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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042853
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ガス濃度検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01N21/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147762
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
(72)【発明者】
【氏名】市川 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直人
(72)【発明者】
【氏名】小松 泰直
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059GG02
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ13
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】検出ガスの漏洩検出などの精度を高める。
【解決手段】レーザ光を用いてガス濃度を検出するガス濃度検出システムは、所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出部110と、レーザ光で検出対象空間を走査させる走査部(仰角走査部120、雲台130)とを有するガス濃度検出装置100、および検出対象空間を通過するレーザ光を反射する反射体301を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いてガス濃度を検出するガス濃度検出システムであって、
所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、
上記レーザ光で検出対象空間を走査させる走査部と、
を有するガス濃度検出装置、および
上記検出対象空間を通過する上記レーザ光を反射する反射体を備え、
上記ガス濃度検出部は、上記受光信号に含まれる上記変調周波数の変調周波数信号で、上記受光信号に含まれる上記変調周波数の2倍の周波数の2倍周波数信号を除算して、検出ガスの濃度を検出することを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項2】
請求項1のガス濃度検出システムであって、
上記反射体は、上記レーザ光の走査方向に連続的に設けられていることを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項3】
請求項1のガス濃度検出システムであって、
上記反射体は、上記レーザ光の走査方向に離散的に設けられていることを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項4】
請求項3のガス濃度検出システムであって、
さらに、上記受光信号の強度、変調周波数信号のレベル、および/またはノイズレベルに基づいて、上記反射体の有無を判別する反射体判別部を備えたことを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項5】
請求項4のガス濃度検出システムであって、
さらに、上記反射体の有無の判別に基づいて、上記レーザ光の走査位置を検出することを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項6】
請求項4のガス濃度検出システムであって、
上記反射体判別部は、上記反射体の有無の判別結果に応じて、反射体の異常を報知することを特徴とするガス濃度検出システム。
【請求項7】
請求項4のガス濃度検出システムであって、
上記ガス濃度検出部は、上記反射体判別部によって反射体の存在が判別された場合にガス濃度を検出することを特徴とするガス濃度検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光を用いたガス濃度検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定波長のレーザ光がある種の気体に吸収されやすいことを利用してガスの有無や濃度を検出することができる。具体的には、例えば、検出ガスの吸収波長のレーザ光を所定の周波数の信号で周波数変調(および振幅変調)し、検出対象空間を通過させた光を検出して得られる信号に含まれる上記所定の周波数の信号fとその倍の周波数の信号2fを求め、信号2fを信号fで除算することによって、検出ガスの濃度を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これによって、光学系の受光効率や光源の出力が未知である場合や変動する場合でも、検出ガスの分圧光路長積のみに比例する信号を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-010877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように所定の周波数の信号と倍の周波数の信号とに基づいてガスの濃度を検出する手法では、光学系の受光効率や光源の出力が変動する場合などでも検出ガスの分圧光路長積のみに比例する信号を得ることは原理的には可能であるものの、実際には、種々の要因によって検出誤差を生じ得る。そのため、例えば検出ガスの漏洩を検出することは困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、検出ガスの漏洩検出などの精度をより容易に高め得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
レーザ光を用いてガス濃度を検出するガス濃度検出システムであって、
所定の変調周波数の変調信号で周波数変調されたレーザ光が検出対象空間を通過することにより得られた受光信号に基づいて検出ガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、
上記レーザ光で検出対象空間を走査させる走査部と、
を有するガス濃度検出装置、および
上記検出対象空間を通過する上記レーザ光を反射する反射体を備え、
上記ガス濃度検出部は、上記受光信号に含まれる上記変調周波数の変調周波数信号で、上記受光信号に含まれる上記変調周波数の2倍の周波数の2倍周波数信号を除算して、検出ガスの濃度を検出することを特徴とする。
【0007】
これにより、反射体でレーザ光を反射させると、受信信号のノイズ成分を減少させることなどができ、検出ガスの漏洩検出などの精度をより容易に高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出ガスの漏洩検出などの精度をより容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス濃度検出システムの概略構成を模式的に示す斜視図である。
図2】ガス濃度検出部の要部の機能的構成を示すブロック図である。
図3】受光信号の例を示すグラフである。
図4】ルーバー状の反射板の例を示す模式図である。
図5】反射板の設置例を模式的に示す斜視図である。
図6】他の反射板の設置例を模式的に示す斜視図である。
図7】さらに他の反射板の設置例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、メタンガスの濃度を検出して漏洩などを検知する検出システムの例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0011】
ガス濃度検出システムは、図1に示すように、ガス濃度検出装置100と、これに対してガスの検出対象空間を介して配置された反射体301とを備えて構成されている。ガスの検出対象空間は、例えばバルブ401aを有する配管401が設置された屋内外の空間などである。
【0012】
上記ガス濃度検出装置100は、ガス濃度検出部110が仰角走査部120(走査部)に仰角方向に走査駆動可能に設けられるとともに、仰角走査部120は、雲台130(走査部)に鉛直軸周りに走査駆動可能に設けられている。なお、走査方向はこれに限らず何れか一方でもよいし、他の走査方向でもよく、検出対象空間の所望の領域を走査可能に設けられればよい。以下の説明では、仰角は一定にして、鉛直軸周りに所定の角度の範囲で回転させて走査したときにメタンガスの濃度を検出する例を説明する。
【0013】
ガス濃度検出部110は、例えばメタンガスの吸収波長のレーザ光を10kHzの信号で変調して集光レンズ111を介して出射し、種々の反射物で反射して戻る光、すなわち検出対象空間を通過した光を再度集光レンズ111を介して受光し、メタンガスの濃度(分圧を光路に沿って積分した分圧光路長積)を求めるようになっている。より詳しくは、例えば図2に示すように構成されている。
【0014】
レーザ発振器201は、例えば半導体レーザ素子によってメタンの吸収波長を中心波長とする赤外線を出射するようになっている。
【0015】
変調部202は、上記レーザ光を例えば10kHzの変調信号で周波数変調、または周波数変調および振幅変調するようになっている。
【0016】
受光器203は、上記のように変調され、検出対象空間を通過して戻るレーザ光を受光して受光信号を出力するようになっている。
【0017】
変調周波数信号復調部204、および2倍周波数信号復調部205は、それぞれ位相敏感検波などによって上記受光信号に含まれる上記変調周波数(10kHz)の変調周波数信号、および上記変調周波数の2倍の周波数(20kHz)の2倍周波数信号を抽出して出力するようになっている。すなわち、種々の周波数のレーザ光がメタンの存在する空間を通過して受光器203で受光されると、受光器203から出力される受光信号(例えば電圧)は、図3に曲線Aで示すようになる。そこで、10kHzの変調信号によって、レーザ発振器201が発信するレーザ光を同図に曲線Bで示すように周波数が変動するよう
に周波数変調すると、受光器203から出力される受信信号には、周波数が20kHzで電圧が同図に曲線Cで示すように変化する2倍周波数信号が含まれる。また、受光器203から出力される受信信号には周波数が10kHzの変調周波数信号も含まれる。そこで、変調周波数信号復調部204、および2倍周波数信号復調部205によって、例えば変調部202から出力される変調信号の参照によって周波数敏感検波を行うことなどにより上記変調周波数信号、および2倍周波数信号が抽出される。
【0018】
除算部206は、上記2倍周波数信号を変調周波数信号で除算(振幅比を算出)して、除算信号を出力するようになっている。すなわち、上記2倍周波数信号は、レーザ光の光路中のメタンガスの濃度に応じたものとなる一方、変調周波数信号はメタンガスの影響は受けないので、上記除算演算によって、光学系の受光効率や光源の出力の変動、反射率などには、原理的に、影響されることなくメタンガスの濃度が検出される。
【0019】
上記除算部206から出力される除算信号では、上記のように光学系の受光効率や光源の出力の変動、反射率などの影響は原理的に除去され得るが、反射物までの距離が大幅に長かったり反射率が非常に小さかったりする場合には、信号強度が小さくなるため、ノイズの影響が大きくなる。そのような場合に、適度な反射率を有する反射体301を設置することによって、S/N比を大きくして検出精度を高めることができる。
【0020】
反射体301は、例えば、入射方向に反射光が出射するマイクロプリズム反射シートなどを用いることができるが、特に限定されず、必要な反射率が得られればよい。反射体301の構成としては、構造物の表面や壁面にシート状の反射体301を貼り付けるなどしてもよいし、反射体301自体が例えば看板のような形態などの構造物様に構成されたりしてもよい。また、屋外に設けられる場合に、例えば30cm以上程度の幅のパネルを張り付けるなどする場合、強風によってはがれたりしにくいように、表面にところどころ穴をあけることや、また、例えば図4(a)(b)に示すようにルーバー状にすることによって風の抵抗を減少させつつ光を反射するような構成にしてもよい。ここで、上記のようにルーバー状にする場合でも、入射方向に反射光が出射する反射体301であれば、反射面の傾きの影響は小さいと考えられ、また、乱反射するタイプの反射体301などでも、例えば30°ぐらいの傾きであれば、3~4割程度の反射率を得ることは容易にできる。
【0021】
反射体301の配置としては、例えば屋内の例を図5に示すように、レーザ光の走査方向(この例では水平方向)に帯状に連続的に設け、走査方向の広い範囲に亘って反射率を高め得るようにしてもよい。また、図6に示すように、レーザ光の走査方向に離散的に設けてもよい。これによって、反射体301におけるレーザ光の走査方向の長さを短くして、反射体301の材料を節減することや、防風性を高めたり設置を容易にしたりすることができる。また、反射体301の材料を抑えつつ、レーザ光の走査方向に直交する方向の長さを長くして、レーザ光の高さ方向の照射位置に対する許容範囲を広くすることも容易になる。
【0022】
反射体301は、また、図7に示すように、例えば漏洩を検知すべき対象(例えば配管401に設置されたバルブ401a付近)の近傍など、限定的な場所に設置するなどしてもよい。このような場合、受信信号の強度やノイズレベル(S/N比等)などは、レーザ光の反射位置が反射体301かどうかによって異なることがある。そこで、受光信号の強度、変調周波数信号のレベル、および/またはノイズレベルと所定の閾値との比較等に基づいて反射体301の有無を判別する反射体判別部をガス濃度検出部110などに設け、判別結果に応じた処理を行わせるようにしてもよい。特に、変調周波数信号のレベルは、反射体301の有無に応じた変化が比較的大きいので、これに基づく判別は好適である。
【0023】
具体的には、例えば、ガス濃度検出装置100における精確な走査位置の制御が成されない場合などでも、反射体301の有無の判別に基づいて、レーザ光の走査位置を検出し、ガスの漏洩箇所を特定することなどができる。上記レーザ光の走査位置としては、反射体301の絶対座標などの位置が把握されている場合には、絶対的な位置が求められるようにしてもよいし、絶対的な位置は不明でも何れかの反射体301またはバルブ401aなどが存在する位置等として把握されるのでもよい。
【0024】
また、ガス濃度検出装置100の走査位置と反射体301の設置位置との対応が把握されている場合には、反射体301の有無の判別結果に応じて、反射体301が消失していたり、破損や汚損していたりする異常を検出できるので、その旨を報知させることなどもできる。
【0025】
また、ガス濃度検出部110は、反射体判別部によって反射体301の存在が判別された場合にガス濃度を検出するようにすれば、ガス濃度検出装置100の走査位置が制御(管理)されない場合でも、反射体301を設置することによって、ガスの漏洩検出箇所を設定することができる。
【0026】
これらのように、受信信号の強度やノイズレベルに基づいて反射体301の有無が判別されることによって、ガス濃度の検出位置をプログラムしたりしなくても、ガス濃度の検出位置を設定することなどが容易にできる。すなわち、レーザ光を1次元または2次元的にスキャンする際に、あらかじめ検知したい場所(バルブ401a付近の位置など)の背景に反射体301を配置しておけば、あらかじめどの座標位置でのデータをとるかを決めておかなくても、雑音レベルの大小によって検知すべき信号を容易に抽出することなどができる。
【0027】
上記のように、反射体301を設置することにより、反射体301でレーザ光を反射させると、受信信号のノイズ成分を劇的に減少させることなどができ、遠距離などであっても高いS/N比で漏洩検査が可能になり検出ガスの漏洩検出などの精度をより容易に高めることができる。また、検知する範囲も広くすることができるので、1台の装置で検知できる敷地の範囲を広くすることなども可能になる。なお、例えばガス濃度検出装置100から反射体301までの距離が概ね5m以下などになると受光信号が強くなりすぎて検知信号が飽和してしまい、正確に漏洩量が計測できないこともあり得る。そのような場合には反射体301を設置せず通常の計測(任意の反射物)を行えばよい。
【符号の説明】
【0028】
100 ガス濃度検出装置
110 ガス濃度検出部
111 集光レンズ
120 仰角走査部
130 雲台
201 レーザ発振器
202 変調部
203 受光器
204 変調周波数信号復調部
205 倍周波数信号復調部
206 除算部
301 反射体
401 配管
401a バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7