(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042869
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】部品取出装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/00 20060101AFI20240322BHJP
B65G 59/06 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B23P19/00 301B
B65G59/06 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147782
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 涼
(72)【発明者】
【氏名】保坂 文章
【テーマコード(参考)】
3C030
3F030
【Fターム(参考)】
3C030AA05
3C030AA13
3F030CA02
3F030CB04
3F030FA01
(57)【要約】
【課題】部品を容易に揃えることができ、かつ、部品を容易に補充することができる部品取出装置を提供する。
【解決手段】部品取出装置10は、重積した部品Mを下から順に取り出すものであり、保持部材11Aにより複数の部品Mを重積した状態に保持すると共に、重積方向IIの一方の端部から部品Mを取り出し可能な部品カートリッジ11と、この部品カートリッジ11の重積方向IIの下方において、重積方向IIに対して垂直方向に往復移動可能に配設された切り出し部材12とを備えている。部品カートリッジ11は、部品Mの取り出し側を下にし、かつ、重積方向IIを斜めに傾斜させて配設される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材により複数の部品を重積した状態に保持すると共に、重積方向の一方の端部から前記部品を取り出し可能であり、前記部品の取り出し側を下にし、かつ、重積方向を斜めに傾斜させて配設される部品カートリッジと、
前記部品カートリッジの重積方向の下方において、重積方向に対して垂直方向に往復移動可能に配設され、前記部品カートリッジ側の面に前記部品カートリッジから前記部品の1つを落下させる凹部が設けられた切り出し部材と
を備えたことを特徴とする部品取出装置。
【請求項2】
前記部品カートリッジと前記切り出し部材と組とし、複数組設けたことを特徴とする請求項1記載の部品取出装置。
【請求項3】
前記部品カートリッジの水平方向に対する重積方向の角度は、20°以上45°以下であることを特徴とする請求項1記載の部品取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重積された複数の部品を下から順に取り出す部品取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の組立ラインでは、例えば、部品の取出しに際し、部品置き場に重積して置いてある部品を作業員が1つずつ上から取り出して仮置台に載置し、仮置台に載置した部品を組立ロボットにより把持して取付対象に取り付けている。部品置き場からの取り出しを作業員により行うのは、重積してある部品を上から順に取り出すために、1回毎に取り出し位置が変化し、作業ロボットにより取り出すのが難しいからである。そのため、作業者の歩行を含め部品セットの工数が多くなり、また、部品置き場で下の方に重積されている部品は部品置き場に留まる時間が長くなり、錆などの品質不良が発生する恐れがあった。
【0003】
そこで、例えば、重積した部品を下から順に取り出す装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、例えば、
図5に示したように、収納部111に複数の部品Mを重積して収納し、収納部111の下に、最下部の部品Mを落下させることが可能な凹部112Aを設けた引出手段112を移動可能に設けたものである。この装置によれば、引出手段112を往復移動させることにより、凹部112Aに最下部の部品Mを落下させて、収納部111の下から取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、収納部111に重積された部品Mを円滑に落下させるために、収納部111と部品Mとの間に隙間を設ける必要がある。そのため、収納部111の内部において部品Mが水平方向に動ける状態にあり、収納部111と部品Mとの間の隙間に合わせて、引出手段112の凹部112Aの大きさを部品Mの外形よりも広くしないと部品Mが凹部112Aに嵌らず、凹部112Aにおける部品Mの位置にばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0006】
また、収納部111に部品Mを補充する方法としては、部品Mを重積して保持部材で保持した部品カートリッジを用い、部品カートリッジから複数の部品Mを補充することが考えられるが、特許文献1に記載の装置では、部品カートリッジの開口部を真下にして配置しなければならず、配置中に部品Mが落下する恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、部品を容易に揃えることができ、かつ、部品を容易に補充することができる部品取出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の部品取出装置は、保持部材により複数の部品を重積した状態に保持すると共に、重積方向の一方の端部から部品を取り出し可能であり、部品の取り出し側を下にし、かつ、重積方向を斜めに傾斜させて配設される部品カートリッジと、部品カートリッジの重積方向の下方において、重積方向に対して垂直方向に往復移動可能に配設され、部品カートリッジ側の面に部品カートリッジから部品の1つを落下させる凹部が設けられた切り出し部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品カートリッジを部品の取り出し側を下にし、かつ、重積方向を斜めに傾斜させて配設するようにしたので、重力により、部品に対し、重積方向に落下する力と、重積方向に対して垂直方向に落下する力とを働かせることができる。よって、重積方向に落下する力により、部品を取り出し側に順次落下させると共に、重積方向に対して垂直方向に落下する力により、部品の姿勢を保持部材に沿って揃えることができる。また、部品カートリッジを斜めにして配設するので、部品取り出し側を真下にする必要がなく、部品の落下を抑制することができ、部品カートリッジを容易に交換することができる。
【0010】
更に、部品カートリッジと切り出し部材と組として、複数組設けるようにしたので、1つの部品カートリッジから部品を順に取り出して部品がなくなった場合には、他の1つの部品カートリッジから部品を取り出している間に、空になった部品カートリッジを新しい部品カートリッジに交換することができる。よって、作業を中断することなく、連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る部品取出装置の構成を表す図である。
【
図2】
図1に示した部品取出装置をI方向から見た構成を表す図である。
【
図4】
図1に示した部品取出装置の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1及び
図2は、本発明の一実施の形態に係る部品取出装置10の構成を表すものであり、
図2は
図1に示したI方向からみた構成である。この部品取出装置10は、例えば、重積した複数の同一形状の部品Mを下から順に取り出すものである。部品取出装置10は、保持部材11Aにより複数の部品Mを重積した状態に保持すると共に、重積方向IIの一方の端部から部品Mを取り出し可能な部品カートリッジ11と、この部品カートリッジ11の重積方向IIの下方において、重積方向IIに対して垂直方向に往復移動可能に配設された切り出し部材12とを備え、必要に応じて、切り出し部材12により切り出した部品Mを所定の位置に案内するスライダー13を備えていている。この部品取出装置10で用いる部品Mとしては、重積した時に重積方向IIにおける重なりが生じないものが好ましい。具体的には、例えば、部品Mを垂直方向に重積した時に、下側の部品Mの最上位置が上側の部品Mの最下位置よりも上にないことが好ましい。
【0014】
部品カートリッジ11は、切り出し部材12に部品Mを供給するものであり、保持部材11Aにより部品Mを重積した状態に保持している。保持部材11Aは、
図1,2に示した例では、部品Mの外側を保持する場合を示したが、複数の部品Mを積層した状態で保持することができればどのような構造のものでもよい。例えば、
図3に示したように、部品Mに貫通孔がある場合には、保持部材11Aを棒状部材により構成し、部品Mの貫通孔に通すことにより保持するようにしてもよい。
【0015】
また、部品カートリッジ11は、部品Mの取り出し側を下にし、かつ、重積方向IIを斜めに傾斜させて、図示しない架台に対して配設される。重力Gにより、部品Mに対して、重積方向IIに落下する力F1と、重積方向IIに対して垂直方向に落下する力F2とを働かせることができ、重積方向IIに落下する力F1により、部品Mを取り出し側に順次落下させ、重積方向IIに対して垂直方向に落下する力F2により、部品Mの姿勢を保持部材11Aに沿って揃えることができるからである。部品カートリッジ11の水平方向に対する重積方向IIの角度は、20°以上45°以下、より好ましくは25°以上35°以下とすることが好ましい。水平方向に対する重積方向IIの角度を小さくするほど部品Mの姿勢安定性が高くなるので好ましいが、小さくし過ぎると重積方向IIについて十分な落下速度を得ることができないからである。
【0016】
切り出し部材12は、例えば、部品カートリッジ11側に、部品カートリッジ11と対向する面を有しており、部品カートリッジ11との対向面には、部品カートリッジ11から最下部に位置する1つの部品Mを落下させる凹部12Aと、切り出し部材12を重積方向IIに対して垂直方向に移動させた時に、凹部12Aに落下させた部品Mの上の部品Mを支持する支持部12Bとが設けられている。部品カートリッジ11との対向面は斜めに傾斜している。凹部12Aの傾斜方向における下側の側部は開口されており、凹部12Aに落下した部品Mをスライダー13に滑り落とすことができるようになっている。具体的には、切り出し部材12は、例えば、板状に形成されており、部品カートリッジ11と対向するように傾斜させて配設され、部品カートリッジ11との対向面に凹部12Aと支持部12Bが設けられている。
【0017】
スライダー13は、例えば、部品カートリッジ11の脇下方に配設されている。切り出し部材12は、凹部12Aが部品カートリッジ11に対応する位置(部品落下位置)と、スライダー13に対応する位置(スライダー滑り落とし位置)との間を、例えば水平方向に往復移動可能とされていることが好ましい。これにより、凹部12Aが部品落下位置に移動すると、最下部の部品Mが凹部12Aに落下し、凹部12Aがスライダー滑り落とし位置に移動すると、凹部12Aに落下した部品Mがスライダー13に滑り落ちるようになっている。
【0018】
スライダー滑り落とし位置は、凹部12Aに落下した部品Mが部品カートリッジ11の部品Mと接触しない位置とすることが好ましい。凹部12Aが部品落下位置にあるとき、及び、部品落下位置からスライダー滑り落とし位置に移動するまでの間は、例えば、凹部12Aに落下した部品Mは図示しない落下防止用の壁による押さえにより凹部12Aから滑り落ちず、凹部12Aがスライダー滑り落とし位置に移動した時に、凹部12Aに落下した部品Mは落下防止用の壁による押さえがなくなって、スライダー13に滑り落ちるようにするためである。
【0019】
凹部12Aの深さH、すなわち、部品カートリッジ11との対向面における凹部12Aと支持部12Bとの高さの差は、例えば、部品Mの1つの高さ以下であることが好ましい。凹部12Aの深さH1が部品Mの1つの高さよりも大きいと、凹部12Aに、最下部に位置する部品Mのみでなく、下から2番目に位置する部品Mも凹部12Aに入ってしまい、切り出し動作時に干渉してしまうからである。凹部12Aと保持部材11Aの切り出し部材12の側の端部との間の距離L1は、部品Mの1つの高さ以上とすることが好ましい。切り出し動作時に干渉してしまうからである。
【0020】
支持部12Bと保持部材11Aの切り出し部材12の側の端部との間の距離L2は、例えば、2mm以上、部品Mの1つの高さ未満とすることが好ましい。2mm未満とすると、切り出し部材12の往復移動時に、支持部12Bと保持部材11Aが干渉するおそれがあるからである。また、部品Mの1つの高さ以上とすると、支持部12Bと保持部材11Aとにより部品Mを支持することができず、切り出す前に落下してしまうからである。
【0021】
なお、部品取出装置10は、部品カートリッジ11と切り出し部材12とを組とし、複数組設けることが好ましい。1つの部品カートリッジ11から部品Mを順に取り出して部品Mがなくなった場合に、他の1つの部品カートリッジ11から部品Mを取り出し、その間に、空になった部品カートリッジ11を新しい部品カートリッジ11に交換することができるようにするためである。スライダー13は、例えば、各切り出し部材12に対応して個別に設け、各スライダー13の下端部に、例えば、各スライダー13により案内された部品Mを所定の位置に案内する共用スライダー14を設けることが好ましい。
【0022】
部品取出装置10は、また、例えば、切り出し部材12を移動させる駆動手段(図示せず)を有していてもよい。
【0023】
この部品取出装置10は、例えば、次にようにして用いることができる。
図4は、部品取出装置10の動きを表すものである。なお、
図4では、1組の部品カートリッジ11と切り出し部材12とを取り出して表している。まず、例えば、
図4(A)に示したように、複数の部品Mを重積した状態に保持した部品カートリッジ11を用意し、重積方向IIを斜めに傾斜させて配設する。次いで、例えば、
図4(B)に示したように、切り出し部材12の凹部12Aを部品落下位置に移動させる。これにより、部品カートリッジ11の最下部に位置する部品Mが凹部12Aに落下する。続いて、例えば、
図4(C)に示したように、切り出し部材12の凹部12Aをスライダー滑り落とし位置に移動させる。これにより、凹部12Aに落下した部品Mは凹部12Aからスライダー13に滑り落ちる。また、部品カートリッジ11の部品Mは、支持部12Bにより支持される。スライダー13に滑り落ちた部品Mは、スライダー13及び共用スライダー14を滑り、所定の位置に案内される。このように凹部12Aを部品落下位置とスライダー滑り落とし位置との間で往復移動させることにより、部品カートリッジ11から最下部に位置する1つの部品M1を順番に切り出すことができる。
【0024】
なお、部品Mの切り出し作業は、各部品カートリッジ11について順番に行うことが好ましい。例えば、1つの部品カートリッジ11について部品Mの切り出し作業を行い、1つの部品カートリッジ11の部品Mがなくなった時には、他の1つの部品カートリッジ11について部品Mの切り出し作業を行い、その間に、空になった部品カートリッジ11を新しい部品カートリッジ11に交換する。これにより、部品カートリッジ11の交換により切り出し作業は中断されず、連続して部品Mが切り出される。
【0025】
このように本実施の形態によれば、部品カートリッジ11を部品Mの取り出し側を下にし、かつ、重積方向IIを斜めに傾斜させて配設するようにしたので、重力Gにより、部品Mに対し、重積方向IIに落下する力F1と、重積方向IIに対して垂直方向に落下する力F2とを働かせることができる。よって、重積方向IIに落下する力F1により、部品Mを取り出し側に順次落下させると共に、重積方向IIに対して垂直方向に落下する力F2により、部品Mの姿勢を保持部材11Aに沿って揃えることができる。また、部品カートリッジ11を斜めにして配設するので、部品取り出し側を真下にする必要がなく、部品Mの落下を抑制することができ、部品カートリッジ11を容易に交換することができる。
【0026】
更に、部品カートリッジ11と切り出し部材12と組として、複数組設けるようにしたので、1つの部品カートリッジ11から部品Mを順に取り出して部品Mがなくなった場合には、他の1つの部品カートリッジ11から部品Mを取り出している間に、空になった部品カートリッジ11を新しい部品カートリッジ11に交換することができる。よって、作業を中断することなく、連続して行うことができる。
【0027】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構成は異なっていてもよい。加えて、上述した各構成要素の全てを備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…部品取出装置、11…部品カートリッジ、11A…保持部材、12…切り出し部材、12A…凹部、12B…支持部、13…スライダー、14…共用スライダー、M…部品