(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042888
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】眼内圧測定用プローブ及び眼内圧計
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
A61B3/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147809
(22)【出願日】2022-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】591281895
【氏名又は名称】株式会社イナミ
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】井浪 喬之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 憲人
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316AB14
4C316FY01
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】被検者の眼内圧を低侵襲性にてより高い精度で測定可能な器具を提供する。
【解決手段】光ファイバー37の先端に受圧部38が設けられた光ファイバー圧力センサ30と、前記光ファイバー圧力センサ30の前記受圧部38側を覆い、前記受圧部38を内部に収容する針管20と、を備える眼内圧測定用プローブ10である。前記針管20は、その先端において被検者に穿刺される針先21を有するとともにゲージサイズが28~34Gである。前記受圧部38は、前記針管20内の前記針先21の位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーの先端に受圧部が設けられた光ファイバー圧力センサと、
前記光ファイバー圧力センサの前記受圧部側を覆い、前記受圧部を内部に収容する針管と、を備え、
前記針管は、その先端において被検者に穿刺される針先を有するとともにゲージサイズが28~34Gであり、
前記受圧部は、前記針管内の前記針先の位置に設けられている、眼内圧測定用プローブ。
【請求項2】
前記光ファイバー圧力センサは、ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサである請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項3】
前記針管における前記針先の刃面の角度が20~40°である請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項4】
前記眼内圧測定用プローブは、前記針先が前記被検者の眼の硝子体に穿刺される態様で用いられる請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内圧測定用プローブ及び眼内圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くの病院の眼科においては、例えば緑内障などの眼の疾病やその他の疾病を医師が診断するために、被検者の眼圧を測定することが行われており、その測定には眼圧計が使用されている。眼圧計としては、侵襲性の高い眼圧計が従来からあったが、近年では低侵襲で眼圧を測定可能なことから、主に圧平式眼圧計が用いられている。
【0003】
圧平式眼圧計には、測定中に直接眼に触れない非接触式眼圧計と、測定中に直接眼に触れるゴールドマン圧平式眼圧計などの接触式眼圧計とがある。非接触式眼圧計では、被検者の眼の角膜に向けて空気流を吹き付けることで眼圧の測定が行われる(例えば特許文献1参照)。ゴールドマン圧平式眼圧計では、被検者の眼の角膜にプリズムを当てることで眼圧の測定が行われる(例えば特許文献2参照)。ゴールドマン圧平式眼圧計は、空気による非接触式眼圧計よりも正確に測定可能であるため、標準的に用いられ、また、緑内障の経過観察に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59-6652号公報
【特許文献2】特開2001-128941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した圧平式眼圧計は、空気による非接触式及びプリズムによる接触式のいずれの場合でも、被検者の眼の角膜組織を通して測定が行われる。そのため、測定結果は、被検者の眼の角膜形状に依存し、例えば、レーシック手術が施された眼や角膜移植手術が施された眼などにおいて、眼圧測定値に有意な差が生じることがある。
【0006】
また、近年問題視されている正常眼圧緑内障にあるように、圧平式眼圧計での眼圧測定では眼圧が正常な範囲内の測定値であるにも関わらず、視神経が障害され、緑内障を発症する患者が多くいるという実情が存在する。
【0007】
したがって、本発明は、被検者の眼内圧を低侵襲性にてより高い精度で測定可能な器具を提供しようとするものである。また、本発明は、上記器具を用いた眼内圧計を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光ファイバーの先端に受圧部が設けられた光ファイバー圧力センサと、前記光ファイバー圧力センサの前記受圧部側を覆い、前記受圧部を内部に収容する針管と、を備え、前記針管は、その先端において被検者に穿刺される針先を有するとともにゲージサイズが28~34Gであり、前記受圧部は、前記針管内の前記針先の位置に設けられている、眼内圧測定用プローブを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検者の眼内圧を低侵襲性にてより高い精度で測定可能な器具としての眼内圧測定用プローブを提供することができる。また、本発明は、上記眼内圧測定用プローブを用いた眼内圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の眼内圧測定用プローブの一例を表す外観図である。
【
図6】ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサの受圧部の概略構成図である。
【
図7】本発明の一実施形態の眼内圧計の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
空気による非接触式眼圧計やプリズムによる接触式眼圧計(ゴールドマン圧平式眼圧計)といった圧平式眼圧計は、被検者の眼の角膜組織を通して測定が行われるため、測定結果は、角膜形状に依存する。そのため、例えば、レーシック手術などによる角膜の組織的変化や、被検者の状態により、圧平式眼圧計による眼圧測定値にバラツキが生じ、絶対値として測定し難いという第一の問題点がある。
【0013】
一方、緑内障は、本来眼圧が高くなることによって、視神経が障害され、視野が狭くなったり、部分的に欠けて見えなくなったりする病気であるが、眼圧が正常範囲内の人でも、緑内障を発症することがあり、これは、正常眼圧緑内障と呼ばれている。正常眼圧緑内障は、近年では緑内障の約7割にも及び、圧平式眼圧計での眼圧測定では眼圧が正常な範囲内の測定値であるにも関わらず、視神経が障害され、緑内障を発症するケースが増えてきているという第二の問題点もある。
【0014】
上述の第一及び第二の問題点から、本発明者らは、被検者の眼球の角膜側(前房側)と網膜側とでは眼圧が異なるのではないかという仮説を立て、マイクロ圧力センサを用いた動物実験によって検証した。その結果、ウサギの角膜側と網膜側とでは、眼内圧の値に有意な差が生じることがわかったため、本発明者らは、医療機器としての眼内圧測定用プローブを検討し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の一実施形態の眼内圧測定用プローブは、光ファイバーの先端に受圧部が設けられた光ファイバー圧力センサと、光ファイバー圧力センサの受圧部側を覆い、受圧部を内部に収容する針管と、を備えて構成される。上記針管は、その先端において被検者に穿刺される針先を有するとともにゲージサイズが28~34Gである。また、この眼内圧測定用プローブでは、光ファイバー圧力センサの受圧部は、針管内の針先の位置に設けられている。
【0016】
本実施形態の眼内圧測定用プローブでは、被検者に穿刺される針先を有する針管のゲージサイズが28~34Gであるため、低侵襲性にて眼内圧を測定することが可能である。また、本実施形態の眼内圧測定用プローブでは、光ファイバー圧力センサの受圧部が、針管内の針先の位置に設けられているため、非常に高精度に眼内圧を測定することが可能である。
【0017】
以下、本発明の一実施形態の眼内圧測定用プローブ、及びそれを備えた眼内圧計について、その好ましい構成や具体例などを、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付し、重複説明を省略することがある。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の一例としての眼内圧測定用プローブ10を表す外観図である。
図2は、
図1中の領域Aの拡大図であって、
図1に示す眼内圧測定用プローブ10の先端側の部分拡大図である。
図3は、
図2中のB-B線断面図であって、
図1に示す眼内圧測定用プローブ10の先端側における軸方向に沿う断面図である。
図4は、
図3中の領域Cの拡大図である。
図5は、
図3中の領域Dの拡大図である。
【0019】
眼内圧測定用プローブ10は、眼内圧測定用プローブ10の先端側にある針管20と、先端側が針管20に覆われた光ファイバー圧力センサ30とを備える。
図1に示されるように、眼内圧測定用プローブ10は、後述する眼内圧計における装置本体と接続するコネクタ31と、コネクタ31に連結した光ファイバー37を覆う被覆部32とを備えることができる。被覆部32は、例えば、ケーブル33、ケーブルジャケット34、樹脂製チューブ35、及び樹脂コート36などで構成されてもよい。
【0020】
図2に示すように、眼内圧測定用プローブ10の先端側にある針管20は、その先端において、被検者に穿刺される針先21を有する。針管20は中空円筒状であり、後述する光ファイバー圧力センサ30の先端側を覆い、針管20の内部に、光ファイバー圧力センサ30における後述の受圧部を収容する。針管20における針先21は、被検者の組織に刺せるように刃面22が形成されており、その刃面22の角度θは、20~40°であることが好ましく、25~35°であることがさらに好ましい。
【0021】
針管20のゲージサイズは、低侵襲性及び光ファイバー圧力センサ30の先端側を覆う観点から、28~34Gである。針管20のゲージサイズは針管20の外径(太さ)を表し、ゲージサイズが高いほど、針管20が細いことを表す。例えば、SUS304製の針管20のゲージサイズが28~34Gの外径は、0.36~0.18mm程度であり、内径は、0.20~0.10mm程度である。針管20のゲージサイズは、低侵襲性の観点から、29G以上であることが好ましく、30G以上であることがさらに好ましい。一方、針管20のゲージサイズは、光ファイバー圧力センサ30の先端側を覆う観点から、33G以下であることが好ましく、32G以下であることがさらに好ましい。
【0022】
針管20は光ファイバー圧力センサ30の先端側を覆うことで、眼内圧測定用プローブ10に剛性を付与する。それにより、医師などの使用者が眼内圧測定用プローブ10を扱い易くなる。針管20の長さは、使用者による操作性の観点から、10~20mmであることが好ましく、12.5~18.5mmであることがさらに好ましい。
【0023】
針管20の材質は、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS321、SUS430、SUS201、及びSUS202などのステンレス鋼であることが好ましい。ステンレス鋼のほか、例えば、チタン、及びチタン合金などのその他の金属製の針管20を用いてもよい。
【0024】
図3に示すように、光ファイバー圧力センサ30は、光ファイバー37と、光ファイバー37の先端に設けられた受圧部38とを有する。光ファイバー37の外径は、その先端に設けられた受圧部38を含めて、少なくとも針管20の内部に収容される部分において、針管20の内径よりも小さい。光ファイバー37の外径は、例えば200μm以下であることが好ましい。
【0025】
光ファイバー圧力センサ30の先端側は、針管20で覆われている部分であって、その部分における、受圧部38の先端面から所定の長さ部分である。光ファイバー37の先端側は、針管20で覆われている部分であって、受圧部38が設けられている光ファイバー37の先端から所定の長さ部分である。光ファイバー37の先端面では、光ファイバー37のコア部及びクラッド部は露出している。また、光ファイバー37の先端側(針管20で覆われている部分)は、クラッド部が被覆部32で被覆されていない状態で、クラッド部が露出していることが好ましい。一方、光ファイバー37における、針管20の内部に収容されている部分以外の部分は、ケーブル33、ケーブルジャケット34、樹脂製チューブ35、及び樹脂コート36などの被覆部32で被覆されていることが好ましい。
【0026】
光ファイバー圧力センサ30における先端から基端(コネクタ31側)までの長さは、例えば、2500~3100mmであることが好ましく、2700~2900mmであることがさらに好ましい。また、
図1に示すように、光ファイバー37における基端側から所定長さ部分は、コネクタ31、ケーブル33、ケーブルジャケット34などで被覆されていてもよい。さらに、光ファイバー37における、ケーブルジャケット34で覆われた部分から所定長さ部分は、フッ素樹脂などの樹脂製チューブ35で被覆されていてもよく、その樹脂製チューブ35で覆われた部分から針管20の基端23までの部分は、ポリイミドなどの樹脂コート36でコーティングされていてもよい。なお、光ファイバー37は、その長さ方向において複数に分断されてコネクタ等で光学的に接続されていてもよい。
【0027】
図3及び
図5に示すように、光ファイバー圧力センサ30における光ファイバー37の先端には受圧部38が設けられている。受圧部38はダイアフラム(ステンレスダイアフラム、シリコンダイアフラムなど)で構成され、ダイアフラムは気体や液体の圧力を受けることにより、変形、たわみ、及びひずみなどの変位が生じる。光ファイバー圧力センサ30は、圧力による受圧部(ダイアフラム)の変位などを光学的に計測する。
【0028】
光ファイバー圧力センサ30における受圧部38側は、上述の通り、針管20に覆われている。受圧部38は、針管20内に収容されており、針管20内の針先21の位置に設けられている。そのため、眼内圧測定用プローブ10における針先21を被検者の眼の組織(例えば硝子体)に穿刺することで、針管20内の針先21の位置に設けられている受圧部38により、眼内圧を非常に高精度に測定することができる。
【0029】
光ファイバー圧力センサ30と針管20とは、
図4に示すように、針管20の基端23側において、光ファイバー圧力センサ30における光ファイバー37と、針管20との間で、接着剤、溶融石英、又は溶接などの手段による接合部41、42、43、44にて固定されていることが好ましい。また、
図5に示すように、光ファイバー圧力センサ30における光ファイバー37と受圧部38とは、接着剤や溶接などの手段による接合部45にて固定されていることが好ましい。
【0030】
光ファイバー圧力センサ30の好適な具体例として、ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサを挙げることができる。ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサは、ファブリ・ペロー干渉計の原理を利用した光ファイバー圧力センサ30である。
【0031】
ここで、ファブリ・ペロー干渉計は、基本的に、向かい合わせた二つのミラーと、ミラー間にある空間(ファブリ・ペローキャビティー)とで構成される。手前側ミラーの反射面で反射された光と、奥側ミラーの反射面で反射された光が重ね合わされると、その光路長差によって生じる位相差により干渉が生じる。干渉によって得られる反射光強度は、二つの反射面間の光路長(キャビティー長×屈折率)に応じて変化する。このことから、キャビティー長又は屈折率が変化する構造を作ることで、ファブリ・ペロー干渉計をセンサとして使用することができる。ファブリ・ペロー干渉計内で反射した光はキャビティー長に応じて正確に波長変調される。キャビティー長に影響を与える圧力などを正確に計測するためにはキャビティー長を安定して正確に計測することが必要であり、その観点から、好ましくは白色光クロスコリレーターが用いられる。
【0032】
ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサは、圧力によるダイアフラムの変位を反射面間の距離の変化として計測する。
図6に示すように、より好ましいファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサ300は、光ファイバー37と、光ファイバー37の先端に設けられた受圧部38としてのマイクロ光学メカニカルシステム(MOMS)とを備えて構成される。MOMS(受圧部38)は、真空のキャビティーの上に組み立てられた変形可能な膜381を含み、微小なドラム状構造382を形成している。ドラム状構造382の底と柔軟な膜381の内面は、キャビティー長dのファブリ・ペローキャビティー383を形成しており、圧力Pが加えられると、膜381はドラム状構造382の下部に向かってたわみ、キャビティー長dが短くなる。このように、
図6に示すファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサ300は、光ファイバー37の先端に配置されたミラー部において、圧力変化に応じてひずみが発生し、それに起因した光偏光をファブリ・ペロー干渉法に基づき正確な圧力変化として出力する。
【0033】
ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサ300としては、市販品を用いることができる。その一例としては、Opsens社製の商品名「OPP-M」シリーズ、及びFiso Technologies社製の商品名「FOP-M200」などの「FOP-M」シリーズなどを挙げることができる。
【0034】
次に、上述の眼内圧測定用プローブ10を備えた本発明の一実施形態の眼内圧計について説明する。
図7は、その一例の眼内圧計50を表した概略図である。眼内圧計50は、上述した眼内圧測定用プローブ10、及び装置本体60を備える。なお、
図7では、眼内圧測定用プローブ10を簡略化して示している。
【0035】
眼内圧計50において、眼内圧測定用プローブ10は、光ファイバー37と連結したコネクタ31を介して、装置本体60に接続されている。装置本体60は、光ファイバー圧力センサ30からの圧力(眼内圧)に関する光学的情報を電気信号に変換し、出力する機能を有する。装置本体60としては、光ファイバー37を通じて、光ファイバー圧力センサ30の受圧部38からの圧力(眼内圧)に関する情報、信号を受け取り、読み取るためのシグナルコンディショナーを用いることができる。例えば、光ファイバー圧力センサ30として、より好適なファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサ300を用いる場合、装置本体60としては、ファブリ・ペローキャビティー383のキャビティー長dを読み取るためのシグナルコンディショナーを好適に用いることができる。
【0036】
上述のようなシグナルコンディショナーなどの装置本体60は、光ファイバー圧力センサ30と接続することから、図示を省略するが、光源(発光装置)、及び受光装置などを内蔵することができる。また、装置本体60は、例えば、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータなどで構成される制御部や、被検者の情報や測定データなどを保存する記憶部を備えていてもよく、制御部や記憶部を備えるパーソナルコンピュータ(デスクトップPC、ノートPC、タブレットPCなどのPC)70に接続されていてもよい。制御部は、装置本体60の発光又は受光の動作を制御したり、光ファイバー圧力センサ30からの光信号を電気信号に変換し、圧力測定値に変換するための演算処理を行ったりする機能を有する。例えば、装置本体60やPC70の記憶部には、信号の収録と解析のためのソフトウェア(プログラム)が格納されていてもよく、制御部が上記ソフトウェアを読み出して、各種信号の読み出し、変換、出力などを実行させてもよい。上記ソフトウェアには、光ファイバー圧力センサ30の自動キャリブレーションや自動認識などの各種補正機能をもたせてもよい。
【0037】
さらに、図示を省略するが、装置本体60は、医師などの使用者が装置本体60の動作を操作するための入力装置や、装置本体60の動作状態、及び光ファイバー圧力センサ30による圧力波形(例えばパルス状の矩形波など)などを表示する表示装置を備えていてもよい。このような表示装置において、リアルタイムに圧力(眼内圧)をモニタリングすることも可能であり、また、設定された測定時間内の平均値、最大値、最小値などを表示させることも可能である。
【0038】
装置本体60は、眼内圧測定用プローブ10と接続するためのコネクタ62を複数備えることもでき、
図7では、2つのコネクタ62が示され、2つの眼内圧測定用プローブ10が接続されている構成が例示されている。このように、複数の眼内圧測定用プローブ10を用いることで、眼球における任意の複数箇所で測定することができる。例えば、一方のチャンネルで硝子体側の眼内圧を測定し、他方のチャンネルで角膜側(前房側)の眼内圧を測定することなどにより、角膜などの眼球組織の影響も考慮しつつ、より精密な検査を行うことができる。
【0039】
次に、前述の眼内圧測定用プローブ10、及びそれを備えた眼内圧計50の好ましい使用態様について、
図8を用いて説明する。
図8は、眼球Eの構造を説明するための眼球断面図である。
図8に示すように、眼球Eは、角膜E1、虹彩E2、水晶体E3、前眼房E4、後眼房E5、毛様体E6、硝子体E7、網膜E8、脈絡膜E9、強膜E10、隅角E11、シュレム管E12、視神経乳頭E13、及び視神経E14などの組織を有する。
【0040】
眼内圧測定用プローブ10は、針管20内の針先21の位置に設けられた受圧部38を備える光ファイバー圧力センサ30によって、直接、眼内圧を測定可能であることから、針先21が被検者の眼の硝子体E7に穿刺される態様で用いられることが好ましい。これにより、角膜E1側から測定する場合に比べて、視神経乳頭E13や視神経E14により近い位置で測定可能となり、眼内圧をより高精度に測定することができる。圧力は後眼部内であればどこで測っても同じ値と考えられるためである。硝子体E7はゲル状の組織であるものの、光ファイバー圧力センサ30はゲル状組織を介しても圧力(眼内圧)を測定することができる。
【0041】
上述のように、眼内圧測定用プローブ10は、被検者の眼球Eの組織に穿刺される態様で用いられることから、使用の都度使い捨てられること、すなわち、ディスポーザブル品であることが好ましい。なお、眼内圧測定用プローブ10は、医師などの使用者によって手で扱われてもよいし、ロボット制御によって扱われてもよい。
【0042】
以上詳述した本実施形態の眼内圧測定用プローブ及びそれを備えた眼内圧計を用いることによって、被検者の眼内圧を低侵襲性にて、より高い精度で測定することが可能である。この眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計を用いることで従来の圧平式眼圧計を用いる場合よりも眼内圧を高精度に測定可能であること、また、従来の圧平式眼圧計は簡便に測定できるためスクリーニングや日常の検査に適していることから、眼内圧測定用プローブ及び眼内圧計は、精密眼圧検査のために好適に用いられる。
【0043】
例えば、従来の眼圧計による眼圧測定において、緑内障の疑いがあるなどの測定結果が出ている場合で、一定の経過観察後もそのような測定結果が出ている場合に、精密眼圧検査として、本実施形態の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計を好適に用いうる。また、例えば、従来の眼圧計による眼圧測定において、測定結果に異常はないものの緑内障の疑いがある症状が出ている場合に、精密眼圧検査として、本実施形態の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計を好適に用いうる。
【0044】
さらに、眼科手術は常に眼内圧の変動を意識し、一定の眼内圧を維持するように行われることから、眼科手術中の眼圧のモニタリングのために、本実施形態の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計を用いることができる。また、本実施形態の眼内圧測定用プローブ及び眼内圧計を用いることは、現在根治療法が無く、眼圧を下げるしか治療法が無い緑内障に対して新しい治療法を生み出す可能性があり、そうした医療貢献としても期待される。
【0045】
なお、上述した本発明の一実施形態は、以下の構成をとり得る。
[1]光ファイバーの先端に受圧部が設けられた光ファイバー圧力センサと、
前記光ファイバー圧力センサの前記受圧部側を覆い、前記受圧部を内部に収容する針管と、を備え、
前記針管は、その先端において被検者に穿刺される針先を有するとともにゲージサイズが28~34Gであり、
前記受圧部は、前記針管内の前記針先の位置に設けられている、眼内圧測定用プローブ。
[2]前記光ファイバー圧力センサは、ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサである上記[1]に記載の眼内圧測定用プローブ。
[3]前記針管における前記針先の刃面の角度が20~40°である上記[1]又は[2]に記載の眼内圧測定用プローブ。
[4]前記眼内圧測定用プローブは、前記針先が前記被検者の眼の硝子体に穿刺される態様で用いられる上記[1]~[3]のいずれかに記載の眼内圧測定用プローブ。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計。
【符号の説明】
【0046】
10 眼内圧測定用プローブ
20 針管
21 針先
22 刃面
30 光ファイバー圧力センサ
37 光ファイバー
38 受圧部
50 眼内圧計
60 装置本体
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーの先端に受圧部が設けられた光ファイバー圧力センサと、
前記光ファイバー圧力センサの前記受圧部側を覆い、前記受圧部を内部に収容する針管と、を備え、
前記針管は、その先端において被検者に穿刺される針先を有するとともにゲージサイズが30~34Gであり、
前記受圧部は、前記針管内の前記針先の位置に設けられており、
前記光ファイバー圧力センサと前記針管とは、前記針管の基端側において、前記光ファイバーと前記針管との間で接合部にて固定されている、眼内圧測定用プローブ。
【請求項2】
前記光ファイバー圧力センサは、ファブリ・ペロー式光ファイバー圧力センサである請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項3】
前記針管における前記針先の刃面の角度が20~40°である請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項4】
前記眼内圧測定用プローブは、前記針先が前記被検者の眼の硝子体に穿刺される態様で用いられる請求項1に記載の眼内圧測定用プローブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の眼内圧測定用プローブを備えた眼内圧計。