(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042977
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】水処理システムおよび水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240322BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20240322BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240322BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240322BHJP
【FI】
C02F1/00 D
C02F1/00 V
C02F1/20 Z
C02F1/32
C02F1/72 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147932
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
4D037AA03
4D037AB02
4D037BA18
4D037BA23
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA11
4D050AA05
4D050AB07
4D050BB06
4D050BB07
4D050BB09
4D050BB11
4D050BB13
4D050BC09
4D050BD08
4D050CA03
(57)【要約】
【課題】安定的に効率的なTOCの除去を行う。
【解決手段】複数の水処理装置を備え、被処理水を処理する水処理設備と、複数の水処理装置のいずれかに供給される被処理水が供給される水処理管理装置10と、水処理装置の運転条件を制御する制御装置30とを有し、水処理管理装置10は、水処理管理装置10の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定するTOC測定部16と、水処理管理装置の通水ラインに通水されている水の特定有機物濃度を測定する特定有機物測定部17とを有し、制御装置30は、TOC測定部16が測定したTOC濃度と、特定有機物測定部17が測定した特定有機物濃度とに基づいて、水処理装置の運転条件を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理装置を備え、被処理水を処理する水処理設備と、
前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置と、
前記水処理装置の運転条件を制御する制御装置とを有し、
前記水処理管理装置は、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定する第1の測定部と、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水の特定有機物濃度を測定する第2の測定部とを有し、
前記制御装置は、前記第1の測定部が測定したTOC濃度と、前記第2の測定部が測定した特定有機物濃度とに基づいて、前記水処理装置の運転条件を制御する水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記水処理装置として紫外線照射装置を備え、
前記制御装置は、前記運転条件として前記紫外線照射装置の照射量を制御する水処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記紫外線照射装置のランプ点灯本数と、処理流量と、ランプ調光との少なくとも1つを制御する水処理システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の水処理システムにおいて、
前記水処理装置として前記紫外線照射装置の前段に配置された脱気装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記紫外線照射量と、前記紫外線照射装置の被処理水の溶存酸素濃度との少なくとも1つを制御する水処理システム。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の水処理システムにおいて、
前記紫外線照射装置に通水される前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段を有し、
前記制御装置は、前記第1の測定部が測定したTOC濃度と、前記第2の測定部が測定した特定有機物濃度とに基づいて、前記酸化剤添加手段が添加する酸化剤の添加量と前記紫外線照射装置の照射量との少なくとも1つを制御する水処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の水処理システムにおいて、
前記酸化剤は、ペルオキシド基を含む硫黄化合物である水処理システム。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の水処理システムにおいて、
前記水処理装置として前記紫外線照射装置の前段または後段に配置された低圧紫外線照射装置をさらに備える水処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の水処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1の測定部が測定したTOC濃度と、前記第2の測定部が測定した有機物濃度とに基づいて、前記低圧紫外線照射装置が照射する紫外線の照射量を制御する水処理システム。
【請求項9】
複数の水処理装置を備え、被処理水を処理する水処理設備と、
前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置と、
前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記水処理装置の運転条件を制御する制御装置とを有し、
前記水処理管理装置は、前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定する測定部を有し、
前記制御装置は、前記測定部が測定したTOC濃度に基づいて、前記酸化剤添加手段が添加する酸化剤の添加量と、前記酸化剤添加手段が前記酸化剤を添加した被処理水に対する、前記複数の水処理装置のうちの紫外線照射装置の照射量との少なくとも1つを制御する水処理システム。
【請求項10】
複数の水処理装置を用いて被処理水を処理する水処理設備の前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定し、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水の特定有機物濃度を測定し、
前記測定したTOC濃度と、前記測定した特定有機物濃度とに基づいて、前記水処理装置の運転条件を制御する水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムおよび水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水から超純水を生成する超純水製造システムなどの水処理システムでは、水処理システムに供給される原水の水質に関心を払う必要がある。例えば、超純水製造システムでは、原水に含まれる有機物質(TOC:Total Organic Carbon)を除去するために逆浸透膜(RO)処理や紫外線(UV)酸化処理が行われている。しかしながら、除去の対象となる有機物には、これらの処理によって除去しやすい成分とそうではない成分とが存在する。超純水製造システムに供給される原水としては、これまで、水道水や自来水、工業用水などが使用されてきた。近年では水資源の有効利用を図るため、生活で発生した下水等を処理して再利用する再生水や工場排水等を処理して再利用する回収水が原水として使用されるようになってきている。これらの再生水や回収水の水質は、工業用水などの水質と比較して、不安定となる傾向がある。また、再生水や回収水には、予期しない有機物が突発的に含まれることがある。除去しにくい有機物が原水に混入すると、超純水製造システムの出口から供給される処理水の水質に影響を及ぼすおそれがある。そのため、超純水製造システムにおける原水の水質を監視し、水質に応じて超純水製造システムの運転を適切に管理することの重要性がより高まってきている。
【0003】
また、純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物を分解し除去する様々な方法の検討がなされている。そのような方法の代表的なものとして、紫外線酸化処理による有機物の分解除去工程を用いる方法が挙げられる。その中で、ペルオキシド基を含む硫黄化合物を被処理水に添加し、その後紫外線照射することで、被処理水中のTOCを促進酸化する技術が考えられている。特許文献1には、メインシステムとは別に設けられたサブ超純水製造システムの処理水TOC値に基づいて、メインシステムの紫外線照射装置の照射量を制御する技術が記載されている。また、特許文献2には、硫黄化合物を被処理水に添加し、紫外線処理する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-107249号公報
【特許文献2】特開2008-229417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術において、メインシステムの紫外線酸化装置は低圧UV酸化装置であると推測される。低圧UVで除去しやすいTOC成分のみを検出した場合にはこの手段は有効であるが、サブ超純水製造システムの被処理水にはROまたは低圧UV酸化装置で除去し難い難分解性TOCが含まれるおそれがある。その際、サブ超純水製造システムの処理水TOC値に基づいてメインシステムのUV照射量を制御すると、その照射量が適当ではない(例えば、過剰な)量となってしまうことが考えられる。また、過剰照射しても低圧UVで除去し難いTOC成分(例えば尿素など)は処理水にリークするため、水質低下を引き起こしてしまう。また、特許文献2には、照射量や過硫酸濃度を制御する記載はない。特許文献2に記載された方法では、被処理水中のTOCに変動があった際にTOCに対しての照射量、添加量に過剰、不足が生じ、安定的な処理が困難となってしまう。また、過剰な照射、添加量は消費電力増加につながるため、運用コストが高くなってしまう。
【0006】
このように、上述した技術においては、安定的に効率的なTOCの除去を行うことができないという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、安定的に効率的なTOCの除去を行うことができる水処理システムおよび水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水処理システムは、
複数の水処理装置を備え、被処理水を処理する水処理設備と、
前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置と、
前記水処理装置の運転条件を制御する制御装置とを有し、
前記水処理管理装置は、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定する第1の測定部と、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水の特定有機物濃度を測定する第2の測定部とを有し、
前記制御装置は、前記第1の測定部が測定したTOC濃度と、前記第2の測定部が測定した特定有機物濃度とに基づいて、前記水処理装置の運転条件を制御する。
【0009】
また、本発明の水処理システムは、
複数の水処理装置を備え、被処理水を処理する水処理設備と、
前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置と、
前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記水処理装置の運転条件を制御する制御装置とを有し、
前記水処理管理装置は、前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定する測定部を有し、
前記制御装置は、前記測定部が測定したTOC濃度に基づいて、前記酸化剤添加手段が添加する酸化剤の添加量と、前記酸化剤添加手段が前記酸化剤を添加した被処理水に対する、前記複数の水処理装置のうちの紫外線照射装置の照射量との少なくとも1つを制御する。
【0010】
また、本発明の水処理方法は、
複数の水処理装置を用いて被処理水を処理する水処理設備の前記複数の水処理装置のいずれかに供給される前記被処理水が供給される水処理管理装置の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定し、
前記水処理管理装置の通水ラインに通水されている水の特定有機物濃度を測定し、
前記測定したTOC濃度と、前記測定した特定有機物濃度とに基づいて、前記水処理装置の運転条件を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、安定的に効率的なTOCの除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
【
図4】
図3に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の水処理システムの第3の実施の形態を示す図である。
【
図6】
図5に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の水処理システムの第4の実施の形態を示す図である。
【
図8】
図7に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の水処理システムの第5の実施の形態を示す図である。
【
図10】
図9に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本発明の水処理システムの第6の実施の形態を示す図である。
【
図12】
図11に示した制御装置における処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図13】本発明の水処理システムの実施例1-1のための構成を示す図である。
【
図14】実施例1-1と比較する比較例1-1のための構成を示す図である。
【
図15】本発明の水処理システムの実施例1-2のための構成を示す図である。
【
図16】実施例1-2と比較する比較例1-2のための構成を示す図である。
【
図17】本発明の水処理システムの実施例2-1のための構成を示す図である。
【
図18】本発明の水処理システムの実施例2-2のための構成を示す図である。
【
図19】本発明の水処理システムの実施例3-1のための構成を示す図である。
【
図20】本発明の水処理システムの実施例3-2のための構成を示す図である。
【
図21】本発明の水処理システムの実施例4-1のための構成を示す図である。
【
図22】本発明の水処理システムの実施例4-2のための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0014】
図1は、本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図1に示すように、尿素を除去する機能を持つ水処理装置20と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22とを備える水処理設備231を有している。水処理装置20,22は、例えば、ろ過装置、活性炭、脱イオン装置、逆浸透膜装置、脱気装置、紫外線照射装置等の対象液を処理するための装置(単元装置)の1つ、または複数が組み合わされて構成されている。例えば、水処理装置20は、ろ過装置、活性炭、脱イオン装置および逆浸透膜装置を備え、水処理装置22は、脱イオン装置、脱気装置および膜処理装置を備えている。水処理設備231(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、UV21および水処理装置22で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置22からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。
図1に示した例では、水処理設備231を構成する複数の水処理装置が被処理水の通水ラインに沿って互いに直列に配置されているが、複数の水処理装置の一部または全てが互いに並列に配置されていても良い。これは、以下に説明する他の実施の形態についても同様である。本形態における水処理システムは、水処理設備231に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置10を有する。水処理管理装置10は、活性炭であるAC11と、逆浸透膜装置であるRO12と、電気再生式純水装置であるEDI13と、紫外線照射装置であるUV14と、イオン交換樹脂充填装置であるCP15と、TOC測定部16と、特定有機物測定部17とを有する。本形態では、AC11と、RO12と、EDI13と、UV14と、CP15とが被処理水の通水ラインに沿って直列に配置されており、水処理設備231に供給される被処理水の少なくとも一部がAC11、RO12、EDI13、UV14およびCP15へ順番に通水される。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置30を有する。
【0015】
水処理管理装置10は、
図1に示すようなAC11、RO12、UV14や、イオン交換樹脂充填装置等のTOC成分を除去するための単位操作を実行する水処理装置が設けられており、メインの水処理設備231の構成と等価である必要はない。水処理管理装置10は、被処理水に含まれるTOCを検知する時間を早くするためにメインの水処理設備231と等価ではなく、簡易的に構成されていることが好ましい。イオン交換樹脂充填装置は、
図1に示すようにEDI13でもよい。また、CP15は、EDI13でも良い。水処理管理装置10内に設けられた水処理装置への通水順序に制限はないが、UVの処理効率、イオン交換樹脂の寿命を考慮して、活性炭、RO、EDI、UV、イオン交換樹脂充填装置とするのが好ましい。水処理管理装置10には、処理性能を向上させるために脱気膜などの脱気装置を設けても良い。また、AC11、RO12、EDI13、UV14およびCP15それぞれは多段でも良い。このことは、以下に説明する第2~6の実施の形態についても同じである。
【0016】
TOC測定部16は、水処理管理装置10の通水ラインに通水されている水のTOC濃度を測定する第1の測定部(TOC計)である。TOC測定部16は、測定したTOC濃度の値を制御装置30へ出力する。なお、TOC測定部16は、CP15を通水した水だけではなく、他の水処理装置が処理した水のTOC濃度を測定しても良い。
【0017】
特定有機物測定部17は、TOC測定部16が測定するTOC以外の指標を用いて有機物濃度を測定する第2の測定部である。特定有機物測定部17が有機物濃度を測定する測定ポイントは、TOC測定部16がTOC濃度を測定するポイントと同じポイントであっても良いし、異なるポイントであっても良い。例えば、TOC測定部16がCP15に限らず、水処理管理装置10に設けられたいずれかの水処理装置が処理した水のTOC濃度を測定した場合、特定有機物測定部17は、その水処理装置が処理した水についてTOC以外の指標を用いて有機物濃度を測定しても良い。または、例えば、TOC測定部16がRO12の前段の測定ポイントでTOC濃度を測定した場合、特定有機物測定部17は、RO12での特定有機物阻止率を考慮して、CP15の処理水の特定有機物濃度を推測しても良い。または、例えば、TOC測定部16がCP15の処理水のTOC濃度を測定し、特定有機物測定部17がAC11の前段またはRO12の前段の測定ポイントで特定有機物濃度を測定した場合、特定有機物測定部17は、RO12での特定有機物阻止率を考慮して、CP15の処理水の特定有機物濃度を推測しても良い。特定有機物測定部17は、例えば、尿素の濃度を測定する尿素計でも良い。特定有機物測定部17は、測定した有機物濃度の値を制御装置30へ出力する。また、特定有機物測定部17は、CP15の処理水の特定有機物濃度を推測した場合、推測した値を測定値として制御装置30へ出力する。
【0018】
制御装置30は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた特定有機物濃度の値とに基づいて、水処理設備231を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置30は、UV21が照射する紫外線照射量を制御する。ここで、制御装置30が制御する紫外線照射量は、単位流量当たりの照射電力である。例えば、制御装置30は、特定有機物測定部17から出力されてきた特定有機物濃度の値をTOC値へ変換(換算)する。この変換は、有機物分子内の炭素の原子量と有機物(例えば、尿素)の分子量との比率を用いて行われる。制御装置30は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値(第1のTOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値(第2のTOC値)との差分や比率(第1のTOC値に対する第2のTOC値の比率。以下同じ。)に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量を算出しても良い。制御装置30は、紫外線照射量を算出する際、第1のTOC値と第2のTOC値との差分や比率から紫外線照射量を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該差分や比率とそのときの水処理装置22からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。制御装置30は、紫外線照射量として、UV21のランプ点灯本数と、処理流量と、ランプ調光との少なくとも1つを制御する。また、制御装置30は、水処理装置20,22が具備するUVが照射する紫外線照射量を制御しても良い。また、制御装置30は、第1のTOC値と第2のTOC値との差分や比率に基づいて、UV21の運転を開始または停止させるものでも良い。例えば、差分が閾値よりも小さな値である場合、制御装置30は、UV21の運転を停止させ、差分が閾値以上である場合、制御装置30は、UV21の運転を開始させても良い。なお、水処理設備231を構成する水処理装置に、逆浸透膜装置を設け、制御装置30が、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値とに基づいて、逆浸透膜装置の回収率や水温等を制御しても良い。
【0019】
以下に、
図1に示した制御装置30における処理について説明する。
図2は、
図1に示した制御装置30における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、特定有機物測定部17が尿素の濃度を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
まず、制御装置30は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS1)。また、制御装置30は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値を取得する(ステップS2)。制御装置30は、取得した尿素の濃度の値をTOC値に換算する。制御装置30は、取得したTOC値と、尿素濃度から換算したTOC値とに基づいて、紫外線照射量を算出する(ステップS3)。そして、制御装置30は、算出した紫外線照射量を照射するようにUV21を制御する(ステップS4)。
【0021】
このように本形態においては、水処理設備231に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置10を設け、水処理管理装置10の通水ライン上に通水されている水のTOC値と、特定有機物濃度とを測定器が測定する。制御装置30が、測定されたTOC値と特定有機物濃度とに基づいて、水処理設備231に設けられた紫外線照射装置の紫外線照射量を制御する。特定有機物としては、例えば、逆浸透膜装置や紫外線照射装置で除去し難い尿素が挙げられる。尿素の処理は臭化物と次亜塩素酸とを用いた処理が一般的であるが、その処理時間が比較的長く、水処理管理装置に尿素処理装置を設けることが難しい。そのため、水処理管理装置で除去し難い尿素を考慮した測定値に基づいて、紫外線照射装置が照射する紫外線の照射量を制御することで効率よくTOCの除去が可能となる。
(第2の実施の形態)
【0022】
図3は、本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図3に示すように、水処理装置20と、脱気装置であるMD23と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22とを備える水処理設備232を有している。水処理設備232(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、MD23、UV21および水処理装置22で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置22からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。また、本形態における水処理システムは、水処理設備232に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置10を有する。水処理管理装置10は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置31を有する。
【0023】
制御装置31は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた特定有機物濃度の値とに基づいて、水処理設備232を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置31は、MD23を制御して、UV21の被処理水の溶存酸素濃度を制御する。水処理管理装置10にて測定された値に基づいて、制御装置31が水処理設備232のUV21の被処理水の溶存酸素濃度を設定し、水処理設備232の溶存酸素計の値が設定値となるように、溶存酸素濃度を制御することができる。例えば、MD23とUV21との間に溶存酸素計を設けることができる。MD23として、例えば、真空脱気装置、膜脱気装置および窒素脱気装置が挙げられる。その他の脱気装置として、水素を添加した上でPd触媒を用いて酸素を水素と反応させて水とすることにより酸素を除去するものを用いることができる。MD23として真空脱気装置を用いる場合、制御装置31は、真空ポンプ等を用いて真空度を調整して溶存酸素濃度を制御する。このとき、制御装置31は、インバータを用いて制御することができる。例えば、制御装置31は、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値をTOC値へ変換(換算)する。この変換は、有機物分子内の炭素の原子量と有機物(例えば、尿素)の分子量との比率を用いて行われる。制御装置31は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、MD23が制御するUV21の被処理水の溶存酸素濃度を算出しても良い。制御装置31は、溶存酸素濃度を算出する際、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率から溶存酸素濃度を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該差分や比率とそのときの水処理装置22からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。また、制御装置31は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、MD23の運転を開始または停止させるものでも良い。例えば、差分が閾値(1つでも複数でも良い)よりも小さな値である場合、制御装置31は、MD23の運転を停止させ、差分が閾値以上である場合、制御装置31は、MD23の運転を開始させても良い。なお、制御装置31は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量とUV21の被処理水の溶存酸素濃度とを算出しても良い。この場合、制御装置31は、算出した紫外線照射量の紫外線をUV21が照射するように制御し、被処理水の溶存酸素濃度が算出した溶存酸素濃度になるようにMD23を制御する。また、制御装置31は、UV21の動作とMD23の動作との組み合わせにより、算出した紫外線照射量の照射または算出した溶存酸素濃度を得るような制御を行っても良い。なお、制御装置31が紫外線照射量の照射と溶存酸素濃度とのどちらを優先して制御するかは、処理性能の他、運用コストや後段に配置された水処理装置への負荷を考慮して決定しても良い。
【0024】
以下に、
図3に示した制御装置31における処理について説明する。
図4は、
図3に示した制御装置31における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、特定有機物測定部17が尿素の濃度を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0025】
まず、制御装置31は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS11)。また、制御装置31は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値を取得する(ステップS12)。制御装置31は、取得した尿素の濃度の値をTOC値に換算する。制御装置31は、取得したTOC値と、尿素濃度から換算したTOC値とに基づいて、溶存酸素濃度を算出する(ステップS13)。そして、制御装置31は、被処理水の溶存酸素濃度が算出した溶存酸素濃度になるようにMD23を制御する(ステップS14)。
【0026】
このように本形態においては、水処理設備232に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置10を設け、水処理管理装置10の通水ライン上に通水されている水のTOC値と、特定有機物濃度とを測定器が測定する。制御装置31が、測定されたTOC値と特定有機物濃度とに基づいて、水処理設備232に設けられた脱気装置を制御する。水処理管理装置で除去し難い尿素を考慮した測定値に基づいて、溶存酸素濃度を制御することで効率よくTOCの除去が可能となる。
(第3の実施の形態)
【0027】
図5は、本発明の水処理システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図5に示すように、水処理装置20と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22とを備える水処理設備233を有している。水処理設備233(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、UV21および水処理装置22で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置22からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。また、本形態における水処理システムは、水処理設備233に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置10を有する。水処理管理装置10は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置32と、酸化剤添加手段である硫黄化合物添加部24とを有する。硫黄化合物添加部24は、水処理設備233に含まれていても良い。
【0028】
硫黄化合物添加部24は、制御装置32の制御に基づいて、UV21に通水される被処理水に酸化剤を添加する。硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤は、過酸化水素、ハロゲンオキソ酸、過マンガン酸塩、ペルオキシド基を含む硫黄化合物などの一般的な酸化剤であっても良い。硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤は、除去性能の観点でペルオキシド基を含む硫黄化合物であることが好ましい。ペルオキシド基を含む硫黄化合物としては、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウムやペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等が挙げられる。これらの硫黄化合物は、単独でまたは組み合わせで使用される。なお、本形態におけるUV21は、内部の圧力が所定の圧力の範囲である(第1の圧力以上であり、第2の圧力未満である)中圧紫外線照射装置または内部の圧力が所定の圧力(第2の圧力)以上である高圧紫外線照射装置である。UV21は、硫黄化合物添加部24から酸化剤が添加された被処理水に紫外線を照射する。UV21は、内部の圧力が所定の圧力(第1の圧力)未満である低圧紫外線照射装置でも良いが、紫外線ランプ1本当たりの照射電力が高い中圧紫外線照射装置や、高圧紫外線照射装置を用いる方が装置をコンパクトにできる点で好ましい。なお、UV21の後段に、還元手段を設けても良い。
【0029】
制御装置32は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた特定有機物濃度の値とに基づいて、水処理設備233を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置32は、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御する。こうすることで、制御装置32は、UV21の被処理水の酸化剤濃度を制御することができる(以下の説明についても同様)。例えば、制御装置32は、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値をTOC値へ変換(換算)する。この変換は、有機物分子内の炭素の原子量と有機物(例えば、尿素)の分子量との比率を用いて行われる。制御装置32は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、硫黄化合物添加部24から添加する酸化剤の添加量を算出しても良い。制御装置32は、酸化剤の添加量を算出する際、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率から酸化剤の添加量を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該差分や比率とそのときの水処理装置22からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。なお、制御装置32は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量と硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量とを算出しても良い。この場合、制御装置32は、算出した紫外線照射量の紫外線をUV21が照射するように制御し、算出した濃度の酸化剤を添加するように硫黄化合物添加部24を制御する。また、制御装置32は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始または停止させるものでも良い。例えば、差分が閾値よりも小さな値である場合、制御装置32は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を停止させ、差分が閾値以上である場合、制御装置32は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始させても良い。
【0030】
以下に、
図5に示した制御装置32における処理について説明する。
図6は、
図5に示した制御装置32における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、特定有機物測定部17が尿素の濃度を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
まず、制御装置32は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS21)。また、制御装置32は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値を取得する(ステップS22)。制御装置32は、取得した尿素の濃度の値をTOC値に換算する。制御装置32は、取得したTOC値と、尿素濃度から換算したTOC値とに基づいて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を算出する(ステップS23)。そして、制御装置32は、算出した濃度の酸化剤が添加されるように硫黄化合物添加部24を制御する(ステップS24)。
【0032】
このように本形態においては、水処理設備233に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置10を設け、水処理管理装置10の通水ライン上に通水されている水のTOC値と、特定有機物濃度とを測定器が測定する。制御装置32が、測定されたTOC値と特定有機物濃度とに基づいて、水処理設備233に設けられた紫外線照射装置に通水される被処理水に添加される酸化剤の添加量を制御する。水処理管理装置10で除去し難い尿素を考慮した測定値に基づいて、添加される酸化剤の添加量または紫外線の照射量を制御することで、安定的に効率の良いTOCの除去が可能となる。また、水処理設備233に設けられた紫外線照射装置の前段に酸化剤添加手段を設けてTOCを処理することで、TOC除去性能が向上する効果が得られる。なお、制御装置32が被処理水に添加される酸化剤の添加量と紫外線照射装置が照射する紫外線の照射量とのどちらを優先して制御するかは、処理性能の他、運用コストや後段に配置された水処理装置への負荷を考慮して決定しても良い。
(第4の実施の形態)
【0033】
図7は、本発明の水処理システムの第4の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図7に示すように、水処理装置20と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22と、内部の圧力が所定の圧力(第1の圧力)未満である紫外線照射装置である低圧UV25と、水処理装置26とを備える水処理設備234を有している。水処理設備234(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、UV21、水処理装置22、低圧UV25および水処理装置26で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置26からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。また、本形態における水処理システムは、水処理設備234に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置10を有する。水処理管理装置10は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置33と、酸化剤添加手段である硫黄化合物添加部24とを有する。硫黄化合物添加部24は、第3の実施の形態におけるものと同じものである。硫黄化合物添加部24は、水処理設備234に含まれていても良い。
【0034】
制御装置33は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値とに基づいて、水処理設備234を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置33は、UV21が照射する紫外線照射量と、低圧UV25が照射する紫外線照射量と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。例えば、制御装置33は、特定有機物測定部17から出力されてきた特定有機物濃度の値をTOC値へ変換(換算)する。この変換は、有機物分子内の炭素の原子量と有機物(例えば、尿素)の分子量との比率を用いて行われる。制御装置33は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量と、低圧UV25が照射する紫外線照射量と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを算出しても良い。制御装置33は、これらの照射量や濃度を算出する際、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率から照射量や濃度を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該差分や比率とそのときの水処理装置22からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。また、制御装置33は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始または停止させるものでも良い。例えば、差分が閾値よりも小さな値である場合、制御装置33は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を停止させ、差分が閾値以上である場合、制御装置33は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始させても良い。
【0035】
以下に、
図7に示した制御装置33における処理について説明する。
図8は、
図7に示した制御装置33における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、特定有機物測定部17が尿素の濃度を測定する場合を例に挙げて説明する。また、制御装置33が、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を制御する場合を例に挙げて説明する。
【0036】
まず、制御装置33は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS31)。また、制御装置33は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値を取得する(ステップS32)。制御装置33は、取得した尿素の濃度の値をTOC値に換算する。制御装置33は、取得したTOC値と、尿素濃度から換算したTOC値とに基づいて、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を算出する(ステップS33)。そして、制御装置33は、算出した照射量の紫外線を低圧UV25が照射するように低圧UV25を制御する(ステップS34)。
【0037】
このように本形態においては、水処理設備234に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置10を設け、水処理管理装置10の通水ライン上に通水されている水のTOC値と、特定有機物濃度とを測定器が測定する。制御装置33が、測定されたTOC値と特定有機物濃度とに基づいて、水処理設備234に設けられた紫外線照射装置の紫外線照射量と、低圧紫外線照射装置の紫外線照射量と、紫外線照射装置に通水される被処理水に添加される酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。水処理管理装置で除去し難い尿素を考慮した測定値に基づいて、紫外線の照射量や添加される酸化剤の添加量を制御することで効率よくTOCの除去が可能となる。なお、
図7に示した形態では、低圧UV25がUV21の後段に配置されている形態を示しているが、低圧UV25がUV21の前段に配置されていても良い。
【0038】
本形態のように紫外線照射装置としてUV21とは別の低圧UV25を配置することで、硫黄化合物添加部24から酸化剤(硫黄化合物)が添加された被処理水に紫外線を照射するUV21を常時運転する必要がない。また、低圧UV25は、低濃度、低照射量で運転することができるため、被処理水中のTOCを効率良く除去することができる。例えば、特定有機物が尿素である場合、TOCに対する尿素の比率が所定の閾値よりも高くなった場合のみ、硫黄化合物の添加と紫外線の照射とを用いた制御を行うことで、TOCを効率良く除去することができる。一般的に、硫黄化合物によるUV処理は中圧UVまたは高圧UVが用いられる。中圧UVおよび高圧UVは消費電力が大きいため、低圧UVを用いることで消費電力を低減することができる。
【0039】
また、本形態のように紫外線照射装置としてUV21とは別の低圧UV25を配置する場合、TOC測定部16が測定したTOC値と特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値とに基づいて、低圧UV25が照射する紫外線照射量および硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御することで、TOCをより効率良く除去することができる。また、硫黄化合物添加部24から酸化剤が添加された被処理水に紫外線を照射する運用時は、低圧UV25からの紫外線照射量を少なく制御しても良い。例えば、特定有機物が難分解の尿素である場合、TOC測定部16が測定したTOC値に対する特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値の比率を用いて2つの閾値(閾値A>閾値B)をあらかじめ設定し、測定時の比率が閾値A以上である場合、制御装置33は、当該比率に基づいて、硫黄化合物添加部24およびUV21の運転の開始または停止を含めて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量およびUV21が照射する紫外線照射量を制御し、測定時の比率が閾値B以下である場合、制御装置33は、当該比率に基づいて、低圧UV25の運転の開始または停止を含めて、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を制御しても良い。
【0040】
また、メインの水処理設備234に尿素を処理するための装置が設けられている場合、TOC測定部16が測定したTOC値に対する特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値の比率を用いて2つの閾値(閾値C<閾値D)をあらかじめ設定し、測定時の比率が閾値C以下である場合、制御装置33は、硫黄化合物添加部24の運転の開始または停止を含めて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御し、測定時の比率が閾値D以上である場合、制御装置33は、当該比率に基づいて、低圧UV25の運転の開始または停止を含めて、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を制御しても良い。制御装置33は、このような比率を用いても良いし、TOC測定部16が測定したTOC値と、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値との差分や比率を用いても良い。こうすることで、尿素以外の難分解性の有機物が混入時も安定した処理が可能となる。
(第5の実施の形態)
【0041】
図9は、本発明の水処理システムの第5の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図9に示すように、水処理装置20と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22と、脱気装置であるMD27と、内部の圧力が所定の圧力(第1の圧力)未満である紫外線照射装置である低圧UV25と、水処理装置26とを備える水処理設備235を有している。水処理設備235(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、UV21、水処理装置22、MD27、低圧UV25および水処理装置26で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置26からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。また、本形態における水処理システムは、水処理設備235に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置10を有する。水処理管理装置10は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置34と、酸化剤添加手段である硫黄化合物添加部24とを有する。硫黄化合物添加部24は、第3の実施の形態におけるものと同じものである。硫黄化合物添加部24は、水処理設備235に含まれていても良い。
【0042】
制御装置34は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値とに基づいて、水処理設備235を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置34は、UV21が照射する紫外線照射量と、MD27が制御するUV21の被処理水の溶存酸素濃度と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。例えば、制御装置34は、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値をTOC値へ変換(換算)する。この変換は、有機物分子内の炭素の原子量と有機物(例えば、尿素)の分子量との比率を用いて行われる。制御装置34は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と、特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量と、MD27が制御するUV21の被処理水の溶存酸素濃度と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを算出しても良い。制御装置34は、これらの照射量や溶存酸素濃度、酸化剤の添加量を算出する際、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率から照射量や溶存酸素濃度、酸化剤の添加量を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該差分や比率とそのときの水処理装置26からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。また、制御装置34は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値と特定有機物測定部17から出力されてきた有機物濃度の値から換算されたTOC値との差分や比率に基づいて、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始または停止させるものでも良い。例えば、差分が閾値よりも小さな値である場合、制御装置34は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を停止させ、差分が閾値以上である場合、制御装置34は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始させても良い。
【0043】
以下に、
図9に示した制御装置34における処理について説明する。
図10は、
図9に示した制御装置34における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、特定有機物測定部17が尿素の濃度を測定する場合を例に挙げて説明する。また、制御装置34が、UV21が照射する紫外線照射量または被処理水の溶存酸素濃度を制御する場合を例に挙げて説明する。
【0044】
まず、制御装置34は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS41)。また、制御装置34は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値を取得する(ステップS42)。制御装置34は、取得した尿素の濃度の値をTOC値に換算する。制御装置34は、取得したTOC値と、尿素濃度から換算したTOC値とに基づいて、UV21が照射する紫外線照射量、またはMD27が制御するUV21の被処理水の溶存酸素濃度とを算出する(ステップS43)。そして、制御装置34は、算出した照射量の紫外線をUV21が照射するようにUV21を制御する、または被処理水の溶存酸素濃度が算出した溶存酸素濃度になるようにMD27を制御する(ステップS44)。
【0045】
このように本形態においては、水処理設備235に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置10を設け、水処理管理装置10の通水ライン上に通水されている水のTOC値と、特定有機物濃度とを測定器が測定する。制御装置34が、測定されたTOC値と有機物濃度とに基づいて、水処理設備235に設けられた紫外線照射装置の紫外線照射量と、脱気装置が制御する紫外線照射装置の被処理水の溶存酸素濃度と、紫外線照射装置に通水される被処理水に添加される酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。水処理管理装置で除去し難い尿素を考慮した測定値に基づいて、紫外線の照射量や、被処理水の溶存酸素濃度、添加される酸化剤の添加量を制御することで効率よくTOCの除去が可能となる。
【0046】
また、本形態のように紫外線照射装置としてUV21とは別の低圧UV25を配置する場合、TOC測定部16が測定したTOC値と特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度の値とに基づいて、低圧UV25の前段に設けられたMD27が制御する低圧UV25の被処理水の溶存酸素濃度および硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御することで、TOCをより効率良く除去することができる。また、硫黄化合物添加部24から酸化剤が添加された被処理水に紫外線を照射する運用時は、低圧UV25からの紫外線照射量を少なく制御しても良い。例えば、特定有機物が難分解の尿素である場合、TOC測定部16が測定したTOC値に対する特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値の比率を用いて2つの閾値(閾値A>閾値B)をあらかじめ設定し、測定時の比率が閾値A以上である場合、制御装置34は、当該比率に基づいて、硫黄化合物添加部24の運転の開始または停止を含めて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御し、測定時の比率が閾値B以下である場合、制御装置34は、当該比率に基づいて、低圧UV25の運転の開始または停止を含めて、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を制御しても良い。
【0047】
また、メインの水処理設備235に尿素を処理するための装置が設けられている場合、TOC測定部16が測定したTOC値に対する特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値の比率を用いて2つの閾値(閾値C<閾値D)をあらかじめ設定し、測定時の比率が閾値C以下である場合、制御装置34は、硫黄化合物添加部24の運転の開始または停止を含めて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御し、測定時の比率が閾値D以上である場合、制御装置34は、当該比率に基づいて、低圧UV25の運転の開始または停止を含めて、低圧UV25が照射する紫外線の照射量を制御しても良い。制御装置34は、このような比率を用いても良いし、TOC測定部16が測定したTOC値と、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度のTOC換算値との差分や比率を用いても良い。こうすることで、尿素以外の難分解性の有機物が混入時も安定した処理が可能となる。
(第6の実施の形態)
【0048】
図11は、本発明の水処理システムの第6の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図11に示すように、水処理装置20と、紫外線照射装置であるUV21と、水処理装置22とを備える水処理設備236を有している。水処理設備236(具体的には水処理装置20)には、被処理水である原水が供給され、水処理装置20、UV21および水処理装置22で順次処理されることにより、所定の水質の水(例えば、純水等)が製造される。製造された水は、水処理装置22からユースポイントや他の水処理設備等へ供給される。また、本形態における水処理システムは、水処理設備236に供給される被処理水の少なくとも一部が供給される水処理管理装置18を有する。水処理管理装置18は、第1の実施の形態における水処理管理装置10の構成要素から特定有機物測定部17が除かれたものである。さらに、本形態における水処理システムは、制御装置35と、酸化剤添加手段である硫黄化合物添加部24とを有する。硫黄化合物添加部24は、第3の実施の形態におけるものと同じものである。硫黄化合物添加部24は、水処理設備236に含まれていても良い。
【0049】
制御装置35は、TOC測定部16から出力されてきたTOC濃度の値(TOC値)に基づいて、水処理設備236を構成する水処理装置の運転条件を制御する。本形態においては、制御装置35は、UV21が照射する紫外線照射量と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。例えば、制御装置35は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値に基づいて、UV21が照射する紫外線照射量と、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量との少なくとも1つを算出しても良い。制御装置35は、紫外線照射量や酸化剤の添加量を算出する際、TOC測定部16から出力されてきたTOC値から紫外線照射量や酸化剤の添加量を算出するための所定の算出式や対応付けを用いても良いし、当該TOC値とそのときの水処理装置22からユースポイントへ供給される水の水質(例えば、TOC値や溶存酸素濃度)とに基づいてあらかじめ算出された閾値(1つでも複数でも良い)との比較を用いても良い。制御装置35は、算出した紫外線照射量の紫外線をUV21が照射するように制御し、算出した濃度の酸化剤を添加するように硫黄化合物添加部24を制御する。また、制御装置35は、TOC測定部16から出力されてきたTOC値に基づいて、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始または停止させるものでも良い。例えば、TOC測定部16から出力されてきたTOC値が閾値よりも小さな値である場合、制御装置35は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を停止させ、TOC測定部16から出力されてきたTOC値が閾値以上である場合、制御装置35は、UV21の運転および硫黄化合物添加部24からの酸化剤の添加を開始させても良い。
【0050】
以下に、
図11に示した制御装置35における処理について説明する。
図12は、
図11に示した制御装置35における処理の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、制御装置35が、UV21が照射する紫外線の照射量または硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の量を制御する場合を例に挙げて説明する。
【0051】
まず、制御装置35は、TOC測定部16が測定したTOC値を取得する(ステップS51)。すると、制御装置35は、取得したTOC値に基づいて、UV21が照射する紫外線の照射量または硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を算出する(ステップS52)。制御装置35は、ステップS52にてUV21が照射する紫外線の照射量を算出した場合、算出した照射量の紫外線がUV21から照射されるようにUV21を制御する。または、制御装置35は、ステップS52にて硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を算出した場合、算出した濃度の酸化剤が添加されるように硫黄化合物添加部24を制御する(ステップS53)。
【0052】
このように本形態においては、水処理設備236に供給される被処理水の少なくとも一部が通水(供給)される水処理管理装置18を設け、水処理管理装置18の通水ライン上に通水されている水のTOC値を測定器が測定する。制御装置35が、測定されたTOC値に基づいて、水処理設備236に設けられた紫外線照射装置の紫外線照射量と、紫外線照射装置に通水される被処理水に添加される酸化剤の添加量との少なくとも1つを制御する。これにより、安定的に効率の良いTOCの除去が可能となる。また、紫外線照射装置の前段に酸化剤添加手段を設けてTOCを処理することで、TOC除去性能が向上する効果が得られる。
【0053】
上述した第1~6の実施の形態において、水処理管理装置10,18に通水される被処理水は、原水に限らず、水処理システム内のいずれかの処理水であっても良いし、原水が再生水や回収水であれば、その再生水や回収水を製造するシステム内の水処理装置のいずれかの処理水であっても良い。また、被処理水に応じて水処理管理装置10,18を複数設けても良い。また、水処理管理装置における処理水の測定値に加えて、水処理管理装置における紫外線の照射量や溶存酸素濃度に基づいて、水処理システムの紫外線の照射量を制御しても良い。
(実施例)
<実施例1-1>
【0054】
図13は、本発明の水処理システムの実施例1-1のための構成を示す図である。
図13に示すように、前処理を行う水処理装置201と紫外線照射装置(UV)202とイオン交換樹脂充填装置(CP)203とから構成された水処理設備200に、並列で水処理管理装置10を設置し、TOC含有水を通水処理した。CP203の処理水をTOC測定部204が測定した。水処理装置201は、TOC含有水から尿素を除去する機能を持つ。水処理管理装置10は、上述した実施の形態におけるものである。水処理管理装置10の処理水ラインにTOC測定部16と特定有機物測定部17とを設けた。水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、UV202が照射する紫外線の照射量を制御装置30が設定して制御した。
<比較例1-1>
【0055】
図14は、実施例1-1と比較する比較例1-1のための構成を示す図である。
図14に示すように、
図13に示した水処理設備200と同じ水処理設備200に、並列で水処理管理装置50を設置し、TOC含有水を通水処理した。CP203の処理水をTOC測定部204が測定した。水処理管理装置50は、
図13に示した水処理管理装置10から特定有機物測定部17が除外された構成を持つ。水処理管理装置50より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値)に基づいて、UV202が照射する紫外線の照射量を、制御装置40が実施例1-1と同じ測定値と照射量との関係性で設定して制御した。
<実施例1-2>
【0056】
図15は、本発明の水処理システムの実施例1-2のための構成を示す図である。
図15に示すように、
図13に示した実施例1-1のための構成に含まれるUV202の前段に脱気装置であるMD205を配置した水処理設備210を設置し、同様にTOC含有水を通水処理した。CP203の処理水をTOC測定部204が測定した。水処理管理装置10は、
図13に示した実施例1-1のための構成におけるものである。MD205として脱気膜と真空ポンプとを用いた真空脱気膜を用いて、水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、制御装置31がUV被処理水の溶存酸素濃度(DO濃度)を設定し、溶存酸素計の測定値がその設定値となるようにMD205の真空度を調整して制御した。なお、溶存酸素計はMD205とUV202との間に設けた。
<比較例1-2>
【0057】
図16は、実施例1-2と比較する比較例1-2のための構成を示す図である。
図16に示すように、
図15に示した水処理設備210と同じ水処理設備210に、並列で水処理管理装置50を設置し、TOC含有水を通水処理した。CP203の処理水をTOC測定部204が測定した。水処理管理装置50は、
図15に示した水処理管理装置10から特定有機物測定部17が除外された構成を持つ。水処理管理装置50より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値)に基づいて、溶存酸素濃度(DO濃度)を、制御装置41が実施例1-2と同じ測定値と溶存酸素濃度との関係性で設定して制御した。
【0058】
実施例1-1,1-2および比較例1-1,1-2の詳細試験条件を以下に示す。
紫外線照射装置:低圧UV酸化装置 (株)日本フォトサイエンス社製
イオン交換樹脂充填装置:強酸カチオン交換樹脂AMBERJET 1024 H型(オルガノ(株)製)、強塩基アニオン交換樹脂AMBERJET 4002 OH型(オルガノ(株)製) 混床充填
特定有機物(尿素)測定手段:オルガノ製ORUREA
水処理装置:尿素除去装置、ろ過装置、活性炭、イオン交換樹脂充填装置、逆浸透膜装置で構成
TOC含有水のTOC濃度:500~700ppb-C
TOC計:Sievers製M500e
水処理管理装置の逆浸透膜装置:2段処理
照射量制御:点灯ランプ本数で制御
脱気装置:真空脱気膜
溶存酸素制御:インバータを用いて脱気装置の真空度を調整
被処理水DO濃度:1ppm
尿素除去装置:次亜塩素酸ナトリウムおよび臭化ナトリウムが添加された滞留槽
【0059】
実施例1-1,1-2および比較例1-1,1-2の結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2における「尿素-TOC換算値」は、特定有機物測定部17が測定した尿素の濃度をTOC値に換算した値である(以下についても同じ)。
【0060】
【0061】
【0062】
表1に示すように、実施例1-1と比較例1-1とで、TOC測定部204が測定した値は、どちらも0.5ppb未満で維持されているものの、実施例1-1におけるUV202が照射する紫外線の照射量は0.1kWh/m3である一方で、比較例1-1におけるUV202が照射する紫外線の照射量は0.2~0.3kWh/m3に増加し制御される結果となった。これは、比較例1-1では紫外線処理で除去し難い尿素由来のTOCも含んだ測定値を用いて紫外線の照射量を制御しているためである。そのため、尿素以外のTOCに対して過剰な照射量となっている。したがって、尿素測定値(TOC換算値)を除外したTOC測定値を用いて紫外線の照射量を制御することで、過剰な照射量とならずに制御可能である結果が得られた。また、表2に示すように、実施例1-2と比較例1-2とでも同様に尿素測定値(TOC換算値)を除外したTOC測定値を用いて溶存酸素濃度を制御することで、過剰に溶存酸素濃度を低減することなく制御可能である結果が得られた。
<実施例2-1>
【0063】
図17は、本発明の水処理システムの実施例2-1のための構成を示す図である。
図17に示すように、前処理を行う水処理装置201と中圧UV装置である紫外線照射装置(UV)206とイオン交換樹脂充填装置(CP)203とから構成された水処理設備200に、並列で水処理管理装置10を設置し、TOC含有水を通水処理した。水処理管理装置10は、上述した実施の形態におけるものである。水処理管理装置10の処理水ラインにTOC測定部16と特定有機物測定部17とを設けた。また、UV206に通水される被処理水に酸化剤を添加する硫黄化合物添加部24を設けた。硫黄化合物添加部24は、水処理設備200に含まれていても良い。水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、硫黄化合物添加部24が添加する酸化剤の添加量を制御装置32が設定して制御した。その結果を表3に示す。実施例1-1,1-2と同様に、TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。
【0064】
【0065】
図18は、本発明の水処理システムの実施例2-2のための構成を示す図である。
図18に示すように、実施例2-2のための構成は
図17に示した構成と同じであり、制御装置32が、水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、UV206が照射する紫外線の照射量を設定して制御した。その結果を表4に示す。実施例1-1,1-2と同様に、TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。
【0066】
【0067】
図19は、本発明の水処理システムの実施例3-1のための構成を示す図である。
図19に示すように、前処理を行う水処理装置201と紫外線照射装置(UV)206とイオン交換樹脂充填装置(CP)203と脱気装置(MD)205と低圧の紫外線照射装置(UV)207とイオン交換樹脂充填装置(CP)208とから構成された水処理設備220に、並列で水処理管理装置10を設置し、TOC含有水を通水処理した。水処理管理装置10は、上述した実施の形態におけるものである。水処理管理装置10の処理水ラインにTOC測定部16と特定有機物測定部17とを設けた。水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、UV206,207それぞれが照射する紫外線の照射量を制御装置33が設定して制御した。このとき、2つの閾値(閾値E>閾値F)をあらかじめ設定し、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値E以上である場合、制御装置33はUV206から照射される紫外線の照射量を制御した。また、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値E未満であり、かつ閾値F以上である場合、制御装置33はUV206,207それぞれから照射される紫外線の照射量を一定値で制御した。また、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値F未満である場合、制御装置33はUV207から照射される紫外線の照射量を制御した。その結果を表5に示す。TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。硫黄化合物添加部24は、水処理設備220に含まれていても良い。
【0068】
【0069】
図20は、本発明の水処理システムの実施例3-2のための構成を示す図である。
図20に示すように、実施例3-2のための構成は
図19に示した構成と同じであり、制御装置34が、水処理管理装置10より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分)に基づいて、UV206が照射する紫外線の照射量およびUV被処理水の溶存酸素濃度を設定し、その設定値となるようにMD205の真空度を調整して制御した。このとき、2つの閾値(閾値G>閾値H)をあらかじめ設定し、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値G以上である場合、制御装置34はUV206から照射される紫外線の照射量を制御した。また、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値G未満であり、かつ閾値H以上である場合、制御装置34はUV206の照射量とUV被処理水の溶存酸素濃度とが一定値となるように制御した。また、TOC測定部16が測定した測定値と特定有機物測定部17が測定した尿素測定値のTOC換算値との差分が閾値H未満である場合、制御装置34はUV被処理水の溶存酸素濃度を設定し、その設定値となるようにMD205の真空度を調整して制御した。その結果を表6に示す。TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。
【0070】
【0071】
図21は、本発明の水処理システムの実施例4-1のための構成を示す図である。
図21に示すように、前処理を行う水処理装置201と中圧UV装置である紫外線照射装置(UV)206とイオン交換樹脂充填装置(CP)203とから構成された水処理設備200に、並列で水処理管理装置18を設置し、TOC含有水を通水処理した。水処理管理装置18は、上述した実施の形態におけるものである。水処理管理装置18の処理水ラインにTOC測定部16を設けた。また、UV206に通水される被処理水に酸化剤を添加する硫黄化合物添加部24を設けた。硫黄化合物添加部24は、水処理設備200に含まれていても良い。また、水処理装置201には尿素除去機能を設けていない。水処理管理装置18より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値)に基づいて、硫黄化合物添加部24が添加する過硫酸の濃度を制御装置35が設定して制御した。その結果を表7に示す。表7に示した比較例2の結果は、
図14に示した水処理装置201に尿素除去機能を設けず、UV206が中圧UV装置である構成における測定結果である。また、TOC測定部16と並列に尿素計を設置し、尿素計を用いて尿素濃度を測定した。
図21に示した構成にて、表7に示すように、TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。また、比較例2では尿素が除去されず、TOC測定部204が測定した値が1ppbを超える結果が得られた。
【0072】
【0073】
図22は、本発明の水処理システムの実施例4-2のための構成を示す図である。
図22に示すように、前処理を行う水処理装置201と中圧UV装置である紫外線照射装置(UV)206とイオン交換樹脂充填装置(CP)203とから構成された水処理設備200に、並列で水処理管理装置18を設置し、TOC含有水を通水処理した。水処理管理装置18は、上述した実施の形態におけるものである。水処理管理装置18の処理水ラインにTOC測定部16を設けた。また、UV206に通水される被処理水に酸化剤を添加する硫黄化合物添加部24を設けた。硫黄化合物添加部24は、水処理設備200に含まれていても良い。また、水処理装置201には尿素除去機能を設けていない。水処理管理装置18より得られた測定値(TOC測定部16が測定した測定値)に基づいて、UV206が照射する紫外線の照射量を制御装置35が設定して制御した。その結果を表8に示す。表8に示した比較例2の結果は、
図14に示した水処理装置201に尿素除去機能を設けず、UV206が中圧UV装置である構成における測定結果である。また、TOC測定部16と並列に尿素計を設置し、尿素計を用いて尿素濃度を測定した。
図22に示した構成にて、表8に示すように、TOC測定部204が測定した値は0.5ppb未満となり、安定的に処理可能である結果が得られた。また、比較例2では尿素が除去されず、TOC測定部204が測定した値が1ppbを超える結果が得られた。
【0074】
【符号の説明】
【0075】
10,18,50 水処理管理装置
11 活性炭
12 逆浸透膜装置
13 電気再生式純水装置
14,21,202,206,207 紫外線照射装置
15,203,208 イオン交換樹脂充填装置
16,204 TOC測定部
17 特定有機物測定部
20,22,26,201 水処理装置
23,27,205 脱気装置
24 硫黄化合物添加部
25 低圧紫外線照射装置
30~35,40,41 制御装置
200,210,220,231~236 水処理設備