(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042821
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】位置検出システムおよび受光端末
(51)【国際特許分類】
G01S 1/70 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01S1/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147693
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 匡
(57)【要約】
【課題】誤検出の発生を抑制しつつ、コストの増大を抑制可能な位置検出システムを提供することを目的とする。
【解決手段】位置検出システム(1)は、1または2つ以上の光源(2)と、受光端末(3)と、を備える。光源(2)は、自他識別用の特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成されている。受光端末(3)は、入射光を検出するように構成された受光部(8)、および前記受光部(8)の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記光源(2)を識別するように構成された光源識別部(9)、を有するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自他識別用の特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成された、1または2つ以上の光源と、
入射光を検出するように構成された受光部、および前記受光部の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記光源を識別するように構成された光源識別部、を有するように構成された受光端末と、
を備える位置検出システム。
【請求項2】
前記特定発光周波数を個別に設定された前記光源を2つ以上備える請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
最も近接する前記光源同士の前記特定発光周波数の差分値が、10Hz以上である請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記特定発光周波数は、100Hz以上、かつ1kHz以下である請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記光源識別部は、前記受光部の受光結果を周波数解析することで前記入射光の周波数スペクトルを検出可能であり、前記周波数スペクトルから前記光源を識別する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記光源識別部は、前記周波数解析を実行するために取得される前記周波数スペクトルのデータサンプル数を任意に設定可能である、請求項5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
前記光源は、
前記特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成された発光素子と、
前記発光素子をPWM調光可能なように構成されたPWM調光制御部と、
を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記受光端末は、前記光源識別部以外の屋内測位部をさらに備え、
前記光源識別部の識別結果及び前記屋内測位部の測位結果の少なくとも一方に基づいて前記受光端末の位置を検出する、請求項1から6のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項9】
入射光を検出するように構成された受光部と、
前記受光部の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記入射光を発した光源を識別するように構成された光源識別部と、
を備える受光端末。
【請求項10】
前記光源識別部は、前記受光部の受光結果を周波数解析することで前記入射光の周波数スペクトルを検出可能であり、前記周波数スペクトルから前記光源を識別する請求項9に記載の受光端末。
【請求項11】
前記光源識別部は、前記周波数解析を実行するために取得される前記周波数スペクトルのデータサンプル数を任意に設定可能である、請求項10に記載の受光端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システムおよび受光端末に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内で位置情報を取得する屋内測位技術として、ビーコン、RFID[Radio Frequency Identification]、超音波、地磁気、UWB[ultra wide Band](超広帯域無線通信)を用いたものがある。これらの技術はそれぞれ以下で指摘するような一長一短な面があり、屋内測位技術としてのデファクトスタンダードが形成されていないのが実情である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビーコン発信機から発信されるBluetooth(登録商標)信号をビーコン受信機で読み取ることで、位置情報を検出するビーコン方式の測位技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなビーコン方式の測位技術では、信号電波の反射、干渉等の影響で測位精度が低下してしまう問題がある。具体的には、所定のフロアにビーコン受信機が所在するにも関わらず、電波の反射、干渉等の影響により、このフロアに隣接するフロアにビーコン受信機が所在すると誤検出してしまうことがある。
【0006】
このような問題に対しては、アクセスポイント(ビーコン発信機の設置箇所)を適切な場所に増設することで問題を回避できるが、導入コストがかかってしまう。また、ビーコン方式の測位技術では、Bluetooth信号を発信する必要があるため、ビーコン発信機側の消費電力が比較的大きくなる欠点もある。
【0007】
また、RFID方式の測位技術は、入出場管理又は在庫管理等に活用されるのが一般的である。しかし、上述したビーコン方式の測位技術と同様に、専用の読み取り機器が必要となる。このため、導入コストが増大してしまう。また、ビーコン方式と同様に電波を用いるため、電波発信側の端末の消費電力が比較的大きくなる。
【0008】
一方、超音波方式、地磁気方式を採用する測位技術では電波を必要としない。また、超音波方式では、超音波を電波の代替として使用するため超音波受信専用の受信機が必要となるが、地磁気方式ではあらかじめフロアで地磁気を測定して生成した磁気MAPを用いて屋内測位するため、ビーコン、RFID、および超音波方式の測位技術のようなアクセスポイントが不要となる。このため、超音波方式および地磁気方式の測位技術は、コストを低減させることができる。
【0009】
しかしながら、超音波方式および地磁気方式の測位技術は、いわゆる外乱等の設置環境の変動に弱いという欠点がある。UWBは測位精度が高く有力なシステムであるが、使用方式により端末の消費電力が高くなり、導入コストが高いことが欠点としてあげられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中に開示されている位置検出システムは、自他識別用の特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成された、1または2つ以上の光源と、入射光を検出するように構成された受光部、および前記受光部の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記光源を識別するように構成された光源識別部、を有するように構成された受光端末と、を備える。
【0011】
また、本明細書中に開示されている受光端末は、入射光を検出するように構成された受光部と、前記受光部の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記入射光を発した光源を識別するように構成された光源識別部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本明細書中に開示されている位置検出システムによれば、誤検出の発生を抑制しつつ、コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、位置検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る位置検出システムが設けられたフロアを示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の状態での受光部が受光した入射光の発光周波数を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の状態での受光部が受光した入射光の発光周波数を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示す図である。
【
図11】
図11は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
【
図12】
図12は、
図11に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【
図13】
図13は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
【
図14】
図14は、
図13に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【
図15】
図15は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
【
図16】
図16は、
図15に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
図2は、位置検出システム1の構成を示すブロック図である。位置検出システム1は、屋内測位システムとして採用することができる。屋内測位システムとは、屋内(オフィス内、工場内、若しくは、店舗内など)を移動する人又は物の位置を特定するために用いられるシステムである。
【0016】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、光源2と、受光端末3と、を含んで構成されている。光源2は、発光素子であるLED[Light Emitting Diode]4と、発光制御部5と、を含んで構成されている。LED4は、所定の発光周波数で点灯と消灯とを交互に繰り返すように駆動可能に構成されている。
【0017】
発光制御部5は、周波数制御部6と、PWM[Pulse Width Modulation]調光制御部7とを含んで構成されている。周波数制御部6は、LED4の発光周波数を制御する。発光周波数は任意に設定可能であり、自他識別用に特定の発光周波数(以下、特定発光周波数と称する)に設定可能に構成されている。例えば、特定発光周波数は、100Hz以上、かつ1kHz以下であるのが好ましい。
【0018】
PWM調光制御部7は、LED4の発光周波数の制御とは別に、LED4をPWM調光可能なように構成されている。具体的には、PWM調光制御部7は、特定発光周波数を変更することなく、LED4のデューティ比を変更して、LED4の調光が可能である。
【0019】
受光端末3は、受光部8と、光源識別部9と、を含んで構成されている。受光部8は、後述の受光素子18に入射する入射光(入力光)の照度を検出可能な光センサIC[Integrated Circuit]の一種(照度センサ等)である。受光部8は、上記入射光の照度を一定期間検出し、その期間中の経時的な照度の変化を検出結果として光源識別部9に出力する。受光部8のサンプリング周波数は、少なくとも特定発光周波数の2倍以上である。受光部8の検出するデータサンプル数は、任意に設定可能である。受光部8の詳細な構成については、後述する。
【0020】
光源識別部9は、受光部8の出力結果に基づいて光源2を識別するように構成されている。光源識別部9は、解析部10と、判定部11とを含んで構成されている。解析部10は、受光部8から出力された上記検出結果を周波数解析することで、入射光の周波数スペクトルを検出する。ここでは、周波数解析の手法として高速フーリエ変換を用いる。
【0021】
判定部11は、解析部10が検出した周波数スペクトルのピーク値となる発光周波数を検出し、入射光の大部分が光源2の光であるか否か判定する。受光端末3に設けられたメモリ30(
図3参照)には、所定の特定発光周波数が予め記憶されている。判定部11は、この予め記憶された特定発光周波数と上記ピーク値とを対比して、上記判定を行う。
【0022】
受光端末3には、判定部11の判定結果を、ユーザUが認識可能な態様で通知可能な通知部(液晶モニタ、スピーカー等)を備える構成を採用できる(図示省略)。通知部を備える構成を採用する場合、判定部11は、上記通知部に判定結果を出力する(図示省略)。
【0023】
次に、受光部8について詳細に説明する。
図3は、受光部8の一構成例を示す図である。
図3に示すように、受光部8は、光検出回路13と、赤外線遮断フィルタ14と、ロジック回路15と、パワーオンリセット回路16と、発振回路17と、を有する。
【0024】
光検出回路13は、入力光の光量に応じた光検出信号S10を出力する。光検出回路13は、受光素子18と、AD[analog-to-digital]変換器19と、を含んで構成されている。
【0025】
受光素子18は、赤外線遮断フィルタ14を介して入射する入力光の光量に応じたアナログ電流信号を生成する。受光素子18は、入力光の可視光成分(およそ波長400~700nm)を検出する。受光素子18としては、フォトダイオード又はフォトトランジスタ等を好適に用いることができる。
【0026】
AD変換器19は、受光素子18からのアナログ電流信号をデジタル(例えば13ビット)の光検出信号S10に変換する。赤外線遮断フィルタ14は、入力光の進行方向に対して受光素子18の上流側で、入力光に含まれる赤外線成分を遮断する。
【0027】
ロジック回路15は、ADCロジック機能(=AD変換器の時分割制御機能)、I2C[Inter-Integrated Circuit]インターフェイス機能(=データ信号SDAとクロック信号SCLの通信機能)、INTインターフェイス機能(=割込信号INTの通信機能)、並びに、FIFO[firstin,firstout]機能(受光素子18の検出データのバッファ機能)を備えている。
【0028】
ロジック回路15は、マイコン[Microcontroller Unit]24に接続されている。光検出回路13から出力された光検出信号S10は、ロジック回路15を介してマイコン24へと伝達される。
【0029】
マイコン24は、受光端末3の動作を統括的に制御する主体である。メモリ30には、光学識別プログラムPRGが格納されている。光学識別プログラムPRGは、マイコン24で実行されるソフトウェア(ファームウェア)である。マイコン24がこの光学識別プログラムPRGを実行することで、上述した光源2の識別(受光素子18による入力光の取得、光検出信号S10の出力、高速フーリエ変換の実行、および判定部11による光源2に対する判定)を行う。
【0030】
メモリ30は、データを不揮発的に記憶可能な半導体記憶装置(ROM[read only memory]、フラッシュメモリ等)である。
【0031】
パワーオンリセット回路16は、受光部8に供給される電源電圧VCCを監視してパワーオンリセット信号を生成する。例えば、受光部8に内蔵されている全てのレジスタ(不図示)は、パワーオンリセット信号により、電源電圧VCCの投入後にリセットされる。発振回路17は、ロジック回路15を駆動するための内部クロック信号を生成する。
【0032】
ここで、壁又はパーティション等によって区切られた複数のフロアが隣接する屋内空間では、自身の所在するフロアの隣のフロアから直射光又は反射光が差し込むことがある。具体的には、
図4に示すように、特定発光周波数(例えば250Hz)で点灯駆動する光源2が設けられたフロアAに受光端末3が所在する場合、フロアAに隣接するフロアBからフロアAに向けて、フロアBに設けられた光源50(市販されている一般的なLED照明装置等、例えば120Hz)の光が差し込む場合がある。このような場合、受光端末3の受光部8は、光源2だけでなく光源50の光も受光する。
【0033】
かかる場合に、解析部10が受光部8の出力した光検出信号S10を高速フーリエ変換すると、
図5に示すような周波数スペクトルが得られる。ここでの解析部10の解析結果からは、120Hzと250Hzにおける光検出信号S10の信号レベルが突出していることが確認できる。判定部11は、この周波数スペクトルから発光周波数のピーク値(ここでは250Hz)を検出し、メモリ30に予め記憶された所定の特定周波数と比較することで、ピーク値の発光周波数で点灯駆動する発光元が、光源2であるかその他の光源であるかを識別する。このように複数の光源(ここでは光源2と、光源50)からの光を受光した場合であっても、光源2を識別することができ、延いては、ユーザUが光源2の設けられたフロアAに存在することを識別することができる。
【0034】
次に、第2実施形態~第4実施形態に係る位置検出システム1について説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を述べ、第1実施形態と同様の構成は同じ符号を付して説明を省略している。
【0035】
先ず、第2実施形態に係る位置検出システム1について説明する。
図6は、第2実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、複数の光源(ここでは、光源2aと、光源2bと、光源2cの3つの光源)と、受光端末3と、を含んで構成されている。光源2a、光源2b、および光源2cは、互いに異なる特定発光周波数で点灯駆動するように構成されている。
【0036】
メモリ30には、光源2a~2cの各特定発光周波数が記憶されている。メモリ30に記憶された各特定発光周波数は、光源2a~2cが設けられたフロアA~Cに紐づけられて記憶されている。光源2a~2cの特定発光周波数を変更した場合には、メモリ30に記憶された各特定発光周波数が、変更後の設定値に適宜整合されるよう上書きして記憶される。
【0037】
ここで、
図6に示すように、壁又はパーティション等によって区切られたフロアA、フロアB、フロアCに光源2a~2cが一つずつ設けられ、フロアAに設けられた光源2aの特定発光周波数を200Hz、フロアBに設けられた光源2bを特定発光周波数は250Hz、フロアCに設けられた光源2cの特定発光周波数を300Hzとなるよう構成したとする。この場合に、フロアBに受光端末3を持ったユーザUが所在しているとすると、解析部10が受光部8の出力した光検出信号S10を高速フーリエ変換することで、
図7に示すような周波数スペクトルが得られる。
【0038】
図7の周波数スペクトルで示すように、フロアBに所在する受光端末3の受光部8は、光源2a~2cの光を受光している。判定部11は、
図7に示す周波数スペクトルからピーク値(ここでは250Hz)を検出し、メモリ30に予め記憶された複数の特定発光周波数と比較して、光源2bを識別する。これにより、受光端末3がフロアBに位置していることが検出され、ユーザUの位置を検出できる。
【0039】
本実施形態の位置検出システム1では、隣り合うフロアに設けられる光源同士(ここでは光源2aと光源2b、および光源2bと光源2c)の互いの発光周波数は、10Hz以上(より好ましくは、50Hz以上)差があることが好ましい。
【0040】
次に、第3実施形態に係る位置検出システム1について説明する。
図8は、第3実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、システムコントロール部26をさらに含んで構成されている。また、本実施形態の位置検出システム1に係る受光端末3は、データ送信部25を備えている。判定部11は、光源2aの識別結果をデータ送信部25に出力する。データ送信部25は、判定部11の識別結果を所定の電波信号としてシステムコントロール部26に送信する。
【0041】
システムコントロール部26は、データ受信部27と、フロア推定部28と、通知部29と、を含んで構成されている。データ受信部27は、データ送信部25から送信された判定部11の識別結果を受信し、フロア推定部28へ出力する。
【0042】
フロア推定部28には、複数の光源2の特定発光周波数と、これら光源2の設けられたフロアとが紐づけられた状態のフロア情報が、予め記憶されている。フロア推定部28は、判定部11の識別結果と上記フロア情報とを比較し、受光端末3の所在するフロアを検出する。フロア推定部28は、検出したフロア情報を、通知部29に出力する。
【0043】
通知部29は、上記フロア情報をユーザUが認識可能な態様で表示する液晶モニタ等のデバイスである。
【0044】
次に、第4実施形態に係る位置検出システム1について説明する。
図9は、第4実施形態に係る位置検出システム1の全体構成を示す図である。
図9に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1の受光端末3は、屋内測位部20を備えている。本実施形態の位置検出システム1は、光源識別部9の識別結果、および屋内測位部20の屋内測位の結果の少なくとも一方によって、受光端末3の位置を検出可能に構成されている。具体的には、以下の通りである。
【0045】
屋内測位部20は、ビーコン、超音波、地磁気、又は、超高帯域無線通信を用いて屋内測位を行うように構成されている。ここでは、屋内測位部20がビーコン21を用いて屋内測位を行うよう構成された位置検出システム1を例に説明する。ビーコン21は、自他識別用の特定周波数の電波を発信する。
【0046】
屋内測位部20は、受信部22と、電波識別部23と、を備えている。受信部22は、ビーコン21の電波を受信し、電波識別部23に出力する。電波識別部23は、受信した電波の周波数から、受信した電波の発信源がビーコン21であるか否かを識別可能である。
【0047】
判定部11は、光源識別部9が光源2を識別できないとき(受光部8の入力光が微弱である場合、又は高い光量の光が複数差し込んで解析部10が生成した周波数スペクトルからピーク値を検出できない場合等のとき)に、屋内測位部20の測位結果に基づいて受光端末3の位置検出を行う。
【0048】
なお、ビーコンに代えて超高帯域無線通信を用いる場合も同様に、受信部22は、特定周波数の電波を発信する発信機(図示省略)を識別可能に構成されている。また、超音波を用いる屋内測位部20は、受信部22に代えて、特定周波数の音波を発する発信機を識別可能な受振部を備える構成となっている(図示省略)。かかる屋内測位部20は、受振部の受振結果に基づいて、受光端末3の位置を検出可能である。
【0049】
地磁気を用いる屋内測位部20は、受信部22に代えて、地磁気を検知可能な磁気検知部(図示省略)を備えている。かかる屋内測位部20は、地磁気の検知結果に基づいて受光端末3の位置を検出可能である。
【0050】
上記各実施形態に係る位置検出システム1によれば、受光部8に入射する入射光の発光元となる光源2を識別可能になる。これにより、受光端末3と光源2との位置関係を検出できるため、受光端末3の位置を検出することができる。また、上述した通り、複数の光源からの光を受光した場合であっても、光源2を識別することができる。これにより、ユーザUが受光端末3を所持して各フロアを移動することで、受光端末3の所在、すなわちユーザUの所在地を検出することができる。
【0051】
また、受光端末3として、受光素子18を搭載した既存のIoT[Internet of Things]機器(スマートフォン、市販のタブレット端末等)を用いることが可能である。この場合、専用の受光端末3を用意する必要がないため、導入コストの増加を抑制しつつ、位置検出システム1の実現が可能である。また、各実施形態に係る位置検出システム1は、比較的低い消費電力である受光素子18を用いた手法である。このため、電波の受信に比較的高い消費電力を要する電波方式の位置検出システムに比べて、受光端末3の消費電力を低減することができる。
【0052】
また、工場等の立入り禁止区域に所定の特定発光周波数で点灯駆動する光源2を取り付けておくことで、誤って侵入した人を即時検知するなど、作業者の動線管理にも役立つ。
【0053】
また、上述した通り、受光部8のデータサンプル数は任意に設定可能である。このため、光源2の設置環境に応じて、適切なデータサンプル数を設定可能になる。具体的には、受光部8のデータサンプル数を比較的多く設定することで、光源2の識別精度を向上させることができる。また、受光部8のデータサンプル数を比較的少なく設定することで、光源2の識別速度を向上させることができる。仮に、外光又は隣接フロアから差し込む光源50の光量が比較的高い環境に光源2が設置されていたとしても、データサンプル数を比較的多く設定することで、光源2の誤検出を抑制することができる。また、仮に、外光又は隣接フロアの光源50の光量が比較的低い環境に光源2が設置されていれば、データサンプル数を比較的少なく設定することで、誤検出を抑制しつつ、受光端末3の位置検出に遅延が生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、上述したように赤外線遮断フィルタ14を設けることにより、受光素子18が、入力光の光量を精度良く検出することができる。
【0055】
また、第2実施形態(
図6)の位置検出システム1は、受光端末3の位置を検出したい各フロアに異なる特定発光周波数の光源2を配置することで、電波方式を用いた際に問題となるフロア誤検出(別フロアから発信された電波を取得することによるフロアの誤検出)が生じるのを抑制することができる。
【0056】
また、第3実施形態(
図8)の位置検出システム1は、システムコントロール部26によって受光端末3の位置を把握、管理可能となる。このため、複数の受光端末3が各フロアに所在している場合に、各受光端末3の位置を把握して管理できるようになる。
【0057】
また、第4実施形態(
図9)の位置検出システム1は、光源識別部9の識別結果から光源2を識別できないような場合に、電波識別部23の識別結果から受光端末3の位置を検出可能となる。
【0058】
例えば、
図10に示すように、ユーザUの鞄又は衣服のポケット等に収容した状態の受光端末3が、光源2とビーコン21が設置されたフロアに所在していたとする。この場合、光源2から出射された光は受光端末3の受光部8にほとんど到達しない。このため、解析部10の出力した周波数スペクトルにも突出した周波数値が存在しないことになり、判定部11が光源2を識別できなかったり、誤検出したりする。
【0059】
一方で、ビーコン21の発信する電波は、鞄等を透過して受光端末3の受光部8に到達する。このため、上記のような場合でも、電波識別部23はビーコン21を識別することが可能となっている。判定部11は、光源2を識別できない場合に、電波識別部23の識別結果から当該フロアに受光端末3が所在していることを検出できる。従って、より多様な環境においても受光端末3の位置検出が可能となっている。
【0060】
以下、実施例により本開示の効果について更に詳細に説明する。
【実施例0061】
図1に示すような位置検出システム1を用いて、異なる特定周波数に設定された試験用光源2d~2f(上記各実施形態の光源2に含まれる光源)について、それらの周波数スペクトルを検出した。
【0062】
まず、特定発光周波数を120Hzに設定した試験用光源2dについて、受光端末3を用いて試験用光源2dの周波数スペクトルを検出した。
図11は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
図12は、
図11に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【0063】
図11に示すように、光検出信号S10の信号レベルは、上昇と下降を交互に繰り返して周期的に変化している。また、
図12に示すように、光検出信号S10の信号レベルを解析部10が高速フーリエ変換すると、120Hzがピーク値となる周波数スペクトル(及びそのn次高調波スペクトル)が得られる。
【0064】
特定発光周波数を300Hzに設定した試験用光源2eについても、同様に周波数スペクトルを検出した。
図13は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
図14は、
図13に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【0065】
図13に示すように、光検出信号S10の信号レベルは、上昇と下降を交互に繰り返して周期的に変化している。また、
図14に示すように、光検出信号S10の信号レベルを解析部10が高速フーリエ変換すると、300Hzがピーク値となる周波数スペクトル(及びそのn次高調波スペクトル)が得られる。
【0066】
特定発光周波数を500Hzに設定した試験用光源2fについても、同様に周波数スペクトルを検出した。
図15は、受光部8が光源識別部9に出力した光検出信号S10の信号強度の推移を示すグラフである。
図16は、
図15に示す光検出信号S10を高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルを示すグラフである。
【0067】
図15に示すように、光検出信号S10の信号レベルは、上昇と下降を交互に繰り返して周期的に変化している。また、
図16に示すように、光検出信号S10の信号レベルを解析部10が高速フーリエ変換すると、500Hzがピーク値となる周波数スペクトル(及びそのn次高調波スペクトル)が得られる。
【0068】
以上より、解析部10が受光部8の受光結果を高速フーリエ変換することで、光源2の発光周波数と略等しい発光周波数をピーク値として検出可能であることが確認できた。よって、判定部11がこのピーク値とメモリ30に記憶された特定発光周波数とを対比することで、光源2の識別が可能であることが確認された。
【0069】
なお、本開示の構成は、上記各実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記各実施形態の位置検出システム1は、屋内に限らず、屋外における測位システム、又は屋内と屋外との境界(店舗の軒下等)での測位が可能な測位システム等として採用することもできる。
【0070】
また、解析部10は、高速フーリエ変換と異なる解析手法(フーリエ変換、離散フーリエ変換(DFT[discrete Fourier transform]解析)、等)により光源2の発光周波数を検出するよう構成することもできる。この場合、判定部11は、解析部10の検出した発光周波数をメモリ30に予め記憶された特定発光周波数と対比し、光源2の識別を行う。
【0071】
また、第3実施形態に係る判定部11は、受光端末3ではなく、コントロール部26に設けられている構成、またはフロア推定部28に置換えた構成を採用することができる。
【0072】
この場合、受光端末3は受光部8から出力された検出結果を解析部10で周波数解析をし、検出された周波数スペクトルをシステムコントロール部26に送信する。コントロール部26は、データ受信部27でこの周波数スペクトルを受信し、フロア推定部28に出力する。フロア推定部28は、この周波数スペクトルのピーク値となる発光周波数を検出し、入射光の大部分が光源2の光であるか否か判定する。
【0073】
この場合、メモリ30(
図3参照)には、所定の特定発光周波数が予め記憶する必要はない。このように構成することで、コントロール部26に判定処理等を実行させることが可能となる。また、フロアの配置や光源2a~2cの配置に変更があった場合にも、受光端末3の設定やメモリ30に記憶された内容を修正することなく、フロア推定部28の更新により対策を行うことが可能となる。
【0074】
またこの場合、受光部8から出力された検出結果をシステムコントロール部26に送信し、システムコントロール部26内の解析部10で周波数解析をする構成を採用することもできる。
【0075】
明細書中に開示されている位置検出システム(1)は、自他識別用の特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成された、1または2つ以上の光源(2)と、入射光を検出するように構成された受光部(8)、および前記受光部(8)の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記光源(2)を識別するように構成された光源識別部(9)、を有するように構成された受光端末(3)と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0076】
なお、第1の構成からなる位置検出システム(1)において、前記特定発光周波数を個別に設定された前記光源(2)を2つ以上備える構成(第2の構成)にするとよい。
【0077】
また、第2の構成からなる位置検出システム(1)において、最も近接する前記光源(2)同士の前記特定発光周波数の差分値が、10Hz以上である構成(第3の構成)にするとよい。
【0078】
また、第1の構成からなる位置検出システム(1)において、前記特定発光周波数は、100Hz以上、かつ1kHz以下である構成(第4の構成)にするとよい。
【0079】
また、第1の構成からなる位置検出システム(1)において、前記光源識別部(9)は、前記受光部(8)の受光結果を周波数解析することで前記入射光の周波数スペクトルを検出可能であり、前記周波数スペクトルから前記光源(2)を識別する構成(第5の構成)にするとよい。
【0080】
また、第5の構成からなる位置検出システム(1)において、前記光源識別部(9)は、前記周波数解析を実行するために取得される前記周波数スペクトルのデータサンプル数を任意に設定可能である構成(第6の構成)にするとよい。
【0081】
また、第1から第6のいずれかの構成からなる位置検出システム(1)において、前記光源(2)は、前記特定発光周波数で点灯駆動されるよう構成された発光素子(18)と、前記発光素子(18)をPWM調光可能なように構成されたPWM調光制御部(7)と、を有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0082】
また、第1から第6のいずれかの構成からなる位置検出システム(1)において、前記受光端末(3)は、前記光源識別部(9)以外の屋内測位部(20)をさらに備え、前記光源識別部(9)の識別結果及び前記屋内測位部(20)の測位結果の少なくとも一方に基づいて前記受光端末(3)の位置を検出する構成(第8の構成)にするとよい。
【0083】
また、明細書中に開示されている受光端末(3)は、入射光を検出するように構成された受光部(8)と、前記受光部(8)の検出した前記入射光の発光周波数に基づいて前記入射光を発した光源(2)を識別するように構成された光源識別部(9)と、を備える構成(第9の構成)とされている。
【0084】
また、第9の構成からなる受光端末(3)において、前記光源識別部(9)は、前記受光部(8)の受光結果を周波数解析することで前記入射光の周波数スペクトルを検出可能であり、前記周波数スペクトルから前記光源(2)を識別する構成(第10の構成)にするとよい。
【0085】
また、第10の構成からなる受光端末(3)において、前記光源識別部(9)は、前記周波数解析を実行するために取得される前記周波数スペクトルのデータサンプル数を任意に設定可能である構成(第11の構成)にするとよい。
【0086】
第1の構成からなる位置検出システム(1)によれば、受光部(8)に入射する入射光の発光元となる光源(2)を識別可能になる。これにより、受光端末(3)と光源(2)との位置関係を検出できるため、受光端末(3)の位置を検出することができる。また、受光端末(3)の位置を検出したい各フロアに異なる特定発光周波数の光源(2)を配置することで、電波方式を用いた際に問題となるフロア誤検出(別フロアから発信された電波を取得することによるフロアの誤検出)が生じるのを抑制することができる。
【0087】
また、受光端末(3)として、照度センサを搭載した既存のIoT機器(スマホなど)を用いることが可能である。この場合、専用の受光端末を用意する必要がないため、導入コストの増加を抑制しつつ、位置検出システムの実現が可能である。また、工場等の立入り禁止区域に所定の特定発光周波数で点灯駆動する光源(2)を取り付けておくことで、誤って侵入した人を即時検知するなど、作業者の動線管理にも役立つ。
【0088】
また、第2の構成からなる位置検出システム(1)によれば、複数のフロアからなる屋内施設において、各フロアに光源(2)を設置することで、受光端末(3)の所在地をより正確に検出することが可能となる。
【0089】
また、第3の構成からなる位置検出システム(1)によれば、受光部(8)に複数の光源(2)から光が入射したとしても、各光源(2)からの入射光の発光周波数に比較的大きな差が生じる。このため、光源識別部(9)が各光源(2)を識別しやすくなり、誤検出の発生を抑制することができる。
【0090】
また、第4の構成からなる位置検出システム(1)によれば、特定発光周波数を比較的高周波数帯域に設定することが可能になる。このため、特定発光周波数を、測位に用いない既設の一般的なLEDの発光周波数と大きく異なる値に設定することが可能となる。これにより、光源識別部(9)が、測位に用いない既設のLEDと本構成の位置検出システム(1)の光源(2)とを混同して誤検出してしまうのを抑制することができる。
【0091】
また、第5の構成からなる位置検出システム(1)によれば、光源識別部(9)がより好適に光源(2)を識別できるようになる。
【0092】
また、第6の構成からなる位置検出システム(1)によれば、光源(2)の設置環境に応じてデータサンプル数の設定値を増減させることで、光源(2)の識別精度を向上させたり、識別精度を維持しつつユーザの要望に応じて測位時間を検出したりすることができる。
【0093】
また、第7の構成からなる位置検出システム(1)によれば、光源識別部(9)が各光源(2)を識別可能なまま、光源(2)ごとに明るさを変更可能になる。
【0094】
また、第8の構成からなる位置検出システム(1)によれば、仮に、受光部(8)が光源(2)を受光できず、光源識別部(9)が光源(2)を識別できないような場合であっても、屋内測位部(20)の測位結果により、受光端末(3)の位置を検出することができる。このため、受光端末(3)の誤検出をより好適に抑制できる。
【0095】
第9の構成からなる受光端末(3)によれば、所在地を検出可能であり、製造コストの増大を抑制可能な受光端末(3)を提供することができる。また、本構成の受光端末(3)によれば、誤検出の発生を抑制可能である。
【0096】
第10の構成からなる受光端末(3)によれば、光源識別部(9)がより好適に光源(2)を識別できるようになる。
【0097】
第11の構成からなる受光端末(3)によれば、光源(2)の設置環境に応じてデータサンプル数の設定値を増減させることで、光源(2)の識別精度を向上させたり、識別精度を維持しつつユーザの要望に応じて測位時間を検出したりすることができる。