(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042801
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H03K 17/567 20060101AFI20240322BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240322BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20240322BHJP
H03K 17/082 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
H03K17/567
H02M1/08 A
H03K17/08 Z
H03K17/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147659
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】掛部 功
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740KK01
5J055AX34
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5J055FX13
5J055FX19
5J055FX38
5J055GX01
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】本発明は、複数の半導体スイッチング素子のそれぞれの駆動特性のばらつきを低減することができる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】半導体モジュール1は、負荷に電力を供給するIGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zと、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zに1対1の関係で駆動対象が設定され、当該駆動対象の例えばIGBT111xに対する位置関係に応じてIGBT111xを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12xとを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する複数の半導体スイッチング素子と、
前記複数の半導体スイッチング素子に1対1の関係で駆動対象が設定され、前記駆動対象の前記半導体スイッチング素子である対象スイッチング素子に対する位置関係に応じて前記対象スイッチング素子を駆動する駆動能力が設定される複数の駆動回路と
を備える半導体モジュール。
【請求項2】
前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記対象スイッチング素子に対する位置関係を判定する判定部を有する
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記判定部での判定結果に基づいて前記駆動能力を設定する設定部を有する
請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記設定部によって設定された前記駆動能力で前記対象スイッチング素子を駆動する駆動部を有する
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記複数の駆動回路のそれぞれは、自己が設けられた前記駆動回路の前記位置関係に応じて設定される閾値に基づいて該駆動回路の前記対象スイッチング素子を保護する保護部を有する
請求項1から3までのいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記複数の駆動回路のそれぞれは、自己が設けられた前記駆動回路の前記位置関係に応じて設定される閾値に基づいて該駆動回路の前記対象スイッチング素子を保護する保護部を有する
請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記判定部は、
前記位置関係に応じて電圧レベルが変更されるパッドと、
前記パッドの電圧レベルを判別する判別部と
を有する
請求項6に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記設定部は、
前記判別部での判別結果に基づいて前記駆動部の駆動能力を選択するための選択信号を生成する選択部と、
前記選択信号に基づいて前記駆動部の駆動能力を切り替える第一切替部と
を有する
請求項7に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記複数の半導体スイッチング素子のそれぞれは、自己に流れる電流を検知するための電流検知素子を有し、
前記保護部は、
前記電流検知素子で検知された検知電流を検知電圧に変換する変換部と、
自己が設けられた前記駆動回路の前記位置関係に応じて前記閾値としての基準電圧を切り替える第二切替部と、
前記検知電圧及び前記基準電圧を比較する比較部と、
前記比較部での比較結果に基づいて前記対象スイッチング素子を保護するか否かを判断し、該対象スイッチング素子を保護すると判断した場合には保護処理を実行する処理部と
を有する
請求項8に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記第二切替部は、前記位置関係の判定に前記選択信号を用いる
請求項9に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体スイッチング素子を備える半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換用絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)などの半導体スイッチング素子を制御するドライバー集積回路(Integrated Circuit:IC)は、入力信号に応じて半導体スイッチング素子のオン状態及びオフ状態を制御する基本機能を有している。半導体モジュールの1つであるインテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module:IPM)は半導体スイッチング素子及びドライバーICが組み込まれた状態で使用される。
【0003】
半導体スイッチング素子をオフ状態からオン状態に駆動するときは、ドライバーICによって半導体スイッチング素子を定電流回路で充電し、オン状態からオフ状態に駆動するときはドライバーICに設けられたスイッチによって半導体スイッチング素子に充電されている電荷を引き抜く。半導体スイッチング素子に流れる電流をドライバーICによって監視し、半導体スイッチング素子に過電流が流れた場合に、半導体スイッチング素子に流れる電流を抑えるための保護動作が働く機能をIPMに持たせることができる。
【0004】
特許文献1には、スイッチング素子の過電流を検出して保護動作を行う技術が開示されている。特許文献2には、並列接続された複数スイッチを駆動する場合に各配線経路のインピーダンスを等しくすることにより電流の偏りを抑制する技術が開示されている。特許文献3には、トランジスタのメイン電極とセンス電極とで配線インダクタンスに差を設けてメイン電極とセンス電極のゲート駆動電圧の差を小さくすることによって短絡電流検出の精度を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62860号公報
【特許文献2】特開2020-18055号公報
【特許文献3】特開2018-186600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IPMに設けられた複数の半導体スイッチング素子の配置と複数のドライバーICの配置によって各部品の電源インピーダンスが異なる。また、ドライバーICと半導体スイッチング素子の位置関係によってドライブ信号や過電流検出信号が伝送される配線のインピーダンスも異なる。これにより、複数のドライバーICが半導体スイッチング素子を駆動する特性にばらつきが生じる。特性ばらつきの影響で電力損失が増加したり、過電流保護機能の特性が複数のドライバーICごとに異なったりするという悪影響が生じる。
【0007】
本発明の目的は、複数の半導体スイッチング素子のそれぞれの駆動特性のばらつきを低減することができる半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による半導体モジュールは、負荷に電力を供給する複数の半導体スイッチング素子と、前記複数の半導体スイッチング素子に1対1の関係で駆動対象が設定され、前記駆動対象の前記半導体スイッチング素子である対象スイッチング素子に対する位置関係に応じて前記対象スイッチング素子を駆動する駆動能力が設定される複数の駆動回路とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数の半導体スイッチング素子のそれぞれの駆動特性のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による半導体モジュールの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による半導体モジュールの概略構成の一例を示す部品レイアウトを模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による半導体モジュールに備えられたゲート駆動回路の概略構成の一例を示す回路図である。
【
図4】比較例による半導体モジュールにおけるゲート駆動電流の電流波形の一例を模式的に示す図である。
【
図5】比較例による半導体モジュールにおけるゲート駆動電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
【
図6】比較例による半導体モジュールにおける検知電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による半導体モジュールにおけるゲート駆動電流の電流波形の一例を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による半導体モジュールにおけるゲート駆動電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による半導体モジュールにおける検知電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下、本発明の実施形態による半導体モジュールは、インバータ装置を例にとって説明するが、各実施形態によるインテリジェントパワーモジュールは、インバータ装置に限られず、コンバータ装置やモジュラーマルチレベル変換器などにも適用できる。
【0013】
本発明の一実施形態による半導体モジュールについて
図1から
図9を用いて説明する。まず、本実施形態による半導体モジュール1の全体構成の一例について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態による半導体モジュール1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図1では、理解を容易にするため、半導体モジュール1に接続された制御装置3、交流電源部4及び平滑用コンデンサ5が併せて図示されている。
【0014】
(半導体モジュールの全体構成)
図1に示すように、本実施形態による半導体モジュール1は、交流電源部4に接続されている。交流電源部4は例えば、三相交流電源(不図示)と、三相交流電源から入力される三相交流電力を全波整流する整流回路(不図示)とを有している。半導体モジュール1は、当該整流回路で整流された電力を平滑化する平滑用コンデンサ5に接続されている。当該整流回路は、図示は省略するが例えば6つのダイオードをフルブリッジ接続して構成されるか又は6つのスイッチング素子をフルブリッジ接続して構成されている。
【0015】
交流電源部4の正極側(すなわち当該整流回路の正極出力端子)に正極側ラインLpが接続され、交流電源部4の負極側(すなわち当該整流回路の負極出力端子)に負極側ラインLnが接続されている。正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に平滑用コンデンサ5が接続されている。半導体モジュール1は、正極側ラインLp及び負極側ラインLn間に印加された直流電圧を三相(U相、V相及びW相)交流電圧に変換するインバータ装置として機能するインテリジェントパワーモジュールで構成されている。半導体モジュール1には、半導体モジュール1を制御する制御装置3が接続されている。半導体モジュール1及び制御装置3によって電力変換装置が構成される。
【0016】
図1に示すように、半導体モジュール1は、正極側ラインLpが接続される正極側電源入力端子Tpと、負極側ラインLnに接続される負極側電源入力端子Tnとを有している。半導体モジュール1は、正極側電源入力端子Tpと負極側電源入力端子Tnとの間に直列に接続された半導体素子11u及び半導体素子11xを有している。半導体モジュール1は、正極側電源入力端子Tpと負極側電源入力端子Tnとの間に直列に接続された半導体素子11v及び半導体素子11yを有している。半導体モジュール1は、正極側電源入力端子Tpと負極側電源入力端子Tnとの間に直列に接続された半導体素子11w及び半導体素子11zを有している。
【0017】
半導体素子11u及び半導体素子11xは、U相出力アームを構成している。半導体素子11v及び半導体素子11yは、V相出力アームを構成している。半導体素子11w及び半導体素子11zは、W相出力アームを構成している。半導体素子11u,11v,11wは、正極側電源入力端子Tpを介して正極側ラインLpに接続され、上アーム部を構成する。半導体素子11x,11y,11zは、負極側電源入力端子Tnを介して負極側ラインLnに接続され、下アーム部を構成する。
【0018】
半導体素子11uは、IGBT111uと、IGBT111uに逆並列に接続された還流ダイオード112uとを有している。本実施形態では、IGBT111u及び還流ダイオード112uは、同一の半導体チップに形成されているが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。半導体素子11vは、IGBT111vと、IGBT111vに逆並列に接続された還流ダイオード112vとを有している。本実施形態では、IGBT111v及び還流ダイオード112vは、例えば同一の半導体チップに形成されていが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。半導体素子11wは、IGBT111wと、IGBT111wに逆並列に接続された還流ダイオード112wとを有している。本実施形態では、IGBT111w及び還流ダイオード112wは、例えば同一の半導体チップに形成されていが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。
【0019】
IGBT111u,111v,111wのそれぞれのコレクタ及び還流ダイオード112u,112v,112wのそれぞれのカソードは、互いに接続され、正極側電源入力端子Tpに接続されている。IGBT111u,111v,111wのそれぞれのエミッタ及び還流ダイオード112u,112v,112wのそれぞれのアノードは、互いに接続されている。IGBT111u,111v,111wのそれぞれは、自己(すなわちIGBT111u,111v,111w)に流れる電流を検知するための電流検知素子S(詳細は後述)を有している。
【0020】
半導体素子11xは、IGBT111xと、IGBT111xに逆並列に接続された還流ダイオード112xとを有している。本実施形態では、IGBT111x及び還流ダイオード112xは、同一の半導体チップに形成されているが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。半導体素子11yは、IGBT111yと、IGBT111yに逆並列に接続された還流ダイオード112yとを有している。本実施形態では、IGBT111y及び還流ダイオード112yは、例えば同一の半導体チップに形成されていが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。半導体素子11zは、IGBT111zと、IGBT111zに逆並列に接続された還流ダイオード112zとを有している。本実施形態では、IGBT111z及び還流ダイオード112zは、例えば同一の半導体チップに形成されていが、互いに異なる半導体チップに形成されていてもよい。
【0021】
IGBT111xのコレクタ及び還流ダイオード112xのカソードは、互いに接続されている。IGBT111xのコレクタ及び還流ダイオード112xのカソードは、IGBT111uのエミッタ及び還流ダイオード112uのアノードに接続されている。IGBT111yのコレクタ及び還流ダイオード112yのカソードは、IGBT111vのエミッタ及び還流ダイオード112vのアノードに接続されている。IGBT111zのコレクタ及び還流ダイオード112zのカソードは、IGBT111wのエミッタ及び還流ダイオード112wのアノードに接続されている。IGBT111x,111y,111zのそれぞれのエミッタ及び還流ダイオード112x,112y,112zのそれぞれのアノードは、互いに接続され、負極側電源入力端子Tnに接続されている。IGBT111x,111y,111zのそれぞれは、自己(すなわちIGBT111x,111y,111z)に流れる電流を検知するための電流検知素子S(詳細は後述)を有している。
【0022】
IGBT111uのエミッタ、還流ダイオード112uのアノード、IGBT111xのコレクタ及び還流ダイオード112xのカソードは、U相出力端子TUに接続されている。U相出力端子TUは、半導体モジュール1が交流電源部4から入力された直流電圧を直流-交流変換して生成したU相の交流電圧が出力される端子である。
【0023】
IGBT111vのエミッタ、還流ダイオード112vのアノード、IGBT111yのコレクタ及び還流ダイオード112yのカソードは、V相出力端子TVに接続されている。V相出力端子TVは、半導体モジュール1が交流電源部4から入力された直流電圧を直流-交流変換して生成したV相の交流電圧が出力される端子である。
【0024】
IGBT111wのエミッタ、還流ダイオード112wのアノード、IGBT111zのコレクタ及び還流ダイオード112zのカソードは、W相出力端子TWに接続されている。W相出力端子TWは、半導体モジュール1が交流電源部4から入力された直流電圧を直流-交流変換して生成したW相の交流電圧が出力される端子である。
【0025】
図1に示すように、負荷となる例えばモータ6は、半導体モジュール1に設けられたU相出力端子TU、V相出力端子TV及びW相出力端子TWに接続されている。このため、半導体素子11u,11v,11wに設けられたIGBT111u,111v,111wのエミッタ及び還流ダイオード112u,112v,112wのアノード並びに半導体素子11x,11y,11zに設けられたIGBT111x,111y,111zのコレクタ及び還流ダイオード112x,112y,112zのカソードは、モータ6に接続される。
【0026】
このように、半導体モジュール1は、モータ(負荷の一例)6に電力を供給する複数のIGBT(半導体スイッチング素子の一例)111u,111v,111w,111x,111y,111zを備えている。本実施形態では、半導体モジュール1は、半導体スイッチング素子としてIGBTを備えているが、パワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)などの他のパワー半導体素子を備えていてもよい。
【0027】
図1に示すように、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zに1対1の関係で駆動対象が設定され、当該駆動対象のIGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zである対象スイッチング素子に対する位置関係に応じて当該対象スイッチング素子を駆動する駆動能力が設定される複数のゲート駆動回路(駆動回路の一例)12u,12v,12w,12x,12y,12zを備えている。本実施形態では、ゲート駆動回路12uには、駆動対象としてIGBT111uが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111uは、ゲート駆動回路12uにとって対象スイッチング素子に相当する。本実施形態では、ゲート駆動回路12vには、駆動対象としてIGBT111vが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111vは、ゲート駆動回路12vにとって対象スイッチング素子に相当する。本実施形態では、ゲート駆動回路12wには、駆動対象としてIGBT111wが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111wは、ゲート駆動回路12wにとって対象スイッチング素子に相当する。本実施形態では、ゲート駆動回路12xには、駆動対象としてIGBT111xが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111xは、ゲート駆動回路12xにとって対象スイッチング素子に相当する。本実施形態では、ゲート駆動回路12yには、駆動対象としてIGBT111yが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111yは、ゲート駆動回路12yにとって対象スイッチング素子に相当する。本実施形態では、ゲート駆動回路12zには、駆動対象としてIGBT111zが1対1の関係で設定されている。したがって、IGBT111zは、ゲート駆動回路12zにとって対象スイッチング素子に相当する。
【0028】
詳細は後述するが、ゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zには、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zに対するゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zの位置関係に応じて電圧レベルが変更される判定パッドPdu,Pdv,Pdw,Pdx,Pdy,Pdzが設けられている。本実施形態では、ゲート駆動回路12uに設けられた判定パッドPduは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されている。ゲート駆動回路12vに設けられた判定パッドPdvは、オープン状態に設定されている。ゲート駆動回路12wに設けられた判定パッドPdwは、基準電位に設定された基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。また、ゲート駆動回路12xに設けられた判定パッドPdxは、基準電位に設定された基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。ゲート駆動回路12yに設けられた判定パッドPdyは、オープン状態に設定されている。ゲート駆動回路12zに設けられた判定パッドPdzは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されている。
【0029】
図1に示すように、ゲート駆動回路12uは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinUに接続されている。信号入力端子TinUは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InUは、信号入力端子TinUを介してゲート駆動回路12uに入力される。ゲート駆動回路12uは、入力信号InUを用いてIGBT111uを駆動するためのゲート駆動信号SgUを生成する。
【0030】
ゲート駆動回路12vは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinVに接続されている。信号入力端子TinVは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InVは、信号入力端子TinVを介してゲート駆動回路12vに入力される。ゲート駆動回路12vは、入力信号InVを用いてIGBT111vを駆動するためのゲート駆動信号SgVを生成する。
【0031】
ゲート駆動回路12wは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinWに接続されている。信号入力端子TinWは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InWは、信号入力端子TinWを介してゲート駆動回路12wに入力される。ゲート駆動回路12wは、入力信号InWを用いてIGBT111wを駆動するためのゲート駆動信号SgWを生成する。
【0032】
ゲート駆動回路12xは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinXに接続されている。信号入力端子TinXは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InXは、信号入力端子TinXを介してゲート駆動回路12xに入力される。ゲート駆動回路12xは、入力信号InXを用いてIGBT111xを駆動するためのゲート駆動信号SgXを生成する。
【0033】
ゲート駆動回路12yは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinYに接続されている。信号入力端子TinYは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InYは、信号入力端子TinYを介してゲート駆動回路12yに入力される。ゲート駆動回路12yは、入力信号InYを用いてIGBT111yを駆動するためのゲート駆動信号SgYを生成する。
【0034】
ゲート駆動回路12zは、半導体モジュール1に設けられた信号入力端子TinZに接続されている。信号入力端子TinZは、制御装置3に接続されている。これにより、制御装置3から出力される入力信号InZは、信号入力端子TinZを介してゲート駆動回路12zに入力される。ゲート駆動回路12zは、入力信号InZを用いてIGBT111zを駆動するためのゲート駆動信号SgZを生成する。
【0035】
次に、半導体モジュール1に備えられたゲート駆動回路12uなどの部品レイアウトについて
図1を参照しつつ
図2を用いて説明する。
図2は、半導体モジュール1の概略構成の一例を示す部品レイアウトを模式的に示す図である。
図2では、理解を容易にするため、各部品間を接続する配線のインピーダンスが抵抗素子の回路記号で表されている。また、
図2では、ゲート駆動回路12uは「IC_U」と表記され、ゲート駆動回路12vは「IC_V」と表記され、ゲート駆動回路12wは「IC_W」と表記され、ゲート駆動回路12xは「IC_X」と表記され、ゲート駆動回路12yは「IC_Y」と表記され、ゲート駆動回路12zは「IC_Z」と表記されている。
【0036】
図2に示すように、半導体モジュール1は、例えば正方形状の半導体基板10にゲート駆動回路12uや半導体素子11uなどが所定箇所に集積して形成されている。半導体基板10の4つの外周辺のうちの1つには、信号入力パッドPinU,PinV,PinW,PinX,PinY,PinZが配置されている。信号入力パッドPinUは、信号入力端子TinU(
図1参照)に接続される。信号入力パッドPinVは、信号入力端子TinV(
図1参照)に接続される。信号入力パッドPinWは、信号入力端子TinW(
図1参照)に接続される。信号入力パッドPinXは、信号入力端子TinX(
図1参照)に接続される。信号入力パッドPinYは、信号入力端子TinY(
図1参照)に接続される。信号入力パッドPinZは、信号入力端子TinZ(
図1参照)に接続される。
【0037】
信号入力パッドPinXと信号入力パッドPinUとの間には、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続される電源パッドPvccと、基準電位に設定された基準電位端子に接続される基準電位パッドPgndとが配置されている。
【0038】
半導体基板10の4つの外周辺のうち、信号入力パッドPinUなどが配置された外周辺と平行な外周辺には、U相出力パッドP_U、V相出力パッドP_V及びW相出力パッドP_Wが配置されている。U相出力パッドP_Uは、U相の交流電圧が出力されるパッドであり、U相出力端子TU(
図1参照)に接続されている。V相出力パッドP_Vは、V相の交流電圧が出力されるパッドであり、V相出力端子TV(
図1参照)に接続されている。W相出力パッドP_Wは、W相の交流電圧が出力されるパッドであり、W相出力端子TW(
図1参照)に接続されている。
【0039】
半導体基板10の4つの外周辺のうち、信号入力パッドPinUなどが配置された外周辺及びU相出力パッドP_Uなどが配置された外周辺に直交する外周辺には、正極側電源入力端子Tp(
図1参照)に接続される正極側電源入力パッドP_Pと、負極側電源入力端子Tn(
図1参照)に接続される負極側電源入力パッドP_Nとが配置されている。このため、正極側電源入力パッドP_Pには、交流電源部4(
図1参照)から出力される正極側の直流電圧が入力され、負極側電源入力パッドP_Nには、交流電源部4から出力される負極側の直流電圧が入力される。
【0040】
半導体基板10のほぼ中央部には、半導体素子11u,11v,11w,11x,11y,11zが配置されている。半導体素子11u,11v,11w及び半導体素子11x,11y,11zは、正極側電源入力パッドP_P及び負極側電源入力パッドP_Nが配置された外周辺の延在方向に並んで配置されている。半導体素子11u,11v,11wは、信号入力パッドPinUなどが配置された外周辺の延在方向に並んで配置されている。半導体素子11x,11y,11zは、信号入力パッドPinUなどが配置された外周辺の延在方向に並んで配置されている。
【0041】
半導体基板10には、正極側電源入力パッドP_Pに接続された配線パターンL_Pが形成されている。半導体素子11u,11v,11wは、配線パターンL_Pに接続され、半導体素子11x,11y,11zは、配線パターンL_Nに接続されている。半導体素子11uは、半導体素子11v,11wよりも正極側電源入力パッドP_Pから離れて配置されている。半導体素子11wは、半導体素子11u,11vよりも正極側電源入力パッドP_Pの近くに配置されている。半導体素子11vは、正極側電源入力パッドP_Pに対して半導体素子11uよりも近く、かつ半導体素子11wよりも離れて配置されている。このため、半導体素子11uから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PUは、半導体素子11v,11wから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PV,Z_PWよりも高くなる。また、半導体素子11wから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PWは、半導体素子11u,11vから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PU,Z_PVよりも低くなる。また、半導体素子11vから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PVは、半導体素子11uから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PUよりも低く、かつ半導体素子11wから正極側電源入力パッドP_PまでのインピーダンスZ_PWよりも高くなる。
【0042】
半導体基板10には、負極側電源入力パッドP_Nに接続された配線パターンL_Nが形成されている。半導体素子11x,11y,11zは、配線パターンL_Nに接続されている。半導体素子11xは、半導体素子11y,11zよりも負極側電源入力パッドP_Nから離れて配置されている。半導体素子11zは、半導体素子11x,11yよりも負極側電源入力パッドP_Nの近くに配置されている。半導体素子11yは、負極側電源入力パッドP_Nに対して半導体素子11xよりも近く、かつ半導体素子11zよりも離れて配置されている。このため、半導体素子11xから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NXは、半導体素子11y,11zから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NY,Z_NZよりも高くなる。また、半導体素子11zから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NYは、半導体素子11x,11zから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NX,Z_NZよりも低くなる。また、半導体素子11yから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NYは、半導体素子11xから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NXよりも低く、かつ半導体素子11zから負極側電源入力パッドP_NまでのインピーダンスZ_NZよりも高くなる。
【0043】
配線パターンL_Pのうちの半導体素子11uから正極側電源入力パッドP_Pまでの部分と、配線パターンL_Nのうちの半導体素子11xから負極側電源入力パッドP_Nまでの部分とは、互いに同じ長さを有している。このため、インピーダンスZ_PU及びインピーダンスZ_NXは、互いに同じインピーダンス値を有している。これにより、半導体素子11u及び半導体素子11xによって構成されるU相アーム部には、正極側及び負極側で電圧降下などがほぼ同じとなるバランスの取れた直流電圧が入力される。
【0044】
配線パターンL_Pのうちの半導体素子11vから正極側電源入力パッドP_Pまでの部分と、配線パターンL_Nのうちの半導体素子11yから負極側電源入力パッドP_Nまでの部分とは、互いに同じ長さを有している。このため、インピーダンスZ_PV及びインピーダンスZ_NYは、互いに同じインピーダンス値を有している。これにより、半導体素子11v及び半導体素子11yによって構成されるV相アーム部には、正極側及び負極側で電圧降下などがほぼ同じとなるバランスの取れた直流電圧が入力される。
【0045】
配線パターンL_Pのうちの半導体素子11wから正極側電源入力パッドP_Pまでの部分と、配線パターンL_Nのうちの半導体素子11zから負極側電源入力パッドP_Nまでの部分とは、互いに同じ長さを有している。このため、インピーダンスZ_PW及びインピーダンスZ_NZは、互いに同じインピーダンス値を有している。これにより、半導体素子11w及び半導体素子11zによって構成されるW相アーム部には、正極側及び負極側で電圧降下などがほぼ同じとなるバランスの取れた直流電圧が入力される。
【0046】
半導体素子11u及び半導体素子11xの接続部は、配線パターンL_OUによってU相出力パッドP_Uに接続されている。半導体素子11v及び半導体素子11yの接続部は、配線パターンL_OVによってV相出力パッドP_Vに接続されている。半導体素子11w及び半導体素子11zの接続部は、配線パターンL_OWによってW相出力パッドP_Wに接続されている。配線パターンL_OU、配線パターンL_OV及び配線パターンL_OWは、互いにほぼ同じ長さを有し、ほぼ同じインピーダンス値を有している。
【0047】
図2に示すように、ゲート駆動回路12u,12v,12wは、信号入力パッドPinU,PinV,PinWの近傍で信号入力パッドPinU,PinV,PinWが配置された半導体基板10の外周辺の延在方向に並んで配置されている。ゲート駆動回路12uは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IUによって信号入力パッドPinUに接続されている。ゲート駆動回路12vは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IVによって信号入力パッドPinVに接続されている。ゲート駆動回路12wは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IWによって信号入力パッドPinWに接続されている。
【0048】
配線パターンL_IU、配線パターンL_IV及び配線パターンL_IWは、互いにほぼ同じ長さを有し、ほぼ同じインピーダンス値を有している。このため、信号入力パッドPinUを介してゲート駆動回路12uに入力される入力信号InUと、信号入力パッドPinVを介してゲート駆動回路12vに入力される入力信号InVと、信号入力パッドPinWを介してゲート駆動回路12wに入力される入力信号InWとは、ほぼ同じ信号遅延を有する。このため、制御装置3から出力される入力信号InU,InV,InWは、ほぼ同じタイミングでゲート駆動回路12u,12v,12wに入力される。
【0049】
ゲート駆動回路12uは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Uによって半導体素子11uに接続されている。ゲート駆動回路12vは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Vによって半導体素子11vに接続されている。ゲート駆動回路12wは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Wによって半導体素子11wに接続されている。配線パターンL_Uは、配線パターンL_V及び配線パターンL_Wよりも長い長さを有している。配線パターンL_Vは、配線パターンL_Wよりも長い長さを有している。このため、配線パターンL_VのインピーダンスZ_Uは、配線パターンL_VのインピーダンスZ_V及び配線パターンL_WのインピーダンスZ_Wよりも高い。また、配線パターンL_VのインピーダンスZ_Vは、配線パターンL_WのインピーダンスZ_Wよりも高い。
【0050】
このため、ゲート駆動回路12uから出力されるゲート駆動信号SgUは、ゲート駆動回路12vから出力されるゲート駆動信号SgVが半導体素子11vに入力される電圧及びゲート駆動回路12wから出力されるゲート駆動信号SgWが半導体素子11wに入力される電圧よりも電圧降下した状態で半導体素子11uに入力される。また、ゲート駆動回路12vから出力されるゲート駆動信号SgVは、ゲート駆動回路12wから出力されるゲート駆動信号SgWが半導体素子11wに入力される電圧よりも電圧降下した状態で半導体素子11vに入力される。このため、ゲート駆動回路12u,12v,12wが半導体素子11u,11v,11wに設けられたIGBT111u,111v,111w(
図1参照)を駆動する駆動能力が同一の場合、IGBT111u,111v,111wの動作タイミングが互いにずれてしまう。
【0051】
詳細は後述するが、ゲート駆動回路12u,12v,12wは、判定パッドPdu,Pdv,Pdwを有し、判定パッドPdu,Pdv,Pdwに設定される電圧によってIGBT111u,111v,111wを駆動する駆動能力を最適な状態に設定できる。これにより、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111wの動作タイミングのずれを抑制できる。
【0052】
図2に示すように、ゲート駆動回路12x,12y,12zは、信号入力パッドPinX,PinY,PinZの近傍で信号入力パッドPinX,PinY,PinZが配置された半導体基板10の外周辺の延在方向に並んで配置されている。ゲート駆動回路12xは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IXによって信号入力パッドPinXに接続されている。ゲート駆動回路12yは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IYによって信号入力パッドPinYに接続されている。ゲート駆動回路12zは、半導体基板10に形成された配線パターンL_IZによって信号入力パッドPinZに接続されている。
【0053】
配線パターンL_IX、配線パターンL_IY及び配線パターンL_IZは、互いにほぼ同じ長さを有し、ほぼ同じインピーダンス値を有している。このため、信号入力パッドPinZXを介してゲート駆動回路12xに入力される入力信号InXと、信号入力パッドPinYを介してゲート駆動回路12yに入力される入力信号InYと、信号入力パッドPinZを介してゲート駆動回路12zに入力される入力信号InZとは、ほぼ同じ信号遅延を有する。このため、制御装置3から出力される入力信号InX,InY,InZは、ほぼ同じタイミングでゲート駆動回路12x,12y,12zに入力される。
【0054】
ゲート駆動回路12xは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Xによって半導体素子11xに接続されている。ゲート駆動回路12yは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Yによって半導体素子11yに接続されている。ゲート駆動回路12zは、半導体基板10に形成された配線パターンL_Zによって半導体素子11zに接続されている。配線パターンL_Xは、配線パターンL_Y及び配線パターンL_Zよりも短い長さを有している。配線パターンL_Yは、配線パターンL_Zよりも短い長さを有している。このため、配線パターンL_XのインピーダンスZ_Xは、配線パターンL_YのインピーダンスZ_Y及び配線パターンL_ZのインピーダンスZ_Zよりも低い。また、配線パターンL_YのインピーダンスZ_Yは、配線パターンL_ZのインピーダンスZ_Zよりも低い。
【0055】
このため、ゲート駆動回路12zから出力されるゲート駆動信号SgZは、ゲート駆動回路12xから出力されるゲート駆動信号SgXが半導体素子11xに入力される電圧及びゲート駆動回路12yから出力されるゲート駆動信号SgYが半導体素子11yに入力される電圧よりも電圧降下した状態で半導体素子11zに入力される。また、ゲート駆動回路12yから出力されるゲート駆動信号SgYは、ゲート駆動回路12xから出力されるゲート駆動信号SgXが半導体素子11xに入力される電圧よりも電圧降下した状態で半導体素子11yに入力される。このため、ゲート駆動回路12x,12y,12zが半導体素子11x,11y,11zに設けられたIGBT111x,111y,111z(
図1参照)を駆動する駆動能力が同一の場合、IGBT111x,111y,111zの動作タイミングが互いにずれてしまう。
【0056】
詳細は後述するが、ゲート駆動回路12x,12y,12zは、判定パッドPdx,Pdy,Pdzを有し、判定パッドPdx,Pdy,Pdzに設定される電圧によってIGBT111x,111y,111zを駆動する駆動能力を最適な状態に設定できる。これにより、半導体モジュール1は、IGBT111x,111y,111zの動作タイミングのずれを抑制できる。
【0057】
(ゲート駆動回路の構成)
次に、本実施形態による半導体モジュール1に備えられたゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zの概略構成について
図1及び
図2を参照しつつ
図3を用いて説明する。ゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zは、互いに同一の構成を有している。このため、以下、ゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zの概略構成について、ゲート駆動回路12xを例にとって説明する。
図3は、ゲート駆動回路12xの概略構成の一例を示す回路図である。
図3では、理解を容易にするため、ゲート駆動回路12xの駆動対象であるIGBT111xを有する半導体素子11xが併せて図示されている。
【0058】
図3に示すように、ゲート駆動回路12xは、IGBT111xに対する位置関係を判定する判定部121を有している。また、ゲート駆動回路12xは、判定部121での判定結果に基づいてゲート駆動回路12xの駆動能力を設定する設定部122を有している。また、ゲート駆動回路12xは、設定部122によって設定された駆動能力でIGBT111xを駆動する駆動部123を有している。さらに、ゲート駆動回路12xは、自己が設けられた駆動回路(すなわちゲート駆動回路12x)の位置関係に応じて設定される閾値に基づいてIGBT111xを保護する保護部124を有している。
【0059】
図3に示すように、判定部121は、ゲート駆動回路12xの位置関係に応じて電圧レベルが変更される判定パッドPdxと、判定パッドPdxの電圧レベルを判別する判別部121aとを有している。判定部121は、電源電圧VCCと基準電位との間に直列に接続された抵抗素子R1及び抵抗素子R2を有している。
【0060】
判別部121aは、判定パッドPdxに印加された判定電圧Vdeと、第一比較電圧Vc1とを比較する第一比較器121a-1を有している。判別部121aは、判定パッドPdxにおける電圧と、第二比較電圧Vc2とを比較する第二比較器121a-3を有している。第一比較器121a-1及び第二比較器121a-3のそれぞれは、例えばオペアンプで構成されている。
【0061】
また、判別部121aは、第一比較電圧Vc1を生成する第一比較電圧生成部121a-2と、第二比較電圧Vc2を生成する第二比較電圧生成部121a-4とを有している。第一比較電圧生成部121a-2及び第二比較電圧生成部121a-4のそれぞれは、例えば直流電源で構成されている。第一比較電圧Vc1は、電源電圧VCCよりも低く、かつ第二比較電圧Vc2より高い電圧に設定されている。第二比較電圧Vc2は、基準電位(例えばグランド電位)よりも高い電圧に設定されている。
【0062】
第一比較器121a-1の反転入力端子(-)は、判定パッドPdxに接続されている。第一比較器121a-1の非反転入力端子(+)は、第一比較電圧生成部121a-2の正極側端子に接続されている。第一比較電圧生成部121a-2の負極側端子は、基準電位に設定された基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。これにより、第一比較器121a-1は、判定パッドPdxに印加された判定電圧Vdeと、第一比較電圧Vc1とを比較して、判定電圧Vdeが第一比較電圧Vc1よりも低い場合はハイレベルの第一比較信号Sc1を出力する。一方、第一比較器121a-1は、判定電圧Vdeが第一比較電圧Vc1よりも高い場合はローレベルの第一比較信号Sc1を出力する。
【0063】
第二比較器121a-3の反転入力端子(-)は、判定パッドPdxに接続されている。第二比較器121a-3の非反転入力端子(+)は、第二比較電圧生成部121a-4の正極側端子に接続されている。第二比較電圧生成部121a-4の負極側端子は、基準電位に設定された基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。これにより、第二比較器121a-3は、判定パッドPdxに印加された判定電圧Vdeと、第二比較電圧Vc2とを比較して、判定電圧Vdeが第二比較電圧Vc2よりも低い場合はハイレベルの第二比較信号Sc2を出力する。一方、第二比較器121a-3は、判定電圧Vdeが第二比較電圧Vc2よりも高い場合はローレベルの第二比較信号Sc2を出力する。
【0064】
図3に示すように、抵抗素子R1の一端子は、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されている。抵抗素子R2の他端子は、抵抗素子R2の一端子、判定パッドPdx、第一比較器121a-1の反転入力端子及び第二比較器121a-3の反転入力端子に接続されている。抵抗素子R2の他端子は、基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。抵抗素子R1の抵抗値及び抵抗素子R2の抵抗値は、抵抗素子R1及び抵抗素子R2の接続部の電圧が第一比較電圧Vc1よりも低く、かつ第二比較電圧Vc2よりも高くなるように設定されている。
【0065】
このため、判定電圧Vdeの電圧値は、電源電圧VCCが出力される電源端子に判定パッドPdxが接続されている場合には、電源電圧VCCと同じ電圧値となる。判定電圧Vdeの電圧値は、基準電位端子(例えばグランド端子)に判定パッドPdxが接続されている場合には、基準電位と同じ電圧値となる。判定電圧Vdeの電圧値は、判定パッドPdxがオープン状態の場合には、電源電圧VCCを抵抗素子R1,R2で抵抗分割した電圧値となる。
【0066】
したがって、判定電圧Vdeは、電源電圧VCCが出力される電源端子に判定パッドPdxが接続されている場合には、第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2よりも高くなる。このため、第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2のそれぞれの電圧レベルは、ローレベルになる。また、判定電圧Vdeは、基準電位端子(例えばグランド端子)に判定パッドPdxが接続されている場合には、第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2よりも低くなる。このため、第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2のそれぞれの電圧レベルは、ハイレベルになる。さらに、判定電圧Vdeは、判定パッドPdxがオープン状態の場合には、第一比較電圧Vc1よりも低く、かつ第二比較電圧Vc2よりも高くなる。このため、第一比較電圧Vc1の電圧レベルはハイレベルになり、第二比較電圧Vc2の電圧レベルはローレベルになる。
【0067】
このように、判定部121は、判定パッドPdxに印加される判定電圧Vdeを判定することができる。半導体モジュール1では、IGBT111x,111y,111zに対するゲート駆動回路12x,12y,12zの位置関係と、判定パッドPdxに印加される判定電圧Vdeとを対応付けられる。これにより、判定部121は、ゲート駆動回路12x,12y,12zの位置関係に基づいて、ゲート駆動回路12x,12y,12zから出力されるゲート駆動信号SgX,SgY,SgZが伝送される配線パターンL_X,L_Y,L_ZのインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Z(
図2参照)の高低を判定できる。
【0068】
半導体モジュール1では、インピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zのうち、インピーダンスが2番目に高い配線パターンL_Yに接続されたゲート駆動回路12yの判定パッドPdy(
図2参照)がオープン状態に設定される(
図1参照)。また、
図3に示すように、インピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zのうち、インピーダンスが最も低い配線パターンL_Xに接続されたゲート駆動回路12xの判定パッドPdxが、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続される。さらに、インピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zのうち、インピーダンスが最も高い配線パターンL_Zに接続されたゲート駆動回路12zの判定パッドPdxが基準電位端子(
図1参照)に接続される。
【0069】
半導体モジュール1では、インピーダンスZ_U,Z_V,Z_Wのうち、インピーダンスが2番目に高い配線パターンL_Vに接続されたゲート駆動回路12vの判定パッドPdv(
図2参照)がオープン状態に設定される(
図1参照)。また、インピーダンスZ_U,Z_V,Z_Wのうち、インピーダンスが最も低い配線パターンL_Wに接続されたゲート駆動回路12wの判定パッドPdwが、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続される(
図1参照)。さらに、インピーダンスZ_U,Z_V,Z_Wのうち、インピーダンスが最も高い配線パターンL_Uに接続されたゲート駆動回路12uの判定パッドPduが基準電位端子(
図1参照)に接続される。
【0070】
図3に示すように、設定部122は、判別部121aでの判別結果に基づいて駆動部123の駆動能力を選択するための選択信号Ss1,Ss2,Ss3を生成する選択回路(選択部の一例)122aと、選択信号Ss1,Ss2,Ss3に基づいて駆動部123の駆動能力を切り替える第一切替部122bとを有している。
【0071】
選択回路122aは、例えばデコーダ回路で構成されている。選択回路122aは、判別部121aから出力される第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2のそれぞれの電圧レベルの組合せに応じて、選択信号Ss1,Ss2,Ss3の電圧レベルを変更する。選択回路122aは、判別部121aから入力される第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2のそれぞれの電圧レベルがローレベルである場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss2,Ss3を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss1を生成する。選択回路122aは、判別部121aから入力される第一比較電圧Vc1の電圧レベルがローレベルであり、かつ第二比較電圧Vc2の電圧レベルがハイレベルの場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss1,Ss3を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss2を生成する。さらに、選択回路122aは、判別部121aから入力される第一比較電圧Vc1及び第二比較電圧Vc2のそれぞれの電圧レベルがハイレベルである場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss1,Ss2を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss3を生成する。
【0072】
したがって、選択回路122aは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss2,Ss3を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss1を生成する。また、選択回路122aは、判定パッドPdxがオープン状態に設定されている場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss1,Ss3を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss2を生成する。選択回路122aは、基準電位が判定パッドPdxに印加されている場合には、電圧レベルがローレベルの選択信号Ss1,Ss2を生成し、かつ電圧レベルがハイレベルの選択信号Ss3を生成する。
【0073】
図3に示すように、第一切替部122bは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されたラダー抵抗回路122b-1と、選択回路122aに接続されたスイッチ回路122b-2とを有している。ラダー抵抗回路122b-1は、電源電圧VCCが出力される電源端子とIGBT111xのエミッタ端子との間に直列に接続された4個の抵抗素子R3,R4,R5,R6を有している。抵抗素子R3の一端子は、当該電源端子に接続され、抵抗素子R3の他端子は、抵抗素子R4の一端子に接続されている。抵抗素子R4の他端子は、抵抗素子R5の一端子に接続されている。抵抗素子R5の他端子は、抵抗素子R6の一端子に接続されている。抵抗素子R6の他端子は、IGBT111xのエミッタ端子に接続されている。
【0074】
スイッチ回路122b-2は、選択回路122aから入力される選択信号Ss1,Ss2,Ss3によって開閉(オフ状態及びオン状態)が制御される3個のスイッチSW1,SW2,SW3を有している。スイッチSW1,SW2,SW3は、例えばMOSトランジスタで構成されている。スイッチSW1は選択信号Ss1によって開閉が制御され、スイッチSW2は選択信号Ss2によって開閉が制御され、スイッチSW3は選択信号Ss3によって開閉が制御されるようになっている。スイッチSW1は、選択信号Ss1の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態(オン状態)となり、選択信号Ss1の電圧レベルがローレベルの場合に開状態(オフ状態)となる。スイッチSW2は、選択信号Ss2の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態となり、選択信号Ss2の電圧レベルがローレベルの場合に開状態となる。スイッチSW3は、選択信号Ss3の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態となり、選択信号Ss3の電圧レベルがローレベルの場合に開状態となる。
【0075】
スイッチSW1の入力端子は、抵抗素子R3及び抵抗素子R4の接続部に接続されている。スイッチSW2の入力端子は、抵抗素子R4及び抵抗素子R5の接続部に接続されている。スイッチSW3の入力端子は、抵抗素子R5及び抵抗素子R6の接続部に接続されている。スイッチSW1,SW2,SW3のそれぞれの出力端子は、互いに接続されている。
【0076】
したがって、第一切替部122bは、選択信号Ss1,Ss2,Ss3の電圧レベルの組合せに応じて、電源電圧VCCの電位とIGBT111xのエミッタ端子の電位との電位差を抵抗素子R3,R4,R5,R6で抵抗分割した電圧レベルの切替信号Schを駆動部123に出力する。具体的には、選択信号Ss1の電圧レベルがハイレベルかつ選択信号Ss2,Ss3のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW1が閉状態かつスイッチSW2,SW3が開状態となるので、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。選択信号Ss2の電圧レベルがハイレベル、かつ選択信号Ss1,Ss3のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW2が閉状態かつスイッチSW1,SW3が開状態となるので、第一切替部122bは、設定可能な範囲内での最大及び最小の間の電圧レベル(本実施形態では、2番目に高い電圧レベル)を有する切替信号Schを駆動部123に出力する。選択信号Ss3の電圧レベルがハイレベルかつ選択信号Ss1,Ss2のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW3が閉状態かつスイッチSW1,SW2が開状態となるので、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。
【0077】
したがって、第一切替部122bは、基準電位が判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。また、第一切替部122bは、判定パッドPdxがオープン状態に設定されている場合には、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の中間の電圧レベル(本実施形態では2番目に高い電圧レベル)を有する切替信号Schを駆動部123に出力する。さらに、第一切替部122bは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。
【0078】
つまり、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対する配線長が最も短いゲート駆動回路12x(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最も小さい配線パターンL_Xに接続されたゲート駆動回路12x(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。
【0079】
また、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対して最長距離及び最短距離の間の配線長のゲート駆動回路12y(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内の中間の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最大及び最小の間の配線パターンL_Yに接続されたゲート駆動回路12y(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で中間の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。
【0080】
さらに、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対する配線長が最も長いゲート駆動回路12z(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最も大きい配線パターンL_Zに接続されたゲート駆動回路12z(
図2参照)では、第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する切替信号Schを駆動部123に出力する。
【0081】
抵抗素子R3,R4,R5,R6のそれぞれの抵抗値は、配線パターンL_X,L_Y,L_ZのインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの高低に基づいて設定される。抵抗素子R3,R4,R5,R6のそれぞれの抵抗値は、例えばインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの設計値、あるいはインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの実測値に基づいて設定される。
【0082】
図3に示すように、駆動部123は、第一切替部122bから出力される切替信号Schが入力される増幅器123aと、増幅器123aから出力される出力信号Soがゲートに入力されるトランジスタ123bとを有している。増幅器123aは、例えばオペアンプで構成されている。トランジスタ123bは、例えばN型のMOSトランジスタで構成されている。増幅器123aの出力端子はトランジスタ123bのゲートに接続されている。増幅器123aの非反転入力端子(+)は、第一切替部122bの出力端子(すなわちスイッチSW1,SW2,SW3のそれぞれの出力端子)に接続されている。
【0083】
駆動部123は、トランジスタ123bのドレインに接続されたカレントミラー回路123cと、トランジスタ123bのソースに接続された抵抗素子123dとを有している。抵抗素子123dの一端子がトランジスタ123bのソースに接続され、抵抗素子123dの他端子が基準電位端子(例えばグランド端子)に接続されている。トランジスタ123bのソースと抵抗素子123dの一端子の接続部は増幅器123aの反転入力端子(-)に接続されている。
【0084】
カレントミラー回路123cは、ゲートが互いに接続されたトランジスタ123c-1及びトランジスタ123c-2を有している。トランジスタ123c-1及びトランジスタ123c-2のそれぞれは、例えばP型のMOSトランジスタで構成されている。トランジスタ123c-1のソースは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続され、トランジスタ123c-1のドレインは、トランジスタ123c-1,123c-2のゲート及びトランジスタ123bのドレインに接続されている。
【0085】
駆動部123は、制御装置3(
図3では不図示、
図1参照)にゲートが接続されたトランジスタ123e及びトランジスタ123fを有している。トランジスタ123e及びトランジスタ123fのそれぞれは、例えばN型のMOSトランジスタで構成されている。トランジスタ123e及びトランジスタ123fのそれぞれのゲートには、制御装置3から出力された入力信号InXが入力される。これにより、トランジスタ123e及びトランジスタ123fは、制御装置3によってオン状態/オフ状態(導通状態/非導通状態)が制御される。トランジスタ123e及びトランジスタ123fは、入力信号InXの電圧レベルがハイレベルの場合にオン状態(導通状態)となり、入力信号InXの電圧レベルがローレベルの場合にオフ状態(非導通状態)となる。トランジスタ123e及びトランジスタ123fは、同期してオン状態及びオフ状態が制御され、ほぼ同時にオン状態からオフ状態又はオフ状態からオン状態に切り替わるように制御される。
【0086】
トランジスタ123eのソース及びトランジスタ123fのソースは、互いに接続されている。また、トランジスタ123eのソース及びトランジスタ123fのソースは、抵抗素子123dの他端子と、基準電位端子(例えばグランド端子)とに接続されている。トランジスタ123eのドレインは、増幅器123aの出力端子及びトランジスタ123bのゲートの接続部に接続されている。トランジスタ123fのドレインは、トランジスタ123c-2のドレインに接続されている。トランジスタ123fのドレイン及びトランジスタ123c-2のドレインの接続部は、IGBT111xのゲート端子に接続されている。
【0087】
駆動部123は、カレントミラー回路123cにゲートが接続されたトランジスタ123gを有している。トランジスタ123gは、例えばP型のMOSトランジスタで構成されている。トランジスタ123gのゲートは、トランジスタ123c-1,123c-2のそれぞれのゲートに接続されている。トランジスタ123gのソースは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されている。トランジスタ123gのドレインは、トランジスタ123c-2,123fのそれぞれのドレイン及びIGBT111xのゲート端子に接続されている。
【0088】
このような構成を有する駆動部123は、入力信号InXの電圧レベルがハイレベルの場合に非動作状態となってゲート駆動信号SgXをIGBT111xに出力しない。より具体的には、トランジスタ123e,123fのそれぞれは、電圧レベルがハイレベルの入力信号InXがゲートに入力されるとオン状態となる。このため、トランジスタ123bは、ゲートがトランジスタ123eを介して基準電位端子に接続されるので、オフ状態となる。これにより、カレントミラー回路123cは、基準電位端子に向かって電流を流さないので、IGBT111xのゲート端子にゲート駆動信号SgXを出力しない。また、IGBT111xは、ゲート端子がトランジスタ123fを介して基準電位端子に接続されるので、非動作状態となる。
【0089】
一方、駆動部123は、入力信号InXの電圧レベルがローレベルの場合に動作状態となってゲート駆動信号SgXをIGBT111xに出力する。より具体的には、トランジスタ123e,123fのそれぞれは、電圧レベルがローレベルの入力信号InXがゲートに入力されるとオフ状態となる。このため、トランジスタ123bのゲートは、トランジスタ123eによって基準電位端子から電気的に切断される。これにより、トランジスタ123bのゲートには、増幅器123aの出力信号Soが入力されてオン状態となる。トランジスタ123bは、ソースが増幅器123aに入力される切替信号Schの電圧と同電圧となるように増幅器123aよってフィードバック制御される。増幅器123a及びトランジスタ123bは切替信号Schの電圧レベルによって電流値が決定される定電流源として機能する。
【0090】
その結果、切替信号Schの電圧レベルに応じた電流がトランジスタ123b及び抵抗素子123dを介してカレントミラー回路123cから基準電位端子に向かって流れる。カレントミラー回路123cを構成するトランジスタ123c-2側及びトランジスタ123gにも切替信号Schの電圧レベルに応じた電流が流れる。トランジスタ123fは非導通状態(オフ状態)であるため、トランジスタ123c-2,123gから流れる電流は、ゲート駆動電流としてIGBT111xのゲート端子に向かって流れる。トランジスタ123gは、トランジスタ123c-2よりもトランジスタサイズが大きく形成されている。このため、トランジスタ123gは、トランジスタ123c-2よりも大きい電流をIGBT111xのゲート端子に流す。これにより、IGBT111xのゲート端子には、切替信号Schの電圧レベルに基づくゲート駆動信号SgXが入力される。その結果、IGBT111xは、ゲート端子に入力されるゲート駆動信号SgXに基づくゲート駆動電圧に応じた駆動能力で駆動される。
【0091】
このように、増幅器123a及びトランジスタ123bは、切替信号Schの電圧レベルによって電流値が決定される定電流源として機能する。切替信号Schは、判定パッドPdxに印加される判定電圧Vdeの大きさに応じて異なる。切替信号Schは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最高の電圧レベルを有するので、増幅器123aは、設定可能な範囲内で最も高い電圧を出力する。この場合、トランジスタ123c-1のソース-ドレイン間電圧は、設定可能な範囲内で最も低くなるので、増幅器123a及びトランジスタ123bは、設定可能な範囲内の最小電流をカレントミラー回路123cから流すように動作する。これにより、トランジスタ123c-2,123gからIGBT111xに流れる電流は、設定可能な範囲内で最小となるので、ゲート駆動回路12xは、設定可能な範囲内で最低の駆動能力に設定される。
【0092】
切替信号Schは、判定パッドPdxがオープン状態に設定されている場合には、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の電圧レベル(本実施形態では2番目に高い電圧レベル)を有する。このため、増幅器123aは、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の中間の電圧レベルを有するので、増幅器123aは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合の電圧よりも低い電圧を出力する。この場合、トランジスタ123c-1のソース-ドレイン間電圧は、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合よりも高くなる。これにより、増幅器123a及びトランジスタ123bは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合よりも大きい電流をカレントミラー回路123cから流すように動作する。その結果、トランジスタ123c-2,123gからIGBT111xに流れる電流は、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合よりも大きくなるので、ゲート駆動回路12xは、設定可能な範囲内における最低の駆動能力よりも高い駆動能力の状態に設定される。
【0093】
切替信号Schは、基準電位が判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最低の電圧レベルを有する。このため、増幅器123aは、設定可能な範囲内で最も低い電圧レベルを有するので、増幅器123aは、設定可能な範囲内で最も低い電圧を出力する。この場合、トランジスタ123c-1のソース-ドレイン間電圧は、設定可能な範囲内で最も高くなるので、増幅器123a及びトランジスタ123bは、設定可能な範囲内の最大電流がカレントミラー回路123cから流れるように動作する。これにより、トランジスタ123c-2,123gからIGBT111xに流れる電流は、設定可能な範囲内で最大となるので、ゲート駆動回路12xは、設定可能な範囲内における最高の駆動能力の状態に設定される。
【0094】
このように、半導体モジュール1は、IGBT111xに対するゲート駆動回路12xの位置関係に応じて判定パッドPdxに印加する電圧レベルを設定することにより、ゲート駆動回路12xの駆動能力を所望の状態に設定できる。詳細な説明は省略するが、半導体モジュール1は、ゲート駆動回路12xと同様に、IGBT111u,111v,111w,111y,111zに対するゲート駆動回路12u,12v,12w,12y,12zの位置関係に応じて判定パッドPdu,Pdv,Pdw,Pdy,Pdzに印加する電圧レベルを設定することにより、ゲート駆動回路12u,12v,12w,12y,12zの駆動能力を所望の状態に設定できる。
【0095】
図3に示すように、IGBT111xは、自己(すなわちIGBT111x)に流れる電流を検知するための電流検知素子Sを有している。保護部124は、IGBT111xの電流検知素子Sで検知された検知電流Isを検知電圧Vsに変換する変換部124bを有している。また、保護部124は、自己が設けられたゲート駆動回路12xの位置関係に応じて閾値としての基準電圧Vrefを切り替える第二切替部124dと、検知電圧Vs及び基準電圧Vrefを比較する比較器(比較部の一例)124aとを有している。さらに、保護部124は、比較器124aでの比較結果に基づいてIGBT111xを保護するか否かを判断し、IGBT111xを保護すると判断した場合には保護処理を実行する処理部124cを有している。詳細は後述するが、保護部124は、IGBT111xが異常な初期過渡特性を有する場合にIGBT111xを保護するように構成されている。
【0096】
変換部124bは、IGBT111xの電流検知素子Sと基準電位端子(例えばグランド端子)との間に接続された抵抗素子124b-1を有している。変換部124bは、IGBT111xの電流検知素子Sと抵抗素子124b-1との接続部から検知電流Isを検知電圧Vsとして出力する。
【0097】
第二切替部124dは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続されたラダー抵抗回路124d-1と、選択回路122aに接続されたスイッチ回路124d-2とを有している。ラダー抵抗回路124d-1は、電源電圧VCCが出力される電源端子と、基準電位端子(例えばグランド端子)との間に直列に接続された4個の抵抗素子R7,R8,R9,R10を有している。抵抗素子R7の一端子は、当該電源端子に接続され、抵抗素子R7の他端子は、抵抗素子R8の一端子に接続されている。抵抗素子R8の他端子は、抵抗素子R9の一端子に接続されている。抵抗素子R9の他端子は、抵抗素子R10の一端子に接続されている。抵抗素子R10の他端子は、基準電位端子に接続されている。
【0098】
スイッチ回路124d-2は、選択回路122aから入力される選択信号Ss1,Ss2,Ss3によって開閉(オフ状態及びオン状態)が制御される3個のスイッチSW4,SW5,SW6を有している。スイッチSW4,SW5,SW6は、例えばMOSトランジスタで構成されている。スイッチSW4は選択信号Ss1によって開閉が制御され、スイッチSW5は選択信号Ss2によって開閉が制御され、スイッチSW6は選択信号Ss3によって開閉が制御されるようになっている。スイッチSW4は、選択信号Ss3の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態(オン状態)となり、選択信号Ss3の電圧レベルがローレベルの場合に開状態(オフ状態)となる。スイッチSW5は、選択信号Ss2の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態となり、選択信号Ss2の電圧レベルがローレベルの場合に開状態となる。スイッチSW6は、選択信号Ss1の電圧レベルがハイレベルの場合に閉状態となり、選択信号Ss1の電圧レベルがローレベルの場合に開状態となる。
【0099】
スイッチSW4の入力端子は、抵抗素子R7及び抵抗素子R8の接続部に接続されている。スイッチSW5の入力端子は、抵抗素子R8及び抵抗素子R9の接続部に接続されている。スイッチSW6の入力端子は、抵抗素子R9及び抵抗素子R10の接続部に接続されている。スイッチSW4,SW5,SW6のそれぞれの出力端子は、互いに接続されている。
【0100】
したがって、第二切替部124dは、選択信号Ss1,Ss2,Ss3の電圧レベルの組合せに応じて、電源電圧VCCを抵抗素子R3,R4,R5,R6で抵抗分割した電圧レベルの基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。具体的には、選択信号Ss1の電圧レベルがハイレベルかつ選択信号Ss2,Ss3のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW4が閉状態かつスイッチSW4,SW5が開状態となるので、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で電圧レベルが最も高い基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。選択信号Ss2の電圧レベルがハイレベル、かつ選択信号Ss1,Ss3のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW5が閉状態かつスイッチSW4,SW6が開状態となるので、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の中間の電圧レベル(本実施形態では2番目に高い電圧レベル)の基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。選択信号Ss3の電圧レベルがハイレベルかつ選択信号Ss1,Ss2のそれぞれの電圧レベルがローレベルの場合には、スイッチSW6が閉状態かつスイッチSW4,SW5が開状態となるので、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で電圧レベルが最も低い基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。
【0101】
したがって、第二切替部124dは、基準電位が判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最大レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。また、第二切替部124dは、判定パッドPdxがオープン状態に設定されている場合には、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の中間の電圧レベル(本実施形態では2番目に高い電圧レベル)を有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。さらに、第二切替部124dは、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合には、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。
【0102】
つまり、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対する配線長が最も短いゲート駆動回路12x(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最も小さい配線パターンL_Xに接続されたゲート駆動回路12x(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。
【0103】
また、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対して最長距離及び最短距離の間の配線長のゲート駆動回路12y(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内の中間の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最大及び最小の間の配線パターンL_Yに接続されたゲート駆動回路12y(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で中間の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。
【0104】
さらに、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに対する配線長が最も長いゲート駆動回路12z(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。換言すると、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBT111x,111y,111zに接続される配線パターンL_X,L_Y,L_Zのインピーダンス値が最も大きい配線パターンL_Zに接続されたゲート駆動回路12z(
図2参照)では、第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最小の電圧レベルを有する基準電圧Vrefを比較器124aに出力する。
【0105】
抵抗素子R7,R8,R9,R10のそれぞれの抵抗値は、配線パターンL_X,L_Y,L_ZのインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの大きさに基づいて設定される。抵抗素子R7,R8,R9,R10のそれぞれの抵抗値は、例えばインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの設計値、あるいはインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zの実測値に基づいて設定される。
【0106】
このように、第二切替部124dは、IGBT111xに対するゲート駆動回路12xの位置関係の判定に選択回路122aで生成された選択信号Ss1,Ss2,Ss3を用いるように構成されている。しかしながら、半導体モジュール1は、判定部121及び選択回路122aと同じ構成の判定部及び選択回路を有し、第二切替部124dは、当該判定部及び当該選択回路によって生成された選択信号を用いて基準電圧Vrefの電圧レベルを切り替えるように構成されていてもよい。
【0107】
図3に示すように、保護部124に設けられた比較器124aは、例えばオペアンプで構成されている。比較器124aの反転入力端子(-)は、変換部124bに設けられた抵抗素子124b-1の一端子及びIBGT111xの電流検知素子Sに接続されている。比較器124aの非反転入力端子(+)は、第二切替部124dの出力端子に接続されている。すなわち、比較器124aの非反転入力端子(+)は、スイッチSW4,SW5,SW6のそれぞれの出力端子に接続されている。比較器124aの出力端子は、処理部124cに接続されている。
【0108】
これにより、比較器124aは、変換部124bから入力される検知電圧Vsと、第二切替部124dから入力される基準電圧Vrefとを比較して、検知電圧Vsが基準電圧Vrefよりも低い場合はハイレベルの比較信号Scを処理部124cに出力する。一方、比較器124aは、検知電圧Vsが基準電圧Vrefよりも高い場合はローレベルの比較信号Scを出力する。
【0109】
第二切替部124dから出力される基準電圧Vrefは、基準電位が判定パッドPdxに印加されている場合に最も低くなり、電源電圧VCCが判定パッドPdxに印加されている場合に最も高くなり、判定パッドPdxがオープン状態に設定されている場合に最大及び最小の間の電圧になる。つまり、IGBT111xに対するゲート駆動回路12xの位置関係が近くなるほど基準電圧Vrefの電圧レベルが低くなり、当該位置関係が遠いほど基準電圧Vrefの電圧レベルが高くなる。
【0110】
半導体モジュール1では、IGBT111xに対するゲート駆動回路12xの位置関係、IGBT111zに対するゲート駆動回路12zの位置関係及びIGBT111yに対するゲート駆動回路12yの位置関係のうち、ゲート駆動回路12xにおける位置関係が最も近く、ゲート駆動回路12yにおける位置関係が2番目に近く、ゲート駆動回路12zにおける位置関係が最も離れている。したがって、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBTに対して最も短い距離を有するゲート駆動回路12xにおける基準電圧Vrefが最も高い電圧レベルになる。また、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBTに対して2番目に短い距離を有するゲート駆動回路12yにおける基準電圧Vrefが2番目に高い電圧レベルになる。さらに、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、IGBTに対して最も長い距離を有するゲート駆動回路12zにおける基準電圧Vrefが最も低い電圧レベルになる。
【0111】
換言すると、半導体モジュール1では、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、最も低いインピーダンスZ_Xを有する配線パターンL_XでIGBT111xに接続されたゲート駆動回路12xにおける基準電圧Vrefが最も高い電圧レベルになる。また、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、2番目に低いインピーダンスZ_Yを有する配線パターンL_YでIGBT111yに接続されたゲート駆動回路12yにおける基準電圧Vrefが2番目に高い電圧レベルになる。さらに、ゲート駆動回路12x,12y,12zのうち、最も高いインピーダンスZ_Xを有する配線パターンL_ZでIGBT111zに接続されたゲート駆動回路12zにおける基準電圧Vrefが最も低い電圧レベルになる。
【0112】
このように、半導体モジュール1は、異常判定のための閾値(すなわち基準電圧Vref)をIGBT111x,111y,111zに対するゲート駆動回路12x,12y,12zの位置関係に応じて最適値に設定することができる。
【0113】
処理部124cは、比較器124aから入力される比較信号Scの電圧レベルがある一定時間ローレベルになった場合には、IGBT111xに初期過渡異常が発生していると判定する。処理部124cは、IGBT111xに初期過渡異常が発生していると判定した場合には、IGBT111xへのゲート駆動電流の供給を停止する。例えば、処理部124cは、駆動部123に設けられたトランジスタ123fをオン状態に切り替えることにより、トランジスタ123c-2,123gから出力される電流をIGBT111xのゲート端子ではなく基準電位端子に流すことにより、IGBT111xの動作を停止することができる。これにより、保護部124は、初期過渡異常に伴う過電流がIGBT111xに流れることを防止してIGBT111xを故障から保護することができる。
【0114】
ゲート駆動回路12u,12v,12w,12y,12zは、ゲート駆動回路12xに設けられた保護部124と同様の構成の保護部を備えている。このため、ゲート駆動回路12u,12v,12w,12y,12zは、ゲート駆動回路12xと同様に、初期過渡異常に伴う過電流がIGBT111xに流れることを防止してIGBT111xを故障から保護することができる。このように、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zを個別に保護することができる。
【0115】
(ゲート駆動回路の動作及び効果)
本実施形態による半導体モジュール1の動作及び効果を説明する前に、比較例としての半導体モジュールの問題点について説明する。
【0116】
半導体モジュールの分野において、ゲート駆動回路からIGBTに出力されるゲート駆動信号については、損失及びノイズが低減されるようにゲート駆動電流が最適値に設計される。半導体モジュール内で、ゲート駆動回路及びIGBTなどの半導体スイッチング素子が配置され、半導体基板に形成された配線パターン及びボンディングワイヤーによって半導体モジュールの外部端子と半導体スイッチング素子とが接続される。半導体モジュール内に設けられたゲート駆動回路などの構成要素の配置により、電源パターン、基準電位パターン(例えばグランドパターン)及び配線パターンのそれぞれのインピーダンス(配線インピーダンス)による影響が構成要素ごとに異なる。このインピーダンスの違いによる電源電圧の揺れの半導体スイッチング素子の電気的特性への影響、配線インピーダンスによってゲート駆動信号などの各種信号の電圧降下の大きさが異なることの影響、及び配線間のカップリングに起因するノイズの影響の少なくとも2つが重なる場合がある。この場合、U相、V相及びW相のいずれかにおいて、ゲート駆動信号の信号波形が最適設計された信号波形からずれたり、電流検知信号の信号波形に最適設計された場合のリンギングとは異なるリンギングが生じたりするという問題が生じる場合がある。
【0117】
この問題について
図4から
図6を用いて具体的に説明する。
図4は、比較例による半導体モジュールにおけるゲート駆動電流の電流波形の一例を模式的に示す図である。
図4中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図4中に示すグラフの縦軸はゲート駆動電流を表している。
図5は、比較例による半導体モジュールにおけるゲート駆動電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
図5中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図5中に示すグラフの縦軸はゲート駆動電圧を表している。
図6は、比較例による半導体モジュールにおける検知電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
図6中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図6中に示すグラフの縦軸は検知電圧を表している。
【0118】
図示は省略するが、比較例による半導体モジュールは、ゲート駆動回路に判定部121、設定部122及び第二切替部124dを有していない点を除いて、本実施形態による半導体モジュール1と同様の構成を有している。このため、比較例による半導体モジュールでは、上アーム部及び下アーム部を構成する複数のゲート駆動回路は、IGBTに対する位置関係に応じて駆動能力を変更することはできず、当該位置関係によらず互いに同じ駆動能力に設定されている。
【0119】
以下、説明の便宜上、比較例による半導体モジュールにおいて、本実施形態におけるゲート駆動回路12xに相当し、U相かつ下アームを構成するIGBTに接続されたゲート駆動回路を「ゲート駆動回路12cx」と称する。また、比較例による半導体モジュールにおいて、本実施形態におけるゲート駆動回路12yに相当し、V相かつ下アームを構成するIGBTに接続されたゲート駆動回路を「ゲート駆動回路12cy」と称する。また、比較例による半導体モジュールにおいて、本実施形態におけるゲート駆動回路12zに相当し、W相かつ下アームを構成するIGBTに接続されたゲート駆動回路を「ゲート駆動回路12cz」と称する。また、ゲート駆動回路12cxが接続されたIGBTを「IGBT111cx」と称し、ゲート駆動回路12cyが接続されたIGBTを「IGBT111cy」と称し、ゲート駆動回路12czが接続されたIGBTを「IGBT111cz」と称することにする。さらに、ゲート駆動回路12cxとIGBT111cxとを接続する配線パターンを「配線パターンcL_X」と称し、ゲート駆動回路12cyとIGBT111cyとを接続する配線パターンを「配線パターンcL_Y」と称し、ゲート駆動回路12czとIGBT111czとを接続する配線パターンを「配線パターンcL_Z」と称することにする。
【0120】
ここで、比較例による半導体モジュールは、
図2に示す本実施形態による半導体モジュール1と同様の部品配置を有しているとする。このため、駆動対象のIGBTに対し、ゲート駆動回路12cxが最も近くに配置され、ゲート駆動回路12cyが2番目に近くに配置され、ゲート駆動回路12czが最も近くに配置される。比較例による半導体モジュールでは、駆動対象のIGBTを駆動するためにゲート駆動回路12cyが最適な駆動能力となるように設定されている。すなわち、比較例による半導体モジュールでは、ゲート駆動回路12cx,12cy,12czのそれぞれの駆動能力は、配線パターンcL_Yのインピーダンスを介してIGBTを最適に駆動できるように設定されている。配線パターンcL_Xは、配線パターンcL_Yのインピーダンスよりも小さいインピーダンス値を有し、配線パターンcL_Zは、配線パターンcL_Yのインピーダンスよりも大きいインピーダンス値を有している。このため、ゲート駆動回路12cxの駆動能力は、IGBT111cxを駆動するための最適な駆動能力よりも高く、ゲート駆動回路12czの駆動能力は、IGBT111cxを駆動するための最適な駆動能力よりも低い。
【0121】
その結果、
図4に示すように、例えば時刻t1において、入力信号Inx,InY,InZに相当する入力信号がゲート駆動回路12cx,12cy,12czに入力した場合、最適な駆動能力に設定されたゲート駆動回路12cyがIGBT111cyに出力するゲート駆動電流IgcYは、所望の時刻t2yで所望の電流値Itに到達する。これにより、
図5に示すように、時刻t2yにおいてIGBT111cyのゲート駆動電圧VgcYが電圧V2yに到達する。
【0122】
また、この場合、最適な駆動能力よりも高い状態に設定されたゲート駆動回路12cxがIGBT111cxに出力するゲート駆動電流IgcXは、所望の時刻t2yよりも早い時刻t2xで所望の電流値Itに到達する。これにより、
図5に示すように、時刻t2xにおいて、IGBT111cxのゲート駆動電圧VgcXが電圧V2xに到達する。さらに、この場合、最適な駆動能力よりも低い状態に設定されたゲート駆動回路12czがIGBT111czに出力するゲート駆動電流IgcZは、所望の時刻t2yよりも遅い時刻t2zで所望の電流値Itに到達する。これにより、
図5に示すように、時刻t2zにおいて、IGBT111czのゲート駆動電圧VgcZが電圧V2zに到達する。さらに、時刻t2zから所定時間後の時刻t3において、ゲート駆動電圧VgcX,VgcY,VgcZは、ほぼ同じ電圧値となる。
【0123】
このように、最適な駆動能力よりも高い状態に設定されたゲート駆動回路12cxがIGBT111cxに出力するゲート駆動電圧VgcXは、最適な駆動能力に設定されたゲート駆動回路12cyがIGBT111cyに出力するゲート駆動電圧VgcYと比較して、早い時刻で高い電圧に到達する。一方、最適な駆動能力よりも低い状態に設定されたゲート駆動回路12czがIGBT111czに出力するゲート駆動電圧VgcZは、最適な駆動能力に設定されたゲート駆動回路12cyがIGBT111cyに出力するゲート駆動電圧VgcYと比較して、遅い時刻で低い電圧に到達する。
【0124】
ゲート駆動電圧VgcXのように、最適なタイミングよりも早く立ち上がり、かつ最適な電圧よりも最大値が高くなると、IGBT111cxのターンオン時に発生するノイズが増加する。また、ゲート駆動電圧VgcZのように、最適なタイミングよりも遅く立ち上がると、IGBT111czにおけるスイッチング損失が増加してしまう。このため、比較例による半導体モジュールは、許容範囲を超えたノイズを発生したり、スイッチング損失が増加したりするという問題を有している。
【0125】
図5に示すゲート駆動電圧VgcX,VgcY,VgcZによってIGBT111cx,111cy,111czがターンオンした場合、IGBT111cx,111cy,111czのそれぞれに設けられた電流検知素子から検知電流が流れる。電流検知素子から検知電流は、IGBT111cx,111cy,111czのコレクタ-エミッタ間電流に比例する。IGBT111cx,111cy,111czのコレクタ-エミッタ間電流は、IGBT111cx,111cy,111czのゲート駆動電圧VgcX,VgcY,VgcZが立ち上がることに応じて立ち上がる。一方、抵抗素子を用いて検知電流を電圧に変換した検知電圧は、検知電流に比例する。このため、検知電圧は、ゲート駆動電圧VgcX,VgcY,VgcZが立ち上がることに応じて立ち上がる。
【0126】
図6に示すように、比較例による半導体モジュールでは、ゲート駆動回路12cx,12cy,12czに設けられた保護部に設定されるそれぞれの基準電圧Vrefcは、同一の電圧値に設定される。比較例による半導体モジュールでは、基準電圧Vrefcは、最適な駆動能力に設定されたゲート駆動回路12cyにおける検知電流に基づいて設定される。このため、IGBT111cyが正常動作している場合には、検知電圧VdecYは、立ち上がり始めてから所定タイミングである時刻tα2において初めて基準電圧Vrefcよりも高くなる。
【0127】
これに対し、IGBT111cxにおける検知電圧VdecXは、ゲート駆動電圧VgcXがゲート駆動電圧VgcYより早く立ち上がることに応じて、検知電圧VdecYよりも早く立ち上がる。このため、IGBT111cxが正常に動作していたとしても、
図6に示すように、検知電圧VdecXは、時刻tα2よりも早い時刻tα1において初めて基準電圧Vrefcよりも高くなる。これにより、ゲート駆動回路12cxに設けられた保護部は、IGBT111cxの初期過渡特性が正常な特性を有しておらず、IGBT111cxに異常が発生していると判定してしまう。
【0128】
また、IGBT111czにおける検知電圧VdecZは、ゲート駆動電圧VgcZがゲート駆動電圧VgcZより遅く立ち上がることに応じて、検知電圧VdecYよりも遅く立ち上がる。さらに、ゲート駆動電圧VgcZは立ち上がり時の最大値がゲート駆動電圧VgcYよりも低いため(
図5参照)、
図6に示すように、検知電圧VdecZの最大値は、検知電圧VdecYの最大値よりも低く、例えば基準電圧Vrefc以下の電圧となる。このため、IGBT111czが異常動作していたとしても、検知電圧VdecYが基準電圧Vrefcよりも高くならないため、ゲート駆動回路12czに設けられた保護部は、IGBT111czの初期過渡特性が正常な特性を有していると判定し、IGBT111czに異常が発生していないと判定してしまう。
【0129】
このように、比較例による半導体モジュールは、IGBT111cx,111cy,111czの少なくとも1つ(本例ではIGBT111cx,111czの2つ)の初期過渡特性を正確に判定できないという問題を有している。詳細な説明は省略するが、比較例による半導体モジュールは、U相、V相及びW相のそれぞれの上側アーム部を構成するIGBTの少なくともいずれか1つの初期過渡特性を正確に判定できない
【0130】
次に、本実施形態による半導体モジュール1に備えられたゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zの動作及び効果について
図1から
図3を参照しつつ
図7から
図9用いて説明する。半導体モジュール1に備えられたゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zは、互いに同一の構成を有し、同様に動作する。このため、以下、ゲート駆動回路12u,12v,12w,12x,12y,12zの動作について、ゲート駆動回路12x,12y,12zを例にとって説明する。また、ゲート駆動回路12x,12y,12zの動作及び効果の説明に当たって、ゲート駆動回路12y,12zのそれぞれの構成要素について、
図3に示すゲート駆動回路12xの構成要素と同一の参照符号を用いて説明する。また、ゲート駆動回路12x,12y,12zによって駆動されるIGBT111x,111y,111zは、互いに異なるタイミングでターンオン及びターンオフされるが、理解を容易にするため、以下、同時にターンオンするとして説明する。
【0131】
図7は、半導体モジュール1におけるゲート駆動電流の電流波形の一例を模式的に示す図である。
図7中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図7中に示すグラフの縦軸はゲート駆動電流を表している。
図8は、半導体モジュール1におけるゲート駆動電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
図8中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図8中に示すグラフの縦軸はゲート駆動電圧を表している。
図9は、半導体モジュール1における検知電圧の電圧波形の一例を模式的に示す図である。
図9中に示すグラフの横軸は時間を表し、
図9中に示すグラフの縦軸は検知電圧を表している。
【0132】
半導体モジュール1では例えば、ゲート駆動回路12yが最適な駆動能力となるように設定されている。すなわち、半導体モジュール1では、ゲート駆動回路12cyの駆動能力は、判定パッドPdy(
図2参照)をオープン状態に設定した場合に、配線パターンL_YのインピーダンスZ_Yを介してIGBT111yを最適に駆動できるように設定されている。
【0133】
また、半導体モジュール1では、配線パターンL_YのインピーダンスZ_Yよりも低いインピーダンスZ_Xを有する配線パターンL_Xに接続されたゲート駆動回路12xの判定パッドPdxは、電源電圧VCCが出力される電源端子に接続される。さらに、半導体モジュール1では、配線パターンL_YのインピーダンスZ_Yよりも高いインピーダンスZ_Zを有する配線パターンL_Zに接続されたゲート駆動回路12xの判定パッドPdzは、基準電位端子(例えばグランド端子)に接続される。
【0134】
判定パッドPdx,Pdy,Pdzに対する接続状態は、半導体モジュール1の使用者によって半導体モジュール1が動作する前に半導体モジュール1の例えば仕様書の記載に基づいて、半導体モジュール1の使用者によって設定される。判定パッドPdx,Pdy,Pdzは、ボンディングワイヤーなどによって、半導体モジュール1の外部端子に電気的に接続されている。判定パッドPdx及び電源端子は、半導体モジュール1が実装される例えばプリント回路基板に形成された配線パターンや外付けの抵抗素子などを用いて接続される。同様に、判定パッドPdz及び基準電位端子は、当該プリント回路基板に形成された配線パターンや外付けの抵抗素子などを用いて接続される。
【0135】
このように、半導体モジュール1では、動作を開始する前に、IGBT111x,111y,111zに対する位置関係に応じてゲート駆動回路12x,12y,12zの駆動能力が設定される。これにより、半導体モジュール1に電源が投入されてゲート駆動回路12x,12y,12zが動作状態になると、ゲート駆動回路12xに設けられた選択回路122aには、ハイレベルの電圧レベルを有する第一比較信号Sc1と、ハイレベルの電圧レベルを有する第二比較信号Sc2とが入力される。このため、ゲート駆動回路12xに設けられた選択回路122aは、ローレベルの電圧レベルを有する選択信号Ss1,Ss2及びハイレベルの電圧レベル有する選択信号Ss3を、ゲート駆動回路12xに設けられた第一切替部122b及び第二切替部124dに出力する。
【0136】
ゲート駆動回路12xの第一切替部122bに設けられたスイッチ回路122b-2のスイッチSW2,SW3は開状態となり、スイッチSW1は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12xに設けられた第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最大の電圧レベルを有する切替信号Schを、ゲート駆動回路12xの駆動部123に設けられた増幅器123aに出力する。このため、ゲート駆動回路12xの駆動部123に設けられたカレントミラー回路123cのトランジスタ123c-1は、設定可能な範囲内で最小の電流を出力する。これにより、ゲート駆動回路12xの駆動部123に設けられたトランジスタ123c-2,123gは、設定可能な範囲内で最小の電流をゲート駆動電流IgXとしてIGBT111xのゲート端子に出力する。
図7に示すように、時刻t1においてIGBT111xのゲート端子に流れ始めたゲート駆動電流IgXは、時刻t1において電流値Itxに到達する。
【0137】
また、ゲート駆動回路12xの保護部124に設けられた第二切替部124dに設けられたスイッチ回路124d-2のスイッチSW2,SW3は開状態となり、スイッチSW1は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12xの保護部124に設けられた第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最高の電圧レベルを有する基準電圧を、ゲート駆動回路12xの保護部124に設けられた比較器124aに出力する。
【0138】
また、半導体モジュール1に電源が投入されてゲート駆動回路12x,12y,12zが動作状態になると、ゲート駆動回路12yに設けられた選択回路122aには、ハイレベルの電圧レベルを有する第一比較信号Sc1と、ローレベルの電圧レベルを有する第二比較信号Sc2とが入力される。このため、ゲート駆動回路12yに設けられた選択回路122aは、ローレベルの電圧レベルを有する選択信号Ss1及びハイレベルの電圧レベル有する選択信号Ss2,Ss3を、ゲート駆動回路12yに設けられた第一切替部122b及び第二切替部124dに出力する。
【0139】
ゲート駆動回路12yの第一切替部122bに設けられたスイッチ回路122b-2のスイッチSW1,SW3は開状態となり、スイッチSW2は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12yに設けられた第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最高及び最低の間の電圧レベルを有する切替信号Schを、ゲート駆動回路12yの駆動部123に設けられた増幅器123aに出力する。このため、ゲート駆動回路12yの駆動部123に設けられたカレントミラー回路123cのトランジスタ123c-1は、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の電流を出力する。これにより、ゲート駆動回路12yの駆動部123に設けられたトランジスタ123c-2,123gは、設定可能な範囲内で最大及び最小の間の電流をゲート駆動電流IgYとしてIGBT111yのゲート端子に出力する。
図7に示すように、時刻t1においてIGBT111yのゲート端子に流れ始めたゲート駆動電流IgYは、時刻t1において、電流値Itxよりも大きい電流値Ityに到達する。
【0140】
また、ゲート駆動回路12yの保護部124に設けられた第二切替部124dに設けられたスイッチ回路124d-2のスイッチSW1,SW3は開状態となり、スイッチSW2は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12yの保護部124に設けられた第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最高及び最低の間の電圧レベル(すなわちゲート駆動回路12xにおける基準電圧よりも低い電圧レベル)を有する基準電圧を、ゲート駆動回路12yの保護部124に設けられた比較器124aに出力する。
【0141】
また、半導体モジュール1に電源が投入されてゲート駆動回路12x,12y,12zが動作状態になると、ゲート駆動回路12zに設けられた選択回路122aには、ハイレベルの電圧レベルを有する第一比較信号Sc1と、ハイレベルの電圧レベルを有する第二比較信号Sc2とが入力される。このため、ゲート駆動回路12zに設けられた選択回路122aは、ローレベルの電圧レベルを有する選択信号Ss1,Ss2及びハイレベルの電圧レベル有する選択信号Ss3を、ゲート駆動回路12zに設けられた第一切替部122b及び第二切替部124dに出力する。
【0142】
ゲート駆動回路12zの第一切替部122bに設けられたスイッチ回路122b-2のスイッチSW1,SW2は開状態となり、スイッチSW3は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12zに設けられた第一切替部122bは、設定可能な範囲内で最高の電圧レベルを有する切替信号Schを、ゲート駆動回路12zの駆動部123に設けられた増幅器123aに出力する。このため、ゲート駆動回路12zの駆動部123に設けられたカレントミラー回路123cのトランジスタ123c-1は、設定可能な範囲内で最大の電流を出力する。これにより、ゲート駆動回路12zの駆動部123に設けられたトランジスタ123c-2,123gは、設定可能な範囲内で最大の電流をゲート駆動電流IgZとしてIGBT111zのゲート端子に出力する。
図7に示すように、時刻t1においてIGBT111yのゲート端子に流れ始めたゲート駆動電流IgZは、時刻t1において、電流値Itx,Ityよりも大きい電流値Ityに到達する。
【0143】
また、ゲート駆動回路12zの保護部124に設けられた第二切替部124dに設けられたスイッチ回路124d-2のスイッチSW1,SW2は開状態となり、スイッチSW3は閉状態となる。これにより、ゲート駆動回路12zの保護部124に設けられた第二切替部124dは、設定可能な範囲内で最低の電圧レベル(すなわちゲート駆動回路12yにおける基準電圧よりも低い電圧レベル)を有する基準電圧を、ゲート駆動回路12zの保護部124に設けられた比較器124aに出力する。
【0144】
図7に示すように、ゲート駆動回路12xが出力するゲート駆動電流IgX、ゲート駆動回路12yが出力するゲート駆動電流IgY及びゲート駆動回路12zが出力するゲート駆動電流IgZは、時刻t2において到達する電流値が異なる。ゲート駆動電流IgXの電流値Itxが最も小さく、ゲート駆動電流IgYの電流値Ityが2番目に小さく、ゲート駆動電流IgZの電流値Itzが最も大きい。
【0145】
しかしながら、配線パターンL_X,L_Y,L_ZのインピーダンスZ_X,Z_Y,Z_Zうち、ゲート駆動電流IgXが流れる配線パターンL_XのインピーダンスZ_Xが最も低く、ゲート駆動電流IgYが流れる配線パターンL_YのインピーダンスZ_Yが2番目に低く、ゲート駆動電流IgZが流れる配線パターンL_ZのインピーダンスZ_Zが最も高い。これにより、配線パターンL_X,L_Y,L_Zのうち、配線パターンL_Xにおける電圧降下が最も小さく、配線パターンL_Yにおける電圧降下が2番目に小さく、配線パターンL_Zにおける電圧降下が最も大きい、このため、IGBT111xのゲート端子に流れるゲート駆動電流IgXと、IGBT111yのゲート端子に流れるIgYと、IGBT111zのゲート端子に流れるゲート駆動電流IgZは、ほぼ同じ電流量となる。
【0146】
その結果、
図8に示すように、IGBT111xのゲート駆動電圧VgXと、IGBT111yのゲート駆動電圧VgYと、IGBT111zのゲート駆動電圧VgZは、ほぼ同じ電圧波形を有し、時刻t2においてほぼ同じ電圧値を有する。このため、半導体モジュール1は、ゲート駆動回路12x,12y,12zのいずれにおいても最適な状態でIGBT111x,111y,111zを駆動することできる。これにより、半導体モジュール1は、比較例による半導体モジュールと比較して、IGBT111x,111y,111zがスイッチングする際(すなわちターンオン及びターンオフする際)の発生するノイズの低減を図ることができる。さらに、半導体モジュール1は、比較例による半導体モジュールと比較して、IGBT111x,111y,111zがスイッチングする際(すなわちターンオン及びターンオフする際)のスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0147】
図9に示すように、ゲート駆動回路12xに設けられた保護部124において設定される基準電圧Vrefx、ゲート駆動回路12yに設けられた保護部124において設定される基準電圧Vrefy及びゲート駆動回路12zに設けられた保護部124において設定される基準電圧Vrefzは、互いに異なる電圧レベルとなる。基準電圧Vrefxの電圧レベルは、基準電圧Vrefy及び基準電圧Vrefzのそれぞれの電圧レベルよりも高く、基準電圧Vrefyの電圧レベルは、基準電圧Vrefzの電圧レベルよりも高く、基準電圧Vrefzの電圧レベルは、最も低い。このため、半導体モジュール1は、IGBT111x,111y,111zの初期過渡特性を専用の基準電圧を用いて判定できる。これにより、半導体モジュール1は、比較例による半導体モジュールと比較して、IGBT111x,111y,111zの初期過渡特性の判定精度の向上を図ることができる。
【0148】
詳細な説明は省略するが、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w(
図1参照)についても、ノイズの低減及びスイッチング損失の低減を図ることができる。また、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zのターンオフの際のノイズの低減及びスイッチング損失の低減を図ることができる。さらに、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w(
図1参照)についても、初期過渡特性の判定精度の向上を図ることができる。
【0149】
以上説明したように、本実施形態による半導体モジュール1は、負荷に電力を供給するIGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zと、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zに1対1の関係で駆動対象が設定され、当該駆動対象のIGBT111uに対する位置関係に応じてIGBT111uを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12u、当該駆動対象のIGBT111vに対する位置関係に応じてIGBT111vを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12v、当該駆動対象のIGBT111wに対する位置関係に応じてIGBT111wを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12w、当該駆動対象のIGBT111xに対する位置関係に応じてIGBT111xを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12x、当該駆動対象のIGBT111yに対する位置関係に応じてIGBT111yを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12y及び当該駆動対象のIGBT111zに対する位置関係に応じてIGBT111zを駆動する駆動能力が設定されるゲート駆動回路12zとを備えている。
【0150】
これにより、半導体モジュール1は、IGBT111u,111v,111w,111x,111y,111zのそれぞれの駆動特性(例えばターンオン及びターンオフのタイミング)のばらつきを低減することができる。その結果、半導体モジュール1は、IGBT111x,111y,111zがスイッチングする際(すなわちターンオン及びターンオフする際)のスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0151】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0152】
1 半導体モジュール
3 制御装置
4 交流電源部
5 平滑用コンデンサ
6 モータ
10 半導体基板
11u,11v,11w,11x,11y,11z 半導体素子
12cx,12cy,12cz,12u,12v,12w,12x,12y,12z ゲート駆動回路
111cx,111cy,111cz,111u,111v,111w,111x,111y,111z IGBT
112u,112v,112w,112x,112y,112z 還流ダイオード
121 判定部
121a 判別部
121a-1 第一比較器
121a-2 第一比較電圧生成部
121a-3 第二比較器
121a-4 第二比較電圧生成部
122 設定部
122a 選択回路
122b 第一切替部
122b-1,124d-1 ラダー抵抗回路
122b-2,124d-2 スイッチ回路
123 駆動部
123a 増幅器
123b,123c-1,123c-2,123e,123f,123g トランジスタ
123c カレントミラー回路
123d,124b-1,R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10 抵抗素子
124 保護部
124a 比較器
124b 変換部
124c 処理部
124d 第二切替部
cL_X,cL_Y,cL_Z,L_IU,L_IV,L_IW,L_IX,L_IY,L_IZ,L_N,L_OU,L_OV,L_OW,L_P,L_U,L_V,L_W,L_X,L_Y,L_Z 配線パターン
IgcX,IgcY,IgcZ,IgX,IgY,IgZ ゲート駆動電流
InU,InV,InW,Inx,InX,InY,InZ 入力信号
Is 検知電流
Ln 負極側ライン
Lp 正極側ライン
P_N 負極側電源入力パッド
P_P 正極側電源入力パッド
P_U U相出力パッド
P_V V相出力パッド
P_W W相出力パッド
Pdu,Pdv,Pdw,Pdx,Pdy,Pdz 判定パッド
Pgnd 基準電位パッド
PinU,PinV,PinW,PinX,PinY,PinZ,PinZX 信号入力パッド
Pvcc 電源パッド
S 電流検知素子
Sc 比較信号
Sc1 第一比較信号
Sc2 第二比較信号
Sch 切替信号
SgU,SgV,SgW,SgX,SgY,SgZ ゲート駆動信号
So 出力信号
Ss1,Ss2,Ss3 選択信号
SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6 スイッチ
TinU,TinV,TinW,TinX,TinY,TinZ 信号入力端子
Tn 負極側電源入力端子
Tp 正極側電源入力端子
TU U相出力端子
TV V相出力端子
TW W相出力端子
Vc1 第一比較電圧
Vc2 第二比較電圧
VCC 電源電圧
Vde 判定電圧
VdecX,VdecY,VdecZ 検知電圧
VgcX,VgcY,VgcZ,VgX,VgY,VgZ ゲート駆動電圧
Vref,Vrefc,Vrefx,Vrefy,Vrefz 基準電圧
Vs 検知電圧
Z_NX,Z_NY,Z_NZ,Z_PU,Z_PV,Z_PW,Z_U,Z_V,Z_W,Z_X,Z_Y,Z_Z インピーダンス