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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042842
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】透過電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H01J37/22 501G
H01J37/22 501Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147740
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 佳那子
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101EE14
5C101FF17
5C101GG37
5C101GG49
5C101HH21
5C101HH28
5C101JJ12
(57)【要約】
【課題】透過電子顕微鏡において、試料に対してレーザー光のパルス列を照射する場合に、各露光期間で生じる試料の状態変化を等しくする。
【解決手段】レーザー光照射設備30は、レーザー光生成部32及びミラーユニット34を有する。画像生成部90は、カメラ92及びカメラコントローラ94を有する。レーザー光照射制御部38は、レーザー光のパルス周期として、カメラ92の露光周期と同じ周期を設定する。これにより、各露光期間における試料の状態変化が一様になる。カメラコントローラから出力される同期信号に基づいて、レーザー光のパルス列が生成されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して電子線を照射する電子線照射部と、
前記試料に対して、パルス列により構成されるレーザー光を照射するレーザー光照射部と、
前記試料を透過した電子を検出するカメラを有し、前記電子線及び前記レーザー光の同時照射過程においてカメラ画像列を生成する画像生成部と、
前記レーザー光照射部の動作を制御する照射制御部であって、前記レーザー光のパルス周期として前記カメラの露光周期と同じ周期を設定する照射制御部と、
を含むことを特徴とする透過電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1記載の透過電子顕微鏡において、
前記照射制御部は、前記カメラにおける各露光期間の基準時を示す同期信号に基づいて、前記パルス列を構成する各パルスの生成タイミングを定める、
ことを特徴とする透過電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1記載の透過電子顕微鏡において、
前記画像生成部は、複数のパルス照射期間が前記カメラにおける複数の露光期間から除外されるように前記カメラの動作を制御するカメラ制御部を含む、
ことを特徴とする透過電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1記載の透過電子顕微鏡において、
前記電子線照射部を収容した鏡筒を含み、
前記レーザー光照射部は、
前記鏡筒の外側に設けられたレーザー光生成部と、
前記鏡筒の内部に設けられ、前記レーザー光生成部からのレーザー光を反射するミラーと、
を含み、
前記ミラーで反射したレーザー光が光軸に沿って進行して前記試料に照射される、
ことを特徴とする透過電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4記載の透過電子顕微鏡において、
電子線入口、電子線出口、及び、前記試料を収容する試料空間を有する対物レンズを含み、
前記ミラーは前記対物レンズに固定されており、
前記ミラーで反射したレーザー光が前記電子線入口を介して前記対物レンズの内部に進入する、
ことを特徴とする透過電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡に関し、特に、試料に対してレーザー光を照射する機能を備えた透過電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡は、試料に対して電子線を照射する設備及び試料から出た電子を検出するカメラを備える。カメラにより撮影された画像を通じて試料が観察される。カメラは、一般に、シンチレータパネル及び二次元検出器を備える。シンチレータパネルにおいて電子が光子に変換され、その光子が二次元検出器で検出される。二次元検出器として、CCD検出器、C-MOS検出器等が知られている。電子を直接的に検出する二次元検出器も知られている。
【0003】
加熱による試料の変化を観察したい場合や試料において生じる光反応を観察したい場合、試料に対してレーザー光が照射される(特許文献1を参照)。従来、レーザー光のパルス列を試料に照射する場合、レーザー光のパルス周期とカメラの露光周期は、それぞれ独立して設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-162557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透過電子顕微鏡において、レーザー光のパルス列を試料へ照射する場合、試料において周期的な変化(周期的な運動又は周期的な形態変化)が生じ得る。そのような周期的な変化とは無関係にカメラが周期的に動作する場合、露光期間ごとに、試料において、異なる状態変化が生じてしまう。その場合、カメラによって生成された複数の画像を正しく評価することが困難となる。
【0006】
本発明の目的は、透過電子顕微鏡において、試料に対してレーザー光のパルス列を照射する場合に、各露光期間において生じる試料の状態変化を等しくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る透過電子顕微鏡は、試料に対して電子線を照射する電子線照射部と、前記試料に対して、パルス列により構成されるレーザー光を照射するレーザー光照射部と、前記試料を透過した電子を検出するカメラを有し、前記電子線及び前記レーザー光の同時照射過程においてカメラ画像列を生成する画像生成部と、前記レーザー光照射部の動作を制御する照射制御部であって、前記レーザー光のパルス周期として前記カメラの露光周期と同じ周期を設定する照射制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透過電子顕微鏡において、試料に対してレーザー光のパルス列を照射する場合に、各露光期間において生じる複数の試料状態変化を等しくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る透過電子顕微鏡を示す図である。
図2】対物レンズの上部を示す図である。
図3】レーザー光生成部の構成例を示す図である。
図4】第1動作例を示す図である。
図5】第2動作例を示す図である。
図6】第3動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る透過電子顕微鏡は、電子線照射部、レーザー光照射部、画像生成部、及び、照射制御部、を有する。電子線照射部は、試料に対して電子線を照射する。レーザー光照射部は、試料に対して、パルス列により構成されるレーザー光を照射する。画像生成部は、試料を透過した電子を検出するカメラを有し、電子線及びレーザー光の同時照射過程においてカメラ画像列を生成する。照射制御部は、レーザー光照射部の動作を制御する照射制御部であって、レーザー光のパルス周期としてカメラの露光周期と同じ周期を設定する。
【0012】
上記構成によれば、照射制御部により、レーザー光のパルス周期とカメラの露光周期とが一致するので、各露光期間における試料の状態変化が等しくなる。よって、画像生成部により生成された複数のカメラ画像を正しく評価することが可能となる。例えば、異なる時刻で生成された2つのカメラ画像を正しく比較することが可能となる。
【0013】
露光期間は、露光開始から露光終了までの期間である。具体的には、各画像フレームの生成に際して、光子(又は電子)を検出し続ける期間である。露光周期に従って個々の露光期間が設定される。パルス周期は、複数のパルスの繰り返し周期である。パルス周期と露光周期とが同期している限りにおいて、各パルスの基準タイミングと各露光期間の基準タイミングとがずれていてもよい。望ましくは、光子(又は電子)の検出を行いながら検出信号を出力できるカメラが用いられる。
【0014】
実施形態において、照射制御部は、カメラにおける各露光期間の基準時を示す同期信号に基づいて、パルス列を構成する各パルスの生成タイミングを定める。この構成によれば、露光周期に対してパルス周期を確実に合わせられる。上記の基準時は例えば露光期間開始時である。なお、露光周期(又は露光時間)のマニュアル設定、及び、パルス周期のマニュアル設定により、露光周期とパルス周期とを一致させてもよい。
【0015】
実施形態に係る透過電子顕微鏡は、画像生成部は、複数のパルス照射期間がカメラにおける複数の露光期間から除外されるようにカメラの動作を制御するカメラ制御部を含む。レーザー光がカメラに入射することに起因して、信号飽和、ノイズ発生等の問題が生じる場合に、上記構成の採用が望まれる。
【0016】
実施形態に係る透過電子顕微鏡は、電子線照射部を収容した鏡筒を含む。レーザー光照射部は、鏡筒の外側に設けられたレーザー光生成部と、鏡筒の内部に設けられ、レーザー光生成部からのレーザー光を反射するミラーと、を含む。ミラーで反射したレーザー光が光軸に沿って進行して試料に照射される。
【0017】
上記構成によれば、鏡筒内にレーザー光生成部を配置するスペースがない場合でもレーザー光照射部を配置できる。また、レーザー光照射部が汚染物質の放出源となることを回避できる。ミラーで反射したレーザー光の進路が電子線の進路に近付くので、観察部位に対してレーザー光を確実に照射できる。
【0018】
実施形態に係る透過電子顕微鏡は、電子線入口、電子線出口、及び、試料を収容する試料空間を有する対物レンズを含む。ミラーは、対物レンズに固定されている。ミラーで反射したレーザー光が電子線入口を介して対物レンズの内部に進入する。
【0019】
上記構成によれば、ミラーユニットと試料との間の距離を小さくできる。また、ミラーユニットの位置決め誤差を低減でき、又は、ミラーユニットの調整が容易となる。
【0020】
(2)実施形態の詳細
図1には、第1実施形態に係る電子顕微鏡が示されている。図示された電子顕微鏡は、走査透過電子顕微鏡(STEM)である。走査透過電子顕微鏡は、収束照射モード及び平行照射モードを備える。収束照射モードでは、試料上において収束する電子ビーム(電子線)が走査され、試料を透過した電子が検出される。平行照射モードでは、試料に対して広がりをもった電子ビーム(電子線)が照射され、試料を透過した電子が検出される。実施形態においては、平行照射モードにおいて、試料を透過した電子の検出により、カメラ画像が生成される。なお、収束照射モードにおいて、試料で回折又は散乱した電子の検出により、カメラ画像が生成されてもよい。
【0021】
走査透過電子顕微鏡は、測定部10及び情報処理部12を有する。測定部10は、鏡筒13及び鏡筒ベース14を有する。それらの内部を真空にするための真空設備が設けられているが、その図示は省略されている。情報処理部12は、主制御部36、レーザー光照射制御部38及びカメラコントローラ94を有する。
【0022】
鏡筒13内には、光軸15に沿って、幾つかのユニットが配置されている。具体的には、鏡筒13内には、電子銃16、コンデンサーレンズ18、対物レンズ20、結像レンズ22(投影レンズ)、等が設けられている。光軸15は、電子線照射における中心軸である。図1においては、鏡筒13内の各構成要素が模式的に表現されている。
【0023】
電子銃16により電子線が生成される。生成された電子線は、コンデンサーレンズ18を介して、対物レンズ20内へ進入する。コンデンサーレンズ18は、複数のレンズ要素により構成され、電子線に対して、選択されたモードに応じた光学的作用を及ぼす。
【0024】
対物レンズ20内に試料28が配置されている。試料28は、例えば、薄膜状(薄片状)の形態を有する。粉体等が試料28とされてもよい。試料ホルダ26によって、試料28が保持されている。試料28の位置及び姿勢は、図示されていない機構によって調整される。
【0025】
対物レンズ20は、ヨーク44及びコイル46を有する。ヨーク44に対してポールピース(磁極片)が組み込まれている。図示された構成例では、対物レンズ20内の上部に試料空間が存在し、その試料空間内に試料28が配置されている。対物レンズ20内において、ポールピースの位置は一方側(上側)に偏移しており、一方、コイル46の位置は他方側(下側)へ偏移している。もっとも、対物レンズ20内における上下方向の中間位置に試料空間が設定されてもよい。対物レンズ20は、光軸15に沿って形成された通路21を有し、通路21の上端が電子線入口21Aであり、通路21の下端が電子線出口21Bである。コンデンサーレンズ18と対物レンズ20との間に収差補正器等が設けられてもよい。鏡筒13内に設けられた、電子銃16から対物レンズ20までの構成が電子線照射部に相当する。
【0026】
結像レンズ22は、複数のレンズ要素により構成される。鏡筒ベース14の内部は観察室24であり、そこには複数の検出器が配置されている。図1においては、カメラ92以外の検出器の図示が省略されている。
【0027】
実施形態に係るカメラ92は、シンチレータパネル及び二次元検出器を有する。シンチレータパネルは、電子を光子に変換するものである。これにより生じた光子が二次元検出器により検出される。二次元検出器は、C-MOS検出器、CCD検出器等により構成される。カメラ92として、電子を直接検出する二次元検出器を備えたカメラを用いてもよい。
【0028】
実施形態において、カメラ92は、露光期間ごとに、フレームデータを生成する。具体的には、カメラ92においては、ラインデータを単位としたデータ出力が繰り返し実行されている。すなわち、カメラ92では、電子の検出とデータ出力とが並行して実行されている。
【0029】
カメラコントローラ94は、カメラ92の動作を制御するものである。具体的には、カメラコントローラ94により、露光周期等のパラメータが定められる。露光周期に従って、時間軸上において複数の露光期間が設定される。カメラコントローラ94により、カメラ92からフレームデータが順次読み出される。
【0030】
カメラ92及びカメラコントローラ94は、上記の画像生成部90を構成する。画像生成部90により、複数の露光期間に対応した複数のフレームデータが生成され、複数のフレームデータに基づいて複数のカメラ画像が生成される。複数のカメラ画像により、カメラ画像列が構成される。カメラ画像列は、主制御部36に送られている。
【0031】
実施形態においては、カメラコントローラ94は、同期信号を生成する機能を有している。同期信号は、各露光期間における基準時(例えば露光開始タイミング)を表す同期パルスを有する。すなわち、同期信号は、複数の露光期間に対応する複数の同期パルスを有する。同期信号は、必要に応じて、レーザー光照射制御部38に送られる。
【0032】
実施形態に係る走査透過電子顕微鏡は、レーザー光照射設備(レーザー光照射部)30を備えている。レーザー光照射設備30は、試料に対してパルス列により構成されるレーザー光を照射するものである。試料を加熱しながら試料の観察を行いたい場合や、試料における光反応の観察を行いたい場合等において、試料に対してレーザー光が照射される。なお、レーザー光照射設備30において、連続波により構成されるレーザー光が生成されてもよい。
【0033】
レーザー光照射設備30は、レーザー光生成部32、及び、ミラーユニット34を有する。レーザー光生成部32において、パルス列により構成されるレーザー光が生成され、生成されたレーザー光が、ミラーユニット34が有するミラー面で反射し、反射後のレーザー光が試料28へ照射される。
【0034】
レーザー光生成部32は、鏡筒13の外部に設けられており、ミラーユニット34は鏡筒13の内部に設けられている。これによりレーザー光生成部32が汚染物質の放出源となってしまうことが防止されている。ミラーユニット34には、光軸に沿って微小の貫通孔が形成されており、その貫通孔を電子線が通過する。
【0035】
主制御部36は、走査透過電子顕微鏡を構成する各構成要素の動作を制御するものである。主制御部36の制御の下、レーザー光照射制御部38が、レーザー光照射設備30におけるレーザー光生成部32の動作を制御する。レーザー光照射制御部38の制御により、レーザー光生成部32が、設定されたパルス周期、パルス幅及び波高値を有するパルス列を生成する。
【0036】
情報処理部12は、プログラムを実行するプロセッサを有する。プロセッサとして例えばCPUが挙げられる。主制御部36及びカメラコントローラ94の実体はプログラムである。主制御部36には、入力器40及び表示器42が接続されている。入力器40はキーボード等により構成され、表示器42はLCD等により構成される。入力器40を用いてユーザーにより、電子線照射条件、レーザー光照射条件及び撮影条件が設定される。レーザー光照射条件には、パルス周期、パルス幅、及び、パルス波高値が含まれる。撮影条件には、露光周期(又は露光期間)が含まれる。
【0037】
主制御部36は、画像処理機能を有する。主制御部36は、入力されるカメラ画像列に対して、必要な画像処理を適用する。その画像処理には、積算(移動平均処理)、FFT演算、等が含まれる。カメラ画像列に対するFFT演算によりFFT画像列が得られる。例えば、走査透過電子顕微鏡の調整段階において、試料に対するパルス列の照射を行いながら、カメラ画像列とFFT画像列とが並列表示される。
【0038】
図2には、対物レンズ20の上部が拡大断面図として示されている。対物レンズ20は、ヨーク44に組み込まれたポールピース48を有する。ポールピース48は、ギャップを介して互いに対向する上側部分48A及び下側部分48Bを有する。ギャップが試料収容空間49に相当する。上側部分48Aには光軸15に沿って通路64Aが形成され、下側部分48Bには光軸15に沿って通路64Bが形成されている。試料に照射する電子線が通路64A内を通過する。試料を透過した電子線(回折又は散乱した電子を含む)が通路64B内を通過する。
【0039】
試料ホルダ26は、ロッド52を有し、その先端に試料28が保持されている。ロッド52を介して、試料の位置及び姿勢を変更し得る。
【0040】
対物レンズ20とその上に設けられた部材(具体的にはコンデンサーレンズ18)との間には隙間54が存在し、その隙間54にミラーユニット34が設けられている。対物レンズ20の上に収差補正器が設けられる場合、対物レンズ20と収差補正装置との間にミラーユニット34が設けられる。
【0041】
ミラーユニット34は、ミラーブロック56及びミラーベース58により構成される。それらは例えばアルミニウム等の金属により構成される。ミラーブロック56は、ミラーベース58に固定されている。ミラーベース58がポールピース48の上側部分48Aに着脱可能に連結される。このように、ミラーユニット34が対物レンズ20における電子線入口又はその近傍に取り付けられている。
【0042】
ミラーブロック56は、貫通孔60を有する。貫通孔60は光軸15に沿って形成され、そこを電子線が通過する。ミラーブロック56は、傾斜面としてのミラー面62を有する。ミラー面62において、生成部からのレーザー光66Aが反射する。反射したレーザー光66Bは、通路64Aを経由して、試料28に照射される。
【0043】
図3には、レーザー光生成部32の構成例が示されている。鏡筒のハウジング84に対してボックス状のレーザー光生成部32が取り付けられている。ハウジング84は例えばステンレスにより構成される。ハウジング84の内部が真空空間であり、ハウジング84の外部が大気空間である。ハウジング84には、光学的透明性を有する窓86が設けられている。
【0044】
レーザー光生成部32は、レーザー光源68、ミラー70,72、ビームエキスパンダー74、ミラー76,78、光学レンズ80、可動ミラー82等を有する。レーザー光源68において、レーザー光が生成される。具体的には、レーザー光源68は、レーザー光として、パルス列を生成する。ビームエキスパンダー74は、レーザー光の断面サイズを拡大する作用を発揮する。光学レンズ80は、対物レンズ内の所定位置おいて又は試料表面上においてレーザー光の焦点が形成されるように、レーザー光に対する光学的作用を発揮する。可動ミラー82は、レーザー光の照射方向を微調整するためのミラーである。
【0045】
レーザー光生成部32内に、レーザー光を走査する機構を設けてもよいし、試料上におけるレーザー光の照射領域のサイズを可変する機構を設けてもよい。レーザー光源68の動作は、図1に示したレーザー光照射制御部38により制御される。
【0046】
図4には、第1動作例が示されている。図4は、照射制御及びカメラ動作制御の関係、具体的には、照射シーケンスと露光シーケンスの関係を示すものである。試料に対して電子線及びレーザー光のパルス列が同時に照射されている。
【0047】
(A)は、照射シーケンスすなわちレーザー光のパルス列を示している。(B)は、同期信号を示している。(C)は、露光シーケンスを示している。第1動作例では、同期信号を媒介として、照射シーケンスと露光シーケンスの同期が図られているが、同期信号を用いないで、それらのシーケンスを同期させてもよい。
【0048】
パルス列は、複数のパルス100により構成される。パルス周期τ1及びパルス幅Δτ1は、例えば、ユーザーにより設定される。パルス波高値h1も、例えば、ユーザーにより設定される。同期信号は、複数のスタートパルス102を有する。露光シーケンスは、時間軸上における複数の露光期間A1,A2,A3の連なりである。各露光期間A1,A2,A3の時間長はT1である。換言すれば、露光周期はT1である。露光期間は、露光開始から露光終了までの期間つまり1フレームデータを取得するための期間であって、シャッタ開放期間に相当するものである。
【0049】
実施形態においては、カメラにおいて電子の検出とラインデータ単位での読み出しとが並行に実施されており、各露光期間A1,A2,A3は不検出期間を有していない。但し、露光シーケンス内に複数の露光期間及び複数の読み出し期間が定められてもよい。複数の露光期間A1,A2,A3に対応する複数のフレームデータF1,F2,F3が生成され、それらに基づいてカメラ画像列が生成される。
【0050】
第1動作例においては、露光シーケンスにおける各露光期間の開始タイミングt1と、照射シーケンスにおける各期間の開始タイミングt2とが一致している。具体的には、各スタートパルス102の立ち上がり104をトリガとして、各パルス100が生成されている。照射シーケンスと露光シーケンスが同期している限りにおいて、すなわち、パルス列と複数の露光期間とが同期している限りにおいて、開始タイミングt1と開始タイミングt2とをずらしてもよい。
【0051】
試料に対するパルス列の照射により、試料において周期的な状態変化が生じ得る。例えば、試料が周期的に運動し、あるいは、試料の形態が周期的に変化する。第1動作例によれば、各露光期間において生じる試料の状態変化を揃えることができる。これにより、複数のカメラ画像の評価を適正に行うことが可能となる。
【0052】
なお、例えば、露光期間の可変が許容されている場合、実際の露光期間T1として、露光期間の最小値が設定されてもよい。その場合、最小値と同じ値がτ1に対して設定される。露光期間の最小値に基づいてパルス幅が決められてもよい。例えば、当該最小値の1/100をパルス幅としてもよい。その上で、実験により、最適なパルス波高値が特定されてもよい。もちろん、試料や観察目的等に応じて、各パラメータに対して適切な値が設定される。
【0053】
図5には、第2動作例が示されている。図5において、図4に示した要素と同様の要素には同一の符号が付してある。第1動作例と異なり、第2動作例では、各露光期間A1,A2,A3の中に不検出期間(ブランク期間)106が定められている。各不検出期間106は、各パルス照射期間に一致し又はそれを包含している。各不検出期間106の時間幅ΔT1は、パルス幅Δτ1以上である。第2動作例によれば、第1動作例により得られる利点の他、カメラにレーザー光が到達する場合でもレーザー光に起因する問題が生じないという利点を得られる。
【0054】
図6には、第3動作例が示されている。(A)はパルス列を示しており、(B)は露光シーケンスを示している。第3動作例では、同期信号は用いられていない。開始タイミングt1と開始タイミングt2にずれが生じている。しかし、パルス周期τ1と露光周期T1は一致している。よって、第3動作例においても、第1動作例において得られる利点と同様の利点を得られる。すなわち、複数の露光期間において生じる複数の試料状態変化を同じにすることができる。
【符号の説明】
【0055】
13 鏡筒、16 電子銃、20 対物レンズ、24 観察室、26 試料ホルダ、30 レーザー光照射設備、32 レーザー光生成部、34 ミラーユニット、38 レーザー光照射制御部、90 画像生成部、92 カメラ、94 カメラコントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6