(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042942
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】靴干し具
(51)【国際特許分類】
D06F 57/08 20060101AFI20240322BHJP
D06F 57/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
D06F57/08 A
D06F57/02 A
D06F57/02 D
D06F57/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147871
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】300063002
【氏名又は名称】株式会社サーパストレーディング
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100105418
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 聖
(72)【発明者】
【氏名】山田 勉
(57)【要約】
【課題】不使用時にコンパクトに保管できる靴干し具を提供する。
【解決手段】自立状態で利用され、靴を浮かせた状態で支持できる靴干し具1であって、基部2と、基部2の周囲を取り囲むように離間して配置されて靴Sを掛けることができる杆部材3A~3Dと、を備え、杆部材3A~3Dは上下方向の中央側が基部2に枢支されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立状態で利用され、靴を浮かせた状態で支持できる靴干し具であって、
基部と、該基部の周囲を取り囲むように少なくとも3本離間して配置されて靴を掛けることができる杆部材と、を備え、
前記杆部材は、上下方向の中央側が前記基部に枢支されていることを特徴とする靴干し具。
【請求項2】
前記基部は、平面視で正多角形を成し、各側面に平行に前記杆部材が枢着されていることを特徴とする請求項1に記載の靴干し具。
【請求項3】
前記基部は長尺であり、長手方向の上端部が少なくとも前記杆部材の上端部まで伸びていることを特徴とする請求項1に記載の靴干し具。
【請求項4】
前記基部の長手方向の上端部には、フック部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の靴干し具。
【請求項5】
前記杆部材は4本であり、前記基部を挟んで対向する2組のうち一方の組の前記杆部材は、前記基部の幅寸法よりも小さい幅寸法で形成され、他方の組の前記杆部材は、前記基部の幅寸法よりも大きい幅寸法の幅広部を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の靴干し具。
【請求項6】
前記他方の組の前記杆部材は、棒状部と該棒状部の上端に水平方向に回転可能に接続された先端部とを有しており、前記先端部は二股構造であることを特徴とする請求項5に記載の靴干し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立状態で利用され、浮かせた状態で靴を支持できる靴干し具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗濯後等の濡れた運動靴や、ウォータースポーツ後の濡れたブーツなどを乾燥させる目的で利用される靴干し具がある。このような靴干し具としては、物干し竿等に掛けるハンガータイプのものが広く知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の靴干し具は、物干し竿等に掛けるフックと、上方に延出する2本のアーム状の部材とを有し、これらアーム状の部材を靴の内側に差し込むことで、靴の内側に風を入れ易くし、かつ靴の履き口が下を向いて内部の水気が外に出やすくなっている。このようなハンガータイプのものは、日当たりがよい場所や風通しのよい場所を選んで靴干し具を掛けることができる反面、フックを掛ける対象物がない場所での利用はできない。
【0003】
対して、地面や床面に自立する靴干し具がある(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の靴干し具は、地面や床面に自立する平面視略十字の支持台と、支持台から上方に起立する支柱と、支柱の周囲に固定されて上方に延出する靴掛とを備え、靴掛に靴の内側に差し込む態様となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用新案昭59-157670号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開平4-15094号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のような靴干し具は、地面や床面に自立させるため、フックを掛ける対象物がない場所でも使用できる。また、靴がそれぞれ支持される靴掛が支柱に対して放射状に延びており、靴同士が離間して風通しがよくなっており、効果的に乾燥させることができる。このような靴干し具は、不使用時には通行の邪魔になり易いため、邪魔にならない場所に収納し保管することが好ましいが、上述したように放射状に延びる靴掛を有していることから、靴干し具を安定させて自立させるために、支持台は堅牢な平面視略十字の構造となっており、保管に大きなスペースを要するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不使用時にコンパクトに保管できる靴干し具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の靴干し具は、
自立状態で利用され、靴を浮かせた状態で支持できる靴干し具であって、
基部と、該基部の周囲を取り囲むように少なくとも3本離間して配置されて靴を掛けることができる杆部材と、を備え、
前記杆部材は、上下方向の中央側が前記基部に枢支されていることを特徴としている。
この特徴によれば、杆部材をそれぞれ基部に対して同じ方向に傾斜させた状態とすることで、これら杆部材は下端部が互いに離間し、これら下端部が床面や地面に対して接地する脚となる。そして、これら杆部材はそれぞれ傾斜方向に隣接する杆部材の上方に凭れてそれ以上の傾動が規制されるようになり、互いの上端部を十分に離間させて展開でき、各杆部材に支持させた靴を効果的に乾かすことができる。また、杆部材を平行に揃えるようにして収束させることで、靴干し具をスリムな棒状に変形でき、不使用時にコンパクトに保管でき、かつ携帯性に優れる。
【0008】
前記基部は、平面視で正多角形を成し、各側面に平行に前記杆部材が枢着されていることを特徴としている。
この特徴によれば、杆部材が基部の周囲に等配できるとともに、基部と杆部材とを平行に対向させることで接触可能面積を確保し、杆部材と基部との枢着箇所にかかる応力を分散して破損を防ぐことができる。
【0009】
前記基部は長尺であり、長手方向の上端部が少なくとも前記杆部材の上端部まで伸びていることを特徴としている。
この特徴によれば、基部の上端部を把持して杆部材の展開や収束を行いやすい。
【0010】
前記基部の長手方向の上端部には、フック部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、床面に自立させる以外にも、物干し竿等にフック部で吊支させた状態でも靴を掛け乾燥させることができる。
【0011】
前記杆部材は4本であり、前記基部を挟んで対向する2組のうち一方の組の前記杆部材は、前記基部の幅寸法よりも小さい幅寸法で形成され、他方の組の前記杆部材は、前記基部の幅寸法よりも大きい幅寸法の幅広部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、収束状態では、一方の組の杆部材は基部の両側から張り出す他方の組の杆部材同士の間に挟まれて配置され、不意に展開方向に回動してしまうことを防止できる。
【0012】
前記他方の組の前記杆部材は、棒状部と該棒状部の上端に水平方向に回転可能に接続された先端部とを有しており、前記先端部は二股構造であることを特徴としている。
この特徴によれば、二股構造の先端部に靴本体部のくるぶし部を把持でき、履き口が外側斜め下方を向くように支持されることで、靴の内部へ空気が入り込みやすくなるとともに、履き口から水分を効率よく排出することができ、効率よく乾かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る実施例1の靴干し具が展開状態で床面に自立している様子を示す斜視図である。
【
図2】靴干し具の基部の構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図4】一方の組の杆部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【
図5】他方の組の杆部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【
図8】基部における杆部材が枢着される接続部を示す一部拡大図である。
【
図9】靴が支持された展開状態の靴干し具の斜視図である。
【
図10】(a)は杆部材の先端部に把持される以前の靴の筒状の部位の形状を示すイメージ図であり、(b)は杆部材の先端部に把持されて変形した靴の筒状の部位の形状を示すイメージ図である。
【
図11】実施例2の靴干し具の基部と杆部材との枢着構造を示す一部拡大分解図である。
【
図12】(a)から(c)は基部に対する杆部材の角度変更を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る靴干し具を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例1に係る靴干し具につき、
図1から
図10を参照して説明する。
【0016】
靴干し具は、洗濯後等の濡れた運動靴や、ウォータースポーツ後の濡れたサーフブーツなどを乾燥させる目的で利用され、本実施例の靴干し具は特にサーフブーツを乾燥させるのに有用な構造を有している。
【0017】
図1に示されるように、靴干し具1は、基部2と基部2の周囲を取り囲むようにそれぞれ周方向に離間して配置される4本の杆部材3A~3Dとから主に構成されている。
【0018】
基部2は、長尺の棒状部4と、棒状部4の長手方向の一方端(上端)に設けられたフック5とを有している。
図2に示されるように、棒状部4は、合成樹脂で形成され、4つの側面41A~41Dを有する平面視で略矩形状を成している。隣接する側面が交差する角部はR面取されている。フック5は、棒状部4の上端4aに形成された凹部(図示略)に枢着され、棒状部4に対して水平方向に回動可能かつ軸方向に離脱不能に接続されている。
【0019】
棒状部4は、長手方向の他方端(下端)側に前述の杆部材3A~3Dが接続される接続部40を有している。接続部40を構成する棒状部4の各側面41A~41Dには、後に詳述する凹部42が形成されている。また、凹部42を棒状部4の長手方向(上下方向)に挟んで凸部43が設けられている。凹部42は棒状部4の側面の幅方向の中心に配置されている。
【0020】
図2(a)に示されるように、上下の凸部43,43はそれぞれ同一形状であり、側面視で六角形を成している。上下の凸部43,43は凹部42に対して棒状部4の長手方向に同じ距離で離間して配置されており、これら凸部43、凹部42、凸部43が棒状部4の長手方向に沿って直線状に配設されている。また、上下の凸部43,43同士は、六角形を成す各辺(側面43a)がそれぞれ平行になるように、同一の位相で設けられている。
【0021】
図3に示されるように、杆部材3A~3Dは、それぞれ杆部材3Aと杆部材3C、杆部材3Bと杆部材3Dがそれぞれ同形状であり、杆部材3Aと杆部材3Cは基部2を挟んで対向配置され、同様に杆部材3Bと杆部材3Dも基部2を挟んで対向配置されている。
【0022】
次いで、
図4を用いて杆部材3Bについて説明する。杆部材3Dは杆部材3Bと同形状であるため、ここでは説明を省略する。杆部材3Bは、合成樹脂で長尺の略矩形状に形成され、上端部31aと下端部31bに外向き凸のラウンドを持つ。
【0023】
杆部材3Bは、厚み方向の表側と裏側とに外縁に沿って周壁32をそれぞれ有し、厚み方向の中央部に平板部33を有するリブ構造になっている。平板部33の裏面33aには、棒状部4の接続部40に形成された凹部42に枢着される回転軸34が形成されている。これにより、杆部材3Bは棒状部4の接続部40に対して揺動可能かつ離脱不能に接続されている。回転軸34は、杆部材3Bの幅方向の中央に配設されている。杆部材3Bは平板部33が棒状部4の側面41Bに対向し、かつ周壁32と側面41Bとが近接するように取り付けられている。
【0024】
次いで、
図5を用いて杆部材3Aについて説明する。杆部材3Cは杆部材3Aと同形状であるため、ここでは説明を省略する。杆部材3Aは、棒状部35と棒状部35の一方端部(上端部)に水平方向に回転可能に枢着された先端部36とからなる。
【0025】
棒状部35は、厚み方向の表側と裏側とに外縁に沿って周壁32をそれぞれ有し、厚み方向の中央部に平板部33を有するリブ構造になっている。棒状部35は、合成樹脂で長尺の略矩形状に形成され、下端部31bに外向き凸のラウンドを持つ。杆部材3Aの棒状部35は平板部33が基部2の棒状部4の側面41Aに対向し、かつ周壁32と側面41Aとが近接するように取り付けられている。
【0026】
棒状部35の平板部33の裏面33aには、棒状部4の接続部40に形成された凹部42に枢着される回転軸34が形成されている。これにより、杆部材3Aは棒状部4の接続部40に対して揺動可能かつ離脱不能に接続されている。回転軸34は、杆部材3Aの幅方向の中央に配設されている。
【0027】
また、棒状部35の上端部を構成する周壁32は、壁厚が他に比べて大きく形成され、この周壁に軸方向に向けて上端に開口する凹部37が形成されており、この凹部37に先端部36の下端に形成された回転軸38が枢着されている。
【0028】
先端部36は、先端から長手方向の中心部まで開放された二股構造を成しており、二股構造を構成する2本の延出部39を含む全体において、厚み方向の表側と裏側とに外縁に沿って周壁32’をそれぞれ有し、厚み方向の中央部に平板部33’を有するリブ構造になっている。
【0029】
先端部36の棒状部35側の端部の幅寸法L1は、棒状部35側と略同一であり、そこから長手方向の中央に向けて漸次幅寸法が大きくなり、二股構造の延出部39の根元近傍で最大となる。この最大の幅寸法を有する幅広部36cの幅寸法L2は、当然ながら幅寸法L1よりも大きく、かつ基部2の幅寸法L3(
図2(b)参照)よりも大きい。
【0030】
図3に示されるように、基部2の側面41Aに杆部材3Aが、側面41Bに杆部材3Bが、側面41Cに杆部材3Cが、側面41Cに杆部材3Cが、それぞれ平板部33(33’)の裏面が対向するように配置され、それぞれ回動可能に枢着されている。
【0031】
図3に示されるように、杆部材3Bの幅寸法L4は基部2の側面41B側の幅寸法L5より僅かに小さい。杆部材3Aの先端部36の棒状部35側の端部の幅寸法L1及び棒状部35の幅寸法L1’(
図5参照)は、杆部材3Bの幅寸法L4と略同寸であり、基部2の側面41A側の幅寸法L6より僅かに小さい。尚、杆部材3Bの幅寸法L4は基部2の側面41B側の幅寸法L5と同一でもよく、杆部材3Aの棒状部35の幅寸法L1’は基部2の側面41A側の幅寸法L6と同一でもよい。
【0032】
杆部材3Aの先端部36の最大幅の幅広部36cの幅寸法L2は基部2の側面41A側の幅寸法L6より大きく、かつ杆部材3A~3Dの収束時(
図3参照)には、杆部材3B及び3Dは杆部材3Aの先端部36と杆部材3Cの先端部36との間に挟まれて配置される。また、杆部材3Bの下端から回転軸34の中心までの寸法と、杆部材3Aの下端から回転軸34の中心までの寸法とは、同一となっている。
【0033】
次いで、
図1,
図6~10を用いて、靴干し具1の使用方法の一例を説明する。靴干し具1は、不使用時には、
図6に示されるように、杆部材3A~3Dをすべて基部2と平行にして棒状の収束状態にすることができる。
【0034】
杆部材3Bの上端から回転軸34の中心までの寸法L7(
図4(b)参照)及び、杆部材3Aの上端から回転軸34の中心までの寸法L8(
図5(b)参照)は、基部2の凹部42の中心から棒状部4の上端4aまでの寸法L9(
図2(a)参照)と同一となっており、
図6に示される収束状態では、棒状部4の上端4aと杆部材3A~3Dの上端部31aとが揃い、美観に優れるとともに、特に杆部材3A,3Cの先端部が張り出さず、携行時に引っかけて破損することを抑制できる。
【0035】
このように、収束状態では杆部材3A~3Dと基部2が平行に揃い、靴干し具1がスリムな棒状に変形されることから、不使用時にコンパクトに保管できる。また、細身で把持しやすいため携帯性に優れる。加えて、靴干し具1は、4本の杆部材3A~3Dの回転軸34より下方がそれぞれ地面に当接する脚となるため、砂浜などの平坦でない地面に対しては杆部材3A~3Dの下部を適宜挿し込むことで、安定して自立させることができる。
【0036】
また、収束状態では、杆部材3B及び3Dは杆部材3Aの先端部36と杆部材3Cの先端部36との間に挟まれて配置されるため、杆部材3B,3Dは杆部材3A,3Cにより回転軸34を中心とした回動が規制され、不意に展開状態に変形することが効果的に防止される。
【0037】
図1は、靴干し具1を展開状態とし、床面F上に自立させた状態を示す図である。まず、靴干し具1の展開する手順を説明する。杆部材3A~3Dは、それぞれ側面視で同じ方向に向けて回転軸34を中心として回動操作される。ここでは、向かって反時計回りにそれぞれ回動操作しているが、それぞれ時計回りに回動操作してもよい。そして、杆部材3A,3Cの先端部36を棒状部35に対して水平方向に90度回動させる。
【0038】
図7は、展開状態の靴干し具1を上面から見た図であり、
図1と
図7に示されるように、杆部材3Aの回転軸34より上部が杆部材3Bの回転軸34より下部に、杆部材3Bの回転軸34より上部が杆部材3Cの回転軸34より下部に、杆部材3Cの回転軸34より上部が杆部材3Dの回転軸34より下部に、杆部材3Dの回転軸34より上部が杆部材3Aの回転軸34より下部に、それぞれ凭れた状態となる。
【0039】
図8は、杆部材3Cが回転軸34を中心として反時計回りに回動操作された様子を示す図であり、説明の便宜上、杆部材3Aの図示を省略している。
図8に示されるように、基部2が備える接続部40に形成された凸部43,43は、杆部材3Bの幅方向に対向する周壁32,32と平板部33とで囲われた肉抜きの空間内または、杆部材3Cの棒状部35の幅方向に対向する周壁32,32と平板部33とで囲われた肉抜きの空間内に配置されている。
【0040】
そして、凸部43の回転軸34を中心として反時計回りに回動操作された杆部材3Bの幅方向に対向する周壁32,32または、杆部材3C幅方向に対向する周壁32,32が上下の凸部43の側面43aとそれぞれ当接することで、これら杆部材3Bまたは杆部材3Cの回動範囲が規定されている。本実施例では、凸部43は正六角形であるため、外角はそれぞれ60度であり、側面43aに面で当接した杆部材3B及び杆部材3Cは、基部2に対して最大で30度で傾斜した状態にすることができる。尚、杆部材3B及び杆部材3Cは凸部43に対して反時計回りと時計回りのいずれに回動させた際にも当接する。
【0041】
このように、杆部材3A~3Dは、それぞれ傾斜方向に隣接する杆部材の上方に凭れて回動範囲が規制されるようになっているとともに、凸部43との当接によっても回動範囲が規制されるようになっている。
【0042】
図1に示されるように、展開状態の靴干し具1は、杆部材3A~3Dの下端部31bをそれぞれ床面Fに当てることで、床面F上に自立させることができる。この状態では、杆部材3A~3Dの下端部31bが床面F側に当接していることから、これら杆部材3A~3Dは時計方向への回動が規制されており、隣接する杆部材の回転軸34より下部に凭れることで反時計方向への回動が規制されるようになっている。
【0043】
図9に示されるように、靴Sは、杆部材3A,3Cにおける先端部36の二股構造を構成する2本の延出部39,39の間に把持されて支持される。詳しくは、靴Sの靴底部SLが基部2側を向き、履き口Hが外側斜め下方を向くようにして、靴本体部SBが延出部39,39の間に把持されるのが好ましい。
【0044】
本実施例において靴Sは、いわゆるサーフブーツであり、くるぶし部AKを含む靴本体部SBがネオプレーンなどの変形しやすい柔軟性を有する素材で構成され、靴底部SLがゴム等の靴本体部SBと比較して変形しにくい素材で構成されている。また、運動靴などに比べて靴本体部SBは履き口Hまである程度の長さを有している。
【0045】
先端部36は、延出部39,39の内側の根元に湾曲凹部36aを有して、内面が略U字状を成しており、靴本体部SBが把持された靴Sは、延出部39,39の間で案内されながら、自重で延出部39,39の根元まで押し込まれ、湾曲凹部36aにくるぶし部AKが押圧される。これにより、くるぶし部AK部分が湾曲凹部36aの内面形状に沿うように変形し、先端に履き口Hを有する筒状の部位Tが縦方向に延びるように広がる(
図10(b)参照)。尚、
図10はイメージ図であり、筒状の部位Tにおける延出部39,39に挟まれる箇所の断面を示している。
【0046】
これにより、靴Sの内部へ空気が入り込みやすくなるとともに、湾曲凹部36aに沿って広げられた状態で形状が安定した、くるぶし部AKを通って履き口Hまで靴Sの内部の水分が誘導されやすく、水分を効率よく排出することができ、効率よく乾かすことができる。
【0047】
また、延出部39,39の離間幅は靴底部SLより小さく、延出部39,39が靴底部SLの長手方向に沿うため接触面積が大きく、靴Sの落下を確実に支持できる。
【0048】
また、杆部材3A,3Cは、くるぶし部AK近傍を把持し、塑性変形しにくい素材である靴底部SLが延出部39,39の上方に位置してこれら延出部39,39の間から抜け落ちないようにした構成であることから、靴Sの特に柔軟性の高い靴本体部SBの一部に局所的に杆部材3A,3Cが接触し、靴Sの型崩れが生じる虞がない。
【0049】
また、先端部36は、靴Sの重量を受ける延出部39,39の根元部分が最大の幅寸法を有する幅広部36cであることから、必要最低限の部位に構造強度を確保しながら、小型化及び軽量化を達成している。
【0050】
また、杆部材3A,3Cの上端部31aと湾曲凹部36aの最下端までの寸法は、湾曲凹部36aの最下端から回転軸34までの距離の略2倍となっており、上端部31aと湾曲凹部36aの最下端までの寸法が比較して大きいことが一見して分かるため、利用者には、履き口Hから遠い爪先側ではなく、履き口Hから近いくるぶし部AK側を湾曲凹部36a側に位置させるように誘導することができる。
【0051】
また、靴底部SLを下にすると、延出部39,39に把持された靴本体部SBは柔軟性が高いために変形し、延出部39,39の間に引っかかることなく靴Sが脱落してしまうため、利用者には靴底部SLが上になるように誘導することができる。
【0052】
また、
図7に示されるように、棒状部35に対して水平回転させた先端部36は、平面視において湾曲凹部36aが基部2と左右(前後)に一部重なるように形成されており、延出部39,39に把持された靴Sが靴干し具1の重心となる基部2に近接し、水に濡れて重くなった靴Sも安定的に支持することができる。
【0053】
また、上端部31aに靴Sが掛けられた杆部材3A,3Cが隣接する杆部材3B,3Dの回転軸34より下部に凭れかかることで、これら杆部材3B,3Dの回転軸34の反時計方向への回動が抑制され、より強固に靴干し具1の展開状態が保持されるようになっている。
【0054】
また、ここでは図示しないが、杆部材3B,3Dの上端部31aには、グローブを掛けることができる。
【0055】
また、靴干し具1は、収束状態と展開状態のいずれにおいてもフック5を用いて物干し竿等に吊支させることができる。展開状態で吊支させた際には、杆部材3A~3Dは、それぞれ凸部43との当接によって回動範囲が規制されるようになっている。
【0056】
また、杆部材3A,3Cは、先端部36の最大幅の幅広部36cの幅寸法L2が棒状部35の幅寸法L1’よりも大であるため、展開状態で先端部36が上下方向を向いた状態では、先端部36の幅広部36cが基部2に干渉することで、収束方向への回動が規制されるようになっている。
【0057】
また、基部2は平面視で正多角形を成し、各側面41A~41Dに平行に杆部材3A~3Dがそれぞれ枢着され、このように基部2と杆部材3A~3Dとを平行に対向させることで接触可能面積を確保し、杆部材3A~3Dと基部2との枢着箇所にかかる応力を分散して破損を効果的に防ぐことができる。
【0058】
また、基部2は長尺であり、長手方向の上端4aが杆部材3A~3Dの上端部31aまで伸びているため、基部2の上部を把持して杆部材3A~3Dの展開や収束を行いやすい。
肉抜きの空間内にて、弧状の周壁32Aと周壁32とは弧状の面によって交わっており、左右一方の周壁32には、肉抜きの空間内に膨出する突起145Aが形成されている。弧状の周壁32Aと突起145Aとは同じ曲率半径の円弧で連続して形成されており、この曲率半径は円形の凸部43Aの曲率半径と等しく、これら弧状の周壁32Aと突起145Aとが交わる箇所は凸部43Aが係止される係止部144Aを構成している。また、同様の構成により、係止部144Bと突起145Bとが形成されている。
このように、杆部材3A’~3D’は、凸部43Aが係止部144Aに、凸部43Bが144Bに、それぞれ係止されることで、収束状態と展開状態とにおいて、それぞれ基部2’との相対的な回動が簡易的に規制され、収束状態と展開状態を保持することができる。
以上、本発明の実施例と変形例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、杆部材3A~3Dの展開状態を維持するための回動規制手段については、上記したような凸部43を用いた構成に限らず、例えば凹部42と回転軸34との枢着部分に高摩擦部材を用いたり、弾性変形可能な一時的な係止手段を設けるなどしてもよい。