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特開2024-42940有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法、及び不純物取得装置
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  • 特開-有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法、及び不純物取得装置 図1
  • 特開-有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法、及び不純物取得装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042940
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法、及び不純物取得装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/00 20060101AFI20240322BHJP
   B01D 15/04 20060101ALI20240322BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20240322BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20240322BHJP
   B01J 41/05 20170101ALI20240322BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20240322BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20240322BHJP
   B01J 49/06 20170101ALI20240322BHJP
   B01J 49/07 20170101ALI20240322BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20240322BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20240322BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B01D15/00 J
B01D15/04
B01J39/05
B01J39/20
B01J41/05
B01J41/14
B01J47/02
B01J49/06
B01J49/07
B01J49/53
G01N30/00 C
G01N30/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147868
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】蔦野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】森野 翔太
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017AA06
4D017BA12
4D017CA13
4D017CA17
4D017CB10
4D017DA01
4D017DB01
4D017DB02
4D017DB10
(57)【要約】
【課題】有機溶媒中における低濃度の金属不純物を、安定かつ安全に取得することが可能な金属不純物取得方法及び金属不純物取得装置を提供すること。
【解決手段】有機溶媒を吸着体に通液して該有機溶媒中の金属不純物を該吸着体に吸着又は捕捉させる吸着・捕捉工程と、前記吸着体に超純水又は高純度ガスを流して、該吸着体内に残っている有機溶媒を当該超純水又は高純度ガスで置換する、置換工程と、該吸着体に溶離液を通液して、該吸着体に吸着された金属不純物を溶離・回収する溶離・回収工程と、を有することを特徴とする不純物取得方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法であって、
前記有機溶媒を吸着体に通液して該有機溶媒中の金属不純物を該吸着体に吸着又は捕捉させる吸着・捕捉工程と、
前記吸着体に超純水又は高純度ガスを流して、該吸着体内に残っている有機溶媒を当該超純水又は高純度ガスで置換する、置換工程と、
該吸着体に溶離液を通液して、該吸着体に吸着された金属不純物を溶離・回収する溶離・回収工程と、
を有することを特徴とする不純物取得方法。
【請求項2】
前記置換工程における超純水又は高純度ガスを流す方向は、吸着・補足工程における有機溶媒の通液方向と同じ方向であるか、及び/又は、
前記溶離工程における溶離液の通液方向は、吸着・補足工程における有機溶媒の通液方向と対向する方向(反対方向)である、請求項1に記載の不純物取得方法。
【請求項3】
前記吸着体に通液される有機溶媒は、有機溶媒供給源から有機溶媒供給先に有機溶媒を供給するための有機溶媒供給ラインを流れる有機溶媒の少なくとも一部を分取したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の不純物取得方法。
【請求項4】
前記吸着体に通液された有機溶媒を、当該有機溶媒を精製する精製部材に通液して精製し、当該精製部材で精製された有機溶媒を前記有機溶媒供給ラインに戻すことを特徴とする請求項3に記載の不純物取得方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がイソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酪酸ブチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、メトキシプロピオン酸メチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、シクロペンタノン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、イソ酪酸イソブチル、ウンデカン、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、エチルシクロヘキサン、メシチレン、デカン、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、ピルビン酸メチル、及び、シュウ酸ジメチルからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不純物取得方法。
【請求項6】
前記有機溶媒中の金属不純物の少なくともいずれか1つの金属元素の濃度が10ng/L以下であることを特徴とする請求項5に記載の不純物取得方法。
【請求項7】
前記吸着体がモノリス状有機多孔質イオン交換体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不純物取得方法。
【請求項8】
有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得装置であって、
前記有機溶媒が通液され、当該有機溶媒中の金属不純物を吸着又は捕捉する吸着体と、
前記吸着体内に残っている有機溶媒を置換するために該吸着体に超純水又は高純度ガスを供給する流体供給ラインと、
前記吸着体に吸着された金属不純物を溶離・回収するために該吸着体に溶離液を通液する溶離液供給ラインと、
を有する、不純物取得装置。
【請求項9】
前記不純物取得装置は、有機溶媒供給源から供給先に有機溶媒を供給するための有機溶媒供給ラインから分岐する分岐ラインに接続されていることを特徴とする請求項8に記載の不純物取得装置。
【請求項10】
前記吸着体に通液された有機溶媒を、当該有機溶媒を精製する精製部材と、
前記精製部材で精製された有機溶媒を前記有機溶媒供給ラインに戻す返送ラインと、を有することを特徴とする請求項9に記載の不純物取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法及び不純物取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体など電子部品製造工程では高純度な流体が使用される。電子部品製造工程で使用される流体の一つである有機溶媒も高純度(高清浄度)が要求される。
有機溶媒は超純水に比べて多くの不純物を含んでいるが、電子部品の微細化により有機溶媒中の不純物も更なる低減化が求められている。そして、要求される不純物レベルが厳しくなるにしたがって、分析評価技術への要求も厳しくなっている。
【0003】
有機溶媒の分析方法として、マイクロ波で蒸発濃縮(乾固)して試料を分析する方法(特許文献1及び2)、分析対象の金属と錯体を形成し得るキレート剤を含む溶液を通水し、錯体を捕獲し得る充填剤で溶液を濃縮、分析する方法(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-141721号公報
【特許文献2】特開2002-005799号公報
【特許文献3】特開2009-288021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、低濃度の分析を行うために蒸発濃縮などの前処理を行っているが、不純物の濃度が低くなればなるほど、多量の有機溶媒をサンプリングボトルに回収する必要があり、全体としての分析コストが高くなってしまう。更に、有機溶媒の種類によっては、蒸発操作やボトル輸送における安全面、排液の発生による環境負荷という課題もある。
また、有機溶媒中の金属不純物の分析を行う場合、有機溶媒中の金属は状態が安定していない、または微粒子のような形態となっているために、サンプリングボトルに金属が付着してしまい分析値がばらつき、正しい分析ができないという課題もある。
特許文献3に記載の方法では、分析対象の金属が錯体を形成し得る種類に限られてしまう。更に、有機溶媒中に含まれる低濃度の金属不純物を分析するためには更なる改良が必要である。
したがって、本発明の課題は、有機溶媒中における低濃度の金属不純物を、安定かつ安全に取得することが可能な不純物取得方法及び不純物取得装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得方法であって、
前記有機溶媒を吸着体に通液して該有機溶媒中の金属不純物を該吸着体に吸着又は捕捉させる吸着・捕捉工程と、
前記吸着体に超純水又は高純度ガスを流して、該吸着体内に残っている有機溶媒を当該超純水又は高純度ガスで置換する、置換工程と、
該吸着体に溶離液を通液して、該吸着体に吸着された金属不純物を溶離・回収する溶離・回収工程と、
を有することを特徴とする不純物取得方法を提供するものである。
また、本発明は、前記の不純物取得分析前処理方法で得られた溶離・回収液中の金属元素の分析を行う、有機溶媒中の金属不純物の分析方法を提供するものである。
また本発明は、有機溶媒中の金属不純物を取得する不純物取得装置であって、
前記有機溶媒が通液され、当該有機溶媒中の金属不純物を吸着又は捕捉する吸着体と、
前記吸着体内に残っている有機溶媒を置換するために該吸着体に超純水又は高純度ガスを供給する流体供給ラインと、
前記吸着体に吸着された金属不純物を溶離・回収するために該吸着体に溶離液を通液する溶離液供給ラインと、
を有する、不純物取得装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機溶媒中における低濃度の金属不純物を、安定かつ安全に取得することが可能な不純物取得方法及び不純物取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の有機溶媒中の金属不純物取得方法の一形態例を実施するフロー図である。
図2図2は、本発明の有機溶媒中の金属不純物取得方法の他の形態例を実施するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されない。
【0010】
本発明の有機溶媒中の金属不純物の取得方法は、吸着・捕捉工程と、置換工程と、溶離・回収工程とを有する。
【0011】
吸着・捕捉工程は、有機溶媒を吸着体に通液して、有機溶媒中の金属不純物を吸着体に吸着又は捕捉させる工程である。
分析対象となる有機溶媒としては、半導体製造工程で使用される有機溶媒等が挙げられ、具体的には、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酪酸ブチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、メトキシプロピオン酸メチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、シクロペンタノン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、イソ酪酸イソブチル、ウンデカン、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、エチルシクロヘキサン、メシチレン、デカン、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、ピルビン酸メチル、及び、シュウ酸ジメチル等が挙げられる。
【0012】
有機溶媒は、好ましくはLi、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Sr、Mo、Ag、Cd、Sn、Sb、Ba、W、Au、Pb又はPt等の元素のうちのいずれか1種又は2種以上の元素の金属不純物を含んでおり、これらの金属不純物は、イオン性不純物、コロイド状や単分散等の微粒子、錯体の状態で存在している。
【0013】
分析対象の有機溶媒中の金属不純物濃度は、特に制限されないが、本発明の不純物取得方法は、金属不純物濃度が低い場合に特に優れた効果を発揮するので、分析対象の有機溶媒中の金属不純物の濃度は、好ましくは100ng/L以下、より好ましくは10ng/L以下、特に好ましくは1ng/L以下である。なお、分析対象の有機溶媒中に複数種類の元素の金属不純物が含まれている場合には、少なくとも1つの元素の金属不純物の濃度が上述の範囲であっても良いし、全ての元素の金属不純物の濃度が上述の範囲であっても良い。
【0014】
有機溶媒中の金属不純物を吸着又は捕捉させる吸着体は、特に制限されないが、例えば、モノリス状有機多孔質イオン交換体、多孔質膜、イオン交換樹脂等のイオン交換基を有した材料が挙げられる。
【0015】
モノリス状有機多孔質イオン交換体は、骨格が有機ポリマーにより形成されており、骨格間に反応液の流路となる連通孔を多数有する多孔質体にイオン交換基が導入されたものであれば、特に制限されないが、例えば、特開2010-234357の段落〔0019〕~〔0028〕に記載されている第1のモノリスイオン交換体が挙げられる。
【0016】
第1のモノリスイオン交換体は、モノリスにイオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30~300μm、好ましくは30~200μm、特に35~150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。
【0017】
第1のモノリスイオン交換体は、特開2010-234357の段落〔0029〕~〔0051〕に記載されているとおり、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5~16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、を行なうことにより得られる。
【0018】
また、モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、特開2010-234357の段落〔0052〕~〔0061〕に記載されている第2のモノリスイオン交換体を挙げることもできる。
第2のモノリスイオン交換体は、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3~5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1~60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10~100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5~5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3~5mg当量/mlであり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しているものである。
【0019】
第2のモノリスイオン交換体は、特開2010-234357の段落〔0062〕~〔0083〕に記載されているとおり、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3~5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にイオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
【0020】
樹脂(ゲル型)は、スチレンとジビニルベンゼンを触媒と分散剤との共存下において共重合した後、官能基を導入することによって合成される。共重合体は三次元架橋構造となっており、母体は細孔(メソポア)を有している。
【0021】
樹脂(MR型)は、スチレンとジビニルベンゼンを共重合させる際に、有機溶剤を添加し重合させた後、官能基を導入することによって合成される。共重合体は、巨大網目構造となっており、母体は細孔(メソポア)を有しているだけでなく、小さな粒状のゲル粒子が集塊して形成された空間(マクロポア)を有している。
【0022】
これら吸着体の中でも、モノリス状有機多孔質イオン交換体は、以下の理由から好ましく使用される。
・他の吸着体に比べ、吸着又は捕捉された金属不純物が溶離液により溶離され易く、溶離液の使用量を少なくできるので、吸着体への分析対象の有機溶媒の通液量を少なくすることができる。
・分析対象の有機溶媒の通液速度を高くすることができるため、短時間で多量の通液が可能であり、吸着・捕捉工程にかける時間を非常に短くすることができる。
・吸着体としてモノリス状有機多孔質イオン交換体を使用して得られた溶離・回収液は酸添加状態になるため、ボトル等に金属が付着しないことから、保存(保管)に優れる。
【0023】
吸着・捕捉工程において、吸着体に通液する分析対象の有機溶媒の量は、分析対象の有機溶媒中の金属不純物の含有量、吸着体の種類や厚み、通液速度等により、適宜選択される。なお、分析工程において得られる溶離液(回収液)中の各金属不純物の含有量から、分析対象の有機溶媒中の各金属不純物の含有量を算出するときに、吸着体に通液された分析対象の有機溶媒の総量が必要となる。そのため、吸着・捕捉工程においては、吸着体に通液した分析対象の有機溶媒の総量を計測する。
【0024】
吸着・捕捉工程において、吸着体に分析対象の有機溶媒を通液するときの通液条件は、特に制限されないが、通液速度は、SV(空間速度)が、好ましくは2000 h-1以下、より好ましくは1000h -1以下、特に好ましく200h-1以下である。また、LV(線速度)が、好ましくは1000m/h以下、特に好ましくは500m/h以下である。また、通液時間は、分析対象の有機溶媒の総通液量と通液速度により、適宜選択される。
【0025】
そして、吸着・捕捉工程において、分析対象の有機溶媒中のイオン性不純物、コロイド状や単分散等の微粒子、錯体等の状態で存在している金属不純物が、吸着体に捕捉される。
【0026】
置換工程は、吸着・捕捉工程において、分析対象の有機溶媒を通液した後、吸着体が格納されているフローセル内、特には吸着体内に残っている有機溶媒を置換する工程である。
具体的には、吸着体に超純水又は高純度ガスを流して、吸着体内に残っている有機溶媒を超純水又は不活性ガスで置換する、工程である。
なお、吸着体内とは、吸着体がモノリスの場合は、モノリスの網目状構造の空間(マクロポア)、母体の三次元架橋構造の細孔(メソポア)等が考えられる。
また吸着体が樹脂(ゲル型)の場合は、吸着体内とは、母体の三次元架橋構造の細孔(メソポア)等が考えられる。
また樹脂(MR型)の場合は、吸着体内とは、ゲル微小ビーズ集合体の空間(マクロポア)、母体の三次元架橋構造の細孔(メソポア)等が考えられる。
【0027】
超純水とは、比抵抗値が2MΩ・cm以上の水を意味する。超純水中の金属不純物の濃度は低いほど好ましいが、金属不純物の濃度として1ng/L未満、より好ましくは0.1ng/L未満、特に好ましくは0.05ng/L未満である。
高純度ガスとしては、純度99.9%以上のガスが好ましく、純度99.99%以上のガスが特に好ましく、ガス中の不純物は少ない程好ましい。ガスの種類としては、不活性ガスや、空気(大気)や酸素等が挙げられる。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の希ガスが挙げられる。高純度ガスに含まれる不純物とは、不活性ガスの場合、メタン、酸素、二酸化炭素、水などを示し、空気及び酸素の場合は、微粒子、水分などを示す。
【0028】
置換工程において、超純水を使用する場合、吸着体に通液する超純水の量は、吸着体の種類や厚み、通液速度等により、適宜選択される。また吸着体に超純水を通液するときの通液条件は、特に制限されないが、通液速度は、SVが、好ましくは20000h -1以下、より好ましくは10h -1以上、4000h -1以下である。また、LVが、好ましくは1000m/h以下、特に好ましくは1m/h以上、80m/h以下である。また、通液時間は、超純水の総通液量と通液速度により、適宜選択される。
【0029】
置換工程において、高純度ガスを使用する場合、吸着体に供給する高純度ガスの量は、吸着体の種類や厚み、供給速度等により、適宜選択される。高純度ガスを吸着体に供給するときの供給条件は、特に制限されないが、供給速度は、SVが、好ましくは10000h -1以下、特に好ましくは5000h -1以下である。また、供給時間は、高純度ガスの総供給量と供給速度により、適宜選択される。
【0030】
置換工程においては、超純水及び高純度ガスを流す方向は、いずれも、吸着・補足工程における有機溶媒の通液方向と同じ方向であることが好ましい。このような方向とすることにより、超純水又は高純度ガスを流した時に吸着体に吸着されていた不純物が脱離しても、下流側で再度吸着体に吸着させることができる。
置換工程における置換処理により、吸着体に残っていた有機溶媒が超純水や不活性ガスに置換され、吸着体には有機溶媒が残っていない。そのため、溶離・回収工程において、吸着体に溶離液として酸を含有する水溶液を通液しても、酸との反応性を有する有機溶媒が酸と接触することがないため、安全性が保たれる。
【0031】
溶離・回収工程は、置換工程により有機溶媒が置換され、金属不純物が吸着・捕捉されている吸着体に溶離液を通液し、吸着体から排出される排出液、すなわち、吸着体に吸着・捕捉されている金属不純物を溶離させて回収液を得る(回収する)工程である。
【0032】
溶離液は、酸を含有する水溶液である。溶離液に含有される酸としては、特に制限されず、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらのうち、溶離液に含有される酸としては、吸着体からのイオン性不純物元素が溶離し易く、また、高純度の試薬が必要である点から、硝酸、硫酸、塩酸が好ましい。
【0033】
溶離液中の酸濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1N以上、3.0N以下である。また、溶離液としては、各金属不純物の濃度が100ng/L以下のものが好ましく、各金属不純物の含有量が10ng/L以下の硝酸又は塩酸がより好ましく、各金属不純物の含有量が1ng/L以下の硝酸又は塩酸が特に好ましい。
【0034】
溶離工程における溶離液の通液方向は、吸着・補足工程における有機溶媒の通液方向と対向する方向(反対方向)であることが好ましい。
吸着・補足工程にて吸着体に通液された有機溶媒中の不純物量は通液方向に従って減少するため、濃縮工程において溶離液をこのような方向で通液することで、より少ない量の溶離液を用いて高い回収率を得ることができる。
溶離・回収工程では、吸着体に吸着・捕捉されていた分析対象の有機溶媒中の金属不純物が、溶離液により溶離され、溶離液中に移行し、吸着体に吸着・捕捉されていた金属不純物を含有する溶離液(回収液)が得られる。
【0035】
本発明の不純物分析方法は、本発明の不純物取得方法における溶離・回収工程で得られた金属不純物を含む溶離液(回収液)中の金属元素の分析を行う。
【0036】
溶離・回収液中の各金属不純物の含有量を測定する方法としては、特に制限されず、プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いる方法、プラズマ発光分光分析装置(ICP)、原子吸光光度計、イオンクロマト分析装置等が挙げられる。測定条件は、適宜選択される。
【0037】
本発明の分析方法では、分析を行うことにより得られる溶離・回収液中の各金属不純物の含有量と、溶離・回収液の回収量と、吸着・捕捉工程において、イオン吸着体に通液した分析対象の有機溶媒の総通液量とから、分析対象の有機溶媒中の各金属不純物の含有量を求める。
【0038】
次に、本発明の有機溶媒中の金属不純物の取得方法及び分析方法の実施形態の一例について説明する。
例えば、図1に示すように、有機溶媒20が、ユースポイントや有機溶媒貯蔵タンク等の有機溶媒供給先12に供給される有機溶媒供給ライン13において、その途中に、分岐ライン14を繋ぎ、分岐ライン14に、吸着体、好ましくは、モノリス状有機多孔質イオン交換体を備えるフローセル17及び積算流量計18を備えた金属不純物取得キット16、好ましくは金属不純物取得キット16の後段に有機溶媒を精製する精製部材19を取り付け、金属不純物取得キット16(精製部材19を設置する場合は、当該精製部材19)の後段に、金属不純物取得キット16(精製部材19を設置する場合は、当該精製部材19)を通過した有機溶媒20を有機溶媒供給ラインに13戻す返送ライン15 を繋ぎ、返送ライン15の他端側を、有機溶媒供給ライン13の、分岐ライン14を繋げた部位に対し、下流側に繋げることにより、構成される。
そして、有機溶媒供給ライン13、分岐ライン14を経て、フローセル17に分析対象である有機溶媒20を供給して、有機溶媒20をモノリス状有機多孔質イオン交換体に通液し、不純物の吸着・捕捉工程を行う。このとき、積算流量計18で、フローセル17(モノリス状有機多孔質イオン交換体)への有機溶媒20の通液総量を測定する。金属不純物取得キット16を通過した有機溶媒は、返送ライン15を経由して、有機溶媒供給ライン13に返送される。金属不純物取得キット16を通過した有機溶媒20の返送は、金属不純物取得キット16内又は金属不純物取得キット16外に設けられたポンプ(不図示)により行われてもよい。次いで、所定量の有機溶媒20が通液された後、金属不純物取得キット16を分岐ライン14から取り外す。このとき、金属不純物取得キット16の内部へ、外部からのコンタミが起こらない方法で取り外すと共に、内部を密閉する。次いで、有機溶媒供給ライン13とは違う場所に設けられている置換装置に、金属不純物取得キット16を取り付け、置換装置の供給部より、超純水又は不活性ガスあるいは両方を金属不純物取得キット16のフローセル17に対し、吸着・捕捉工程における有機溶媒の通液方向と同じ方向で供給し、フローセル17内、特にモノリス状有機多孔質イオン交換体内に残っている有機溶媒20を置換する置換工程を行う。次いで、金属不純物取得キット16を溶離・回収装置に取り付け、溶離・回収装置の溶離・回収液供給管より、金属不純物取得キット16のフローセル17に対し、溶離液を、吸着・捕捉工程における有機溶媒の通液方向とは対抗する方向で、(反対の方向で、フローセル16内のモノリス状有機多孔質イオン交換体に、通液し、金属不純物取得キット16からの溶離・回収液を回収し、溶離・回収工程を行う。次いで、溶離・回収液中の金属不純物の含有量を測定し、分析工程を行う。そして、以上の結果から、有機溶媒20中の各金属不純物含有量を求める。
なお、本実施形態では、分析前処理キット16がモノリス状有機多孔質イオン交換体を備えるフローセル17及び積算流量計18を備える構成を説明したが、金属不純物取得キット16がモノリス状有機多孔質イオン交換体を備えるフローセル17を備え、積算流量計18を分析前処理キット16の外部(後段)に設ける構成としても良い。
また、金属不純物取得キット16を分岐ライン14から取り外す場合、モノリス状有機多孔質イオン交換体を備えるフローセル17を分岐ライン14から取り外して、積算流量計18は分岐ライン14に取り付けた状態としても良い。
【0039】
別の例としては、図2に示す例が挙げられる。
図2に示すように、有機溶媒供給ライン13は、その途中に、有機溶媒精製装置11が設けられていてもよい。
図2に示す有機溶媒供給ライン13では、原料薬液10が、有機溶媒精製装置11に供給され、有機溶媒精製装置11で得られる有機溶媒20が、有機溶媒供給先12に供給される。そして、分岐ライン14は、有機溶媒供給ライン13の途中であって、有機溶媒精製装置11の下流側に繋がれ、その分岐ライン14に、金属不純物取得キット16が取り付けられる。この金属不純物取得キット16は、図1で説明した金属不純物取得キット16と同様に構成される。金属不純物取得キット16の後段には、金属不純物取得キット16を通過した有機溶媒20を返送する返送ラインを繋げる。この返送ラインは、返送ライン15の他端側を、有機溶媒供給ライン13の、分岐ライン14を繋げた部位に対し、下流側に繋げて、有機溶媒を有機溶媒供給ライン13に返送してもよく(返送ライン15A)、有機溶媒精製装置11の上流側に返送してもよい(返送ライン15B)。
その他の点については、図1における説明がそのまま適用される。
【0040】
図2に示される有機溶媒精製装置11とは、金属不純物取得キット16を通過した有機溶媒20が電子部品製造で使用されるための液質の基準値を満たすように精製できる部材であればよく、例えばイオン交換樹脂、微粒子除去膜等が挙げられる。
【0041】
吸着・捕捉工程と、置換工程と、溶離工程とを含む本発明の不純物取得方法と、本発明の不純物分析方法、の全てを、分析対象の有機溶媒の製造が行われている場所で行ってよいし、本発明の不純物取得方法における吸着・捕捉工程とは別の場所(装置)で、本発明の不純物取得方法における置換工程、溶離工程及び本発明の不純物分析方法を行ってもよいし、本発明の不純物取得方法における吸着・捕捉工程、置換工程及び溶離工程を同じ場所(装置)で行い、それらを行う場所(装置)とは別の場所(装置)で、本発明の不純物分析方法を行ってもよいし、本発明の取得方法における、吸着・捕捉工程と、置換工程と、溶離工程と、本発明の不純物分析方法と、を、それぞれ別の場所(装置)で行ってもよい。
【0042】
次に、本発明の不純物取得装置について、図1に示される実施形態について説明する。
本発明の有機溶媒中の金属不純物の不純物取得装置は、図1に示されるように、分析対象の有機溶媒を供給先12に供給するための有機溶媒供給ライン13から分岐する分岐ライン14に接続され、吸着体を備え、分析対象の有機溶媒を吸着体に通過させるためのフローセル17と、該フローセル17を通過した分析対象の有機溶媒の量を計測するための積算流量計18と、 を備えた金属不純物取得キット16と、積算流量計18を通過した有機溶媒を有機溶媒供給ライン13に戻す返送ライン15と、を有する。
不純物取得装置は、金属不純物取得キット16を通過した有機溶媒の返送手段として、金属不純物取得キット16内又は金属不純物取得キット16外にポンプが設置されていてもよい。
【0043】
不純物取得装置に備えられている金属不純物取得キット16は、分岐ライン14と返送ライン15により、有機溶媒供給ライン13に繋がっており、分析対象の有機溶媒は、分岐ライン14を経由して金属不純物取得キット16に送液され、金属不純物取得キット16内を通過した後、返送ライン15により、有機溶媒供給ライン13に返送される。
このように、本発明の不純物取得装置16では、分析対象の有機溶媒は、有機溶媒供給ライン13に戻され、排液が再利用されるため、排液の発生が低減される。
【0044】
金属不純物取得キット16は、前述のとおり、吸着体を備えたフローセル17と、積算流量計18と、を有している。
【0045】
イオン吸着体を備えるフローセル17は、液を通水するための導入口および導出口が設けられた、イオン吸着体を収納できる容器であればよく、樹脂製あるいは金属製で作成される。
フローセルに備えられる吸着体は、本発明の有機溶媒中の金属不純物取得方法における吸着・捕捉工程で説明した吸着体であり、モノリス状有機多孔質イオン交換体を好ましく用いることができる。
積算流量計は、導入される液の量を計測し積算できるものであれば、特に制限されない。
【0046】
金属不純物取得キット16の後段には、好ましくは精製部材19が設けられていてもよい。なお、精製部材19は、通常、金属不純物取得キット16の後段(外部)に設けられるが、金属不純物取得キット16の内部に設けることもできる。
精製部材19は、有機溶媒中に含まれる金属不純物以外の微粒子等を吸着・捕捉して、フローセルを通過した有機溶媒を精製する役割を果たす。精製部材19としては、有機溶媒の精製に使用されるものであれば、特に制限されないが、イオン交換体または精密ろ過膜(MF)や限外ろ過膜(UF)等が挙げられ得る。これらの部材をそれぞれ単独で使用しても良い。また、これらの部材を任意の組み合わせで使用しても良い。
【0047】
金属不純物取得キット16は、フローセル内の吸着体に、分析対象の有機溶媒を供給する供給管、と、置換するための超純水を供給する供給管21あるいは高純度ガスを供給する供給管22と、溶離・回収液を供給するための供給管と、吸着体から排出される排出液を排出する排出管23又は排出ガスを排出する排出管24と、を有してしても良い。 積算流量計の派出口を排出液又は排出ガスを金属不純物取得キット16外に排出するための排出管として使用しても良い。
【0048】
金属不純物取得キット16は、金属不純物取得キット16を分析対象の有機溶媒が供給される管から取り外した後、内部へのコンタミが起こらないように、内部を密閉するための密閉手段が付設されている。
【実施例0049】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0050】
特開2010-234357号公報に係る明細書の実施例の参考例17と同様の方法で、第2のカチオン形モノリスイオン交換体を製造した。具体的には下記に記載する方法にて第2のカチオン形モノリスイオン交換体を製造した。
【0051】
<カチオン形モノリスイオン交換体の製造>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5~20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
【0052】
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径110mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0053】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは17μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは41μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。
【0054】
(共連続構造のカチオン形モノリスイオン交換体(CEM)の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径75mm、厚み約15mmの円柱状に切断した。モノリスの重量は18gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して共連続構造を有するカチオン形モノリスイオン交換体(CEM)を得た。
【0055】
(アニオン形モノリスイオン交換体の製造)
上記の方法で製造したCEMを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離して、アニオン形モノリスイオン交換体(AEM)を得た。
【0056】
参考例1 ボトル保管試験
有機溶媒(IPA)中の各金属含有量の濃度が、200ng/L程度になるように模擬液を調製し、100mlのPFA製のボトルに保管し、保管初日(原液)(0 day)、3日(3 days)、6日(6 days)、10日(10 days)、17日(17 days)経過後の、ボトル中の各金属不純物の濃度を、有機溶媒用ICP-MS(アジレントテクノロジー社製、8900)にて測定し、各金属のボトルへの吸着の影響を評価した。
【0057】
評価は、(1)模擬液、以下の手順にて得られた(2)溶離液(回収原液)を実施した。評価結果として、保管初日から17日経過後までの各経過日ごとの保管初日(0 day)の濃度に対する変化率(%)を、表1に示した。
【0058】
(溶離液(回収原液))
製造例1で製造したCEMを、直径10mm×高さ50mmの形状に切り出し、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製の充填容器に充填した。次いで、模擬液100mlを、SV=200h-1で、CEMを充填した容器に通液し、続いて、2N硝酸100mlをSV=200h-1で、CEMを充填した容器に通液し、PFAボトルに回収し、溶離液(回収原液)とした。
【0059】
【表1】
【0060】
以上の結果より、有機溶媒中の金属不純物の分析では、イオン吸着体に有機溶媒中の金属不純物を吸着させた後に、ボトルに回収するため、金属不純物の分析値のばらつきがなく、分析値が安定することが確認された。
【0061】
実施例1
(吸着・捕捉工程)
製造例1で製造したCEM又はAEMを、直径10mm×高さ50mmの形状に切り出し、PFA製の充填容器に充填した。次いで、有機溶媒(IPA)中の各金属含有量の濃度が、200ng/L程度になるように模擬液100mlを、SV=200h-1で、CEM又はAEMを、充填した各容器に通液した。
【0062】
(置換工程)
通液後の、CEM又はAEMを充填した各容器に対し、以下の2つの方法により容器内のIPAを置換した。
・方法A(以下、表2中では「A」と記載)
超純水を100ml/minで30秒間、模擬液と同一方向に、容器内に通液し、容器内のIPAを置換後、Nで100ml/minで1分間 パージした。
・方法B(以下、表2中では「B」と記載)
で100ml/minで模擬液と同一方向に、1分間パージし、容器内のIPAを置換した。
【0063】
(溶離・回収及び分析工程)
2N硝酸100mlを模擬液又はNと対向する方向(反対方向)に、SV=100h-1で、容器に通液し、PFAボトルに回収した。
回収した原液の分析をICP-MS(アジレントテクノロジー社製、8900)にて行った。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
以上の結果から、置換工程として、方法Aを採用した場合に、金属不純物の回収率が向上することが実証された。またモノリスとして、AEMを使用すると、CEMで回収できない金属不純物の分析が可能であることが実証された。
【符号の説明】
【0066】
10 原水
11 有機溶媒精製装置
12 有機溶媒供給先
13 有機溶媒供給ライン
14 分岐ライン
15、15A、15B 返送ライン
16 金属不純物取得キット
17 フローセル
18 積算流量計
19 精製部材
20 有機溶媒
21 高純度ガス供給管
22 超純水供給管
23 ガス排出管
24 排出液排出管
図1
図2