(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042873
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】産業財産権のイベント発生予測時期提供システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240322BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147786
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀
(72)【発明者】
【氏名】中辻 啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA07
(57)【要約】
【課題】産業財産権に関する将来のイベントの発生日をより正確に予測する。
【解決手段】 システム10は、記憶部11と制御部12を有する。記憶部11は、予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、所定の期間が経過する時点から予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている。制御部12は、予測対象となる産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、記憶部11を参照して、取得した基準イベント日から予測実行日までに経過する期間に対応する予測所要期間を特定し、予測実行日に予測所要期間を加算してイベント発生予測時期を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部と、
前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する、産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【請求項2】
前記記憶部は、
既に予測対象イベントが生じた複数の産業財産権の各々における基準イベント日と予測対象イベント発生日が記憶されている第一データベースと、
前記予測所要期間が前記所定の期間ごとに対応付けられて記録されている第二データベースと、を含み、
前記制御部は、前記第一データベースに記憶された前記複数の産業財産権の各々の前記基準イベント日から前記予測対象イベント発生日までの期間に基づいて、前記所定の期間ごとの前記予測所要期間を算出し、算出した前記予測所要期間を前記所定の期間に対応付けて前記第二データベースに記憶させる、請求項1に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記予測対象イベントに要する費用を記憶しており、
前記制御部は、算出された前記イベント発生予測時期と共に前記予測対象イベントに要する費用を通知する、請求項1または請求項2に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【請求項4】
前記基準イベント日は、出願日または審査請求日、あるいはその費用請求の日である、請求項1または請求項2に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【請求項5】
前記予測対象イベントの発生予測時期は、特許庁からの指令書発生予測時期、認可または登録予測日、あるいはその費用請求予測日である、請求項1または請求項2に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【請求項6】
プロセッサと、前記プロセッサにより実行されるコンピュータ可読命令を記録する非一時的記録手段と、予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部とを用いて、産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供する方法であって、前記方法は前記プロセッサに、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得させ、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定させ、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出させる、
方法。
【請求項7】
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間を算出し、前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
算出した前記所定の期間ごとの前記予測所要期間の中から、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する、産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業財産権のイベント発生予測時期提供システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権に関する出願から権利維持の全ての手続きに関する将来的な費用の見積もりシステムを開示している。特許文献1では、各手続きまたはその請求が発生する標準的なタイムスケジュールに基づいて、将来的に発生する手続きの請求予定日を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業財産権を取得するまでには、出願手続きに始まり、審査手続き(審査請求、拒絶対応など)、登録手続きなどを含む様々なイベントが発生する。イベントが発生するタイミングは、案件ごとに異なるため、標準的なタイムスケジュールに基づいて算出されたイベントの発生予定日とイベントの実際の発生日との間にずれが生じる。
【0005】
本発明の目的は、産業財産権に関する将来のイベントの発生日をより正確に予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る産業財産権のイベント発生予測時期提供システムは、
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部と、
前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する。
【0007】
本発明の第二態様に係る産業財産権のイベント発生予測時期提供方法は、
プロセッサと、前記プロセッサにより実行されるコンピュータ可読命令を記録する非一時的記録手段と、予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部とを用いて、産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供する方法であって、前記方法は前記プロセッサに、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得させ、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定させ、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出させる。
【0008】
本発明の第三態様に係る産業財産権のイベント発生予測時期提供システムは、
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間を算出し、前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
算出した前記所定の期間ごとの前記予測所要期間の中から、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、産業財産権に関する将来のイベントの発生日をより正確に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るイベント発生予測時期提供システムの構成を例示している。
【
図2】
図2は、所要期間データベースの一例を示している。
【
図3】
図3は、制御部により実行されるイベント発生予測時期の算出処理の流れを例示している。
【
図4】
図4は、予測対象案件リストの一例を示している。
【
図5】
図5は、ユーザの端末に表示される画面の一例を示している。
【
図6】
図6は、コストデータベースの一例を示している。
【
図7】
図7は、ユーザの端末に表示される画面の一例を示している。
【
図8】
図8は、権利情報データベースの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係る実施形態の例について、以下詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る産業財産権のイベント発生予測時期提供システム10の構成を例示している。システム10は、ネットワーク20を介して一人または複数のユーザの端末30に通知可能に接続されている。システム10は、ユーザが出願予定又は出願あるいは保有している産業財産権において将来的に発生するイベントの発生日を予測し、イベントの発生予測時期を提供するシステムである。なお、ユーザの端末30とは、ユーザが所有する端末であってもよいし、ユーザがログインした自身が所有していない端末であってもよい。端末とは、パーソナルコンピュータでもよいし、タブレット端末、携帯電話端末であってもよい。ユーザは、例えば、出願人または権利者あるいはその出願代理人である。
【0013】
本明細書において用いられる「産業財産権」という用語は、登録された産業財産権だけでなく、申請中であって未登録の産業財産権も含む。以下では、申請中の産業財産権も含めて、単に産業財産権と称する。
【0014】
産業財産権に係るイベントには、例えば、産業財産権を取得するまでに発生する、出願手続き、審査手続き、登録手続き、などの各種の手続きが含まれる。また、産業財産権に係るイベントには、例えば、申請中または登録後の産業財産権を維持するために必要な費用(以下、維持年金と称する)を納付する手続きも含まれる。さらに、産業財産権に係るイベントには、上述の手続きの中で発生するイベントが含まれうる。例えば、審査手続きのイベントには、審査請求、指令書対応などのイベントが含まれる。また、産業財産権に係るイベントには、例えば、各種手続きで発生する費用請求が含まれうる。
【0015】
イベントの発生日には、例えば、各種手続きの実行日が含まれる。具体的には、イベント発生日には、出願日、審査請求日、補正書または意見書提出日、認可または登録に必要な費用の納付日、維持年金納付日、費用請求日(例えば、請求書発行日)などが含まれうる。また、イベント発生日には、特許庁から発行された指令書発生日(起案日、発行日または送達日)や認可通知書発生日(発行日または送達日)、あるいは認可日または登録日なども含まれうる。さらに、イベント発生日には、指令書や認可通知書の受領日、請求書受領日なども含まれうる。発生日は、年月日で表すことができる。
【0016】
システム10は、記憶部11と制御部12を有している。制御部12は、ネットワークを介して記憶部11に通信可能に接続されている。なお、制御部12は、記憶部11とともに一つの装置をなす構成としてもよい。
【0017】
記憶部11は、所要期間データベース111とユーザデータベース112を有している。所要期間データベース111には、産業財産権に係るイベントの各々について、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、所定の期間が経過する時点からイベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている。
【0018】
基準イベント日は、予測対象のイベントよりも前に発生するイベントの発生日であり、予測所要期間を特定する際の基準となるイベントの発生日である。基準イベント日の例としては、例えば、出願日または審査請求日、あるいはその費用請求の日などが挙げられる。所定の期間は、日、月、または年単位で表される。
【0019】
予測所要期間は、基準イベント日から所定の期間が経過する時点から予測対象イベントが発生すると予測される所要期間である。すなわち、予測所要期間は、基準となるイベントが発生した後のある時点からどのくらいの期間で予測対象のイベントが発生するかを示している。予測所要期間は、日、月、または年単位で表される。予測所要期間は、過去の膨大な産業財産権のデータから算出される。
【0020】
図2は、所要期間データベース111の一例を示している。本例においては、所要期間データベース111には、登録手続きのイベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、所定の期間が経過する時点からイベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている。産業財産権の種別として、Pは特許、Uは実用新案、Dは意匠、Tは商標を意味する。なお、
図2ではPのみを例示している。また、出願国において、JPは日本国特許庁への出願を意味し、USはアメリカ合衆国特許商標庁への出願を意味する。
【0021】
具体的には、日本とアメリカの特許出願において、出願日から経過する月数ごとに当該月数が経過する時点から登録手続きのイベントが発生すると予測される平均発生月数が記録されている。なお、本例においては、平均発生月数を算出する際に用いられた過去データの残り件数(未登録件数)と発生件数(登録発生件数)も月数ごとに記録されている。
【0022】
例えば、日本の特許出願について356件の過去データがあったものとする。356件について出願日から登録までに要した日数の平均が27.71月であった。このため、経過月数0の欄には、平均発生月数として27.71が記載されている。
【0023】
356件について、出願日から1カ月が経過するまでに登録された件(
図2において経過月数0カ月における発生件数)は0件であった。356件について出願日から登録までに要した日数の平均が27.71月であるので、経過月数1の欄には、出願日から1カ月が経過する時点から登録までに要した平均発生月数として26.71が記載されている。同様に、出願から2カ月、出願から3カ月、出願から4箇月経過するまでに登録された件数(
図2において経過月数1カ月、2カ月、3カ月における発生件数)は0件であった。356件について出願日から登録までに要した日数の平均が27.71月であるので、経過月数2の欄には、出願日から2カ月が経過する時点から登録までに要した平均発生月数として25.71が記載されている。また、経過月数3の欄には、出願日から3カ月が経過する時点から登録までに要した平均発生月数として24.71が記載されている。また、経過月数4の欄には、出願日から4カ月が経過する時点から登録までに要した平均発生月数として23.71が記載されている。
【0024】
さらに、出願日から5カ月が経過するまでに登録された件(
図2において経過月数4カ月における発生件数)は1件あり、残り355件について出願日から登録までに要した日数の平均が27.77月であった。このため、経過月数5の欄には、出願日から5カ月が経過する時点から登録までに要した平均発生月数として22.77が記載されている。
【0025】
このようにして、出願日からの経過月数と、経過月数が経過するまでに登録されていない件の経過月数が経過する時点から登録までに要した日数の平均とが、
図2の所要期間データベース111に記録されている。
【0026】
ユーザデータベース112には、例えば、ユーザの識別情報とパスワードが、対応するユーザに関連付けられて記録されている。ユーザの識別情報とパスワードは、ユーザが端末30を用いてシステム10に接続するログイン処理に用いられる。
【0027】
制御部12は、記憶部11に基づき産業財産権に係るイベントが発生すると予測される日(以下、イベント発生予測時期と称する)を算出するように構成されている。
【0028】
図3を用いて、制御部12により実行されるイベント発生予測時期の算出処理について詳細に説明する。
図3に例示されるように、まず、制御部12は、ユーザによりログイン入力がなされると、ログイン処理を行う(STEP1)。具体的には、ユーザは、端末30を用いてシステム10が提供するログイン画面に識別情報とパスワードを入力する。制御部12は、ユーザにより入力された識別情報とパスワードが、ユーザデータベース112に記録されているユーザの識別情報とパスワードと同一であると判断すると、ユーザのログインを許可する。
【0029】
続いて、制御部12は、予測対象となる産業財産権の基準イベント日と予測実行日とを取得する(STEP2)。例えば、制御部12は、ユーザの端末30から予測対象となる産業財産権の基準イベント日の情報を取得する。
図4は、ユーザにより作成された予測対象案件リストの一例を示している。本例においては、予測対象案件リストには、ユーザ管理番号、出願国、産業財産権の種別、および出願日が含まれている。ユーザ管理番号は、各ユーザが案件に付する番号である。出願日は、基準イベント日の一例である。予測対象案件リストは、ユーザによりユーザの端末30上で作成され、ユーザの端末30から制御部12へ送信される。
【0030】
予測実行日は、イベント発生予測時期を算出する日である。予測実行日は、ログイン処理が行われた後にユーザにより適宜指定されてもよく、ユーザによりログインされた日が予測実行日として処理されてもよい。あるいは、予測実行日は、
図4に示す予測対象案件リストに含まれてもよい。
【0031】
続いて、制御部12は、記憶部11の所要期間データベース111を参照し、取得した基準イベント日から予測実行日までに経過する期間に対応する予測所要期間を特定する(STEP3)。具体的には、まず、制御部12は、基準イベント日から予測実行日までに経過する期間を算出する。例えば、
図4に示されるユーザ管理番号001JPの案件は、日本の特許出願であり、出願日は2018年9月14日である。予測実行日が2021年9月1日である場合、出願日からの経過月数は、出願日の月の2018年9月から予測実行日の月の2021年9月までの36カ月と算出される。
【0032】
そして、制御部12は、所要期間データベース111を参照し、基準イベント日から予測実行日までに経過する期間に対応する予測所要期間を特定する。例えば、予測対象イベントが登録手続きのイベントである場合、ユーザ管理番号001JPの案件について出願日から36カ月が経過した時点から登録になるまでの予測所要期間は、
図2の所要期間データベース111における経過月数36カ月の平均発生月数の値から、10.55と特定される。
【0033】
続いて、制御部12は、予測実行日に特定された予測所要期間を加算してイベント発生予測時期を算出する(STEP4)。例えば、ユーザ管理番号001JPの案件について登録手続きのイベント発生予測時期の月は、予測実行日の月である2021年9月に予測所要期間である10.55が加算された2022年7月と算出される。
【0034】
続いて、制御部12は、算出されたイベント発生予測時期を提供する(STEP5)。具体的には、制御部12は、イベント発生予測時期リストを作成し、システム10のウェブブラウザ上にイベント発生予測時期リストを含む画面を表示させる。
図5は、ユーザの端末30に表示される画面の例である。本例においては、イベント発生予測時期リストには、算出された登録手続きの発生予測月に加えて、経過月数と平均発生月数も含まれている。ユーザは、当該画面を端末30に表示させることにより各案件のイベント発生予測時期を確認できる。
【0035】
特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権は、取得するまでおよび維持するために相応の手続きや費用が生じる。権利者は、これらの産業財産権に関する手続き及び費用処理を行うために、人員の割り当てや予算の確保が必要となる。そこで、あるイベントが発生してから次のイベントが発生するまでの標準的な平均期間を算出し、標準的な平均期間に基づいて次のイベントの発生日を予測することが考えられる。しかしながら、イベントの発生タイミングは案件ごとにバラつきがあり、標準的な平均期間に基づいて次のイベントの発生時期を予測する場合には、予測を実行する時点では次のイベントの発生予測時期が過去の日付になってしまうことがあり得る。
【0036】
本実施形態に係るシステム10によれば、標準的な平均期間を用いずに、所定の期間ごとに算出された予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間を用いて、予測対象イベントの発生予測時期が算出される。これにより、予測を実行する時点において予測対象イベントの発生予測時期は未来の日付になる。したがって、産業財産権に関する将来のイベントの発生時期をより正確に予測できる。
【0037】
本実施形態においては、予測対象イベントは登録手続きである。これにより、ユーザは、産業財産権がいつ登録になるのかを予測できる。
【0038】
なお、本実施形態において、基準イベント日の例として出願日を挙げている。しかしながら、基準イベント日として、審査請求日、あるいはその費用請求の日などが用いられてもよい。
【0039】
また、本実施形態において、制御部12は、算出された予測対象イベントのイベント発生予測時期と共に予測対象イベントに要する費用を通知するように構成されてもよい。
【0040】
具体的には、
図1に例示されるように、記憶部11は、さらにコストデータベース113を有する。コストデータベース113には、各イベントに要する費用が、対応するイベントに関連付けられて記録されている。
図6は、コストデータベース113の一例である。本例においては、コストデータベース113には、出願国と種別ごとに発生する各イベントに要する予測費用が記録されている。予測費用には、例えば庁費用と代理人費用が含まれる。
【0041】
制御部12は、コストデータベース113を参照し、予測対象イベントに要する費用を特定し、
図3のSTEP4において算出された予測対象イベントのイベント発生予測時期とともに登録手続きに要する費用を通知する。例えば、
図6に示すコストデータベース113において、日本の特許の登録手続きに要する費用は、20,000円である。制御部12は、コストデータベース113を参照し、
図4のユーザ管理番号001JPの案件における登録手続きに要する予測費用は、20,000円であると特定する。そして、制御部12は、
図7に例示されるように、
図5のイベント発生予測時期リストに示される情報に加えて登録手続きに要する予測費用を含むイベント発生予測時期リストを作成する。
【0042】
このような構成によれば、予測対象イベントのイベント発生予測時期と共に費用の情報が通知されるので、ユーザは、予測対象イベントでどのくらいの費用が発生するかを事前に把握できる。これにより、予算管理が容易となる。
【0043】
また、本実施形態において、予測所要期間は、イベント発生予測時期提供システム10の外部で算出されてネットワーク20を介して所要期間データベース111に記録されてもよく、あるいは制御部12により算出されて所要期間データベース111に記録されてもよい。予測所要期間が制御部12により算出される場合には、
図1に例示されるように、記憶部11は、さらに権利情報データベース114を有する。権利情報データベース114には、既に予測対象イベントが生じた複数の産業財産権の各々における基準イベント日と予測対象イベントの実際の発生日が記憶されている。権利情報データベース114は、第一データベースの一例である。
【0044】
図8は、権利情報データベース114の一例である。本例においては、登録手続きが完了した複数の産業財産権の管理番号、出願国、種別、出願日、登録日、および出願から登録までの日数と月数が記録されている。なお、複数の産業財産権には、複数のユーザの産業財産権が含まれてもよい。
【0045】
制御部12は、権利情報データベース114に記憶された複数の産業財産権の各々の基準イベント日から予測対象イベント発生日までの期間に基づいて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとの予測所要期間を算出する。
【0046】
例えば、
図2に示す日本の特許出願の登録手続きに関する予測所要期間を算出する場合、制御部12は、権利情報データベース114を参照し、同一出願国(本例では、日本)と同一の産業財産権の種別(本例では、特許)である産業財産権を抽出する。
【0047】
そして、制御部12は、権利情報データベース114を参照し、抽出された産業財産権の各々についての出願から登録までの期間(本例においては、月数)に基づいて、出願日からの経過月数ごとに、その月数が経過する時点で予測対象イベントがまだ発生していない件数と、予測対象イベントが発生した件数を集計する。
【0048】
そして、制御部12は、以下の式に基づいて、経過月数ごとに予測対象イベントの発生月(本例においては、平均発生月数ex)を算出する。
ex=0.5+Σlx+k+1/lx (k=0→n)
【0049】
上記の式において、lxは、経過月数(x)において予測対象イベントがまだ発生していない件数を示す。lx+k+1は、経過月数(x+k+1)において予測対象イベントがまだ発生していない件数を示す。nは、予測上限月数を示す。Σlx+k+1(k=0→n)は、予測実行日の月数(x+1)以降において予測対象イベントがまだ発生していない件数の合計を示している。
【0050】
そして、制御部12は、算出した予測所要期間を所定の期間に対応付けて所要期間データベース111に記憶させる。すなわち、制御部12は、算出した平均発生月数exを経過月数に対応付けて所要期間データベース111に記憶させる。これにより、
図2に示されるように経過月数毎に平均発生月数が記録された所要期間データベース111が作成される。所要期間データベース111は、第二データベースの一例である。
【0051】
このような構成によれば、例えば、権利情報データベース114のデータを最新のデータを用いて定期的に更新し、更新されたデータに基づいて予測所要期間を算出することにより、より正確な予測所要期間を算出できる。これにより、将来発生する予測対象イベントの発生日をより正確に予測できる。
【0052】
これまで説明した様々な機能を有する制御部12は、プロセッサ、非一時的記録手段、および一時的記録手段を備えている。非一時的記録手段、および一時的記録手段は、汎用メモリにより実現されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラム(コンピュータ可読命令)が記憶されうる。プロセッサは、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、無線通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされた後、汎用メモリにインストールされてもよい。
【0053】
プロセッサは、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。各プロセッサは、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0055】
上述した実施形態において、予測所要期間は予め算出されて所要期間データベース111に記録されている。しかしながら、制御部12は、イベント発生予測時期を算出する際に、予測所要期間を算出するように構成されてもよい。
【0056】
具体的には、制御部12は、予測対象となる産業財産権の基準イベント日と予測実行日とを取得すると、権利情報データベース114を参照し、予測対象となる産業財産権と同一の出願国と同一の産業財産権の種別である産業財産権を抽出する。例えば、予測対象となる産業財産権が日本の特許である場合、権利情報データベース114を参照し、日本の特許を抽出する。
【0057】
続いて、制御部12は、権利情報データベース114を参照し、抽出された産業財産権の各々についての出願から登録までの期間(本例においては、月数)に基づいて、出願日からの経過月数ごとに、その月数が経過する時点で予測対象イベントがまだ発生していない件数と、予測対象イベントが発生した件数を集計する。
【0058】
続いて、制御部12は、経過月数ごとに予測対象イベントの発生月(本例においては、平均発生月数ex)を算出する。
【0059】
続いて、制御部12は、算出した予測所要期間を所定の期間に対応付けてメモリに一時的に記憶する。すなわち、制御部12は、算出した平均発生月数exを経過月数に対応付けてメモリに一時的に記憶する。
【0060】
続いて、制御部12は、メモリを参照し、基準イベント日から予測実行日までに経過する期間に対応する予測所要期間を特定し、予測実行日に特定された予測所要期間を加算してイベント発生予測時期を算出する。
【0061】
上述した実施形態において、予測対象イベントは登録手続きである。しかしながら、例えば、予測対象イベントは、指令書対応、認可手続き、またはその費用請求でもよい。予測対象イベントが指令書対応である場合は、ユーザは、指令書に対応する人員がいつの時期に必要かを予測できる。
【0062】
上述した実施形態において、予測所要期間として平均発生月数が算出されている。しかしながら、予測所要期間として、月単位で算出されるのではなく、日単位や年単位、四半期単位など、任意の単位で算出されてもよい。また、予測所要期間は、算術平均値ではなく、加重平均値や中央値や最頻値など、所定の統計値を用いて算出されてもよい。
【0063】
上述した実施形態において、イベント発生予測時期は、月単位で算出されている。しかしながら、イベント発生予測時期は、日単位や年単位、四半期単位など、任意の単位で算出されてもよい。
【0064】
上述した実施形態において、
図5に示されるように、特許の案件についてイベント発生予測時期が算出されている。しかしながら、他の産業財産権についても同様に所定のイベントの発生予測時期が算出されてもよい。
【0065】
上述した実施形態において、
図5に示されるように、複数の産業財産権すべてについて登録手続きの発生予測時期が算出されている。しかしながら、一部の産業財産権については登録手続きとは異なる予測対象イベントの発生予測時期が算出されてもよい。あるいは、各産業財産権において、登録手続きの発生予測時期に加えて他の予測対象イベントの発生予測時期が算出されてもよい。なお、この場合、
図2の所要期間データベース111は、予測対象イベントに対応した経過月数と平均発生月数を記憶する。また、
図8の権利情報データベース114は、予測対象イベントに対応した基準イベント日と実際のイベント発生日を記憶する。
【0066】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。
(1)
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部と、
前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する、産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
(2)
前記記憶部は、
既に予測対象イベントが生じた複数の産業財産権の各々における基準イベント日と予測対象イベント発生日が記憶されている第一データベースと、
前記予測所要期間が前記所定の期間ごとに対応付けられて記録されている第二データベースと、を含み、
前記制御部は、前記第一データベースに記憶された前記複数の産業財産権の各々の前記基準イベント日から前記予測対象イベント発生日までの期間に基づいて、前記所定の期間ごとの前記予測所要期間を算出し、算出した前記予測所要期間を前記所定の期間に対応付けて前記第二データベースに記憶させる、(1)に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
(3)
前記記憶部は、前記予測対象イベントに要する費用を記憶しており、
前記制御部は、算出された前記イベント発生予測時期と共に前記予測対象イベントに要する費用を通知する、(1)または(2)に記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
(4)
前記基準イベント日は、出願日または審査請求日、あるいはその費用請求の日である、(1)から(3)のいずれかに記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
(5)
前記予測対象イベントの発生予測時期は、特許庁からの指令書発生予測時期、認可または登録予測日、あるいはその費用請求予測日である、(1)から(3)のいずれかに記載の産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
(6)
プロセッサと、前記プロセッサにより実行されるコンピュータ可読命令を記録する非一時的記録手段と、予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間が記録されている記憶部とを用いて、産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供する方法であって、前記方法は前記プロセッサに、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得させ、
前記記憶部を参照して、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定させ、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出させる、
方法。
(7)
産業財産権に係る予測対象イベントが発生すると予測されるイベント発生予測時期を提供するシステムであって、
前記予測対象イベントについて、基準イベント日から経過する所定の期間ごとに、前記所定の期間が経過する時点から前記予測対象イベントが発生するまでの予測所要期間を算出し、前記イベント発生予測時期を算出する制御部と、を有し、
前記制御部は、
予測対象となる前記産業財産権の基準イベント日と、予測実行日とを取得し、
算出した前記所定の期間ごとの前記予測所要期間の中から、取得した前記基準イベント日から前記予測実行日までに経過する期間に対応する前記予測所要期間を特定し、
前記予測実行日に前記予測所要期間を加算して前記イベント発生予測時期を算出する、産業財産権のイベント発生予測時期提供システム。
【符号の説明】
【0067】
10 イベント発生予測時期提供システム
11 記憶部
111 所要期間データベース
112 ユーザデータベース
113 コストデータベース
114 権利情報データベース
12 制御部
20 ネットワーク
30 ユーザの端末