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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042916
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】自由落下運航システム
(51)【国際特許分類】
   B64C 37/02 20060101AFI20240322BHJP
   B64D 41/00 20060101ALI20240322BHJP
   B64B 1/40 20060101ALI20240322BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B64C37/02
B64D41/00
B64B1/40
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147839
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】599009765
【氏名又は名称】國分 恒次
(74)【代理人】
【識別番号】100117145
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 純
(72)【発明者】
【氏名】國分 恒次
(57)【要約】
【課題】飛行動力を最小限に抑えることにより、エネルギー資源の使用を抑止し、災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に物資を運ぶことを目的とする。また中電波の届かない状況でも慣性航法による自動飛行により、迅速かつ柔軟に物資を運ぶことを目的とする。
【解決手段】気球及び気球の下方に当該気球と切り離し可能なように接続された飛行体であり、前記飛行体は、少なくとも機体胴体、左右の翼及び垂直尾翼を有し、左右の翼の揚力によって向き、高度、速度により航路を調整することを特徴とする自由落下運航システムである。また前記機体胴体にプロペラが設置されており、当該プロペラの回転で発生する回転運動エネルギーを利用して、向き、高度、速度により航路を調整することを特徴とする更に前記飛行体が衛星測位システムを用いて飛行体の飛行位置を測量する装置を有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気球及び気球の下方に当該気球と切り離し可能なように接続された飛行体とから構成された自由落下運航システムにおいて、前記飛行体は、少なくとも機体胴体、左右の翼及び垂直尾翼を有し、左右の翼の揚力によって向き、高度、速度により航路を調整することを特徴とする自由落下運航システム。
【請求項2】
更に前記機体胴体にプロペラが設置されており、左右の翼により発生する揚力と、前記プロペラの回転で発生する回転運動エネルギーを利用して、向き、高度、速度により航路を調整することを特徴とする請求項1に記載された自由落下運航システム。
【請求項3】
前記飛行体が衛星測位システムを用いて飛行体の飛行位置を測量する装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載された自由落下運航システム。
【請求項4】
前記飛行体が、飛行体の高度、位置又は時間を検出し、速度及び移動距離を算出することにより飛行体の地上における位置を測量する装置を有し、及び\又は飛行体の現在位置を発信し、前記飛行体を予め設定された目的地まで誘導することを特徴とする請求項1又は2に記載された自由落下運航システム。
【請求項5】
前記プロぺラが、回転運動エネルギーを発生させる発電装置に接続され、回転運動エネルギーにより産出された電力を利用して飛行体の向き、高度、速度により航路を調整することにより、前記飛行体を予め設定された目的地まで誘導することが可能であることを特徴とする請求項2に記載された自由落下運航システム。
【請求項6】
前記飛行体が電波の受信器及び発信器を有しており、飛行体外部からの電波を受信し、または電波を発信することによって飛行体を無線通信の中継基地として機能させることを特徴とする請求項1又は2に記載された自由落下運航システム。
【請求項7】
前記飛行体が、飛行体の高度、位置又は時間を検出し、検出された情報を監視者へ送信し、前記情報を受信した監視者は、飛行体の動作を制御する信号を飛行体に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載された自由落下運航システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気球によって一定の高度まで上昇した後に飛行体を切り離し、切り離された飛行体が目的地まで下降速度を調整しながら飛行し、一定距離に達した後は落下飛行する自由落下運航システムに関するものである。
また気象観測や、電波中継が必要な場面で、上空滞空時間を確保しながら上空観測や上空中継を行うことができる運航システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に、ある程度の誤差の範囲で物資を運ぶことができるシステムを検討していた。
現在、物資を目的地まで運ぶ方法としては、トラック輸送やドローン輸送などが挙げられる。このような技術を利用して、本発明が目的とする災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に物資を運ぶ方法として利用することが考えられる。
しかしながら、トラック輸送は、化石燃料や電気の利用が不可避である。化石燃料においては、地下資源の採掘や大型タンカーの座礁など自然環境を破壊することが問題視されており、貴重な生物資源の減少が人類の生活に及ぼす影響が危惧されている。
【0003】
その他、排気ガス、渋滞、ドライバー不足、道路、路線等のインフラによる制約によって、災害時や極地等への輸送が困難となることは容易に想定される。
また、ドローン輸送については、ドローン自体の重量によって物資輸送には非効率である点が問題となっている。特に現在のドローンは蓄電池を内蔵しているため、飛行する距離や運ぶ物資の重量によっては、ドローン自体が巨大化し、重量も増加してしまうため、効率が悪くなり、飛行距離も大きく制限されてしまう問題点が指摘されている。
また現在実用化されているドローンは電子機器による遠隔操作によって運用されている。そして、高圧送電線からの放電、他の無線通信を行う無線局、鉄道や工場等からの妨害電波やその他の違法な電波、高層ビル等の大規模建築物や鉄道、道路等の高架構造物による電波の遮蔽、反射によるゴーストや森林地帯における電波の減衰等に起因する電子機器の障害の発生が問題となっている。
【0004】
このような問題を解決するためにドローンによる輸送には、中継基地局の建設等が必要となり、結果的に莫大な初期投資費用が必要となってしまう。
また本発明は、災害時、有事、極地に物資を運ぶことを目的としているが、このような場合には、中継基地局が未設置の場所への物資の搬送が困難となる。更に災害時には電波障害や建物の崩落等、中継基地局又はシステム自体に何らかも問題が発生することも考えられるため、迅速かつ柔軟な対応をドローン輸送では確保できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4―126697号公報
【特許文献2】特許第7055915号公報
【特許文献3】特許第3711538号公報
【特許文献4】特開2021―28473号公報
【特許文献5】特開2000-214254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、飛行動力を最小限に抑えることにより、エネルギー資源の使用を抑止し、災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に物資を運ぶことを目的とする。特に一定の高度まで上昇する際に燃料の使用を抑制することによって、脱炭素の要請にも適合することを目的とする。
また本発明は、中継基地局の設置を必要とせず、初期投資費用を大幅に低廉させ、電波の届かない状況でも慣性航法による自動飛行により、迅速かつ柔軟に物資を運ぶことを目的とする。
また本発明は蓄電池を備えた飛行体における筐体の巨大化や重量の増加を抑止し、効率的に長距離飛行を達成することを目的とする。
更に本発明は、重力、自重、落下速度、揚力、風力を利用した再生可能エネルギーを活用し、飛行体を誘導しながら、ある程度の誤差の範囲で物資を運ぶことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
(1)本発明は、気球及び気球の下方に切り離し可能なように接続された飛行体とから構成された自由落下運航システムにおいて、前記飛行体は、少なくとも機体胴体、左右の翼及び垂直尾翼を有し、左右の翼の揚力によって向き、高度、速度により航路を調整することを特徴とする自由落下運航システムである。
ここで気球と飛行体との切り離しは、気球と飛行体との接合部に電気的又は電磁的な切離構造を有することにより行う。例えば、運航システムが所定の高度に達した際に、高度、緯度、経度情報を得た内蔵されたコンピュータが、無線、有線回線を通じて、サーボモータ制御回路、駆動回路に信号を送り、サーボモータ(モータの動きを角度に変える)を駆動させ、フックを自動開錠することによって行うことができる。
また飛行体の落下速度を調整することによって、着陸時の衝撃を調整し、飛行体の損傷を防止する。更に到着点付近にてパラシュートなどを利用して、着地時の衝撃を弱めることも可能である。また左右の翼の角度を調整することによって飛行体の向きや高度を変えることが可能である。また飛行体の航路を調整するために左右の翼が使用されるため、飛行体の向き、高度、速度の調整については、最小限の機能である。その他の飛行体の動作に左右の翼を使用することも可能である。
【0008】
さらに本発明に係る気球についても回収することが可能である。 例えば、本発明に係る気球は、飛行体を切り離した後に、気球内の気体を排出する。そして気球の下方に設けた解除装置には、主翼が設置されている。当該主翼によって、気球の飛行を安定させ、主翼の角度を調節して揚力を得ながら所望の航路を飛行することが可能となる。また主翼の角度を調整することによって舵をとることも可能であり、気球の航路を修正する機能を補助することができる。
さらに解除装置の先端は、プロペラを設置することも可能である。当該プロペラは、気球が落下する時に発生するプロペラの回転によって発生する回転運動エネルギーを利用して落下速度を調整することができる。このような機能によって、気球をある程度の目的地範囲に航行させることが可能となる。
本発明の構成を採用することによって、飛行体と接続された気球を一定高度まで上昇させることができるため、飛行動力を最小限に抑えることができる。そしてこのような作用効果によって、エネルギー資源の使用を抑止し、災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に物資を運ぶことが可能となる。特に一定の高度まで上昇する際に燃料の使用を抑制することによって、脱炭素の要請にも適合する優れた効果を奏する。
【0009】
(2)更に前記機体胴体にプロペラが設置されており、当該プロペラの回転で発生する回転運動エネルギーを利用して向き、高度、速度により航路を調整する装置を有する上記(1)に記載された自由落下運航システムである。
本発明に係るプロペラは、機体の落下運動に空気抵抗を与えて、落下速度を下げる機能を有する。また場合によってはプロペラの仰角を変えて、電動で回転させることで揚力を発生させ、機体を上昇させる機能を有する。また飛行体の航路を調整するためにプロペラが使用されるため、飛行体の向き、高度、速度の調整については、最小限の機能である。その他の飛行体の動作にプロペラの機能を使用することも可能である。
このようなプロペラは、例えば、機体胴体の先端又は左右の翼の前方二箇所に設置することが考えられる。上記プロペラの機能を発揮できる状態であれば、プロペラの数に限定はなく、機体胴体の他の箇所に設置することも可能である。
【0010】
(3)前記飛行体が衛星測位システムを用いて飛行体の飛行位置を測量する装置を有し、及び\又は飛行体から電波を発信することによって飛行体を無線通信の中継基地として機能させることを特徴とする請求項1に記載された自由落下運航システム。上記(1)又は(2)に記載された自由落下運航システムである。
ここで本発明で使用される衛星測位システムとは、全地球測位システム(GPS)等を用いて、地上における位置を測量するGNSSのことである。このようなGNSSを飛行体に組込むことによって、飛行体の位置を測量することができる。一般的には4機以上の衛星から送信された電波を、複数の測量用受信機で同時観測し、これらのデータを組み合わせて解析し、観測点間の幾何学的な三次元の位置関係を数センチメートル以下の誤差で得るシステムのことである。測量では、ナビ用の測位信号に加え、その信号を載せた搬送波(波長約19.0cm、24.4cm、25.5cm)の情報も使って衛星までの距離を測ることなどにより、測位精度をメートル級からセンチメートル級に高めることも可能である。解析には衛星の軌道情報が必要であり、衛星から送信される放送暦を利用することができる。測量の座標値を得るには基準点での同時観測が必要となるが、国土地理院が全国に設けた電子基準点(常時GNSS観測を行う施設)のデータを利用することで可能となる。
また飛行体の現在位置を発信する装置は、飛行体を無線通信の中継基地として機能する。無線通信は、電波、赤外線、可視光、音波、超音波、パルス信号、X線等を利用して行われる。通信測量された飛行位置を発信するパルス信号発信機等が挙げられる。
また本発明は、中継基地局の設置を必要とせず、初期投資費用を大幅に低廉させ、電波の届かない状況でも自動飛行により、迅速かつ柔軟に物資を運ぶことが可能である。
また本発明に係る飛行体は、いわゆる慣性航法を採用することも可能である。すなわち、ジャイロスコープ、加速度センサ、気圧高度計等によって、向き、傾き、速度、現在位置、高度を測定し、現在移動速度、移動高度、位置、目的地までの残存距離、残存高度を随時測定記録しながら所定の目的地まで飛行体を誘導しながら物資を運ぶことも可能である。
【0011】
(4)前記飛行体が、飛行体の高度、位置又は時間を検出し、速度及び移動距離を算出することにより飛行体の地上における位置を測量する装置を有し、及び\又は飛行体の現在位置を発信する機能を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された自由落下運航システムである。
ここで本発明に係る飛行体は、いわゆる慣性航法を採用することも可能である。すなわち、ジャイロスコープ、加速度センサ、気圧高度計等によって、向き、傾き、速度、現在位置、高度を測定し、現在移動速度、移動高度、位置、目的地までの残存距離、残存高度を随時測定記録しながら所定の目的地まで飛行体を誘導しながら物資を運ぶことができる。
また本発明が有する飛行体の高度、位置又は時間の検出は、飛行体の自動飛行にとって最低限に必要な情報である。
そのため航路を細かく自動修正させるためには、高度、位置又は時間以外に、飛行体が目的地までの飛行体の向きや、残存距離等といった、より航路を細かく自動修正し自動飛行を継続するために必要な情報を入手する機能を有してもよいことは勿論である。
【0012】
(5)前記プロペラが、回転運動エネルギーを発生させる発電装置に接続され、回転運動エネルギーにより産出された電力を利用して飛行体の向き、高度、速度により航路を調整し、前記飛行体を予め設定された目的地まで誘導することが可能であることを特徴とする上記(2)に記載された自由落下運航システムである。
本発明は、このような構成を採用することによって、一定の高度に滞空する(一定の高度を目的地とする)場合は、尾翼を使い機体を風上方向に安定させ、風力を利用して揚力を得て上昇する。上昇下降を調整しながら一定の高度を維持する。また飛行体の航路を調整するために電力が使用されるため、飛行体の向き、高度、速度の調整については、最小限の機能である。その他の飛行体の動作に電力を供給することも可能である。
また本発明は飛行体自体の航行によって発電することができるため、大容量の蓄電池若しくは発電装置を備える必要がなく、筐体の巨大化や重量の増加を抑止し、効率的に長距離・長時間の飛行を達成し、また内蔵装置の長時間駆動も可能とすることができる。
【0013】
(6)前記飛行体が電波の受信器及び発信器を有しており、飛行体外部からの電波を受信し、または電波を発信することによって、飛行体を無線通信の中継基地として機能させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された自由落下運航システムである。
本発明の構成を採用することによって、電波の届かない極地において、飛行体自体が一時的に中継基地の役割を達成することが可能となる。
(7)前記飛行体が、飛行体の高度、位置又は時間を検出し、検出された情報を監視者へ送信し、前記情報を受信した監視者は、飛行体の動作を制御する信号を飛行体に送信することが可能であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された自由落下運航システムである。
前記発明は、飛行体が検出した情報を監視者が受信し、予め設定された目的地への航路と、飛行体の現在位置に誤差が生じている場合に、監視者によって飛行体が正しい位置に補正されるための補正信号を飛行体に送信する構成を有する。
補正信号を受信した飛行体は、翼の角度やプロペラの回転速度等を補正信号に従って調整し、正しい航路に補正することによって、目的地まで飛行することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、飛行動力を最小限に抑えることにより、エネルギー資源の使用を抑止し、災害時、有事、極地等といった通常の輸送が困難な場所に物資を運ぶことが可能である。特に一定の高度まで上昇する際に燃料の使用を抑制することによって、脱炭素の要請にも適合する効果を奏する。
また本発明は、中継基地局の設置を必要とせず、初期投資費用を大幅に低廉させ、電波の届かない状況でも慣性航法による自動飛行により、迅速かつ柔軟に物資を運ぶことが可能である。
また本発明は蓄電池を備えた飛行体における筐体の巨大化や重量の増加を抑止し、効率的に長距離飛行を達成することが可能である。
また本発明に係る飛行体自体が一時的に中継基地の役割を担う効果を奏する。
更に本発明は、重力、自重、落下速度、揚力、風力を利用した再生可能エネルギーを活用し、飛行体を誘導しながら、ある程度の誤差の範囲で物資を運ぶという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る自由落下運航システムを説明する正面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る自由落下運航システムを説明する正面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る自由落下運航システムの使用状態を説明する概念図である。
図4】実施形態1に係る自由落下運航システムに使用される飛行体を説明する正面図である。
図5】実施形態1に係る自由落下運航システムに使用される飛行体を説明する正面図である。
図6】実施形態1に係る自由落下運航システムに使用される飛行体を説明する正面図である。
図7】実施形態1に係る自由落下運航システムに使用される飛行体の航法を説明する概念図である。
図8】実施形態2に係る自由落下運航システムに使用される飛行体を説明する斜面図である。
図9】実施形態2に係る自由落下運航システムに使用される飛行体の航法を説明する図である。(a)は平面図、(b)側面図である。
図10】実施形態3に係る自由落下運航システムに使用される飛行体の航法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施の形態の一例を、図面に則して説明する。ただし、以下の説明は本発明の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る自由落下運航システムを説明する正面図である。
図1に示す如く、本発明の実施形態1に係る自由落下運航システム10は、気球1及び気球1の下方に切り離し可能なように接続された飛行体2とから構成さている。気球1と飛行体2とは、解除装置5によって接続されている。
前記飛行体2は、少なくとも機体胴体、左右の翼及び垂直尾翼を有している。また機体胴体の後端にプロペラ4が設置されている。飛行体2は、当該プロペラ4の回転で発生する回転運動エネルギーを利用して落下速度を調整する装置を有している。
図2は、気球1から飛行体2が切り離された状態を示す図である。気球1と飛行体2の間には、飛行体2を切り離す機能をする解除装置5が設けられている。かかる解除装置5は、電気的な方法で切り離しを実現する。具体的には、自由落下運航システム10は、予めある程度の範囲の高度、緯度、経度、必要であれば時間で構成された切離し情報と、運航システム10がセンサによって得た情報の一致を内蔵されたコンピュータが検知した場合に、有線回線を通じて、サーボモータ制御回路に信号を送り、サーボモータを駆動させ、気球1の下側に設けられた解除装置内における飛行体2を掛止しているフックを自動開錠することによって行う。
【0017】
図3は、本発明の実施形態1に係る自由落下運航システムの使用状態を説明する概念図である。
図3に示す如く運航システム10における気球1の解除装置5によって切り離された飛行体2は、GPS等を利用しながら、外部からの誘導に依存せずに、ある程度の目的の範囲内で、自動で航路を修正しながら飛行し、目的地に飛行体2若しくは飛行体2に積載された物資を輸送することができる。
この際、本発明に係る飛行体2は、飛行体2自身の高度を測定することが可能である。
飛行体2は、加速度計出力の垂直方向加速度および基準高度を処理する演算処理手段および該基準高度 として気圧高度を出力する気圧高度計を備えている。
そしてGPS受信機からGPS高度を受け、 前記気圧高度が有効な状態で、当該気圧高度を前記基準高度として前記演算処理手段に供給して慣性高度を基準として前記GPS高度のバイアス誤差を推定することができる。
前記気圧高度が無効な状態になったとき、該気圧高度が無効な状態になる直前の前記バイアス誤差により前記GPS高度を補正したGPS補正高度を生成し、該GPS補正高度を 前記基準高度として選択することができる。
このような高度の自動計測については、例えば、特許文献3に記載された発明を参照することによって、実施することができる。
また本発明の飛行体2は、加速度センサや気圧計、ジャイロセンサによる航行でも目的地への誘導を実現することができる。
【0018】
また本発明に係る飛行体2は、衛星測位システムを用いて飛行体2の地上における位置を測量する装置を有していてもよい。
衛星測位システムを用いて飛行体2の地上における位置を測量する装置としては、例えば、通信衛星とGPS衛星を使用して行う。
飛行体を監視する者(以下「監視者」とする。)は、飛行体と通信衛星を経由して通信回線が設定され、相互に情報伝達が可能である。監視者は、地上の施設や、車両、他の飛行機、船舶等といった外部設備を利用して飛行体2の飛行情報を利用する者である。
飛行体2は、GPS衛星からGPS信号を受信し、設置位置を位置情報とし、GPS信号で得た位置情報との偏差よりGPS補正信号を生成する。補正信号を通信衛星経由で飛行体2に送信する。
一方、位置情報を生成し、位置情報をもとに地図情報データベースから所要の地図情報を選定し、コード化した後、地図データを通信衛星経由で飛行体2に送信してもよい。
次にGPS衛星からの受信したGPS信号を補正し正確な飛行体2の位置情報を求める。位置情報は通信衛星により監視者に送信することも可能である。飛行体2は内蔵されたコンピュータによって、位置情報と地図情報との位置合わせを行う。位置合わせ後のデータは、通信衛星を介して監視者に送信することができる。このような位置情報と地図譲渡との位置合わせは、飛行体2自体で行ってもよいし、監視者からの指示によって行ってもよい。
例えば、データを受信した監視者は、位置情報と地図情報とに誤差が発生している場合、正しい位置に飛行体2を補正するために、飛行体2の翼やプロペラの駆動状況を調整する信号を飛行体2に送信することによって、飛行体2の目的地までの誘導が可能となる。
【0019】
この際、飛行体2に内蔵されたカメラを使用することによって、より精度の高い位置合わせを行うこともできる。カメラを使用した位置合わせに関する技術は、例えば、特許文献5を参照することによって実施することができる。
このような技術を使用することによって、飛行体2自体で航路を修正しながら、目的地まで飛行体2を搬送することができる。
本発明に使用される飛行体2は、少なくとも機体胴体11、左右の翼及び垂直尾翼を有している。
機体胴体の後端にプロペラ4が設置されており、図4及び図5に示す如く、運航システム10から切り離された飛行体2が、左右の翼7,7を開くことによって、飛行体2を安定させ、主翼の角度を調節して揚力を得ながら所望の航路を飛行することが可能となる。左右の翼7,7は、通常は機体胴体11に沿うように収納されている。
また主翼7,7の角度を調整することによって舵をとることも可能であり、飛行体2の航路を修正する機能を補助することができる。機体胴体の後端には、尾翼8も設置されている。
図4に示す如く尾翼8は機体胴体11に収納されている。尾翼8は機体胴体11の後端に等間隔で4体設置されており、垂直尾翼と水平尾翼として機能する。すなわち、垂直尾翼は飛行体2を左右に方向転換させ、水平尾翼は垂直方向に飛行体2を制御する。
図5に示す如く、飛行体2は主翼7,7と尾翼8を開くことによって、グライダー飛行する。
【0020】
図6は、実施形態1に係る自由落下運航システムに使用される飛行体2を説明する図である。
本実施形態1に係る飛行体2は、機体胴体11の後端にプロペラ4が設置されている。本飛行体2は、当該プロペラ4が落下する時に発生するプロペラの回転によって発生する回転運動エネルギーを利用して落下速度を調整することができる。
また機体胴体の後部に設けられた左右の翼17,17によって飛行体2の航路を調整することができる。左右の翼17,17は、通常はプロペラ4の外周部に沿うように収納されている。
図6に示す如く、尾翼は機体胴体に収納されている。左右の翼17,17を開くことによって、飛行体2はプロペラの回転によって機体胴体11を略垂直方向に固定したまま飛行する。すなわち図5に示す飛行体2の形態はグライダー飛行であって、図6に示す飛行体2の形態は、プロペラを頂点とした機体胴体11を略垂直方向に固定したまま飛行する。
プロペラの回転向きを変えることで上昇、すなわち飛行体2の高度、到達点高さ、水平移動速度、垂直落下速度、目的地までの残距離から、柔軟に滞空時間を調整することができる。
【0021】
図7に示す如く、下降開始後に計算した航路は1だが、飛行体が理想航路を外れたため、外れた位置から再度航路を再計算し、さらに外れた位置から3の航路を再計算する。これを進路と高度に対して逐次行うことで、ある程度の目的地範囲内に飛行体15を航行することができる。
【0022】
実施形態2
図8及び図9は、実施形態2に係る自由落下運航システムに使用される飛行体20を説明する図である。
図8に示す如く本実施形態2に係る飛行体20は、機体胴体21に接合された左右の翼27,27の揚力によって高度、落下速度、飛行速度又は向きを調整することができる。特に大気中に存在する風力を利用して、滞空時間を長くすることができる。
また図9(a)に示す如く、飛行体20における垂直尾翼28は、尾翼の効果により機首を風上に向けることによって、図9(b)に示す如く、左右の翼27,27の仰角を調整することで揚力を得て気体を上昇させることができる。また同様の効果によって下降速度を落とすことが可能である。
【0023】
実施形態3
図10は、実施形態3に係る自由落下運航システムに使用される飛行体30を説明する側面図である。
図10に示す如く本実施形態3に係る飛行体30は、左右の翼37の揚力によって高度及び落下速度を調整することができる。特に大気中に存在する風力を利用して、滞空時間を長くすることができる。
本発明に使用される飛行体30は、機体胴体31の後端にプロペラ34が設置されており、下降速度や高度を調整することができる。
図10に示す如く、運航システムから切り離された飛行体30が、左右の翼37を開くことによって、飛行体30を安定させ、主翼の角度を調節して揚力を得ながら所望の航路を飛行することが可能となる。また主翼37の角度を調整することによって舵をとることも可能であり、飛行体30の航路を修正する機能を補助することができる。
また図10に示す如く、機体胴体31の後端には、尾翼38も設置されている。尾翼38は垂直尾翼として機能する。すなわち、垂直尾翼38は尾翼の効果により機首を風上に向けることによって、左右の翼37の仰角を調整することで揚力を得て飛行体30を上昇させることができる。
すなわち、ある程度の高度に滞空したり、飛行時間を長時間必要とする場合に、気球から切り離された飛行体30が、風向きに垂直になるように機体向きを調整し、風上に船体を向ける(これを尾翼38で行う)。尾翼38の迎角を十分とり揚力を得る。風向きが上昇気流なら機体は上昇を続けるし、下降気流でも機体の下降速度を下げることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 気球
2、20、30 飛行体
4、34 プロペラ
5 解除装置
7、17、27、37 左右の翼
8、28、38 尾翼
10 自由落下運航システム
11、21、31 機体胴体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10