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特開2024-42828石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法、及び、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042828
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法、及び、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F23N 3/00 20060101AFI20240322BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20240322BHJP
   F23C 1/12 20060101ALI20240322BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20240322BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20240322BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F23N3/00
F23N5/02 343Z
F23C1/12
F23C99/00 317
F23D17/00 103
F23N5/24 106A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147704
(22)【出願日】2022-09-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/燃焼アンモニアサプライチェーンの構築アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術を含む)の開発・実証/アンモニア専焼バーナを活用した火力発電所における高混焼実機実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の規定の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 明正
(72)【発明者】
【氏名】冨永 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】富澤 直季
(72)【発明者】
【氏名】嶺 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】甘利 猛
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】浦方 悠一郎
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
3K065
3K091
【Fターム(参考)】
3K003JA06
3K003JA07
3K003JA10
3K003KA01
3K003KB01
3K003KB02
3K003LA08
3K003MA04
3K005AB04
3K005AC02
3K005BA06
3K005CA06
3K005CA09
3K005DA07
3K065TA01
3K065TB01
3K065TC01
3K065TE01
3K065TF09
3K065TH03
3K065TN16
3K091AA01
3K091BB02
3K091BB25
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC13
3K091CC23
3K091DD02
3K091DD05
3K091DD08
3K091DD10
(57)【要約】
【課題】石炭燃料の着火位置が変化した場合においても、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を低減する。
【解決手段】石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置が制御する石炭アンモニア混焼ボイラは、石炭燃料噴出ノズルから噴出される石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、アンモニア噴出ノズルから噴出されるアンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能である。石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置は、石炭燃料噴出ノズルから噴出される石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得し、指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得するための指標パラメータ取得部と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整するための第2燃焼用空気流速調整部と、
を備える、石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項2】
前記指標パラメータは前記石炭燃料噴出ノズルから噴出された前記石炭燃料が燃焼されることで形成される火炎に関するパラメータである、請求項1に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項3】
前記指標パラメータは前記石炭アンモニア混焼ボイラの負荷である、請求項1に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項4】
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気を前記火炉に噴出するためのノズル開口面積を固定しつつ、前記第2燃焼用空気の流量を増加することにより、前記第2燃焼用空気の流速を増加させる、請求項1又は2に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項5】
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記アンモニアと前記第2燃焼用空気との空気比が0.95以下になるように前記第2燃焼用空気の流量を調整する、請求項4に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項6】
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気の流量を固定しつつ、前記第2燃焼用空気を前記火炉に噴出するためのノズル開口面積を減少することにより、前記第2燃焼用空気の流速を増加させる、請求項1又は2に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項7】
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気の流速が70m/s以下になるように前記ノズル開口面積を調整する、請求項6に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項8】
前記指標パラメータと前記第2燃焼用空気の流速の目標値との関係を規定する基準データを記憶するための記憶部を更に備え、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記基準データに基づいて、前記指標パラメータ取得部で取得された前記指標パラメータに対応する前記目標値を算出し、前記第2燃焼用空気の流速が前記目標値になるように調整する、請求項1又は2に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項9】
前記石炭燃料噴出ノズル及び前記アンモニア噴出ノズルは、前記石炭燃料及び前記アンモニアが前記火炉内に旋回流を形成するように配置される、請求項1又は2に記載の石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置。
【請求項10】
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整する工程と、
を備える、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法。
【請求項11】
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムであって、
コンピュータ装置に、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整する工程と、
を実行可能である、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法、及び、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラなどの大型のボイラは、中空形状をなして略鉛直方向に設置される火炉を有し、この火炉壁に複数のバーナが配設される。また、大型のボイラは、火炉の鉛直方向上方に煙道が連結されており、この煙道に蒸気を生成するための熱交換器が配置されている。そして、バーナが火炉内に燃料と空気(酸化性ガス)との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスが生成されて煙道に流れる。燃焼ガスが流れる領域に熱交換器が設置され、熱交換器を構成する伝熱管内を流れる水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成される。
【0003】
この種のボイラでは、燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去するために、燃焼ガスに対してアンモニア(NH3)を供給することで、アンモニアの存在下で触媒を用いて窒素酸化物の還元が行われる。このような脱硝反応は、次の化学反応式で表される。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O ・・・(1)
例えば特許文献1には、アンモニアを用いた脱硝反応によりボイラの排ガス中の窒素酸化物を除去するための技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-228918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、ボイラの燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去するための脱硝反応に用いられるアンモニアは、水素を低コストで効率良く輸送・貯蔵できることが知られている。そのためアンモニアは、エネルギキャリアとしての役割に加え、火力発電の燃料として直接利用が可能であり、燃焼時にCO2を排出しない燃料として、温室効果ガスの排出削減に大きな利点があると期待されている。そこで石炭燃料とともにアンモニアを燃料として取り扱うことで、石炭燃料とアンモニアとを混焼する石炭アンモニア混焼ボイラの開発が進められている。
【0006】
石炭アンモニア混焼ボイラの一方式として、火炉に石炭燃料を噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、火炉にアンモニアを噴出するためのアンモニア噴出ノズルとを隣接配置することで、石炭燃料及びアンモニアを別々のバーナで燃焼させる方式が知られている(ここで隣接配置とは、石炭燃料を燃焼するためのバーナと、アンモニアを燃焼するためのバーナとが火炉壁管を隔てて配置されてないことを意味する)。この方式では、石炭燃料噴出ノズルから噴出された石炭燃料、及び、アンモニア噴出ノズルから噴出されたアンモニアに対して、それぞれ燃焼用空気を混合させて燃焼するが、石炭燃料に混合される第1燃焼用空気の流量と、アンモニアに混合される第2燃焼用空気の流量とが独立的に調整可能に構成される。
【0007】
この種の石炭アンモニア混焼ボイラでは、負荷が変化した場合(例えば定格負荷から部分負荷に減少した場合)、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出された石炭燃料の着火位置がノズル噴出口から離れるように変化する(定格負荷時には、石炭燃料の着火位置はノズル噴出口の近傍にある)。火炉で生成される燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の排出量は、火炉に噴出されるアンモニアを第2燃焼用空気と所定の混合比で燃焼させることで低減可能であるが、このように石炭燃料の着火位置が変化すると、NOxを低減させるためにアンモニアと混合される第2燃焼用空気の比率(空気比)が変化してしまう。つまり、石炭燃料の着火位置が変化することによって、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を低減するための空気比が変化し、その結果、ボイラから排出される窒素酸化物が増大してしまう。これは、石炭燃料の着火位置が石炭燃料噴出ノズルから離れるように変化すると、石炭燃料の燃焼用空気の一部が、ノズル近傍においてアンモニアの燃焼によって先行して消費されることに起因すると考えられる。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、石炭燃料の着火位置が変化した場合においても、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を効果的に低減可能な石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法、及び、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置は、上記課題を解決するために、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得するための指標パラメータ取得部と、
前記指標パラメータに基づいて、前記アンモニアの着火位置が前記石炭燃料の着火位置に近づくように、前記第2燃焼用空気の流速を調整するための第2燃焼用空気流速調整部と、
を備える。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法は、上記課題を解決するために、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータに基づいて、前記アンモニアの着火位置が前記石炭燃料の着火位置に近づくように、前記第2燃焼用空気の流速を調整する工程と、
を備える。
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムは、上記課題を解決するために、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムであって、
コンピュータ装置に、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータに基づいて、前記アンモニアの着火位置が前記石炭燃料の着火位置に近づくように、前記第2燃焼用空気の流速を調整する工程と、
を実行可能である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、石炭燃料の着火位置が変化した場合においても、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を効果的に低減可能な石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置、石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法、及び、石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラの概略構成図である。
図2図1の燃焼装置の断面構成図である。
図3A】定格負荷時における石炭燃料バーナ及びアンモニアバーナの着火位置を模式的に示す図である。
図3B】部分負荷時における石炭燃料バーナ及びアンモニアバーナの調整前の着火位置を模式的に示す図である。
図4】アンモニアバーナにおける空気比と燃焼ガスに含まれるNOx濃度との関係を示すグラフである。
図5】一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置を示すブロック構成図である。
図6】部分負荷時における石炭燃料バーナ及びアンモニアバーナの調整後の着火位置を模式的に示す図である。
図7】一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法を示すフローチャートである。
図8】指標パラメータと石炭燃料バーナの着火位置との関係を示すグラフである。
図9】アンモニアバーナの空気比と燃焼ガスに含まれるNOx濃度との関係を示すグラフである。
図10】指標パラメータと第2燃焼用空気の流速の目標値との関係を規定する基準データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0015】
まず図1を参照して、ボイラ制御装置の制御対象である石炭アンモニア混焼ボイラの構成について説明する。図1は一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ10の概略構成図である。
【0016】
石炭アンモニア混焼ボイラ10は、石炭燃料Fc及びアンモニアFa(NH3)をバーナ21を含む燃焼装置20により燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能なボイラ装置である。石炭燃料Fcは、バイオマス燃料や石炭などが使用され、これらが粉砕されてなる微粉燃料として用いられる。
【0017】
石炭アンモニア混焼ボイラ10は、火炉11と、燃焼装置20と、燃焼ガス通路12とを有する。火炉11は、略四角筒の中空形状をなして略鉛直方向に沿って設置されている。火炉11の内壁面を構成する火炉壁17は、複数の伝熱管と、伝熱管同士を接続するフィンとで構成され、燃料の燃焼により発生した熱を、伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して回収すると共に、火炉壁17の温度上昇を抑制している。
【0018】
燃焼装置20は、火炉11の下部領域に設置されている。本実施形態では、燃焼装置20は、火炉壁17に装着された複数のバーナ21を備える。バーナ21は、石炭燃料Fc又はアンモニアFaを燃焼用空気(二次空気)とともに燃焼することにより燃焼ガスを発生させる。本実施形態では、バーナ21は、燃焼によって生じる燃焼ガスが旋回流を形成しながら火炉11を上昇することで燃焼ガス通路12に送られるように配置される。
【0019】
石炭燃料Fcは、例えば、ミルによって微粉燃料として生成される。本願明細書では図示は省略するが、ミルは、例えば、内部に粉砕テーブルが駆動回転可能に支持されていて、粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラが粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている竪型ローラミルである。粉砕ローラと粉砕テーブルが協働して粉砕された固体燃料は、ミルに供給される一次空気(搬送用ガス、酸化性ガス)により、ミルが備える分級機に搬送される。分級機では、バーナ21での燃焼に適した粒径以下の微粉燃料と、該粒径より大きな粗粉燃料とに分級される。微粉燃料は、分級機を通過して、一次空気と共にバーナ21に供給される。分級機を通過しなかった粗粉燃料は、ミルの内部で、自重により粉砕テーブル上に落下し、再粉砕される。
【0020】
燃焼ガス通路12は、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路12には、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器、再熱器、節炭器等が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0021】
燃焼ガス通路12の下流側には、熱交換器で熱回収された燃焼ガスが排出される煙道13が連結されている。煙道13には、煙道13を流れる燃焼ガスで、バーナ21に供給される燃焼用空気(二次空気)を予熱するための空気予熱器や燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するための脱硝装置が設けられてもよい。また煙道13の下流側にはガスダクトが連結され、ガスダクトを介して煙突から燃焼ガスを排ガスとして系外に排出する。ガスダクトには、燃焼ガス中の灰などを除去する電気集じん機などの集じん装置や硫黄酸化物を除去する脱硫装置などの環境装置、また、それらの環境装置に排ガスを導くための誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)が設けられていてもよい。
【0022】
バーナ21は、石炭燃料Fc又はアンモニアFaを、空気予熱器で加熱された燃焼用空気(二次空気)とともに火炉11に吹き込み、着火させることで火炎を形成する。火炉11内の下部領域で火炎が形成されると、高温の燃焼ガスが火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路12に流入する。尚、本実施形態では、酸化性ガス(一次空気、二次空気)として空気を用いるが、空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、供給される燃料量に対する酸素量の比率を適正な範囲に調整することで、火炉11において安定した燃焼が実現される。
【0023】
また、火炉11のバーナ21の装着位置より上方(下流側)には、火炉11内に燃焼用追加空気(AA:Additional Air)を供給するための複数のアディショナル空気ポート(AAポート)25が設けられている。アディショナル空気ポート25には、押込通風機から供給された空気の一部が、燃焼用追加空気として供給される。
【0024】
燃焼ガス通路12に流入した燃焼ガスは、燃焼ガス通路12の内部に配置された過熱器、再熱器、節炭器で水や蒸気と熱交換した後、煙道13に排出され、脱硝装置で窒素酸化物が除去され、空気予熱器で一次空気及び二次空気と熱交換した後、更にガスダクトに排出され、集じん装置で灰などが除去され、脱硫装置で硫黄酸化物が除去された後、煙突から系外に排出される。
尚、燃焼ガス通路12における各熱交換器及び煙道13からガスダクトにおける各装置の配置は、燃焼ガス流れに対して、必ずしも上述の記載順に配置されなくともよい。
【0025】
続いて図2を参照して燃焼装置20の具体的構成について説明する。図2図1の燃焼装置20の断面構成図である。
【0026】
燃焼装置20は、火炉壁17に設けられた複数のバーナ21を含む。複数のバーナ21は、石炭燃料Fcを燃焼するための石炭燃料バーナ21A、及び、アンモニアFaを燃焼するためのアンモニアバーナ21Bを含む。
【0027】
石炭燃料バーナ21Aは、石炭燃料Fcを燃焼用空気(以下、適宜「第1燃焼用空気A1」と称する)と混合して燃焼するためのバーナ21であり、石炭燃料Fcを火炉11に噴出するための石炭燃料噴出ノズル21A1と、第1燃焼用空気A1を火炉11に噴出するための第1燃焼用空気噴出ノズル21A2とを有する。石炭燃料噴出ノズル21A1及び第1燃焼用空気噴出ノズル21A2は互いに隣接するように設けられる(ここで「隣接する」とは、例えば、石炭燃料噴出ノズル21A1及び第1燃焼用空気噴出ノズル21A2の間に火炉壁17が存在することにより距離的な隔たりがないことを意味する)。石炭燃料噴出ノズル21A1から噴出された石炭燃料Fcは、第1燃焼用空気噴出ノズル21A2から噴出された第1燃焼用空気A1と混合されて燃焼する。
【0028】
アンモニアバーナ21Bは、アンモニアFaを燃焼用空気(以下、適宜「第2燃焼用空気A2」と称する)と混合して燃焼するためのバーナ21であり、アンモニアFaを火炉11に噴出するためのアンモニア噴出ノズル21B1と、第2燃焼用空気A2を噴出するための第2燃焼用空気噴出ノズル21B2とを有する。アンモニア噴出ノズル21B1及び第2燃焼用空気噴出ノズル21B2は互いに隣接するように設けられる(ここで「隣接する」とは、例えば、アンモニア噴出ノズル21B1及び第2燃焼用空気噴出ノズル21B2の間に火炉壁17が存在することにより距離的な隔たりがないことを意味する)。アンモニア噴出ノズル21B1から噴出されたアンモニアFaは、第2燃焼用空気噴出ノズル21B2から噴出された第2燃焼用空気A2と混合されて燃焼する。
【0029】
このような構成を有する石炭燃料バーナ21A及びアンモニアバーナ21Bは、燃焼装置20において、互いに隣接するように配置される(ここで「隣接する」とは、両者の間に火炉壁17等により距離的な隔たりがないことを意味する)。
【0030】
続いて上記構成を有する燃焼装置20において、ボイラ負荷と、石炭燃料バーナ21A及びアンモニアバーナ21Bの着火位置との関係について説明する。図3Aは定格負荷(負荷が100%)時における石炭燃料バーナ21A及びアンモニアバーナ21Bの着火位置を模式的に示す図であり、図3Bは部分負荷時(負荷が100%未満)における石炭燃料バーナ21A及びアンモニアバーナ21Bの着火位置を模式的に示す図である。
【0031】
尚、以下の説明において着火位置とは、バーナ21によって形成された火炎のノズル先端からの距離を意味する。また以下の実施形態では、石炭燃料バーナ21Aが有する石炭燃料噴出ノズル21A1、及び、アンモニアバーナ21Bが有するアンモニア噴出ノズル21B1の先端位置が同じ場合を例示しているが、それぞれの先端位置が異なっていてもよい。
【0032】
図3Aには、ボイラ負荷が定格負荷である場合に、石炭燃料バーナ21Aによって形成される火炎Pfa、及び、アンモニアバーナ21Bによって形成される火炎Pfbが示されている。石炭燃料バーナ21Aの着火位置、及び、アンモニアバーナ21Bの着火位置は、それぞれ火炎Pfa、Pfbのうち石炭燃料噴出ノズル21A1及びアンモニア噴出ノズル21B1の先端側の位置として特定され、ともに距離x1である。一方で図3Bに示すように、ボイラ負荷が部分負荷(定格負荷より低負荷)である場合、石炭燃料バーナ21Aに対する石炭燃料の供給量が減少するに伴って、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が距離x2(>x1)に離れる。このときアンモニアバーナ21Bの着火位置は距離x1のままである。
【0033】
図4はアンモニアバーナ21Bにおける空気比と燃焼ガスに含まれるNOx濃度との関係を示すグラフである。ボイラ負荷が定格負荷である場合、アンモニアバーナ21Bの空気比が増加するに従って、燃焼ガスに含まれるNOx濃度は次第に増加する振る舞いを示す。一方で、ボイラ負荷が部分負荷になると、アンモニアバーナ21Bの空気比が増加するに従って、燃焼ガスに含まれるNOx濃度は次第に減少する振る舞いを示す。このようにボイラ負荷が変化すると、アンモニアバーナ21Bの空気比に対する燃焼ガスに含まれるNOx濃度の振る舞いが変化する。これは、図3Bに示すように、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が離れることにより、石炭燃料バーナ21Aに供給される燃焼用空気(第1燃焼用空気A1)が、着火位置が比較的近いアンモニアバーナ21Bで消費されることで、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が増加していると考えられる。そのため、石炭アンモニア混焼ボイラ10では、ボイラ負荷が変化した際に石炭燃料バーナ21Aにおける着火位置が変化することによって、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が増加してしまうおそれがある。このような課題は、以下に説明する石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100によって好適に解消可能である。
【0034】
図5は一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100を示すブロック構成図である。石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、例えば、CPU(Central Processing
Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0035】
石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、指標パラメータ取得部102と、第2燃焼用空気流速調整部104とを備える。
【0036】
指標パラメータ取得部102は、指標パラメータPiを取得するための構成である。指標パラメータPiは、石炭燃料噴出ノズル21A1から噴出される石炭燃料Fcの着火位置(石炭燃料バーナ21Aの着火位置)に相関を有するパラメータである。
【0037】
幾つかの態様では、指標パラメータPiは、石炭燃料噴出ノズル21A1から噴出された石炭燃料Fcが燃焼されることで形成される火炎Pfaに関するパラメータであってもよい。このようなパラメータとしては、例えば、撮像装置(ビデオカメラ等)で撮像して得られる輝度情報、着火状況を示すFD(フレームディテクタ)信号、石炭燃料噴出ノズルに設置したメタル温度計の検出温度値等を用いることができる。このように指標パラメータPiとして、石炭燃料Fcの燃焼によって形成される火炎に関するパラメータを取り扱うことで、石炭燃料バーナ21Aの着火位置を好適に取り扱うことができる。
【0038】
また他の態様では、指標パラメータPiは、石炭アンモニア混焼ボイラ10の負荷であってもよい。図4を参照して前述したように、アンモニアバーナ21Bの空気比と相関を有する燃焼ガスに含まれるNOx濃度はボイラ負荷に依存するため、ボイラ負荷を指標パラメータPiとして取り扱うこともできる。この場合、石炭燃料バーナ21Aの火炎Pfaを直接的に計測する必要がない。
【0039】
第2燃焼用空気流速調整部104は、指標パラメータPiが予め設定された規定値Pi0以下である場合に、アンモニアバーナ21Bに供給される第2燃焼用空気A2の流速が増加するように調整するための構成である。規定値Pi0は、石炭燃料バーナ21Aの着火位置に関する指標パラメータPiに関する閾値であり、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が定格負荷の場合(図3Aを参照)に比べて十分に離れたか否かを判定するための基準値として予め設定される。
【0040】
そして指標パラメータPiが規定値Pi0以下であることにより、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が定格負荷の場合に比べて十分に離れたと判定された場合には、アンモニアバーナ21Bに供給される第2燃焼用空気A2の流速が増加するように調整される。これにより、図6に示すように、アンモニアバーナ21Bの着火位置が離れることにより、石炭燃料バーナ21Aの着火位置に近づけられる。その結果、石炭燃料バーナ21Aから噴出される第1燃焼用空気A1が、アンモニアバーナ21Bで先行して消費されることが防止され、ボイラ負荷が変化した場合においても、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が増加することが抑制される。
【0041】
続いて上記構成を有する石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100によって実施される石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法について説明する。図7は一実施形態に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法を示すフローチャートである。
【0042】
まず石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、制御対象である石炭アンモニア混焼ボイラ10の運転条件を監視することにより、運転条件が変化したか否かを判定する(ステップS100)。ステップS100では、石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、石炭アンモニア混焼ボイラ10の運転状態を示す運転パラメータを取得し、運転パラメータが変化したか否かに基づいて運転条件の変化の有無を判定する。運転パラメータは石炭アンモニア混焼ボイラ10の運転状態に関する任意のパラメータを選択可能である。例えば運転パラメータとしてボイラ負荷を監視する場合には、取得したボイラ負荷の値に基づいて、定格負荷から部分負荷に変化した場合に、運転条件が変化したと判定される。
【0043】
続いて指標パラメータ取得部102は、指標パラメータPiを取得し(ステップS101)、当該指標パラメータPiが規定値Pi0以下であるか否かを判定する(ステップS102)。指標パラメータPiは、前述したように、石炭燃料バーナ21Aの着火位置に関するパラメータである。また規定値Pi0は、前述したように、石炭燃料バーナ21Aの着火位置に関する指標パラメータPiに関する閾値であり、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が十分に離れたか否かを判定するための基準値である。
【0044】
ここで図8は指標パラメータPiと石炭燃料バーナ21Aの着火位置との関係を示すグラフである。図8では、指標パラメータPiとしてFD信号、輝度情報、又はメタル温度を取り扱う場合が示されており、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が基準位置(例えば石炭燃料噴出ノズルの先端)から離れるに従って、指標パラメータPiが減少する傾向が示されている。このことから指標パラメータPiが石炭燃料バーナ21Aの着火位置を評価する指標として機能することが示される。
【0045】
指標パラメータPiが規定値Pi0以下である場合(ステップS102:YES)、石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、火炉11で生成された燃焼ガスのNOx濃度を取得し(ステップS103)、運転条件が変化する前に比べてNOx濃度が増加したか否かを判定する(ステップS104)。燃焼ガスのNOx濃度は所定のタイミングで計測されており、その計測値は、例えばメモリ等の記憶手段に、計測時刻と関連付けて記憶される。ステップS104では、このように予め記憶された運転条件が変化する前のNOx濃度を読み出し、ステップS103で取得されるNOx濃度と比較される。これにより、ステップS104では、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が変化することにより、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が増加しているか否かが判定される。
【0046】
運転条件が変化する前に比べてNOx濃度が増加していた場合(ステップS104:YES)、第2燃焼用空気流速調整部104は、アンモニアバーナ21Bに供給される第2燃焼用空気A2の流速が増加するように調整する(ステップS105)。ステップS105では、例えば、第2燃焼用空気A2の流速を予め設定された単位量だけ増加するように調整が行われる。
【0047】
そして石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、再び火炉11の燃焼ガスについてNOx濃度を取得し(ステップS106)、ステップS105の調整前に比べてNOx濃度が低減しているか否かを判定する(ステップS107)。ステップS105の調整前に比べてNOx濃度が低減している場合(ステップS107:YES)、石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置100は、ステップS105の調整によって、石炭アンモニア混焼ボイラ10の運転状態が改善されたと判断し、処理をステップS105に戻すことで、第2燃焼用空気A2の流速を繰り返し調整する。一方、ステップS105の調整前に比べてNOx濃度が低減していない場合(ステップS107:NO)、第2燃焼用空気A2の流速を前回値に戻す(ステップS108)。このように、ステップS105の調整によって、石炭アンモニア混焼ボイラ10の運転状態が改善されていないと判断された場合には、ステップS105の調整がキャンセルされる。
【0048】
このように石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法では、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が効果的に低減されるように、第2燃焼用空気A2の流速が調整される。その結果、図6を参照して前述したように、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が離れた場合に、第2燃焼用空気A2の流速調整によって、アンモニアバーナ21Bの着火位置が石炭燃料バーナ21Aの着火位置に近づくように変更される。その結果、石炭燃料バーナ21Aから噴出される第1燃焼用空気A1が、アンモニアバーナ21Bで先行して消費されることが防止され、ボイラ負荷が変化した場合においても、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が増加することが抑制される。
【0049】
ステップS105で第2燃焼用空気A2の流速を調整する際には、第2燃焼用空気流速調整部104は、第2燃焼用空気A2を火炉11に噴出するためのノズル開口面積を固定しつつ、第2燃焼用空気A2の流量を増加することにより、第2燃焼用空気A2の流速を増加させてもよい。この場合、第2燃焼用空気流速調整部104は、アンモニアバーナ21Bにおけるアンモニアと第2燃焼用空気A2との空気比が0.95以下になるように第2燃焼用空気の流量を調整することが好ましい。
【0050】
ここで図9はアンモニアバーナ21Bの空気比と燃焼ガスに含まれるNOx濃度との関係を示すグラフである。図9に示されるように、アンモニアバーナ21Bにおける空気比が増加して0.95近傍に達すると、燃焼ガスに含まれるNOx濃度が急増する傾向が示されている。そのため、第2燃焼用空気A2の流量を調整する際にアンモニアバーナ21Bの空気比を0.95以下に制限することで、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物が増加することを効果的に抑制できる。
【0051】
ステップS105で第2燃焼用空気A2の流速を調整する際には、第2燃焼用空気流速調整部104は、第2燃焼用空気A2の流量を固定しつつ、第2燃焼用空気A2を火炉11に噴出するためのノズル開口面積を減少することにより、第2燃焼用空気A2の流速を増加させてもよい。この場合、第2燃焼用空気流速調整部104は、第2燃焼用空気A2の流速が70m/s以下になるようにノズル開口面積を調整することが好ましい。これにより、第2燃焼用空気A2の過剰な増加によって調整時にアンモニア燃焼における失火発生を効果的に回避できる。
【0052】
また上記説明では、ステップS105において第2燃焼用空気の流速を調整する際に、予め設定された単位量ずつ流速を変化するように微調整する場合を例示したが、予め用意された基準データDを用いて指標パラメータPiに対応する第2燃焼用空気A2の流速の目標値を算出し、当該目標値になるように第2燃焼用空気A2の流速を調整してもよい。この場合、基準データDは、指標パラメータPiと第2燃焼用空気A2の流速の目標値との関係を規定するデータとして予め用意される。
【0053】
図10は指標パラメータPiと第2燃焼用空気A2の流速の目標値との関係を規定する基準データDの一例である。図10では、指標パラメータPi(FD信号、輝度情報又はメタル温度)ごとに、第2燃焼用空気A2の流速の目標値が規定される。本実施形態では、第2燃焼用空気A2の流速の目標値は、ボイラ負荷、アンモニア混焼率、石炭性状(燃料比)に基づいて細分化されて規定される。この態様では、第2燃焼用空気流速調整部104は、指標パラメータPi、ボイラ負荷、アンモニア混焼率、石炭性状(燃料比)を取得し、その取得結果に対応する目標値を基準データDから特定する。第2燃焼用空気流速調整部104は、第2燃焼用空気A2の流速を、このように特定された目標値になるように調整することで、単位量ずつ流速を調整する場合に比べて、迅速に流速の調整を実施することができ、ボイラ制御の応答性を向上できる。
【0054】
以上説明したように上記各実施形態によれば、指標パラメータPiを取得することにより、石炭燃料噴出ノズル21A1から火炉11に噴出される石炭燃料バーナ21Aの着火位置が把握される。指標パラメータPiが予め設定された規定値以下になることにより、石炭燃料バーナ21Aの着火位置が噴出ノズルから離れたと判断された場合には、第2燃焼用空気A2の流速が増加するように調整される。これにより、アンモニアバーナ21Bの着火位置が、石炭燃料バーナ21Aの着火位置に近づけられる。その結果、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出された石炭燃料Fcと燃焼される第1燃焼用空気A1が、アンモニアバーナ21Bによって先行的に消費されることを抑制し、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)一態様に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置は、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得するための指標パラメータ取得部と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整するための第2燃焼用空気流速調整部と、
を備える。
【0057】
上記(1)の態様によれば、指標パラメータを取得することにより、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出される石炭燃料の着火位置が把握される。指標パラメータが予め設定された規定値以下になることにより、石炭燃料の着火位置が噴出ノズルから離れたと判断された場合には、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整される。これにより、アンモニア噴出ノズルから火炉に噴出されたアンモニアの着火位置が、石炭燃料の着火位置に近づけられる。その結果、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出された石炭燃料と燃焼される第1燃焼用空気が、アンモニアとの燃焼によって先行的に消費されることを抑制し、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【0058】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記指標パラメータは前記石炭燃料噴出ノズルから噴出された前記石炭燃料が燃焼されることで形成される火炎に関するパラメータである。
【0059】
上記(2)の態様によれば、指標パラメータとして、石炭燃料の燃焼によって形成される火炎に関するパラメータを取り扱うことで、石炭燃料噴出ノズルから噴出された石炭燃料の着火位置を好適に特定できる。このようなパラメータとしては、例えば、撮像装置(ビデオカメラ等)で撮像して得られる輝度情報、着火状況を示すFD(フレームディテクタ)信号、石炭燃料噴出ノズルに設置したメタル温度計の検出温度値等を用いることができる。
【0060】
(3)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記指標パラメータは前記石炭アンモニア混焼ボイラの負荷である。
【0061】
上記(3)の態様によれば、ボイラ負荷が減少するに従って、石炭燃料噴出ノズルから噴出された石炭燃料の着火位置が石炭燃料噴出ノズルから離れる傾向にある。そのため指標パラメータとしてボイラ負荷を採用することで、ボイラ負荷が規定値以下になることで石炭燃料の着火位置が離れたと判断された場合には、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整されることで、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【0062】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気を前記火炉に噴出するためのノズル開口面積を固定しつつ、前記第2燃焼用空気の流量を増加することにより、前記第2燃焼用空気の流速を増加させる。
【0063】
上記(4)の態様によれば、第2燃焼用空気を火炉に噴出するためのノズル開口面積を固定しながら、第2燃焼用空気の流量を可変とすることで、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整できる。
【0064】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記アンモニアと前記第2燃焼用空気との空気比が0.95以下になるように前記第2燃焼用空気の流量を調整する。
【0065】
上記(5)の態様によれば、第2燃焼用空気の流量を調整する際に、アンモニアと第2燃焼用空気との空気比が0.95以下になるように制限される。これにより、アンモニアに混合される第2燃焼用空気が過剰に増加することによって、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物が増加することを効果的に抑制できる。
【0066】
(6)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気の流量を固定しつつ、前記第2燃焼用空気を前記火炉に噴出するためのノズル開口面積を減少することにより、前記第2燃焼用空気の流速を増加させる。
【0067】
上記(6)の態様によれば、第2燃焼用空気の流量を固定しながら、第2燃焼用空気を火炉に噴出するためのノズル開口面積を可変とすることにより、第2燃焼用空気の流速を増加できる。
【0068】
(7)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記第2燃焼用空気の流速が70m/s以下になるように前記ノズル開口面積を調整する。
【0069】
上記(7)の態様によれば、第2燃焼用空気のノズル開口面積を調整する際に、第2燃焼用空気の流速が70m/s以下に制限される。これにより、第2燃焼用空気の過剰な増加によって調整時にアンモニア燃焼における失火発生を効果的に回避できる。
【0070】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記指標パラメータと前記第2燃焼用空気の流速の目標値との関係を規定する基準データを記憶するための記憶部を更に備え、
前記第2燃焼用空気流速調整部は、前記基準データに基づいて、前記指標パラメータ取得部で取得された前記指標パラメータに対応する前記目標値を算出し、前記第2燃焼用空気の流速が前記目標値になるように調整する。
【0071】
上記(8)の態様によれば、指標パラメータと、調整対象となる第2燃焼用空気の流速の目標値との関係が予め基準データとして記憶部に記憶される。そして第2燃焼用空気流速調整部は、基準データを参照することで、取得された指標パラメータに対応する第2燃焼用空気の流速について目標値を特定し、当該目標値になるように調整を行うことで、応答性のよいボイラ制御を行うことができる。
【0072】
(9)他の態様では、上記(1)から(8)のいずれか一態様において、
前記石炭燃料噴出ノズル及び前記アンモニア噴出ノズルは、前記石炭燃料及び前記アンモニアが前記火炉内に旋回流を形成するように配置される。
【0073】
上記(9)の態様によれば、石炭燃料及びアンモニアを噴出するための各ノズルが火炉内に旋回流を形成するように配置されるボイラにおいて、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【0074】
(10)一態様に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法は、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御方法であって、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整する工程と、
を備える。
【0075】
上記(10)の態様によれば、指標パラメータを取得することにより、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出される石炭燃料の着火位置が把握される。指標パラメータが予め設定された規定値以下になることにより、石炭燃料の着火位置が噴出ノズルから離れたと判断された場合には、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整される。これにより、アンモニア噴出ノズルから火炉に噴出されたアンモニアの着火位置が、石炭燃料の着火位置に近づけられる。その結果、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出された石炭燃料と燃焼される第1燃焼用空気が、アンモニアとの燃焼によって先行的に消費されることを抑制し、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【0076】
(11)一態様に係る石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムは、
石炭燃料を火炉に噴出するための石炭燃料噴出ノズルと、
アンモニアを火炉に噴出するためのアンモニア噴出ノズルと、
を備え、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料に混合される第1燃焼用空気と、前記アンモニア噴出ノズルから噴出される前記アンモニアに混合される第2燃焼用空気とについて、各々の流量を独立的に調整可能な石炭アンモニア混焼ボイラを制御するための石炭アンモニア混焼ボイラ制御プログラムであって、
コンピュータ装置に、
前記石炭燃料噴出ノズルから噴出される前記石炭燃料の着火位置に関する指標パラメータを取得する工程と、
前記指標パラメータが予め設定された規定値以下である場合に、前記第2燃焼用空気の流速が増加するように調整する工程と、
を実行可能である。
【0077】
上記(11)の態様によれば、指標パラメータを取得することにより、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出される石炭燃料の着火位置が把握される。指標パラメータが予め設定された規定値以下になることにより、石炭燃料の着火位置が噴出ノズルから離れたと判断された場合には、第2燃焼用空気の流速が増加するように調整される。これにより、アンモニア噴出ノズルから火炉に噴出されたアンモニアの着火位置が、石炭燃料の着火位置に近づけられる。その結果、石炭燃料噴出ノズルから火炉に噴出された石炭燃料と燃焼される第1燃焼用空気が、アンモニアとの燃焼によって先行的に消費されることを抑制し、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物の増加を効果的に低減できる。
【符号の説明】
【0078】
10 石炭アンモニア混焼ボイラ
11 火炉
12 燃焼ガス通路
13 煙道
17 火炉壁
20 燃焼装置
21 バーナ
21A 石炭燃料バーナ
21A1 石炭燃料噴出ノズル
21A2 第1燃焼用空気噴出ノズル
21B アンモニアバーナ
21B1 アンモニア噴出ノズル
21B2 第2燃焼用空気噴出ノズル
25 アディショナル空気ポート
100 石炭アンモニア混焼ボイラ制御装置
102 指標パラメータ取得部
104 第2燃焼用空気流速調整部
Fc 石炭燃料
Fa アンモニア
A1 第1燃焼用空気
A2 第2燃焼用空気
D 基準データ
Pi 指標パラメータ

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10