルタを備える複合フィルタ装置であって、互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する第1の圧電性基板と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられている機能電極を含み、前記第1のフィルタに含まれる第1の弾性波共振子と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられており、信号電位に接続されない、配線電極と、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に、前記第1の弾性波共振子を囲むように設けられている支持体と、前記支持体上に設けられており、前記支持体側に位置している第3の主面、及び前記第3の主面と対向している第4の主面を有する第2の圧電性基板と、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面に設けられている機能電極を含み、前記第2のフィルタに含まれる第2の弾性波共振子と、を備え、前記第1の圧電性基板の前記第1の主面、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面及び前記支持体により囲まれた空間が構成されており、該空間内に前記第1の弾性波共振子及び前記第2の弾性波共振子が位置しており、前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び前記第2のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、前記第2の弾性波共振子と前記配線電極とが重なっている、複合フィルタ装置。
【0091】
<2>前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である、<1>に記載の複合フィルタ装置。
【0092】
<3>前記第2の弾性波共振子が、前記第2のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である、<1>に記載の複合フィルタ装置。
【0093】
<4>前記配線電極が、基準電位に接続される、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合フィルタ装置。
【0094】
<5>前記配線電極が、基準電位及び信号電位に接続されない、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合フィルタ装置。
【0095】
<6>前記第2の弾性波共振子の前記機能電極が、1対のバスバー及び複数の電極指を含むIDT電極であり、平面視において、前記配線電極が、前記1対のバスバーの双方と重なっている、<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合フィルタ装置。
【0096】
<7>前記第1の圧電性基板の前記第1の主面に設けられている絶縁膜をさらに備え、前記配線電極の少なくとも一部が、前記絶縁膜上に設けられており、平面視において、前記配線電極における前記絶縁膜上に設けられている部分と、前記第2の弾性波共振子とが重なっている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合フィルタ装置。
【0097】
<8>前記配線電極が第1の配線電極であり、前記第2の圧電性基板の前記第3の主面に設けられており、信号電位に接続されない、第2の配線電極をさらに備え、前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子、及び前記第1のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子のうち一方であり、平面視において、前記第1の弾性波共振子と前記第2の配線電極とが重なっている、<1>~<7>のいずれか1つに記載の複合フィルタ装置。
【0098】
<9>前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子である、<8>に記載の複合フィルタ装置。
【0099】
<10>前記第1の弾性波共振子が、前記第1のフィルタにおける全ての前記直列腕共振子のうち共振周波数が最も低い直列腕共振子である、<8>に記載の複合フィルタ装置。
【符号の説明】
【0100】
1A,1B…第1,第2のフィルタ
2A,2B…第1,第2の圧電性基板
2a~2d…第1~第4の主面
3A,3B…第1,第2の弾性波共振子
4…配線電極
5…支持体
6A,6B…第1,第2の電極パッド
7A,7B…貫通電極
8…柱部材
9…バンプ
10…複合フィルタ装置
13,14…反射器
15…IDT電極
16,17…第1,第2のバスバー
18,19…第1,第2の電極指
22A,22B…第1,第2の圧電性基板
22a~22d…第1~第4の主面
23A,23B…第1,第2の支持基板
24A,24B…第1,第2の中間層
25A,25B…第1,第2の圧電体層
36…絶縁膜
40…複合フィルタ装置
41A,41B…第1,第2のフィルタ
44A,44B…第1,第2の配線電極