(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042872
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ドアトリム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147785
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達雄
(72)【発明者】
【氏名】有尾 敏幸
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA03
4F211AA24
4F211AA29
4F211AA31
4F211AD16
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH17
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA04
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN42
4F211TN48
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】接合面をなす材料への依存を抑えつつ、基材と表皮とが非反応型ホットメルト接着層を介して強固に接合されたドアトリム、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】基材2とその表面に接合された表皮3と、を備えるドアトリム1であって、基材2における表皮3との接合面Sは、ポリオレフィンにより形成された領域S
1及び/又はポリウレタンにより形成された領域S
2を有し、表皮3における基材2との接合面Tは、ポリオレフィンにより形成され、接合面Sと接合面Tとは、非反応型ホットメルト接着層を介して接合され、非反応型ホットメルト接着層は、酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする。接合面Sと接合面Tとを、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤を用いて接合する工程を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に接合された表皮と、を備えるドアトリムであって、
前記基材における前記表皮との接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2、を有し、
前記表皮における前記基材との接合面Tと前記接合面Sとは、非反応型ホットメルト接着層を介して接合され、
前記非反応型ホットメルト接着層は、酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とするドアトリム。
【請求項2】
前記接合面Sは、前記領域S1及び前記領域S2からなる請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記領域S1は、ポリオレフィンからなる請求項2に記載のドアトリム。
【請求項4】
前記領域S2は、ポリウレタンを用いて形成されている請求項2に記載のドアトリム。
【請求項5】
前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている請求項2に記載のドアトリム。
【請求項6】
前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる請求項2に記載のドアトリム。
【請求項7】
前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項2に記載のドアトリム。
【請求項8】
前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%を超えて20質量%未満である請求項7に記載のドアトリム。
【請求項9】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である請求項7に記載のドアトリム。
【請求項10】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である請求項7に記載のドアトリム。
【請求項11】
前記接合面Sは、前記領域S2からなる請求項1に記載のドアトリム。
【請求項12】
前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項11に記載のドアトリム。
【請求項13】
前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%以上40質量%以下である請求項12に記載のドアトリム。
【請求項14】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である請求項12に記載のドアトリム。
【請求項15】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である請求項12に記載のドアトリム。
【請求項16】
前記接合面Sは、前記領域S1からなり、
前記非反応型ホットメルト接着層は、ベース樹脂として、前記酸変性ポリオレフィンと、非酸変性ポリオレフィンと、を含む請求項1に記載のドアトリム。
【請求項17】
前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項16に記載のドアトリム。
【請求項18】
前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが20質量%未満である請求項17に記載のドアトリム。
【請求項19】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である請求項17に記載のドアトリム。
【請求項20】
前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である請求項17に記載のドアトリム。
【請求項21】
基材と、前記基材の表面に接合された表皮と、を備えたドアトリムの製造方法であって、
前記基材の前記表皮との接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2と、を有し、
前記表皮における前記基材との接合面Tと前記接合面Sとを、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤を用いて接合する接合工程を備えることを特徴とするドアトリムの製造方法。
【請求項22】
前記接合面Sは、前記領域S1及び前記領域S2からなる請求項21に記載のドアトリムの製造方法。
【請求項23】
前記接合面Sは、前記領域S2からなる請求項21に記載のドアトリムの製造方法。
【請求項24】
前記接合面Sは、前記領域S1からなる請求項21に記載のドアトリムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアトリム及びその製造方法に関する。より詳しくは、基材とこの基材の表面に接合された表皮とを備えるドアトリム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用内装材であるドアトリムは、基材とその表面に接着剤を介して接合された表皮とから多く構成される。このドアトリムは、例えば、窓越しに日光に晒されることになる。即ち、トリムアッパ部は、繰り返しの熱線照射、それに伴う高温化、紫外線照射等を受ける。このため、このような環境下において基材と表皮とが剥離されない高い接合性が要求される。
【0003】
従来、このよう環境における接合要求を充足すべくクロロプレン系接着剤に代表される溶剤型接着剤が使用されてきた。溶剤型接着剤は優れた接合性を発揮するものの、環境対応への要求水準の高まりから、昨今、溶剤を使用しない無溶剤型接着剤への切り替えが望まれている。
このような点から、溶剤不使用の接着剤である反応型ホットメルト接着剤への代替が検討される。反応型ホットメルト接着剤は、ベース樹脂が重合又は架橋することにより優れた接合性と耐熱性とを同時に発揮できる利点を有する。しかしながら、反応型ホットメルト接着剤は、養生に時間を要するという問題がある。即ち、接着剤として使用した場合には、反応が進行する時間を要してしまう。しかしながら、この反応時間を短縮しようとすると、反応型ホットメルト接着剤の塗布時の作業性や、貯蔵時の安定性を低下させてしまうという問題を生じる。一方で、塗布作業性及び貯蔵安定性を向上させようとすると反対に養生性を低下させざるを得ない。即ち、養生時間短縮という課題と、塗布作業性及び貯蔵安定性の向上という課題と、が相反しており、これらを両立することが困難であるという問題がある。このような課題に関して、下記特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、(A)非晶性ポリαオレフィン、(B)結晶性プロピレン系重合体、(C)粘着付与樹脂、及び(D)フィッシャートロプシュワックスを含み、(A)~(D)の総重量100重量部に対する(D)フィッシャートロプシュワックスの含有量が1~15重量部である、ホットメルト組成物が塗布されたポリオレフィン系基材を備えた車輌用内装材が開示されている。この技術では、無溶剤型接着剤であるホットメルト接着剤を利用している。そして、車輌用内装材のラミネーションに用いることができ、接着性と、耐熱性に優れ、且つ、表皮材等の基材にプレコートした後、基材を積み重ねて保管しても、基材の表層に転写し難いホットメルト接着剤を提供するという目的において優れる。しかしながら、日々進化し続ける産業分野では、より優れた製品が次々と求められ、更に高い性能やその自由度が求められるという実情がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、接合面をなす材料への依存を抑えつつ、基材と表皮とが非反応型ホットメルト接着層を介して強固に接合されたドアトリム、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明には以下の内容が含まれる。
[1]基材と、前記基材の表面に接合された表皮と、を備えるドアトリムであって、
前記基材における前記表皮との接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2、を有し、
前記表皮における前記基材との接合面Tと前記接合面Sとは、非反応型ホットメルト接着層を介して接合され、
前記非反応型ホットメルト接着層は、酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とするドアトリム。
[2]前記接合面Sは、前記領域S1及び前記領域S2からなる上記[1]に記載のドアトリム。
[3]前記領域S1は、ポリオレフィンからなる上記[1]又は上記[2]に記載のドアトリム。
[4]前記領域S2は、ポリウレタンを用いて形成されている上記[1]乃至上記[3]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[5]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[1]乃至上記[4]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[6]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[1]乃至上記[5]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[7]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[1]乃至上記[6]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[8]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%を超えて20質量%未満である上記[7]に記載のドアトリム。
[9]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[7]又は上記[4]に記載のドアトリム。
[10]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[7]乃至上記[9]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[11]前記接合面Sは、前記領域S2からなる上記[1]に記載のドアトリム。
[12]前記領域S2は、ポリウレタンを用いて形成されている上記[11]に記載のドアトリム。
[13]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[11]又は上記[12]に記載のドアトリム。
[14]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[11]乃至上記[13]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[15]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[11]乃至上記[14]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[16]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%以上40質量%以下である上記[15]に記載のドアトリム。
[17]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[15]又は上記[16]に記載のドアトリム。
[18]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[15]乃至上記[17]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[19]前記接合面Sは、前記領域S1からなり、
前記非反応型ホットメルト接着層は、ベース樹脂として、前記酸変性ポリオレフィンと、非酸変性ポリオレフィンと、を含む上記[1]に記載のドアトリム。
[20]前記領域S1は、ポリオレフィンからなる上記[19]に記載のドアトリム。
[21]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[19]又は上記[20]に記載のドアトリム。
[22]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[19]乃至上記[21]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[23]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[19]乃至上記[22]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[24]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが20質量%未満である上記[23]に記載のドアトリム。
[25]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[23]又は上記[24]に記載のドアトリム。
[26]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[23]乃至上記[25]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[27]基材と、前記基材の表面に接合された表皮と、を備えたドアトリムの製造方法であって、
前記基材の前記表皮との接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2と、を有し、
前記表皮における前記基材との接合面Tと前記接合面Sとを、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤を用いて接合する接合工程を備えることを特徴とするドアトリムの製造方法。
[28]前記接合面Sは、前記領域S1及び前記領域S2からなる上記[17]に記載のドアトリムの製造方法。
[29]前記領域S1は、ポリオレフィンからなる上記[27]又は上記[28]に記載のドアトリムの製造方法。
[30]前記領域S2は、ポリウレタンを用いて形成されている上記[27]乃至上記[29]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[31]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[27]乃至上記[30]のうちのいずれかに記載のドアトリム。
[32]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[27]乃至上記[31]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[33]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[27]乃至上記[32]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[34]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%を超えて20質量%未満である上記[33]に記載のドアトリムの製造方法。
[35]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[33]又は上記[34]に記載のドアトリムの製造方法。
[36]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[33]乃至上記[35]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[37]前記接合面Sは、前記領域S2からなる上記[27]に記載のドアトリムの製造方法の製造方法。
[38]前記領域S2は、ポリウレタンを用いて形成されている上記[37]に記載のドアトリムの製造方法。
[39]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[37]又は上記[38]に記載のドアトリムの製造方法。
[40]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[37]乃至上記[39]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[41]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[37]に記載のドアトリムの製造方法。
[42]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが5質量%以上40質量%以下である上記[41]に記載のドアトリムの製造方法。
[43]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[41]又は上記[42]に記載のドアトリムの製造方法。
[44]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[41]乃至上記[43]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[45]前記接合面Sは、前記領域S1からなり、
前記非反応型ホットメルト接着剤は、ベース樹脂として、前記酸変性ポリオレフィンと、非酸変性ポリオレフィンと、を含む上記[27]に記載のドアトリムの製造方法。
[46]前記領域S1は、ポリオレフィンからなる上記[45]に記載のドアトリムの製造方法。
[47]前記接合面Tは、ポリオレフィンを用いて形成されている上記[45]又は上記[46]に記載のドアトリムの製造方法。
[48]前記接合面Tは、繊維集合体の表面からなる上記[45]乃至上記[47]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[49]前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである上記[45]乃至上記[48]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
[50]前記非反応型ホットメルト接着層全体を100質量%とした場合に、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンが20質量%未満である上記[45]に記載のドアトリムの製造方法。
[51]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの酸価が5~20である上記[49]又は上記[50]に記載のドアトリムの製造方法。
[52]前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの180℃におけるメルトフローレートが20g/10分以上である上記[49]乃至上記[51]のうちのいずれかに記載のドアトリムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のドアトリムによれば、接合面をなす材料への依存を抑えつつ、基材と表皮とが非反応型ホットメルト接着層を介して強固に接合されたドアトリム、及び、その製造方法を提供することができる。
本発明のドアトリムの製造方法によれば、接合面をなす材料への依存を抑えつつ、基材と表皮とを、非反応型ホットメルト接着層を介して強固に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のドアトリムを装着したドアの一例を説明する説明図である。
【
図2】
図1に示すドアの分解状態を説明する説明図である。
【
図3】
図2におけるA-A断面を説明する説明図である。
【
図4】
図3に示すアッパーボードの分解状態を説明する説明図である。
【
図5】
図2におけるB-B断面を説明する説明図である。
【
図6】
図5に示すロアボードの分解状態を説明する説明図である。
【
図7】
図2におけるA-A断面の他例を説明する説明図である。
【
図8】
図7に示すアッパーボードの分解状態を説明する説明図である。
【
図9】
図2におけるA-A断面を更に他例を説明する説明図である。
【
図10】
図9に示すアッパーボードの分解状態を説明する説明図である。
【
図11】剥離強度と酸変性ポリオレフィン含有量との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、詳しく説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
[1]ドアトリム
本発明のドアトリム(1)は、基材(2)と、基材(2)の表面に接合された表皮(3)と、を備える。
また、基材(2)における表皮(3)との接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2、を有する。
そして、表皮(3)における基材(2)との接合面Tと接合面Sとは、非反応型ホットメルト接着層(4)を介して接合されており、非反応型ホットメルト接着層(4)は、酸変性ポリオレフィンを含んでいる。
【0012】
上記「ドアトリム(1)」は、車両等の乗物のドアの室内側に設けられてドアを覆う部材であり、乗物の室内へ向けた意匠の付与、収容機能、レスト機能、衝撃吸収機能等の各種機能の付与を担う部材である。このドアトリムは、基材2とその表面に接合された表皮3とを備え、ドアトリムの表面は、室内側に露出されて意匠が付与されている。この意匠が付与された面が意匠面とされ、本発明のドアトリムでは表皮3により形成されている。
【0013】
上記「基材(2)」は、ドアトリム1を構成する部品であり、通常、ドアトリムの主部をなす。基材2は、表皮3との接合面として接合面Sを有する。そして、この接合面Sは、極性基を持たない領域S1、及び/又は、極性基を持つ領域S2、を有する。即ち、接合面Sは、<1>領域S1と領域S2とからなる、<2>領域S2のみからなる、<3>領域S1のみからなる、の3種の態様が例示される。
【0014】
上記「領域S」は、基材2の表面のうち、表皮3と接合されている面である。即ち、基材2の表面の全面が表皮3と接合されている場合、基材2の全表面が領域Sとなる。一方、基材2の表面の一部のみが表皮3と接合されている場合、基材2の表面のうち一部のみが領域Sとなる。通常、領域Sは、基材2の全表面のうちの50%以上(100%であってもよい)を占める。
【0015】
上記「領域S1」は、極性基を持たない領域である。即ち、極性基を持たない材料(以下、単に「非極性材料」ともいう)から形成されている。非極性材料は、無機材料であってもよいが、有機材料であることが好ましく、更には、樹脂であることが好ましい。即ち、領域S1は、極性基を持たない樹脂(以下、単に「非極性樹脂」ともいう)によって形成されていることが好ましい。
また、基材2の領域S1を有する部分(基材2のうちの接合面Sが領域S1である部分)は、その厚さ方向全体が非極性材料からなってもよいし、その厚さ方向の接合面S側の表面部のみが非極性材料からなり、他部が極性基を持つ材料(以下、単に「極性材料」ともいう)からなってもよい。
【0016】
非極性樹脂としては、ポリオレフィン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、極性基としては、カルボキシ基、酸無水物基(無水マレイン酸、無水フタル酸基、無水コハク酸基など)、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0017】
非極性樹脂としては、上述のなかでも、成形性、取り扱い性、コスト、汎用性等の観点からは、ポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンには、オレフィンの単独重合体(ホモポリマー)及びオレフィンの共重合体(コポリマー)が含まれる。オレフィンの共重合体の場合、ポリオレフィンエラストマーが含まれる。
オレフィンは、炭素間二重結合を1つ有する不飽和炭化水素であり、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン等が含まれる。これら重合体は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記のうちポリエチレンには、エチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体(即ち、エチレン共重合体)が含まれる。エチレン共重合体を構成する他のオレフィンの種類は限定されず、前述した各種オレフィン(但し、エチレンを除く)を用いることができる。エチレン共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。但し、エチレン共重合体は、その全構成単位数のうち50%以上がエチレン由来単位の重合体である。
上記のうちポリプロピレンには、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体(即ち、プロピレン共重合体)が含まれる。プロピレン共重合体を構成する他のオレフィンの種類は限定されず、前述した各種オレフィン(但し、プロピレンを除く)を用いることができる。プロピレン共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。但し、プロピレン共重合体は、その全構成単位数のうち50%以上がプロピレン由来単位の重合体である。
【0019】
上記「領域S2」は、極性基を持つ領域である。即ち、極性基を持つ材料(以下、単に「極性材料」ともいう)から形成されている。極性材料は、無機材料であってもよいが、有機材料であることが好ましく、更には、樹脂であることが好ましい。即ち、領域S2は、極性基を持つ樹脂(以下、単に「極性樹脂」ともいう)によって形成されていることが好ましい。
また、基材2の領域S2を有する部分(基材2のうちの接合面Sが領域S2である部分)は、その厚さ方向全体が極性材料からなってもよいし、その厚さ方向の接合面S側の表面部のみが極性材料からなり、他部が非極性基材料からなってもよい。
【0020】
極性樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、極性基としては、カルボキシ基、酸無水物基(無水マレイン酸、無水フタル酸基、無水コハク酸基など)、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
極性樹脂としては、上述のなかでも、成形性、取り扱い性、コスト、汎用性等の観点からは、ポリウレタンが好ましい。
ポリウレタンはウレタン結合を有する重合体である。ポリウレタンは、ウレタン結合以外に他の結合(ウレア結合等)を1種又は2種以上含んでもよい。
ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとを用いて得ることができる。
このうちポリオールは、分子中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、例えば、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、オレフィンポリオール、アクリルポリオール等が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリイソシアネートは、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(単量体、多量体、プレポリマー等を含む)であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記のうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI、ポリメリックMDI、クルードMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。脂環式ポリイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
基材2としては、前述の通り、下記<1>~<3>の形態が例示される。
<1>接合面Sが、領域S1と領域S2とからなる
<2>接合面Sが、領域S2のみからなる
<3>接合面Sが、領域S1のみからなる
【0024】
<1>の形態
基材2が、上記<1>の形態である場合としては、非極性材料(例えば、ポリオレフィン)を用いて形成された非極性材料部(例えば、ポリオレフィン材料部)と、極性材料(例えば、ポリウレタン)を用いて形成された極性材料部(例えば、ポリウレタン材料部)と、の両方を有する場合が挙げられる(
図3~6参照)。即ち例えば、非極性材料部の表面(接合面Sとなる表面)の一部に、極性材料部が張り付けられてなる基材2が挙げられる。この場合、非極性材料部の露出面が領域S
1となり、極性材料部の露出面が領域S
2となる。
より具体的には、ポリオレフィン材料部としては、<1-1>ポリオレフィンからなる成形体(ポリオレフィン成形体)、<1-2>ポリオレフィンをバインダ樹脂とし、バインダ樹脂を用いて複数の植物繊維を結着してなる繊維質成形体(繊維ボードの賦形物)等が挙げられる。
一方、ポリウレタン材料部としては、〔1〕ポリウレタンからなる成形体(ポリウレタン成形体)、〔2〕ポリウレタンからなる発泡層(ウレタンパッド等)などが挙げられる。
【0025】
<2>の形態
基材2が、上記<2>の形態である場合としては、<2-1>極性材料(例えば、ポリウレタン)からなる成形体(極性材料部(ポリウレタン材料部))である場合が挙げられる。また、<2-2>非極性材料(例えば、ポリオレフィン)からなる成形体(非極性材料部(ポリオレフィン材料部))の表面の全面に、極性材料(例えば、ポリウレタン)からなる発泡層(極性材料部(ポリウレタン材料部、(ウレタンパッド等)))が接合されてなる基材2が挙げられる(
図7~8参照)。これらの場合、極性材料部の露出面が領域S
2となる。
即ち、例えば、非極性材料製の成形体である本体21(21c)の一面側の表面、又は、繊維質成形体(繊維ボードの賦形物)である本体21(21c)の一面側の表面、の全面に極性材料により形成された層22(例えば、ウレタンパッド層22(22c))が接合された基材2が挙げられる。この基材2では、接合面Sの全面が、極性材料により形成された層22(22c)の表面となり、領域S
2に対応する。具体的には、
図7~8に例示され、
図3~6と同様、極性材料により形成された層22(22c)の露出面が領域S
2に対応する。
【0026】
<3>の形態
基材2が、上記<3>の形態である場合としては、<3-1>非極性材料(例えば、ポリオレフィン)からなる成形体(非極性材料部(例えば、ポリオレフィン材料部))である場合が挙げられる(
図9~10参照)。また、<3-2>極性材料からなる成形体(極性材料部)の表面の全面に、非極性材料からなる発泡層(非極性材料部(例えば、ポリオレフィン材料部))が張り付けられてなる基材2が挙げられる。これらの場合、非極性材料部の露出面が領域S
1となる。
即ち、例えば、ポリオレフィン成形体、又は、繊維質成形体(繊維ボードの賦形物)がそのまま基材2(2d)とされている。この基材2(2d)では、接合面Sの全面にポリオレフィン材料が存在するため、接合面Sは、領域S
1に対応している。具体的には、
図9~10に例示される。
【0027】
上記のうち、上記<1>の形態をより具体的に説明すると、上記<1-1>では、全体がポリオレフィン成形体からなり、その一部にポリウレタンからなるウレタンパッド層が装着された基材2を有する場合が挙げられる。この基材2では、ポリオレフィン成形体がポリオレフィン材料部に対応し、ポリオレフィン成形体の表面が領域S1に対応している。一方、ウレタンパッド層がポリウレタン材料部に対応し、ウレタンパッド層の表面が領域S2に対応する。
【0028】
具体的には、
図1~6に例示される。ドア50は、車両の右前側ドアを示す。右後側、左前側、左後側のドア等においても同様の構成とすることができる。ドア50は、ドアパネル30と、ドアトリム1とから構成することができる。
ドアトリム1は、ドアパネル30の車室内側に取り付けられ、車室の壁面を構成し、車室に装飾性及び居住性を付与する内装材である。ドアパネル30は、各々、板状をなしたドアアウタパネル31と、ドアインナパネル32とで構成できる。これらのパネルは、鉄鋼やアルミニウム等の金属パネルをプレス成形して得られる。これらドアインナパネル32とドアアウタパネル31との間には、ウインドウガラス(図示せず)、ウインドウガラスを昇降するための昇降機構(図示せず)等の各種部品が設けることができる。
【0029】
ドアトリム1は、アッパーボード11と、ロアボード12と、から構成することができる。これらアッパーボード11及びロアボード12とは互いに組み付けて構成される。これらアッパーボード11及びロアボード12は、各々ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)によって構成される。アッパーボード11には、インサイドハンドル部111を設けることができる。また、ロアボード12には、アームレスト部121、ドアプルハンドル部122、スピーカグリル部123、ドアポケット部124等を備えることができる。これらは、いずれも、機能部であり、例えば、アームレスト部121は、シートに着座した乗員が肘を置くスペースを提供する部位であり、室内側に膨出するように形成されている。
【0030】
そして、このアームレスト部121には、乗員が肘を置いた際に肘下側のクッション性を得るために、その表面にウレタンパッド層22(22a)設けることができる。この構成においては、ロアボード12は、ポリオレフィン製の本体21(21a)と、その本体21(21a)の表面に配設されたウレタンパッド層22(22a)と、を備える。そのため、ポリオレフィン成形体である本体21(21a)の露出面が領域S1に対応し、ウレタンパッド層22(22a)の露出面が領域S2に対応する。
【0031】
同様に、アッパーボード11には、乗員がアームレスト部121に肘を置いた際に肘横側のクッション性を得るために、その表面にウレタンパッド層22(22b)を設けることができる。この構成においては、アッパーボード11は、ポリオレフィン製の本体21(21b)と、その本体21(21b)の表面に配設されたウレタンパッド層22(22b)と、を備える。そのため、ポリオレフィン成形体である本体21(21b)の露出面が領域S1に対応し、ウレタンパッド層22(22b)の露出面が領域S2に対応する。
【0032】
上記<1-2>は、ポリオレフィンをバインダ樹脂とし、バインダ樹脂を用いて複数の強化繊維を結着してなる繊維質成形体(繊維ボードの賦形物)である本体21と、その表面の一部に装着されたポリウレタンからなるパッド層(ウレタンパッド層)22と、を備えた部品である。この部品では、繊維質成形体である本体21の露出面が領域S1に対応し、ウレタンパッド層22の露出面が領域S2に対応する。この場合にも、上記と同様の形状及び構成とすることができる。
【0033】
ここで、上述の強化繊維の種類に限定はなく、植物繊維、樹脂繊維(ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等)、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記のうち、植物繊維は、植物体(幹、茎、枝、葉、根等)から取り出された繊維であり、葉脈系植物繊維、靭皮系植物繊維、木質系植物繊維等を含む。植物繊維の元となる植物体は限定されず、例えば、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
繊維ボードに含まれる強化繊維の総量と、ポリオレフィンの総量との割合は限定されないが、強化繊維の総量と、ポリオレフィンの総量との合計を100質量%とした場合に、強化繊維の総量の割合は、10~90質量%とすることができ、25~75質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましい。
【0035】
上記「表皮(3)」は、基材2の表面を覆う部材である。表皮3の表面のうち、基材2と接合される面である接合面Tは、極性基を持たない領域であってもよく、極性基を持つ領域であってもよく、これらが混在した領域であってもよい。即ち、非極性材料から形成された領域のみからなってもよく、極性材料から形成された領域のみからなってもよく、これらが混在した領域であってもよい。非極性材料として非極性樹脂(ポリオレフィン等)が好ましいこと、極性材料として極性樹脂(ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等)が好ましいことは、基材2における場合と同様である。また、非極性樹脂及び極性樹脂の具体例も前述の通りである。
【0036】
より具体的には、表皮3として、<4>及び<5>の形態が例示される。
<4>接合面Tが、非極性材料からなる
<5>接合面Tが、繊維集合体の表面からなる
【0037】
<4>の形態
表皮3が、上記<4>の形態である場合としては、接合面Tが、非極性材料であるポリオレフィンからなる形態が挙げられる。ポリオレフィンについては、基材2の説明において記載したポリオレフィンに関する記載をそのまま適用できる。なかでも、ポリオレフィンエラストマーが好ましい。
より具体的には、意匠層と発泡層とが積層された表皮3が例示される。これらの層のうち、意匠層は、様々な材料で形成できるが、例えば、ポリオレフィン製やポリ塩化ビニル製とすることができる。一方、発泡層も、様々な材料で形成できるが、例えば、非極性樹脂であるポリオレフィン製とすることができ、なかでも、ポリオレフィンエラストマー製の発泡層とすることができる。
この<4>の形態の場合、ポリオレフィンエラストマー製の発泡層の表面が接合面Tとされる。即ち、非極性樹脂により形成された発泡層の露出面が接合面Tとされる。
尚、意匠層は、室内側に露出される層であり、色彩を有したり、模様を有したりすることができる。また、模様を有する場合は、平滑な模様でもよく凹凸模様でもよい。
【0038】
<5>の形態
表皮3が、上記<5>の形態である場合としては、意匠層と発泡層と繊維集合体(繊維集合体層)とがこの順に積層された表皮3が例示される。これらの層のうち、意匠層は、上記<4>の形態における意匠層と同様にすることができる。また、発泡層は、様々な材料で形成できるが、例えば、上記<4>の形態と同様に非極性樹脂であるポリオレフィン製とすることができる他、極性樹脂であるポリウレタン製(例えば、スラブウレタン製の発泡層)とすることができる。更に、繊維集合体(繊維集合体層)としては、不織布層、織布層、編物層等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。繊維集合体を構成する繊維の構成材料も限定されず、非極性材料でもよく、極性材料でもよく、更には、これらが混合されていてもよい。繊維集合体を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル製繊維、ナイロン6繊維等のポリアミド製繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン製繊維等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
この<5>の形態の場合、繊維集合体の表面が接合面Tとされるが、繊維集合体は繊維同士の間隙が表裏に貫通されているため、接合面Tは、その構成材料に関わらず、非反応型ホットメルト接着層4に対してアンカー効果を与えることができる。
尚、意匠層は、室内側に露出される層であり、色彩を有したり、模様を有したりすることができる。また、模様を有する場合は、平滑な模様でもよく凹凸模様でもよい。
【0039】
上記「非反応型ホットメルト接着層(4)」(接着層4)は、接合面Sと接合面Tとの間に介挿され、接合面Sと接合面Tとを接合する層である。この層は、非反応型ホットメルト接着剤(以下、単に「接着剤」ともいう)から形成されている。そして、接着層4は、酸変性ポリオレフィンを含んでいる。本発明のドアトリム1では、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含むことにより、接合面Sと接合面Tとの接合を強固にすることができる。とりわけ、接着層4が酸変性ポリオレフィンを含まない場合に比べて、領域S2(ポリウレタンを用いて形成された領域)と接合面T(表皮3の接合面、例えば、繊維集合体を構成する繊維が極性樹脂からなる場合等)とを接合を強固にすることができる。
【0040】
接着剤は、反応性を有さないホットメルト接着剤である。ホットメルト接着剤は、例えば、ベース樹脂、粘着付与剤及び可塑剤を含んで得ることができる。これらの構成分のうち、少なくとも1種(例えば、ベース樹脂)が反応性基を有し、互いに結合可能(硬化や架橋等)とされていることでホットメルト接着剤は、反応性を有することができる。このような接着剤を反応性ホットメルト接着剤と称する。反応性ホットメルト接着剤は、接着剤として使用すると反応性基が反応することで強固な接着層を形成できる。とりわけ、接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成できる。一方で、反応型ホットメルト接着剤は、未反応状態で維持できる期間が限られる。従って、未使用であっても保管期間やポットライフ等の所定期間を超えた接着剤は破棄する必要があり、管理、廃棄分を含めたコストが嵩むという問題がある。
これに対し、非反応型ホットメルト接着剤は、上述のような反応性を有さない接着剤である。即ち、いずれの構成分も反応性基を有さないホットメルト接着剤である。非反応型ホットメルト接着剤では、上述のような反応性を有さないため、十分な耐熱性を得ることが難しいという問題がある。この点、本発明の接着層4は、酸変性ポリオレフィンを含む。これにより、接着剤を用いた接着層4であっても優れた接合強度を獲得することができる。加えて優れた耐熱性を得ることができる。
【0041】
上記「酸変性ポリオレフィン」は、酸変性基を有するポリオレフィンである。酸変性基としては、例えば、カルボキシル基(-COOH)及び酸無水物基(-CO-O-OC-)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
酸変性基は、(1)酸変性基を有する単量体を用いた共重合、(2)重合体に対する酸変性基を有する化合物(単量体、多量体等)をグラフト、(3)重合体の酸化分解、などの方法により導入できる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのうち(1)及び/又は(2)が好ましい。
【0042】
酸変性基を導入できる単量体としては、重合性不飽和結合と酸無水物基とを有する単量体、重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有する単量体などが挙げられる。
具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等の酸無水物、及びマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの化合物のうちでは、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0043】
一方、酸変性ポリオレフィンの骨格を構成するポリオレフィンについては、領域S1の説明において記載したポリオレフィンに関する記載をそのまま適用できる。これらの記載のなかでも、ポリプロピレンが好ましい。前述の通り、ポリプロピレンには、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体(即ち、プロピレン共重合体、但し、プロピレン由来単位が全構成単位中50%以上)が含まれる。プロピレン共重合体を構成する他のオレフィンの種類は限定されないが、炭素数4~8のオレフィンが好ましく、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が含まれる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
即ち、酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンや、酸変性ポリプロピレンが好ましく、更には、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。
【0045】
また、酸変性ポリオレフィンの諸特性は限定されないが、酸変性ポリオレフィンの酸価(mgKOH/g)は5以上であること好ましい。酸変性ポリオレフィンの酸価が5以上であることにより、得られる接着層4の接合強度及び耐熱性を向上させることができる。この酸価は、更に7以上であることがより好ましく、9以上であることが更に好ましい。この酸価の上限は限定されないが、扱いやすさ等の観点からは、20以下が好ましく、17以下がより好ましく、14以下が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、5~20とすることができ、更に7~17とすることができ、更に9~14とすることができる。尚、この酸価(mgKOH/g)は、JIS K2501に準じて測定された値とする。
【0046】
酸変性ポリオレフィンのMFR(180℃/2.12N)は、20g/10分以上であることが好ましい。酸変性ポリオレフィンのMFRが20g/10分以上であることにより、得られる接着層4の接合強度及び耐熱性を向上させることができる。このMFRは、更に30g/10分以上がより好ましく、40g/10分以上が更に好ましい。このMFRの上限は限定されないが、扱いやすさ等の観点からは、70g/10分以下が好ましく、55g/10分以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、20~70g/10分とすることができ、更に30~55g/10分とすることができ、更に40~55g/10分とすることができる。尚、このMFR(180℃/2.12N)は、ISO1133に準じて測定された値とする。
【0047】
酸変性ポリオレフィンの融点は、120℃以上であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンの融点が120℃以上であることにより、得られる接着層4の接合強度及び耐熱性を向上させることができる。この融点は、更に135℃以上がより好ましく、145℃以上が更に好ましい。この融点の上限は限定されないが、扱いやすさ等の観点からは、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、120~170℃とすることができ、更に135~160℃とすることができ、更に145~160℃とすることができる。尚、この融点は、JIS K7121に準じて測定された値とする。
【0048】
接着層4に含まれる酸変性ポリオレフィンの量は限定されないが、接着層4全体を100質量%とした場合に、5質量%以上であることが好ましい。酸変性ポリオレフィンの含有量が5質量%以上であることにより、得られる接着層4の接合強度及び耐熱性を向上させることができる。一方、この含有量の上限は限定されないが、扱いやすさ等の観点からは、30質量%以下であることが好ましい。
【0049】
更に、前述の通り、基材2としては、<1>接合面Sが、領域S1と領域S2とからなる基材、<2>接合面Sが、領域S2のみからなる基材、<3>接合面Sが、領域S1のみからなる基材、の各形態が例示される。
このうち、<1>の形態に用いる接着層4における酸変性ポリオレフィンの含有量は、接合強度の観点からは、5質量%を超えることが好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、12質量%以上が特に好ましい。一方、この含有量の上限は限定されないが、接合強度の観点からは、20質量%未満が好ましく、19質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましく、17質量%以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、5質量%を超えて20質量%未満とすることができ、7質量%以上19質量%以下とすることができ、9質量%以上18質量%以下とすることができ、12質量%以上17質量%以下とすることができる。
【0050】
また、上記のうち、<2>の形態に用いる接着層4における酸変性ポリオレフィンの含有量は、接合強度の観点からは、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、12質量%以上が特に好ましい。一方、この含有量の上限は限定されないが、接合強度の観点からは、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が特に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、5質量%以上40質量%以下とすることができ、7質量%以上35質量%以下とすることができ、9質量%以上30質量%以下とすることができ、12質量%以上25質量%以下とすることができる。
【0051】
更に、上記のうち、<3>の形態、に用いる接着層4における酸変性ポリオレフィンの含有量は、接合強度の観点からは、20質量%未満が好ましく、19質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましく、17質量%以下が特に好ましい。一方、この含有量の下限は限定されないが、0質量%を超えることができ、1質量%以上とすることができ、2質量%以上とすることができ、3質量%以上とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0質量%を超えて20質量%未満とすることができ、1質量%以上19質量%以下とすることができ、2質量%以上18質量%以下とすることができ、3質量%以上17質量%以下とすることができる。
【0052】
前述の通り、接着剤は、例えば、ベース樹脂、粘着付与剤及び可塑剤を含むことができる。前述した酸変性ポリオレフィンは、このうち、ベース樹脂の一部として含まれる。これらベース樹脂、粘着付与剤及び可塑剤の各成分は限定されないが、例えば、ベース樹脂としては、非酸変性ポリオレフィンを用いることができる。非酸変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンから酸変性ポリオレフィンを除いた樹脂である。非酸変性ポリオレフィンについては、領域S1の説明において記載したポリオレフィンに関する記載をそのまま適用できる。
【0053】
これらのなかでも、非酸変性ポリオレフィンとしては、異なる2種以上のα-オレフィンモノマーを用いた共重合ポリオレフィンであることが好ましい。また、モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン及び1-オクテンのうちの少なくとも1種が好ましい。より具体的には、エチレン、プロピレン及び1-ブテンの3種のモノマーを用いた三元共重合体、エチレン及びプロピレンの2種のモノマーを用いた二元共重合体、エチレン及び1-ブテンの2種のモノマーを用いた二元共重合体、プロピレン及び1-ブテンの2種のモノマーを用いた二元共重合体等が好ましい。
【0054】
更に、非酸変性ポリオレフィンは、融点の異なる2種又はそれ以上の非酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましく、特に、非酸変性ポリオレフィン(A)と、非酸変性ポリオレフィン(A)に対してより低融点である非酸変性ポリオレフィン(B)と、の2種の非酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。この場合、非酸変性ポリオレフィン(A)の融点は100℃以上であり、非酸変性ポリオレフィン(B)の融点は100℃未満であることが好ましい。両樹脂の融点差は限定されないが、10℃以上であることが好ましく、20℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。一方、この融点差の上限は限定されないが、接合強度の観点からは、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、10℃以上90質量%以下とすることができ、20℃以上80質量%以下とすることができ、40℃以上70質量%以下とすることができる。
尚、非酸変性ポリオレフィンの融点は、示差走査熱量測定を行った場合の融解ピークの頂点温度であるものとする。
【0055】
また、粘着付与剤としては、石油樹脂、水添石油樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、ワックスとしては、動物ワックス、植物ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、木蝋、蜜蝋、鉱物ワックス、石油ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、高級脂肪酸ワックス、高級脂肪酸エステルワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
これまでに記載した通り、基材2としては、<1>~<3>の形態が例示され、
<1>接合面Sが、領域S1と領域S2とからなる
<2>接合面Sが、領域S2のみからなる
<3>接合面Sが、領域S1のみからなる
表皮3としては、<4>~<5>の形態が例示される。
<4>接合面Tが、非極性材料からなる
<5>接合面Tが、繊維集合体の表面からなる
従って、接合面Sと接合面Tとを接着層4を介して接合した場合、上記の接合面Sと接合面Tとの各々組合せのドアトリム1が得られる。
【0057】
基材<1>×表皮<4>の形態
具体的には、ドアトリム1として、基材2が<1>であり、表皮3が<4>である場合が挙げられる。即ち、ポリオレフィンにより形成された領域S1と、ポリウレタンにより形成された領域S2と、を備えた接合面Sと、ポリオレフィンにより形成された接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、従来、クロロプレン系接着剤に代表される溶剤型接着剤や、反応型ホットメルト接着剤が利用されてきたが、これらには前述の通りの課題がある。この点、本発明のドアトリム1は、接着層4が非反応型ホットメルト接着剤からなる接着層である。このため、溶剤放出の問題を生じず、また、養生時間短縮と塗布作業性及び貯蔵安定性の向上という課題を同時に解決することができる。これは、接着層4をなす非反応型ホットメルト接着剤が、酸変性ポリオレフィンを含むことにより実現される。即ち、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含むことで上述のような接合面Sと接合面Tとの優れた接合性を実現できる。
【0058】
基材<1>×表皮<5>の形態
更に、ドアトリム1として、基材2が<1>であり、表皮3が<5>である場合が挙げられる。即ち、ポリオレフィンにより形成された領域S1と、ポリウレタンにより形成された領域S2と、を備えた接合面Sと、繊維集合体の表面からなる接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、基材2が<1>であり、表皮3が<4>である場合と同様に、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含むことで上述のような接合面Sと接合面Tとの優れた接合性を実現できることに加えて、接合面Tでは、繊維集合体の表面におけるアンカー効果を利用して強固な接合を実現できる。特に繊維集合体を構成する繊維の材料に関わらずこの接合を実現することができる。また、前述の通り、意匠層とスラブウレタン層と繊維集合体層とがこの順に積層された表皮3の場合であっても、繊維集合体層へ浸透された接着剤は、スラブウレタン層との接合性も確保することが出来る点において優れる。
【0059】
基材<2>×表皮<4>の形態
また、ドアトリム1として、基材2が<2>であり、表皮3が<4>である場合が挙げられる。即ち、ポリウレタンにより形成された領域S2からなる接合面Sと、ポリオレフィンにより形成された接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、基材<1>×表皮<4>の形態と同様、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤からなる接着層であるため、溶剤放出の問題を生じず、また、養生時間短縮と塗布作業性及び貯蔵安定性の向上という課題を同時に解決できると共に、接合面Sと接合面Tとの優れた接合性を実現できる。
【0060】
基材<2>×表皮<5>の形態
更に、ドアトリム1として、基材2が<2>であり、表皮3が<5>である場合が挙げられる。即ち、ポリウレタンにより形成された領域S2からなる接合面Sと、繊維集合体の表面からなる接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、基材<1>×表皮<5>の形態と同様、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含むことで接合面Sと接合面Tとの優れた接合性を実現できることに加え、接合面Tでは、繊維集合体の表面におけるアンカー効果を利用して強固な接合を実現できる。更に、繊維集合体を構成する繊維の材料に関わらずこの接合を実現することができる。また、意匠層とスラブウレタン層と繊維集合体層とがこの順に積層された表皮3の場合であっても、繊維集合体層へ浸透された接着剤は、スラブウレタン層との接合性も確保できる点において優れる。
【0061】
基材<3>×表皮<4>の形態
また、ドアトリム1として、基材2が<3>であり、表皮3が<4>である場合が挙げられる。即ち、ポリオレフィンにより形成された領域S1からなる接合面Sと、ポリオレフィンにより形成された接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、接着層4が、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤からなる接着層であるため、溶剤放出の問題を生じず、また、養生時間短縮と塗布作業性及び貯蔵安定性の向上という課題を同時に解決できると共に、接合面Sと接合面Tとの優れた接合性を実現できる。加えて、基材2が、非極性材料であるポリオレフィンからなり、表皮3が非極性材料であるポリオレフィン(熱可塑性ポリオレフィン等)からなる場合には、これら基材2と表皮3とを接着層4を介して接合することとなり、すべての層をオレフィン系材料により形成できる。即ち、構成材料を統一することができ、ドアトリム1をモノマテリアル化することができる。オレフィン系材料はリサイクル性に優れるため、ドアトリム1のモノマテリアル化により優れたリサイクル性を付与できる。
【0062】
基材<3>×表皮<5>の形態
更に、ドアトリム1として、基材2が<3>であり、表皮3が<5>である場合が挙げられる。即ち、ポリオレフィンにより形成された領域S1からなる接合面Sと、繊維集合体の表面からなる接合面Tとを、接着層4を介して接合したドアトリム1が例示される。このようなドアトリム1では、繊維集合体の表面におけるアンカー効果を利用して強固な接合を実現できる。また、特に繊維集合体を構成する繊維の材料がポリオレフィンである場合には、すべての層をオレフィン系材料により形成できる。即ち、構成材料を統一することができ、ドアトリム1をモノマテリアル化することができる。オレフィン系材料はリサイクル性に優れるため、ドアトリム1のモノマテリアル化により優れたリサイクル性を付与できる。
【0063】
[2]ドアトリムの製造方法
本発明のドアトリムの製造方法は、基材2と、基材2の表面に接合された表皮3と、を備えたドアトリム1の製造方法である。
基材2の表皮3との接合面Sは、ポリオレフィンにより形成された領域S1、及び/又は、ポリウレタンにより形成された領域S2と、を有する。
表皮3の基材2との接合面Tは、ポリオレフィンにより形成されている。
そして、接合面Sと接合面Tとを、酸変性ポリオレフィンを含んだ非反応型ホットメルト接着剤を用いて接合する接合工程を備えることを特徴とする。
【0064】
即ち、接合工程は、上記[1]で説明した接着層4を形成する工程であるといえる。ここで、上記ドアトリム1、基材2、表皮3、接合面S、領域S1、領域S2、接合面T、接着剤については、前述した通りである。
【0065】
接着剤は、通常、接合面S及び接合面Tのうちのいずれか又は両方に塗布した後、両接合面を当接し、必要に応じて加圧することにより接着層4を得ることができる。接着剤の塗布方法は限定されず、従来公知の方法を適宜利用できる。塗布方法は、接触式塗布法でもよく、非接触式塗布法であってもよい。接触式塗布法は、接着剤を塗布する際に、塗布装置と被塗布体とを接触させながら塗布する方法であり、非接触式塗布法は、接着剤を塗布する際に、塗布装置と被塗布体とを接触させずに塗布する方法である。このうち、接触式塗布法としては、ロールコータ塗工、スロットコーター塗工等が挙げられる。一方、非接触式塗布法としては、スパイラル塗工、オメガ塗工、コントロールシーム塗工、スロットスプレー塗工、カーテンスプレー塗工、ドット塗工等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
ポリオレフィン製の基材と、ポリオレフィン製の表皮と、を酸変性ポリオレフィンの配合量が異なる接着剤を介して接合し、その接合強度への影響を検討した。また、同様に、ポリウレタン製の基材と、ポリオレフィン製の表皮と、を酸変性ポリオレフィンの配合量が異なる接着剤を介して接合し、その接合強度への影響を検討した。
【0067】
[1]基材と表皮との接合
以下に示す(1)~(5)を用いた。
(1)基材A:ポリプロピレン製の成形体
(2)基材B:発泡ポリウレタン製の成形体
(3)表皮:ポリオレフィンエラストマー製の表皮
(4)非反応型ホットメルト接着剤:昭和電工マテリアルズ製、品名「ハイボン ZH601-1」、非反応型ポリオレフィンホットメルト接着剤
(5)酸変性ポリオレフィン:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学製、品名「モディック P908、酸価12.8)
【0068】
上記(4)と上記(5)との合計に対して上記(5)が5~40質量%となるように200℃において二軸押出機を用いて混合して、酸変性ポリオレフィンを含んだ接着剤を得た。
【0069】
得られた酸変性ポリオレフィンの含有量が異なる接着剤を、各々、ロールコータ式の塗布装置に投入し、180℃において、塗布厚80μmとなるよう表皮の接合面に対して塗布を行った。
次いで、温度170℃に加熱した表皮を、室温(25℃)の基材Aの接合面に載せた(その際の温度は115℃)うえで、加圧を行って基材Aと表皮とを接合した。
得られた基材Aと表皮との各接合体(試験片)において、基材Aから表皮を剥離するのに要する剥離強度を温度100℃において測定した。この結果を表1及び
図11に示した。
【0070】
上記得られた酸変性ポリオレフィンの含有量が異なる接着剤を、各々、ロールコータ式の塗布装置に投入し、180℃において、塗布厚80μmとなるよう表皮の接合面に対して塗布を行った。
次いで、温度170℃に加熱した表皮を、室温(25℃)の基材Bの接合面に載せた(その際の温度は115℃)うえで、加圧を行って基材Bと表皮とを接合した。
得られた基材Bと表皮との各接合体(試験片)において、基材Bから表皮を剥離するのに要する剥離強度を温度80℃において測定した。この結果を表1及び
図11に示した。
【0071】
【0072】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明におけるドアトリム及びその製造方法は、種々の技術分野において利用することができる。具体的には、各種乗物(自動車及び鉄道等の車両、航空機、船舶)等におけるドアトリム及びその製造方法として好適に利用される。