(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042864
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】カスパーゼ-1活性化抑制剤、抗酸化剤及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 36/61 20060101AFI20240322BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240322BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240322BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240322BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61K36/61
A61P43/00 111
A61P39/06
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147776
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】595134504
【氏名又は名称】株式会社テクノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】522369474
【氏名又は名称】上海▲優▼萃生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
(72)【発明者】
【氏名】岩野 英生
(72)【発明者】
【氏名】道善 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 欣
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲亜▼才
(72)【発明者】
【氏名】李 玉兵
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD532
4C083AD622
4C083BB47
4C083BB51
4C083CC03
4C083EE12
4C083EE13
4C088AB57
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA08
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZC20
4C088ZC37
(57)【要約】
【課題】紫外線による皮膚のダメージの要因となるカスパーゼ-1活性化抑制剤及び活性酸酸素の消去剤の提供。
【解決手段】カヌカの葉の抽出物を有効成分として含有するカスパーゼ-1活性化抑制剤及び抗酸化剤並びにカスパーゼ-1活性化抑制剤又は抗酸化剤を配合する化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カヌカの葉の抽出物を有効成分とするカスパーゼ-1活性抑制剤。
【請求項2】
カヌカの葉の抽出物を有効成分とする抗酸化剤。
【請求項3】
カヌカの葉の抽出物を有効成分とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カヌカの抽出物を有効成分とするカスパーゼ-1活性化抑制剤又は抗酸化剤、並びにカスパーゼ-1活性化抑制剤又は抗酸化剤を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の炎症等の要因となる「インフラマソーム」と呼ばれるタンパク質の複合体が注目されている。インフラマソームは、複数のタンパク質の複合体であり、炎症反応の誘導等の要因となることが報告されている。インフラマソームは、NLRC4、NLRP1及びNLRP3などのNOD様受容体(NLRs:NOD-like receptors)又はAIM2(absent in melanoma 2)などのパターン認識受容体と、アダプタータンパク質ASC(apoptosis-associated speck-like protein containing caspase recruitment domain)と、カスパーゼ-1(Caspase-1)の前駆体とによって構成される。NLRC4、NLRP1、NLRP3及びAIM2が紫外線や細菌等の外的要因等を受けると、細胞内でインフラマソームが形成され、その結果、カスパーゼ-1が活性化される。活性化されたカスパーゼ-1は、SASP(Senescence-associated secretory phenotype:老化誘導因子)として知られているIL-1β及びIL-18等の炎症性サイトカインを活性化する。この炎症サイトカインは肌荒れ等の原因となるため、インフラマソームの形成を抑制する化粧料用有効成分が求められている。
【0003】
従来、ゴボウ等の植物抽出物がカスパーゼ-1の活性化抑制効果を有することが特許文献1により報告されているものの、カヌカ抽出物がカスパーゼ-1の活性抑制効果を有することについては報告されていない。また、カヌカ抽出物を医薬品に使用することについては特許文献2に開示されているものの、カヌカ抽出物がカスパーゼ-1活性化抑制効果及び抗酸化効果を有すること、化粧料用の有効成分として使用することについて報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-080186号公報
【特許文献2】中国特許第106074278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、背景技術に鑑みて鋭意研究を行った結果、カヌカの抽出物がインフラマソーム形成によるカスパーゼ-1活性化抑制効果を有することを見出した。また、カヌカの抽出物がインフラマソームの形成に関与する活性酸素種を消去する抗酸化効果を有することも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カヌカの抽出物を有効成分とするカスパーゼ-1活性化抑制剤である。
本発明は、カヌカの抽出物を有効成分とする抗酸化剤である。
本発明は、カヌカの抽出物を有効成分とする化粧料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カヌカの抽出物が奏するインフラマソーム形成によるカスパーゼ-1の活性化を抑制する効果及び抗酸化効果により、紫外線による炎症や乾燥等の皮膚のダメージ抑制用及び抗老化用の化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0009】
本発明で用いる「カヌカ」は、フトモモ科(Myrtaceae)クンゼア属(Kunzea)植物であるカヌカ(Kunzea ericoides)である。本発明の抽出物を得るために使用する部位としては、「葉」が好ましい。
【0010】
抽出物の調製は、まず、カヌカ(葉)を必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、抽出溶媒と接触させて抽出を行う。抽出は、浸漬法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることで行うことが可能である。
【0011】
カヌカの抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;n-ヘキサン等の炭化水素系溶媒が挙げられ、それらは単独で又は二種以上混合して用いることでも良い。本発明においては、水とエタノール又は1,3-ブチレングリコールとの混合溶媒が好ましい。
【0012】
混合溶媒を用いる場合の1,3-ブチレングリコールと水の混合溶媒であれば、1,3-ブチレングリコールの質量パーセント濃度が、10w/w%~70w/w%の範囲が好ましい。また、水とエタノールとの混合溶媒であれば、エタノールの質量パーセント濃度が、10w/w%~60w/w%の範囲が好ましい。
【0013】
抽出物の調製に際して、そのpHに特に限定はないが、一般には3~9の範囲とすることが好ましい。かかる意味で、必要であれば、前記抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性調整剤、又はクエン酸、塩酸、リン酸、硫酸等の酸性調整剤を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0014】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば、水と1,3-ブチレングリコール又はエタノールとの混液を溶媒とする場合であれば、抽出温度は好ましくは0℃~80℃の範囲である。また、抽出時間は好ましくは1~168時間(1時間~1週間)の範囲である。
【0015】
上述のように調製した抽出物及び発酵物は、一般にはpHを3~8に調製した上で、これをそのままの状態で化粧料配合剤として使用しても良く、又減圧濃縮等により所望の濃度として使用しても良い。また、抽出物はスプレードライ法等の常法により乾燥物としても良い。
【0016】
本発明の有効成分であるカヌカ抽出物を含む製剤としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、シートマスク、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、ボディシャンプー、毛髪用シャンプー、石けん等の清浄用化粧料、育毛剤、さらには浴剤等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明に係るカヌカ抽出物を製剤(化粧品等)に配合する際には、製剤に配合される以下の任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール水等の多価アルコール類、β‐グルカン等の増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等の紫外線防御剤、色剤、防腐剤、pH調整剤、粉体、グリチルリチン酸ジカリウム、ヒアルロン酸又はその塩、レチノイン酸ヒドロキシピナコロン等の有効成分、ツボキエキス等の植物由来成分、ビフィズス菌培養液等の微生物由来成分が好適に例示できる。
【0018】
次に、製造例、処方例及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部は全て重量部を、また%は全て重量%を意味する。
【0019】
製造例1.カヌカ抽出物の調製(1)
カヌカの葉を乾燥、粉砕して得られる粉砕物300gを、20%エタノール水溶液1500gに接触させ、40℃で2時間抽出を行った。その後、濾過を行いカヌカ粗抽出液を1300g得た。カヌカ粗抽出液を減圧下で濃縮し、カヌカ濃縮液を1040g得た。カヌカ濃縮液に水及び1,3-ブチレングリコールを加え、さらにアスコルビン酸3.24gを加え、淡黄色のカヌカ抽出液16.2kgを得た(固形分濃度0.20%)
【0020】
製造例2.カヌカ抽出物の調製(2)
製造例1の工程において、抽出溶媒を20%エタノール水溶液に代えて50%エタノール水溶液300gを用いる他は、製造例1と同様の方法により淡黄色のカヌカ抽出液16.4kgを得た(固形分濃度0.21%)。
【0021】
以下、試験例1~3の評価試験においては、以下の通りサイトカインの産生に関与する物質であるタンパク質複合体(インフラマソーム)に着目した効果を評価する。インフラマソームが形成されることによりカスパーゼ-1は活性化され、さらに、カスパーゼ-1がサイトカイン(IL-1β、IL-18等)を活性化し、その結果、これらサイトカインが細胞外に放出され、それらが炎症の原因となる。試験例1では、インフラマソームの形成を誘導する物質(Lipopolysaccharide)と紫外線を用いて、本発明に係るカヌカの抽出物の細胞内カスパーゼ1活性評価試験及びサイトカイン産生抑制効果の評価試験、並びにインフラマソームにより減少するフィラグリン2(天然保湿因子)の発現亢進の評価試験を行う。
【0022】
試験例1.細胞内カスパーゼ1活性評価試験
正常ヒト線維芽細胞(NB1RGB)を用いて実験を行なった。24ウェルプレートへ1ウェルあたり9.0×104個になるように播種した。培養液(イーグルMEM)にそれぞれ試料溶液として製造例1の抽出物溶液(培養液中の溶液の最終濃度が0.5%,1.0%,2.0%になるようにそれぞれを調製)を添加し、それぞれの培養液で細胞を1日間培養した。培養後、Lipopolysaccharide(Invitrogen社)を最終濃度1.0μg/mLになるように加えて1時間培養を続け、さらにインフラマソーム形成によるカスパーゼ-1活性誘導処理として紫外線(UV-B)を100mJ/cm2照射してさらに4時間培養を行った。なお、コントロールについては、UV-Bを照射することなく、細胞を培養したコントロール(未誘導)とUV-Bを照射したコントロール(誘導)も調製し、誘導コントロールをカスパーゼ-1活性評価試験の対照とした。
次に、Pyroptosis/Caspase-1 Assay(ImmunoChemistry Technologies社)を用いて、培養後の細胞を染色し、フローサイトメトリー(BD Accuri(登録商標) C6 Plus Flow Cytometer, BD biosciences)蛍光値量(Ex.= 488 nm、Em.= 533±15 nm)を測定した。細胞におけるカスパーゼ-1の活性化率は、コントロール(誘導)での蛍光値量を100としたときの値で算出した。
【0023】
試験例1.細胞内カスパーゼ1活性効果を表1に示す。
【0024】
【0025】
表1に示すように、本発明のカヌカ抽出物は、カスパーゼ-1の活性を抑制することが確認された。これにより、本発明のカヌカ抽出物は、様々な環境因子(紫外線、細菌等)により細胞内で生じるサイトカイン活性化の原因物質(カスパーゼ-1)の活性を抑制することができる。
【0026】
試験例2.サイトカイン産生抑制の評価試験
まず、「試験例1.細胞内カスパーゼ1活性評価試験」と同様の方法で正常ヒト線維芽細胞(NB1RGB)を培養し、培養液に試料の添加を行った。
【0027】
次に、UV-Bの照射から48時間後に培養上清を回収し、IL-1βのELISAキット(IL-1β Human ELISA Kit RSD-DLB50-1、R&D Systems, Inc.)、IL-18のELISAキット(Human Total IL-18/IL-1F4 ELISA Kit RSD-DL180-1、R&D Systems, Inc.)を用いてそれぞれのサイトカインの定量を行った。また細胞に対しては、MTT還元法による呼吸活性を測定した。すなわち0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンをイソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長570-630nmでMTT値を測定した。ここで得られたMTT値で各サイトカイン量を割った値をMTTあたりのサイトカイン量とし、UV-B照射処理したコントロール区を100とした相対値で示した。
【0028】
試験例2の結果を表2,3に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
表2,3に示すように、本発明のカヌカ抽出物はサイトカイン産生(IL-18, IL-1β)を抑制する効果を有することが確認された。これにより、本発明のカヌカ抽出物は、優れた抗炎症作用を示すことが判明した。またIL-1βは老化を誘導するSASP因子として知られていることから、本発明のカヌカ抽出物は優れた抗老化作用を示すことが判明した。
【0032】
試験例3.フィラグリン2(天然保湿因子)の発現に関する評価試験
正常ヒト表皮細胞(NHEK)を用いて実験を行なった。24ウェルプレートへ1ウェルあたり6.0×104個になるように播種した。1日間培養後、試験例2でサイトカインの定量に用いた線維芽細胞の培養上清を試料として添加した。24時間培養後、各添加区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)500μLで回収した。回収した表皮細胞に対してクロロホルム100μL添加して撹拌混合し12,500rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを200μL分取した。回収した水層にイソプロパノール250μLを添加して撹拌混合し、12,500rpm、4℃の条件下で10分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%冷エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、12,500rpm、4℃条件下で10分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製))を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice Real Time System Single(タカラバイオ社製)、及びSYBR Premix Ex TaqTM II(Perfect Real Time)[タカラバイオ社製]を用いて、ターゲット遺伝子(フィラグリン2遺伝子)の発現と、内部標準物質GAPDH遺伝子の発現の検出を行った。試験結果は、GAPDH遺伝子の発現量に対するターゲット遺伝子(フィラグリン2遺伝子:FLG2)の相対発現量を算出し、さらにコントロールの値を100とした相対率で表した。
【0033】
【0034】
表4に示すように、カヌカ抽出物は、UV-B照射上清添加によるフィラグリン2の発現低下を抑制し、フィラグリン2の発現量を高いレベルで維持することが判明した。これによりカヌカ抽出物は、紫外線による炎症からの皮膚の乾燥トラブルを抑制できるものと考えられる。
【0035】
試験例4.DPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去の評価試験
まず、DPPH2.4部をエタノール20部に溶解し、これに精製水20部を加えてDPPH溶液を調製した。このDPPH溶液24部に対して、18v/v%エタノール溶液を19.2部、2M酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を4.8部加えて、DPPH添加溶液として調製した。また、抽出液そのものの色調が試験に及ぼす影響を差し引くため、DPPH溶液の代わりに50v/v%エタノール溶液を用いて、18v/v%エタノール溶液と2M酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を混合した液を対照液とした。次に、製造例1の抽出物を精製水で希釈して試料溶液を調製した。ここで、試料溶液としては、その全量に対する各抽出物溶液の終濃度(溶液としての濃度)がそれぞれ0.5%,1.0%,2.0%となるように調製したものを使用した。この試料溶液とDPPH添加溶液又は対照液とを1:3の割合で混合し、37℃で20分間静置後、各試験溶液をDPPH添加溶液と混合した場合の550nmにおける吸光度と、同じく各試験溶液を対照液と混合した場合の550nmにおける吸光度との差を測定し、DPPHラジカルの残存量を確認した。また、同時にコントロールとして試料溶液の代わりに、精製水を用いて上記と同様の操作を行い、ここに得られるDPPHラジカル残存率に対する各試料添加時のDPPHラジカル残存率の相対値を求めた。
【0036】
試験例4の評価結果を表5に示す。
【0037】
【0038】
表5に示すように、本発明に係る製造例1の抽出物は優れたDPPHラジカル消去効果が確認され、抗酸化効果を示すことが確認された。活性酸素種は、インフラマソームの形成を促進することが知られていることから、本発明に係る抽出物の抗酸化効果はインフラマソーム形成によるカスパーゼ-1活性抑制効果に寄与することが示唆される。
【0039】
試験例5.紅斑抑制評価試験
まず、表6に示す製造例1の抽出物(0.5%)を配合したローション(本発明試料1)と製造例1の抽出物に替えて30%ブチレングリコール水溶液(1,3-BG)を配合したコントロールローション(比較試料1)を調製した。
【0040】
【0041】
表6に示す本発明試料1と比較試料1のローションを被験者の左前腕部の被験部に塗布した。塗布は1日2回、1週間行った。その後、メグザメーターで各試験区の紅斑インデックスを測定(初期値)した後、各被験者の1MEDに相当する紫外線照射処理を行った。1日後、同様にメグザメーターを用いて紅斑インデックスを測定し、その値の初期値からの変化比を算出した。算出結果は、比較試料1の塗布区での測定結果を100としたときの本発明試料1の塗布区の測定値、無塗布区での測定値で表す。
【0042】
試験例6の結果を表7に示す。
【0043】
【0044】
表7に示すように、本発明試料1の塗布区は比較試料1の塗布区及び無塗布区と比較して、紅斑を抑える効果を有することが確認された。
【0045】
以下に本発明の抽出物を配合した化粧料の一例を示すが、本発明はこれに限るものではなく、皮膚に適用される化粧料を含むものとする。
【0046】
処方例1.化粧料
[成分] 部
製造例1の抽出物 0.5
β-グルカン 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
1,3-ブチレングリコール 1.0
クエン酸ナトリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
【0047】
処方例2.化粧料
[成分] 部
製造例1の抽出物 2.0
レチノイン酸ヒドロキシピナコロン 0.05
ビフィズス菌培養液 1.0
1,3-ブチレングリコール 0.1
フェノキシエタノール 0.5
クエン酸ナトリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
【0048】
処方例3.化粧料
[成分] 部
製造例1の抽出物 2.0
ツボクサエキスドロキシピナコロン 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.8
1,3-ブチレングリコール 0.1
フェノキシエタノール 0.5
クエン酸ナトリウム 適量
精製水 全量が100部となる量