(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042950
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】水力機械およびその運転モード切替方法
(51)【国際特許分類】
F03B 15/04 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F03B15/04 F
F03B15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147888
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】宮武 晃平
(72)【発明者】
【氏名】小山 創
(72)【発明者】
【氏名】中薗 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】児島 貴信
(72)【発明者】
【氏名】森戸 のり子
【テーマコード(参考)】
3H073
【Fターム(参考)】
3H073AA08
3H073AA26
3H073BB09
3H073BB12
3H073CC05
3H073CC19
3H073CE02
3H073CE04
3H073CE09
(57)【要約】
【課題】運転モードを短時間で切り替えられる水力機械およびその運転モード切替方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の水力機械は、鉄管を開閉する入口弁と、ドラフトチューブを開閉するドラフトゲートと、前記ドラフトチューブに設けられるドラフトゲート側路を開閉するドラフトゲート側路弁と、前記入口弁、前記ドラフトゲート、および前記ドラフトゲート側路弁の開閉を制御する制御装置と、を備える水力機械であって、ランナを大気圧空気で空転させる調相運転から通常運転へ運転モードを切り替える場合に、前記制御装置は、前記ドラフトゲート側路弁が開いたと判定した場合に、前記ドラフトゲートを開く制御信号を前記ドラフトゲートに送信し、前記ドラフトゲートが全開したと判定した場合に、ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信し、前記通常運転を開始するよう制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上池に接続する鉄管を開閉する入口弁と、
ランナが配置されるランナ室の下方に接続するドラフトチューブを開閉するドラフトゲートと、
前記ドラフトチューブに設けられて前記ドラフトゲートをバイパスするドラフトゲート側路を開閉するドラフトゲート側路弁と、
前記入口弁、前記ドラフトゲート、および前記ドラフトゲート側路弁の開閉を制御する制御装置と、を備える水力機械であって、
前記ランナを大気圧空気で空転させる調相運転から水車運転またはポンプ運転である通常運転へ運転モードを切り替える場合に、前記制御装置は、
前記ドラフトゲート側路弁が開いたことを判定し、
前記ドラフトゲート側路弁が開いたと判定した場合に、前記ドラフトゲートを開く制御信号を前記ドラフトゲートに送信し、
前記ドラフトゲートを開く制御信号の前記送信後、前記ドラフトゲートが全開したと判定した場合に、ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信し、
前記ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信後、前記入口弁が全開し、かつ前記ガイドベーンが開いたと判定した場合に前記通常運転を開始するよう制御する水力機械。
【請求項2】
前記水力機械は、前記ドラフトチューブに設けられる給気管を開閉する給気弁と、
前記ドラフトチューブに設けられる排水管を開閉する排水弁と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記ドラフトゲート側路弁が開いたことを判定する前に、前記ガイドベーン、前記給気弁、および前記排水弁が全閉したことを判定し、
前記ガイドベーン、前記給気弁、および前記排水弁が全閉したことを判定した場合に、前記ドラフトゲート側路弁を開く制御信号を前記ドラフトゲート側路弁に送信する請求項1に記載の水力機械。
【請求項3】
前記制御装置は、前記給気弁および前記排水弁が全閉したことを判定する前に、前記給気弁および前記排水弁を閉じる制御信号を前記給気弁および前記排水弁に送信する請求項2に記載の水力機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記入口弁が開いたことを判定する前に、前記ガイドベーンが全閉したことを判定し、
前記ガイドベーンが全閉したことを判定した場合に、前記入口弁を開く制御信号を前記入口弁に送信する請求項1から3いずれかに記載の水力機械。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ガイドベーンが全閉したことを判定する前に、前記ガイドベーンを閉じる制御信号を前記ガイドベーンに送信する請求項4に記載の水力機械。
【請求項6】
前記水力機械は、プライミング圧力を計測する水圧計をさらに備え、
前記制御装置は、前記ドラフトゲートを開く制御信号の送信後、前記ドラフトゲートが全開し、さらには前記プライミング圧力が所定以上であることを判定した場合に、前記ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信する請求項1に記載の水力機械。
【請求項7】
上池に接続する鉄管を開閉する入口弁と、ランナが配置されるランナ室の下方に接続するドラフトチューブを開閉するドラフトゲートと、前記ドラフトチューブに設けられて前記ドラフトゲートをバイパスするドラフトゲート側路を開閉するドラフトゲート側路弁と、前記入口弁、前記ドラフトゲート、および前記ドラフトゲート側路弁の開閉を制御する制御装置とを備え、水車運転またはポンプ運転である通常運転および前記ランナを大気圧空気で空転させる調相運転を行う水力機械に関する前記調相運転から前記通常運転への運転モード切替方法であって、
前記ドラフトゲート側路弁が開いたことを前記制御装置が判定した場合に、前記制御装置が前記ドラフトゲートを開く制御信号を前記ドラフトゲートに送信するステップと、
前記制御装置が前記ドラフトゲートを開く制御信号の前記送信するステップの後に前記ドラフトゲートが全開したことを前記制御装置が判定した場合に、前記制御装置がガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信するステップと、
前記制御装置が前記ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信するステップの後、前記入口弁が全開し、かつ前記ガイドベーンが開いたと判定した場合に前記通常運転を開始するステップと、
を備える水力機械の運転モード切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水力機械およびその運転モード切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の需給調整へのニーズが高まっており、ポンプ水車などの水力機械の運転モードを切り替えて需給調整に対応する方法が知られている。一般的な水力機械の運転モードには、水車運転と、ポンプ運転と、調相運転とがあり、需給調整のために電力系統からの電力を吸収する際には調相運転で水力機械を運転する。高速な需給調整に対応するためには、水力機械の運転モードを水車運転やポンプ運転といった通常時の運転モードから、調相運転に早く切り替える必要がある。
【0003】
一般的な水力機械は、上池に接続する鉄管と、ケーシングと、ランナ室に収容されるランナと、発電機と、下池に接続するドラフトチューブとを備える。水車運転における水力機械は、上池からの水が鉄管とケーシングとを経てランナに流入して、水の仕事によりランナが回転する。ランナの回転によって生じた回転エネルギーは、主軸を介してランナと接続する発電機に伝達され、発電機が回転エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電する。ランナで仕事を終えた水はドラフトチューブを流れ下池へ流出する。ポンプ運転では、系統から発電機に電気エネルギーを供給し、発電運転とは逆方向にランナを回転させ、下池の水を上池に汲み上げる。つまり、水車運転およびポンプ運転では、ランナを収容するランナ室内を水が満たしている。
【0004】
ところで、調相運転においては、ランナのトルクを低減するために、ランナ室内の水を排出してランナを空転させる。したがって、水車運転およびポンプ運転から調相運転に切り替える際は、ランナ室内に空気を給気して水を排水することで、ランナ室内の水面をランナよりも低く下げる必要がある。それとは反対に、調相運転から水車運転およびポンプ運転に切り替える際は、ランナ室内の空気を排気して水で満たす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、水車運転およびポンプ運転から調相運転に切り替える際は、ランナ室内に高圧空気を給気することで排水し、ランナ室内の水面を押し下げていた。したがって、調相運転から水車運転およびポンプ運転に切り替える際には、この高圧空気が急激に膨張しないように、ランナ室内の高圧空気を排気してからランナ室内に水を満たす必要があり、運転モードの切り替えに時間がかかっていた。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、運転モードを短時間で切り替えられる水力機械およびその運転モード切替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態の水力機械は、上池に接続する鉄管を開閉する入口弁と、ランナが配置されるランナ室の下方に接続するドラフトチューブを開閉するドラフトゲートと、前記ドラフトチューブに設けられて前記ドラフトゲートをバイパスするドラフトゲート側路を開閉するドラフトゲート側路弁と、前記入口弁、前記ドラフトゲート、および前記ドラフトゲート側路弁の開閉を制御する制御装置と、を備える水力機械であって、前記ランナを大気圧空気で空転させる調相運転から水車運転またはポンプ運転である通常運転へ運転モードを切り替える場合に、前記制御装置は、前記ドラフトゲート側路弁が開いたことを判定し、前記ドラフトゲート側路弁が開いたと判定した場合に、前記ドラフトゲートを開く制御信号を前記ドラフトゲートに送信し、前記ドラフトゲートを開く制御信号の前記送信後、前記ドラフトゲートが全開したと判定した場合に、ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信し、前記ガイドベーンを開く制御信号を前記ガイドベーンに送信後、前記入口弁が全開し、かつ前記ガイドベーンが開いたと判定した場合に前記通常運転を開始するよう制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る水力機械の構成を示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る水力機械のガイドベーンが全閉状態の場合の運転モード切替の処理例を示すフローチャート。
【
図3】第1実施形態に係る水力機械のガイドベーンが開状態の場合の運転モード切替の処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る水力機械の子午面断面図である。ここでは、水力機械としてフランシス水車を一例に説明する。フランシス水車1は、鉄管10と、入口弁12と、ケーシング14と、ガイドベーン16と、上カバー18と、下カバー20と、ランナ22と、主軸24と、発電機26と、ドラフトチューブ28と、制御装置40と、を備える。なお、以降の説明において発電機26側を回転軸線C上方向、ドラフトチューブ28側を回転軸線C下方向とする。
【0011】
鉄管10は、その内部を水が流れる流路であり、上池(図示省略)と後述するケーシング14とを接続する。鉄管10は、閉状態となることで上池側とケーシング14側との間の水の流れを止める入口弁12を備える。
【0012】
ケーシング14は、後述するランナ22の外周側に渦巻き状に設けられる。また、ケーシング14の内周側には、回転軸線Cに対する周方向(以下、周方向と呼称する)に所定の間隔をあけて複数配置されるステーベーン(図示省略)が設けられる。ステーベーンは、ケーシング14から流出する水をガイドベーン16に導くためのものである。上池から鉄管10を通過してケーシング14に流入した水は、ケーシング14を通過した後、ステーベーンおよび後述のガイドベーン16を順次通過してランナ22に供給される。なお、ケーシング14は通常、巻き始め(上池側)から巻き終わり(ランナ22側)にかけてその断面直径が徐々に小さくなるように形成されている。
【0013】
ガイドベーン16は、ステーベーンの内周側かつランナ22の外周側に、周方向に所定の間隔をあけて複数配置される。ガイドベーン16は、各々が回転可能であり、その開度を制御することにより、隣り合うガイドベーン16の間に形成される流路の流路面積を変化させることができる。したがって、ガイドベーン16はその開度を制御することにより、水車内を流れる水の水量を調整することができる。
【0014】
上カバー18と下カバー20とは、上カバー18が回転軸線C上方向から、下カバー20が回転軸線C下方向から互いに対向するように、ケーシング14の内周側に設けられる。上カバー18と下カバー20とは、ステーベーン、ガイドベーン16、および後述のランナ22を上下から挟むように収容する。
【0015】
ランナ室21は、ケーシング14と後述のドラフトチューブ24とに接続される。ランナ室21は、上カバー18と下カバー20とがガイドベーン16よりも内周側に形成する空間であり、その内部にランナ22を収容する。ランナ室21には、ランナ室21内のプライミング圧力を測定する水圧計21aが設けられる。測定したプライミング圧力の値は、後述する制御装置40に送信する。
【0016】
ランナ22は、回転軸線Cを中心として回転可能にランナ室21に配置され、主軸24を介して発電機26と連結している。主軸24は、ランナ22の回転軸であり、発電機26が連結されている。水車運転においては、ランナ22の回転エネルギーが主軸24を介して発電機26に伝達されると、発電機26が発電する。
【0017】
なお、発電機26は、電動機としての機能も備え、電力が供給されることによりランナ22を回転駆動するように構成されても良い。この場合には、後述するドラフトチューブ28を介して下池(図示省略)の水を吸い上げて上池に放出させることができ、フランシス水車1をポンプ水車としてポンプ運転することが可能になる。
【0018】
ドラフトチューブ28は、ランナ室21と下池とを接続し、その内部を水が流れる流路である。ドラフトチューブ28は、給気管30と、排水管32と、ドラフトゲート34と、ドラフトゲート側路36とを備える。
【0019】
給気管30は、ドラフトチューブ28に大気圧空気を供給する流路であり、閉状態で給気管30のドラフトチューブ28側と大気側との間の空気の流れを止める給気弁30aを備える。排水管32は、ドラフトチューブ28内の水を下池に排水するための流路であり、閉状態で排水管32のドラフトチューブ28側と下池側との間の水の流れを止める排水弁32aを備える。ドラフトゲート34は、閉状態でドラフトチューブ28の上池側と下池側との間の水の流れを止めるゲートである。ドラフトゲート側路36は、ドラフトゲート34をバイパスしてドラフトチューブ28の上池側と下池側とを接続する流路であり、閉状態でドラフトゲート側路36の上池側と下池側との間の水の流れを止めるドラフトゲート側路弁36aを備える。なお、ドラフトゲート34は例えばドラフト弁などの弁でも良く、閉状態でドラフトチューブ28の上池側と下池側との間の水流を止められる構成であれば良い。
【0020】
制御装置40は、入口弁12と、ガイドベーン16と、給気弁30aと、排水弁32aと、ドラフトゲート34と、ドラフトゲート側路弁36aとの開閉を制御する装置であり、制御信号を駆動装置(図示省略)に送信し、駆動装置はその信号に従ってこれら機器を開閉駆動する。また、制御装置40は、入口弁12と、ガイドベーン16と、給気弁30aと、排水弁32aと、ドラフトゲート34と、ドラフトゲート側路弁36aとにそれぞれ設けられてこれらの開閉を検出する開度検出装置(図示省略)に接続している。制御装置40は、この開度検出装置から送られる開度検出信号に基づいて、これら機器の開閉状態を判定することができる。
【0021】
このようなフランシス水車1における水の流れを説明する。このとき、入口弁12、ガイドベーン16、およびドラフトゲート34は開状態であり、給気弁30a、排水弁32a、およびドラフトゲート側路弁36aは全閉状態である。水車運転の場合は、まず、上池からの水が鉄管10、入口弁12、ケーシング14、ステーベーン、およびガイドベーン16を順次通過してランナ22に供給される。この水の仕事を受けてランナ22が回転すると、その回転エネルギーが回転軸24を介して発電機26に伝達されて発電する。ランナ22で仕事をした後の水は、ドラフトチューブ28を流れ下池(図示省略)に供給される。一方でポンプ運転の場合は、水車運転時とは逆に、発電機26に供給された電気エネルギーによってランナ22が回転する。このランナ22の回転によって、下池の水をドラフトチューブ28、ランナ22、ガイドベーン16、ステーベーン、ケーシング14、入口弁12、および鉄管10を順次通過させて上池に供給する。
【0022】
以降の説明では、上述のような水車運転およびポンプ運転を総称して通常運転とする。この通常運転の際には、ランナ室21内は水で満たされている。
【0023】
一方で調相運転の場合には、ランナ22のトルクを低減するために、ランナ室21内の水を排水してランナ22を空転させる。このとき、入口弁12、ガイドベーン16、ドラフトゲート34、給気弁30a、排水弁32a、およびドラフトゲート側路弁36aは閉状態である。したがって、通常運転と調相運転との間で運転モードを切り替える場合には、ランナ室21内の水の給水・排水や、各種弁の開閉制御をする必要がある。
【0024】
次に、フランシス水車1の運転モードを通常運転から調相運転に切り替える場合の制御について一例を説明する。通常運転時には、入口弁12を全開とし、ガイドベーン16を運転状況に応じた開度とした状態でフランシス水車1を運転している。このとき、給気弁30a、排水弁32a、およびドラフトゲート側路弁36aは全閉であり、ドラフトゲート34は全開である。
【0025】
通常運転から調相運転への切替指令が管理者から制御装置40へ入力されると、まずガイドベーン16を全閉し、ガイドベーン16が全閉した後に入口弁12とドラフトゲート34とを全閉する制御信号を制御装置40が出力する。入口弁12とドラフトゲート34とは、制御信号にしたがって駆動装置により同時に閉方向に駆動され始め、まずドラフトゲート34が先に全閉する。入口弁12が全閉する前、かつドラフトゲート34が全閉した後、給気弁30aと排水弁32aとを全開する制御信号を制御装置が出力する。給気弁30aと排水弁32aとは、制御信号にしたがって駆動装置により同時に開方向に駆動されて全開する。給気弁30aと排水弁32aとが開いた後、給気管30からドラフトチューブ28に大気圧空気が給気され、この給気に伴ってドラフトチューブ28内の水が排水管32から排水される。これら給気および排水によって、ランナ室21内を満たしていた水の水面が、ドラフトチューブ28の所定の高さまで下がる。また、入口弁12は、給気弁30aと排水弁32aとが全開した後に全閉が完了する。このとき、ドラフトチューブ28に設けられる水面計(図示省略)によって、ドラフトチューブ28内の水面高さを計測しても良い。水面が所定の高さまで下がると、給気弁30aおよび排水弁32aを全閉し、ランナ20を回転させて調相運転を開始する。
【0026】
なお、調相運転中には、ドラフトチューブ28内の水の水面揺動によってランナ室21内に水が浸入したり、ランナ22を冷却する冷却水をランナ22に供給したりする場合がある。この水は、回転するランナ22によってガイドベーン16側に滞留する可能性がある。したがって、調相運転中にガイドベーン16を開けることでこの水を排水しても良い。
【0027】
また、上述のように、調相運転中にドラフトチューブ28内の水面が上昇した場合は、給気管30および排水管32を全開し、給気と排水をすることでこの水面を押し下げても良い。
【0028】
次に、調相運転から通常運転に運転モードを切り替える場合の制御について
図2および3を参照して説明する。調相運転では、上述のように、ガイドベーン16が全閉状態の場合と開状態の場合とがあるので、それぞれの場合について説明する。ここで、調相運転から通常運転に切り替える指令が入力される時点では、入口弁12およびドラフトゲート34は全閉とし、給気弁30aおよび排水弁32aは全開とした状態で調相運転を行っているものとする。
【0029】
【0030】
まず、管理者が、制御装置40に調相運転から通常運転への切替指令を入力する(S100)。
【0031】
次に、制御装置40は、入口弁12を全開する制御信号と、給気弁30aおよび排水弁32aを全閉する制御信号とを同時に駆動装置に出力し、入口弁12を開き、給気弁30aおよび排水弁32aを開じる(ステップS102)。なお、入口弁12を開き始める制御と、給気弁30aおよび排水弁32aを閉じ始める制御とは同時でなくても良いが、より早く運転モードを切り替えるために同時であることが好ましい。また、あらかじめ給気弁30aおよび排水弁32aが全閉状態の場合は、これらを閉じる制御を省略しても良い。
【0032】
次に、制御装置40は、給気弁30aおよび排水弁32aの開度検出装置(図示省略)からそれぞれ開度検出信号を受信して、給気弁30aおよび排水弁32aが共に全閉したか否かを判定する(ステップS104)。給気弁30aおよび排水弁32aが共に全閉していると制御装置40が判定した場合(ステップS104のYES)、制御装置40は、ドラフトゲート側路弁36aを全開する制御信号を駆動装置に出力してドラフトゲート側路弁36aを開く(ステップS106)。一方、制御装置40が給気弁30aおよび排水弁32aが全閉していないと判定した場合(ステップS104のNO)は、再度ステップS104に戻り、制御装置40が給気弁30aおよび排水弁32aの全閉を判定する。
【0033】
ステップS106の後に、制御装置40は、ドラフトゲート側路弁36aの開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、ドラフトゲート側路弁36aが開いたか否かを判定する(ステップS108)。ドラフトゲート側路弁36aが開いていると制御装置40が判定した場合(ステップS108のYES)、制御装置40は、ドラフトゲート34を全開する制御信号を駆動装置に出力してドラフトゲート34を開く(ステップS110)。ドラフトゲート側路弁36aが開いていないと制御装置40が判定した場合(ステップS108のNO)は、再度ステップS108に戻り、制御装置40がドラフトゲート側路弁36aの開きを判定する。
【0034】
ステップS110の後に、制御装置40は、ドラフトゲート34の開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、ドラフトゲート34が全開したか否かを判定する(ステップS112)。ドラフトゲート34が全開していると制御装置40が判定した場合(ステップS112のYES)、制御装置40は、ガイドベーン16を所定の開度まで開く制御信号を駆動装置に出力してガイドベーン16を開く(ステップS114)。ドラフトゲート34が全開していないと制御装置40が判定した場合(ステップS112のNO)は再度ステップS112に戻り、制御装置40がドラフトゲート34の開きを判定する。
【0035】
ステップS114でガイドベーン16を所定の開度まで開いた後には、入口弁12およびガイドベーン16の開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、入口弁12が全開し、かつガイドベーン16が所定の開度まで開いたか否かを判定する(ステップS115)。入口弁12が全開し、かつガイドベーン16が所定の開度まで開いていると制御装置40が判定した場合(ステップS115のYES)、制御装置40が出力する指令にしたがって水車運転またはポンプ運転の通常運転を開始する(ステップS116)。入口弁12が全開していない、またはガイドベーン16が所定の開度まで開いていないと制御装置40が判定した場合(ステップS115のNO)、再度ステップS115に戻り、制御装置40が入口弁12およびガイドベーン16の開度を判定する。
【0036】
【0037】
まず、管理者が、制御装置40に調相運転から通常運転への切替指令を入力する(ステップS200)。
【0038】
次に、制御装置40は、ガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aを全閉する制御信号を同時に駆動装置に出力してガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aを閉じる(ステップS202)。なお、ガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aを閉じ始める制御は同時でなくても良いが、より早く運転モードを切り替えるために同時であることが好ましい。また、あらかじめ給気弁30aおよび排水弁32aが全閉状態の場合は、これらを閉じる制御を省略して良い。
【0039】
次に、制御装置40は、ガイドベーン16の開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、ガイドベーン16が全閉したか否かを判定する(ステップS204a)。ガイドベーン16が全閉していると制御装置40が判定した場合(ステップS204aのYES)、制御装置40は、入口弁12を全開する制御信号を駆動装置に出力して入口弁12を開く(ステップS206a)。ガイドベーン16が全閉していない場合(ステップS204aのNO)は再度ステップS204aに戻り、制御装置40がガイドベーン16の全閉を判定する。
【0040】
また、ステップS204aと同時に、制御装置40は、ガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aの開度検出装置(図示省略)からそれぞれ開度検出信号を受信して、ガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aが共に全閉したか否かを判定する(ステップS204b)。ガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aが共に全閉していると制御装置40が判定した場合(ステップS204bのYES)、制御装置40は、ドラフトゲート側路弁36aを全開する制御信号を駆動装置に出力してドラフトゲート側路弁36aを開く(ステップS206b)。一方、ガイドベーン16、給気弁30a、または排水弁32aが全閉していないと制御装置40が判定した場合(ステップS204bのNO)は再度ステップS204bに戻り、制御装置40がガイドベーン16、給気弁30a、および排水弁32aの全閉を判定する。
【0041】
ステップS206bの後に、制御装置40は、ドラフトゲート側路弁36aの開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、ドラフトゲート側路弁36aが開いたか否かを判定する(ステップS208)。ドラフトゲート側路弁36aが開いていると制御装置40が判定した場合(ステップS208のYES)、制御装置40は、ドラフトゲート34を全開する制御信号を駆動装置に出力してドラフトゲート34を開く(ステップS210)。一方、ドラフトゲート側路弁36aが開いていないと制御装置40が判定した場合(ステップS208のNO)は、再度ステップS208に戻り、制御装置40がドラフトゲート側路弁36aの開きを判定する。
【0042】
ステップS208bの後に、制御装置40は、ドラフトゲート34の開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、ドラフトゲート34が全開したか否かを判定する(ステップS212)。ドラフトゲート34が全開していると制御装置40が判定した場合(ステップS212のYES)、制御装置40は、ガイドベーン16を所定の開度まで開く制御信号を駆動装置に出力してガイドベーン16を開く(ステップS214)。一方、ドラフトゲート34が全開していないと制御装置40が判定した場合(ステップS212のNO)は、再度ステップS212に戻り、制御装置40がドラフトゲート34の開きを判定する。
【0043】
ステップS214でガイドベーン16を所定の開度まで開いた後には、入口弁12およびガイドベーン16の開度検出装置(図示省略)から開度検出信号を受信して、入口弁12が全開し、かつガイドベーン16が所定の開度まで開いたか否かを判定する(ステップS215)。入口弁12が全開し、かつガイドベーン16が所定の開度まで開いていると制御装置40が判定した場合(ステップS215のYES)、制御装置40が出力する指令にしたがって水車運転またはポンプ運転の通常運転を開始する(ステップS216)。入口弁12が全開していない、またはガイドベーン16が所定の開度まで開いていないと制御装置40が判定した場合(ステップS215のNO)、再度ステップS215に戻り、制御装置40が入口弁12およびガイドベーン16の開度を判定する。
【0044】
なお、ステップS112およびステップS212において、ドラフトゲート34が全開したか否かの判定に加えて、水圧計21aが測定するプライミング圧力が所定よりも大きいか否かを制御装置40が判定する構成としても良い。この構成では、ドラフトゲート34が全開し、かつプライミング圧力が所定よりも大きいと制御装置40が判定した場合にはステップS112およびステップS212のYESに進み、それ以外の場合はNOに進む。
【0045】
なお、上述した制御のうち同時に行うステップや制御は、必ずしも同時でなくても良いが、より早く運転モードを切り替えるために同時であることが好ましい。
【0046】
このような調相運転から通常運転への切り替えでは、ランナ室21内の空気が大気圧であり、ランナ室21内と上池または下池との圧力差に起因して上池または下池でこの空気が急激に膨張する危険性がないため、この空気を排気せずに上池または下池へ導くことができる。また、ランナ室21内の空気を排気せずに上池または下池へ導く場合は、ドラフトゲート34の上池側の圧力が下池側よりも高くなるので、ドラフトゲート34を開くための駆動力が増大する。しかし、フランシス水車1がドラフトゲート側路36およびドラフトゲート側路弁36aを備え、ドラフトゲート34を開く前にドラフトゲート側路弁36aを開くことで、ドラフトゲート34の上池側と下池側との圧力差を小さくすることができるので、ドラフトゲート34を開くための駆動力を低減できる。したがって、ランナ室21内の大気圧空気を排気する過程を省略し、ランナ室21に大気圧の空気が残った状態で通常運転を開始できるので、調相運転から通常運転へと運転モードをより短時間で切り替えることができる。その結果、フランシス水車1を効率的に運用することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…フランシス水車、10…鉄管、12…入口弁、14…ケーシング、16…ガイドベーン、18…上カバー、20…下カバー、21…ランナ室、21a…水圧計、22…ランナ、24…主軸、26…発電機、28…ドラフトチューブ、30…給気管、30a…給気弁、32…排水管、32a…排水弁、34…ドラフトゲート、36…ドラフトゲート側路、36a…ドラフトゲート側路弁、40…制御装置。