(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042953
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】湯張システム
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20240322BHJP
F24H 15/238 20220101ALI20240322BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20240322BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20240322BHJP
F16K 31/145 20060101ALI20240322BHJP
F16K 7/17 20060101ALI20240322BHJP
F24H 15/104 20220101ALI20240322BHJP
F24H 15/196 20220101ALN20240322BHJP
【FI】
F24H9/00 L
F24H15/238
F24H15/395
F16K31/126 C
F16K31/145
F16K7/17 Z
F24H15/104
F24H15/196 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147898
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】武部 重樹
【テーマコード(参考)】
3H056
3L024
3L036
【Fターム(参考)】
3H056AA07
3H056BB08
3H056BB24
3H056BB46
3H056CA08
3H056CB02
3H056CB05
3H056CC04
3H056CC07
3H056CC12
3H056CD01
3H056CD06
3H056DD02
3H056GG05
3L024CC16
3L024DD16
3L024DD22
3L024FF11
3L024GG22
3L024GG45
3L036AC24
(57)【要約】
【課題】湯張システムのパイロット式電磁弁が通電によって作動しない故障時でも、応急的な湯張りを可能とする。
【解決手段】給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に設けられたパイロット式電磁弁31の構造として、筒状の隔壁52によって外側の流入室50と内側の流出通路51とを仕切り、隔壁の端部に設けられた弁座52aに対向して、ダイヤフラムで支持されたダイヤフラム弁体53を備える。また、ダイヤフラム弁体を隔てて流入室および流出通路と反対側に背圧室54を形成し、ダイヤフラム弁体を貫通して設けられたオリフィス55で流入室と背圧室とを連通させる。さらに、背圧室と流出通路とを連通させるパイロット通路56を開閉可能なパイロット弁57を備え、通電によってパイロット弁を開弁する。そして、背圧室には、給湯装置の筐体11の外側まで延設された連通通路27を接続し、連通通路の端部に、使用者が手動で開閉可能な応急栓28を設ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に設けられたパイロット式電磁弁を開弁することで浴槽の湯張りを行う湯張システムにおいて、
前記パイロット式電磁弁は、
筒状の隔壁の外側に形成され、前記給湯装置側から湯水が流入する流入室と、
前記隔壁の内側に形成され、前記浴槽側に向かって湯水が流出する流出通路と、
前記隔壁の端部に設けられた弁座に対向して、ダイヤフラムで支持されており、該弁座に着座することで、前記流入室と前記流出通路との連通を遮断し、該弁座から離隔することで、該流入室と該流出通路とを連通させるダイヤフラム弁体と、
前記ダイヤフラム弁体を隔てて前記流入室および前記流出通路と反対側に形成された背圧室と、
前記ダイヤフラム弁体を貫通して設けられ、前記流入室と前記背圧室とを連通させるオリフィスと、
前記背圧室と前記流出通路とを連通させるパイロット通路と、
前記パイロット通路を開閉可能であり、閉弁方向に付勢されていると共に、通電によって開弁するパイロット弁と
を備え、
前記背圧室には、前記給湯装置の筐体の外側まで延設された連通通路が接続されており、
前記連通通路の端部には、使用者が手動で開閉可能な応急栓が設けられている
ことを特徴とする湯張システム。
【請求項2】
請求項1に記載の湯張システムにおいて、
前記給湯通路の湯水の流量を計測する流量センサと、
前記パイロット弁に通電された状態で、前記流量センサの計測値が所定流量未満であることに基づいて、前記パイロット式電磁弁の開弁不良と判定する判定部と、
前記判定部によって前記パイロット式電磁弁の開弁不良と判定されたことを使用者に対して報知する報知部と
を備えることを特徴とする湯張システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に設けられたパイロット式電磁弁を開弁することで浴槽の湯張りを行う湯張システムに関し、詳しくは、通電によってパイロット式電磁弁が作動しない故障時でも、応急的な湯張りを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置で生成した湯を用いて浴槽の湯張りを行う湯張システムでは、給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に湯張電磁弁を備えており、湯張電磁弁の開弁によって湯張りが開始され、湯張電磁弁の閉弁によって湯張りが停止される。このような湯張電磁弁として、パイロット式電磁弁を用いることが提案されており(例えば、特許文献1)、パイロット式電磁弁は、一般的に直動式電磁弁に比べて小さな力で開弁するので、アクチュエータの小型化を図ると共に、消費電力を抑えることができる。
【0003】
パイロット式電磁弁は、給湯装置側から湯水が流入する流入室と、浴槽側に向かって湯水が流出する流出通路とが筒状の隔壁によって仕切られており、流入室の内側に流出通路が形成された構造になっている。また、隔壁の端部に設けられた弁座に対向して、ダイヤフラムで支持されたダイヤフラム弁体を備えており、ダイヤフラム弁体が弁座に着座することで、流入室と流出通路との連通を遮断する。このダイヤフラム弁体を隔てて流入室および流出通路と反対側には、背圧室が形成されており、ダイヤフラム弁体を貫通して設けられたオリフィスによって、流入室と背圧室とが連通している。さらに、背圧室と流出通路とを連通させるパイロット通路が設けられていると共に、パイロット通路を開閉可能なパイロット弁を備えている。
【0004】
パイロット弁が閉弁状態であれば、流入室の湯水がオリフィスを通って背圧室に流入することにより、流入室と背圧室とで湯水の圧力が等しくなる。ただし、ダイヤフラム弁体の流入室側の面と背圧室側の面との受圧面積の違いからダイヤフラム弁体が背圧室側から押されて弁座に着座するので、流入室と流出通路との連通が遮断され、パイロット式電磁弁は閉弁状態となっている。一方、通電によってパイロット弁が開弁状態になると、背圧室の湯水がパイロット通路を通って流出通路に流出し、背圧室の湯水の圧力が低下するため、流入室の湯水の圧力でダイヤフラム弁体が背圧室側に押されて弁座から離れる。その結果、流入室と流出通路とが連通し、パイロット式電磁弁が開弁状態となることにより、浴槽の湯張りが開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のようにパイロット式電磁弁を開弁することで浴槽の湯張りを行う湯張システムでは、例えば、パイロット弁に異物が挟まるなどして、通電してもパイロット式電磁弁が作動(開弁)しない故障が発生することがあり、パイロット弁などの部品の交換が必要な場合には、メンテナンス業者による交換修理が完了するまで湯張りを行えないため、非常に不便であるという問題があった。
【0007】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、通電によってパイロット式電磁弁が作動しない故障時でも、応急的な湯張りを行うことが可能な湯張システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の湯張システムは次の構成を採用した。すなわち、
給湯装置から浴槽に湯水を導く給湯通路に設けられたパイロット式電磁弁を開弁することで浴槽の湯張りを行う湯張システムにおいて、
前記パイロット式電磁弁は、
筒状の隔壁の外側に形成され、前記給湯装置側から湯水が流入する流入室と、
前記隔壁の内側に形成され、前記浴槽側に向かって湯水が流出する流出通路と、
前記隔壁の端部に設けられた弁座に対向して、ダイヤフラムで支持されており、該弁座に着座することで、前記流入室と前記流出通路との連通を遮断し、該弁座から離隔することで、該流入室と該流出通路とを連通させるダイヤフラム弁体と、
前記ダイヤフラム弁体を隔てて前記流入室および前記流出通路と反対側に形成された背圧室と、
前記ダイヤフラム弁体を貫通して設けられ、前記流入室と前記背圧室とを連通させるオリフィスと、
前記背圧室と前記流出通路とを連通させるパイロット通路と、
前記パイロット通路を開閉可能であり、閉弁方向に付勢されていると共に、通電によって開弁するパイロット弁と
を備え、
前記背圧室には、前記給湯装置の筐体の外側まで延設された連通通路が接続されており、
前記連通通路の端部には、使用者が手動で開閉可能な応急栓が設けられている
ことを特徴とする。
【0009】
このような本発明の湯張システムでは、通電してもパイロット弁が開弁せず、パイロット式電磁弁が作動しない故障によって浴槽の湯張りが開始されない場合に、使用者が手動で応急栓を開栓すれば、背圧室の湯水の圧力が連通通路を介して抜けることで低下し、流入室の湯水の圧力でダイヤフラム弁体が背圧室側に押されて弁座から離れるため、パイロット式電磁弁が開弁状態となって応急的な湯張りを行うことが可能となる。一方、使用者が手動で応急栓を閉栓すれば、背圧室の湯水の圧力が連通通路を介して抜けなくなると共に、流入室の湯水がオリフィスを通って背圧室に流入することで背圧室の湯水の圧力が上昇し、受圧面積の違いでダイヤフラム弁体が背圧室側から押されて弁座に着座するため、パイロット式電磁弁が閉弁状態となって応急的な湯張りを停止することができる。
【0010】
上述した本発明の湯張システムでは、次のようにしてもよい。まず、給湯通路の湯水の流量を流量センサで計測し、パイロット弁に通電された状態で、流量センサの計測値が所定流量未満であることに基づいて、判定部がパイロット式電磁弁の開弁不良と判定する。そして、パイロット式電磁弁の開弁不良を使用者に対して報知部で報知する。
【0011】
このようにすれば、使用者は、報知部の報知によってパイロット式電磁弁の故障(開弁不良)を把握できるので、メンテナンス業者に修理を依頼すると共に、修理を待たずに応急栓を手動で操作することで応急的な湯張りを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施例の湯張システム1の全体構成を示した説明図である。
【
図2】本実施例の湯張制御装置30の構成を概念的に示した説明図である。
【
図3】本実施例の湯張電磁弁31の構造を示した断面図である。
【
図4】本実施例の湯張システム1で応急的な湯張りを行う場合を示した説明図である。
【
図5】本実施例の制御部40が浴槽2への湯張りを制御するために実行する湯張制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施例の湯張システム1の全体構成を示した説明図である。図示されるように湯張システム1は、湯を生成する給湯装置10や、湯を溜める浴槽2や、給湯装置10から浴槽2に湯水を導くための給湯通路20や、給湯通路20の途中に設けられた湯張制御装置30や、湯張システム1の全体の動作を制御する制御部40などを備えている。
【0014】
給湯装置10は、ハウジング11で覆われた内部に、燃料ガスを燃焼させるバーナ12を内蔵した燃焼室13を備えている。バーナ12には、ガス通路14を通じて燃料ガスが供給され、ガス通路14には、ガス通路14を開閉するガス電磁弁15が設けられている。また、燃焼室13には、燃焼ファン16が接続されており、燃焼ファン16によって燃焼用空気がバーナ12に送られる。そして、ガス電磁弁15および燃焼ファン16は、制御部40と電気的に接続されている。尚、本実施例の給湯装置10のハウジング11は、本発明の「給湯装置の筐体」に相当している。
【0015】
バーナ12の上方には、熱交換器17が設けられており、バーナ12での燃焼によって生じた燃焼排気は熱交換器17を通過して給湯装置10の外部に排出される。熱交換器17には、給水通路18を通じて上水が供給されており、供給された上水は熱交換器17で燃焼排気との熱交換によって加熱された後、湯となって給湯通路20へと流出する。熱交換器17の上流側に接続された給水通路18には、給水通路18の上水の流れを検知する水流センサ19が設けられている。水流センサ19は、制御部40と電気的に接続されており、水流センサ19で上水の流れが検知されると、バーナ12での燃焼が開始される。
【0016】
熱交換器17の下流側に接続された給湯通路20は、湯張制御装置30よりも手前側で2つに分岐して、一方が湯張制御装置30を介して浴槽2に接続され、他方がカラン21に接続されている。また、詳しくは別図を用いて後述するが、湯張制御装置30には、給水通路18の水流センサ19よりも上流側から分岐した上水圧力通路25や、給湯装置10のハウジング11の外側まで延設された連通通路27が接続されており、連通通路27の端部には、使用者が手動で開閉可能な応急栓28が設けられている。さらに、湯張制御装置30は、制御部40と電気的に接続されている。尚、
図1に示した例では、湯張制御装置30および制御部40を給湯装置10のハウジング11の外側に設置しているが、ハウジング11の内側に設置してもよい。
【0017】
制御部40には、使用者が操作可能なリモコン41が電気的に接続されている。本実施例のリモコン41は、浴槽2の湯量や湯温などを設定するための設定スイッチ42や、浴槽2の湯張りを指示する湯張スイッチ43などの操作スイッチに加えて、湯張システム1の設定状況や運転状況などを表示可能な表示部44を備えている。
【0018】
図2は、本実施例の湯張制御装置30の構成を概念的に示した説明図である。図示されるように本実施例の湯張制御装置30は、給湯通路20上に湯張電磁弁31と、流量センサ32と、フィルタ33と、2つの逆止弁(第1逆止弁34および第2逆止弁35)とを備えている。
【0019】
湯張電磁弁31は、給湯通路20を開閉可能であり、制御部40によって開閉動作が制御される。すなわち、湯張電磁弁31の開弁によって湯張りが開始され、湯張電磁弁31の閉弁によって湯張りが停止される。本実施例の湯張電磁弁31には、別図を用いて後述するようにパイロット式電磁弁を用いており、前述した連通通路27は湯張電磁弁31に接続されている。パイロット式電磁弁は、一般的に直動式電磁弁に比べて小さな力で開閉するので、アクチュエータの小型化を図ると共に、消費電力を抑えることが可能である。
【0020】
流量センサ32は、湯張電磁弁31よりも上流側(給湯装置10側)に設けられており、給湯通路20を通過する湯水の流量を計測する。本実施例の流量センサ32には、給湯通路20内の湯水の流れによって回転する羽根車が内蔵されており、羽根車の回転速度に基づいて湯水の流量を計測して制御部40に出力する。また、流量センサ32よりも上流側には、フィルタ33が設けられており、給湯装置10からの湯水に混入する異物を除去することによって、流量センサ32や湯張電磁弁31が異物で正常に動作しなくなる事態を抑制している。
【0021】
第1逆止弁34および第2逆止弁35は、湯張電磁弁31よりも下流側(浴槽2側)に直列で設けられている。2つの逆止弁のうち湯張電磁弁31側の第1逆止弁34は、給湯通路20を開閉可能に移動する弁体34aと、給湯通路20を閉じる閉弁方向に弁体34aを付勢する閉弁バネ34bとを備えている。湯張電磁弁31の開弁によって給湯装置10から供給される湯水の圧力が上昇して所定の開弁圧力を上回ると、閉弁バネ34bの付勢力に抗して弁体34aが開弁方向に移動することで、第1逆止弁34は開弁状態となる。また、浴槽2側の第2逆止弁35も、基本的には第1逆止弁34と同様の構成で閉弁方向に付勢されており、第1逆止弁34の開弁によって給湯装置10から供給される湯水の圧力が所定の開弁圧力を上回ると開弁状態となる。こうして第1逆止弁34および第2逆止弁35が開弁状態となって湯水を通過させることで、浴槽2に湯張りが行われる。
【0022】
一方、湯張り中に断水などの理由で給湯装置10から供給される湯水の圧力が低下すると、閉弁バネ34bの付勢力によって弁体34aが閉弁方向に押し戻され、第1逆止弁34は閉弁状態となる。また、第2逆止弁35も同様に閉弁状態となることにより、浴槽2側から給湯装置10側への湯水の逆流を阻止する。このように2つの逆止弁34,35を直列に設置しておくことにより、逆止弁が1つの場合よりも確実に湯水の逆流を阻止できる。
【0023】
また、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間で給湯通路20から分岐して大気開放通路36が設けられていると共に、この大気開放通路36を開閉可能に大気開放弁37が設置されている。大気開放弁37は、ダイヤフラム37aによって一次室37bと二次室37cとに仕切られており、一次室37bに上水圧力通路25が接続され、二次室37cに大気開放通路36が接続されている。また、二次室37cには、ダイヤフラム37aで支持された弁体37dや、ダイヤフラム37aおよび弁体37dを一次室37bに向けて付勢する開弁バネ37eが設けられると共に、大気に開放された排出通路37fが接続されている。
【0024】
給湯装置10に上水が供給されていれば、上水圧力通路25を介して一次室37bにかかる上水の圧力によってダイヤフラム37aおよび弁体37dが開弁バネ37eの付勢力に抗して二次室37c側に押し込まれることで、大気開放弁37は閉弁状態になっている。そして、断水などで上水の圧力が低下すると、開弁バネ37eの付勢力でダイヤフラム37aおよび弁体37dが一次室37b側に押し戻され、大気開放弁37が開弁状態となることにより、第1逆止弁34と第2逆止弁35との間の湯水が排出通路37fから排出される。そのため、仮に第1逆止弁34や第2逆止弁35の閉弁が不完全であったとしても、浴槽2側から給湯装置10側への湯水の逆流を防ぐことができる。
【0025】
図3は、本実施例の湯張電磁弁31の構造を示した断面図である。前述したように本実施例の湯張電磁弁31には、パイロット式電磁弁を採用しており、
図3(a)には、湯張電磁弁31が閉弁した状態が示されている。図示されるように湯張電磁弁31は、流量センサ32を通過した湯水が流入する流入室50と、第1逆止弁34に向かって湯水が流出する流出通路51とが筒状の隔壁52によって仕切られており、流入室50の内側に流出通路51が形成された構造になっている。また、隔壁52の端部に設けられた弁座52aに対向して、ダイヤフラム53aで支持された弁体53bからなるダイヤフラム弁体53を備えており、ダイヤフラム弁体53が弁座52aに着座することで、流入室50と流出通路51との連通を遮断する。
【0026】
ダイヤフラム弁体53を隔てて流入室50および流出通路51と反対側には、背圧室54が設けられており、前述した連通通路27は背圧室54に接続されている。また、ダイヤフラム弁体53を貫通してオリフィス55が形成されており、このオリフィス55によって流入室50と背圧室54とが連通している。さらに、背圧室54と流出通路51とを連通させるパイロット通路56が設けられており、このパイロット通路56を開閉可能なパイロット弁57として、弁孔58が中央に貫通した副弁座59と、アクチュエータ60とを備えている。
【0027】
アクチュエータ60は、導線を巻回して円筒形状に形成された電磁コイル61や、電磁コイル61の中心軸に沿って摺動可能に設けられたプランジャ62や、プランジャ62を副弁座59に向けて付勢する付勢バネ63などを備えている。電磁コイル61に通電していない(湯張電磁弁31をOFFにした)状態では、
図3(a)に示されるように付勢バネ63の付勢力でプランジャ62の先端が副弁座59に当接して弁孔58を塞いでおり、パイロット弁57は閉弁している。
【0028】
こうしてパイロット弁57の閉弁によってパイロット通路56が遮断されていれば、流入室50の湯水がオリフィス55を通って背圧室54に流入することにより、流入室50と背圧室54とで湯水の圧力が等しくなる。ただし、ダイヤフラム弁体53の背圧室54側の面は、ほぼ全体に湯水の圧力がかかるのに対して、ダイヤフラム弁体53の流入室50側の面は、隔壁52の外側の部分に湯水の圧力がかかるだけである。こうした受圧面積の違いからダイヤフラム弁体53は背圧室54側から押されて弁座52aに着座するので、流入室50と流出通路51との連通が遮断され、湯張電磁弁31は閉弁状態となっている。尚、背圧室54に接続された連通通路27の端部の応急栓28は、通常は閉栓状態になっているので、連通通路27によって背圧室54の湯水の圧力が抜けることはない。
【0029】
一方、電磁コイル61に通電する(湯張電磁弁31をONにする)と、
図3(b)に示されるように、プランジャ62が電磁コイル61に磁力で引き込まれることにより、プランジャ62の先端が副弁座59から離れるので、弁孔58が開放されてパイロット弁57は開弁状態となる。これにより、背圧室54の湯水がパイロット通路56を通って流出通路51に流出し、背圧室54の湯水の圧力が低下するので、流入室50の湯水の圧力でダイヤフラム弁体53が背圧室54側に押されて弁座52aから離隔する。その結果、流入室50と流出通路51とが連通し、湯張電磁弁31が開弁状態となることによって、浴槽2の湯張りが開始される。
【0030】
尚、背圧室54は、オリフィス55によって流入室50と連通しているので、背圧室54内の湯水の圧力が低下すると、流入室50の湯水がオリフィス55を通じて背圧室54に流入することになる。ただし、オリフィス55は、パイロット通路56(弁孔58)よりも細径であるため、オリフィス55で背圧室54に流入する流量よりもパイロット通路56で流出する流量の方が多くなっている。その結果、背圧室54内の湯水の圧力が回復することなく、湯張電磁弁31のダイヤフラム弁体53は開弁状態のままとなる。
【0031】
その後、電磁コイル61への通電を停止する(湯張電磁弁31をOFFにする)と、再び
図3(a)のようにパイロット弁57の閉弁によってパイロット通路56が遮断され、流入室50の湯水がオリフィス55を通って背圧室54に流入することで背圧室54の湯水の圧力が上昇するので、ダイヤフラム弁体53が背圧室54側から押されて弁座52aに着座する。こうして湯張電磁弁31が閉弁状態に戻ることで、浴槽2の湯張りが停止される。
【0032】
このように湯張電磁弁31としてパイロット式電磁弁の開閉によって浴槽2の湯張りを制御する湯張システム1では、例えば、アクチュエータ60のプランジャ62の摺動箇所に異物が挟まるなどして、電磁コイル61に通電してもパイロット弁57が開弁せず、湯張電磁弁31が作動しない故障が発生することがある。そして、パイロット弁57などの部品の交換が必要であると、メンテナンス業者による交換修理が完了するまで浴槽2の湯張りを行うことができず、非常に不便である。そこで、本実施例の湯張システム1では、電磁コイル61への通電で湯張電磁弁31が作動しない故障時でも、以下のようにして応急的な湯張りを行うことが可能となっている。
【0033】
図4は、本実施例の湯張システム1で応急的な湯張りを行う場合を示した説明図であり、
図3と同様に湯張電磁弁31としてのパイロット式電磁弁の断面を表している。前述したように背圧室54には、給湯装置10のハウジング11の外側まで延設された連通通路27が接続されており、連通通路27の端部には、使用者が手動で開閉可能な応急栓28が設けられている。本実施例の応急栓28は、いわゆるプラグ栓であり、連通通路27の端部から抜き取ることで開栓し、連通通路27の端部に挿し込むことで閉栓する。
【0034】
図4(a)には、電磁コイル61に通電してもプランジャ62が動作せずにパイロット弁57が閉弁したままの状態が示されている。このとき、図示されるように応急栓28を使用者が手動で開栓すれば、背圧室54の湯水の圧力が連通通路27を介して外部に抜けて低下するため、流入室50の湯水の圧力でダイヤフラム弁体53が背圧室54側に押されて弁座52aから離隔する。その結果、流入室50と流出通路51とが連通して湯張電磁弁31が開弁状態となり、応急的に浴槽2の湯張りを開始することができる。
【0035】
一方、湯張りを停止する場合には、
図4(b)に示されるように応急栓28を使用者が手動で閉栓すれば、背圧室54の湯水の圧力が連通通路27を介して抜けなくなり、流入室50の湯水がオリフィス55を通って背圧室54に流入することで背圧室54の湯水の圧力が上昇するので、ダイヤフラム弁体53が背圧室54側から押されて弁座52aに着座する。こうして流入室50と流出通路51との連通が遮断されて湯張電磁弁31が閉弁状態に戻ることにより、応急的な湯張りを停止することができる。
【0036】
図5は、本実施例の制御部40が浴槽2への湯張りを制御するために実行する湯張制御処理のフローチャートである。この湯張制御処理は、リモコン41の湯張スイッチ43が操作されたことに基づいて実行される。湯張制御処理では、まず、湯張電磁弁31をONにする(STEP1)。前述したように本実施例の湯張電磁弁31には、パイロット式電磁弁を用いており、アクチュエータ60の電磁コイル61に通電することで湯張電磁弁31をONにする。
【0037】
続いて、給湯通路20の湯水の流量を計測する流量センサ32の計測値が所定流量以上であるか否かを判断する(STEP2)。本実施例の給湯通路20では、湯張電磁弁31が正常に開弁していれば所定流量以上の湯水が流れるようになっている。また、給湯装置10から給湯通路20を通って浴槽2に供給される湯水の流量が所定流量以上であれば、給水通路18の水流センサ19においても上水の流れが検知されることになる。そして、流量センサ32の計測値が所定流量以上である場合は(STEP2:yes)、給湯装置10のバーナ12で燃焼を開始する(STEP3)。尚、バーナ12での燃焼を開始する際には、ガス通路14のガス電磁弁15を開弁すると共に、燃焼ファン16を作動させる。
【0038】
バーナ12での燃焼を開始すると、湯張りが完了したか否かを判断する(STEP4)。例えば、流量センサ32で計測される湯水の流量に基づいて、給湯装置10から供給された浴槽2の湯量が予め設定された湯量に達すれば、湯張りが完了したと判断することができる。そして、未だ湯張りが完了していない場合は(STEP4:no)、湯張りが完了するまで待機状態となる。
【0039】
その後、湯張りが完了した場合は(STEP4:yes)、湯張りの完了を報知する(STEP5)。本実施例における湯張り完了の報知は、リモコン41に内蔵のスピーカ(図示省略)から音声で出力すると共に、リモコン41の表示部44に表示して行うようになっている。
【0040】
また、湯張り完了の報知に続いて、電磁コイル61への通電を停止することで湯張電磁弁31をOFFにする(STEP6)。そして、給湯装置10から浴槽2への湯水の供給が湯張電磁弁31によって遮断されるのに伴い、給水通路18の水流センサ19では上水の流れが検知されなくなるので、給湯装置10のバーナ12での燃焼を停止する(STEP7)。尚、バーナ12での燃焼を停止する際には、ガス通路14のガス電磁弁15を閉弁した後、燃焼ファン16を停止する。こうしてバーナ12での燃焼を停止すると、
図5の湯張制御処理を終了する。
【0041】
以上では、STEP2の判断において、流量センサ32の計測値が所定流量以上であった場合(STEP2:yes)に行われる処理について説明した。これに対して、湯張電磁弁31がONの状態(電磁コイル61に通電された状態)であるにもかかわらず、流量センサ32の計測値が所定流量未満である場合は(STEP2:no)、湯張電磁弁31の開弁不良(故障)であると判定し、湯張電磁弁31の故障を報知する(STEP8)。本実施例における湯張電磁弁31の故障の報知は、リモコン41の表示部44に表示して行うようになっている。尚、本実施例の制御部40は、本発明の「判定部」に相当している。また、本実施例のリモコン41の表示部44は、本発明の「報知部」に相当している。
【0042】
また、湯張電磁弁31の故障の報知を開始してからの時間を計時し、所定時間(例えば5分)が経過したか否かを判断する(STEP9)。そして、未だ所定時間が経過していない場合は(STEP9:no)、STEP2の処理に戻り、流量センサ32の計測値が所定流量以上であるか否かを確認しながら、最大で所定時間が経過するまで待機状態となる。このとき、使用者は、リモコン41の表示部44の報知によって湯張電磁弁31の故障を把握できるので、メンテナンス業者に修理を依頼すると共に、前述したように応急栓28を手動で操作することで応急的な湯張りを行うことが可能である。
【0043】
ただし、応急栓28が開栓されることなく所定時間が経過した場合や、応急栓28が開栓されても、流量センサ32の計測値が所定流量以上になることなく所定時間が経過した場合は(STEP9:yes)、そのまま
図5の湯張制御処理を終了する。尚、使用者が応急栓28を開栓したにもかかわらず、流量センサ32の計測値が所定流量以上にならない(湯張りができない)場合には、湯張電磁弁31の故障ではなく、フィルタ33の詰まりなどの別の要因と考えられる。
【0044】
これに対して、所定時間が経過する前に、使用者によって応急栓28が開栓されることで湯張電磁弁31のダイヤフラム弁体53が開弁状態になると、流量センサ32の計測値が所定流量以上になるため(STEP2:yes)、前述したように給湯装置10のバーナ12で燃焼を開始する(STEP3)。その後、湯張りが完了すると(STEP4;yes)、湯張りの完了を報知して(STEP5)、故障中であるものの湯張電磁弁31をOFFする(STEP6)。このとき、使用者によって応急栓28が閉栓されると、湯張電磁弁31のダイヤフラム弁体53が閉弁状態に戻り、給湯装置10から浴槽2への湯水の供給が遮断される。これに伴い、給水通路18の水流センサ19で上水の流れが検知されなくなるので、給湯装置10のバーナ12での燃焼を停止して(STEP7)、
図5の湯張制御処理を終了する。
【0045】
以上に説明したように本実施例の湯張システム1では、湯張電磁弁31としてのパイロット式電磁弁における背圧室54に、給湯装置10のハウジング11の外側まで延設された連通通路27が接続されていると共に、連通通路27の端部に、使用者が手動で開閉可能な応急栓28が設けられている。このような構成によれば、電磁コイル61に通電してもパイロット弁57が開弁せず、湯張電磁弁31が作動しない故障によって湯張りが開始されない場合に、使用者が手動で応急栓28を開栓することにより、背圧室54の湯水の圧力が連通通路27を介して抜けることで低下し、湯張電磁弁31のダイヤフラム弁体53が開弁状態となるため、応急的な湯張りを行うことが可能となる。一方、使用者が手動で応急栓28を閉栓すれば、背圧室54の湯水の圧力が連通通路27を介して抜けなくなると共に、流入室50の湯水がオリフィス55を通って背圧室54に流入することで背圧室54の湯水の圧力が上昇し、湯張電磁弁31のダイヤフラム弁体53が閉弁状態に戻るため、応急的な湯張りを停止することができる。
【0046】
また、本実施例の湯張システム1では、電磁コイル61に通電された状態(湯張電磁弁31がONの状態)で、流量センサ32の計測値が所定流量未満であることに基づいて、湯張電磁弁31の開弁不良(故障)と判定し、リモコン41の表示部44を用いて湯張電磁弁31の故障の報知を行うようになっている。このようにすれば、使用者は、リモコン41の表示部44の報知によって湯張電磁弁31の故障を把握できるので、メンテナンス業者に修理を依頼すると共に、修理を待たずに応急栓28を手動で操作することで応急的な湯張りを行うことが可能となる。
【0047】
以上、本実施例の湯張システム1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0048】
例えば、前述した実施例では、連通通路27の端部に設けられた応急栓28がプラグ栓であるものとして説明した。しかし、応急栓28は、使用者が手動で開閉可能であれば、プラグ栓に限られず、使用者が捻ることで開閉を切り換え可能な活栓(コック)であってもよい。
【0049】
また、前述した実施例では、湯張電磁弁31の故障の報知を、リモコン41の表示部44に表示して行うようになっていた。しかし、報知の態様はこれに限られず、例えば、リモコン41に設けられた故障ランプを点灯させて報知してもよいし、スピーカから音声で出力して報知してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…湯張システム、 2…浴槽、 10…給湯装置、
11…ハウジング、 12…バーナ、 13…燃焼室、
14…ガス通路、 15…ガス電磁弁、 16…燃焼ファン、
17…熱交換器、 18…給水通路、 19…水流センサ、
20…給湯通路、 21…カラン、 25…上水圧力通路、
27…連通通路、 28…応急栓、 30…湯張制御装置、
31…湯張電磁弁、 32…流量センサ、 33…フィルタ、
34…第1逆止弁、 34a…弁体、 34b…閉弁バネ、
35…第2逆止弁、 36…大気開放通路、 37…大気開放弁、
37a…ダイヤフラム、 37b…一次室、 37c…二次室、
37d…弁体、 37e…開弁バネ、 37f…排出通路、
40…制御部、 41…リモコン、 42…設定スイッチ、
43…湯張スイッチ、 44…表示部、 50…流入室、
51…流出通路、 52…隔壁、 52a…弁座、
53…ダイヤフラム弁体、 53a…ダイヤフラム、 53b…弁体、
54…背圧室、 55…オリフィス、 56…パイロット通路、
57…パイロット弁、 58…弁孔、 59…副弁座、
60…アクチュエータ、 61…電磁コイル、 62…プランジャ、
63…付勢バネ。