(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042939
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】タイミングチェーン検査装置及びタイミングチェーン検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147866
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】箱石 一記
(72)【発明者】
【氏名】安味 憲一
(72)【発明者】
【氏名】荒屋 裕規
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB20
2G051CA03
2G051CA04
2G051ED23
(57)【要約】
【課題】簡単にタイミングチェーンの駒ずれを検査することができるタイミングチェーン検査装置及びタイミングチェーン検査方法を提供する。
【解決手段】タイミングチェーン検査装置は、例えば、スプロケットM1と共にスプロケットM1に取り付けられたタイミングチェーンM2を撮影し、得られた撮影画像において、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置(第1中心位置C1、第2中心位置C2、第3中心位置C3)を検出して、各中心位置の位置関係に基づいてタイミングチェーンM2の駒ずれの有無を判別する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケットと共に前記スプロケットに取り付けられたタイミングチェーンを撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により得られた撮影画像において、前記スプロケットの中心位置を第1中心位置、前記スプロケット特徴部位の中心位置を第2中心位置、前記タイミングチェーン特徴部位の中心位置を第3中心位置として検出する中心検出手段と、
前記第1中心位置、前記第2中心位置、及び、前記第3中心位置の位置関係に基づき、前記タイミングチェーンの駒ずれの有無を判別する判別手段と
を備えたことを特徴とするタイミングチェーン検査装置。
【請求項2】
前記中心検出手段は、前記撮影手段により得られた撮影画像から、スプロケット、スプロケット特徴部位、及び、タイミングチェーン特徴部位を、それぞれの特徴を個別に学習させた学習モデルを用いて検出し、前記第1中心位置、前記第2中心位置、及び、前記第3中心位置を算出することを特徴とする請求項1記載のタイミングチェーン検査装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記第1中心位置と前記第2中心位置とを結ぶ第1直線と、前記第1中心位置と前記第3中心位置とを結ぶ第2直線とのなす角、又は、前記第1中心位置から前記第2中心位置に向かう第1ベクトルと、前記第1中心位置から前記第3中心位置に向かう第2ベクトルとのなす角を算出し、得られた2直線のなす角又は2つのベクトルのなす角から前記タイミングチェーンの駒ずれの有無を判別することを特徴とする請求項1記載のタイミングチェーン検査装置。
【請求項4】
スプロケットと共に前記スプロケットに取り付けられたタイミングチェーンを撮影する撮影手順と、
前記撮影手順により得られた撮影画像において、前記スプロケットの中心位置を第1中心位置、前記スプロケット特徴部位の中心位置を第2中心位置、前記タイミングチェーン特徴部位の中心位置を第3中心位置として検出する中心検出手順と、
前記第1中心位置、前記第2中心位置、及び、前記第3中心位置の位置関係に基づき、前記タイミングチェーンの駒ずれの有無を判別する判別手順と
を備えたことを特徴とするタイミングチェーン検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケットに取り付けられたタイミングチェーンの駒ずれを検査するタイミングチェーン検査装置及びタイミングチェーン検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンの生産ラインでは、スプロケットに取り付けたタイミングチェーンに駒ずれがないかを検査する検査工程がある。従来は、例えば、作業員の目視により、スプロケットキー溝とタイミングチェーンのカラーポイントとの配置を確認し、タイミングチェーンの駒ずれを検査していた。しかしながら、スプロケットキー溝及びタイミングチェーンのカラーポイントは、作業員がのぞき込まなければ見えない位置にあり、作業に危険が伴うという問題があった。そのため、作業員による目視検査ではなく、自動で検査することが求められていた。
【0003】
なお、例えば、特許文献1には、画像解析を利用してチェーンのピンの回転状態を検出するチェーン検査装置が記載されている。このチェーン検査装置は、直線縁部を有する凸領域が頭部に形成されたリベットピンを含む撮像画像を取得し、得られた撮像画像の中で直線縁部に隣接する輝度の低下領域を解析して、リベットピンの回転に関する状態を検出するものである。しかし、この技術では、個々の要素の回転角度を推定することはできるものの、2つの要素の位置関係を推定するには、双方に対して各々角度を推定し、両者の差分を算出しなければならず、システムが複雑になるという問題がある。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、AI画像解析により対象物の回転状態をパターンマッチングし回転角度を検出する回転角度検出方法が記載されている。しかし、既存のAI画像解析のように、例えば、単純に良及び不良の画像を学習させる場合、360°位相の異なる様々な画像を学習させる必要があり、多数の教師データが必要であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-52513号公報
【特許文献2】特開平8-263659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、簡単にタイミングチェーンの駒ずれを検査することができるタイミングチェーン検査装置及びタイミングチェーン検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイミングチェーン検査装置は、スプロケットと共にスプロケットに取り付けられたタイミングチェーンを撮影する撮影手段と、撮影手段により得られた撮影画像において、スプロケットの中心位置を第1中心位置、スプロケット特徴部位の中心位置を第2中心位置、タイミングチェーン特徴部位の中心位置を第3中心位置として検出する中心検出手段と、第1中心位置、第2中心位置、及び、第3中心位置の位置関係に基づき、タイミングチェーンの駒ずれの有無を判別する判別手段とを備えたものである。
【0008】
本発明のタイミングチェーン検査方法は、スプロケットと共にスプロケットに取り付けられたタイミングチェーンを撮影する撮影手順と、撮影手順により得られた撮影画像において、スプロケットの中心位置を第1中心位置、スプロケット特徴部位の中心位置を第2中心位置、タイミングチェーン特徴部位の中心位置を第3中心位置として検出する中心検出手順と、第1中心位置、第2中心位置、及び、第3中心位置の位置関係に基づき、タイミングチェーンの駒ずれの有無を判別する判別手順とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプロケット、スプロケット特徴部位、及び、タイミングチェーン特徴部位の各中心位置を検出し、それらの位置関係に基づいてタイミングチェーンの駒ずれの有無を判別するようにしたので、スプロケットの回転状態により、スプロケット特徴部位およびタイミングチェーン特徴部位の位置がずれていても、相対的な位置関係から容易に駒ずれの有無を判別することができる。よって、例えば、スプロケット、スプロケット特徴部位、及び、タイミングチェーン特徴部位を、それぞれの特徴を個別に学習させた学習モデルを用いて検出し、それらの中心位置を算出することができるので、スプロケットの回転状態を変化させた大量の学習画像を用意する必要がなく、必要な学習画像の枚数を少なくすることができる。また、タイミングチェーン検査装置を、カメラなどを含む撮影手段と、中心検出手段及び判別手段として機能するコンピュータ等とにより構成することができ、簡単な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るタイミングチェーン検査装置の構成を表す図である。
【
図2】
図1に示した中心検出手段により撮影画像からスプロケット、スプロケット特徴部位、及び、タイミングチェーン特徴部位の各中心位置を検出する手順を表す図である。
【
図3】
図1に示した判別手段により第1中心位置、第2中心位置、及び、第3中心位置の位置関係に基づいてタイミングチェーンの駒ずれの有無を判別する方法を説明する図である。
【
図4】
図1に示した切出手段、及び、判別手段のハードウェアの一構成例を表す図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係るタイミングチェーン検査方法の流れを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るタイミングチェーン検査装置1の構成を表すものである。このタイミングチェーン検査装置1は、スプロケットに取り付けたタイミングチェーンの駒ずれを検査するものであり、例えば、自動車のエンジンの生産ラインにおいて用いることができる。なお、本実施の形態では、自動車のエンジンの生産ラインにおいて、3個のスプロケットM1にタイミングチェーンM2が掛け渡された部品Mについて、タイミングチェーンM2の駒ずれを検査する場合を例に挙げて説明する。
【0013】
タイミングチェーン検査装置1は、例えば、スプロケットM1と共にスプロケットM1に取り付けられたタイミングチェーンM2を撮影する撮影手段10と、撮影手段10により得られた撮影画像において、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置を検出する中心検出手段20と、中心検出手段20により検出した各中心位置の位置関係に基づきタイミングチェーンM2の駒ずれの有無を判別する判別手段30と、判別手段30による判別結果等を表示する表示手段40とを備えている。
【0014】
撮影手段10は、例えば、CCDカメラ等のカメラ11と、カメラ11による撮影を制御すると共に撮影画像を記録する制御・記録手段12とを有している。カメラ11は、生産ラインを搬送されるエンジンの部品Mについて、各スプロケットM1の回転軸方向の側面、及び、取り付けられたタイミングチェーンM2を撮影するように固定して配設されている。カメラ11の撮影範囲は、例えば、各スプロケットM1及びその周りに位置するタイミングチェーンM2の部分が、各スプロケットM1に対応して個別に、又は、複数まとめて含まれるように設定することが好ましい。
【0015】
制御・記録手段12は、例えば、コンピュータにより構成することができ、プログラムを実行することにより、制御・記録手段20として機能するように構成されている。カメラ制御・記録手段12は、例えば、カメラ11に接続され、カメラ11に映る画像からスプロケットM1を検出する対象検出手段12Aと、対象検出手段12Aにより検出したスプロケットM1が画像の所定位置、例えば、移動方向における画像の中央部に移動してきたときに、画像を撮り記録する記録手段12Bとを有していることが好ましい。このように構成すれば、画像をトリガーとして自動で撮影画像を得ることができる。なお、記録手段12Bは、各スプロケットM1に対応して個別に撮影画像を撮るようにしてもよいが、複数まとめて撮るようにしてもよい。
【0016】
対象検出手段12Aは、例えば、公知の物体検知技術を用いることができ、例えば、検出するスプロケットM1の正例となる学習画像を用いた機械学習を実行することにより、スプロケットM1ごとに特徴を学習させた対象検出学習モデルを用いることが好ましい。対象検出学習モデルは、例えば、スプロケットM1を撮影した撮影画像から、該当部分を切り取った正例となる学習画像を複数枚用意し、深層学習(ディープラーニング;Deep learning)により特徴を抽出する対象検出学習モデル生成手段により生成することができる。深層学習には、畳み込みニーラルネットワーク(CNN;Convolutional neural network)を用いることが好ましい。
【0017】
図2は、中心検出手段20において、撮影画像からスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置を検出する手順を表すものである。中心検出手段20は、例えば、コンピュータにより構成することができ、プログラムを実行することにより、中心検出手段20として機能するように構成されている。中心検出手段20は、例えば、撮影手段10により得られた撮影画像において、スプロケットM1の中心位置を第1中心位置C1、スプロケット特徴部位M3の中心位置を第2中心位置C2、タイミングチェーン特徴部位M4の中心位置を第3中心位置C3として検出するように構成されることが好ましい。スプロケット特徴部位M3としては、例えば、キー溝が挙げられ、タイミングチェーン特徴部位M4としては、例えば、カラーポイントが挙げられる。なお、
図2では、分かりやすくするために、スプロケット特徴部位M3には左下斜線を付し、タイミングチェーン特徴部位M4には網掛けを付して示している。
【0018】
具体的には、中心検出手段20は、例えば、撮影手段10により得られた撮影画像から必要な部分を切取画像として切り取る画像切取手段21と、画像切取手段21により切り取った切取画像から、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4を検出する特徴位置検出手段22と、特徴位置検出手段22により検出したスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置、すなわち第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3を算出する中心算出手段23とを有していることが好ましい。なお、
図2(A)は、画像切取手段21により切り取った切取画像の一例を表す概念図であり、
図2(B)は、切取画像においてスプロケットM1として検出された箇所を破線枠F1で示し、スプロケット特徴部位M3として検出された箇所を一点破線枠F2で示し、タイミングチェーン特徴部位M4として検出された箇所を二点破線F3で示した概念図であり、
図2(C)は、検出したスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4から算出したそれらの中心位置(第1中心位置C1、第2中心位置C2、第3中心位置C3)を示す概念図である。
【0019】
特徴位置検出手段22は、公知の物体検知技術を用いることができ、例えば、検出するスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の正例となる学習画像を用いた機械学習を実行することにより、個別に特徴を学習させた特徴位置検出学習モデルを用いることが好ましい。特徴位置検出学習モデルは、例えば、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M2、又は、タイミングチェーン特徴部位M3を撮影した撮影画像から、該当部分を切り取った正例となる学習画像を複数枚用意し、深層学習により特徴を抽出する特徴位置検出学習モデル生成手段により生成することができる。深層学習には、畳み込みニーラルネットワークを用いることが好ましい。中心算出手段23は、公知の処理技術を用いることができ、例えば、中心位置として中心座標を算出するように構成されている。具体的には、例えば、特徴位置検出手段22により検出したスプロケットM1、スプロケット特徴部位M2、及び、タイミングチェーン特徴部位M3を個別に四角等の枠で囲み、それらの枠で囲まれた部分の中心座標を算出するように構成することが好ましい。
【0020】
すなわち、中心検出手段20は、例えば、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーンの特徴部位M4を、それぞれの特徴を個別に学習させた学習モデルを用いて検出し、第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3を算出するように構成されることが好ましい。
【0021】
判別手段30は、例えば、コンピュータにより構成することができ、プログラムを実行することにより、判別手段30として機能するように構成されている。判別手段30は、例えば、第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3の位置関係として、第1中心位置C1に対する第2中心位置C2と第3中心位置C3との位置関係に基づき、タイミングチェーンM2の駒ずれの有無を判別するように構成することが好ましい。スプロケットM1の回転状態により、スプロケット特徴部位M3およびタイミングチェーン特徴部位M4の位置がずれていても、相対的な位置関係から容易に駒ずれの有無を判別することができるからである。
【0022】
判別手段30は、例えば、
図3に示したように、第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ第1直線と、第1中心位置C1と第3中心位置C3とを結ぶ第2直線とのなす角θ1、又は、第1中心位置C1から第2中心位置C2に向かう第1ベクトルと、第1中心位置C1から第3中心位置C3に向かう第2ベクトルとのなす角θ2を算出し、得られた2直線のなす角θ1又は2つのベクトルのなす角θ2からタイミングチェーンM2の駒ずれの有無を判別するように構成することが好ましい。具体的には、判別手段30は、例えば、第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3の位置関係として第1直線と第2直線とのなす角θ1又は第1ベクトルと第2ベクトルとのなす角θ2を算出する角度算出手段31と、角度算出手段31により求めた角度、すなわち第1直線と第2直線とのなす角θ1又は第1ベクトルと第2ベクトルとのなす角θ2を閾値と比較してタイミングチェーンM2に駒ずれがあるか否かを判別する閾値比較手段32とを有していることが好ましい。
【0023】
閾値はスプロケットM1により異なり、任意に設定することができる。例えば、一例を挙げると、角度算出手段31で算出する角度が角θ1の場合には、閾値を1°から6°の範囲に設定し、閾値比較手段32において、角θ1が閾値の範囲内である場合には駒ずれ無し、閾値の範囲外である場合には駒ずれ有りと判断するように構成される。また、角度算出手段31で算出する角度が角θ2の場合には、閾値を174°から179°の範囲に設定し、閾値比較手段32において、角θ2が閾値の範囲内である場合には駒ずれ無し、閾値の範囲外である場合には駒ずれ有りと判断するように構成される。
【0024】
表示手段40は、例えば、判別手段30により判別されたタイミングチェーンの駒ずれの有無を表示するように構成される。更に、判別の根拠となる第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3の位置関係を表示できるようにしてもよい。
【0025】
図4は、制御・記録手段12、中心検出手段20、及び、判別手段30のハードウェア構成の一例を表すものである。制御・記録手段12、中心検出手段20、及び、判別手段30は、例えば、CPU(Center Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53と、HDD(ハードディスクドライブ)54と、操作インターフェース(操作I/F)55とを有している。CPU51は、ROM52に記録されている各種プログラム、又は、HDD54からRAM53にロードされた各種プログラムに従って各種の処理を実行するものである。RAM53には、CPU51が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶されている。HDD54には、各種データが記憶されている。
【0026】
このタイミングチェーン検査装置1は、例えば、次のようにして用いられる。
図5はタイミングチェーン検査装置1を用いたタイミングチェーン検査方法の流れを表すものである。まず、準備手順として、例えば、対象検出学習モデル生成手段により対象検出学習モデルを生成すると共に、特徴位置検出学習モデル生成手段により特徴位置検出学習モデルを生成する(準備手順;ステップS110)。
【0027】
具体的には、例えば、自動車のエンジンの生産ラインにおいて、検出対象であるスプロケットM1の側面を撮影手段10により撮影し、得られた撮影画像からスプロケットM1の画像を切り取った正例となる学習画像を複数用意し、深層学習により対象検出学習モデルを生成する。また、例えば、撮影手段10により撮影した撮影画像からスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の部分を切り取った正例となる学習画像を複数枚用意し、深層学習により個別に特徴を学習させた特徴位置検出学習モデルを生成する。
【0028】
次いで、例えば、生産ラインを搬送されるエンジンの部品Mについて、タイミングチェーンM2の駒ずれを検査する。まず、例えば、撮影手段10によりスプロケットM1と共にスプロケットM1に取り付けられたタイミングチェーンM2を撮影する(撮影手順;ステップS120)。具体的には、例えば、生産ラインを搬送されるエンジンの部品Mをカメラ11で映し、対象検出手段12Aにより対象検出学習モデルを用いて、カメラ11に映る画像からスプロケットM1を検出し(対象検出手順;ステップS121)、検出したスプロケットM1が画像の所定位置に移動してきたときに、記録手段12により画像を撮り記録する(記録手順;ステップS122)。その際、各スプロケットM1を個別に順次撮影するようにしてもよく、また、複数まとめて撮影するようにしてもよい。例えば、
図1に示したように、2個のスプロケットM1が近くに位置する場合には、近くに位置する2個のスプロケットM1を1つの撮影画像に入れるようにしてもよい。
【0029】
続いて、例えば、中心検出手段20により、撮影手順で得られた撮影画像において、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置を検出する(中心検出手順;ステップS130)。具体的には、例えば、まず、画像切取手段21により、撮影手順で得られた撮影画像から必要な部分を切取画像として切り取る(画像切取手順;ステップS131(
図2(A)参照))。次いで、例えば、特徴位置検出手段22により、画像切取手順で切り取った切取画像から、特徴位置検出学習モデルを用いて、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4を検出する(特徴位置検出手順;ステップS132(
図2(B)参照))。検出箇所は、例えば、四角等の枠で囲んで示される。続いて、例えば、中心算出手段23により、特徴位置検出手順で検出したスプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置、すなわち第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3の座標を算出する(中心算出手順;ステップS133(
図2(C)参照))。
【0030】
次に、例えば、判別手段30により、中心検出手順で算出した第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び、第3中心位置C3の位置関係に基づき、タイミングチェーンM2の駒ずれの有無を判別する(判別手順;ステップS140)。具体的には、角度算出手段31により、第1中心位置C1と第2中心位置C2とを結ぶ第1直線と、第1中心位置C1と第3中心位置C3とを結ぶ第2直線とのなす角θ1、又は、第1中心位置C1から第2中心位置C2に向かう第1ベクトルと、第1中心位置C1から第3中心位置C3に向かう第2ベクトルとのなす角θ2を算出し(角度算出手順;ステップS141(
図3参照))、閾値比較手段32において、得られた第1直線と第2直線とのなす角θ1又は第1ベクトルと第2ベクトルとのなす角θ2を閾値と比較してタイミングチェーンの駒ずれがあるか否かを判別する(閾値比較手順;ステップS142)。そののち、表示手段40により、判別手順による判別の結果等を表示する(表示手順;ステップS150)。
【0031】
このように本実施の形態によれば、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4の各中心位置を検出し、それらの位置関係に基づいてタイミングチェーンの駒ずれの有無を判別するようにしたので、スプロケットM1の回転状態により、スプロケット特徴部位M3およびタイミングチェーン特徴部位M4の位置がずれていても、相対的な位置関係から容易に駒ずれの有無を判別することができる。よって、例えば、スプロケットM1、スプロケット特徴部位M3、及び、タイミングチェーン特徴部位M4を、それぞれの特徴を個別に学習させた特徴位置検出学習モデルを用いて検出し、それらの中心位置を算出することができるので、スプロケットM1の回転状態を変化させた大量の学習画像を用意する必要がなく、必要な学習画像の枚数を少なくすることができる。また、タイミングチェーン検査装置1を、カメラ11などを含む撮影手段10と、中心検出手段20及び判別手段30として機能するコンピュータ等とにより構成することができ、簡単な構成とすることができる。
【0032】
更に、撮影手段10が、カメラ11と、制御・記録手段12とを有するように構成し、制御・記録手段12は、カメラ11に映る画像からスプロケットM1を検出し、検出したスプロケットM1が画像の所定位置に移動してきたときに画像を撮り記録するようにしたので、画像をトリガーとして自動で撮影画像を得ることができる。よって、リミットスイッチ等の設備側のトリガーが不要となり、装置を簡素化することができる。
【0033】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構造や形状は異なっていてもよく、また、上述した構成要素を全て備えていなくてもよく、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…タイミングチェーン検査装置、10…撮影手段、11…カメラ、12…制御・記録手段、12A…対象検出手段、12B…記録手段、20…中心検出手段、21…画像切取手段、22…特徴位置検出手段、23…中心算出手段、30…判別手段、31…角度算出手段、32…閾値比較手段、40…表示手段、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…HDD、55…操作インターフェース、M…部品、M1…スプロケット、M2…タイミングチェーン、M3…スプロケット特徴部位、M4…タイミングチェーン特徴部位