IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042862
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】導体成形装置及び導体成形方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K15/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147774
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 幹人
(72)【発明者】
【氏名】福地 遼介
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP13
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615QQ26
5H615QQ27
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】折り返し開始時から導体の折り返し動作をガイドすることができ、導体の捻れが抑制された高品質な波巻コイル群の成形が可能な導体成形装置を提供すること。
【解決手段】導体を折り返すことによって波巻コイル群を成形する導体成形装置であって、導体の折り返し内方に配置される折り返し治具を備え、折り返し治具は、導体の折り返しの起点となる先端部を有する支持板部と、支持板部の先端部側に折り返し前の導体を幅方向の両側から挟持するように複数配置され、導体の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面を有するガイド凸部と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を折り返すことによって波巻コイル群を成形する導体成形装置であって、
前記導体の折り返し内方に配置される折り返し治具を備え、
前記折り返し治具は、
前記導体の折り返しの起点となる先端部を有する支持板部と、
前記支持板部の前記先端部側に折り返し前の前記導体を幅方向の両側から挟持するように複数配置され、前記導体の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面を有するガイド凸部と、を備える、導体成形装置。
【請求項2】
前記ガイド凸部の前記ガイド面は、略円形である、請求項1に記載の導体成形装置。
【請求項3】
前記ガイド凸部の前記ガイド面の外周縁は、面取り加工もしくは丸め加工されている、請求項2に記載の導体成形装置。
【請求項4】
前記支持板部の前記先端部は、面取り加工もしくは丸め加工されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の導体成形装置。
【請求項5】
導体を折り返すことによって波巻コイル群を成形する導体成形方法であって、
前記導体の折り返しの起点となる先端部を有する支持板部と、前記支持板部の前記先端部側に折り返し前の前記導体を幅方向の両側からそれぞれ挟持するように複数配置され、前記導体の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面を有するガイド凸部と、を備える折り返し治具を前記導体の折り返し内方に配置し、
前記支持板部の前記先端部を起点として前記導体を折り返すとともに、前記ガイド凸部の前記ガイド面によって前記導体の折り返し動作を折り返し開始からガイドする、導体成形方法。
【請求項6】
前記ガイド凸部の前記ガイド面は、略円形である、請求項5に記載の導体成形方法。
【請求項7】
前記ガイド凸部の前記ガイド面の外周縁は、面取り加工もしくは丸め加工されている、請求項6に記載の導体成形方法。
【請求項8】
前記支持板部の前記先端部は、面取り加工もしくは丸め加工されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の導体成形方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体成形装置及び導体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並列する少なくとも2本の導体を折り返すことによって、直線部と山型状のターン部とを有する波巻コイル群を成形する導体成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来の導体成形装置は、導体の折り返し時に、折り返し内方に挿入される楔状の折り返し治具を有する。折り返し治具の先端部には、導体が折り返されることによって成形されたターン部の頂部を挟む突起が設けられている。この突起は、頂部の幅方向の両側を挟むことによって、頂部の幅方向の拡がりを抑制するように機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-58076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の導体成形装置の折り返し治具は、導体が折り返された後のターン部の頂部を突起によって挟む構成であるため、頂部が形成される前の導体の折り返し開始時からの導体の捻れを抑制する観点からは、さらに改善の余地がある。
【0006】
本発明は、折り返し開始時から導体の折り返し動作をガイドすることができ、導体の捻れが抑制された高品質な波巻コイル群の成形が可能な導体成形装置及び導体成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る導体成形装置は、導体(例えば、後述の導体3)を折り返すことによって波巻コイル群(例えば、後述の波巻コイル群4)を成形する導体成形装置(例えば、後述の導体成形装置1)であって、前記導体の折り返し内方(例えば、後述の折り返し内方D)に配置される折り返し治具(例えば、後述の折り返し治具2)を備え、前記折り返し治具は、前記導体の折り返しの起点となる先端部(例えば、後述の先端部211)を有する支持板部(例えば、後述の支持板部21)と、前記支持板部の前記先端部側に折り返し前の前記導体を幅方向(例えば、後述のX方向)の両側から挟持するように複数配置され、前記導体の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面(例えば、後述のガイド面221)を有するガイド凸部(例えば、後述のガイド凸部22)と、を備える、導体成形装置である。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の導体形成装置において、前記ガイド凸部の前記ガイド面は、略円形であることが好ましい。
【0009】
(3) 上記(2)に記載の導体成形装置において、前記ガイド凸部の前記ガイド面の外周縁(例えば、後述の外周縁221a)は、面取り加工もしくは丸め加工されていることが好ましい。
【0010】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の導体成形装置において、前記支持板部の前記先端部は、面取り加工もしくは丸め加工されていることが好ましい。
【0011】
(5) 本発明に係る導体形成方法は、導体(例えば、後述の導体3)を折り返すことによって波巻コイル群(例えば、後述の波巻コイル群4)を成形する導体成形方法であって、前記導体の折り返しの起点となる先端部(例えば、後述の先端部221)を有する支持板部(例えば、後述の支持板部21)と、前記支持板部の前記先端部側に折り返し前の前記導体を幅方向(例えば、後述のX方向)の両側からそれぞれ挟持するように複数配置され、前記導体の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面(例えば、後述のガイド面221)を有するガイド凸部(例えば、後述のガイド凸部22)と、を備える折り返し治具(例えば、後述の折り返し治具2)を前記導体の折り返し内方(例えば、後述の折り返し内方D)に配置し、前記支持板部の前記先端部を起点として前記導体を折り返すとともに、前記ガイド凸部の前記ガイド面によって、前記導体の折り返し動作を折り返し開始から折り返し終了までガイドする、導体成形方法である。
【0012】
(6) 上記(5)に記載の導体成形方法において、前記導体を挟持する前記ガイド凸部のガイド面(例えば、後述のガイド面221)は、略円形であってもよい。
【0013】
(7) 上記(6)に記載の導体成形方法において、前記ガイド凸部の前記ガイド面の外周縁(例えば、後述の外周縁221a)は、面取り加工もしくは丸め加工されていてもよい。
【0014】
(8) 上記(5)~(7)のいずれかに記載の導体成形方法において、前記支持板部の前記先端部は、面取り加工もしくは丸め加工されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、折り返し開始時から導体の折り返し動作をガイドすることができ、導体の捻れが抑制された高品質な波巻コイル群の成形が可能な導体成形装置及び導体成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】導体成形装置の要部を示す斜視図である。
図2】導体成形装置によって成形される導体を示す図である。
図3図2中のA-A線に沿う断面図である。
図4図2に示す導体を6本並列させた折り返し前の状態を示す図である。
図5】導体成形装置における導体を把持する把持部を説明する図である。
図6】把持部によって導体が把持された状態を示す図である。
図7】導体成形装置の折り返し治具を示す側面図である。
図8図7中のB部の拡大図である。
図9】折り返し治具の先端部を拡大して示す斜視図である。
図10】導体形成装置にセットされた折り返し前の導体を示す斜視図である。
図11】折り返し治具のガイド凸部の間に挟持された折り返し前の導体を拡大して示す斜視図である。
図12A】導体の折り返し前の状態を示す模式図である。
図12B】導体を折り返す様子を示す模式図である。
図12C】折り返し途中の導体を並列方向に移動させる様子を示す模式図である。
図12D】並列方向に移動させた導体をさらに折り返す様子を示す模式図である。
図12E】折り返しが終了した導体を更に並列方向に移動させてターン部を成形する様子を示す模式図である。
図13】折り返し途中の導体と折り返し治具とを示す側面図である。
図14】並列方向に移動した導体と折り返し治具とを示す正面図である。
図15】並列方向に移動した導体と折り返し治具とを示す平面図である。
図16】ターン部の頂部を拡大して示す斜視図である。
図17】一つのターン部の頂部を直線部の延在方向から見た図である。
図18】導体成形装置によって成形された波巻コイル群を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の導体成形装置及び導体成形方法について図面を参照して説明する。図1に示すように、導体成形装置1は、複数本の導体(図示せず)を把持する一対の把持部13A,13B(以下、第1の把持部13A,第2の把持部13Bという。)と、一つの折り返し治具2と、を備える。
【0018】
ここで、導体成形装置1の方向について定義する。図中のX方向は、導体成形装置1の幅方向を示す。X方向は、後述する導体の幅方向及び複数並列された導体の並列方向でもある。図中のY方向は、導体成形装置1の奥行方向を示す。Y方向は、後述する導体の直線部の延在方向及び導体の折り返し方向でもある。図中のZ方向は、導体成形装置1の高さ方向を示す。
【0019】
導体について図2図4を参照して説明する。導体3は、波巻コイルを構成するコイル線材である。本実施形態に示す導体3は、図3に示すように、銅線等の平角線からなる2本の単位線材30,30によって構成される。しかし、導体3は、1本の単位線材30からなる単線であってもよい。2本の単位線材30,30は、導体3の幅方向に並べられている。導体3の表面は図示しない樹脂製の絶縁被膜で覆われている。導体3は、図2における白抜き矢印の方向に移動する引出しツール100を用いて略U字状に曲げ成形されることによって、山型状のターン部(第1ターン部)31と、そのターン部31の両端部から同一方向に平行に延在する2本の直線部32,32と、を有する。
【0020】
略U字状に曲げ成形された導体3は、図4に示すように、ターン部31を同一側に配置させて、ステータコアのスロット(図示せず)のピッチに対応する所定の距離ずつ幅方向に位置をずらせて並列して重ねられる。本実施形態では、略U字状に曲げ成形された6本の導体3を並列して重ねている。しかし、重ねられる導体3は少なくとも2本であればよい。12本の直線部32は、所定の距離をあけて平行に配置されている。図1には示されていないが、並列する6本の導体3は、ターン部31を第1の把持部13Aよりも導体成形装置1の手前側にはみ出すように配置し、12本の直線部32を第1の把持部13A及び第2の把持部13Bに把持することによって、導体成形装置1に装着される。
【0021】
第1の把持部13A及び第2の把持部13Bは、導体成形装置1の奥行方向に導体3を把持しない所定の間隔をおいて配置されている。この第1の把持部13Aと第2の把持部13Bとの間隔は、後述するように、折り返された導体3にターン部を成形するための間隔である。第1の把持部13A及び第2の把持部13Bは、実質的に同一構成であり、図5及び図6に示すように、導体成形装置1の幅方向に並置される複数のブロック131によって構成される。複数のブロック131は、それぞれ図示しない開閉機構によって幅方向に開閉可能である。ブロック131の数は、把持する導体3の直線部32の本数に対応する。
【0022】
ブロック131の上面には、溝部132と挟着片133とが形成される。溝部132は、導体3の直線部32の幅(図3におけるX方向の幅)よりも僅かに細幅に形成され、導体成形装置1の奥行方向(導体3の直線部32の延在方向)に沿って延びている。溝部132は、ブロック131の上面を、幅方向の一方の側面から他方の側面に向けて、上面の略半分に亘って切り欠くことによって形成される。挟着片133は、溝部132が形成されたブロック131の上面の残りの部分によって形成される。挟着片133は、溝部132に隣接して溝部132と平行に配置され、導体成形装置1の奥行方向(導体3の直線部32の延在方向)に沿って延びている。
【0023】
図5に示すように、各ブロック131が開閉機構によって互いに離れるように開くと、隣接するブロック131の挟着片133,133の間隔は、導体3の直線部32の幅よりも広くなる。これによって、第1の把持部13A及び第2の把持部13Bは、導体3の直線部32を各溝部132内に収容及び取出し可能である。一方、図6に示すように、各ブロック131が開閉機構によって互いに密接するように閉じると、隣接するブロック131の挟着片133,133の間隔は、導体3の直線部32の幅よりもやや狭くなる。これによって、第1の把持部13A及び第2の把持部13Bは、各溝部132内に収容された導体3の直線部32を、隣接するブロック131の挟着片133,133によってそれぞれ挟み付けて把持する。
【0024】
図1における第1の把持部13A及び第2の把持部13Bのうち、手前側に配置される第1の把持部13Aは、図示しない折り返し移動機構によって、図1に示すように第2の把持部13Bに対して導体成形装置1の奥行方向に並んで配置される開放位置と、第2の把持部13Bに重なるように配置される折り返し位置と、の間を回転移動可能である。第1の把持部13Aの回転軸J(図12A図12E参照)は、導体成形装置1の奥行方向に並んだ第1の把持部13Aと第2の把持部13Bとの間に配置される。第1の把持部13Aが第2の把持部13Bに重なるように回転移動することによって、導体3の直線部32が折り返される。
【0025】
第1の把持部13Aは、図示しない拡張移動機構15によって、導体成形装置1の幅方向に平行に移動可能である。第2の把持部13Bに重なるように回転移動した第1の把持部13Aが幅方向に平行に移動することによって、折り返された導体3の直線部32における第1の把持部13A及び第2の把持部13Bに把持されていない部位が斜めに折り曲げられる。これによって、折り返された導体3に山型状のターン部(以下、第2のターン部という場合がある。)が成形される。
【0026】
折り返し治具2は、第2の把持部13Bの上方に配置される。折り返し治具2の後端部212は、第2の把持部13Bのさらに奥側に配置される図示しない治具移動機構に取り付けられている。折り返し治具2は、図示しない治具移動機構によって、先端部211が第1の把持部13A及び第2の把持部13Bの間に配置される折り返し動作位置と、第2の把持部13Bのさらに奥側に退避する退避位置と、の間をスライド移動可能である。折り返し動作位置に移動した折り返し治具2は、導体3の折り返し内方D(図12B図12D及び図13参照)に配置される。
【0027】
折り返し治具2の詳細について、図7図9を参照して説明する。折り返し治具2は、支持板部21と、複数のガイド凸部22と、を有して構成される。
【0028】
支持板部21は、ブロック131が閉じた状態の第1の把持部13A及び第2の把持部13Bのそれぞれの横幅に略等しい矩形の板状部材からなる。第2の把持部13Bの上面に対向する折り返し治具2の下面213は、第2の把持部13Bの上面に平行に配置される平面である。後端部212から先端部211に亘る支持板部21の上面214は、先端部211に向かうに従って下り傾斜する平面である。これによって、支持板部21は、先端部211に向かうに従って次第に厚みが小さくなる楔状に形成されている。支持板部21の先端部211は、面取り加工もしくは丸め加工が施されており、鋭角な角部を持たない。
【0029】
ガイド凸部22は、支持板部21の先端部211側に導体3の直線部32の幅に対応する一定の間隔をあけて配置され、支持板部21と一体に13個設けられている。ガイド凸部22は、支持板部21の先端部211よりも支持板部21の下面213側、上面214側及び第1の把持部13A側にそれぞれ突出している。これによって、ガイド凸部22は、隣接するガイド凸部22,22との間で、折り返し前の導体3の直線部32を幅方向の両側からそれぞれ挟持するための平面からなるガイド面221を有する。
【0030】
本実施形態のガイド凸部22は、図9に示すように、それぞれ略円柱形状に形成されている。したがって、ガイド凸部22のガイド面221は、円柱の軸方向の両端面に、略円形に形成されている。
【0031】
ガイド凸部22は、ガイド面221が互いに平行に対向するように、支持板部21の先端部211に配置される。略円柱形状のガイド凸部22の中心軸は、図8に示すように、先端部211の位置に略一致している。ガイド凸部22の外周面222は、図8及び図9に示すように、先端部211を中心にして、支持板部21の下面213と上面214とを円弧状に繋ぐように配置される。
【0032】
なお、支持板部21に一体に設けられたガイド凸部22を外観した場合、完全な円柱形状にはならないため、本書ではガイド凸部22に対して「略」という表現を使用している。但し、ガイド凸部22の外観形状は、略円柱形状に限定されず、例えば円柱の外周面がくびれた形状であってもよい。
【0033】
隣接するガイド凸部22の対向する2つのガイド面221,221は、導体3の直線部32を幅方向の両側から挟むことによって折り返しの起点周辺を拘束し、直線部32の折り返し動作をガイドする。ガイド面221の外周縁221aは、それぞれ面取り加工もしくは丸め加工が施されており、鋭角な角部を持たない。
【0034】
折り返し治具2は、図10及び図11に示すように、第1の把持部13A及び第2の把持部13Bに導体3の直線部32が把持された後に、図示しない治具移動機構によって移動して第2の把持部13Bの上方に配置される。折り返し治具2のガイド凸部22は、第1の把持部13Aと第2の把持部13Bとの間に配置され、折り返し前の並列する導体3の直線部32を、支持板部21の下面213側で、ガイド面221によってそれぞれ幅方向の両側から挟持する。これによって、折り返し治具2の下方において、隣接する2つのガイド凸部22の対向するガイド面221,221の間に、それぞれ折り返し前の2本ずつの直線部32が配置される。
【0035】
次に、導体成形装置1を用いて6本の導体3から波巻コイル群を成形する導体成形方法の具体例について、さらに図12A~12E及び図13図18を参照して説明する。図12A~12Eでは、導体成形装置1の第1の把持部13A、第2の把持部13B及び折り返し治具2のみを図示し、並列する6本の導体3の直線部32を平板によって模式的に示している。
【0036】
まず、図12Aに示すように、導体成形装置1の奥行方向に並んで配置される第1の把持部13A及び第2の把持部13Bが導体3の直線部32を把持した状態で、折り返し治具2が図示しない治具移動機構によって第1の把持部13Aに向けて移動し、第2の把持部13Bの上方に配置される。折り返し治具2のガイド凸部22は、図10及び図11に示したように、支持板部21の下方に配置される折り返し前の導体3の直線部32を、ガイド面221によって幅方向の両側からそれぞれ挟持する。先端部211の位置は、第1の把持部13Aの回転軸Jに略一致している。
【0037】
次に、図12Bに示すように、第1の把持部13Aが、図示しない折り返し移動機構によって回転軸Jを中心に第2の把持部13Bに重なるように回転移動する。これによって、導体3の直線部32は、図13に示すように、折り返し治具2の先端部211を折り返しの起点として一括して折り返される。導体3の折り返し内方Dに配置される折り返し治具2のガイド凸部22のガイド面221,221は、折り返し前から直線部32を挟持しているため、直線部32の折り返し動作を折り返し開始時から挟持した状態でガイドする。
【0038】
折り返しの起点となる支持板部21の先端部211は、折り返し動作時に、導体3の直線部32のY方向及びZ方向の動きを規制する。この先端部211は面取り加工もしくは丸め加工されているため、折り返し動作時に絶縁被膜にダメージを与えることは抑制される。その後、ガイド面221,221に挟持された直線部32は、第1の把持部13Aの回転移動の進行に伴い、ガイド面221を摺擦し、ガイド面221にガイドされながらさらに折り返される。ガイド凸部22のガイド面221は、折り返される直線部32のX方向の動きを規制する。
【0039】
折り返し動作が途中(例えば、約150°の角度)まで進行した後、図12Cに示すように、第1の把持部13Aは、図示しない拡張移動機構によって、6本の導体3の並列方向に所定距離だけ平行に移動する。これによって、第1の把持部13Aに把持される直線部32と第2の把持部13Bに把持される直線部32とが導体3の並列方向に少しだけ位置ずれする。これによって、途中まで折り返された直線部32は、ガイド面221,221に挟持された部位を頂部321として斜行し、導体3の並列方向に拡張する。
【0040】
拡張動作時の折り返しの頂部321は、図14及び図15に示すように、ガイド面221,221の間に挟持され、継続して拘束されていることによって、導体3の並列方向にずれたり捻れたりすることはなく、安定した形状を維持する。頂部321近傍の折り曲げられた直線部32は、ガイド面221の外周縁221aを摺擦しながら斜行するが、外周縁221aは、面取り加工もしくは丸め加工されているため、絶縁被膜にダメージを与えることは抑制される。
【0041】
次に、図12Dに示すように、折り返し治具2は、図示しない治具移動機構によって、第1の把持部13A及び第2の把持部13Bから離れるように導体成形装置1の奥側に向けて退避位置まで移動する。これによって、折り返し治具2は、導体3の折り返し内方Dから退避し、導体3に対するガイドを解除する。
【0042】
折り返し治具2の退避後、第1の把持部13Aは、図示しない折り返し移動機構によって、第2の把持部13Bに重なるようにさらに回転移動する。このとき、導体3には既に折り返しの頂部321が形成されているため、導体3は、この頂部321を中心にして、位置ずれしたり捻れたりすることなく円滑に折り曲げられる。その後、第1の把持部13Aが第2の把持部13Bに略平行になる約180°の角度まで回転移動する。
【0043】
その後、第1の把持部13Aは、図12Eに示すように、図示しない拡張移動機構によって、導体3の並列方向にさらに所定距離だけ平行に移動する。折り返された導体3は並列方向にさらに拡張し、6本の導体3に頂部321を頂点とするターン部(第2のターン部)33が一括して形成される。ターン部33は、頂部321を中心に拡張するが、頂部321は、折り返し治具2のガイド凸部22のガイド面221,221に折り返し開始時から拘束され続けることによって安定した形状を有するため、図16及び図17に示すように、捻れの発生のない均質な形状に形成される。
【0044】
導体成形装置1は、第1の把持部31A及び第2の把持部13Bによる導体3の直線部32の把持動作と、折り返し治具2を折り返し内方側Dに挿入して導体3を折り返す動作と、第1の把持部13Aを導体3の並列方向に移動させて第2のターン部33を形成する動作と、を直線部32に対する把持位置を順次変えながら繰り返し行う。これによって、図18に示すように、複数の第2のターン部33と、ステータコアのスロット(いずれも図示せず)内に挿入される複数の直線部32と、をそれぞれ有する6本の波巻コイルが重ねられた波巻コイル群4が成形される。
【0045】
本実施形態の導体成形装置1及び導体成形方法によれば、以下の効果を奏する。
【0046】
導体成形装置1は、並列する少なくとも2本の導体3を折り返すことによって波巻コイル群4を成形する導体成形装置であって、導体3の折り返し内方Dに配置される折り返し治具2を備える。折り返し治具2は、導体3の折り返しの起点となる先端部211を有する支持板部21と、支持板部21の先端部211側に折り返し前の導体3を幅方向の両側から挟持するように複数配置され、導体3の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面221を有するガイド凸部22と、を備える。
【0047】
また、導体成形方法は、並列する少なくとも2本の導体3を折り返すことによって波巻コイル群4を成形する導体成形方法であって、導体3の折り返しの起点となる先端部211を有する支持板部21と、支持板部21の先端部211側に折り返し前の導体3を幅方向の両側からそれぞれ挟持するように複数配置され、導体3の折り返し動作を折り返し開始からガイド可能なガイド面221を有するガイド凸部22と、を備える折り返し治具2を導体3の折り返し内方Dに配置し、支持板部21の先端部211を起点として導体3を折り返すとともに、ガイド凸部22のガイド面221によって導体3の折り返し動作を折り返し開始からガイドする。
【0048】
これによれば、折り返し治具2のガイド凸部22のガイド面221が、折り返し前の導体3の直線部32を挟持するため、導体3の折り返し動作を折り返し開始時から継続してガイドすることができる。ガイド凸部22は、導体成形装置1のXYZ方向の3軸に対して導体3の直線部32を規制しながら折り返し動作をガイドすることができる。そのため、導体3の捻れが抑制された高品質の波巻コイル群の成形が可能である。
【0049】
上記導体成形装置1及び導体成形方法において、ガイド凸部22のガイド面221は、略円形である。これによれば、導体3の折り返し動作中において導体3の幅方向の両側を継続して円滑にガイドし続けることができる。そのため、導体3の捻れを確実に抑制することができる。
【0050】
上記導体成形装置1及び導体成形方法において、ガイド凸部22のガイド面221の外周縁221aは、面取り加工もしくは丸め加工されている。これによれば、導体3をガイド凸部22の間にセットする際、導体3を折り返す際、第2のターン部33を成形するために導体3の直線部32を幅方向に移動させる際等に、ガイド面221の外周縁221aが導体3の絶縁被膜にダメージ与えることが抑制される。そのため、絶縁被膜のダメージの少ない高品質な波巻コイル群4を成形することができる。
【0051】
上記導体成形装置1及び導体成形方法において、支持板部21の先端部211は、面取り加工もしくは丸め加工されている。これによれば、導体3を折り返す際に、導体3の絶縁被膜にダメージを与えることが抑制される。そのため、絶縁被膜のダメージをより低減することができ、さらに高品質な波巻コイル群4を成形することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 導体成形装置
2 折り返し治具
21 支持板部
211 先端部
22 ガイド凸部
221 ガイド面
221a 外周縁
3 導体
4 波巻コイル群
D 折り返し内方


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
図15
図16
図17
図18