(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042807
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】レーザー加工装置、レーザー剥離方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240322BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240322BHJP
B23K 26/18 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/57
B23K26/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147672
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】林 秀和
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA43
4E168FD01
4E168JA12
4E168JA14
5F057AA12
5F057AA43
5F057BA19
5F057BB37
5F057CA02
5F057CA14
5F057DA22
(57)【要約】
【課題】半導体記憶装置の製造効率を向上し、且つ基板の再利用効率を向上する。
【解決手段】 一実施形態にかかるレーザー加工装置は、基板を保持し、回転するステージと、回転の半径方向に移動可能であり、ステージの回転方向に隣接するレーザースポットの間隔がL1、回転の半径方向に隣接するレーザースポットの間隔がL2であるとき、L1/L2が1.2以上10以下を満たすように赤外パルスレーザーの出力を制御する制御部を有するレーザー照射装置と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、回転するステージと、
前記回転の半径方向に移動可能であり、前記ステージの回転方向に隣接するレーザースポットの間隔がL1、前記回転の半径方向に隣接するレーザースポットの間隔がL2であるとき、L1/L2が1.2以上10以下を満たすように赤外パルスレーザーの出力を制御する制御部を有するレーザー照射装置と、
を有する、レーザー加工装置。
【請求項2】
前記L1/L2は、前記基板の中心部と、前記中心部の外側に位置する外周部とにおいて、それぞれ1.2<L1/L2<10を満たす、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記L1は、前記赤外パルスレーザーの線速度/振動数である、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レーザースポットの直径および振動数を制御する、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記赤外パルスレーザーは炭酸ガスレーザーを含む、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
第1の基板と第2の基板がレーザー吸収層を介して貼合された貼合基板をステージに配置し、
前記ステージを回転し、
前記ステージの回転方向に隣接するレーザースポットの間隔がL1、前記回転の半径方向に隣接するレーザースポットの間隔がL2であるとき、L1/L2が1.2以上10以下を満たすように出力を制御して赤外パルスレーザーを前記レーザー吸収層に照射するレーザー照射装置を前記回転の半径方向に移動させること、を含むレーザー剥離方法。
【請求項7】
前記レーザー照射装置は、前記L1/L2が、前記第2の基板の中心部と、前記中心部の外側に位置する外周部とにおいて、それぞれ1.2<L1/L2<10を満たすよう前記赤外パルスレーザーの出力を制御する、請求項6に記載のレーザー剥離方法。
【請求項8】
前記L1は、前記赤外パルスレーザーの線速度/振動数である、請求項6に記載のレーザー剥離方法。
【請求項9】
前記レーザー照射装置は、前記レーザースポットの直径および振動数を制御する、請求項6に記載のレーザー剥離方法。
【請求項10】
前記赤外パルスレーザーは炭酸ガスレーザーを含む、請求項6に記載のレーザー剥離方法。
【請求項11】
第1の基板と第2の基板がレーザー吸収層を介して貼合された貼合基板をステージに配置し、
前記ステージを回転し、
前記ステージの回転方向に隣接するレーザースポットの間隔がL1、前記回転の半径方向に隣接するレーザースポットの間隔がL2であるとき、L1/L2が1.2以上10以下を満たすように出力を制御して赤外パルスレーザーを前記レーザー吸収層に照射するレーザー照射装置を前記回転の半径方向に移動させ、
前記第2の基板を剥離する、ことを含む半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記レーザー吸収層はシリコン酸化膜を含む、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記貼合基板は、前記第1の基板と前記第2の基板の間にCMOS回路、メモリセルアレイ、前記レーザー吸収層を含み、前記第2の基板側から前記赤外パルスレーザーを照射する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態はレーザー加工装置、レーザー剥離方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置としてNAND型フラッシュメモリが知られている。このNAND型フラッシュメモリはメモリセルアレイとその制御回路を備えている。半導体記憶装置の製造方法として、メモリセルアレイチップと、制御回路チップとを、それぞれ別体の基板上に形成し、後から貼り合わせる方法が知られている。この場合、メモリセルアレイチップを形成した基板は、レーザー剥離をすることで再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-66938号公報
【特許文献2】特開2018-93021号
【特許文献3】国際公開第2011/068111号
【特許文献4】国際公開第2020/017599号
【特許文献5】国際公開第2019/239892号
【特許文献6】国際公開第2020/066492号
【特許文献7】国際公開第2020/054504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、半導体記憶装置の製造効率を向上し、且つ基板の再利用効率を向上したレーザー加工装置、レーザー剥離方法および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態にかかるレーザー加工装置は、基板を保持し、回転するステージと、回転の半径方向に移動可能であり、ステージの回転方向に隣接するレーザースポットの間隔がL1、回転の半径方向に隣接するレーザースポットの間隔がL2であるとき、L1/L2が1.2以上10以下を満たすように赤外パルスレーザーの出力を制御する制御部を有するレーザー照射装置と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る半導体記憶装置(貼合基板)の全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体記憶装置(貼合基板)の構成を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体記憶装置の全体構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るレーザー加工装置の基本的な構成を示す上面図である。
【
図5】本実施形態に係るレーザー加工装置の基本的な構成を示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザーの照射領域(レーザースポット)を示す上面図である。
【
図7】本実施形態に係る半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザーの照射領域(レーザースポット)を示す拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態に係るレーザー加工装置、レーザー剥離方法および半導体装置の製造方法について図面を参照して具体的に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する要素について、同一符号又は同一符号の後にアルファベットが追加された符号が付されており、必要な場合にのみ重複して説明する。以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示する。一実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。これら実施形態やその変形例は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0008】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0009】
各実施形態において、それぞれの基板からメモリセルまたは制御回路に向かう方向を上方という。逆に、メモリセルまたは制御回路からそれぞれの基板に向かう方向を下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板とメモリセルとの上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、以下の説明で、例えば基板上のメモリセルという表現は、上記のように基板とメモリセルとの上下関係を説明しているに過ぎず、基板とメモリセルとの間に他の部材が配置されていてもよい。
【0010】
本明細書において「αはA、B又はC」を含む、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0011】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0012】
<第1実施形態>
[半導体記憶装置(貼合基板)]
本実施形態にかかる半導体記憶装置(貼合基板)1の構成について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、半導体記憶装置(貼合基板)1の全体構成を示す図である。
図2は、半導体記憶装置(貼合基板)1の基本的な構成を示す断面図である。
図3は、半導体記憶装置2の全体構成を示す図である。
図1に示すように、半導体記憶装置(貼合基板)1は、第1の回路層としてのメモリセルアレイチップ100と、第2の回路層としての制御回路(CMOS回路)チップ200とを備える。メモリセルアレイチップ100と、制御回路チップ200とは、接続面C1にて接続される。なお、第1の回路層および第2の回路層は特に限定されない。故に、実施形態の半導体記憶装置を「半導体装置」と称することがある。
【0013】
[メモリセルアレイチップの構造]
図2に示すように、メモリセルアレイチップ100は、基板10と、レーザー吸収層14と、複数の電極層16と、複数の半導体ピラー15と、メモリ側配線層17と、を有する。複数の電極層16は、レーザー吸収層14を介して基板10上に、複数の絶縁層と交互に積層される。それぞれの半導体ピラー15は、基板10と垂直方向に、積層された複数の電極層16を貫通して配置される。それぞれの半導体ピラー15は、絶縁層を介して複数の電極層16と組み合わされることで、メモリセルを含む複数のトランジスタとして機能する。すなわち、メモリセルアレイ領域11(
図2の左上部分)においては、メモリセルを含む複数のトランジスタが3次元配置される。半導体ピラー15は、一方の端(基板10側)においてソース線に電気的に接続され、他方の端(基板10とは反対側)においてメモリ側配線層17に電気的に接続される。メモリ側配線層17の基板10とは反対側の接続面C1には、制御回路チップ200と接続するための接続端子が配置される。
【0014】
基板10上には、メモリセルアレイ領域11と並んで引出領域12(
図2の右上部分)が配置される。引出領域12において、複数の電極層16は、それぞれ階段状に端子部分が引き出されている。そして、それぞれの端子部分は絶縁膜に開口されたコンタクトホールを介して垂直方向に配置される配線と接続されている。これら垂直方向の配線はメモリ側配線層17と電気的に接続され、接続端子を介して制御回路チップ200と接続される。
【0015】
基板10は、シリコン基板などの半導体ウエハまたはガラス基板であってもよい。基板10と複数の電極層16との間には、レーザー吸収層14が配置される。
図3に示すように、本実施形態に係る半導体記憶装置(貼合基板)1の基板10とレーザー吸収層14とは、半導体記憶装置の製造工程で最終的に、レーザー吸収層14にレーザーを照射することにより、半導体記憶装置2から除去される。レーザー吸収層14は、例えば、シリコン酸化膜であることが好ましい。半導体記憶装置2は、基板10とレーザー吸収層14とを除去した後に個片化して半導体チップとしてもよい。レーザー処理により剥離した基板10は再利用してもよい。
【0016】
[制御回路チップの構造]
図2に示すように、制御回路チップ200は、基板20と、制御回路を構成する複数のトランジスタ26と、回路側配線層27と、を有する。複数のトランジスタ26は基板20に形成され、基板20とは反対側において回路側配線層27に電気的に接続される。回路側配線層27の基板20とは反対側の接続面C1にはメモリセルアレイチップ100と接続するための接続端子が配置される。基板20はシリコン基板などの半導体ウエハであってもよい。
【0017】
[レーザー加工装置]
本実施形態にかかるレーザー加工装置300について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0018】
図4は、レーザー加工装置の基本的な構成を示す上面図である。
図5は、レーザー加工装置の基本的な構成を示す側面図である。
図4および5に示すように、レーザー加工装置300は、ステージ32と、レーザー照射装置35と、を備える。
【0019】
ステージ32は円形であり、ウェハ状(円盤状)の半導体記憶装置(貼合基板)1を保持する。半導体記憶装置(貼合基板)1の中心は、ステージ32の中心Cに配置されることが好ましい。半導体記憶装置(貼合基板)1は、基板20を下側(ステージ32側)、基板10を上側(ステージ32とは反対側)の向きで配置される。
【0020】
ステージ32は、回転機構33と制御部39とを含む。ステージ32は、回転機構33によって中心Cを含む鉛直軸を中心に回転する。
図4において、ステージ32が時計回りに回転する方向(矢印)を示したが、反時計回りに回転してもよい。ステージ32が回転することで、ステージ32が保持する半導体記憶装置(貼合基板)1は中心Cを軸に回転する。回転機構33によって駆動されるステージ32の回転動作や回転速度は、制御部39によって制御される。
【0021】
ステージ32は、保持機構34を含んでもよい。保持機構34は、レーザー処理により半導体記憶装置(貼合基板)1から剥離した基板10をステージ32上に保持することができる。
図4において、保持機構34は半導体記憶装置(貼合基板)1の端部に2つ配置した。しかしながら、保持機構34の半導体記憶装置(貼合基板)1当たりの数および場所は特に限定しない。保持機構34は、レーザー処理の邪魔にならず、剥離された基板10を回収できればよい。保持機構34によって、損傷なく回収された基板10は再利用することができる。
【0022】
ステージ32の上方には、レーザー照射装置35が配置される。レーザー照射装置35は、半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザー吸収層14にレーザーを照射する。レーザー照射装置35は、レーザー発振器(図示せず)から発振された高周波のパルス状のレーザーを照射する。レーザーは基板10に対して透過性を有する。このため、半導体記憶装置(貼合基板)1の基板10側からレーザーを照射することで、基板10の下に位置するレーザー吸収層14に集光して照射することができる。レーザーは、例えば、赤外パルスレーザーであることが好ましく、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)であることが好ましい。レーザーの照射によってレーザー吸収層14はアブレーションを起こす。
【0023】
レーザー照射装置35は、移動機構36と制御部38とを含む。レーザー照射装置35は、移動機構36によってステージ32の上方を半径方向に移動する。
図4および
図5において、レーザー照射装置35は、ステージ32の端部から中心Cに向かって移動する方向(矢印)を示したが、ステージ32の中心Cから端部に向かって移動してもよい。レーザー照射装置35は、少なくとも半導体記憶装置(貼合基板)1の端から中心まで(半径の範囲)移動することができる。ステージ32が回転しながらレーザー照射装置35が移動することで、レーザー照射装置35はステージ32に対して渦巻き状の軌道に沿ってレーザーを照射する。すなわち、レーザー照射装置35は、ステージ32に配置される半導体記憶装置(貼合基板)1に対して渦巻き状の軌道に沿ってレーザーを照射する。移動機構36によって駆動されるレーザー照射装置35の移動動作や移動速度、およびレーザー照射装置35のレーザー出力は、制御部38によって制御される。
【0024】
[レーザー剥離方法]
本実施形態にかかるレーザー加工装置300を用いて、半導体記憶装置(貼合基板)1から基板10とレーザー吸収層14を除去するレーザー剥離方法について説明する。実施形態の半導体記憶装置(半導体装置)は以降に説明するレーザー剥離方法を用いて製造される。
【0025】
図4および
図5に示すように、半導体記憶装置(貼合基板)1を、基板20が下側(ステージ32側)、基板10が上側(ステージ32とは反対側)の向きでステージ32上に配置する。ステージ32を回転させながら、レーザー照射装置35を移動させることで、レーザー照射装置35はステージ32に対して渦巻き状の軌道に沿ってレーザーを照射する。レーザーは半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザー吸収層14に集光して照射する。レーザー照射装置35は、少なくとも、半導体記憶装置(貼合基板)1の端から中心まで(半径の範囲)移動させる。
【0026】
図6は、半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザーの照射領域を示す上面図である。
図7は、半導体記憶装置(貼合基板)1のレーザーの照射領域を示す拡大上面図である。
図7は、
図2のレーザー吸収層14上面(
図4の領域a)における拡大上面図である。ステージ32が回転することで、連続して照射されるレーザースポットSはステージ32の回転方向とは逆方向(矢印)に移動する。すなわち、連続して照射される2つのレーザースポットSはステージ32の回転方向に隣接する。連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1は、パルスレーザーの線速度/振動数である。ここで2つのレーザースポットSの間隔L1とは、2つのレーザースポットSの中心の間の距離を示す。パルスレーザーの線速度とは、レーザー照射装置35の位置におけるステージ32の移動速度(回転速度)であり、制御部39によって制御される。レーザー照射装置35の位置およびパルスレーザーの振動数は、制御部38によって制御される。
【0027】
本実施形態において、例えば、連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1は、レーザースポットSの直径xより大きくてもよい(L1>x)。すなわち、ステージ32の回転方向に隣接する2つのレーザースポットSは(L1-x)離間してもよい。ここでレーザースポットSの直径xとは、レーザー吸収層14上面におけるレーザースポットSの半値全幅を示す。例えば、レーザースポットSの直径xは、レーザー跡を確認することで定義してもよい。レーザースポットの直径xは、制御部38によって制御される。
【0028】
基板10の略全面においてレーザースポットSの間隔L1は、略同一であることが好ましい。すなわち、基板10の中心部と、中心部の外側に位置する外周部とにおいて、レーザースポットSの間隔L1は、略同一であることが好ましい。このため、レーザー照射装置35の位置が中心Cに近いほど、ステージ32の回転速度を大きくすることが好ましい。レーザー照射装置35の位置が中心Cに近いほど、パルスレーザーの振動数を小さくする(パルスの周期を大きくする)ことが好ましい。
【0029】
ステージ32が略1周回転する間に、レーザー照射装置35は中心Cに向けて移動する。すなわち、周回遅れのレーザースポットSは前の周のレーザースポットSとステージ32の半径方向に隣接する。レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2は、ステージ32が1周回転する間のレーザー照射装置35の移動距離である。ここで2つのレーザースポットSの間隔L2とは、2つのレーザースポットSの中心の間の距離を示す。ステージ32が1周回転する間のレーザー照射装置35の移動距離とは、レーザー照射装置35の移動速度により、制御部38によって制御される。
【0030】
本実施形態において、例えば、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2は、レーザースポットSの直径xより大きくてもよい(L2>x)。すなわち、ステージ32の半径方向に隣接する2つのレーザースポットSは(L2-x)離間してもよい。
【0031】
基板10の略全面においてレーザースポットSの間隔L2は、略同一であることが好ましい。すなわち、基板10の中心部と、中心部の外側に位置する外周部とにおいて、レーザースポットSの間隔L2は、略同一であることが好ましい。このため、レーザー照射装置35の移動速度は一定であることが好ましい。しかしながらこれに限定されず、レーザースポットSの間隔L1を一定にするためにステージ32の回転速度を大きくする場合、レーザー照射装置35の移動速度は大きくしてもよい。
【0032】
本実施形態において、連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1は、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2より大きい(L1>L2)。連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1は、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2より1.2倍以上10倍以下の範囲であることが好ましい(1.2<L1/L2<10)。連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1が、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2の1.2倍未満であると、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットS間のレーザー吸収層14の接合を十分に低下させることができず、半導体記憶装置(貼合基板)1から基板10を分離するときにレーザー吸収層14の剥離挙動が不均一になる。連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1が、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2の10倍より大きいと、半導体記憶装置2の製造効率が低下する。さらに、連続して照射される2つのレーザースポットSの間隔L1は、レーザー照射装置35の移動方向に隣接する2つのレーザースポットSの間隔L2より1.2倍以上2.3倍以下の範囲であることがより好ましい(1.2<L1/L2<2.3)。基板10の略全面において基板10の略全面においてレーザースポットSの間隔L2に対するレーザースポットSの間隔L1の比率(L1/L2)は一定であることが好ましい。すなわち、基板10の中心部と、中心部の外側に位置する外周部とにおいて、それぞれ1.2<L1/L2<10を満たし、より好ましくは1.2<L1/L2<2.3を満たす。
【0033】
本実施形態に係るレーザー剥離方法において、レーザー加工装置300のステージ32の回転速度、レーザー照射装置35の移動速度、およびレーザー照射装置35のレーザー出力(パルスレーザーの振動数、レーザースポットの直径)を制御部38、39によって制御することによって、レーザースポットSの間隔L1、L2およびレーザースポットの直径xは適宜調整することができる。レーザースポットSの間隔L1、L2およびレーザースポットの直径xを上述の範囲に制御することによって、連続して照射される2つのレーザースポットSの蓄熱の影響を抑制することができ、レーザー吸収層14の接合力を均一に低下させて半導体記憶装置(貼合基板)1から基板10を分離することができる。したがって、本実施形態に係るレーザー剥離方法は、半導体記憶装置2の製造効率を向上し、かつ基板10の再利用効率を向上することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、レーザー加工装置300のステージ32の回転速度、レーザー照射装置35の移動速度、およびレーザー照射装置35のレーザー出力(パルスレーザーの振動数、レーザースポットの直径)を2つの制御部38、39がそれぞれ制御する構成を示した。しかしながらこれに限定されず、レーザー加工装置300のステージ32の回転速度、レーザー照射装置35の移動速度、およびレーザー照射装置35のレーザー出力(パルスレーザーの振動数、レーザースポットの直径)は、1つの制御部によって統合して制御されてもよい。
【0035】
また、レーザー照射装置35は1つのレーザービームを発振する構成を示した。しかしながらこれに限定されず、レーザー照射装置35は複数のレーザービームを発振する構成であってもよい。この場合、複数のレーザービームはステージ32の半径方向にL2離間して配置されてもよく、複数のレーザービームはステージ32の半径方向に半導体記憶装置(貼合基板)1の半径分離間して配置されてもよい。レーザースポットSの間隔L1、L2を上述の範囲に制御することによって、より効率よくレーザーを照射することができる。
【0036】
1 半導体記憶装置(貼合基板)、2 半導体記憶装置、10 基板、11 メモリセルアレイ領域、12 引出領域、14 レーザー吸収層、15 半導体ピラー、16 電極層、17 メモリ側配線層、20 基板、26 トランジスタ、27 回路側配線層、32 ステージ、33 回転機構、34 保持機構、35 レーザー照射装置、36 移動機構、38 制御部、39 制御部、100 メモリセルアレイチップ、200 制御回路(CMOS回路)チップ、300 レーザー加工装置