(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004291
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61M5/315 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103883
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】森 晴彦
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH14
4C066PP02
(57)【要約】
【課題】製造が容易で、医療用注射器のシリンジの内周面に摺動させるなどしても高い封止性を維持できるガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法の提供。
【解決手段】ラミネートフィルム12がガスケット本体11のプランジャーロッド21側の後端面以外に少なくともラミネートされ、ラミネートフィルム12の後端はガスケット本体11の側面における最もガスケット本体11後側に位置する円環状凸部11eよりも後側に確保された部分である後端部側面11gにラミネートされているガスケット10、ガスケット付きプランジャー20、ガスケットの製造方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材で構成されたガスケット本体と、このガスケット本体の表面にラミネートされたラミネートフィルムとを含み、医療用注射器のプランジャーロッド先端に設けられるガスケットであって、
前記ガスケットは、前記ラミネートフィルムにおける前記ガスケット本体の側面の円環状凸部にラミネートされた部分の外面によって形成されて前記医療用注射器のシリンジの内周面に接する円周面部を有し、
前記ラミネートフィルムは、前記ガスケット本体の前記プランジャーロッド側とは反対の先端及び前記先端から後側に延在する側面にラミネートされ、前記ラミネートフィルムの後端は、前記ガスケット本体の前記側面における1または複数の前記円環状凸部のうち最も前記ガスケット本体の後側に位置する前記円環状凸部よりも後側に確保された部分である後端部側面、あるいは前記ガスケット本体の後端面にラミネートされているガスケット。
【請求項2】
弾性材で構成されたガスケット本体と、このガスケット本体の表面にラミネートされたラミネートフィルムとを含み、医療用注射器のプランジャーロッド先端に設けられるガスケットであって、
前記ガスケットは、前記ラミネートフィルムにおける前記ガスケット本体の側面の円環状凸部にラミネートされた部分の外面によって形成されて前記医療用注射器のシリンジの内周面に接する円周面部を有し、
前記ラミネートフィルムは、前記ガスケット本体の前記プランジャーロッド側とは反対の先端及び前記先端から後側に延在する側面を覆う部分である被覆主部と、前記被覆主部の後端から屈曲部を介して前記被覆主部後端の内周側に延在して前記ガスケット本体の後端面を覆う後側折込部とを有するガスケット。
【請求項3】
請求項2に記載のガスケットと、前記ガスケットが先端部に取り付けられた前記プランジャーロッドとを有し、
前記プランジャーロッドは、前記医療用注射器の前記シリンジに挿入される細長形状のプランジャー主部と、前記プランジャー主部の先端の前壁部の中央部から前記プランジャー主部先端側へ突出され前記プランジャーロッドの先端部を構成するねじ軸部とを有し、
前記ガスケット本体は前記後端面に開口する雌ねじ孔を有し前記雌ねじ孔にねじ込まれた前記ねじ軸に螺着され、
前記プランジャーロッドの前記プランジャー主部の前記前壁部と前記ガスケット本体との間に前記ラミネートフィルムの前記後側折込部が挟持固定されているガスケット付きプランジャー。
【請求項4】
前記ラミネートフィルムが摺動層と、弾性材で構成された前記ガスケット本体との接着層の少なくとも2層以上で構成され、前記ラミネートフィルムの総厚みが5μmから100μmであり、前記接着層の総厚みに占める厚み比率が50%以下である請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記ガスケット本体と前記ラミネートフィルムの界面の強度がJIS K6854に規定の「はく離接着強さ試験方法」により測定し、0.05N/25mm以上である請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項6】
請求項1または2に記載のガスケットの製造方法であって、前記ラミネートフィルムを用いてスキンパック包装により前記ガスケット本体を被覆する工程を含むことを特徴とする、医療用注射器に適用されるガスケットの製造方法。
【請求項7】
前記ラミネートフィルムがフッ素系樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂の少なくとも一方を含む請求項1または2に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用注射器のプランジャーロッド先端に設けられるガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用注射器としては、ゴム製ガスケットの表面をフィルムで覆ったラミネートガスケットが普及している(例えば特許文献1)。ラミネートガスケットによれば表面をフィルムで覆うことで加硫ゴムの成分が薬液へ移行するのを防ぎ、しかもゴムよりも良好な摺動性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注射器を使用するときにはガスケットが注射器のシリンジの内周面に滑らかに摺動することが求められる。加硫ゴムからなるガスケットは往々にして摺動性が優れず、シリンジ内周面にシリコーンオイルを塗布することが広く行われている。しかし、一部の薬液に対してシリコーンオイルは、薬液の効果や安定性などに影響する可能性が指摘されている。
【0005】
加硫ゴムより形成されるガスケットには、ゴムの加工性や加硫反応に用いる為の様々な成分が添加されている。添加された成分若しくはその熱分解物は、シリンジ内に貯留された薬液と接触することで薬液中へと溶出し移行することが知られている。薬液中に溶出したこれらの移行物は、一部の薬液に対して薬液の効果や安定性に影響を与える、との指摘がある。
【0006】
以上の理由から、医療用注射器ではゴム製ガスケットの表面を摺動性の良いフィルムでラミネートしたラミネートガスケットが使用されることが多くなっている。しかしながら、ガスケットにラミネートフィルムを被覆するに当たっては、金型を用いてガスケットを成形する工程に於いて、前記金型内にラミネートフィルムを位置合わせの上、設置する工程が必要となり、生産効率の面で課題がある。
【0007】
本発明は、上記背景をもとになされたもので、その目的は、製造が容易で、医療用注射器のシリンジの内周面に摺動させるなどしても高い封止性を維持できるガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0009】
[1]弾性材で構成されたガスケット本体と、このガスケット本体の表面にラミネートされたラミネートフィルムとを含み、医療用注射器のプランジャーロッド先端に設けられるガスケットであって、前記ガスケットは、前記ラミネートフィルムにおける前記ガスケット本体の側面の円環状凸部にラミネートされた部分の外面によって形成されて前記医療用注射器のシリンジの内周面に接する円周面部を有し、前記ラミネートフィルムは、前記ガスケット本体の前記プランジャーロッド側とは反対の先端及び前記先端から後側に延在する側面にラミネートされ、前記ラミネートフィルムの後端は、前記ガスケット本体の前記側面における1または複数の前記円環状凸部のうち最も前記ガスケット本体の後側に位置する前記円環状凸部よりも後側に確保された部分である後端部側面、あるいは前記ガスケット本体の後端面にラミネートされているガスケット。
[2]弾性材で構成されたガスケット本体と、このガスケット本体の表面にラミネートされたラミネートフィルムとを含み、医療用注射器のプランジャーロッド先端に設けられるガスケットであって、前記ガスケットは、前記ラミネートフィルムにおける前記ガスケット本体の側面の円環状凸部にラミネートされた部分の外面によって形成されて前記医療用注射器のシリンジの内周面に接する円周面部を有し、前記ラミネートフィルムは、前記ガスケット本体の前記プランジャーロッド側とは反対の先端及び前記先端から後側に延在する側面を覆う部分である被覆主部と、前記被覆主部の後端から屈曲部を介して前記被覆主部後端の内周側に延在して前記ガスケット本体の後端面を覆う後側折込部とを有するガスケット。
[3][2]に記載のガスケットと、前記ガスケットが先端部に取り付けられた前記プランジャーロッドとを有し、前記プランジャーロッドは、前記医療用注射器の前記シリンジに挿入される細長形状のプランジャー主部と、前記プランジャー主部の先端の前壁部の中央部から前記プランジャー主部先端側へ突出され前記プランジャーロッドの先端部を構成するねじ軸部とを有し、前記ガスケット本体は前記後端面に開口する雌ねじ孔を有し前記雌ねじ孔にねじ込まれた前記ねじ軸に螺着され、前記プランジャーロッドの前記プランジャー主部の前記前壁部と前記ガスケット本体との間に前記ラミネートフィルムの前記後側折込部が挟持固定されているガスケット付きプランジャー。
[4]前記ラミネートフィルムが摺動層と、弾性材で構成された前記ガスケット本体との接着層の少なくとも2層以上で構成され、前記ラミネートフィルムの総厚みが5μmから100μmであり、前記接着層の総厚みに占める厚み比率が50%以下である[1]または[2]に記載のガスケット。
[5]前記ガスケット本体と前記ラミネートフィルムの界面の強度がJIS K6854に規定の「はく離接着強さ試験方法」により測定し、0.05N/25mm以上である[1]~[3]のいずれか1項に記載のガスケット。
[6][1]、[2]、[4]、[5]のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法であって、前記ラミネートフィルムを用いてスキンパック包装により前記ガスケット本体を被覆する工程を含むガスケットの製造方法。
[7]前記ラミネートフィルムがフッ素系樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂の少なくとも一方を含む[1]、[2]、[4]、[5]のいずれか1項に記載のガスケット。
なお、[3]のガスケット付きプランジャーのガスケットは、[4]または[5]または[7]のガスケットのうち[2]に係る発明のガスケットであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造が容易で、医療用注射器のシリンジの内周面に摺動させるなどしても高い封止性を維持できるガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1実施形態のガスケット10及びガスケット付きプランジャー20を有する医療用注射器の一例を示す部分破断正面図である。
【
図2】
図1のガスケット付きプランジャー20の前端部を拡大して示す部分破断拡大正面図である。
【
図3】
図1のA-A線断面におけるプランジャー主部21a及びシリンジ30の主筒部31の断面構造を示す断面矢視拡大図である。
【
図4】本発明の1実施形態のガスケットの製造方法を説明する図であり、ガスケット本体11に被せたラミネートフィルム12のガスケット本体11表面への被着(ラミネート)前の状態を示す図である。
【
図5】本発明の1実施形態のガスケットの製造方法を説明する図であり、
図4のガスケット本体11とラミネートフィルム12との間を真空引きしてラミネートフィルム12をガスケット本体11に被着(ラミネート)させた状態を示す図である。
【
図6】
図5の後、ラミネートフィルム12について、ガスケット本体11の後端部側面11gにおける後端部テーパ状側面11hから後側に位置する部分を除去して
図1のガスケット10を得た状態を説明する部分破断断面図である。
【
図7】ガスケット本体後側に折り込んだラミネートフィルムの後側折込部をガスケット本体とプランジャー主部との間に挟持固定した構成のガスケット付きプランジャーを示す部分破断断面図である。
【
図8】ガスケットのラミネートフィルムの一部をガスケット本体11の後端面11bに開口する雌ねじ穴11cの内周面と雌ねじ穴11cにねじ込まれたプランジャーロッド21のねじ突軸21bとの間に挟持固定した構成のガスケット付きプランジャーを示す部分破断断面図である。
【
図9】円錐状の前端部を有するガスケット本体11を用いたガスケット10及びガスケット付きプランジャーを示す部分破断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の1実施形態に係るガスケット、ガスケット付きプランジャー、ガスケットの製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0013】
図1は本発明の1実施形態のガスケット10及びガスケット付きプランジャー20を有する医療用注射器100の一例を示す。
図1の医療用注射器100は、筒状部材であるシリンジ30と、シリンジ30内に挿入可能なガスケット10を含むガスケット付きプランジャー20とを有する。
【0014】
図1に示すように、シリンジ30は、円筒状の主筒部31と、主筒部31の前端から主筒部31前方へ行くに従って内径及び外径が縮小するテーパ状に延出するテーパ前部壁32と、テーパ前部壁32の先端からテーパ前部壁32よりも主筒部31前側(主筒部31とは逆の側)へ延出する円筒状のルアー部33と、主筒部31の後端部の周囲に突出するフランジ状のフィンガーグリップ34とを有する。
【0015】
図1に示すように、ルアー部33は、主筒部31に比べて径小の円筒状である。
図1において、テーパ前部壁32及びルアー部33は主筒部31と同軸に形成されている。
【0016】
シリンジ30のルアー部33には図示略の注射針が脱着可能に取り付けられる。
注射針は、一例としてルアー部33前端側からルアー部33外周へのナット(図示略)の螺着によって、注射針内側の液流路とルアー部33内側領域との連通を確保し且つ注射針外周とルアー部33との液密性を確保してルアー部33前端部に取り付けることができる。ルアー部33外周に螺着されたナットは、ルアー部33に対して螺着時とは逆向きに回転操作してルアー部33から取り外すことができる。ルアー部33前端部に取り付けられた注射針は、ルアー部33外周に螺着されたナットをルアー部33から取り外すことでルアー部33から取り外すことができる。
【0017】
図1に示す医療用注射器100はルアー部33に脱着可能なキャップ40も有し、ルアー部33にキャップ40を装着しておくことでシリンジ30内の清浄を安定に保つことができる。
但し、医療用注射器100はキャップ40を含まない構成も採用可能である。
【0018】
シリンジ30は、樹脂製あるいはガラス製の一体成形品を採用できる。
樹脂製のシリンジ30の材質は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等を採用できる。
【0019】
ガスケット付きプランジャー20は、棒状のプランジャーロッド21と、プランジャーロッド21の先端に設けられたガスケット10とを有する。
ガスケット10は弾性材で構成されたガスケット本体11と、このガスケット本体11の表面にラミネートされたラミネートフィルム12とを含む。ガスケット本体11は円柱状に形成されている。ガスケット10も円柱状に形成されている。
本明細書において、ラミネートフィルム12は、ガスケット本体11の表面にラミネートされたフィルム、及びガスケット本体11の表面にラミネートされるフィルムを指す。
また、ラミネートフィルム12は連続する1枚のフィルムである。
【0020】
ガスケット10は弾性材で構成されていればよく、その形成材料には特には限定は無い。ガスケット10は、例えば、加硫性のゴム、あるいは熱可塑性エラストマで形成されたものを採用可能である。
【0021】
図2はガスケット付きプランジャー20の前端部を
図1に比べて拡大して示す部分破断拡大正面図である。
図2に示すように、ガスケット付きプランジャー20の前端部は、ガスケット10と、プランジャーロッド21の先端部とで構成されている。
【0022】
図1に示すように、プランジャーロッド21は、棒状のプランジャー主部21aと、プランジャー主部21aの先端面を形成する主部前壁部21dからプランジャー主部21a先端側へ突出するねじ突軸21bと、プランジャー主部21aの先端とは逆の後側にプランジャー主部21aの中心軸線に対して垂直の円板状に形成された後板部21cとを有する。
【0023】
図1に示すように、プランジャーロッド21のプランジャー主部21aは直線である中心軸線に沿って延在する棒状に形成されている。プランジャー主部21aはその中心軸線方向を長手方向とする細長形状(棒状)に形成されている。
【0024】
図3は、
図1のA-A線断面におけるプランジャー主部21a及びシリンジ30の主筒部31の断面構造を示す断面矢視拡大図である。
図1、
図3に示すように、プランジャー主部21aは、断面十字形で延在する棒状の幹部21eを有する。幹部21eは断面中央から互いに同等の突出寸法で突出する4つの板部を有する。幹部21eを構成する4つの板部は、幹部21eは断面中央を中心とする軸回り方向において互いに隣り合う板部間の開き角を一定に保ったまま真っ直ぐに延在している。
図1、
図3に示すプランジャー主部21aの幹部21eの断面中央は直線上に延在している。幹部21eの断面中央はプランジャー主部21aの中心軸線に相当する。
【0025】
図1に示すように、ねじ突軸21bはプランジャーロッド21のプランジャー主部21aの同軸上に形成されている。プランジャー主部21aの主部前壁部21d及び後板部21cは、プランジャーロッド21のプランジャー主部21aの中央(中心軸線)と同軸の円板状に形成されている。プランジャー主部21aの主部前壁部21d及び後板部21cは、プランジャー主部21aの中央(中心軸線)に垂直の円板状に形成されている。
【0026】
図1において、プランジャー主部21aの主部前壁部21d及び後板部21cには幹部21eの延在方向端部が一体化されている。
また、
図1に示すプランジャー主部21aは、幹部21eの延在方向(長手方向)途中部に形成された補強リブ21fを含む。
図1において補強リブ21fは、幹部21e断面中央を中心とする軸回り方向において互いに隣り合う板部間に幹部21eの長手方向に垂直に延在する板状に形成されている。補強リブ21fは、幹部21e断面中央を中心とする軸回り方向において互いに隣り合う板部に一体化されている。
【0027】
図1、
図3に示すように、幹部21eの4つの板部、補強リブ21fは、幹部21e断面中央からシリンジ30の主筒部31内径よりも径小の円筒面内に位置する。
図1、
図2に示すように、プランジャー主部21aの主部前壁部21dも、幹部21e断面中央からシリンジ30の主筒部31内径よりも径小の円筒面内に位置する。
【0028】
プランジャーロッド21について、ねじ突軸21bが位置する先端側を前側、前側とは逆の側であり後板部21cが位置する側を後側、として説明する。
ガスケット付きプランジャー20の前端部は、ガスケット10と、プランジャーロッド21の前端部とで構成されている。
図2に示すように、プランジャーロッド21のねじ突軸21bは、プランジャー主部21aの先端面の中央部からプランジャー主部21a先端側へ突出する突軸21b1と、突軸21b1の側面(側周面)に螺旋状に形成されたねじ山部21b2とを有する。
【0029】
図2に示すように、ガスケット本体11は、ガスケット本体11の軸線方向片端である先端からガスケット本体11の軸線方向においてガスケット本体11先端とは逆の後側へ向かって延在する側面11a(側周面)を有する。ガスケット本体11には、ガスケット本体11の後端面11bから前側(先端側)へ向かって窪む非貫通穴である雌ねじ穴11cが形成されている。ガスケット本体11の後端面11bは円柱状のガスケット本体11の中心軸線に垂直に延在形成されている。雌ねじ穴11cは、円柱状のガスケット本体11の中心軸線と同軸に形成されている。
【0030】
図2に示すガスケット本体11の表面は、雌ねじ穴11c内面以外のガスケット本体11外面を指す。
図2に示すガスケット10のラミネートフィルム12は、ガスケット本体11の表面のうちガスケット本体11の後端面11b以外の領域全体にラミネートされている。
図2に示すガスケット10において、ラミネートフィルム12はガスケット本体11の後端面11bにはラミネートされていない。ガスケット本体11の表面のうちガスケット本体11の後端面11b以外の領域全体はラミネートフィルム12に覆われているが、ガスケット本体11の後端面11bはラミネートフィルム12に覆われていない。
【0031】
図2に示すように、ガスケット本体11の雌ねじ穴11cの内周面には、プランジャーロッド21のねじ突軸21b側面のねじ山部21b2に対応するねじ溝11dが螺旋状に形成されている。
図1、
図2においてガスケット10は、ガスケット本体11の雌ねじ穴11cにねじ込まれたプランジャーロッド21のねじ突軸21bに螺着されている。ガスケット10は、ガスケット本体11の雌ねじ穴11c内周面のねじ溝11dに入り込ませたねじ山部21b2とガスケット本体11との螺合によってプランジャーロッド21のねじ突軸21bに螺着されプランジャーロッド21に取り付けられている。
【0032】
図1、
図2においてガスケット10のガスケット本体11の後端面11bは、プランジャーロッド21のねじ突軸21bのガスケット本体11の雌ねじ穴11cへのねじ込みよって発生した締結力によって、プランジャー主部21a前端の主部前壁部21dが形成するプランジャー主部21a先端面に当接されている。
なお、プランジャーロッド21に取り付けられた状態のガスケット10は、プランジャーロッド21のねじ突軸21bをガスケット本体11に対して雌ねじ穴11cへのねじ込み時とは逆向きに回転操作することで、ねじ突軸21bをガスケット本体11から抜き出すことができプランジャーロッド21から取り外すことができる。
【0033】
図2に示すように、ガスケット10のガスケット本体11は円柱状のガスケット主部11dの側面11f(主部側面。以下、ガスケット主部側面、とも言う)におけるガスケット主部11dの軸線方向複数箇所に突出形成されそれぞれガスケット主部側面11fの周方向全周に延在する円環状凸部11eを有している。ガスケット10は、ラミネートフィルム12における円環状凸部11eにラミネートされた部分の外面によって形成されてシリンジ30の主筒部31内周面に接する円周面部13(接触円周面部)を有する。ラミネートフィルム12における複数の円環状凸部11eにラミネートされた部分はそれぞれがシリンジ30の主筒部31内周面に接する円周面部13を形成する。
このため、
図1に示すように、ガスケット付きプランジャー20のガスケット10をシリンジ30の主筒部31内に挿入した状態ではプランジャーロッド21はシリンジ30の主筒部31に接触しない。
【0034】
図1に示すように、プランジャーロッド21のプランジャー主部21a先端面から後板部21cまでの離間距離はシリンジ30の主筒部31のその軸線方向寸法よりも大きい。
このため、ガスケット付きプランジャー20のガスケット10をシリンジ30の主筒部31内に挿入した状態では、シリンジ30の主筒部31前端にガスケット10前端を配置した場合でも、プランジャーロッド21の後板部21cはシリンジ30の主筒部31の後側に位置する。
【0035】
なお、プランジャーロッド21における補強リブ21fの形成位置及び形成数は適宜変更可能である。
また、プランジャーロッド21は
図1を参照して説明した構成から補強リブ21fを省略した構成も採用可能である。
また、プランジャーロッド21は、中実棒状の幹部を採用した構成も採用可能である。中実棒状の幹部を採用したプランジャーロッド21においては幹部の前端部自体が主部前壁部21dの役割を果たす。
【0036】
ガスケット10は、ガスケット主部側面11fのその軸線方向1箇所のみに円環状凸部11eを有する構成も採用可能である。
なお、ガスケット本体11の側面11aは、ガスケット主部側面11fと円環状凸部11eの外面とを含む。
【0037】
図2に示すように、ラミネートフィルム12は、ガスケット本体11の側面11a(以下、ガスケット本体側面、とも言う)において、円環状凸部11eのうち最もガスケット本体11後側に位置する円環状凸部11eよりも後側に確保された部分である後端部側面11gにもラミネートされている。
ラミネートフィルム12におけるガスケット本体11の側面11aにラミネートされた部分を、以下、ガスケット側面被覆部、とも言う。ラミネートフィルム12のガスケット側面被覆部におけるガスケット本体11後端側の端(後端)はガスケット本体11の後端部側面11gに位置する。
ガスケット本体11の後端部側面11gはガスケット主部側面11fの一部である。
【0038】
図2に示すように、ラミネートフィルム12のガスケット側面被覆部の後端(ガスケット本体11後端側の端)がガスケット本体11の後端部側面11gに位置する構成では、ラミネートフィルム12のガスケット側面被覆部後端が円環状凸部11e外面に位置する場合やガスケット本体11軸線方向において互いに隣り合う円環状凸部11e間のガスケット本体側面11a(ガスケット主部側面11f)に位置する場合に比べて、ラミネートフィルム12のカット等によるガスケット側面被覆部の後端の処理作業を行い易い。この構成であれば、ラミネートフィルム12のカット等によるガスケット側面被覆部の後端の処理作業において発生する切り屑の確実除去により、シリンジ30内に収容した薬液への切り屑混入を防ぐことができる。また、ラミネートフィルム12のカット等によりガスケット側面被覆部後端に滑らかに連続する後端面を形成できる処理を容易に行えるため、ガスケット付きプランジャー20をシリンジ30の主筒部31に対して主筒部31軸線方向に移動したときの細片発生防止、シリンジ30内に収容した薬液への細片混入の防止に有利である。
【0039】
図2に示すように、ここで例示したガスケット本体11の後端部側面11gにおけるガスケット本体11軸線方向の後端部は、ガスケット本体11の後側に行くほど径小となるテーパ円筒面状に形成された後端部テーパ状側面11hとされている。
図2に示すガスケット本体11の後端部側面11gは後端部テーパ状側面11hを有する。後端部テーパ状側面11hの後端はガスケット本体11の後端に到達され、稜線を介してガスケット本体11の後端面11bと隣り合っている。
【0040】
図2に示すガスケット本体11の後端部側面11gにおける後端部テーパ状側面11hから前側部分は、ガスケット本体11の中心軸線を中心としガスケット本体11軸線方向(前後方向)において一定径で延在する円筒面状に形成されている。但し、ガスケット本体11は、後端部側面11gの全体が後端部テーパ状側面11hである構成も採用可能である。ガスケット本体11は、後端部テーパ状側面11hが存在せず、後端部側面11g全体がガスケット本体11軸線方向(前後方向)において一定径で延在する円筒面状である構成も採用可能である。
【0041】
図2において、ラミネートフィルム12の後端部はガスケット本体11の後端部テーパ状側面11hにラミネートされている。ラミネートフィルム12の後端はガスケット本体11の後端部テーパ状側面11hに位置する。
ラミネートフィルム12の後端部がガスケット本体11の後端部テーパ状側面11hにラミネートされ、ラミネートフィルム12の後端がガスケット本体11の後端部テーパ状側面11hに位置する構成であれば、ラミネートフィルム12の後端がシリンジ30の主筒部31内周面に接触しない。このため、ガスケット付きプランジャー20をシリンジ30の主筒部31に対して主筒部31軸線方向に移動したときにラミネートフィルム12後端からの細片発生防止をより確実に実現できる。
【0042】
ラミネートフィルム12は、シリンジ30の主筒部31内周面に接触する摺動層と、ガスケット本体11との接着層とを有する構成のものを好適に採用できる。
ラミネートフィルム12は、摺動層と接着層との間に、摺動層及び接着層とは異なる材質の樹脂層を有する構成も採用可能である。
摺動層はフッ素樹脂等を好適に採用できる。フッ素樹脂の摺動層はシリンジ30の主筒部31内周面との摩擦係数を小さく抑えることでき、しかも、ガスケット本体11の加硫ゴム成分のガスケット10からシリンジ30内領域への移動防止にも有効に寄与する。
接着層は、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ニトリルゴム系、スチレンーブタジエンゴム系等の接着剤を好適に採用できるが特に限定されるものではない。
ラミネートフィルム12は、フッ素系樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂の少なくとも一方を含む構成を好適に採用できる。
【0043】
ラミネートフィルム12は、総厚みが5μmから100μmであり、接着層の総厚みに占める厚み比率が50%以下であることが好ましい。
また、ガスケット10は、ガスケット本体11とラミネートフィルム12の界面の強度がJIS K6854に規定の「はく離接着強さ試験方法」により測定したときに0.05N/25mm以上であることが好ましい。
【0044】
ガスケット本体11にラミネートフィルム12をラミネートしてガスケット10を製造するガスケットの製造方法は、ガスケット本体11表面に被着される部分(ラミネートフィルム12)を含むフィルム12M(
図4、
図5参照)を用いてスキンパック包装によりガスケット本体11を被覆する工程を含む方法を好適に採用できる。
図4、
図5では、ラミネートフィルム12をその面方向に延長した構成のフィルム12Mを用いている。フィルム12Mは、面方向のサイズのみがラミネートフィルム12と異なり、面方向のサイズ以外の厚み、材質、層構成等はラミネートフィルム12と同様のものである。
【0045】
図4~
図6は、フィルム12Mを用いてスキンパック包装によりガスケット本体11を被覆してガスケット10を得る工程(被覆工程)の一例を示す。
図4~
図6に示す被覆工程では、台座51から、プランジャーロッド21のねじ突軸21bと同様のねじ突軸52が突出された構成の支持台50を用いる。支持台50の台座51は、ガスケット本体11の後端面11bにおける雌ねじ穴11cの周囲部のみに当接し後端面11bの外周部に当接しない棒状に形成されている。
【0046】
被覆工程では、まず
図4に示すように、ガスケット本体11をその雌ねじ穴11cへのねじ突軸52のねじ込みよって台座51上に固定支持し、この状態を保ったまま、ガスケット本体11の後端面11b外周から先端(前端)側の外面(表面)全体にフィルム12Mを被せる(フィルム被せ工程)。フィルム12Mはガスケット本体11の後端からその周囲全周に余剰分を確保できるサイズのものを用いる。
【0047】
ガスケット本体11表面における後端面11b外周から前側部分を、以下、表面主部、とも言う。
フィルム被せ工程においてフィルム12Mはフィルム12Mの接着層がガスケット本体11の表面主部に臨む向きでガスケット本体11に被せる。
被覆工程の
図4の段階(フィルム被せ工程)では、ガスケット本体11の表面主部全体にフィルム12Mを密着させるのではなく、ガスケット本体11の表面主部とフィルム12Mとの間に空気層が確保された状態とする。
なお、フィルム被せ工程では、後述の真空引き工程におけるフィルム12Mのガスケット本体11表面形状に対する追従性及びガスケット本体11表面に対する密着性を高めるため、予熱ヒーター等を用いてフィルム12Mを加熱(予熱)してフィルム12Mの柔軟性、伸展性等を高めることが好ましい。
【0048】
図4の段階の後、
図5に示すように、ガスケット本体11をその雌ねじ穴11cへのねじ突軸52のねじ込みよって台座51上に固定支持した状態のまま、フィルム12Mとガスケット本体11の表面(具体的には表面主部)との間を真空引きして、ガスケット本体11の表面主部全体にフィルム12Mを密着させる(真空引き工程)。フィルム12Mとガスケット本体11表面との間の真空引き工程を完了した段階において、フィルム12Mにおけるガスケット本体11の表面主部を覆う部分がガスケット10のラミネートフィルム12に相当する。
【0049】
フィルム12Mのラミネートフィルム12部分とガスケット本体11との間は真空引きにより空気層が介在せず、良好な密着状態が確保されている。
また、接着層を有するフィルム12Mのラミネートフィルム12部分は接着層によってガスケット本体11表面(
図5ではガスケット本体11の表面主部)に接着される。
【0050】
次いで、フィルム12Mのガスケット本体11の側面11a後端からその側方周囲あるいはガスケット本体11後側に延在する余剰分をレーザー切断、刃物を用いた切断等により除去する余剰フィルム除去工程を行なってガスケット10を得る。余剰フィルム除去工程は被覆工程の一部である。
余剰フィルム除去工程が完了したとき、ガスケット本体11にはフィルム12Mのうちラミネートフィルム12部分のみが被着された状態となる。ラミネートフィルム12とガスケット本体11との間は
図5を参照して説明した真空引き工程により空気層が介在せず、良好な密着状態が確保されている。
【0051】
余剰フィルム除去工程は、ガスケット本体11をその雌ねじ穴11cへのねじ突軸52のねじ込みよって台座51上に固定支持した状態のまま行なう。この構成であれば、ガスケット本体11の側面11a後端の周囲に、フィルム12Mの余剰分のカット等のための作業スペースを確保できるため、フィルム12Mの余剰分のカット等の作業を効率良く行なうことができる。このため、余剰フィルム除去工程では、ラミネートフィルム12のカットによるガスケット側面被覆部の後端の処理作業において発生する切り屑の確実除去により、シリンジ30内に収容した薬液への切り屑混入を防ぐことが容易である。また、余剰フィルム除去工程においてガスケット側面被覆部後端に滑らかに連続する後端面を形成できる処理を容易に行える。その結果、ガスケット付きプランジャー20をシリンジ30の主筒部31に対して主筒部31軸線方向に移動したときの細片発生防止、シリンジ30内に収容した薬液への細片混入の防止に有利である。
【0052】
なお、被覆工程は、ガスケット本体11をその雌ねじ穴11cへのねじ突軸52のねじ込みよって台座51上に固定支持した状態で行う構成に限定されず、台座51を使用しないで行なう構成も採用可能である。
【0053】
図7に示すガスケット付きプランジャー20Aは、ラミネートフィルム12に、ガスケット本体11の表面主部全体にラミネートされた部分である被覆主部12Aの他に、被覆主部12Aの後端から屈曲部を介して被覆主部12A後端の内周側に延在してガスケット本体11の後端面11bを覆う後側折込部12Bとが確保された構成のガスケット10Aを採用したものである。
【0054】
図7に示すガスケット付きプランジャー20Aは、ガスケット本体11の雌ねじ穴11cへのねじ突軸21bのねじ込みによって、ガスケット10Aをプランジャーロッド21先端に取り付けた状態を示す。但し、
図7に示すガスケット付きプランジャー20Aはプランジャーロッド21の主部前壁部21dとガスケット本体11との間にラミネートフィルム12の後側折込部12Bを挟持固定した構成となっている。
ラミネートフィルム12の後側折込部12Bは、ラミネートフィルム12の接着層によってガスケット本体11の後端面11bに接着された構成、ガスケット本体11の後端面11bに接着されていない構成、のいずれも採用可能である。
【0055】
図7に示すガスケット付きプランジャー20Aでは、ラミネートフィルム12におけるガスケット本体11前端を覆う部分から最も遠い末端がプランジャーロッド21の主部前壁部21dとガスケット本体11との間に挟み込まれることで、ガスケット付きプランジャー20をシリンジ30の主筒部31に対して主筒部31軸線方向に移動したときの細片発生防止、シリンジ30内に収容した薬液への細片混入の防止に有利である。
【0056】
図8に示すように、ガスケット付きプランジャー(
図8中、符号20B)は、ガスケット本体11の雌ねじ穴11cに挿入された穴挿入部12Cが確保されたラミネートフィルム12を有するガスケット10Bを用い、ラミネートフィルム12の穴挿入部12Cを雌ねじ穴11c内周面と雌ねじ穴11cにねじ込んだねじ突軸21bとの間に挟持固定した構成も採用可能である。
図8のガスケット10Bのラミネートフィルム12は、ガスケット本体11の表面主部全体にラミネートされた部分である被覆主部12Aと、ガスケット本体11の後端面11bに沿って延在する後側折込部12Bと、ガスケット本体11の雌ねじ穴11cに挿入された穴挿入部12Cとを有する。後側折込部12Bは、ガスケット本体11の後端面11bにおける雌ねじ穴11c開口部の周囲に延在する。穴挿入部12Cは、後側折込部12Bの雌ねじ穴11c開口部に臨む内周縁部から雌ねじ穴11cの穴奥(ガスケット本体11前側)に向かって延在形成されている。
【0057】
ラミネートフィルム12の穴挿入部12Cはガスケット本体11の雌ねじ穴11c内周面に沿って配置されている。ラミネートフィルム12の穴挿入部12Cにおけるガスケット本体11の雌ねじ穴11c内周面に沿う周方向の1又は複数箇所には切欠部が形成されていても良い。
【0058】
図8のガスケット付きプランジャー20Bでは、ラミネートフィルム12おけるガスケット本体11前端を覆う部分から最も遠い末端全体がガスケット本体11の雌ねじ穴11c内に収容されて、雌ねじ穴11c内周面と雌ねじ穴11cにねじ込まれたねじ突軸21bとの間に挟持固定される。しかも、このガスケット付きプランジャー20Bのガスケット10Bのラミネートフィルム12の後側折込部12Bは、ガスケット本体11の後端面11bにおける雌ねじ穴11c開口部の周囲全周にわたってプランジャーロッド21の主部前壁部21dとガスケット本体11との間に挟持固定される。
その結果、
図8のガスケット付きプランジャー20Bは、ガスケット付きプランジャー20Bをシリンジ30の主筒部31に対して主筒部31軸線方向に移動したときの細片発生防止、シリンジ30内に収容した薬液への細片混入の防止に有利である。
【0059】
なお、ガスケット付きプランジャーは、
図8のガスケット付きプランジャー20Bにおいて、プランジャーロッド21の主部前壁部21dとガスケット本体11とによるガスケット10Bのラミネートフィルム12の後側折込部12Bの挟持固定を省略した構成も採用可能である。
【0060】
図2、
図3~
図8等に示すガスケット本体11は、円柱状のガスケット本体11の中心軸線に垂直に延在形成された後端面11b及び前面11iを有する。
図9に示すように、ガスケット本体11は円錐状の前端部を有するものであっても良い。
図9に示すガスケット本体11の表面(表面主部)は円錐状の前端部に位置する部分である円錐面状の前面11iを含む。
図9に示すガスケット10は、円錐状の前端部を有するガスケット本体11の表面(表面主部)にラミネートフィルム12がラミネート(被着)されたものであり、ガスケット本体11の前端部に沿う円錐状の前端部を有する。
図9に示すガスケット10の円錐状の前端部は、
図1に示すシリンジ30のテーパ前部壁32のテーパ状の内周面と面接触する円錐面状の外面(前面)を形成していることが、ガスケット付きプランジャーのシリンジ30への押し込みよるシリンジ30内の薬液の吐出残液を少なくする点で好ましい。
【0061】
図9に示す円錐状の前端部を有するガスケット本体11を、以下、前端部円錐状ガスケット、とも言う。前端部円錐状ガスケット本体11を用いて構成されたガスケットを、以下、前端部円錐状ガスケット、とも言う。
図9に示す前端部円錐状ガスケット10のラミネートフィルム12は前端部円錐状ガスケット本体11の表面のうち表面主部全体のみにラミネート(被着)されている。但し、前端部円錐状ガスケット本体11は
図9のガスケットに限定されず本発明に係る種々実施形態のガスケットに用いることができる。
【0062】
ガスケット本体11(前端部円錐状ガスケット本体を含む)の表面主部における後端部テーパ状側面11h以外の領域を、以下、主被覆領域、とも言う。本発明に係る実施形態のガスケットのラミネートフィルム12は、少なくとも、ガスケット本体11の表面主部における主被覆領域全体と後端部テーパ状側面11hの一部とにラミネートされる。ラミネートフィルム12が被着される「後端部テーパ状側面11hの一部」の領域は、後端部テーパ状側面11hの周方向全周にわたってガスケット本体11表面主部の主被覆領域からガスケット本体11後側へ後端部テーパ状側面11h後端(表面主部後端)に達しない範囲で連続する領域である。
前端部円錐状ガスケットのラミネートフィルム12における前端部円錐状ガスケット本体11表面の主被覆領域に被着された部分以外の構成は、
図2等を参照して説明したガスケット10のラミネートフィルム12におけるガスケット本体11表面の主被覆領域に被着された部分以外と同様の構成を採用できる。前端部円錐状ガスケットのラミネートフィルム12は、例えば、前端部円錐状ガスケット本体11の表面主部全体に被着された被着主部を有する上に、
図8に例示したように後側折込部12B及び穴挿入部12Cの両方も有する構成、あるいは被着主部と、後側折込部12B及び穴挿入部12Cのうち後側折込部12Bのみ(
図7参照)とを有する構成、も採用可能である。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B…ガスケット、11…ガスケット本体、11a…側面(側周面)、11b…後端面、11c…雌ねじ穴、11d…ガスケット主部、11e…円環状凸部、11f…ガスケット主部側面、11g…後端部側面、11h…後端部テーパ状側面、11i…前面、11j…ねじ溝、12…ラミネートフィルム、12A…被覆主部、12B…後側折込部、12C…穴挿入部、12M…フィルム、13…円周面部(接触円周面部)、20、20A、20B…ガスケット付きプランジャー、21…プランジャーロッド、21a…プランジャー主部、21b…ねじ突軸、21b1…突軸、21b2…ねじ山部、21c…後板部、21d…主部前壁部、21e…幹部、21f…補強リブ、30…シリンジ、31…主筒部、32…テーパ前部壁、33…ルアー部、34…フィンガーグリップ、40…キャップ、50…支持台、51…台座、52…ねじ突軸、100…医療用注射器。