IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

特開2024-42803プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、および、半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042803
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、および、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240322BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240322BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240322BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/302 101H
H01L27/11582
H01L29/78 371
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147666
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊行
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB14
2G084BB27
2G084CC03
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD38
2G084FF15
2G084HH06
2G084HH09
2G084HH17
2G084HH42
5F004AA15
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB28
5F004CA08
5F004CB02
5F004DA00
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EB01
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083GA30
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA39
5F083JA40
5F083PR03
5F083PR21
5F083PR40
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH14
(57)【要約】
【課題】クリーニング時間を短縮することができるプラズマ処理装置、プラズマ処理方法、および、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によるプラズマ処理装置は、チャンバと、複数の直流電源と、制御部と、を備える。個別に制御可能な複数の直流電源は、チャンバの上部および側壁に設けられる。制御部は、互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの上部および側壁に設けられ、個別に制御可能な複数の直流電源と、
互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する制御部と、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
複数の前記直流電源は、
前記チャンバの上部の異なる位置に設けられ、前記チャンバの上部に直流電圧を印加可能な1つ以上の上部直流電源と、
前記チャンバの側壁の異なる位置に設けられ、前記チャンバの側壁に直流電圧を印加可能な1つ以上の側壁直流電源と、
を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、
電極を含み、前記ガスをプラズマ化するガス処理部と、
をさらに備え、
前記制御部は、プラズマ処理中に互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する、請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記チャンバ内における、プラズマ処理に用いられるラジカルの量を検出するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサの検出結果に応じて互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記チャンバ内における、プラズマ処理に用いられるラジカルの空間分布を算出し、算出した前記空間分布に応じて互いに独立して直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記センサの検出結果が第1所定値以下である場合、印加する直流電圧を上げるように、対応する位置の前記直流電源を制御し、前記センサの検出結果が第2所定値以上である場合、印加する直流電圧を下げるように、対応する位置の前記直流電源を制御する、
前記第2所定値は、前記第1所定値よりも高い、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記センサの検出結果に対して前記ガスの供給量が略同じになるように、前記ガス供給部を制御する、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記直流電源による直流電圧の印加タイミングに応じて、前記ガス供給部を制御する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、複数の前記直流電源による直流電圧の印加中に、前記ガスの供給量を減少させるように、前記ガス供給部を制御する、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定周期で直流を印加するように、複数の前記直流電源を制御する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記ガスは、フルオロカーボンガスを含む、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
チャンバと、前記チャンバの上部および側壁に設けられ、個別に制御可能な複数の直流電源と、互いに独立して直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する制御部と、を備えるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
プラズマ処理中に、複数の前記直流電源に直流電圧を印加させることにより、前記チャンバ内に堆積した堆積膜をエッチングする、
ことを具備する、プラズマ処理方法。
【請求項13】
ウェハを収容するチャンバと、前記チャンバの上部および側壁に設けられ、個別に制御可能な複数の直流電源と、互いに独立して直流電圧を印加するように、複数の前記直流電源を制御する制御部と、を備えるプラズマ処理装置を用いて前記ウェハ上に形成された被加工膜をエッチングする半導体装置の製造方法であって、
前記被加工膜のエッチング中に、複数の前記直流電源に直流電圧を印加させることにより、前記チャンバ内に堆積した堆積膜をエッチングする、
ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、および、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理に用いるガスの種類等によっては、チャンバ内に膜が堆積しやすくなり、または、堆積膜が除去されづらくなる場合がある。この場合、チャンバ内のクリーニング時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-71522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーニング時間を短縮することができるプラズマ処理装置、プラズマ処理方法、および、半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によるプラズマ処理装置は、チャンバと、複数の直流電源と、制御部と、を備える。個別に制御可能な複数の直流電源は、チャンバの上部および側壁設けられる。制御部は、互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態によるプラズマ処理装置の構造の一例を示す断面図である。
図2】第1実施形態による直流電源の構成の一例を示す断面図である。
図3】第1実施形態による上部直流電源の構成の一例を示す平面図である。
図4】第1実施形態によるプラズマ処理装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5】第2実施形態による半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
図6A】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図6B】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図7A】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図7B】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図8A】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図8B】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図9A】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図9B】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図10A】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図10B】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるプラズマ処理装置100の構造の一例を示す断面図である。図1のプラズマ処理装置は、例えばプラズマエッチング装置等の処理装置(半導体製造装置)である。
【0009】
図1のプラズマ処理装置は、処理チャンバ11と、載置台(ステージ)12と、上部電極13と、交流電源14と、プロセスガス供給部15と、センサ16と、直流電源17と、制御部19とを備えている。ステージ12、上部電極13、および、交流電源14は、ガス処理部の例である。
【0010】
処理チャンバ11は、処理対象のウェハWを収容する。図1は、ウェハWの表面S1や裏面に平行で互いに垂直なX2方向およびY2方向と、ウェハWの表面S1や裏面に垂直なZ2方向を示している。本明細書では、+Z2方向を上方向として取り扱い、-Z2方向を下方向として取り扱う。本実施形態の-Z2方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。
【0011】
ステージ12には、処理チャンバ11内のウェハWが載置される。ステージ12は、プラズマ処理用の下部電極としても機能する。
【0012】
上部電極13は、ステージ12の上方に設けられている。上部電極13は、例えば、処理チャンバ11の上部で、天板111から離れた位置に設けられている。プラズマ処理装置100は、上部電極13とステージ12との間にプラズマを発生させ、プラズマをウェハWの表面S1側に供給し、プラズマによりウェハWを処理する。具体的には、プラズマを用いたドライエッチングによりウェハWの表面S1がエッチングされる。実施形態において、例えば、ドライエッチングによりウェハWの表面S1に形成された被加工膜にホールが形成される。
【0013】
交流電源14は、ステージ12に交流電圧を印加する。これにより、上部電極13とステージ12との間にプラズマPが発生する。交流電源14は、交流電源141と、交流電源142と、を有する。交流電源141は、例えば、60MHzの周波数を有する高周波電源である。交流電源142は、例えば、400kHzの周波数を有する高周波電源である。
【0014】
プロセスガス供給部15は、プラズマ生成用のプロセスガスを処理チャンバ11内に供給する。プロセスガスは、例えば、上部電極13に設けられる複数の貫通孔を通過する。上部電極13およびステージ12は、交流電源14からの交流電圧を用いてプロセスガスからプラズマを生成する。プロセスガスは、例えば、フルオロカーボンガスを含む。プロセスガスは、例えば、水素(H)を含む。
【0015】
センサ16は、処理チャンバ11内、すなわち、プラズマPにおける、プラズマ処理に用いられるラジカルの量を検出する。センサ16は、例えば、発光分光法によって解析する装置である。センサ16は、例えば、OES(Optical Emission Spectrometry)装置である。センサ16は、プラズマエッチング中(つまり、プラズマの発生中)において、処理チャンバ11内の生成物(ラジカル)の発光強度を測定する。発光強度は、例えば各生成物の発光波長から算出する。例えば、エッチングガスとしてCを含むガスを用いた場合、処理チャンバ11内にはCFラジカルとCラジカルが発生する。センサ16は、CFラジカルとCラジカルの発光波長からそれぞれの発光強度を測定することで、それぞれのラジカルの生成量を計測する。
【0016】
直流電源17は、複数設けられ、個別に制御可能である。直流電源17は、例えば、処理チャンバ11の外に設けられる。複数の直流電源17は、処理チャンバ11の上部および側壁112に直流電圧を印加する。処理チャンバ11の上部に直流電圧を印加する直流電源17は、例えば、上部電極13と電気的に接続される。直流電源17の印加電力は、例えば、約200W~約1000Wである。これにより、ウェハWのプラズマ処理中に、処理チャンバ11内で堆積した堆積膜Dをエッチングすることができる。堆積膜Dは、例えば、上部電極13および側壁112にプラズマ処理の反応生成物が堆積して形成される膜である。堆積膜Dは、例えば、フルオロカーボン系の堆積膜である。この場合、堆積膜Dのエッチングにより生成されるフルオロカーボン系(C)のラジカルをウェハWに供給することができる。この結果、堆積膜Dを一部除去しつつ、堆積膜Dから生成したラジカルをウェハWのプラズマ処理に利用することができる。
【0017】
制御部19は、プラズマ処理装置100の動作を制御する。制御部19は例えば、処理チャンバ11の動作、ステージ12の動作、交流電源14のオン/オフや電流、プロセスガス供給部15のオン/オフやプロセスガス供給量などを制御する。
【0018】
より詳細には、制御部19は、互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。これにより、処理チャンバ11内の堆積膜Dを一部除去することができ、クリーニング時間を短縮することができる。より詳細には、制御部19は、プラズマ処理中(ウェハWの被加工膜のエッチング中)に互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。これにより、プラズマ処理中に、処理チャンバ11内の堆積膜Dを一部除去することができる。
【0019】
また、ウェハWのプラズマ処理が完了した後に、さらに処理チャンバ11のクリーニングを行ってもよい。ウェハWのプラズマ処理の後のクリーニングでは、例えば、酸素(O)を含むクリーニングガスが処理チャンバ11内に供給される。このとき、制御部19は、クリーニング中に、直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。
【0020】
また、制御部19は、センサ16の検出結果に応じて互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。より詳細には、制御部19は、センサ16の検出結果に基づいて、処理チャンバ11内における、プラズマ処理に用いられるラジカルの空間分布を算出し、算出した空間分布に応じて互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。制御部19は、例えば、アーベル変換により、空間分布を算出する。
【0021】
また、制御部19は、プロセスガス供給部15を制御する。より詳細には、制御部19は、複数の直流電源17による直流電圧の印加タイミングに応じて、プロセスガス供給部15を制御する。
【0022】
次に、直流電源17の詳細について説明する。
【0023】
図2は、第1実施形態による直流電源17の構成の一例を示す断面図である。
【0024】
複数の直流電源17は、1つ以上の上部直流電源171と、1つ以上の側壁直流電源172と、を有する。
【0025】
上部直流電源171は、上部電極13側、すなわち、処理チャンバ11の天板(上部)111に設けられる。1つ以上の上部直流電源171は、処理チャンバ11の天板111の異なる位置に配置設けられ、個別に制御可能である。1つ以上の上部直流電源171は、処理チャンバ11の上部に直流電圧を印加する。図2に示す例では、複数の上部直流電源171は、3つの上部直流電源171C、171M、171Eを有する。
【0026】
側壁直流電源172は、処理チャンバ11の側壁112に設けられる。1つ以上の側壁直流電源172は、処理チャンバ11の側壁112の異なる位置に設けられ、個別に制御可能である。1つ以上の側壁直流電源172は、処理チャンバ11の側壁112に設けられる電極(図示せず)に直流電圧を印加する。図2に示す例では、複数の側壁直流電源172は、2つの側壁直流電源172U、172Lを有する。
【0027】
側壁直流電源172は、Z2方向から見て、処理チャンバ11の側壁112に沿って設けられる。側壁直流電源172Uは、例えば、側壁112の上部に設けられる。側壁直流電源172Lは、例えば、側壁112の下部に設けられる。
【0028】
図3は、第1実施形態による上部直流電源171の構成の一例を示す平面図である。図3は、図2に示す上部直流電源171をZ2方向から見た図である。
【0029】
上部直流電源171Cは、天板111の中心部に設けられる。図3に示す例では、上部直流電源171Cの形状は、略円形状である。
【0030】
上部直流電源171Eは、天板111の外周端部に設けられる。図3に示す例では、上部直流電源171Eの形状は、略環状である。
【0031】
上部直流電源171Mは、上部直流電源171Cと、上部直流電源171Eと、の間に設けられる。図3に示す例では、上部直流電源171Mの形状は、略環状である。
【0032】
図2および図3に示すように、複数の上部直流電源171C、171M、171Eおよび複数の側壁直流電源172U、172Lが個別に分割して設けられている。これにより、複数の上部直流電源171C、171M、171Eおよび複数の側壁直流電源172U、172Lのそれぞれの位置ごとに、直流電圧を独立に印加することができる。
【0033】
次に、プラズマ処理装置100を用いたプラズマ処理方法について説明する。
【0034】
図4は、第1実施形態によるプラズマ処理装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。図4における左側のタイミングチャートは、ウェハWの中心部(Center)に関連する動作の一例を示す。図4における中心および右側のタイミングチャートは、ウェハWの外周部(Edge)に関連する動作の一例を示す。
【0035】
図4のグラフの横軸は、時間を示す。図4のグラフの縦軸は、ウェハWのプラズマ処理における処理チャンバ11内(プラズマP内)のラジカル量、プロセスガス流量、処理チャンバ11内壁の堆積膜Dの膜厚、および、DC(Direct Current)制御の直流電圧を示す。処理チャンバ11内のラジカル量は、センサ16の検出結果を示す。ラジカルは、例えば、フルオロカーボン系またはカーボン系の活性種である。プロセスガス流量は、プロセスガス供給部15が供給するプロセスガスの流量を示す。処理チャンバ11内壁の堆積膜Dの膜厚は、堆積膜Dの膜厚の時間変化の一例を示す。DC制御の直流電圧は、直流電源17の印加電圧を示す。
【0036】
まず、ウェハWの中心部に関連する動作について説明する。
【0037】
まず、時刻t11において、制御部19は、プロセスガスの流量を流量F1にする。また、制御部19は、上部直流電源171Cの印加電圧(DC制御)を電圧V1にする。電圧V1は、例えば、0Vである。
【0038】
時刻t11から時刻t12までの期間において、プラズマ処理により発生する反応生成物が処理チャンバ11内に堆積するため、堆積膜Dの膜厚は増加し続ける。
【0039】
次に、時刻t12において、制御部19は、上部直流電源171Cの印加電圧を電圧V1から電圧V2にする。電圧V2は、電圧V1よりも高い電圧である。すなわち、制御部19は、上部直流電源171Cに電圧を印加させる。また、制御部19は、プロセスガスの流量を流量F1から流量F2にする。流量F2は、流量F1よりも低い流量である。すなわち、制御部19は、プロセスガスの流量を低下させる。
【0040】
時刻t12から時刻t13までの期間において、直流電圧の印加により堆積膜Dがエッチングされるため、堆積膜Dの膜厚は低下し続ける。直流電圧の印加によって、ラジカルが堆積膜Dからチャンバ内(プラズマP内)に供給される。
【0041】
また、時刻t11から時刻t12までの期間と、時刻t12から時刻t13までの期間と、の間で、処理チャンバ11内のラジカル量が略一定(所定値Ac)である。これは、直流電圧の印加によるラジカル量の増大を抑制するように、プロセスガスの流量の低下しているためである。すなわち、制御部19は、複数の直流電源17による直流電圧の印加中に、プロセスガスの供給量を減少させるように、プロセスガス供給部15を制御する。
【0042】
次に、時刻t13において、制御部19は、上部直流電源171Cの印加電圧を電圧V2から電圧V1に戻す。すなわち、制御部19は、上部直流電源171Cによる電圧の印加を停止させる。また、制御部19は、プロセスガスの流量を流量F2から流量F1に戻す。
【0043】
その後、時刻t11から時刻t13までの期間と同様の制御が繰り返し実行される。すなわち、制御部19は、所定周期で直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。
【0044】
次に、ウェハWの外周部に関連する動作について説明する。
【0045】
尚、図4に示す例では、動作の途中(時刻t21から時刻t27までの期間と、時刻t31から時刻t37までの期間と、の間)で、上部直流電源171Eが印加する電圧が変化している。
【0046】
図4に示す例では、時刻t21から時刻t27までの期間に示す、上部直流電源171Eに対するDC制御は、時刻t11から時刻t17までの期間に示す、上部直流電源171Cに対するDC制御と略同じである。しかし、ウェハWの外周部におけるラジカル量は、ウェハWの中心部における所定値Acよりも低い所定値A1に低下している場合がある。これは、ウェハWの中心部と外周部との間で、プラズマPが均一ではないなど、処理チャンバ11内の環境が必ずしも同じではないためである。ウェハWの中心部と外周部との間でラジカル量が異なっているため、エッチングが均一に行われず、ウェハWの面内均一性が低下してしまう可能性がある。
【0047】
そこで、制御部19は、上部直流電源171Eに印加させる直流電圧を電圧V2から電圧V3に大きくする。制御部19は、センサ16の検出結果が所定値A1以下である場合、印加する直流電圧を上げるように、対応する位置の直流電源17を制御する。一方、制御部19は、センサ16の検出結果が所定値A2以上である場合、印加する直流電圧を下げるように、対応する位置の直流電源17を制御する。所定値A2は、所定値A1よりも高い。
【0048】
時刻t31から時刻t37までの期間において、印加する直流電圧が上昇することにより、堆積膜Dの減少量が大きくなっている。直流電圧の印加によって堆積膜Dがエッチングされるため、印加する直流電圧が上昇することにより、堆積膜DからプラズマPに供給されるラジカル量が大きくなる。これにより、図4に示す例では、時刻t31から時刻t37までの期間におけるラジカル量は、所定値A1から所定値Acに上昇している。すなわち、ウェハWの中心部と外周部との間で、ラジカル量を略同じにすることができる。
【0049】
また、図4に示すように、時刻t21から時刻27までの期間と、時刻t31から時刻t37までの期間と、の間で、プロセスガスの流量は変化させていない。もし、ウェハWの外周部のラジカル量を高くするためにプロセスガスの流量を大きくすると、ウェハWの中心部も影響を受けて、ラジカル量が大きくなってしまう。これに対して、上部直流電源171Eに印加させる電圧を変更することにより、ウェハWの中心部に影響を与えることなく、ウェハWの外周部のラジカル量を局所的に大きくすることができる。すなわち、制御部19は、センサ16の検出結果に対してプロセスガスの供給量が略同じになるように、プロセスガス供給部15を制御する。
【0050】
尚、面内均一性に関して、例えば、外周部側のエッチングにより形成したホール形状に異常が発生した場合、外周部側の印加電圧を変更してもよい。これにより、面内均一性を向上させることができる。
【0051】
また、図4に示す例では、ウェハWの中心部と外周部との間でラジカル量が略同じになるように、直流電源17のDC制御が行われる。しかし、ラジカル量は、必ずしも同じになるように調整される必要はない。この場合、例えば、上部直流電源171Cと上部直流電源171Eとの間で、所定値A1および所定値A2の値が異なっていてもよい。
【0052】
また、堆積膜Dから供給されるラジカル量によって、エッチング選択比を変更することができる場合がある。選択比を調整することによっても、面内均一性を向上させることができる。
【0053】
以上のように、第1実施形態によれば、制御部19は、互いに独立に直流電圧を印加するように、複数の直流電源17を制御する。直流電圧の印加により、処理チャンバ11内の堆積膜Dを一部除去することができ、クリーニング時間を短縮することができる。また、複数の直流電源17を個別に制御可能であるため、ウェハWの面内均一性を向上させることができる。
【0054】
また、制御部19は、プラズマ処理中(ウェハWの被加工膜のエッチング中)に、複数の直流電源17に直流電圧を印加させることにより、処理チャンバ11内に堆積した堆積膜Dをエッチングして、プラズマ処理(ウェハWの被加工膜のエッチング)に利用可能なように、ラジカルを堆積膜Dから処理チャンバ11内に供給する。これにより、クリーニング時間を短縮しつつ、堆積膜Dのエッチングを、プラズマPへのラジカルの供給に利用することができる。尚、直流電圧の印加による堆積膜Dのエッチングは、例えば、スパッタであってもよい。
【0055】
また、図4に示すように、直流電圧の印加中にプロセスガスの流量を低くすることができる。これにより、プロセスガスの使用量を抑制することができる。
【0056】
尚、複数の直流電源17の数および配置は、図2および図3に示す例に限られない。
【0057】
また、図4に示す例では、上部直流電源171Cと上部直流電源171Eとの間で、電圧V1、V2を印加する時間は略同じであり、直流電圧の大きさが変更されている。しかし、これに限られず、例えば、直流電圧に代えて、電圧V1、V2を印加する時間が変更されてもよい。制御部19は、センサ16の検出結果が所定値A1以下である場合、電圧V1を印加する時間に対する電圧V2を印加する時間の比率を上げるように、対応する位置の直流電源17を制御する。一方、制御部19は、センサ16の検出結果が所定値A2以上である場合、電圧V1を印加する時間に対する電圧V2を印加する時間の比率を下げるように、対応する位置の直流電源17を制御する。
【0058】
(比較例)
比較例として、直流電源17が設けられない場合について説明する。
【0059】
比較例によるプラズマ処理装置は、図4における時刻t11から時刻t12までの期間と同様の動作を行う。すなわち、プラズマ処理が継続されるに従って、処理チャンバ11内に堆積膜Dが堆積し続ける。
【0060】
ここで、プロセスガスに用いられるガスの種類によっては、処理チャンバ11内の堆積膜Dの堆積しやすさ、および、堆積膜Dの膜質が異なる場合がある。例えば、低温エッチングは、例えば、0℃以下の低温で行われる。低温エッチングでは、例えば、0℃よりも高い常温で行われる常温エッチングと比較して、プロセスガスの種類が異なっている。低温エッチングに用いられるプロセスガスは、常温ガスの場合と比較して、例えば、酸素(O)の量が少なく、水素(H)を多く含む。プロセスガスにおけるガスの種類の違いによって、例えば、堆積膜Dの形成されやすくなり、また、堆積膜Dがクリーニングされづらい膜質になる。この結果、低温エッチングでは、常温エッチングよりも、クリーニング時間がさらに長くなってしまう可能性がある。また、処理チャンバ11内(プラズマP内)でラジカル量の空間分布の偏りを細かに抑制することは困難である。この場合、ウェハWの面内均一性が低下してしまう可能性がある。
【0061】
これに対して、第1実施形態では、制御部19は、互いに独立に直流電源を印加するように、複数の直流電源17を制御する。これにより、プラズマ処理中(ウェハWの被加工膜のエッチング中)に処理チャンバ11内の堆積膜Dが一部除去され、その後のクリーニング時間を短縮することができる。また、複数の上部直流電源171C、171M、171Eおよび複数の側壁直流電源172U、172Lは、個別に制御可能である。これにより、処理チャンバ11内(プラズマP内)のラジカル量の空間分布を調整して、ウェハWの面内均一性を向上させることができる。
【0062】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態による半導体装置の構造の一例を示す断面図である。図5の半導体装置は、3次元構造のフラッシュメモリを備えており、第1実施形態のウェハWから製造される。図5は、フラッシュメモリ内の2個のメモリ素子MEを示している。
【0063】
図5の半導体装置は、半導体基板31と、下層膜32とを備えている。下層膜32は、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁層中に導電層または半導体層を含み、それらが積層構造を有していてもよい。または、下層膜32は設けられなくてもよい。図5の半導体装置はさらに、第1のメモリ絶縁膜33と、半導体層34と、第2のメモリ絶縁膜35と、電荷蓄積層36と、第3のメモリ絶縁膜37と、複数の導電層38と、複数の絶縁膜39とを備えている。図5の半導体装置はさらに、絶縁膜40を備えている。
【0064】
半導体基板31の例は、シリコン基板である。下層膜32は、半導体基板31上に直接形成されていてもよいし、半導体基板31上に他の層を介して形成されていてもよい。
【0065】
第1のメモリ絶縁膜33は、Z方向に延びる円柱状の形状を有している。第1のメモリ絶縁膜33の例は、シリコン酸化膜である。
【0066】
半導体層34は、第1のメモリ絶縁膜33の側面に接している。半導体層34は、第1のメモリ絶縁膜33の下面付近の部分を除き、第1のメモリ絶縁膜33の周囲をZ方向に延びる管状の形状を有している。半導体層34の例は、ポリシリコン層である。
【0067】
第2のメモリ絶縁膜35は、半導体層34の側面に接している。第2のメモリ絶縁膜35は、半導体層34の周囲をZ方向に延びる管状の形状を有している。第2のメモリ絶縁膜35の例は、シリコン酸化膜である。
【0068】
電荷蓄積層36は、第2のメモリ絶縁膜35の側面に接している。電荷蓄積層36は、第2のメモリ絶縁膜35の周囲をZ方向に延びる管状の形状を有している。電荷蓄積層36の例は、シリコン窒化膜である。
【0069】
第3のメモリ絶縁膜37は、電荷蓄積層36の側面に接している。第3のメモリ絶縁膜37は、電荷蓄積層36の周囲をZ方向に延びる管状の形状を有している。第3のメモリ絶縁膜37の例は、シリコン酸窒化膜である。
【0070】
複数の導電層38および複数の絶縁膜39は、下層膜32上に交互に積層され、第3のメモリ絶縁膜37の側面に接している。これらの導電層38および絶縁膜39は、第3のメモリ絶縁膜37を包囲する。各導電層38は、バリアメタル層38aと、配線材層38bとを含んでいる。バリアメタル層38aの例は、TiN(窒化チタン)層、TaN(窒化タンタル)層、WN(窒化タングステン)層などである。配線材層38bの例は、Ni(ニッケル)層、Co(コバルト)層、W(タングステン)層などである。各絶縁膜39の例は、シリコン酸化膜である。
【0071】
絶縁膜40は、複数の導電層38をY方向に分断する。絶縁膜40の例は、シリコン酸化膜である。
【0072】
図6A図10Bは、第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0073】
まず、不図示の半導体基板31上に下層膜32を形成し、下層膜32上に複数の犠牲膜41と複数の絶縁膜39とを交互に形成する(図6A)。各犠牲膜41の例は、シリコン窒化膜である。各絶縁膜39の例は、シリコン酸化膜である。
【0074】
次に、リソグラフィおよびプラズマエッチングにより、犠牲膜41および絶縁膜39を貫通して下層膜32に到達するメモリホールMHを形成する(図6B)。符号Sは、メモリホールMHの底面を示す。このプラズマエッチングは、第1実施形態によるプラズマ処理装置100内で第1実施形態のプラズマ処理方法を用いて行われる。なお、本工程では複数のメモリホールMHが形成されるが、図6Bはそのうちの1つのメモリホールMHを示している。
【0075】
次に、半導体基板31の全面に、第3のメモリ絶縁膜37と、電荷蓄積層36と、第2のメモリ絶縁膜35と、半導体層34の第1層34aとを順に形成する(図7A)。その結果、メモリホールMHの側面および底面Sに、第3のメモリ絶縁膜37と、電荷蓄積層36と、第2のメモリ絶縁膜35と、第1層34aとが順に形成される。第1層34aの例は、アモルファスシリコン層である。
【0076】
次に、リソグラフィおよびエッチングにより、メモリホールMHの底面Sから、第3のメモリ絶縁膜37、電荷蓄積層36、第2のメモリ絶縁膜35、および第1層34aを除去する(図7B)。その結果、メモリホールMHの底面Sが再び露出する。さらには、下層膜32もエッチングされることで、メモリホールMHの底面Sが下層膜32の最上面よりも低くなる。このエッチングは、第1実施形態によるプラズマ処理装置100内で行ってもよい。
【0077】
次に、半導体基板31の全面に、半導体層34の第2層34bと、第1のメモリ絶縁膜33とを順に形成する(図8A)。その結果、メモリホールMHの底面Sに第2層34bが形成され、メモリホールMHの側面に第3のメモリ絶縁膜37、電荷蓄積層36、第2のメモリ絶縁膜35、および第1層34aを介して第2層34bが形成される。さらには、メモリホールMHが、第1のメモリ絶縁膜33により完全に埋め込まれる。第2層34bの例は、アモルファスシリコン層である。
【0078】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により、第1のメモリ絶縁膜33および半導体層34の表面を平坦化する(図8B)。その後、半導体基板31をアニールすることで、半導体層34が結晶化されて単結晶シリコン層に変化する。
【0079】
図6A図8Bは、1つのメモリ素子MEの断面を示しているのに対し、図9A図10Bは、2つのメモリ素子MEの断面を示している。
【0080】
次に、リソグラフィおよびプラズマエッチングにより、犠牲膜41および絶縁膜39を貫通して下層膜32に到達する開口部H1を形成する(図9A)。本工程では、下層膜32もエッチングされることで、開口部H2の底面が下層膜32の最上面よりも低くなる。このプラズマエッチングは、第1実施形態によるプラズマ処理装置100内で行われる。開口部H1は、図5の絶縁膜40の形成予定領域に形成される。
【0081】
次に、選択的エッチングにより、絶縁膜39を残存させつつ犠牲膜41を除去する(図9B)。その結果、絶縁膜39間に複数の凹部H2が形成される。凹部H2は、最下層の絶縁膜39と下層膜32との間にも形成される。このエッチングにより、これらの凹部H2内に第3のメモリ絶縁膜37の側面が露出する。
【0082】
次に、半導体基板31の全面に、バリアメタル層38aと、配線材層38bとを順に形成する(図10A)。その結果、各凹部H2の上面、下面、および側面にバリアメタル層38aが形成され、各凹部H2内にバリアメタル層38aを介して配線材層38bが形成される。本工程は、凹部H2がバリアメタル層38aおよび配線材層38bにより完全に埋め込まれるように行われる。
【0083】
次に、ウェットエッチングにより、バリアメタル層38aおよび配線材層38bをエッチングする(図10B)。その結果、各凹部H2外のバリアメタル層38aおよび配線材層38bが除去され、各凹部H2内にバリアメタル層38aと配線材層38bとを含む導電層38が形成される。
【0084】
その後、開口部H1内に絶縁膜40が形成される。さらには、半導体基板31上に種々の層間絶縁膜、配線層、プラグ層などが形成される。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0085】
以上のように、本実施形態では、ウェハWのプラズマ処理を第1実施形態によるプラズマ処理装置により実行することで、ウェハWから半導体装置を製造する。よって、本実施形態によれば、クリーニング時間を短縮することが可能となる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
100 プラズマ処理装置、11 処理チャンバ、111 天板、112 側壁、12 ステージ、13 上部電極、14 交流電源、15 プロセスガス供給部、16 センサ、17 直流電源、171 上部直流電源、171C 上部直流電源、171M 上部直流電源、171E 上部直流電源、172 側壁直流電源、172U 側壁直流電源、172L 側壁直流電源、19 制御部、A1 所定値、A2 所定値、D 堆積膜、F1 流量、F2 流量、P プラズマ、V1 電圧、V2 電圧、W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B