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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042913
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】紙葉取扱装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/04 20060101AFI20240322BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20240322BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20240322BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20240322BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20240322BHJP
【FI】
B65H1/04 324
B65H1/04 326B
B65H1/14 320B
B65H5/02 N
B65H9/00 A
G07D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147836
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】田中 健章
(72)【発明者】
【氏名】川原 豊
(72)【発明者】
【氏名】古町 宗也
【テーマコード(参考)】
3E141
3F049
3F102
3F343
【Fターム(参考)】
3E141AA02
3E141FA03
3E141FC14
3E141FG03
3E141FG15
3F049AA02
3F049BB02
3F049DA02
3F049DB02
3F049LA08
3F049LA09
3F049LB04
3F102AA15
3F102AA16
3F102AB03
3F102BA02
3F102BB03
3F102BB04
3F102EA10
3F102FA03
3F343FA04
3F343FB07
3F343FB09
3F343FC11
3F343FC14
3F343HE04
3F343HE08
3F343KB05
3F343KB06
3F343LA04
3F343LA18
3F343LC11
3F343LC14
3F343LC16
3F343LD10
3F343MB04
3F343MB14
3F343MB15
3F343MC03
3F343MC06
3F343MC07
(57)【要約】
【課題】汎用な紙葉処理装置を用いながらユニバーサルデザインへの対応といった種々の要求を満たした紙葉取扱装置を構築する。
【解決手段】一括受入れ部20にて受入れた紙葉束Bを分離取込み部210に向けて一括搬送する接続搬送部30と、一枚ずつに分離して取込む分離取込み部210を有した紙葉処理装置200と、を備える。接続搬送部30は、バラケを生じさせない挟圧力で挟圧保持しながら一括搬送する挟持搬送区間Z1と、該挟持搬送区間から搬送されてきた紙葉束を受取り、挟持圧を緩和した状態で分離取込み部210に搬送する挟持圧緩和搬送区間Z2と、該挟持圧緩和搬送区間内を搬送される紙葉束の幅方向位置、及び姿勢を規制しつつ補正する補正用ガイド150と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉束を一括して受入れる一括受入れ部と、前記一括受入れ部にて受入れられた該紙葉束を分離取込み部に向けて一括搬送する接続搬送部と、該紙葉束を一枚ずつに分離して取込む前記分離取込み部を備えた紙葉処理装置と、を備えた紙葉取扱装置であって、
前記接続搬送部は、前記紙葉束の紙葉間にずれを生じさせない挟圧力で挟圧保持しながら搬送する挟持搬送区間を構成する挟持搬送ユニットと、該挟持搬送区間により搬送されてきた前記紙葉束を受取り、該紙葉束への挟持圧を緩和した状態で前記分離取込み部に搬送する挟持圧緩和搬送区間を構成する挟持圧緩和搬送ユニットと、該挟持圧緩和搬送区間内を搬送される前記紙葉束の搬送状態を補正する補正用ガイドと、を備えたことを特徴とする紙葉取扱装置。
【請求項2】
前記挟持圧緩和搬送ユニットの一部を構成し、前記紙葉束が前記分離取込み部に達するまでの期間は第1の位置にあって該挟持圧緩和搬送ユニットによる紙葉束の搬送を可能な状態とし、前記紙葉束が前記分離取込み部に達した時点以降に第2の位置に退避して該挟持圧緩和搬送ユニットによる紙葉の搬送を不可能な状態とする挟持圧調整ユニットを備えていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉取扱装置。
【請求項3】
前記第1の位置にある前記挟持圧調整ユニットが前記第2の位置に退避するタイミングは、前記挟持圧緩和搬送区間内に進入した紙葉束の先端が前記分離取込み部に達した時点以降であることを特徴とする請求項2に記載の紙葉取扱装置。
【請求項4】
前記挟持搬送ユニットは、接触しながら同方向へ等速で走行する接触走行領域を形成する第1、及び第2のエンドレスベルトを少なくとも備えており、且つ前記接触走行領域を構成しない前記第2のエンドレスベルトの下流部分は前記分離取込み部まで延在しており、
前記挟持圧緩和搬送ユニットは、前記第2のエンドレスベルトの下流部分と、前記挟持圧調整ユニットが前記第1の位置にある時に該下流部分の上面と近接しながら同方向へ等速走行することにより前記挟持圧緩和搬送区間を形成する第3のエンドレスベルトと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉取扱装置。
【請求項5】
前記第3のエンドレスベルトは、上流側プーリと下流側プーリとの間に張設されており、前記下流側プーリ側を上下方向へ揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の紙葉取扱装置。
【請求項6】
前記第2のエンドレスベルトの下流部分と対面する前記第3のエンドレスベルトは前記第1の位置にある時には伸長する方向への張力により伸長しているが、第2の位置に上昇した時には前記張力が減じられて縮むことにより前記上流側プーリに向けて位置ズレし、該第3のエンドレスベルトに接する紙葉を前記位置ズレ方向にずらすように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の紙葉取扱装置。
【請求項7】
前記第2のエンドレスベルトの下流部分を支持するプーリの軸には同軸状に下側の低摩擦抵抗ローラが軸支されており、
前記下流側プーリの軸には同軸状に上側の低摩擦抵抗ローラが軸支されていて前記下側の低摩擦抵抗ローラとの間にニップ部を形成し、
前記各低摩擦抵抗ローラは、前記紙幣束の搬送経路の幅方向中心部に配置されており、
前記上側の低摩擦抵抗ローラは、前記第3のエンドレスベルトと共に前記第1の位置と前記第2の位置との間を揺動することを特徴とする請求項4、5、又は6に記載の紙葉取扱装置。
【請求項8】
前記挟持圧調整ユニットが前記第1の位置と前記第2の位置との間を往復する動作と連動して前記挟持圧緩和搬送ユニットの紙幣束搬送経路内に出没し、突出時に紙葉束後部と接触可能な後退防止壁を形成するストッパを備えていることを特徴とする請求項2に記載の紙葉取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受入れることによって種々の物品やサービスを提供する機能を備えた自動販売機、遊技場の遊技媒体貸出機、券売機、入出金装置、両替機、精算機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置として、重ねて投入された複数枚の紙幣(紙幣束)を一括取込みしてから一枚ずつに分離、仕分けして内部に収納するタイプが知られている。
【0003】
特許文献1の紙幣処理装置は、装置の上部に設けた紙幣投入口から一括投入された紙幣束を分離取込み部により一枚ずつに分離して取込んでから、装置内部下方の収容スペースに金種毎に仕分けして収容する構成を備えている。
自動販売機等の紙幣取扱装置ではユニバーサルデザインを採用するために、紙幣投入口を低位置に配置する対応が求められることがある。この場合に、上部にある紙幣投入口を低位置に移動させるためには、分離取込み部を紙幣投入口に対応した低位置に移動するための設計変更、改造が必要となるため、多大な手数増とコスト増をもたらす。
【0004】
また、メンテナンスの便宜のために紙幣処理装置を紙幣投入口よりも所定距離だけ後方へ離間した位置に配置する必要が生じる場合がある。しかし、紙幣取扱装置に対する多様な要請を満たすために紙幣処理装置毎に個別にレイアウト変更をするとすれば、製造コストが膨大なものとなる。
紙幣処理装置を改造することなく、ユニバーサルデザイン化、その他の要請に対応可能な紙幣取扱装置を構築するためには、図11に示したように紙幣投入口1110と紙幣処理装置1120との間を接続搬送路1130により接続する構成を採用することが望ましい。同図(a)はユニバーサルデザインに対応する構成例であり、(b)は紙幣処理装置を紙幣投入口よりも後方に離間配置した構成例である。接続搬送路を設けることにより紙幣処理装置の汎用化が可能になる。
【0005】
しかし、紙幣処理装置側の紙幣分離取込み部1122が所謂「一部取込み方式」である場合には、紙幣を強くグリップしながら搬送する接続搬送路1130との整合性の確保が難しくなる。
【0006】
以下、「一部取込み方式」及び「完全取込み方式」について説明する。
紙幣取扱装置には汎用化、小型化、低コスト化が求められているため、一括投入された紙幣束を一枚ずつに分離して取り込む方式として、特許文献2に開示されているように、省スペースで部品点数を削減できるようにした所謂「一部取込み方式」が主流となっている。「一部取込み方式」では、紙幣投入口から一括投入された紙幣束の全体(全長)を一括して装置内に受入れて保留するのではなく、紙幣束全体を紙幣投入口にて一旦保持する。この保持状態では、紙幣投入口にセットされた紙幣束の先端部、或いは前半部分を除いた大半の部分が外部に露出した状態にある。このため、紙幣が一枚ずつ分離、給紙されて減って行く状態を外観から目視することができる。「一部取込み方式」では、紙幣束全体を収容するための保留空間を装置内に設ける必要がないために紙幣処理装置の小型化を図るのに都合がよい。
【0007】
また、特許文献2に開示されている「一部取込み方式」では、一括投入された紙幣束から紙幣を一枚ずつに分離する際に、繰出しローラと、これに対向する紙幣荷重部材との間で生じる摩擦力のみを利用している。言い換えれば、繰出しローラの摩擦力(搬送力)を阻止するような外力は排除せねばならず、紙幣間の摩擦力を小さくする必要がある。
【0008】
一方、特許文献3には、一括投入された紙幣束を装置内に内蔵した保留分離部にそのまま一括放出して保留した後で分離ローラ対により一枚ずつに分離して還流式金庫に搬送する所謂「完全取込み方式」の還流式紙幣処理装置が開示されている。この「完全取込み方式」にあっては、紙幣束全体を装置内部に取り込むための機構と、一括して保留するためのスペースが必要となり、紙幣処理装置の大型化、高コスト化につながる。
このような事情から、上記欠点を有しない「一部取込み方式」が主流となっている。
図11(a)に示したように「一部取込み方式」の紙幣分離取込み部(マシンインターフェース)1122を上部に備えた紙幣処理装置1120を使用しつつ、紙幣束を一括して受入れ可能な紙幣投入口(ユーザーインターフェース)1110を低位置に配置するためには図示の如きL字型の接続搬送路1130が必要になる。
【0009】
また、紙幣処理装置1120を紙幣投入口1110よりも距離Lだけ後方に離間させて配置したい場合には、図11(b)に示した如き水平方向に長尺な接続搬送路1130が必要になる。
接続搬送路1130は、通常複数のエンドレスベルトを組み合わせた構成となっている。具体的には、例えば2つのエンドレスベルトの走行面同士を対向して近接させた接触走行領域を形成し、この接触走行領域内で紙幣束をグリップしながら一括搬送するように構成する。このようなエンドレスベルトから成る接触走行領域を個々の紙幣取扱装置のレイアウトの違いに応じて新たに設計するだけの手間で、汎用の紙幣処理装置を用いた安価な紙幣取扱装置1100の構築が可能になる。
汎用の紙幣処理装置1120を接続搬送路1130を用いて紙幣投入口(ユーザーインターフェース)1110と接続した場合、接続搬送路1130の終端部と紙幣分離取込み部(マンマシンインターフェース)1122との関係は、マシン対マシンの対応関係になる。接続搬送路は紙幣束をベルト間で強いグリップにより挟持して紙幣間にズレが生じないように搬送する必要がある。一方、紙幣分離取込み部1122では分離ローラと紙幣との摩擦を利用して分離するため紙幣間の摩擦を低減させる必要がある。接続搬送路1130の終端部から移送されてきた紙幣がベルト間による強いグリップで挟持されたまま紙幣分離取込み部に供給されると、紙幣間の摩擦が低減されない状態で分離を行う必要が生じる。このため、重送、その他の分離不良が発生し易くなる。
接続搬送路により強くグリップされている紙幣束を紙幣分離取込み部に送り込む際に、人手によらずにグリップを解除して分離作業への障害とならないようにする装置構成に関する提案はこれまでにはなされていない。
【0010】
次に、利用者が分離取込み部に直接紙幣束を投入する場合に、紙幣束が挿入方向に対して斜めになっていたり、紙幣間に位置ズレがあれば、利用者が自分で修正して挿入することができるが、接続搬送路1130の終端部から紙幣分離取込み部1122に紙幣束を移送する場合にはそのような修正ができない。即ち、一括投入された紙幣束を安定して分離するには、ユーザインターフェースで乱雑に挿入された紙幣束をマシンインターフェースで整列させる修正作業が必要となるが、そのような修正作業を可能とする提案はなされていない。
特許文献4「紙葉類繰出し装置およびその制御方法」には、投入された紙幣束を一旦繰出し方向に取り込み、その後に繰出しローラを繰出し方向とは逆方向に所定時間駆動して紙幣投入方向とは反対の方向へ戻すように制御することにより紙幣束のスキュー姿勢を制御する手法が提案されている。しかし、処理時間が長くなる、繰出しローラの制御プログラムと繰出しローラの駆動機構が複雑化する、という欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-367003公報
【特許文献2】特開2002-321839公報
【特許文献3】特開2013-97665公報
【特許文献4】特開2008-265937公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、汎用な紙葉処理装置を用いながらユニバーサルデザインへの対応といった種々の要求を満たした紙葉取扱装置を構築することができる技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る紙葉取扱装置は、紙葉束を一括して受入れる一括受入れ部と、前記一括受入れ部にて受入れられた該紙葉束を分離取込み部に向けて一括搬送する接続搬送部と、該紙葉束を一枚ずつに分離して取込む前記分離取込み部を備えた紙葉処理装置と、を備え、前記接続搬送部は、前記紙葉束の紙葉間にずれを生じさせない挟圧力で挟圧保持しながら搬送する挟持搬送区間を構成する挟持搬送ユニットと、該挟持搬送ユニットにより搬送されてきた前記紙葉束を受取り、該紙葉束への挟持圧を緩和した状態で前記分離取込み部に搬送する挟持圧緩和搬送区間を構成する挟持圧緩和搬送ユニットと、該挟持圧緩和搬送区間内を搬送される前記紙葉束の搬送状態を補正する補正用ガイドと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汎用な紙葉処理装置を用いながらユニバーサルデザインへの対応といった種々の要求を満たした紙葉取扱装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る紙葉取扱装置の一例としての紙幣取扱装置の全体構成を示す縦断面図である。
図2】(a)及び(b)は同紙幣取扱装置における接続搬送部、及び分離取込み部の構成を示す斜視図である。
図3】(a)(b)及び(c)は紙幣が接続搬送部から分離取込み部へ受け渡される際のスキュー補正手順を示す平面図である。
図4】(a)及び(b)は挟持圧調整ユニットの動作を説明する正面図である。
図5】(a)及び(b)は同背面図である。
図6】揺動機構の構成を示す背面側斜視図である。
図7】(a)(b)及び(c)は挟持圧緩和搬送ユニットの略図であり、紙幣束を階段状に変形させる原理の説明図である。
図8】一括投入された紙幣束が接続搬送部を経て紙幣処理装置へ受け渡される手順を説明するフローチャートである。
図9】(a)及び(b)はストッパ、及びストッパ出没機構の構成を含む接続搬送部の構成を示す正面図である。
図10】(a)及び(b)はストッパ、及びストッパ出没機構の構成を含む接続搬送部の構成を示す背面図である。
図11】(a)及び(b)は紙幣処理装置と紙幣投入口を接続する接続搬送路の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0017】
[全体的な構成]
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る紙葉取扱装置の一例としての紙幣取扱装置の全体構成を示す縦断面図であり、図2(a)及び(b)は同紙幣取扱装置における接続搬送部、及び分離取込み部の構成を示す斜視図であり、図3(a)(b)及び(c)は紙幣束が接続搬送部から分離取込み部へ受け渡される際のスキュー補正手順を示す平面図である。また、図4(a)及び(b)は挟持圧調整ユニットの動作を説明する正面図であり、図5(a)及び(b)は同背面図である。図6は揺動機構の構成を示す背面側斜視図である。
【0018】
紙幣取扱装置1は、紙幣束Bを一括して受入れる一括受入れ部20を備えた外側ケーシング10と、一括受入れ部20にて受入れられた紙幣束を紙幣処理装置200の分離取込み部210に向けて一括搬送する接続搬送部30と、接続搬送部から搬送されてきた紙幣束を一旦停止させて保持した状態で(紙幣束の先端部を含む一部のみを保持した状態で)一枚ずつに分離して内部に受入れ給送する所謂「一部取込み方式」の分離取込み部210を備えた紙幣処理装置200と、後述する各エンドレスベルト50、60、80、及び低摩擦ローラ対90を駆動するDCモータである搬送用モータM1と、後述する揺動用カム124を駆動する揺動用モータM2と、これらを制御する制御手段500と、これらの構成要素のうちのいくつかを支持する支持板金550と、を概略備えている。
なお、紙幣処理装置200は分離取込み部210のみを図示し、分離取込み部の下流側に位置する搬送手段、金種別の紙幣収納部等の構成については図示を省略する。分離取込み部210の構成例として上下一対の分離取込みローラ対212を例示したが、これは一例に過ぎず、分離ローラと分離パッドを組み合わせた分離取込み部等々、紙幣束の最上部の紙幣から一枚ずつ分離、給紙することができれば、どのような構成であってもよい。
【0019】
一括受入れ部20は、利用者が投入してきた紙幣束を一括して受入れて接続搬送部30内に搬送する構成を備えている。一括受入れ部20の具体的な構成は示さないが、利用者が手で把持して投入してきた紙幣束を少なくともローラ対22によりニップして一括して導入して接続搬送部30へ供給する構成を備えている。
接続搬送部30は、搬送中に紙幣間にズレやバラケを生じさせない所定以上の強度で挟圧保持しながら一括搬送する挟持搬送区間Z1(Z1a、Z1b)を構成する挟持搬送ユニット40と、挟持搬送ユニット40により搬送されてきた紙幣束を受取り、紙幣束への挟持圧を緩和(解除)した状態で分離取込み部210に搬送する挟持圧緩和搬送区間Z2を構成する挟持圧緩和搬送ユニット70と、該挟持圧緩和搬送ユニット内に配置されて紙幣束の幅(横)方向位置を規制しつつ、紙幣間の不揃い状態、及び姿勢の斜行(スキュー)を補正する補正用ガイド(紙幣束の搬送状態補正手段)150と、を備えている。
挟持搬送ユニット40は、少なくとも接触しながら同方向へ等速で走行する接触走行領域CZ1、CZ2を形成しつつ走行する第1、及び第2のエンドレスベルト50、60を少なくとも備えている。一括受入れ部20と第1、及び第2のエンドレスベルトとの間には複数のベルト対により紙幣束を強く挟持しながら搬送して挟持搬送区間Z1に受渡しする上流側挟持搬送機構GZが設けられているが、具体的な構成は図示を省略する。
【0020】
各エンドレスベルト50、60、80は、ゴム等の伸縮可能な弾性材料から構成されている。なお、以下においては、エンドレスベルトを単にベルトと称する。
第1のベルト50は、プーリ52a~52e等によりL字状の軌道で張設されている。例えば、プーリ52aを搬送用モータM1により駆動される駆動プーリとし、他のプーリ52b~52eは従動プーリとする。
第2のベルト60は、プーリ62a、52d、62b、62c、62d等により略水平の軌道で張設されている。例えば、プーリ52dを搬送用モータM1により駆動される駆動プーリとし、他のプーリ62a、62b、62c、62dは従動プーリとする。
いずれのベルト50、60も搬送用モータM1の駆動により矢印で示す搬送方向へ回転移動する。
両ベルト50、60の接触走行領域CZ1、CZ2では、紙幣間の位置ズレ、バラケが生じない程度にベルト間の圧接力が充分に強く設定される。
接触走行領域CZ1、CZ2を構成しない第2のベルト60の下流部分(張出し部分、下流走行領域)63は分離取込み部210まで延在している。つまり、第2のベルト60は搬送方向全長に渡って第1のベルト50との間で接触走行領域CZ1、CZ2を形成している訳ではなく、下流部分63は直上に位置する第3のベルト80の下側走行面との間で挟持圧緩和搬送区間Z2を形成する。
【0021】
挟持圧緩和搬送ユニット70は、第2のベルトの下流部分63と、第1の位置(第1の姿勢)にある時に該下流部分63の上面(外面)と近接しながら同方向へ等速で走行することにより挟持圧緩和搬送区間Z2を形成する第3のベルト80と、該挟持圧緩和搬送区間の下流側に回転自在に配置されて紙幣束の幅方向中央部を挟持する低摩擦ローラ対90と、紙幣束の先端部が分離取込み部に達するまでの期間は第1の位置(初期位置)にあって挟持圧緩和搬送ユニット70による紙幣束の搬送を可能な状態とし、紙幣束の先端部が分離取込み部210に達した時点以降に第2の位置(第2の姿勢)に退避して該挟持圧緩和搬送ユニット70による紙幣の搬送を不可能な状態(挟持解除状態)とする挟持圧調整ユニット100と、挟持圧調整ユニット100を揺動(昇降)させる揺動機構120と、を備えている。
挟持圧調整ユニット100は、弾性材料から成る第3のベルト80と、上側の低摩擦ローラ90bと、第3のベルト80及び低摩擦ローラ90bを保持し、揺動軸115を中心として上下方向へ揺動するホルダ本体102と、揺動軸115を中心としてホルダ本体を下方へ弾性付勢する弾性部材116等を含んで概略構成されている。
【0022】
第3のベルト80は、ホルダ本体102により軸支された搬送方向上流側の上流側プーリ(従動側)82aと、ホルダ本体により揺動自在に支持されたホルダ片110により回転自在に軸支された下流側プーリ(駆動側)82bとの間にエンドレスに張設されている。ホルダ本体102は、ホルダ本体の上流側上部に設けた揺動軸115を中心として上下方向へ揺動する。
第3のベルト80が図1(a)に示した第1の位置にある時に第2のベルトの下流部分63の上面との間で形成する挟持圧緩和搬送区間Z2では、挟持搬送区間Z1に比して紙幣束Bを挟圧保持する力が低下するように構成される。例えば、挟持圧緩和搬送区間Z2では、図1(a)の状態において、下流部分63と第3のベルト80との間の隙間G(図7(a)参照)が下流側へ向かう程テーパー状に拡開するように構成することにより各ベルトによる紙幣束への挟圧力(ベルトと紙幣との摩擦抵抗)を低下させて紙幣間の摩擦抵抗を低下させる。
【0023】
このことを更に挟持圧緩和搬送ユニット70の略図である図7(a)(b)(c)により具体的に説明する。なお、図7では説明をシンプル化するために第2のベルト60の構成を図1に示したものと異ならせているが、挟持圧緩和搬送ユニット70の本質的な機能に違いはない。図7における上流側プーリ62dと、低摩擦ローラ対90(或いは、下流側のプーリ62cとプーリ82b)との間の区間L1は、第3のベルト80が第1の位置にある時に第2のベルト60の下流部分63との間に挟持圧緩和搬送区間Z2(隙間G)が形成される区間である。更に具体的には、区間L1は、プーリ62dとプーリ対62c、82b(低摩擦ローラ対90)との間に形成される区間である。
【0024】
挟持圧緩和搬送区間Z2内では紙幣束に対する挟圧力がその上流側の挟持搬送区間Z1よりも大幅に低下している。また、挟持圧緩和搬送区間Z2内では、両ベルト60、80が駆動されることにより下流部分63と第3のベルト80の対応部分との間で紙幣束が搬送されるが、低摩擦ローラ対90により紙幣束がニップされた後は低摩擦ローラ対との協働により搬送される。
なお、低摩擦ローラ対90にニップされたことがセンサにより検知されたタイミングで図示しないクラッチ等により両ベルト60、80への駆動力伝達を停止させてもよい。その後は、低摩擦ローラのみにより分離取込み部210に送り込むことになる。
【0025】
挟持圧緩和搬送区間Z2内で紙幣束を搬送する過程では、ベルト63、80間の挟圧力が低下しているため紙幣間での位置ズレが可能になると共に、各ベルトに対する紙幣束の幅方向移動が可能となる。このように挟持圧緩和搬送区間Z2では、紙幣間、及びベルトに対する紙幣の移動が可能になるため、同区間Z2内に少なくとも一部が配置される補正用ガイド150により、紙幣の搬送位置、搬送姿勢等の搬送状態を自動的に補正することができる。
【0026】
本実施形態に係る接続搬送部30は、図11(a)に示したユニバーサルデザインに対応するものである。図11(b)に示したように紙幣処理装置を一括受入れ部から後方に離間配置する場合には、挟持緩和搬送ユニット70(挟持圧緩和搬送区間Z2)の構成は多くの変更を要せず、上流側挟持搬送機構GZ、及び挟持搬送区間Z1を構成する各ベルトのレイアウトを変更するだけで対応することができる。
【0027】
<挟持圧緩和搬送ユニット70(挟持圧緩和搬送区間Z2)>
区間L1の搬送方向長は、長手方向長が最短の紙幣の長さと同等か、それよりも僅かに短くするのが好ましい。このように構成することにより、最短の紙幣束が挟持圧緩和搬送区間Z2内に入った時であってもプーリ62dとプーリ対62c、82b(低摩擦ローラ対90)との間で確実な受渡しを実現できる。言い換えれば、区間L1内においては紙幣の長短に関係なく、紙幣束を完全なベルト挟持にせずに、言い換えればベルト挟持のみに依存することなく、プーリ間での安定した受渡しを実現できる。
なお、挟持圧緩和搬送区間Z2内ではプーリ62dとプーリ対62c、82bに依存しないベルト挟持のみによる受渡し、及び搬送も可能であるため、区間L1の長さと紙幣長との関係についての上記の定義は必須ではない。
なお、本実施形態では第3のベルト80が第1の位置にある時に、第3のベルトが第2のベルトの下流部分63と非接触となるように構成しているが、これは一例に過ぎず、両ベルトの一部、又は全体を軽い接触状態とすることにより紙幣束が挟持圧緩和搬送区間Z2内で移動したり姿勢を変更できるように構成してもよい。
【0028】
挟持圧緩和搬送区間Z2内では、第3のベルトと第2のベルトの下流部分63とを非接触にしたり、或いは弱い接触状態にしたとしても、弾性部材111により付勢された低摩擦ローラ対90は紙幣束を充分なニップ力で挟圧しているので紙幣束を確実に搬送し続けることができる。一方、挟持圧緩和搬送区間Z2内では、第3のベルト80が第1の位置にある時のベルト間の搬送力(挟圧力)が低下しているため、低摩擦ローラ対90のニップ部を中心として搬送中の紙幣束を回転させつつ横方向へ移動させることが容易となる。つまり、紙幣束の横方向への姿勢を変更可能に構成しつつ、確実に下流側へ搬送することが可能な構成となっている。このため、図3に示した補正用ガイド150を低摩擦ローラ対90とオーバーラップするように配置することにより、挟持圧緩和搬送区間Z2を搬送されている紙幣束が分離取込み部210に搬入される直前に、その姿勢、幅方向位置を修正することが可能になる。
【0029】
<低摩擦ローラ対、ホルダ本体>
第2のベルトの下流部分を支持するプーリ62cの軸92には同軸状に下側の低摩擦抵抗ローラ90aが軸支されている。第3のベルト80を支持する下流側プーリ82bの軸94には同軸状に上側の低摩擦抵抗ローラ90bが軸支されていて下側の低摩擦抵抗ローラ90aとの間にニップ部を形成する。更に、各低摩擦抵抗ローラ90a、90bは、紙幣束の搬送経路Z2の幅方向中央部に配置されている。そして、上側の低摩擦抵抗ローラ90bは、第3のベルトと共に第1の位置と第2の位置との間を揺動するように構成されている。
低摩擦ローラ対90を構成する上側の低摩擦ローラ90bは下流側プーリ82bの回転軸94により回転自在に軸支されているため、下流側プーリ82bと共に上下方向へ揺動する。
【0030】
本例では、上流側プーリ82aはホルダ本体102に固定された軸103により回転自在に軸支されているが、下流側プーリ82b、及び上側の低摩擦ローラ90bの共通する軸94はホルダ本体により支持された別部材としてのホルダ片105の下流側端部により支持されている。即ち、図2等に示すようにホルダ本体102の天板104の下流寄り位置には矩形の開口部104aが形成され、開口部104a内にはホルダ片(ホルダ)105が配置されている。ホルダ片105は、ホルダ本体102に設けた軸部106により上流側端部を軸支されて上下方向に揺動する。ホルダ片105の下流側端部には軸94が軸支されており、軸94には下流側プーリ82b、及び上側の低摩擦ローラ90bが回転自在に軸支されている。また、ホルダ片105は弾性部材111により下向きに付勢されている。このため、ホルダ本体が図1(a)、図2(a)に示した第1の位置にある時には上側の低摩擦ローラ90bは下側の低摩擦ローラ90aに弾性的に圧接された状態となり、両ローラのニップ部に給紙圧が付与される。
【0031】
下側の低摩擦ローラ90aの軸92は、第2のベルト60のプーリ62cの軸と共通であり、その軸端部に一体化されたギヤ93は上側の軸94の軸端部に一体化されたギヤ95と噛合可能な位置関係にある(図6)。両ギヤ93、95は、ホルダ本体102が第1の位置にある時に噛合し、第2の位置にある時に離間する。下側のギヤ93は搬送用モータM1により駆動され、上側のギヤ95は従動側である。
軸92に対して低摩擦ローラ90a、及びプーリ62cが一体化され、軸94に対して低摩擦ローラ90b及びプーリ82bが一体化されている。
【0032】
<揺動機構>
揺動機構120は、挟持圧調整ユニット100を揺動させる手段である。具体的には、揺動機構120は、第3のベルト80の上流側プーリ82a(或いは、その近傍部位に設けた揺動軸115)を回動中心として、下流側プーリ82b、及び上側の低摩擦ローラ90bをホルダ本体102と共に上下方向へ揺動させる手段である。尚、図1図2等に示した構成例では第3のベルトはホルダ本体に設けた揺動軸115を中心として揺動するが、図示のように上流側プーリ82aを回動中心としてもよい。
揺動機構120は、図4図5、及び図6に示すようにカム軸122を中心として回動する揺動用カム124と、揺動用カムを正逆回動させる揺動用モータM2と、ホルダ本体102の背面に回転自在に軸支されて揺動用カムの外周面に沿って転動するカムフォロア126と、を概略備えている。
【0033】
ホルダ本体102は弾性部材116により第1の位置(下降位置)に向けて付勢されているので、常時においては第3のベルト80、及び低摩擦ローラ対90は第1の位置にある。
挟持圧調整ユニット100が図4(a)、図5(a)に示した第1の位置(初期位置)にある時には揺動用カム124は図示したようにカムフォロア126(ホルダ本体102)を押し上げていない初期位置(下降位置)に保持している。揺動用モータM2を駆動することにより揺動用カム124が図4(a)中の反時計回り方向(図5(a)では時計回り方向)へ所定角度回転すると、挟持圧調整ユニット100が図4(b)、図5(b)に示した第2の位置に移動する。この移動の過程、及び移動した後では、揺動用カム124は図示したようにカムフォロア126を押し上げてホルダ本体を図示の退避位置(上昇位置)に保持している。
【0034】
第2の位置にある挟持圧調整ユニット100を第1の位置に戻す場合には、揺動用カム124を上記とは逆の方向に所定角度戻せばよい。
なお、揺動用カム124にはストッパ用カム172が重ねて一体化されているが、この点については後述する。
【0035】
<補正用ガイド>
次に、補正用ガイド150は、図3に示すように挟持圧緩和搬送区間Z2を搬送される紙幣束の底面をガイドする底板151と、底板の幅方向両側部に立設された側板152と、を備える。底板151は上流側端から下流に向けて幅が漸減するテーパー状の部分151aと、テーパー状の部分の下流側に連設されて同一幅で搬送方向と並行に延びる部分151bと、を備えている。両側板152は、底板の両側縁に沿って立設されている。補正用ガイド150は紙幣束の補正幅を決定する。
補正用ガイド150は、挟持圧緩和搬送ユニット70(挟持圧緩和搬送区間Z2、低摩擦ローラ対90)との協働により挟持圧緩和搬送区間Z2内を搬送されてくる紙幣束Bの幅方向位置、姿勢を正規の搬送位置、搬送姿勢に補正する。
【0036】
<スキュー補正手順>
次に、図3図7により紙幣束のスキューを補正する手順について説明する。
なお、図3(a)、(b)、(c)の時点では挟持圧調整ユニット100は図7(a)に示した第1の位置にある。第3(c)の時点以降に挟持圧調整ユニット100は図7(b)、(c)のように第2の位置へ移行する。
【0037】
まず、図3(a)は挟持搬送区間Z1から搬送されてきた紙幣束Bが挟持圧緩和搬送区間Z2内に入って搬送されている状態を示している。この時、紙幣束Bは搬送方向に対して斜行し、且つ奥寄りに偏った状態にある。図3(b)では斜行している紙幣束Bは第3のベルト80、第2のベルトの下流部分63によりそのままの姿勢で下流へ搬送されて低摩擦ローラ対90により先端部がニップされた状態となっているため、低摩擦ローラ対からの搬送力により搬送される。この時点で紙幣束の先端部は補正用ガイド150のテーパー状の部分151aに達しており、紙幣束の先端下側の角部が手前側の側壁152に当接しながら前進をする。この時の紙幣束を搬送する力は主として低摩擦ローラ対が発揮する一方で、両ベルト80、63からの抵抗が少ないため、紙幣束は図3(c)に示すように両側壁152によるスキュー補正機能により図示のように搬送経路の中心部に沿い、且つ搬送方向と並行な姿勢にて分離取込み部210内に入り込む。そして、分離取込みローラ対212により一枚ずつに分離されて紙幣処理装置200内に取り込まれる。図3(c)の時点では幅方向中央部に位置する低摩擦ローラ対によりニップされた部分を中心とした紙幣束の回転により、搬送位置、搬送姿勢の修正が完了しているが、紙幣間の位置ズレも補正用ガイド150の補正機能により修正されている。即ち、挟持圧緩和搬送区間Z2内にある紙幣束は幅方向中央に配置された低摩擦ローラ対90によりニップされているため、このニップ部を中心として回転、その他の動きが容易になっている。紙幣束はニップ部を中心として回転しながら自由に幅方向へ移動できる。一方、紙幣束が自由に動けるこの区間内に補正用ガイド150を配置しているので、搬送位置、姿勢、紙幣間のズレの補正が容易となる。
【0038】
図3(c)の時点では紙幣束を構成する各紙幣は幅方向に整列した状態にある。
ただ、後述するように図7(b)の段階で、第3のベルトの弛緩により紙幣束の搬送方向への位置が階段状にずらされることになる。
【0039】
図3(a)、図7(a)のように挟持圧調整ユニット100が第1の位置にある状態においてベルト63、80により紙幣束を補正用ガイド150に向けて搬送することにより、補正用ガイド150との協働により搬送位置、搬送姿勢、紙幣間の位置ズレの補正が行われる。通紙センサS2からの検知信号により紙幣束が図7(a)に示した位置(低摩擦ローラ対によるニップ状態)に達したことが判定された時点で制御手段500は搬送用モータM1による挟持圧緩和搬送ユニット70の駆動を一旦停止させる。
なお、低摩擦ローラ60も搬送用モータM1によって駆動しているため、通紙センサS2からの検知信号により図7(a)、或いは図7(b)の位置まで紙幣束を搬送して停止すればよい。その後、揺動用モータM2により揺動機構120を駆動して挟持圧調整ユニット100を図7(b)(c)に示したように第2の位置に移動させる。
【0040】
挟持圧調整ユニット100を開放する理由は、後述するように紙幣束を分離給紙に適した階段形状に変形させること以外に、低摩擦ローラ対90が紙幣束を押え続けると分離取込み部210による分離作業の邪魔になるからである。樹脂製の低摩擦ローラの摩擦抵抗が低いとは言っても、低摩擦ローラ対のニップ部で紙幣束を挟持すると紙幣間摩擦が分離取込みに際して無視できない程度に大きくなり、この紙幣間摩擦が分離取込み部における摩擦分離の障害となるからである。
なお、挟持圧調整ユニット100を開放する時には既に紙幣束の先端が分離取込み部210に到達して自由な動きを封じられていることが必要である。挟持圧調整ユニットが開放することにより紙幣束が完全にフリーな状態になってしまうと紙幣束が無用な動きをする虞があるため、分離取込みローラ対212により押える必要がある。
【0041】
<接続搬送部30から紙幣処理装置200への搬送処理手順>
図8は一括投入された紙幣束が接続搬送部を経て紙幣処理装置へ受け渡される手順を説明するフローチャートである。
スタートの時点では、揺動用カム124が図9(a)、図10(a)に示した初期角度位置(第1の角度位置)にあるため、挟持圧調整ユニット100は第1の位置にある。
【0042】
一括受入れ部20に紙幣束が投入されたことをセンサS1が検知した場合に(ステップS1、YES)、制御手段500は搬送用モータM1を駆動開始する(ステップS3)。次いで、センサS2が紙幣束の先端を検知すると(ステップS5、YES)、搬送用モータM1を停止する(ステップS7)。つまり、一括投入された紙幣束を挟持搬送区間Z1、挟持圧緩和搬送区間Z2により挟持して分離取込み部210まで搬送し、紙幣束の先端が分離取込み部に到達したことをセンサS2が検出したらベルト63、80による搬送を停止する。(ステップS7)。この時点では、補正用ガイド150を利用した紙幣束の搬送状態の補正は完了している。
なお、センサS2が紙幣束先端を検知した後もベルト63、80、及び低摩擦ローラ対を駆動し続け、センサS4が紙幣を検知した時点でモータM1を停止させるようにしてもよい。
【0043】
次いで、揺動用モータM2を正転駆動して揺動用カム124を所定角度回動させ、揺動用カムが所定の停止角度位置(第2の角度位置)に達したことをカム位置検知センサS3が検知した時に揺動用モータを停止させる(ステップS9、ステップS11、S13)。これにより第1の位置にあった挟持圧調整ユニット100が第2の位置に開放移動して停止する(図9(b)、図10(b))。挟持圧調整ユニット100を開放して紙幣束への挟圧を完全に解除すると共に、低摩擦ローラ対によるニップを解除する。この時点では、紙幣束に対しては分離取込みローラ対212からのみ摩擦力が発生する状態となる。
【0044】
また、この時点で、紙幣束は第3のベルト80の回動動作に連動して分離取込みローラ対212による分離、取込みに適した階段状に変形される。
次いで、分離取込み部210のセンサS4が紙幣束の先端を検知した時点で分離取込みローラ対212を駆動するための図示しないモータを駆動して一枚ずつの取込みを開始する(ステップS17)。
次に、センサS2、及びセンサS4が、紙幣束を構成する全ての紙幣の分離取込みが完了したことを検知した時点で、制御手段500は揺動用モータM2を回転させて揺動用カム124を所定角度回転させて図9(a)、図10(a)に示した初期角度位置に復帰させてから停止する(ステップS19 YES、ステップS21)。揺動用カム124が初期角度位置に復帰していることをセンサS3が検知することにより、第2の位置にあった挟持圧調整ユニット100が第2の位置に復帰したことが確実になる。これにより挟持圧調整ユニット100を第1の位置に復帰させて後続の紙幣束の受入れ、搬送が可能な状態に戻る。
【0045】
以上の処理手順により、挟持搬送区間Z1内を搬送している期間は確実な挟圧力により紙幣束間にズレが発生することがなくなる。続く、挟持圧緩和搬送区間Z2内を搬送中には紙幣束への挟持圧(挟持力)が緩和された状態で姿勢等の補正が行われ、紙幣束先端が分離取込み部210に到達した後には第3ベルトによる挟圧、及び低摩擦ローラ対によるニップが順次解除される。従って、接続搬送部30から紙幣処理装置200への紙幣の受け渡しにおいて、ベルト間の挟圧力が解除された後に受渡しが行われることとなり、挟圧により高められた紙幣同士の摩擦力が紙幣の分離、取込みを阻害することがなくなり、安定して分離することが可能になる。しかも、受渡し中に紙幣束の搬送位置、姿勢、位置ズレを防止する補正動作が行われるため、分離取込みがスムーズ化する。
【0046】
以上を纏めると、接続搬送部30では当初はベルト対50、60によって紙幣束を強く挟圧しつつ搬送するが、低摩擦ローラの上流側の区間L1では、第2のベルトの下流部分63と第3のベルト80との間に隙間を設ける等の方法により挟持圧力を緩和(低下)させる。紙幣処理装置200への受渡し部(マシンインターフェース部)では、紙幣との摩擦力を発生しない低摩擦ローラ対(樹脂ローラ対)により紙幣束の幅方向の中央のみをニップして送り込む。
更に、区間L1内には、紙幣束の搬送位置を搬送路の幅方向中心部に寄せつつ、搬送姿勢を規制する補正用ガイド150を設けた。このように構成したことにより、一括受入れ部20から乱雑に投入された紙幣束が挟持圧緩和搬送区間Z2内に達した時に、該紙幣束は搬送幅を徐々に狭めるように設定された補正用ガイドに沿うように搬送される。この時、紙幣束はほぼ摩擦力のない低摩擦ローラ対のみによりニップされており、且つ、ベルト80、63間には隙間Gがあるため、紙幣束を容易に補正用ガイド150に沿うように整列させることができる。
【0047】
また、紙幣束が補正用ガイド150に沿いながら進行する過程で紙幣束側部が側壁152に乗り上げて捲れ上がる程に大きく斜行していたとしても挟持圧調整ユニット100を開放すると、捲れた紙幣のコシが復元しようとする力が作用して紙幣を確実に整列できる。
【0048】
以上の構成、及び処理手順によれば、ユニバーサルデザインなどの多様な要求を満たす為に、一括受入れ部20(ユーザインターフェース)と汎用な紙幣処理装置200との間に接続搬送部30を設ける場合に、一部取込み方式の分離取込み部210(マシンインターフェース)に紙幣束をスムーズに受け渡して分離動作を円滑に行うことができる。
【0049】
<階段状に変形させるための構成>
次に、紙幣束を、分離取込み部210により一枚ずつに分離するのに適した所謂階段形状に変形させる手順について図7により説明する。階段形状とは、図7(a)に示すように先端面が略垂直面となるように整列状態にあった紙幣束を、先端面が側面視でテーパー状となるように崩した形状を指称する。本例では、図7(b)(c)に示すように最上面の紙幣を下流側に最も突出させた状態とし、下側の紙幣が順次上流側に引っ込んだ状態となる階段形状を意味する。分離取込み部210の分離取込みローラ対212は紙幣束Bの最上部の紙幣から一枚ずつ取り出して分離して取り込む構成であるため、紙幣束を分離取込みローラ対に押し込んだ時点で、最上部の一枚の紙幣だけを最も突出させた状態とする。最上部の紙幣が給紙された後は、二枚目の紙幣が最も突出した位置にあり、二枚目の紙幣が給紙された後は三枚目の姿勢が最も突出した姿勢となることにより分離性能を向上させることができる。
図7(c)の段階では紙幣束の階段形状への変形が完了しているので、分離取込みローラ対212を駆動することにより最上部の紙幣から分離取込みが開始される。
【0050】
次に、紙幣束を階段形状に変形させる為の構成、及び変形させる手順について図7により説明する。
本実施形態は、第2のベルトの下流部分63と対面する第3のベルトの対応部分80Aが第1の位置にある時には張力Tが加わるために伸長しているが、第2の位置に上昇した時には張力が減じられて縮むことにより上流側プーリに向けて位置ズレするように構成した点が特徴的である。更に、第3のベルトの対応部分80Aに接する紙葉を前記位置ズレ方向Sにずらすように構成されている。
即ち、まず図7(a)の時点ではセンサS2により紙幣束の先端が分離取込みローラ対212に達したことが検知されているため、搬送用モータM1を停止させる。この時、挟持圧緩和搬送区間Z2内に位置する第3のベルト80のうち、プーリ82bとプーリ62dとの間に位置する対応部分80Aには、矢印Tで示したような上流方向へ向かうテンションが加わっている。次に、図7(b)に示すように第3のベルト80が第2のベルト60の下流部分63から離間開始すると、ゴム等の弾性材料から成る対応部分80Aに加わっていた上流方向へ向かうテンションTが解消、或いは減少する。つまり、対応部分80Aはフリーになる。テンションTが解消、減少するとそれまで延びていた対応部分80Aは縮むため、(b)中に矢印で示す方向Sへシフトする(原形に復帰する)力が発生する。(b)は第3のベルトの第2の位置への移動(開放動作)の中間段階であり、対応部分80Aが紙幣束の後端縁に接触しているため、対応部分80AがS方向へ縮む力が紙幣束の後端部に伝わり紙幣束を階段状に変形させる。
なお、第2のベルト60、及び第3のベルト80が回転を停止した時には、プーリ82a、82bは回転を停止(ロック)されている。プーリ82bの回転がロックされることで、図7(a)の下流部分63の区間に集中して第3のベルト80(対応部分80A)が弛緩するので階段状の形成が可能となる。
つまり、図7(a)の時点で搬送用モータM1を一旦停止させるとしたのは、搬送用モータM1を停止させることによりプーリ82a、82bが回転をロックされた状態となり、第3のベルトを開放させることにより紙幣束を階段状に形成し易いからである。しかし、モータM1を停止させずに第3のベルト開放させるようにしてもよい。つまり、紙幣束を階段状に変形させることは必須ではなく、分離取込み部の構成によっては挟持圧緩和搬送区間Z2により階段状に変形させなくても分離性能を維持できる。
【0051】
<ストッパ、ストッパ出没機構>
次に、ストッパ160、及びストッパ出没機構170の構成説明である図9(a)(b)、図10(a)(b)、及び図6を用いてこれらについて説明する。
図9中に示したストッパ160は、図9(a)に示した退避位置と、(b)に示した突出位置との間を突没可能に回動し、紙幣束が挟持圧緩和搬送区間Z2内に搬送されてくる時には没入して退避することにより紙幣束を受入れ可能な状態とする。また、第3のベルト80を開放して分離取込み部210により紙幣を分離する際には紙幣束の後端側に突出して紙幣束の後方への位置ズレを阻止する。即ち、多数枚から成る紙幣束、例えば20枚の紙幣束を分離する際に、紙幣束は分離取込みローラの回転によってバウンドし、徐々に後方に位置ズレし易くなるが、この後方への位置ズレが発生すると分離のタイミングが安定しなくなる。また、紙幣束が後方へ位置ズレすると、紙幣束の積層状態に乱れが生じて分離動作に悪影響を与える。
そこで、挟持圧調整ユニット100の開放動作に連動して搬送路へストッパ160を突出させて紙幣束の後退を防止するようにした。
【0052】
ストッパ出没機構170は、揺動機構120を構成するカム軸122を中心として回動し、揺動用カム124の一面と自らの一面を重ねた状態で一体化された出没用カム172と、出没用カムを正逆回転させる揺動用モータM2と、支持板金550の背面により横方向へ進退自在に支持された進退部材175の先端に軸支されたカムフォロア180と、進退部材175を突出方向D1へ付勢する弾性部材177と、作動片179を進退部材175の動きに追従させるために作動片179をピン175bへ向けて付勢する弾性部材178と、を概略備えている。カムフォロア180は出没用カム172の外周面に沿って転動し、その過程で出没用カムにより突出方向D1、及び退避方向D2へ移動させられる。結果として、カムフォロア180を先端に備えた進退部材175は突出方向D1、及び退避方向D2へ直線的に進退する。
進退部材175は横方向に長い板材であり、2つの直線的に延びる長穴175a内に支持板金550から突設されたガイドピン551が嵌合することにより横方向へ安定して進退する。
【0053】
コイルばねから成る弾性部材178は、支持板金550から背面側へ突出した軸部106(ホルダ片110の回動軸)に固定された作動片179の上部適所に一端を固定されている。このため、弾性部材は作動片179を軸部106を中心として図6、及び図10の時計回り方向へ常時付勢する。作動片179は、その下部において進退部材175の背面に突設されたピン175bと係合可能になっている。弾性部材177が進退部材を突出方向D1へ付勢し、カムフォロア180を出没用カム172の外周面に常時圧接させている。出没用カム172はカムフォロア180をD1、D2両方向へ進退させる外周面形状を有しているため、出没用カムの回転に伴って進退部材は両方向へ進退する。
【0054】
ストッパ160は軸部106にその基端部を固定されており、軸部106の回動により図9(a)、図10(a)に示した退避位置と、図9(b)、図10(b)に示した突出位置との間を出没する。
図6(a)、図9(a)、図10(a)では、出没用カム172が進退部材175を最突出位置に停止させており、この状態ではストッパ160は挟持圧緩和搬送区間S2から退避している。図6(b)、図9(b)、図10(b)では、出没用カム172が進退部材175を最退避位置に停止させており、この状態ではストッパ160は挟持圧緩和搬送区間S2内に突出している。
【0055】
〔本発明の構成、作用、効果のまとめ〕
第1の本発明に係る紙葉取扱装置1は、紙葉束Bを一括して受入れる一括受入れ部20と、一括受入れ部にて受入れられた該紙葉束を分離取込み部210に向けて一括搬送する接続搬送部30と、該紙葉束の先端部を含む一部のみを受入れた状態で一枚ずつに分離して取込む分離取込み部210を有した紙葉処理装置200と、を備えている。
接続搬送部30は、紙葉束の搬送中に紙葉間にずれ、バラケを生じさせない挟圧力で挟圧保持しながら一括搬送する挟持搬送区間Z1を構成する挟持搬送ユニット40と、該挟持搬送ユニットにより搬送されてきた紙葉束を受取り、紙葉束への挟持圧を緩和(解除)した状態で分離取込み部210に搬送する挟持圧緩和搬送区間Z2を構成する挟持圧緩和搬送ユニット70と、該挟持圧緩和搬送区間内を搬送される紙葉束の幅方向位置、及び姿勢を規制しつつ補正する(紙葉束のスキュー、及び紙葉間の不揃い状態を補正する)補正用ガイド150と、を備えている。
【0056】
一括受入れ部20と、汎用の分離取込み部210を備えた紙葉処理装置200との間を従来の接続搬送部により接続する場合、利用者が一括受入れ部に乱雑に一括投入した紙葉束が接続搬送部を経由してそのまま分離取込み部に到達するため、乱雑な積層状態のままでの分離、取込みとなり、連鎖や重送などの分離不良が発生する。強い力で紙葉束をグリップしながら搬送する必要がある従来の接続搬送部と、紙葉束間の摩擦抵抗を小さくする必要がある分離取込み部との受渡し部では人手が関与する余地がないため、分離不良を回避する受渡し部の設計が難しかった。言い換えれば、分離取込み部は分離用の部材と紙葉との摩擦を利用して分離、取込み、搬送を行うが、接続搬送部内における強い挟圧力により生じる紙葉間摩擦の強さが維持されている場合には分離が困難になる。
逆に、一括投入された紙葉束の分離性を高めるために接続搬送部において強く挟圧せずに搬送する場合には、紙幣束を適切な姿勢を維持しながら分離取込み部まで搬送できなくなる。
【0057】
本発明では挟持搬送区間Z1を搬送中には紙葉束をばらけることがないように強く挟圧しながら搬送する一方で、挟持圧緩和搬送区間Z2に移行した後は分離取込み部における分離に適するように紙葉間の摩擦力を低下させた状態で搬送するので、分離不良の発生を防止できる。更に、乱雑な積層状態、正規の搬送姿勢から離脱した状態にある紙葉束を分離取込み部に送り込む過程で自動的に補正することができる。
【0058】
第2の本発明に係る紙葉取扱装置は、挟持圧緩和搬送ユニット70の一部を構成し、紙葉束の先端部が分離取込み部に達するまでの期間は第1の位置(初期位置)にあって該挟持圧緩和搬送ユニットによる紙葉束の搬送を可能な状態とし、紙葉束の先端部が分離取込み部に達した時点以降に第2の位置に退避して該挟持圧緩和搬送ユニットによる紙葉の搬送を不可能な状態(挟持解除状態)とする挟持圧調整ユニット100を備えている。
紙葉束先端が分離取込み部210に到達した後に挟持圧調整ユニット100を第2の位置に退避させて紙葉束に対する挟圧を解除するため、挟圧により高められた紙葉同士の摩擦力が紙葉の分離、取込みを阻害することがなくなる。
実施形態では、挟持圧調整ユニット100の上流側を軸として下流側を上下方向へ揺動させるように構成したが、これは一例に過ぎず、どのような構成にしろ、挟持圧調整ユニット100を上下動させることができればよい。
【0059】
第3の本発明に係る紙葉取扱装置では、第1の位置にある挟持圧調整ユニットが第2の位置に退避するタイミングは、挟持圧緩和搬送区間内に進入した紙葉束の先端が分離取込み部210に達した時点以降であることを特徴とする。
「紙葉束の先端が分離取込み部に達した時点」とは、分離取込み部を構成するローラ対、その他の分離部材が作動することにより紙葉束の最上部の紙葉を分離しながら給紙することが可能な状態になった時点を意味する。
【0060】
第4の本発明に係る紙葉取扱装置では、挟持搬送ユニット40は、接触しながら同方向へ等速で走行する接触走行領域CZ1、CZ2を形成する第1、及び第2のエンドレスベルト50、60を少なくとも備えており、且つ接触走行領域を構成しない第2のエンドレスベルトの下流部分63は分離取込み部(手前)まで延在している。
更に、挟持圧緩和搬送ユニット70は、第2のエンドレスベルトの下流部分63と、挟持圧調整ユニットが第1の位置にある時に該下流部分の上面(外面)と近接(非接触を含む)しながら同方向へ等速走行することにより挟持圧緩和搬送区間Z2を形成する第3のエンドレスベルト80と、を備えている。
【0061】
挟持搬送ユニット40、挟持緩和搬送ユニット70をエンドレスベルトにより構成することにより、部品点数削減、レイアウト自由度を高めることができる。特に、エンドレスベルト対によれば挟持圧緩和搬送区間Z2内における挟圧力を微調整し、緩和することが容易となる。また、第3のエンドレスベルト全体を揺動させることにより同区間Z2内における挟圧力の完全な解除が容易となる。
挟持圧緩和搬送区間では、ベルト間の挟圧力が緩和された状態で分離取込み部への受渡しが行われることとなり、挟圧により高められた紙葉同士の摩擦力が紙葉の分離、取込みを阻害することがなくなる。しかも、受渡し中に紙葉束の搬送位置、姿勢、位置ズレを防止する補正動作が行われる。このため、挟持搬送区間Z1に投入された際に乱雑な積層状態にあった紙葉束であっても、分離取込みをスムーズ化することができる。
【0062】
第5の本発明に係る紙葉取扱装置では、第3のエンドレスベルト80は、搬送方向上流側の上流側プーリ82aと、搬送方向下流側の下流側プーリ82bとの間に張設されており、上流側プーリ、或いは該上流側プーリの近傍を回動中心として下流側プーリ側を上下方向へ揺動可能に構成されていることを特徴とする。
第3のエンドレスベルト自体を揺動させることにより挟圧力を解消させるため、構成をシンプル化することができる。
【0063】
第6の本発明に係る紙葉取扱装置では、第2のエンドレスベルトの下流部分と対面する第3のエンドレスベルトは第1の位置にある時には張力が加わるために伸長しているが、第2の位置に上昇した時には張力が減じられて縮むことにより上流側プーリに向けて位置ズレし、該第3のエンドレスベルトに接する紙葉を前記位置ズレ方向にずらすように構成されていることを特徴とする。
分離取込み部における紙葉束の分離に際して、紙葉束先端が階段状に変形している状態が好ましい場合(所謂一部取込み方式の分離部)にはこのような構成を採用する。
【0064】
第7の本発明に係る紙葉取扱装置では、第2のエンドレスベルトの下流部分63を支持する(巻き回す)プーリ62cの軸92には同軸状に下側の低摩擦抵抗ローラ90aが軸支されており、下流側プーリ82bの軸94には同軸状に上側の低摩擦抵抗ローラ90bが軸支されていて下側の低摩擦抵抗ローラ90aとの間にニップ部を形成し、各低摩擦抵抗ローラは、紙葉束の搬送経路の幅方向中心部に配置されており、上側の低摩擦抵抗ローラは、第3のエンドレスベルトと共に第1の位置と第2の位置との間を揺動することを特徴とする。
「下流部分63を支持するプーリ62c」とは、下流部分63を巻き回して下方に反転させるプーリである。プーリ62cと下側の低摩擦抵抗ローラ90aは軸92に一体化されて回転する。下流側プーリ82bと上側の低摩擦抵抗ローラ90bは軸94に一体化されて回転する。
挟持圧緩和搬送区間S2では、ベルト60(下流部分63)とベルト80との間に隙間Gを設け(或いは、接触圧を低下させ)、低摩擦抵抗ローラ対(樹脂ローラ対)90のみでニップする構造にした。このため、一括受入れ部から乱雑に投入され、不整列の状態で挟持搬送区間Z1を搬送されてきた紙葉束を補正用ガイド150に沿って整列させることができる。また、併せて挟持圧調整ユニット(第3のベルト80、低摩擦抵抗ローラ90b)100を開放させれば、大きく斜行した紙葉束であっても整列させることが可能となる。
【0065】
第8の本発明に係る紙葉取扱装置は、挟持圧調整ユニット100が第1の位置と第2の位置との間を往復する動作と連動して挟持圧緩和搬送ユニット70の紙葉束搬送経路内に出没し、突出時に紙葉束後部と接触可能な後退防止壁を形成するストッパ160を備えていることを特徴とする。
出没可能なストッパ160を挟持圧緩和搬送区間Z2内に設けたため、分離取込み部210における分離作業中に紙葉束が後退することを規制でき、多数枚の紙葉束を分離する場合であっても、紙葉束を乱すことなく安定した分離を実現できる。
【符号の説明】
【0066】
1…紙幣取扱装置、10…外側ケーシング、20…一括受入れ部、22…ローラ対、30…接続搬送部、CZ1、CZ2…接触走行領域、40…挟持搬送ユニット、50…第1のエンドレスベルト、52a~52e…プーリ、60…第2のエンドレスベルト、Z1…挟持搬送区間、63…下流部分(下流走行区間、下流走行領域)、62a~62d…プーリ、Z2…挟持圧緩和搬送区間、70…挟持圧緩和搬送ユニット、80…第3のエンドレスベルト、82a…上流側プーリ、82b…下流側プーリ、M1…搬送用モータ、90…低摩擦ローラ対、90a…下側の低摩擦ローラ、90b…上側の低摩擦ローラ、92…軸、93…ギヤ、94…軸、95…ギヤ、100…挟持圧調整ユニット、102…ホルダ本体、103…軸、104…天板、104a…開口部、105…ホルダ片、106…軸部、110…ホルダ片、111…弾性部材、120…揺動機構、122…カム軸、124…揺動用カム、126…カムフォロア、130…接続搬送路、150…補正用ガイド、160…ストッパ、170…ストッパ出没機構、172…出没用カム、M2…揺動用モータ、175…進退部材、177…弾性部材、179…作動片、180…カムフォロア、200…紙幣処理装置、210…分離取込み部、500…制御手段。
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