(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042867
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】通信端末及び通信端末プログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/72454 20210101AFI20240322BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H04M1/72454
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147780
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】509215765
【氏名又は名称】株式会社パイ・アール
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 功
【テーマコード(参考)】
5H181
5K127
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC17
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL06
5H181LL09
5H181MB02
5K127AA36
5K127BA03
5K127GA29
5K127GE12
5K127JA06
5K127JA25
(57)【要約】
【課題】運転者が所有する個人のスマートフォンといった携帯通信端末の操作抑制を行うことのできるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、第1の通信端末と、第2の通信端末と、VPNサーバーを備え、前記第1の通信端末は、携帯端末又は車載通信機であり、速度ないし移動検出手段を有し、当該速度ないし移動に関する情報を任意の通信手段により前記VPNサーバーに伝達し、前記第2の通信端末は、携帯通信端末であり、VPN接続により前記VPNサーバーと通信を行い、前記VPNサーバーは、前記速度ないし移動に関する情報と前記VPN接続による通信量を監視し、当該速度ないし移動に関する情報とVPN接続による通信量が所定の条件となった場合に前記VPN接続を制限ないし遮断することを特徴とする運転管理システムとすることで課題を解決した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度ないし移動を監視してアプリの利用制限を行う運行管理システムにおいて用いられる第1の通信端末であって、
速度ないし移動に関する元データを検出する速度等検出手段と、移動態様を検出して判定する移動態様判定手段と、前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用を制限するアプリ利用制限手段を備え、
検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合に、前記アプリ利用制限手段が有効化されることを原則としつつ、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合であっても、前記移動態様判定手段が特定状態であると判定した時には、前記アプリ利用制限手段が有効化されない
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記アプリ利用制限手段は、有効化されたときに、前記第1の通信端末に搭載される複数のアプリの少なくとも一部のアプリを利用できないようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記第1の通信端末は、前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末と、前記第2の通信端末とVPN接続により通信を行うVPNサーバーと、により運行管理システムを構築するものであって、
前記アプリ利用制限手段は、有効化されたときに、前記VPNサーバーに特定情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項4】
前記VPNサーバーは、VPN接続による通信量を監視し、VPN接続による通信量が所定の条件となった場合に、VPN接続を制限ないし遮断する
ことを特徴とする請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記移動態様判定手段は、加速度計と、判定処理手段を有し、
前記判定処理手段は、前記加速度計の検出値の時系列データを加工し、加工された値を複数の閾値と比較することによって、電車による移動であるか、乗用車輌による移動であるかの別を判断し、電車による移動と判断された場合に前記特定状態であると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項6】
前記移動態様判定手段は、磁気センサと、判定処理手段を有し、
前記判定処理手段は、前記磁気センサの検出値の時系列データを加工し、加工された値を閾値と比較し、回生ブレーキが使用されているか否かを判断することによって、電車による移動であるか、乗用車輌による移動であるかの別を判断し、電車による移動と判断された場合に前記特定状態であると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項7】
速度ないし移動を監視してアプリの利用制限を行う運行管理システムにおいて用いられるものであり、かつ、速度ないし移動に関する元データを検出する速度等検出手段と、所定の物理量を測定する物理量測定手段を有する第1の通信端末のコンピュータに、
速度ないし移動に関する元データを検出するステップと、
所定の物理量を測定するステップと、
測定された物理量に基づいて、移動態様を判定するステップと、
前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用を制限するステップ
を少なくとも実行させる通信端末プログラムであって、
検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合に、前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用制限がされることを原則としつつ、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合であっても、判定された移動態様が特定状態である時には、前記利用制限がされない
ことを特徴とする通信端末プログラム。
【請求項8】
前記判定するステップは、電車による移動であるか、乗用車輌による移動であるかの別を判断するステップを含み、電車による移動と判断された場合に前記特定状態であると判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の通信端末プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等を操作しながら自動車等の運転を行う行為、所謂「ながら運転」の防止に資する通信端末及び通信端末プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂「ながら運転」は大きな社会問題となっている。時速60kmで走行する自動車は1秒間に約17m、2秒間では約33m進むところ、運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なるが、画面を2秒以上見て危険を感じたとの報告は、各所よりなされている。このような状況の下、「ながら運転」の厳罰化がされたが、それでも問題が収束する兆候は一向に見られない。また、「ながら運転」の問題は運転者だけの問題に限られない。すなわち、輸送サービスや配送サービスの運転者或いは営業担当であっても自動車等を業務として運転する従業員を雇い入れている事業主には使用者責任があり、従業員が第三者に損害を与えた場合には賠償責任を負うことになる。
特許文献1には、運転監視機能により移動速度が所定の閾値を超えたことを検知した際に、従業員が操作するスマートフォン等のアプリケーションに対する操作に利用制限をかけるとともに、当該利用制限が発動された実績を管理者が把握できるシステムが開示されている。
また、従業員に社用のスマートフォンやスマートウッチの通信端末を貸与等し、この通信端末の移動速度が所定の閾値を超えたことを検知した際に、その旨の情報を個人のスマートフォンに伝え、当該スマートフォンの通信量を制限する態様というものも想定されている。そして、出願人は、この態様につき、実際に発明をし、出願もしている(現時点において未公開)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スマートフォン等の通信端末の操作の利用制限をする態様であれ、スマートフォン等の通信端末の通信量を制限する態様であれ、自動車を運転中であることが正しく認識・検出されるのであれば、「ながら運転」防止の手段として有効に機能するといえる。しかし、実際には、上手くいかない場合もある。例えば、運転者が職場まで電車に乗って通勤する場合には、電車の移動速度が所定の閾値を超えたことを検知すると運転監視機能が働いてしまうため、実際には、自動車を運転していない状況であるにも関わらず、操作利用制限や通信量制限が働いてしまい、スマートフォン等を使用できなくなってしまう。電車に乗る際には、運転監視機能を無効とすれば良いと考えるのは早計である。運転者が無効とした機能を、再び有効に戻すことを忘れてしまう可能性があるし、中には、確信的に有効化させない運転者も居るかもしれない。運転者の意思でシステムを無効化できない態様が、堅牢な管理システムといえるし、また、運転者にとっても、無効化や有効化といった操作を強いられることは煩雑というより他ない。そもそも、煩わしい設定操作等は極力排除されることが、システムとして望ましい形といえる。
このような状況に鑑みて、本発明の目的は、「ながら運転」防止を有効に行いつつも、運転者に煩わしさを感じさせない使い勝手の良い通信端末及び通信端末プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、速度ないし移動を監視してアプリの利用制限を行う運行管理システムにおいて用いられる第1の通信端末であって、速度ないし移動に関する元データを検出する速度等検出手段と、移動態様を検出して判定する移動態様判定手段と、前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用を制限するアプリ利用制限手段を備え、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合に、前記アプリ利用制限手段が有効化されることを原則としつつ、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合であっても、前記移動態様判定手段が特定状態であると判定した時には、前記アプリ利用制限手段が有効化されないことを特徴とする通信端末であり、この構成により前述の課題を解決した。
また、本発明は、速度ないし移動を監視してアプリの利用制限を行う運行管理システムにおいて用いられるものであり、かつ、速度ないし移動に関する元データを検出する速度等検出手段と、所定の物理量を測定する物理量測定手段を有する第1の通信端末のコンピュータに、速度ないし移動に関する元データを検出するステップと、所定の物理量を測定するステップと、測定された物理量に基づいて、移動態様を判定するステップと、前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用を制限するステップを少なくとも実行させる通信端末プログラムであって、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合に、前記第1の通信端末に搭載されるアプリ又は前記第1の通信端末と連関する第2の通信端末に搭載されるアプリの利用制限がされることを原則としつつ、検出された速度ないし移動に関する元データが所定の条件を満たした場合であっても、判定された移動態様が特定状態である時には、前記利用制限がされないことを特徴とする通信端末プログラムであり、この構成により前述の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
運転者に煩わしさを感じさせない使い勝手の良い通信端末において、「ながら運転」の発生を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る通信端末の機能ブロック図
【
図2】第1の実施形態における移動態様判定処理の概念を示すフロー図
【
図4】加速度に関する指標A1の時間的変化を示すグラフ
【
図5】第1の実施形態における移動態様判定処理(別の例)の概念を示すフロー図
【
図6】加速度の時間的変化と重力加速度を示すグラフ
【
図7】加速度に関する指標A2の時間的変化を示すグラフ
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る運行管理システムのシステム構成図
【
図9】第2の実施形態に係る運行管理システムにおける社用通信端末の一例を示す機能ブロック図
【
図10】第2の実施形態に係る運行管理システムにおける個人携帯通信端末の一例を示す機能ブロック図
【
図11】第2の実施形態に係る運行管理システムの動作概念を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る通信端末の機能ブロック図を示している。
図1に示されるように、通信端末1(第1の通信端末)は、CPU11と、メモリ12と、タッチパネル13付きディスプレイ14と、通信部15と、スピーカ16と、GPSモジュール17と、加速度センサ18と、角速度センサ19とを含む。メモリ12は、オペレーティングシステム121、各種アプリケーションプログラム122、データ等を記憶する。本実施の形態では、特に、メモリ12は、操作制限アプリケーションプログラム123を記憶する。CPU11は、メモリ12からオペレーティングシステム121、各種アプリケーションプログラム122、操作制限アプリケーションプログラム123を読み出して実行する。タッチパネル13付きディスプレイ14は、各種アプリケーションプログラム122、操作制限アプリケーションプログラム123等の実行に応じて画面を表示するとともに、ユーザによる操作入力を受け付ける。GPSモジュール17は、衛星からの信号を受信して通信端末1の位置(緯度及び経度)を特定する。加速度センサ18及び角速度センサ19は、通信端末1にかかる加速度及び角速度をそれぞれ検知する。速度算出部124は、GPSモジュール17、加速度センサ18及び角速度センサ19からの各検出信号を得て車両等の移動速度を検出する。また、自動車が速度を検出し、当該情報を通信端末1が受信する態様としてもよい。当該態様も、本発明の速度ないし移動検出手段の態様に含まれるものである。この他、通信端末1に図示されないコンパス(地磁気センサ)、LiDARスキャナ、気圧センサ、高度センサ、赤外線カメラ、照度センサといった機能を具備させて、これらの機能から得られる諸元を速度に変換して、これを検出できるように構成してもよい。
【0009】
操作制限アプリケーションプログラム123は、速度算出部124及び移動態様判定部125との連携が図られている。速度算出部124は、例えば、バックグラウンドで常にGPSモジュール17を利用して速度を算出する。移動態様判定部125は、加速度センサ18、角速度センサ19を利用して、後記する特定状態であることを判定する。この他、地磁気センサ(不図示)、LiDARスキャナ(不図示)、気圧センサ(不図示)、高度センサ(不図示)、赤外線カメラ(不図示)、照度センサ(不図示)により、速度算出や特定状態判定をするように構成しても良い。
【0010】
具体的に、算出された速度が、所定の閾値、例えば、時速30km以上を超えたときに、自動車を運転している可能性が高いと判断される。閾値を例えば時速30kmとすることで、シティーサイクル(ママチャリ)、マウンテンバイク、クロスバイクといった自転車に乗っている状態を排除して、自動車運転中(ないし乗車中)であるか否かを有効に認識することができる。ロードバイクの場合には、時速30kmを超える場合もあるかもしれないが、特殊な場合として、ここでは、考慮外とする。
しかし、上記した特殊な場合でないにも関わらず、自動車に乗車しての移動でない場合であって、しかも、普通に起こり得る状況がある。電車に乗って移動している場合である。電車の時速は普通に30kmを超えるものであり、この状況で、自動車を運転している可能性が高いと判断され、スマートフォンの利用制限がされてしまうとしたら、誰も、操作制限アプリを導入(インストール)しようという意欲は起きなくなってしまう。そこで、操作制限アプリケーションプログラム123は、速度算出部124の出力結果だけでなく、移動態様判定部125の出力結果も考慮して、自動車運転中(ないし乗車中)であるか、それとも、電車に乗っている特定状態であるかを判断できるように構成されている。
【0011】
(特定状態判定処理について)
図2は、第1の実施形態における移動態様判定処理の概念を示すフロー図であり、より具体的には、アプリ利用制限手段の有効化処理、換言すれば、特定状態と判定するための処理について説明するためのフロー図である。通信端末1は、電源オンとなっている場合には、通常であれば操作可能であり、
図2のフロー図のループ記号に示されるように、後記するステップS107の操作不能化処理への分岐がされない限り、図示される処理が繰り返されることになる。すなわち、操作可能の状態から、ステップS101において、速度算出部124で算出された速度が、所定の閾値であるVmaxを超えたか否かが判断される。結果が超えていないとの判断であれば、ステップS102に示されるように、操作可能な状態が継続され、繰り返し処理となる。結果が超えているとの判断であれば、ステップS103において、Gセンサ(例えば、加速度センサ18)により、通信端末1の加速度の瞬時値の集合としての連続値が1秒間に亘って取得される。
【0012】
ステップS104において、必要に応じて、フーリエ変換、逆フーリエ変換処理を行って、ノイズ成分を除去する。これは、電気的ノイズの除去のためであるが、手振れによる影響を排除する目的も兼ねている。ただし、必ずしも、必要な処理ではなく、この後のステップS106の判断処理において第二の閾値Amax1が用意されていることからすれば、省いても構わない。飽くまで、実施形態において設けられている処理として理解されたい。
ステップS105において、取得された1秒間の加速度瞬時値のそれぞれの値のベクトルの大きさの最大値と最小値を抽出し、その差分であるΔAを導出して、これを判定に用いるA1として監視する。
ステップS106において、A1が、第一の閾値Amin1より大きく、第二の閾値Amax1より小さければ、自動車運転中(ないし乗車中)であると判断されて、ステップS107において、通信端末1のアプリの操作の大部分が制限される。具体的には、操作が制限されるアプリのアイコン自体をスマートフォンの画面に表示させないようにして、操作が許可されている一部のアプリのみが画面に表示されるようにする。なお、表示させないアプリ、すなわち、操作を制限するアプリの種類や数については、アプリ利用制限アプリ(アプリ利用制限手段)の機能設定モードにおいて、運転者ないし管理者が適宜に設定できるように構成されている。
【0013】
一方、ステップS106において、A1が、第一の閾値Amin1以下であるか、又は、第二の閾値Amax1以上である場合には、特定状態であると判断して、ステップS101において速度算出部124で算出された速度が所定の閾値であるVmaxを超えたと判断されているにも関わらず、通信端末1のアプリの操作不能化処理を実行しない。その結果、ステップS102に示されるように、操作可能な状態が継続され、繰り返し処理となる。
【0014】
この作用機序につき、グラフを用いて説明する。
図3は、1秒間にサンプリングされる加速度瞬時値の変化を示すグラフであって、縦軸が加速度を示し、横軸が時間を示している(ただし、示されている数字はサンプリング回数である。)。電車で移動中又は停止時の加速度瞬時値の変化は実線でプロットされており、自動車で移動中の加速度瞬時値の変化は点線でプロットされており、通信端末1を手で振ったりした時の加速度瞬時値の変化は破線でプロットされている。特定状態判定処理におけるステップS105に関しての説明で述べたように、1秒間にサンプリングされた加速度瞬時値について、それぞれの値のベクトルの大きさの最大値と最小値を抽出し、その差分であるΔAを導出して、これを指標A1として設定する。
このように設定されたA1について説明するのが
図4である。すなわち、
図4は、加速度に関して、1秒ごとに取得される指標A1の1分間弱の間の時間的変化を示すグラフであり、縦軸がA1、すなわち、加速度瞬時値の最大値と最小値の差分であるΔAの大きさ(m/s
2)を示し、横軸が時間(秒)を示している。電車で移動中又は停止時のA1の変化は実線でプロットされており、自動車で移動中のA1の変化は点線でプロットされており、通信端末1を手で振ったりした時のA1の変化は破線でプロットされている。ここで、ΔAの大きさについては測定系によって異なることがあるものの、そのことが特定状態の判断においては然程の問題とはならない。
すなわち、
図4から明確に理解されるように、自動車の場合と電車(若しくは停止時)の場合との間で、A1の値につき十分な有意差がある。自動車の場合と手で振ったりした場合との間の差については言うまでもない。このことから、三者の態様を区別するための閾値である第一の閾値Amin1及び第二の閾値Amax1は簡単に設定することが出来る。
このように設定された二つの閾値によって、A1が第一の閾値Amin1以下であるときは、電車に乗っている状況であると判断され、A1が第二の閾値Amax1以上であるときは、操作している者がスマートフォンを急激に動かした状況が発生したと判断されることが理解される。これらの状況であれば、算出された速度が所定の閾値であるVmaxを超えたと判断している場合であっても、自動車運転中(ないし乗車中)ではない特定状態であると判断することによって、不要なアプリ制限機能を発動させないようにしている。
ところで、第二の閾値Amax1以上であるとの判断は、一言でいえば、手振れ対策に起因したノイズ除去のために用意されたものである。したがって、先に説明したフーリエ変換、逆フーリエ変換処理によって、十分なノイズを除去できるのであれば、閾値はAmin1だけとして、電車に乗っているのか、自動車運転中(ないし乗車中)なのかの別だけを判断するように構成してもよい。
また、電車でも、緊急時やそうでない場合であっても、急な減速がされることがあるし、自動車の運転でも、ゆっくりとした加減速での運転が染みついている運転者も存在する。
図2のステップS107では、1秒間での判定の唯一回のみで、特定状態であることが判断されるようにしているが、例えば、ステップS107での判定結果を、10秒間(10回分)蓄積して、その8割がAmin1以下であった場合に電車に乗っている状況であると最終判断されるようにしてもよい。電車に乗っていると判断され難いようにしているのは、安全係数を高く取るという発想に基づくものである。この変形例では、最終判断での判定結果が是であることを以て、特定状態であるということになる。
【0015】
(特定状態判定処理の別の例)
図5は、第1の実施形態に係る通信端末の動作フローの別の例である。ここでは、
図2のものとは、移動態様判定部の処理が異なるものとされている。通信端末1は、電源オンとなっている場合には、通常であれば操作可能であり、
図5のフロー図のループ記号に示されるように、後記するステップS207の操作不能化処理への分岐がされない限り、図示される処理が繰り返されることになる。すなわち、操作可能の状態から、ステップS201において、速度算出部124で算出された速度が、所定の閾値であるVmaxを超えたか否かが判断される。結果が超えていないとの判断であれば、ステップS202に示されるように、操作可能な状態が継続され、繰り返し処理となる。結果が超えているとの判断であれば、ステップS203において、Gセンサ(例えば、加速度センサ18)により、通信端末1の加速度の瞬時値の集合としての連続値が1秒間に亘って取得される。
【0016】
ステップS204において、必要に応じて、フーリエ変換、逆フーリエ変換処理を行って、ノイズ成分を除去する。これは、電気的ノイズの除去のためであるが、手振れによる影響を排除する目的も兼ねている。ただし、必ずしも、必要な処理ではなく、この後のステップS206の判断処理において第二の閾値Amax2が用意されていることからすれば、省いても構わない。飽くまで、実施形態において設けられている処理として理解されたい。
ステップS205において、取得された1秒間の加速度瞬時値のそれぞれの値のベクトルの大きさから重力加速度g(9.8m/s2)を差し引いて、この中で一番大きな値を、判定に用いるA2として監視する。
ステップS206において、A2が、第一の閾値Amin2より大きく、第二の閾値Amax2より小さければ、自動車運転中(ないし乗車中)であると判断されて、ステップS207において、通信端末1のアプリの操作の大部分が制限される。具体的には、操作が制限されるアプリのアイコン自体をスマートフォンの画面に表示させないようにして、操作が許可されている一部のアプリのみが画面に表示されるようにする。なお、表示させないアプリ、すなわち、操作を制限するアプリの種類や数については、アプリ利用制限アプリ(アプリ利用制限手段)の機能設定モードにおいて、運転者ないし管理者が適宜に設定できるように構成されている。
【0017】
一方、ステップS206において、A2が、第一の閾値Amin2以下であるか、又は、第二の閾値Amax2以上である場合には、特定状態であると判断して、ステップS201において速度算出部124で算出された速度が所定の閾値であるVmaxを超えたと判断されているにも関わらず、通信端末1のアプリの操作不能化処理を実行しない。その結果、ステップS202に示されるように、操作可能な状態が継続され、繰り返し処理となる。
【0018】
この作用機序につき、グラフを用いて説明する。
図6は、1秒間にサンプリングされる加速度瞬時値の変化を示すグラフであって、縦軸が加速度を示し、横軸が時間を示している(ただし、示されている数字はサンプリング回数である。)。電車で移動中又は停止時の加速度瞬時値の変化は実線でプロットされており、自動車で移動中の加速度瞬時値の変化は点線でプロットされており、通信端末1を手で振ったりした時の加速度瞬時値の変化は破線でプロットされている。さらに、重力加速度g(9.8m/s
2)についても実線で描かれている。特定状態判定処理におけるステップS205に関して、先に説明したように、1秒間にサンプリングされた加速度瞬時値について、それぞれの値のベクトルの大きさから重力加速度g(9.8m/s
2)を差し引いて、この中で一番大きな値を指標A2として設定する。
このように設定されたA2について説明するのが
図7である。すなわち、
図7は、加速度に関して、1秒ごとに取得される指標A2の1分間弱の間の時間的変化を示すグラフであり、縦軸がA2、すなわち、加速度瞬時値から重力加速度g(9.8m/s
2)を差し引いて、その中の一番大きな値(m/s
2)を示し、横軸が時間(秒)を示している。電車で移動中又は停止時のA2の変化は実線でプロットされており、自動車で移動中のA2の変化は点線でプロットされており、通信端末1を手で振ったりした時のA2の変化は破線でプロットされている。ここで、A2の大きさについては測定系によって異なることがあるものの、そのことが特定状態の判断においては然程の問題とはならない。
すなわち、
図7から明確に理解されるように、自動車の場合と電車(若しくは停止時)の場合との間で、A2の値につき十分な有意差がある。自動車の場合と手で振ったりした場合との間の差については言うまでもない。このことから、三者の態様を区別するための閾値である第一の閾値Amin2及び第二の閾値Amax2は簡単に設定することが出来る。
このように設定された二つの閾値によって、A2が第一の閾値Amin2以下であるときは、電車に乗っている状況であると判断されるべきであり、A2が第二の閾値Amax2以上であるときは、操作している者がスマートフォンを急激に動かした状況が発生したと判断されるべきであることが理解される。これらの状況であれば、算出された速度が所定の閾値であるVmaxを超えたと判断している場合であっても、自動車運転中(ないし乗車中)ではない特定状態であると判断することによって、不要なアプリ制限機能を発動させないようにしている。
ところで、第二の閾値Amax2以上であるとの判断は、一言でいえば、手振れ対策に起因したノイズ除去のために用意されたものである。したがって、先に説明したフーリエ変換、逆フーリエ変換処理によって、十分なノイズを除去できるのであれば、閾値はAmin2だけとして、電車に乗っているのか、自動車運転中(ないし乗車中)なのかの別だけを判断するように構成してもよい。
また、電車でも、緊急時やそうでない場合であっても、急な減速がされることがあるし、自動車の運転でも、ゆっくりとした加減速での運転が染みついている運転者も存在する。
図2のステップS107では、1秒間での判定の唯一回のみで、特定状態であることが判断されるようにしているが、例えば、ステップS107での判定結果を、10秒間(10回分)蓄積して、その8割がAmin2以下であった場合に電車に乗っている状況であると最終判断されるようにしてもよい。電車に乗っていると判断され難いようにしているのは、安全係数を高く取るという発想に基づくものである。この変形例では、最終判断での判定結果が是であることを以て、特定状態であるということになる。
【0019】
(特定状態判定処理のさらに別の例)
図2と
図5の処理では、演算に違いはあっても、加速度に関する指標を用いるという点では共通していたが、加速度以外の指標を用いて、特定状態であると判定することもできる。例えば、通信端末1に搭載されている地磁気センサ(不図示)を用いる。電車が加速する際、付随車でなく電動車や制御者であれば、モータやインバータの動作によって大きな磁気ノイズが発生する。付随車は空気ブレーキで制動を行うが、それを補うための電動車が回生ブレーキを用いるため、車輌全体に大きな磁気ノイズが生じることになる。また、電車が一定速度での惰性走行をしている際には、電車に起因する磁器ノイズは小さくなるものの、電車が走行する軌道上では、架線や軌道等の影響から、やはり磁気ノイズが存在し、それは、自動車の周辺環境よりは大きいものである。
この地磁気ノイズをスマートフォンで感知し、必要な統計処理を経て、特定状態であることを判定するのである。図示は省略するが、
図2のステップS101の後に、地磁気センサ(不図示)が取得した値のうち、ノイズとみなせるものを排除した上で、所定の閾値を超えた場合を特定状態とする。それ以外の操作不能化処理、操作可能な状態の継続、繰り返し処理といった内容は、
図2や
図5に示されるフローと同様である。
【0020】
<第2の実施形態>
先に述べたように、本発明者は、通信端末の移動速度が所定の閾値を超えたことを検知した際に、その旨の情報を個人のスマートフォンに伝え、当該スマートフォンの通信量を制限するシステムを発明している。当該システムに、本発明を適用した場合の実施形態である第2の実施形態につき、図面に基づいて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る運行管理システムのシステム構成図を示しており、
図9は、第2の実施形態に係る運行管理システムにおける第1の通信端末の一例を示しており、
図10は本発明の実施形態に係る運行管理システムにおける第2の通信端末の一例を示している。
【0021】
図8に示すように、本発明の実施形態に係る運行管理システム100は、移動車両で使用される社用通信端末2(第1の通信端末)及び個人携帯通信端末3(第2の通信端末)と、管理者が直接的ないし間接的に管理するVPNサーバー4と、から構成され、当該2つの端末とVPNサーバー4とは携帯電話通信網及び/又はインターネット通信網で接続されている。なお、括弧書きでの「(第1の通信端末)」及び「(第2の通信端末)」との表記は、特許請求の範囲中の記載に対応することを示すために併記したものである。
【0022】
社用通信端末2(第1の通信端末)は、自動車等の車内で操作される。通常は会社から社用端末として支給ないし貸与される携帯端末であり、典型例としてはスマートフォンが挙げられるが、スマートウッチやその他の移動検出器も含まれる。また、携帯端末に限られず、自動車等に据え付けられた車載通信機であってもよい。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、自動車等の車内で操作されるものであって、運転者の個人所有のスマートフォン等が想定されている。
【0023】
VPNサーバー4は、管理者自身が保持して第2の実施形態の運行システムを直接に管理する態様か、或いは、第三者が所有しているサーバーの一部貸与を受ける等して管理者が本発明の運行システムを管理するために使用される態様の何れであってもよいが、社用通信端末2(第1の通信端末)から情報を受け取って、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の利用に制限をかけるためのものである。
【0024】
VPNサーバー4には、通常のインターネット利用と同様に、インターネット通信網を介して他者が提供するサービスやコンテンツを供給するサーバー等の他者提供サービスコンテンツ5が接続されることが想定されている。また、VPNサーバー4には、スケジュール管理サーバー6が接続されているが、付加的な機能構成であって、必須のものではない。
【0025】
図9に示されるように、社用通信端末2(第1の通信端末)は、CPU21と、メモリ22と、タッチパネル23付きディスプレイ24と、通信部25と、スピーカ26と、GPSモジュール27と、加速度センサ28と、角速度センサ29とを含む。メモリ22は、オペレーティングシステム221、各種アプリケーションプログラム222、データ等を記憶する。本実施の形態では特に、メモリ22は、特定情報送出アプリケーションプログラム223を記憶する。CPU21は、メモリ22からオペレーティングシステム221、各種アプリケーションプログラム222、特定情報送出アプリケーションプログラム223を読み出して実行する。タッチパネル23付きディスプレイ24は、各種アプリケーションプログラム222、特定情報送出アプリケーションプログラム223等の実行に応じて画面を表示するとともに、ユーザによる操作入力を受け付ける。GPSモジュール27は、衛星からの信号を受信して社用通信端末2(第1の通信端末)の位置(緯度及び経度)を特定する。加速度センサ28及び角速度センサ29は、社用通信端末2(第1の通信端末)にかかる加速度及び角速度をそれぞれ検知する。速度算出部224は、GPSモジュール27、加速度センサ28及び角速度センサ29からの各検出信号を得て車両等の移動速度を検出する。また、自動車が速度を検出し、当該情報を社用通信端末2(第1の通信端末)が受信する態様としてもよい。当該態様も、本発明の速度検出手段の態様に含まれるものである。この他、社用通信端末2(第1の通信端末)に図示されないコンパス(地磁気センサ)、LiDARスキャナ、気圧センサ、高度センサ、赤外線カメラ、照度センサといった機能を具備させて、これらの機能から得られる諸元を速度に変換して、これを検出できるように構成してもよい。
【0026】
特定情報送出アプリケーションプログラム223は、速度算出部224及び移動態様判定部225との連携が図られている。速度算出部224は、例えば、バックグラウンドで常にGPSモジュール27等を利用して速度を算出する。移動態様判定部225は、加速度センサ28、角速度センサ29を利用して、特定状態であることを判定する。この他、地磁気センサ(不図示)、LiDARスキャナ(不図示)、気圧センサ(不図示)、高度センサ(不図示)、赤外線カメラ(不図示)、照度センサ(不図示)により、速度算出や特定状態判定をするように構成しても良い。
社用通信端末2(第1の通信端末)とVPNサーバー4との通信は、携帯電話通信網やインターネット通信網の任意の通信回線で通常の接続によってなされるが、VPN接続によって接続されるようにしてもよい。社用端末である以上、会計情報や契約情報等、秘匿性の高い情報を通信することもあり得る。そのような場合にセキュリティの高いVPN接続は有効である。
【0027】
図10に示されるように、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、CPU31と、メモリ32と、タッチパネル33付きディスプレイ34と、通信部35と、スピーカ36と、GPSモジュール37とを含む。メモリ32は、オペレーティングシステム321、各種アプリケーションプログラム322、データ等を記憶する。タッチパネル33付きディスプレイ34は、各種アプリケーションプログラム322の実行に応じて画面を表示するとともに、ユーザによる操作入力を受け付ける。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、運転者の個人所有のスマートフォンであり、当然に携帯電話通信網やインターネット通信網の任意の通信回線で各種サービスに接続することができる。しかしながら、第2の実施形態に係る運行管理システムの下で個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、業務中には、L2TP、IPSec、IKEv2等の各種プロトコルに従って、OSでVPNのセットアップがされてVPN接続によって通信が行われることが前提とされるものであって、雇用者と従業員の間には個人所有のスマートフォンについて、業務中はVPN設定をしなければいけないことが就業規則に定められる等の措置が講じられている。雇用者である運行管理者は運転者(従業員)に対し、本システムの概要を説明し、業務中は社用端末としての社用通信端末2(第1の通信端末)を必ず所持し、個人所有のスマートフォン等である個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN設定を有効化するよう伝える。一方、運転者(従業員)は、個人所有のスマートフォン等である個人携帯通信端末3(第2の通信端末)にオペレーティングシステム321からVPN設定を行う。
【0028】
VPNサーバー4は、社用通信端末2(第1の通信端末)から出力される運転中信号を受信する。運転中信号は、高速移動中であるが、電車に乗っているのではないと判断された場合に送出される信号である。VPNサーバー4と社用通信端末2(第1の通信端末)との通信は任意の通信網で任意の接続方式によって行われる。また、VPNサーバー4は、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)とのVPN接続によって通信を行う。運転者(従業員)は、VPNサーバー4を介して他者提供のサービスやコンテンツにアクセスして、動画やゲームを楽しんだり、各種のサービスを受けたりすることができる。しかし、これは当然に運転中でない状況に限られたことである。VPNサーバー4は、社用通信端末2(第1の通信端末)から出力される運転中信号と個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN接続における通信量を監視して、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の利用に一定の制限をかけるように構成されている。
【0029】
社用端末としての社用通信端末2(第1の通信端末)と個人所有のスマートフォン等である個人携帯通信端末3(第2の通信端末)との間には紐づけがされており、VPNサーバー4には、その登録情報が保持されている。また、VPNサーバー4は、運転者(従業員)ごとのVPN接続情報を生成することが可能とされている。
【0030】
(動作フロー)
図11は、本発明の実施形態に係る運行管理システムの動作を示すフローである。動作の流れを概念的に示すものであって、純粋な処理フローではない点に留意されたい。
左に社用通信端末2(第1の通信端末)としての社用端末の動作ないし状態についての遷移が、右に個人携帯通信端末3(第2の通信端末)としての私用端末の動作ないし状態についての流れが、中央にVPNサーバー4の動作ないし状態が、それぞれ示されている。各所で実行ないし判定されるステップについて、それぞれ「S1-〇」、「S2-△」、「S3-×」等と記載されている。
【0031】
先ず、社用通信端末2(第1の通信端末)のフローについて説明する。運転者(従業員)が車両に乗車していない場合、若しくは、車両が完全に停止している状態が継続されている場合には、当然ながら、社用通信端末2(第1の通信端末)は操作及び通信が可能である。この他、運転者(従業員)が電車に乗っている場合も、社用通信端末2(第1の通信端末)は操作及び通信が可能である。車両が発進して、ステップS1-1において、速度が予め設定された閾値を超え、かつ、電車に乗っているのではないと判断された場合に、社用通信端末2(第1の通信端末)は車両が走行中であることを示す運転中信号をVPNサーバー4に対して送信すると共に、社用通信端末2(第1の通信端末)の操作及び通信を不能化する。当該ステップS1-1の判断は、既に説明したところの加速度に関する指標を用いる判断処理(
図2又は
図5)や、地磁気センサが取得した値を利用する判断処理(不図示)が用いられることになる。
ステップS1-2は、このようにして社用通信端末2(第1の通信端末)が操作不能化された状態を示している。一方、ステップS1-1において、速度が予め設定された閾値を超えていないか、若しくは、電車に乗っていると判断された場合には、社用通信端末2(第1の通信端末)が操作可能である状態は継続されることになる。ステップS1-3は、この状態を示すものである。
【0032】
なお、社用通信端末2(第1の通信端末)は会社から支給ないし貸与される社用端末であるところ、予め十分な機能制限がされているような端末である場合には、ステップS1-1において運転中信号をVPNサーバー4に送信処理するだけとしてもよい。要するに、社用通信端末2(第1の通信端末)の操作不能化は、社用通信端末2(第1の通信端末)が備える機能如何によっては必須のものとならないこともある。
【0033】
次に、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のフローとVPNサーバー4のフローについて併せて説明する。既に説明したように、運転者(従業員)は、業務中、社用端末としての社用通信端末2(第1の通信端末)を必ず所持し、個人所有のスマートフォン等である個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN設定を有効化するような社内ルールが設けられている。当該ルールに従って、運転者(従業員)は、VPN設定を有効にする。運転者(従業員)がルールを遵守していれば、ステップS2-1において、VPN設定が有効と判断されることになる。その後は、自動車で走行しない限り、或いは、電車に乗って移動している限り、運転者(従業員)はVPN接続によって、インターネット上のコンテンツや各種サービスを利用することができる。ステップS2-2は、この状態を示すものである。
【0034】
ステップS1-1の判断処理の結果、送信出力された運転中信号を、ステップS3-1において受け取ったと判断したVPNサーバー4は、その後、社用通信端末2(第1の通信端末)に紐づけられている個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN通信量を監視する。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、運転者(従業員)が意識していない時にもバックグラウンドで起動しているアプリ等の動作によって、VPNを通じて微量な通信(例えばスマホの位置情報についての通信等)を常に行っている。ところが、運転者(従業員)が積極的にインターネットサービスを利用しようとしたならば、VPN通信量は格段に増加する。監視を続けているVPNサーバー4が、ステップS3-2においてVPN通信量の瞬時値が予め設定された閾値を超えたと判断したならば、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN通信を遮断すると共に、図示されない管理者への通信によって、当該個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の運転者(従業員)が走行中に端末を利用した旨を通知する処理を行う。また、運転者(従業員)に対しても、警告としての通知を行うようにしてもよい。ステップS2-3は、VPN通信が停止とされた個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の状態を示している。
【0035】
ステップS3-1で社用通信端末2(第1の通信端末)からの運転中信号を受信した際に、直ちに、それに紐づけられている個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN通信を遮断する手法も考えられるが、家族からの緊急メールやLINE通知などが個人携帯通信端末3(第2の通信端末)に向けて送られてくる不測の事態もあり得るため、そのような通信量の小さい信号は受け取れるようにされている。同様の理由によって、VPN通信量の瞬間値の単純な閾値との比較でなく、通信量を継続監視して、VPN通信量の積分値が閾値を超えた場合をステップS3-2の判断の条件としてもよい。
【0036】
ところで、業務中、個人所有のスマートフォンのVPN設定を有効化するという社内ルールがあるにも関わらず、VPN設定を有効化せずにスマートフォンを使用し続けようとする運転者(従業員)が発生するかもしれない。本発明の実施形態に係る運行管理システムは、このような場合にも有効に対応できるように構成されている。
【0037】
運転者(従業員)がVPN設定を有効にしなかったならば、ステップS2-1において、VPN設定が有効とは判断されない。そのまま、VPN接続に依らない通常の通信手段によって、インターネットサービスを利用しようとする運転者(従業員)は、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の電源をオフとすることもなければ、機内モードに設定することもない筈である。この場合には、ステップS2-4において、電源オフでなければ機内モードでもないと判断されることになる。そして、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は、VPNに依らない通常の通信手段によって、バックグラウンドで起動しているアプリ等の動作による微量の通信を行うこともあれば、運転者(従業員)の積極的な操作による一定程度の通信を行うこともある。ステップS2-5は、この状態を示すものである。
【0038】
一方、VPNサーバー4は、そのような個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の通信を認識することができない。VPN接続による通信が一切行われていないからである。そこで、ステップS3-3において、監視対象である個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN通信が一定時間行われていないか否かを判断し、行われていない場合には、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)が通常の通信手段によって通信を行っていないか否かを確認するための処理を行う。その処理とは、VPNサーバー4から個人携帯通信端末3(第2の通信端末)へワン切の電話通信を行うことである。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)から呼び出し音が返された場合には、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)の電源はオンになっているにも関わらず、VPN通信について、バックグラウンドで実行される微量な通信も行われていないことを以て、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)のVPN設定が無効化されていると判断する。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)から留守番電話メッセージ等のアンサーメッセージが返された場合には、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)は電源がオフされているものと判断して、問題なしとして扱われる。
【0039】
また、本発明の第2の実施形態に係る運行管理システムは、付加的な機能構成を追加することによって、別の特殊状況にも対応できるように構成されている。別の特殊状況というのは、車両が電波の届かない地域(トンネル・地下など)を走行している状況である。付加的な機能構成であるスケジュール管理サーバー6には、対象とする運転者(従業員)の当日の大まかな運行スケジュールが社用通信端末2(第1の通信端末)に紐づけられて記憶されている。本来なら社用端末から届く走行情報が届かないことを検知したVPNサーバー4は、スケジュール管理サーバー6に記憶されている運行スケジュールを参照しつつ、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)へワン切の電話通信を行う。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)から、呼び出し音及びアンサーメッセージの何れも返されてこない場合や「ただいま、電波の届かないところに居ます」といったメッセージが返された場合には、車両がトンネル・地下などを走行中であると推定して問題なしと扱う。
【0040】
特殊状況としては、この他に、社用端末を携行するのを忘れ、或いは、意図的に携行せず、かつ、使用携帯端末のVPN設定も忘れ、或いは、意図的に設定しない場合が想定される。VPNサーバー4は、スケジュール管理サーバー6に記憶されている運行スケジュールを参照することによって、本来なら社用端末から届く筈の走行情報が届かないことを認識する。そこで、VPNサーバー4は、個人携帯通信端末3(第2の通信端末)へワン切の電話通信を行う。個人携帯通信端末3(第2の通信端末)から、呼び出し音が返ってきた場合は、ドライバーがミスないしルール違反をしているものとして扱い、警告や通知を行うようにする。
【0041】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態に係る運行管理システムについて、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、加速度に関する指標や、磁気ノイズを用いて、電車に乗っての移動か否か判定したが、これ以外にも、電車に乗っていることを有効に判定できる手法があれば、その手法を用いるものであってもよい。本発明は、電車に乗っていることを判定できる手法を単に提案するということではなく、「ながら運転」防止技術において、自動車運転中でないにも関わらず、アプリ利用制限が働いてしまうという問題を解決する処に、本質的な技術的意義が存する。このことは、アプリ利用停止という第1の実施形態、及び、通信量制限という第2の実施形態の両者に亘って、本発明が適用し得ることから明確に理解されるべきことである。
【符号の説明】
【0042】
1 通信端末(第1の通信端末)
11 CPU
12 メモリ
121 オペレーティングシステム
122 各種アプリケーションプログラム
123 操作制限アプリケーションプログラム(アプリ利用制限手段)
124 速度算出部
125 移動態様判定部
13 タッチパネル
14 ディスプレイ
15 通信部
16 スピーカ
17 GPSモジュール
18 加速度センサ
19 角速度センサ
100 運行管理システム
2 社用端末(第1の通信端末)
21 CPU
22 メモリ
221 オペレーティングシステム
222 各種アプリケーションプログラム
223 特定情報送出アプリケーションプログラム(アプリ利用制限手段)
224 速度算出部
225 移動態様判定部
23 タッチパネル
24 ディスプレイ
25 通信部
26 スピーカ
27 GPSモジュール
28 加速度センサ
29 角速度センサ
3 私用端末(第2の通信端末)
31 CPU
32 メモリ
321 オペレーティングシステム
322 各種アプリケーションプログラム
33 タッチパネル
34 ディスプレイ
35 通信部
36 スピーカ
37 GPSモジュール
4 VPNサーバー
5 他者提供サービスコンテンツ
6 スケジュール管理サーバー