(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042856
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】表面検査支援装置及び表面検査支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147766
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 琴音
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB02
2G051BA08
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC07
2G051CC09
2G051CD02
2G051ED21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品の表面や塗装面の光学異方性を効率よく検査する。
【解決手段】部品表面に光を照射する光源と、部品表面で反射された正反射光及び拡散反射光が入射する第1凸レンズと、第1凸レンズから出射した正反射光を透遮光するための正反射用領域、及び拡散反射光を透遮光するための複数の拡散反射用領域が形成されたフィルタ面を有し、複数の拡散反射用領域がそれぞれフィルタ面の面内で角度を変えて帯状に形成されているフィルタと、フィルタの正反射用領域及び複数の拡散反射用領域を透光状態又は遮光状態に切り換える切換制御を実行して、正反射用領域に対応する正反射光と複数の拡散反射用領域それぞれに対応する拡散反射光とを順にフィルタを透過させ、フィルタを透過した正反射光及び拡散反射光を受光し、正反射光、及び複数の拡散反射光に基づいて得られる、部品表面の光拡散ベクトル方向に係る情報を、所定の表示部に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、
前記部品表面に光を照射する光源と、
前記光源からの光を受けて前記部品表面が反射した正反射光及び拡散反射光が入射する第1凸レンズと、
前記第1凸レンズから出射した正反射光を透遮光するための正反射用領域、及び前記第1凸レンズから出射した拡散反射光を透遮光するための複数の拡散反射用領域が形成されたフィルタ面を有し、前記複数の拡散反射用領域がそれぞれ前記フィルタ面の面内で角度を変えて帯状に形成されているフィルタと、
前記フィルタの正反射用領域及び複数の拡散反射用領域を透光状態又は遮光状態に切り換える切換制御を実行して、前記正反射用領域に対応する正反射光と前記複数の拡散反射用領域それぞれに対応する拡散反射光とを順に前記フィルタを透過させるフィルタ制御部と、
前記フィルタを透過した正反射光及び拡散反射光が入射する第2凸レンズと、
前記第2凸レンズから出射した正反射光及び拡散反射光を受光する撮像センサと、
前記フィルタの正反射用領域を経て前記撮像センサに到達した正反射光、及び前記フィルタの各拡散反射用領域を経て前記撮像センサに到達した複数の拡散反射光に基づいて得られる、前記部品表面の光拡散ベクトル方向に係る情報を、所定の表示部に表示する表示制御を実行する表示制御部と
を備えることを特徴とする表面検査支援装置。
【請求項2】
前記第1凸レンズ及び前記第2凸レンズによりテレセントリック光学系が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項3】
前記フィルタは、電気制御によって透光状態と遮光状態とを切換可能な液晶型の調光フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項4】
前記複数の拡散反射用領域は、前記第1凸レンズ、前記第2凸レンズ及び前記撮像センサの光軸に垂直な前記フィルタ面の面内において、前記正反射用領域を中心に所定角度毎に放射状に形成された帯状領域であることを特徴とする請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項5】
前記フィルタ面の面内において前記正反射用領域の中心を通る直線を0度として、0度、45度、90度、135度の各方向に前記拡散反射用領域が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の表面検査支援装置。
【請求項6】
前記フィルタ制御部は、隣接する2つの拡散反射用領域の一部が前記正反射用領域近傍で重複する領域をオーバーラップ領域として、前記隣接する2つの拡散反射用領域それぞれを透光状態に切り換える際に前記オーバーラップ領域を透光状態に切り換えることを特徴とする請求項4に記載の表面検査支援装置。
【請求項7】
前記フィルタの複数の拡散反射用領域それぞれを透過した拡散反射光を受けて前記撮像センサが生成する複数の画像に基づいて、前記拡散反射光の光拡散ベクトル方向を算出する光拡散ベクトル方向算出部と、
前記光拡散ベクトル方向算出部が算出した光拡散ベクトル方向を示す画像を生成する画像生成部と
をさらに備え、
前記表示制御部は、前記画像生成部が生成した画像の表示制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項8】
前記光拡散ベクトル方向算出部は、複数の拡散反射用領域から得られた各画像の対応する画素位置の画素値に基づいて、前記画素位置における拡散反射光の光拡散ベクトル方向を算出することを特徴とする請求項7に記載の表面検査支援装置。
【請求項9】
前記画像生成部は、光拡散ベクトルを線分で結ぶことによって、光拡散ベクトル方向を示す画像を生成することを特徴とする請求項7に記載の表面検査支援装置。
【請求項10】
前記光拡散ベクトル方向算出部は、前記フィルタの正反射用領域を透過した正反射光の強度が所定の閾値以上である画素位置で光拡散ベクトル方向を算出することを特徴とする請求項7に記載の表面検査支援装置。
【請求項11】
前記光源からの光の照射方向を変更するために前記光源の位置及び/又は角度を変更する制御を実行する光源制御部と、
前記光源から照射された光を受ける方向を変更するために前記部品の位置及び/又は角度を変更する制御を実行する部品制御部と
の少なくともいずれか一方をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の表面検査支援装置。
【請求項12】
部品表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援方法であって、
光源から前記部品表面に光を照射する工程と、
前記光源からの光を受けて前記部品表面で反射された正反射光及び拡散反射光を第1凸レンズに受ける工程と、
前記第1凸レンズから出射した正反射光を透遮光するための正反射用領域、及び前記第1凸レンズから出射した拡散反射光を透遮光するための複数の拡散反射用領域が形成されたフィルタ面を有し、前記複数の拡散反射用領域がそれぞれ前記フィルタ面の面内で角度を変えて帯状に形成されているフィルタにおいて、前記正反射用領域及び前記複数の拡散反射用領域を透光状態又は遮光状態に切り換える切換制御を実行して、前記正反射用領域に対応する正反射光と前記複数の拡散反射用領域それぞれに対応する拡散反射光とを順に前記フィルタを透過させる工程と、
前記フィルタを透過した正反射光及び拡散反射光を第2凸レンズに受ける工程と、
前記第2凸レンズから出射した正反射光及び拡散反射光を撮像センサに受ける工程と、
前記フィルタの正反射用領域を経て前記撮像センサに到達した正反射光、及び前記フィルタの各拡散反射用領域を経て前記撮像センサに到達した複数の拡散反射光に基づいて得られる、前記部品表面の光拡散ベクトル方向に係る情報を、所定の表示部に表示する工程と
を含むことを特徴とする表面検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品の表面の検査を支援するための表面検査支援装置及び表面検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野で、部品の表面を検査する表面検査が行われている。例えば、射出成形部品の製造時に、部品の表面やその塗装面の品質に問題がないかを調べる部品検査が行われる。金型を利用して射出成形部品を製造する際、金型内の溶融樹脂の合流部分が線状の跡となって部品表面に残ることがある。この跡はウェルドラインと呼ばれ、成形不良とみなされる場合がある。ウェルドラインがあると部品表面に光学異方性が生じ、見る角度によって色合いが異なって見えるため、外観不良とみなされる場合もある。ウェルドラインによって部品表面に光学異方性が生ずることから、部品表面の光学異方性に基づいてウェルドラインの有無、すなわち成形不良や外観不良の有無を調べる部品検査を行うこができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、レンズ及びカラーフィルタを含むテレセントリック光学系を利用して、物体表面における光の散乱角を調べる技術が開示されている。カラーフィルタは、透過可能な光の波長域が異なる同心円状の複数の領域から構成されており、物体表面に白色光を照射して撮像すると、光の散乱角に応じて撮像画像に表れる光線の色が変化する。撮像画像に表れる光の色に基づいて散乱角を特定することにより、物体表面における光学異方性の有無を調べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、同心円状に形成されたフィルタ領域を利用して光の散乱角を調べるもので、光のベクトル方向を調べるものではない。部品表面で反射された拡散反射光のベクトル方向を光拡散ベクトル方向として特定することができれば、ウェルドラインの位置や形状に係る有用な情報として検査に利用することができる。このため、光拡散ベクトル方向を特定可能な、効率のよい光学異方性の検査を実現することが望まれていた。
【0006】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、部品の表面や塗装面の光学異方性を効率よく検査することができる表面検査支援装置及び表面検査支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る表面検査支援装置は、部品表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援装置であって、前記部品表面に光を照射する光源と、前記光源からの光を受けて前記部品表面で反射された正反射光及び拡散反射光が入射する第1凸レンズと、前記第1凸レンズから出射した正反射光を透遮光するための正反射用領域、及び前記第1凸レンズから出射した拡散反射光を透遮光するための複数の拡散反射用領域が形成されたフィルタ面を有し、前記複数の拡散反射用領域がそれぞれ前記フィルタ面の面内で角度を変えて帯状に形成されているフィルタと、前記フィルタの正反射用領域及び複数の拡散反射用領域を透光状態又は遮光状態に切り換える切換制御を実行して、前記正反射用領域に対応する正反射光と前記複数の拡散反射用領域それぞれに対応する拡散反射光とを順に前記フィルタを透過させるフィルタ制御部と、前記フィルタを透過した正反射光及び拡散反射光が入射する第2凸レンズと、前記第2凸レンズから出射した正反射光及び拡散反射光を受光する撮像センサと、前記フィルタの正反射用領域を経て前記撮像センサに到達した正反射光、及び前記フィルタの各拡散反射用領域を経て前記撮像センサに到達した複数の拡散反射光に基づいて得られる、前記部品表面の光拡散ベクトル方向に係る情報を、所定の表示部に表示する表示制御を実行する表示制御部とを備える。
【0008】
上記構成において、前記第1凸レンズ及び前記第2凸レンズによりテレセントリック光学系が構成されていてもよい。
【0009】
上記構成において、前記フィルタは、電気制御によって透光状態と遮光状態とを切換可能な液晶型の調光フィルタであってもよい。
【0010】
上記構成において、前記複数の拡散反射用領域は、前記第1凸レンズ、前記第2凸レンズ及び前記撮像センサの光軸に垂直な前記フィルタ面の面内において、前記正反射用領域を中心に所定角度毎に放射状に形成された帯状領域であってもよい。
【0011】
上記構成において、前記フィルタ面の面内において前記正反射用領域の中心を通る直線を0度として、0度、45度、90度、135度の各方向に前記拡散反射用領域が形成されていてもよい。
【0012】
上記構成において、前記フィルタ制御部は、隣接する2つの拡散反射用領域の一部が前記正反射用領域近傍で重複する領域をオーバーラップ領域として、前記隣接する2つの拡散反射用領域それぞれを透光状態に切り換える際に前記オーバーラップ領域を透光状態に切り換えてもよい。
【0013】
上記構成において、前記フィルタの複数の拡散反射用領域それぞれを透過した拡散反射光を受けて前記撮像センサが生成する複数の画像に基づいて、前記拡散反射光の光拡散ベクトル方向を算出する光拡散ベクトル方向算出部と、前記光拡散ベクトル方向算出部が算出した光拡散ベクトル方向を示す画像を生成する画像生成部とをさらに備え、前記表示制御部は、前記画像生成部が生成した画像の表示制御を実行してもよい。
【0014】
上記構成において、前記光拡散ベクトル方向算出部は、複数の拡散反射用領域から得られた各画像の対応する画素位置の画素値に基づいて、前記画素位置における前記拡散反射光の光拡散ベクトル方向を算出してもよい。
【0015】
上記構成において、前記画像生成部は、光拡散ベクトルを線分で結ぶことによって、光拡散ベクトル方向を示す画像を生成してもよい。
【0016】
上記構成において、前記光拡散ベクトル方向算出部は、前記フィルタの正反射用領域を透過した正反射光の強度が所定の閾値以上である画素位置で光拡散ベクトル方向を算出してもよい。
【0017】
上記構成において、前記光源からの光の照射方向を変更するために前記光源の位置及び/又は角度を変更する制御を実行する光源制御部と、前記光源から照射された光を受ける方向を変更するために前記部品の位置及び/又は角度を変更する制御を実行する部品制御部との少なくともいずれか一方をさらに備えていてもよい。
【0018】
本開示に係る表面検査支援方法は、部品表面の光学異方性の検査を支援する表面検査支援方法であって、光源から前記部品表面に光を照射する工程と、前記光源からの光を受けて前記部品表面で反射された正反射光及び拡散反射光を第1凸レンズに受ける工程と、前記第1凸レンズから出射した正反射光を透遮光するための正反射用領域、及び前記第1凸レンズから出射した拡散反射光を透遮光するための複数の拡散反射用領域が形成されたフィルタ面を有し、前記複数の拡散反射用領域がそれぞれ前記フィルタ面の面内で角度を変えて帯状に形成されているフィルタにおいて、前記正反射用領域及び前記複数の拡散反射用領域を透光状態又は遮光状態に切り換える切換制御を実行して、前記正反射用領域に対応する正反射光と前記複数の拡散反射用領域それぞれに対応する拡散反射光とを順に前記フィルタを透過させる工程と、前記フィルタを透過した正反射光及び拡散反射光を第2凸レンズに受ける工程と、前記第2凸レンズから出射した正反射光及び拡散反射光を撮像センサに受ける工程と、前記フィルタの正反射用領域を経て前記撮像センサに到達した正反射光、及び前記フィルタの各拡散反射用領域を経て前記撮像センサに到達した複数の拡散反射光に基づいて得られる、前記部品表面の光拡散ベクトル方向に係る情報を、所定の表示部に表示する工程とを含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法を利用すれば、部品の表面や塗装面の光学異方性を調べて光拡散ベクトル方向に係る情報を表示部に表示させることができるので、効率よく部品を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、表面検査支援装置の構成例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、フィルタの構成を説明するための図である。
【
図3】
図3は、フィルタの制御方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、フィルタの他の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、撮像カメラによる正反射光の撮像方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、撮像カメラによる拡散反射光の撮像方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、検査対象物表面の検査画像を取得する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表面検査支援装置が生成する光拡散ベクトル方向画像の例を説明するための図である
【
図9】
図9は、表面検査支援装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る表面検査支援装置10の構成を説明するための図である。表面検査支援装置10は、光源15から検査対象物100に光を照射して、表面Sで反射された正反射光及び拡散反射光を、物体側テレセントリック性を有する撮像カメラ16に受光する。表面検査支援装置10は、撮像カメラ16に受光した正反射光及び拡散反射光に基づいて、表面Sにおける拡散反射光のベクトル方向を示す光拡散ベクトル方向を算出し、算出した光拡散ベクトル方向に関する情報を表示部12に表示することができる。検査対象物100の種類及び検査目的は特に限定されないが、例えば、樹脂成形部品を検査対象物100として、表面Sに生じたウェルドラインを調べるために検査が行われる。
【0022】
図1に示すように、表面検査支援装置10は、光源15及び撮像カメラ16を有する。光源15は、検査対象物100の表面Sに平行光を照射する白色光源である。光源15、検査対象物100の表面S、及び撮像カメラ16は、光源15から照射されて検査対象物100の表面Sで反射された正反射光が、撮像カメラ16の光軸に対して平行になる位置関係で配置されている。
【0023】
撮像カメラ16は、大口径の凸レンズ20と、凸レンズ20の像側焦点位置に配置されたフィルタ30と、フィルタ30を透過した光を受けて撮像する撮像センサ40とを含む。撮像カメラ16は、凸レンズ20を第1の凸レンズとして、さらに、フィルタ30を透過した光を撮像センサ40に結像する第2の凸レンズである絞り凸レンズ50を含むが(
図5参照)、これについては後述する。表面検査支援装置10は、撮像カメラ16の光学系が、物体側テレセントリック光学系を構成し、検査対象物100の表面Sを広範囲かつ詳細に検査できる点に1つの特徴を有している。
【0024】
凸レンズ20の大きさは検査対象物100の大きさ、形状、検査目的等に応じて決定されるが、例えば、直径数十センチ程度の大口径レンズが使用される。フィルタ30のサイズは、凸レンズ20に応じて決定されるが、例えば、直径数十センチの凸レンズ20に対して直径5~6cm程度のフィルタ30が使用される。なお、凸レンズ20及びフィルタ30の形状は円形に限定されず、矩形等の他の形状であってもよい。
【0025】
図1に示すように、表面検査支援装置10は、入力部11、表示部12、記憶部13及び制御部14を含む。入力部11は、マウス、キーボード等の入力装置で、指示操作等の各種情報の入力を受け付ける。表示部12は、液晶ディスプレイ等の表示装置で、検査結果等の各種情報を表示する。記憶部13は、ハードディスク装置、不揮発性メモリ等の記憶装置で、表面検査支援装置10の動作に必要な各種情報を記憶する。制御部14は、光源15、撮像カメラ16及び表面検査支援装置10を制御する。制御部14による制御により、本実施形態に記載する表面検査支援装置10の機能及び動作が実現されている。
【0026】
制御部14は、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c、表示制御部14d及びフィルタ制御部14eを含む。例えば、記憶部13が記憶するプログラムをCPUにロードして実行することによって、画像取得処理部14a、光拡散ベクトル方向算出部14b、画像生成部14c、表示制御部14d及びフィルタ制御部14eが実現される。
【0027】
画像取得処理部14aは、光源15及び撮像カメラ16を制御して、検査対象物100の表面Sを撮像した検査画像を取得する。画像取得処理部14aは、光源15から、検査対象物100に白色の平行光を照射させる。画像取得処理部14aは、検査対象物100の表面Sで反射された正反射光及び拡散反射光を撮像カメラ16に受けて、表面Sの検査画像を取得する。
【0028】
光拡散ベクトル方向算出部14bは、撮像カメラ16が撮像した検査画像に基づいて、検査対象物100の表面Sにおける光拡散ベクトル方向を算出する。光拡散ベクトル方向算出部14bは、正反射光の光量が所定の閾値以上である場合に、フィルタ30に形成された複数のフィルタ領域それぞれを透過した拡散反射光の光量に基づいて光拡散ベクトル方向を算出するが、詳細は後述する。
【0029】
画像生成部14cは、検査対象物100の表面Sにおける光拡散ベクトル方向に関する画像を生成する。例えば、画像生成部14cは、光拡散ベクトル方向算出部14bが検査画像に基づいて算出した複数の光拡散ベクトルを線分で結ぶことにより、検査対象物100の表面Sにおける光拡散ベクトル方向を示す画像を生成する。
【0030】
表示制御部14dは、検査対象物100の表面Sにおける光拡散ベクトル方向に関する情報を表示部12に表示する表示制御を実行する。例えば、光拡散ベクトル方向算出部14bが算出した光拡散ベクトル方向に関する情報が表示部12に表示される。また、例えば、画像生成部14cが生成した光拡散ベクトル方向を示す画像が表示部12に表示される。
【0031】
フィルタ制御部14eは、フィルタ30のフィルタ面に形成された複数のフィルタ領域それぞれにおいて、凸レンズ20から入射する光の透遮光を切り換える制御を実行する。各フィルタ領域は、光を透過させない遮光状態又は光を透過させる透光状態に個別に切り換えられるように形成されている。表面検査支援装置10は、フィルタ30を固定したまま、各フィルタ領域の透遮光をフィルタ制御部14eによって制御することにより、検査対象物100の表面Sで反射された反射光のうちフィルタ30を透過させる反射光を選択できる点に1つの特徴を有している。
【0032】
フィルタ30の制御は、フィルタ全面を通常は透光状態にして、所望の反射光が透過するフィルタ領域を除いて他の領域を遮光状態に切り換えることによって行ってもよいし、通常はフィルタ全面を遮光状態にして、所望の反射光が透過するフィルタ領域を透光状態に切り換えることによって行ってもよい。本実施形態では、通常は全面が遮光状態にあるフィルタ30で、各フィルタ領域を個別に透光状態に切り換えることにより、所望の反射光だけを選択的にフィルタ30を透過させる場合を例に説明を続ける。
【0033】
次に、フィルタ30について説明する。
図2は、フィルタ30の構成を説明するための図である。
図2に示すように、光軸(Z軸)に直交するフィルタ30のフィルタ面に、複数のフィルタ領域130、140(140a~140d)、150(150a~150h)が形成されている。
図2では、3種類のフィルタ領域130、140、150それぞれの形状が分かるように、フィルタ領域130、140b、150bに異なる斜線を付してフィルタ形状を示している。なお、
図2~
図7には、各図に示す構成の位置関係が分かるように、撮像カメラ16の光軸方向をZ軸方向として、直交するXYZ座標軸を示している。
【0034】
フィルタ30は、透明電極が設けられた透明板の間に液晶材料が封入された薄板形状を有する。フィルタ30は、透明電極への印加電圧を制御して、液晶材料の配列状態を変更することによって、透光状態と遮光状態とを切り換えることができる電気制御式の調光フィルタである。
図2に示す例では、外形が円形のフィルタ30を示しているが、本実施形態で説明するようにフィルタ30を制御することができれば、フィルタ30の形状、材質及び構成は特に限定されない。
【0035】
フィルタ30には、各フィルタ領域130、140、150に対応する透明電極が設けられている。フィルタ制御部14eは、各透明電極に印加する電圧を制御することによって、各フィルタ領域130、140、150の透光状態と遮光状態とを切り換える。フィルタ面におけるフィルタ領域130、140、150以外の領域は常に遮光状態になっている。
【0036】
フィルタ30に形成されたフィルタ領域130、140、150には、正反射用領域130と、拡散反射用領域140と、オーバーラップ領域150とが含まれる。フィルタ30のフィルタ面における中心部分に、検査対象物100の表面Sで反射された正反射光を透遮光するための正反射用領域130が形成されている。
【0037】
検査対象物100の表面Sで反射された拡散反射光を透遮光するための帯形状の拡散反射用領域140は、フィルタ面内において角度を変えて複数形成されている。具体的には、正反射用領域130を中心として、その周囲に、複数の拡散反射用領域140(140a~140d)が放射状に所定の角度間隔で形成されている。
【0038】
拡散反射用領域140を正反射用領域130に接する位置までの帯形状とした場合、正反射用領域130の近傍で、隣接する2つの拡散反射用領域140の一部が重なる領域が発生する。オーバーラップ領域150は、この重なる領域に基づいて、全てのオーバーラップ領域150が同一面積となるように形成されている。オーバーラップ領域150は、拡散反射用領域140とは別に、その透遮光を制御できるようになっている。
【0039】
拡散反射用領域140は、フィルタ面内において正反射用領域130を通る直線を0度として、45度の等角度間隔で、0度、45度、90度、135度の各方向に形成されている。具体的には、正反射用領域130の中心をフィルタ面(XY平面)の原点、X軸正方向を0度、Y軸正方向を90度とした場合、原点を通る0度、45度、90度、135度の各方向に拡散反射用領域140a、140b、140c、140dが形成されている。各拡散反射用領域140a~140dは、正反射用領域130を挟んでその両側に配置された五角形形状の2つの領域から成る。以下、拡散反射用領域140a~140dを、それぞれ0度、45度、90度、135度の拡散反射用領域と記載し、各拡散反射用領域140a~140dを透過する拡散反射光それぞれを0度、45度、90度、135度の拡散反射光と記載する場合がある。
【0040】
フィルタ制御部14eは、フィルタ30の全面で光を遮光する遮光状態から、正反射用領域130、0度の拡散反射用領域140a、45度の拡散反射用領域140b、90度の拡散反射用領域140c、135度の拡散反射用領域140dをそれぞれ順に透光状態に切り換える。これにより、表面検査支援装置10は、撮像センサ40によって、正反射光、0度の拡散反射光、45度の拡散反射光、90度の拡散反射光、135度の拡散反射光を個別に撮像することができる。
【0041】
撮像センサ40が撮像する拡散反射光の光量は、光拡散ベクトル方向算出部14bによる光拡散ベクトル方向の算出に利用される。このため、各角度の拡散反射光を透過させるフィルタ領域の面積を同一にすることが好ましい。
図2に示す各拡散反射用領域140a~140dは、同一形状かつ同一面積を有し、正反射用領域130周りに回転させたときに重なり合う位置関係で形成されている。フィルタ面内で、正反射用領域130を中心として、拡散反射用領域140aを、Z軸周りの反時計方向に、45度回転してできる領域が拡散反射用領域140b、90度回転してできる領域が拡散反射用領域140c、135度回転してできる領域が拡散反射用領域140dである。
【0042】
図2に示す各オーバーラップ領域150a~150hも同一形状かつ同一面積を有し、正反射用領域130を中心としてZ軸周りに回転させたときに重なり合う位置関係となっている。フィルタ制御部14eは、各拡散反射用領域140a~140dを透光状態に切り換える際に、オーバーラップ領域150a~150hの透遮光も制御することができる。
【0043】
図3は、フィルタ30の制御方法を説明するための図である。
図3では、遮光状態にある他のフィルタ領域と区別するため、透光状態のフィルタ領域を斜線で示している。撮像センサ40によって正反射光を撮像する場合、フィルタ制御部14eは、
図3(a)に示すように、他のフィルタ領域は遮光状態のまま、正反射用領域130を透光状態にする。
【0044】
撮像センサ40によって0度の拡散反射光を撮像する場合、フィルタ制御部14eは、
図3(b)に示すように、他のフィルタ領域は遮光状態のまま、拡散反射用領域140aと、オーバーラップ領域150a、150b、150e、150fとを透光状態にする。
【0045】
撮像センサ40によって45度の拡散反射光を撮像する場合、フィルタ制御部14eは、
図3(c)に示すように、他の領域は遮光状態のまま、拡散反射用領域140bと、オーバーラップ領域150b、150c、150f、150gとを透光状態にする。
【0046】
同様に、90度の拡散反射光を撮像する場合は、拡散反射用領域140cと、オーバーラップ領域150c、150d、150g、150hとが透光状態になり、135度の拡散反射光を撮像する場合は、拡散反射用領域140dと、オーバーラップ領域150d、150e、150h、150aとが透光状態になる。
【0047】
このように、拡散反射用領域140を透光状態にする際、フィルタ制御部14eは、正反射用領域130と、透光状態にする拡散反射用領域140との間にあるオーバーラップ領域150も透光状態にする。これにより、表面検査支援装置10では、拡散反射用領域140のみを透光状態にする場合に比べて、オーバーラップ領域150を含むより広い領域を透光状態にして、拡散反射光を透過させることが可能となっている。
【0048】
ただし、オーバーラップ領域150を常に遮光状態とする態様であってもよい。フィルタ30における正反射用領域130及び拡散反射用領域140の大きさは、凸レンズ20のサイズ、光学特性等に応じて決定される。各拡散反射用領域140を透過する拡散反射光によって光拡散ベクトル方向を特定できる場合は、オーバーラップ領域150を常に遮光状態にしてもよい。
【0049】
また、
図2に示したフィルタ30の構成は一例であって、フィルタ30が
図2と異なる構成を有していてもよい。例えば、拡散反射用領域140が、45度毎ではなく、30度毎等の異なる角度間隔で形成される態様であってもよい。また、例えば、正反射用領域130、拡散反射用領域140及びオーバーラップ領域150が、
図2と異なる形状を有していてもよい。
【0050】
図4は、フィルタ30の他の構成例を示す図である。
図4では、3種類のフィルタ領域130、140、150それぞれの形状が分かるように、フィルタ領域130、140b、150bに異なる斜線を付してフィルタ形状を示している。
【0051】
正反射用領域130の形状は、
図2及び
図3に示す正八角形に限定されず、例えば
図4(a)に示すように円形状であってもよい。オーバーラップ領域150の形状も、
図2に示す凹六角形状に限定されず、例えば
図4(a)に示すように、正反射用領域130の円弧から放射状に形成された略三角形状であってもよい。
【0052】
図4(b)に示すように、フィルタ30が、オーバーラップ領域150を含まず、正反射用領域130と拡散反射用領域140のみを含む態様であってもよい。
図4(c)に示すように、各拡散反射用領域140の一辺が、正反射用領域130の各一辺を形成する態様であってもよい。
【0053】
次に、撮像カメラ16による正反射光及び拡散反射光の撮像について説明する。
図5は、撮像カメラ16による正反射光Lの撮像方法を説明するための図である。
図6は、撮像カメラ16による拡散反射光L1、L2の撮像方法を説明するための図である。
【0054】
図5及び
図6に示すように、撮像カメラ16は、フィルタ30を透過した光を撮像センサ40に結像させる絞り用の絞り凸レンズ50を含む。表面検査支援装置10は、検査対象物100の表面Sで反射された正反射光及び拡散反射光を、凸レンズ20に受けて、フィルタ30によって選択した反射光のみを、絞り凸レンズ50によって撮像センサ40に結像させる。これらの構成によって、物体側テレセントリック光学系が実現されている。
【0055】
撮像カメラ16は、光軸Cが、検査対象物100の表面Sで反射された正反射光Lと平行になるように配置されている。撮像カメラ16は、大口径の凸レンズ20を利用することにより、検査対象物100の表面Sで反射された正反射光Lを、広い範囲で受光することができる。光軸C方向の凸レンズ20の厚みが大きくなりすぎる場合は、例えばフレネルレンズを凸レンズ20として利用すればよい。
【0056】
フィルタ30は、凸レンズ20の像側焦点となる位置に、複数のフィルタ領域130、140、150が形成されたフィルタ面が撮像カメラ16の光軸Cと垂直になるように、配置されている。検査対象物100の表面Sで反射された正反射光は、
図5に示すように正反射用領域130を透過する。例えば、フィルタ面内(XY平面)における正反射用領域130の中心を通る光軸方向の直線上で、フィルタ30の厚み方向(Z軸方向)の略中央となる位置を、全ての正反射光が通過する。
【0057】
図5に示すように、光源15から照射されて、検査対象物100の表面Sで正反射された正反射光Lは、光軸Cに平行な光となって凸レンズ20に入射する。正反射光Lの撮像時には、フィルタ制御部14eが、遮光状態にあるフィルタ30において、正反射用領域130を透光状態に切り換える。このため、正反射光Lの撮像時には、拡散反射光はフィルタ30を透過することはできず、正反射光Lのみがフィルタ30を透過して、絞り凸レンズ50に入射する。正反射光Lは、絞り凸レンズ50で光軸Cに平行な光とされた後、撮像センサ40で撮像される。
【0058】
絞り凸レンズ50から出射した光を受光した撮像センサ40が、光量に応じて出力する信号の信号強度、すなわち撮像センサ40による撮像画像の輝度値が、光拡散ベクトル方向を算出する処理に利用される。このため、輝度値を取得可能なグレースケールのモノクロ画像を生成するセンサが、撮像センサ40として利用される。ただし、センサの種類は特に限定されず、カラー画像を生成するセンサを撮像センサ40として利用する態様であってもよい。この場合、カラー画像をグレースケールに換算して得られた輝度値を利用すればよい。
【0059】
フィルタ30を透過させる反射光の選択は、フィルタ制御部14eが、フィルタ30に形成された各フィルタ領域130、140、150の透光状態と遮光状態とを切り換えることによって行われる。撮像センサ40が、正反射光、0度の拡散反射光、45度の拡散反射光、90度の拡散反射光、135度の拡散反射光のそれぞれを撮像できるように、フィルタ制御部14eが、
図3で説明したようにフィルタ30を制御する。
【0060】
具体的には、正反射光の画像は、正反射用領域130を透光状態、他のフィルタ領域を遮光状態にして撮像される。0度の拡散反射光の画像は、0度の拡散反射用領域140a及びオーバーラップ領域150a、150b、150e、150fを透光状態、他のフィルタ領域を遮光状態にして撮像される。45度の拡散反射光の画像は、45度の拡散反射用領域140b及びオーバーラップ領域150b、150c、150f、150gを透光状態、他のフィルタ領域を遮光状態にして撮像される。90度の拡散反射光の画像は、90度の拡散反射用領域140c及びオーバーラップ領域150c、150d、150g、150hを透光状態、他のフィルタ領域を遮光状態にして撮像される。135度の拡散反射光の画像は、135度の拡散反射用領域140d及びオーバーラップ領域150d、150e、150h、150aを透光状態、他のフィルタ領域を遮光状態にして撮像される。
【0061】
0度、45度、90度、135度の拡散反射光の撮像は同様に行われるため、0度の拡散反射光を例に、拡散反射光の撮像方法を説明する。
図6に示すように、光源15から照射されて検査対象物100の表面Sの位置P1で反射された光が、X軸方向、すなわち0度方向に拡散した場合に、この光が実線矢印で拡散反射光L1、L2として図示したように、撮像センサ40で撮像される。
【0062】
具体的には、検査対象物100の表面Sで拡散反射された拡散反射光L1、L2は、凸レンズ20に入射する。0度の拡散反射光の撮像時、フィルタ制御部14eは、遮光状態にあるフィルタ30において、
図6右側のフィルタ30の図に斜線で示したように、0度の拡散反射用領域140a及び対応するオーバーラップ領域150a、150b、150e、150fを透光状態に切り換える。このため、0度の拡散反射光L1、L2の撮像時には、
図6に破線矢印で示した正反射光と、0度以外の拡散反射光は、フィルタ30を透過することはできない。フィルタ30を透過した拡散反射光L1、L2は、絞り凸レンズ50に入射し、
図6に示すように撮像センサ40の位置P2に結像されて撮像される。なお、
図6に破線矢印で示した位置P1における正反射光は、
図5で説明したように、フィルタ30の正反射用領域130が透光状態となる正反射光の撮像時に、撮像センサ40の位置P2に結像されて撮像されることになる。
【0063】
45度、90度、135度の各拡散反射光の画像も、0度の拡散反射光L1、L2と同様に、フィルタ30上で、各角度に対応する拡散反射用領域140及びオーバーラップ領域150を透光状態に切り換えることにより撮像される。
【0064】
次に、光拡散ベクトル方向の算出方法について説明する。光拡散ベクトル方向は、正反射光を撮像した画像と、複数の拡散反射光それぞれを撮像した画像とを、検査画像として、各検査画像の画素値に基づいて算出される。
【0065】
図7は、検査対象物100の表面Sの検査画像を取得する方法を説明するための図である。
図7には、
図5で説明した正反射光Lと、
図6で説明した0度の拡散反射光L1、L2とを示しているが、表面検査支援装置10は、上述したように、正反射光、0度の拡散反射光、45度の拡散反射光、90度の拡散反射光、135度の拡散反射光それぞれを個別に撮像する。これにより、
図7に示すように、正反射光の検査画像D1、0度の拡散反射光の検査画像E1、45度の拡散反射光の検査画像E2、90度の拡散反射光の検査画像E3、135度の拡散反射光の検査画像E4の5つの検査画像が得られる。
【0066】
表面検査支援装置10は、グレースケール画像である正反射光Lの検査画像D1の各画素位置で、画素値(輝度値)が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。判定用の閾値は、検査対象物100の光学特性、表面検査支援装置10の光学性能等に基づいて予め設定される。
【0067】
正反射光の検査画像D1における画素値が所定の閾値以上の値を示した場合、表面検査支援装置10は、この画素位置における拡散反射光の光拡散ベクトル方向を、0度、45度、90度、135度の各拡散反射光の検査画像E1~E4を利用して算出する。光拡散ベクトル方向の算出は、例えば、予め準備した算出式に、検査画像D1の画素に対応する各検査画像E1~E4の画素の画素値を入力することによって行われる。
【0068】
例えば、0度の拡散反射光の検査画像E1で画素値が大きく、他の拡散反射光の検査画像E2~E4で画素値が小さい場合、拡散反射光の光拡散ベクトル方向は0度と算出される。拡散反射光の検査画像E1~E4における画素値の大小の判定については、検査対象物100の光学特性、表面検査支援装置10の光学性能等に基づいて予め設定した閾値に基づいて行われる。こうして、検査画像E1~E4から、光拡散ベクトル方向が0度、45度、90度、135度である各画素が特定される。
【0069】
検査画像E1~E4における画素値が、光拡散ベクトル方向を0度、45度、90度、135度と判定する閾値より小さい場合、各検査画像E1~E4の画素値を比較することにより、光拡散ベクトル方向が、0度と45度の間、45度と90度の間、90度と135度の間、135度と180度の間のいずれにあるかが判定される。例えば、0度の検査画像E1と45度の検査画像E2における画素値が、他の検査画像E3、E4の画素値より大きい場合に、光拡散ベクトル方向が0度と45度の間にあると判定される。
【0070】
光拡散ベクトル方向が0度と45度との間にある場合、検査画像E1とE2の画素値の比率に基づいて拡散反射光の光拡散ベクトル方向が算出される。光拡散ベクトル方向が、45度と90度の間、90度と135度の間、135度と180度の間にある場合も、同様に、光拡散ベクトル方向が算出される。
【0071】
次に、光拡散ベクトル方向画像について説明する。
図8は、表面検査支援装置10が生成する光拡散ベクトル方向画像の例を説明するための図である。検査画像D1、E1~E4を利用して、正反射光の光量、すなわち正反射光の検査画像における画素値が閾値以上となった各画素位置で、光拡散ベクトル方向を算出した表面検査支援装置10は、各光拡散ベクトルを線分で結ぶことによって光拡散ベクトル方向を示す光拡散ベクトル方向画像を生成する。
【0072】
光拡散ベクトル方向画像は、例えば
図8(a)に示すような画像となる。画像に表れる線形状が光拡散ベクトル方向を示している。検査対象物100の表面Sにウェルドラインがある場合は、例えば
図8(b)に示すように、光拡散ベクトル方向画像に、ウェルドラインに沿った線形状の模様Wが現れる。
【0073】
表面検査支援装置10は、生成した光拡散ベクトル方向画像を表示部12に表示する。表面検査支援装置10の利用者は、表示部12に表示された光拡散ベクトル方向画像に基づいて、検査対象物100の表面Sにおける光学異方性の有無を確認することができる。
【0074】
例えば、
図8(a)に示すように滑らかな曲線模様の画像が得られるはずが、
図8(b)に示すように、曲線を切断する模様Wのある画像が得られた場合、利用者は、検査対象物100の表面Sにウェルドラインがあることを認識することができる。また、利用者は、画像に表れた模様Wに基づいて、検査対象物100の表面Sにおけるウェルドラインの位置及び形状を特定し、金型修正等の対応をとることができる。
【0075】
次に、表面検査支援装置10が実行する処理の流れについて説明する。
図9は、表面検査支援装置10で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、表面検査支援装置10は、光源15から検査対象物100に平行光を照射して(ステップS101)、撮像カメラ16で検査画像を取得する(ステップS102)。上述したように、正反射光の検査画像と、0度、45度、90度、135度の各方向における拡散反射光の検査画像とが取得される。
【0076】
表面検査支援装置10は、正反射光の検査画像の画素値(輝度値)が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。画素値が所定の閾値より小さい場合(ステップS103;No)、ステップS105に移行する。一方、画素値が所定の閾値以上である場合(ステップS103;Yes)、表面検査支援装置10は、0度、45度、90度、135度の各方向における拡散反射光の検査画像を利用して、上述したように光拡散ベクトル方向を算出する(ステップS104)。
【0077】
ステップS103及びS104の処理は、検査画像を構成する全ての画素を対象として画素単位で実行される。表面検査支援装置10は、全画素の処理を完了したか否かを判定する(ステップS105)。全画素の処理が完了していない場合(ステップS105;No)、ステップS103に移行する。一方、全画素の処理を完了すると(ステップS105;Yes)、表面検査支援装置10は、ステップS104で得られた各画素位置の光拡散ベクトル方向に基づいて、上述したように光拡散ベクトル方向画像を生成する(ステップS106)。表面検査支援装置10は、光拡散ベクトル方向画像を表示部12に表示して(ステップS107)、処理を終了する。
【0078】
本実施形態では、表面検査支援装置10が光拡散ベクトル方向画像を表示部12に表示する例を説明したが、光拡散ベクトル方向画像以外の情報が表示部12に表示される態様であってもよい。例えば、光拡散ベクトル方向を示す数値に関連する情報が表示部12に表示される態様であってもよいし、光拡散ベクトル方向に基づいて表面検査支援装置10が光学異方性の有無を自動判定した判定結果が表示部12に表示される態様であってもよい。
【0079】
例えば、光拡散ベクトル方向が一定方向を示すはずの検査対象物100の検査であれば、表面検査支援装置10が、光拡散ベクトル方向を示す数値の統計情報を表示部12に表示することにより、利用者は、光学異方性の有無を認識することができる。表面検査支援装置10が、光拡散ベクトル方向を示す数値に基づいて光学異方性の有無を判定する自動判定を行って、判定結果を表示部12に表示してもよい。表面Sに光学異方性がある場合に
図8(b)に示すような特徴的な画像が得られる検査対象物100であれば、表面検査支援装置10が、画像に基づく自動判定を実行して、判定結果を表示部12に表示してもよい。光拡散ベクトル方向に関する数値情報又は判定結果が表示部12に表示される場合、利用者は、必要に応じて、表面検査支援装置10の入力部11を操作して、表面検査支援装置10が生成した光拡散ベクトル方向画像を表示部12に呼び出して確認すればよい。
【0080】
本実施形態に示した表面検査支援装置10の構成は一例であって、表面検査支援装置10が、上述した構成の一部を含まない態様であってもよい。例えば、表面検査支援装置10が光源15を含まない態様であってもよい。この場合、表面検査支援装置10から独立した光源を利用して検査を行えばよい。
【0081】
表面検査支援装置10が、上述した構成以外の構成を含む態様であってもよい。例えば、表面検査支援装置10が、光源15に対する検査対象物100の角度及び位置を変更可能な検査台を有し、検査台を制御して検査対象物100を移動させる態様であってもよい。表面検査支援装置10が、検査対象物100に対する光源15の角度及び位置を変更してもよい。この場合、表面検査支援装置10が、光源15の角度及び位置を物理的に変更する装置を制御して光源15を移動させてもよいし、異なる位置に配置された複数の光源で検査対象物100に光を照射する光源を変更することによって光源15を移動させてもよい。表面検査支援装置10が、光源15と検査台の両方の移動を制御する態様であってもよい。表面検査支援装置10が、光源15の移動と検査台の移動との少なくともいずれか一方を制御することにより、検査対象物100を構成する複数の表面それぞれに光源15から光を照射して、各表面の検査を上述したように行うことが可能となる。
【0082】
本実施形態では、主に正反射光及び拡散反射光を撮像カメラ16に受けて検査画像を撮像し、検査画像の画素値を利用した処理を実行する例を示したが、各処理が、撮像カメラ16、すなわち撮像センサ40で受光した光の強度を利用して行われる態様であってもよい。例えば、表面検査支援装置10が、撮像センサ40に光を受けて出力した信号から検査画像を生成することなく、信号強度を直接利用して各処理を実行する態様であってもよい。
【0083】
上述してきたように、本実施形態に係る表面検査支援装置は、検査対象物の表面で反射された光を受ける際に、フィルタを制御することにより、正反射光と、複数の拡散反射光とを選択的に受光することができる。フィルタ面には、角度を変えて複数のフィルタ領域が形成されており、表面検査支援装置は、各フィルタ領域を透過した拡散反射光を調べることにより、検査対象物の表面における光拡散ベクトル方向を特定することができる。また、表面検査支援装置は、光拡散ベクトル方向を示す光拡散ベクトル方向画像等、光拡散ベクトル方向に関する情報を表示部に表示することができる。表面検査支援装置の利用者は、表示部に表示された情報に基づいて、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示に係る表面検査支援装置及び表面検査支援方法は、部品の表面や塗装面の面的な光学異方性を効率よく検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0085】
10 表面検査支援装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
15 光源
16 撮像カメラ
20 凸レンズ
30 フィルタ
40 撮像センサ
50 絞り凸レンズ