(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042980
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】シートクッション
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20240322BHJP
D04H 3/033 20120101ALI20240322BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240322BHJP
【FI】
A47C27/12 E
D04H3/033
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147937
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌和
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康夫
(72)【発明者】
【氏名】林 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】永井 隆文
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
4L047
【Fターム(参考)】
3B087DE05
3B096AA01
3B096AB07
3B096AB08
3B096AD04
4L047CA05
4L047CB01
4L047CB02
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れるとともに、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションを提供する。
【解決手段】各々フィラメント3次元結合体で形成されたセンタークッション、前記センタークッションの左側に配置される左サイドクッション、および、前記センタークッションの右側に配置される右サイドクッションの各クッション部材を用いて構成され、上面で使用者の臀部を支持するシートクッションであって、前記センタークッションの圧縮時反発力が、前記左サイドクッションの圧縮時反発力および前記右サイドクッションの圧縮時反発力より小さく、前記各クッション部材の上部に形成された高密度平滑表面層どうしが、左右方向に隣接しているシートクッションとする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々フィラメント3次元結合体で形成されたセンタークッション、前記センタークッションの左側に配置される左サイドクッション、および、前記センタークッションの右側に配置される右サイドクッションの各クッション部材を用いて構成され、上面で使用者の臀部を支持するシートクッションであって、
前記センタークッションの圧縮時反発力が、前記左サイドクッションの圧縮時反発力および前記右サイドクッションの圧縮時反発力より小さく、
前記各クッション部材の上部に形成された高密度平滑表面層どうしが、左右方向に隣接していることを特徴とするシートクッション。
【請求項2】
前記左サイドクッションの右側面は、
右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの左側面に篏合した状態で面接触しており、
前記右サイドクッションの左側面は、
左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの右側面に篏合した状態で面接触していることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項3】
前記左サイドクッションの右側面は、
左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの左側面に面接触しており、
前記右サイドクッションの左側面は、
右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの右側面に面接触していることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項4】
前記センタークッションの高密度平滑表面層の密度が、前記左サイドクッションの高密度平滑表面層の密度および前記右サイドクッションの高密度平滑表面層の密度より小さいことを特徴とする請求項3に記載のシートクッション。
【請求項5】
前記センタークッションの高密度平滑表面層の左側面と前記左サイドクッションの高密度平滑表面層の右側面が、融着されることにより固定されており、
前記センタークッションの高密度平滑表面層の右側面と前記右サイドクッションの高密度平滑表面層の左側面が、融着されることにより固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のシートクッション。
【請求項6】
伸長防止部材を付加したクッションカバーを有し、
前記各クッション部材は、前記クッションカバーに収容されることにより互いに密着した状態が維持され、
前記伸長防止部材は、
前記クッションカバーの素材よりも伸び難い素材で形成され、前記各クッション部材を囲むように配置されたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のシートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や車椅子等の乗り物用のシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用シートに使用されるシートクッションにおいては、乗り物がカーブを曲がる際に遠心力の方向に身体が倒れにくいこと(以下、「ホールド性」と称することがある)が要求される。例えば、特許文献1には、座面の中央部に柔らかいクッションを配置し、その両サイドに硬いクッションを配置することによって、ホールド性を高めたシートクッションが開示されている。しかし、特許文献1のシートクッションではクッション素材として通気性の低いウレタンフォームが使用されているため、夏場などの暑い時期に蒸れやすくなる等の問題がある。
【0003】
また近年、複数の熱可塑性樹脂のフィラメントを3次元的に融着結合させたフィラメント3次元結合体からなるクッション素材が注目されている。例えば、特許文献2には、高密度平滑表面層を設けたフィラメント3次元結合体(網状構造体)の製造方法が記載されている。このようなフィラメント3次元結合体は空隙率が高くて通気性に優れることから、蒸れにくく水洗いしやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-137732号公報
【特許文献2】特許第4966438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した点を考慮して、フィラメント3次元結合体を利用することにより、蒸れにくいシートクッションを得ることが可能となる。さらには、フィラメント3次元結合体の表面に高密度平滑表面層を設けることにより、表面が滑らかになって座り心地が良くなると同時に、フィラメント3次元結合体の表面が強くなり耐久性が向上することが期待される。
【0006】
一方、通気性と耐久性を向上させるために、表面に高密度平滑表面層を設けたフィラメント3次元結合体をシートクッションの素材として使用した場合、臀部中央部の圧力が著しく高くなり、ホールド性がさらに低下するといった問題がある。高密度平滑表面層によりホールド性がさらに低下するメカニズムについて、
図15と
図16を用いて以下に説明する。
【0007】
図15は、表面に高密度平滑表面層を設けたフィラメント3次元結合体からなるシートクッション200の断面図である。シートクッション200は、フィラメント3次元結合体で形成された略直方体のクッションであり、使用者が着座する側に対応する上面とその反対側の下面には、各々上側高密度平滑表面層200aと下側高密度平滑表面層200bが形成されている。
【0008】
図16は、シートクッション200の上に使用者が座ることにより、シートクッション200が臀部Bに押されて変形している様子を示す断面図である。矢印F1~F3で模式的に示されるように、臀部Bがシートクッション200から受ける圧力は、臀部Bが最も深く沈む中央部近傍(より正確には座骨部)においてが最も大きくなり(矢印F1を参照)、臀部Bが浅くしか沈み込まない左右方向両端部近傍においてが小さくなる(矢印F3を参照)。
【0009】
矢印F1~F3に示されるような左右方向に圧力の差が生じる原因としては、フィラメント3次元結合体が弾性体であること、すなわち沈み込みが深いほど圧力が大きくなり、沈み込みが浅いほど圧力が小さくなることに起因する。表面に高密度平滑表面層を設けたフィラメント3次元結合体においては、高密度平滑表面層の張力T1により、臀部中央部(より正確には下向きの突起となる座骨部)において持ち上げられる力が強く働くことから、シートクッション200から受ける圧力が臀部中央部近傍において高くなる現象(以下、「トランポリン現象」と称することがある)が起こる。その結果、臀部中央部近傍を支点として臀部が左右に転がりやくすなるため、ホールド性が著しく低下する。
【0010】
本発明は上述した問題点に鑑み、蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れるとともに、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るシートクッションは、各々フィラメント3次元結合体で形成されたセンタークッション、前記センタークッションの左側に配置される左サイドクッション、および、前記センタークッションの右側に配置される右サイドクッションの各クッション部材を用いて構成され、上面で使用者の臀部を支持するシートクッションであって、前記センタークッションの圧縮時反発力が、前記左サイドクッションの圧縮時反発力および前記右サイドクッションの圧縮時反発力より小さく、前記各クッション部材の上部に形成された高密度平滑表面層どうしが、左右方向に隣接している構成とする。
【0012】
本構成によれば、蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れるとともに、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションとすることが可能となる。なおシートクッションにおける左右方向は、使用者の臀部幅の方向と略一致する。また「高密度平滑表面層」は、フィラメント3次元結合体の表面から0.5cmの深さまでの層であって、その内側よりもかさ密度が高く、フィラメントの端部(切断されたフィラメントの切り口等)が当該表面から外向きに突出していない層を指す。
【0013】
上記構成としてより具体的には、前記左サイドクッションの右側面は、右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの左側面に篏合した状態で面接触しており、前記右サイドクッションの左側面は、左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの右側面に篏合した状態で面接触している構成としても良い。なお「篏合状態」とは、互いに面接触しているフィラメント3次元結合体どうしにおいて、一方のフィラメント3次元結合体の表面から突出したフィラメントの先端が、他方のフィラメント3次元結合体の内部に刺さった状態(表面より内側に進入した状態)を指す。
【0014】
上記構成としてより具体的には、前記左サイドクッションの右側面は、左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの左側面に面接触しており、前記右サイドクッションの左側面は、右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、前記センタークッションの右側面に面接触している構成としても良い。
【0015】
上記構成としてより具体的には、前記センタークッションの高密度平滑表面層の密度が、前記左サイドクッションの高密度平滑表面層の密度および前記右サイドクッションの高密度平滑表面層の密度より小さい構成としても良い。なお「高密度平滑表面層の密度」は、高密度平滑表面層におけるかさ密度を指す。
【0016】
上記構成としてより具体的には、前記センタークッションの高密度平滑表面層の左側面と前記左サイドクッションの高密度平滑表面層の右側面が、融着されることにより固定されており、前記センタークッションの高密度平滑表面層の右側面と前記右サイドクッションの高密度平滑表面層の左側面が、融着されることにより固定されている構成としても良い。
【0017】
上記構成としてより具体的には、伸長防止部材を付加したクッションカバーを有し、前記各クッション部材は、前記クッションカバーに収容されることにより互いに密着した状態が維持され、前記伸長防止部材は、前記クッションカバーの素材よりも伸び難い素材で形成され、前記各クッション部材を囲むように配置された構成としても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシートクッションによれば、蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れるとともに、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るシートクッション1の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るシートクッション1の断面図である。
【
図3】シートクッション1が臀部Bに押されて変形したときの様子を示す断面図である。
【
図4A】フィラメント3次元結合体の製造装置100の概略図である。
【
図4B】
図4に示す製造装置100のA-A’断面矢視図である。
【
図5A】ノズル部116の下面の形態の一例を示す説明図である。
【
図5B】ノズル部116の下面の形態の一例を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態に係るシートクッション2の断面図である。
【
図7】シートクッション2が臀部Bに押されて変形したときの様子を示す断面図である。
【
図8】第3実施形態に係るシートクッション3の断面図である。
【
図9】第4実施形態に係るシートクッション4の断面図である。
【
図10】第5実施形態に係るシートクッション5の断面図である。
【
図11】第6実施形態に係るシートクッション6の断面図である。
【
図12】第7実施形態に係るシートクッション7の断面図である。
【
図13】第8実施形態に係るシートクッション8およびその変形例の断面図である。
【
図14】第9実施形態に係るシートクッション9およびその変形例の断面図である。
【
図15】表面に高密度平滑表面層を設けたフィラメント3次元結合体からなるシートクッションの断面図である。
【
図16】
図15に示すシートクッションが臀部に押されて変形している様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の各実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。以下の説明において、シートクッションに関する前後方向、左右方向、および上下方向(厚み方向)の各方向(互いに直交する方向)は、
図1等に示すとおりである。また特に断りの無い限り、シートクッションに関する断面は、前後方向と直交する任意の平面でシートクッションを切断した場合の断面であり、シートクッションに関する断面図は当該断面を示す図を指す。シートクッションに関する断面形状は、前方(または後方)から見たときの断面における形状を指す。
【0021】
なお、フィラメント3次元結合体の製造装置に関する前後方向、左右方向、および上下方向(厚み方向)の各方向(互いに直交する方向)は、
図4Aおよび
図4Bに示すとおりである。また各実施形態のシートクッションは、これを左右に二分する仮想平面を対称面として基本的に面対称の構造となっている。
【0022】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るシートクッション1の斜視図である。
図2は、シートクッション1の断面図である。
【0023】
シートクッション1は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション11、センタークッション11の左側に面接触して設けられる左サイドクッション12、および、センタークッション11の右側に面接触して設けられる右サイドクッション13の各クッション部材を用いて構成されている。シートクッション1は全体として略直方体の形状を有し、シートクッション1の上面1aで使用者の臀部を支持する。なおシートクッション1は基本的に、自動車や車椅子等の乗り物用シートクッションとして利用され、その左右方向が使用者の臀部幅の方向と略一致するように使用される。
【0024】
センタークッション11は、上底が下底より長い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面11aと下面11bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション11の左側面11cは、左右方向と直交する仮想平面(以下、「鉛直仮想面」と称することがある。)から約45度の角度で右に進むと下る(右に進むほど下方に向かう)方向に傾斜するように形成され、センタークッション11の右側面11dは、鉛直仮想面から約45度の角度で左に進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0025】
左サイドクッション12は、上底が下底より短い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面12aと下面12bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション12の左側面12cは左右方向と直交する平面状に形成され、左サイドクッション12の右側面12dは、鉛直仮想面から約45度の角度で右に進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0026】
右サイドクッション13は、上底が下底より短い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面13aと下面13bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション13の左側面13cは、鉛直仮想面から約45度の角度で左に進むと下る方向に傾斜するように形成され、右サイドクッション13の右側面13dは左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0027】
センタークッション11と左サイドクッション12の接触面、および、センタークッション11と右サイドクッション13の接触面においては、篏合状態で面接触している。なお、本願において「篏合状態」とは、互いに面接触しているフィラメント3次元結合体どうしにおいて、一方のフィラメント3次元結合体の表面から突出したフィラメントの先端が、他方のフィラメント3次元結合体の内部に刺さった状態(表面より内側に進入した状態)を指す。篏合状態で面接触していることにより、一方のフィラメント3次元結合体のフィラメントの先端が他方のフィラメント3次元結合体に引っ掛かり易くなり、接触面での滑りが抑えられ、意図しない臀部の沈み込みが防止できる。
【0028】
またシートクッション1において、センタークッション11の左側面11cと左サイドクッション12の右側面12dの間、および、センタークッション11の右側面11dと右サイドクッション13の左側面13cとの間で、使用者の着座に伴うシートクッション1の変形時にズレが生じないないように、各クッション部材11,12,13を滑りが生じないように固定することが好ましい。
【0029】
この固定方法としては、例えば、フィラメント3次元結合体の熱可塑性樹脂の融点以上の温度に設定した加熱板や超音波プラスチックウエルダーなどの加熱部材を用いて、センタークッション11の上面11aの高密度平滑表面層の左側面と左サイドクッション12の上面12a高密度平滑表面層の右側面、および、センタークッション11の上面11aの高密度平滑表面層の右側面と右サイドクッション13の上面13aの高密度平滑表面層の左側面を各々融着させる方法が挙げられる。このようにして各クッション部材11,12,13を固定すれば、臀部の荷重によりシートクッション1が変形しても、各クッション部材11,12,13どうしのズレが生じ難くなり、安定したホールド性と耐久性を得ることが可能となる。
【0030】
なお、このように各クッション部材11,12,13の上側の高密度平滑表面層どうしを融着するとともに、より強固な固定を実現するため、各クッション部材11,12,13の下側の高密度平滑表面層どうしを融着させても良い。すなわち、センタークッション11の下面11bの高密度平滑表面層の左側面と左サイドクッション12の下面12bの高密度平滑表面層の右側面、および、センタークッション11の下面11bの高密度平滑表面層の右側面と右サイドクッション13の下面13bの高密度平滑表面層の左側面を各々融着させても良い。
【0031】
また、他の固定方法としては、各クッション部材11,12,13をクッションカバーに収容することにより、各クッション部材11,12,13を互いに密着した状態に維持させるようにしても良い。各クッション部材11,12,13どうしが左右に加圧された状態を保つようにクッションカバーに収容されることにより、各クッション部材11,12,13どうしをしっかりと固定して、ズレを生じ難くすることができる。
【0032】
また、各クッション部材11,12,13を収容するクッションカバーとして、伸長防止部材を付加したクッションカバーを採用しても良い。この伸長防止部材は、クッションカバーの素材(例えば一般的な生地)よりも伸び難い素材(クッションカバーの生地よりも伸び難い生地、或いは樹脂製や金属製のファスナー等)で形成され、各クッション部材11,12,13を囲むように配置されたものとすると良い。例えば伸長防止部材は、クッションカバーに収容された状態の各クッション部材11,12,13の纏まりを上方視または前方視で囲むように、帯状に形成されたものとしても良い。このような伸長防止部材を付加したクッションカバーを利用することにより、各クッション部材11,12,13どうしをより確実に密着した状態に維持し、ズレを生じ難くすることができる。
【0033】
なお、接触面での滑りを抑える他の方法として、フィラメント3次元結合体の端部を加熱して接触面での融着(端部どうしの融着)を行う方法が考えられる。しかしながら高密度平滑表面層以外でも接触面での融着を行うと、高密度化してそこに板のような接触面(融着後の境界)が形成されるので、当該接触面の通気性が低下したり反発力が過度に高まることがある。一方、接触面での部分的な融着を行うだけでは、長期の使用により接触面が剥がれて、へたりやすくなる。そこで、後述するフィラメント3次元結合体の製造装置100により、各クッション部材11,12,13を一体的に成型してもよい。この点については、改めて詳細に説明する。
【0034】
また、シートクッション1の厚さ(上下方向寸法)としては、50mm以上であって200mm以下であることが好ましい。当該厚さが50mm未満の場合はホールド性が得られ難くなる虞があり、当該厚さが200mmを超えるとシートクッション1が嵩張りやすくなる。
【0035】
センタークッション11と左サイドクッション12の接触面、および、センタークッション11と右サイドクッション13の接触面の鉛直仮想面に対する傾斜角としては、30度~60度が好ましい。当該傾斜角が30度より小さいとホールド性が高まるが、臀部における左右からの圧迫感が強くなり、また臀部幅の許容範囲が小さくなる。一方で当該傾斜角が60度より大きいと、ホールド性が低下する虞がある。
【0036】
シートクッション1において良好なホールド性を得るため、センタークッション11の圧縮時反発力は、左サイドクッション12の圧縮時反発力および右サイドクッション13の圧縮時反発力より小さくされている。センタークッション11、左サイドクッション12、および右サイドクッション13の圧縮時反発力の具体的な値は、使用者の体重やシートクッション1の厚み等に応じて適切に決定すれば良い。
【0037】
一例としては、センタークッション11の圧縮時反発力を50N以上かつ80N以下にし、左サイドクッション12および右サイドクッション13の圧縮時反発力を100N以上かつ300N以下としても良い。良好なホールド性を得るためには、左サイドクッション12の圧縮時反発力および右サイドクッション13の圧縮時反発力を、センタークッション11の圧縮時反発力に対して1.5倍以上かつ4倍以下とすることが好ましく、2倍以上かつ3倍以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
本発明に関し、各クッション部材11、12、13の圧縮時反発力は次のように測定される。まず、先端部に直径150mmの円盤状の加圧板を取り付けた荷重子を、測定サンプルの上面に載置する。そしてこの荷重子を0.4167mm/sの速さで降下させて測定サンプルを厚み方向に圧縮し、測定サンプルの圧縮後厚さ(mm)が初期の厚さより7.5mm小さくなった時点で荷重子に加わっている荷重の値W(N)を記録する。この荷重の値Wを圧縮時反発力(N)とする。
【0039】
なお、測定サンプルの上面が直径150mmの円盤状の加圧板より狭い場合や測定サンプルの上面が平面でない場合においては、測定サンプルの上面に隙間なくフィットするように加圧板の形状を変えてもよい。この場合に圧縮時反発力(N)は、測定された値(N)をWとし、直径150mmの円の面積(cm2)をS1とし、加圧板の水平断面積(cm2)をS2として、W×S1/S2で算出される。
【0040】
センタークッション11の上面11a、左サイドクッション12の上面12a、および右サイドクッション13の上面13aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として5g/cm3以上かつ20g/cm3以下であることが好ましい。当該平均値が5g/cm3未満の場合は平滑性と強度が低下しやすくなる一方、20g/cm3を超えると表面張力が大きくなりトランポリン現象が生じやすくなる虞がある。なお本実施形態において、センタークッション11の上側の高密度平滑表面層の密度が、左サイドクッション12の上側の高密度平滑表面層の密度および右サイドクッション13の上側の高密度平滑表面層の密度より小さくなるように設定されても良い。
【0041】
センタークッション11の下面11b、左サイドクッション12の下面12b、および右サイドクッション13の下面13bの高密度平滑表面層の密度としては、特に制限はないが、平均値として25g/cm3以上かつ50g/cm3以下であることが好ましい。当該平均値が25g/cm3未満の場合は十分な強度が得られ難くなる一方、50g/cm3を超えると通気性が低下する虞がある。
【0042】
また本願において、高密度平滑表面層は、フィラメント3次元結合体の表面から0.5cmの深さまでの層であって、その内側よりもかさ密度が高く、フィラメントの端部(切断されたフィラメントの切り口等)が当該表面から外向きに突出していない層を指す。また高密度平滑表面層の密度は、高密度平滑表面層におけるかさ密度を指す。高密度平滑表面層の密度は、測定対象となる面を厚さ0.5cmになるように切り取って測定サンプルを作製し、測定サンプルの重量(g)を測定サンプルの体積(cm3)で割ることにより算出される。測定サンプルの体積(cm3)は、測定サンプルの上面面積(cm2)に厚さ0.5(cm)を乗じることで算出できる。
【0043】
本実施形態においては、シートクッション1は直方体形状を有するが、本発明の効果が損なわれない範囲で、前後方向の厚みを変えたり、表面に凹凸を設けるなど、シートクッションを異形状にしてもよい。
【0044】
図3は、シートクッション1の上に使用者が座ることにより、シートクッション1が臀部Bに押されて変形したときの様子を示す断面図である。矢印F1~F3で模式的に示されるように、臀部Bがシートクッション1から受ける圧力は、臀部Bが最も深く沈む中央部近傍(より正確には座骨部)において小さくなり(矢印F1)、臀部Bが浅くしか沈み込まない左右方向両端部近傍において、使用者の方向に向けて大きくなっている(矢印F3)。
【0045】
シートクッション1が高密度平滑表面層を有するフィラメント3次元結合体で形成されており、センタークッション11の圧縮時反発力を小さくし、左右のサイドクッション12,13の圧縮時反発力を大きくしていることから、
図3に示すように、臀部中央部近傍において深く沈み込む(圧縮率が高い)エリアでシートクッション1からの圧力が大きくなることを防ぎつつ、臀部両端部近傍において浅くしか沈み込まない(圧縮率が小さい)エリアで、シートクッション1からの圧力を大きくすることが可能になる。
【0046】
同時に、左右のサイドクッション12,13におけるセンタークッション11と接触する各側面が各々左右方向に傾斜していることから、シートクッション1から臀部Bが受ける圧力を中央部から左右方向両端部に向けて徐々に高くすることができるため、良好なホールド性が保てる臀部幅の許容範囲が広くなる。その結果、蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れ、臀部幅の異なる多くの使用者にとってホールド性に優れたシートクッション1が実現される。
【0047】
図4Aは、シートクッション1の製造に使用できるフィラメント3次元結合体の製造装置100の概略図である。
図4Bは、
図4Aに示す製造装置100のA-A’断面矢視図である。
【0048】
フィラメント3次元結合体の製造装置100は、直径が0.3mm~3mmの範囲内である複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部110と、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部120を備える。
【0049】
溶融フィラメント供給部110は、加圧溶融部111(押出機)とフィラメント排出部112(ダイ)を含む。加圧溶融部111は、材料投入部113(ホッパー)、スクリュー114、スクリュー114を駆動するスクリューモーター115、不図示のスクリューヒータ、および不図示の複数の温度センサを含み、内部には材料投入部113から供給された熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー(以下、これらを「熱可塑性樹脂等」と総称することがある。)をスクリューヒータにより加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー111aが形成されている。
【0050】
シリンダー111a内には、スクリュー114が回転可能に収容されている。シリンダー111aの下流側端部には、熱可塑性樹脂等をフィラメント排出部112に向けて排出するためのシリンダー排出口111bが形成されている。スクリューヒータの加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部110に設けた温度センサの検知信号に基づいて制御される。
【0051】
フィラメント排出部112は、ノズル部116、ダイヒータ118、および図示しない複数の温度センサを含み、内部にはシリンダー排出口111bから排出された溶融状態の熱可塑性樹脂等をノズル部116に導く導流路112aが形成されている。
【0052】
ノズル部116は、略直方体の金属製の厚板であり、導流路112aの最下流部にあたるフィラメント排出部112の下部に設けられている。
図5Aは、ノズル部116の下面の形態の一例を示している。このようにノズル部116の下面には、溶融フィラメントを排出する複数のノズル開口部116aが形成されている。一例として、ノズル開口部116aは前後左右方向に千鳥状に配置され、隣合うノズル開口部116aどうしの距離(ピッチ)は5~15mm程度である。
図5Aに示す例では、ノズル開口部116aの断面形状を内径1mmの円形とし、隣合うノズル開口部116aどうしの距離(ピッチ)を10mmとしている。但し、ノズル開口部116aの具体的形態は特に限定されない。
【0053】
また、各ノズル開口部116aの形状や内径、隣合うノズル開口部116aどうしの間隔、或いは、ノズル部116の下面におけるノズル開口部116aが占める割合(ノズル開口部116aの密度)などを、製造しようとするフィラメント3次元結合体の仕様に応じて適宜調整することが可能である。これにより、製造装置100で形成されるフィラメント3次元結合3DFのかさ密度、或いはこれを構成するフィラメントの形状や直径等を変えることができ、ひいては、当該フィラメント3次元結合3DFの圧縮時反発力を調節することが可能である。
【0054】
融着結合形成部120は、冷却水槽123、水中引取機(一対のスラットコンベア)124、複数の搬送ローラ125a~125h、およびフィラメント3次元結合体の厚みを規制する一対の受け板121を含む。受け板121は、下り傾斜となる平板状の傾斜面121aと、当該傾斜面121aの下端から鉛直方向下方に延びる平板状の鉛直面121bを含む屈曲部を有する金属板である。
【0055】
受け板121は、前後の傾斜面121aによって溶融フィラメント群MFの厚さ方向の端部を中央部側へ導くことにより、溶融フィラメント群MFの前後方向寸法を前後の鉛直面121bの間隔にまで縮小させ、溶融フィラメント群MFの厚さ方向の端部の密度を高めながら表面を平滑化させ、高密度平滑表面層を形成する。高密度平滑表面層の密度は、受け板121の傾斜面121aの鉛直方向上部に位置するノズル開口部116aの面積(ノズル開口部116aの直径や数)を変えることによって調整できる。
【0056】
受け板121の上端部近傍には、受け板121に冷却水を供給する冷却水供給装置122が設けられている。冷却水槽123は、冷却水Wを溜めておくための水槽である。冷却水槽123の内部には、水中引取機124、複数の搬送ローラ125a~125hが配設されている。水中引取機124および複数の搬送ローラ125a~125hは、不図示の駆動モーターにより駆動され、水中引取機124の速度を変えることによりフィラメント3次元結合体の圧縮時反発力を調整できる。
【0057】
フィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂等としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、或いはポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、或いはフッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0058】
材料投入部113から供給された熱可塑性樹脂等は、シリンダー111a内で加熱溶融され、例えばスクリュー114により押し出されるようにして、溶融状態の熱可塑性樹脂等としてシリンダー排出口111bからフィラメント排出部112の導流路112aに供給される。その後、ノズル部116の複数のノズル開口部116aそれぞれから下方へ並進するように、複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFが排出される。
【0059】
ノズル部116から排出された溶融フィラメント群MF(熱可塑性樹脂からなる複数のフィラメント)は、上述したように受け板121によって厚み(前後方向寸法)が整えられ、冷却水槽123内の冷却水Wの浮力作用によって撓み、その中の各溶融フィラメントはランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、が3次元的に絡み合った状態で、フィラメントどうしの接触点が融着結合しているフィラメント3次元結合体3DFが形成される。
【0060】
フィラメント3次元結合体3DFは、水中引取機124と複数の搬送ローラ125a~125hによって、冷却水槽123内の冷却水Wで冷却されながら搬送され、最終的には冷却水槽123の外部へ排出される。このようにして連続的に排出されるフィラメント3次元結合体3DFを、適切な間隔で搬送方向と直交する平面が断面となるように切断することで、各クッション部材11,12,13の形成に使用できるフィラメント3次元結合体の中間体(略直方体のフィラメント3次元結合体)を得ることができる。なお、センタークッション11の形成に利用されるフィラメント3次元結合体3DFとしては、左サイドクッション12および右サイドクッション13の形成に利用されるフィラメント3次元結合体3DFに比べて、圧縮時反発力が小さくなるように形成されたものを採用すれば良い。
【0061】
上述した中間体は、先述の溶融フィラメント群MFの厚さ方向の両端に対応する部分それぞれに高密度平滑表面層が形成されている。これらの高密度平滑表面層の一方を各クッション部材11,12,13の上側の高密度平滑表面層として利用し、他方を各クッション部材11,12,13の下側の高密度平滑表面層として利用することができる。このようにする場合、製造装置100における前後の鉛直面121bの間隔を、各クッション部材11,12,13の厚みに合うように設定すれば良い。そして例えば、各クッション部材11,12,13の形成に使用する中間体それぞれに対し、そのクッション部材の左側面と右側面それぞれを形成するようにカッター等による切断加工を行って、各クッション部材11,12,13を得ることができる。
【0062】
ここで、カッター等による切断加工を行って形成されたフィラメント3次元結合体の切断面では、フィラメント3次元結合体を形成するフィラメントのループ形状が切断されたこと等により、多数のフィラメントの端部が外向きに突出した状態となっている。このような切断面どうしを面接触させると、先述した篏合状態での面接触が実現される。そのため、センタークッション11の左側面11cと右側面11d、左サイドクッション12の右側面12d、および、右サイドクッション13の左側面13cをこのような切断面として形成することにより、センタークッション11と左サイドクッション12の接触面、および、センタークッション11と右サイドクッション13の接触面において、篏合状態での面接触を容易に実現させることが可能となる。
【0063】
但し、各クッション部材11,12,13の形成方法は上述したものに限定されず、他の方法で各クッション部材11,12,13が形成されても良い。なお、フィラメント3次元結合体に高密度平滑表面層を形成する手法としては、カッター等による切断加工によって形成された切断面に対し、当該切断面を加熱溶融させながら押圧用の工具や機械等で押圧することにより、高密度平滑表面層を形成する手法も採用され得る。
【0064】
また、製造装置100における前後の鉛直面121bの間隔をシートクッション1の厚みに合うように設定するとともに、ノズル部116の左右方向をシートクッション1の左右方向に対応させ、さらに
図5Bに例示するノズル部116のように、各クッション部材11,12,13の位置に応じてノズル開口部116aの密度等を適切に設定して、製造装置100により各クッション部材11,12,13を一体的に成型しても良い。
【0065】
図5Bに例示するノズル部116では、センタークッション11の位置に対応した領域(左右方向中央寄りの領域)では、センタークッション11におけるフィラメント3次元結合体のかさ密度が比較的小さくなるように、ノズル開口部116aの密度が比較的小さく設定されている。一方、左右のサイドクッション12,13の位置に対応した領域(左右方向両端寄りの領域)では、左右のサイドクッション12,13におけるフィラメント3次元結合体のかさ密度が比較的大きくなるように、ノズル開口部116aの密度が比較的大きく設定されている。このようなノズル部116を設けた製造装置100によれば、各クッション部材11,12,13を一体的に成型することができ、かつ、左右のサイドクッション12,13の圧縮時反発力を、センタークッション11の圧縮時反発力よりも大きくすることが可能である。
【0066】
以上に説明したとおりシートクッション1は、各々フィラメント3次元結合体で形成されたセンタークッション11、センタークッション11の左側に配置される左サイドクッション12、および、センタークッション11の右側に配置される右サイドクッション13の各クッション部材を用いて構成され、上面で使用者の臀部を支持するように構成されている。そしてセンタークッション11の圧縮時反発力が、左サイドクッション12の圧縮時反発力および右サイドクッション13の圧縮時反発力より小さく、各クッション部材11,12,13の上部に形成された高密度平滑表面層どうしが、左右方向に隣接している。
【0067】
このようにシートクッション1は、非常に通気性の高いフィラメント3次元結合体で形成された各クッション部材11,12,13を用いて構成されているため、例えばクッション素材として通気性の低いウレタンフォームを用いて構成されたものに比べ、蒸れにくくなっている。また、左右方向に隣接した各クッション部材11,12,13の上部の高密度平滑表面層によって臀部を支持することができるため、シートクッション1は座り心地が良く、耐久性にも優れている。なお、各クッション部材11,12,13の上部に形成された高密度平滑表面層どうしは左右方向に隣接しているため、隣合うクッション部材どうしにおける高密度平滑表面層の上下方向の位置ずれによって、座り心地を損ねることは極力回避される。
【0068】
更に、センタークッション11の圧縮時反発力を小さくし、左右のサイドクッション12,13の圧縮時反発力を大きくしていることから、臀部中央部近傍において深く沈み込む(圧縮率が高い)エリアでシートクッション1から臀部が受ける圧力が大きくなることを防ぎつつ、臀部両端部近傍において浅くしか沈み込まない(圧縮率が小さい)エリアで、シートクッション1からの圧力を大きくすることが可能になる。そのためシートクッション1によれば、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションが実現される。
【0069】
またシートクッション1において、左サイドクッション12の右側面12dは、右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、センタークッション11の左側面11cに面接触しており、右サイドクッション13の左側面13cは、左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、センタークッション11の右側面11dに面接触している。
【0070】
そのため、シートクッション1から臀部が受ける圧力を、中央部から左右方向両端部に向けて徐々に高くすることができるため、良好なホールド性が保てる臀部幅の許容範囲が広くなる。これによりシートクッション1は、臀部幅の異なる多くの使用者にとってホールド性に優れたシートクッションとなっている。例えば、臀部幅の狭い使用者が使用する場合であっても、左右のサイドクッション12,13を臀部の支持に活かすことができ、乗り物がカーブを曲がる際の遠心力等により体が左右に揺れやすくなったり、ホールド性が損なわれたりする事態を極力防ぐことができる。
【0071】
またシートクッション1において、左サイドクッション12の右側面12dは、センタークッション11の左側面11cに篏合した状態で面接触しており、右サイドクッション13の左側面13cは、センタークッション11の右側面11dに篏合した状態で面接触している。そのためシートクッション1は、各クッション部材11,12,13どうしの接触面での滑りが抑えられ、意図しない臀部の沈み込みを抑えることが可能となっている。
【0072】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
【0073】
図6は、第2実施形態に係るシートクッション2の断面図である。シートクッション2は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション21、センタークッション21の左側に面接触して設けられる左サイドクッション22、および、センタークッション21の右側に面接触して設けられる右サイドクッション23の各クッション部材を用いて構成されている。シートクッション2は全体として略直方体の形状を有し、シートクッション2の上面2aで使用者の臀部を支持する。
【0074】
センタークッション21は、上底が下底より短い台形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面21aと下面21bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション21の左側面21cは、鉛直仮想面から約30度の角度で左に進むと下る方向に傾斜するように形成されている。センタークッション21の右側面21dは、鉛直仮想面から約30度の角度で右に進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0075】
左サイドクッション22は、上底が下底より長い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面22aと下面22bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション22の左側面22cは左右方向と直交する平面状に形成され、左サイドクッション22の右側面22dは、鉛直仮想面から約30度の角度で左に進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0076】
右サイドクッション23は、上底が下底より長い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面23aと下面23bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション23の左側面23cは、鉛直仮想面から約30度の角度で右に進むと下る方向に傾斜するように形成され、右サイドクッション23の右側面23dは左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0077】
センタークッション21と左サイドクッション22の接触面、および、センタークッション21と右サイドクッション23の接触面においては、篏合状態で面接触している。シートクッション2の厚さは、80mm以上かつ200mm以下であることが好ましい。シートクッション2の厚さが80mm未満の場合は、ホールド性が得られ難くなる虞があり、当該厚さが200mmを超えると、シートクッション2が嵩張りやすくなる虞がある。
【0078】
センタークッション21と左サイドクッション22の接触面、および、センタークッション21と右サイドクッション23の接触面の鉛直仮想面に対する傾斜角としては、20度~50度であることが好ましい。当該傾斜角が20度より小さいとシートクッション2のホールド性が低下する一方、当該傾斜角が50度より大きいと、当該ホールド性が高まるものの、臀部における左右からの圧迫感が強くなりすぎる。
【0079】
シートクッション2において良好なホールド性を得るため、センタークッション21の圧縮時反発力は、左サイドクッション22の圧縮時反発力および右サイドクッション23の圧縮時反発力より小さくされている。センタークッション21、左サイドクッション22、および右サイドクッション23の圧縮時反発力の具体的な値は、使用者の体重やシートクッション2の厚み等に応じて適切に決定すれば良い。
【0080】
一例としては、センタークッション21の圧縮時反発力を50N以上かつ80N以下にし、左サイドクッション22および右サイドクッション23の圧縮時反発力を100N以上かつ300N以下としても良い。良好なホールド性を得るためには、左サイドクッション22の圧縮時反発力および右サイドクッション23の圧縮時反発力を、センタークッション21の圧縮時反発力に対して1.5倍以上かつ4倍以下とすることが好ましく、2倍以上かつ3倍以下とすることがさらに好ましい。
【0081】
シートクッション2においては、センタークッション21の上側の高密度平滑表面層の密度が、左サイドクッション22の上側の高密度平滑表面層の密度および右サイドクッション23の上側の高密度平滑表面層の密度より小さくなるように設定されている。センタークッション21の上面21aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として5g/cm3以上かつ20g/cm3以下であることが好ましい。5g/cm3未満の場合、平滑性と強度が低下しやすくなり、20g/cm3を超えると表面張力が大きくなりトランポリン現象が生じやすくなる。
【0082】
左サイドクッション22の上面22aおよび右サイドクッション23の上面23aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として20g/cm3以上かつ50g/cm3以下であることが好ましい。当該平均値が20g/cm3未満の場合、ホールド性が低下しやすくなる一方、50g/cm3を超えると体圧分散性が低下し、ゴワゴワした座り心地になる。
【0083】
センタークッション21の下面21b、左サイドクッション22の下面22b、および右サイドクッション23の下面23bの高密度平滑表面層の密度としては、特に制限はないが、平均値として25g/cm3以上かつ50g/cm3以下であることが好ましい。当該平均値が25g/cm3未満の場合は十分な強度が得られ難くなる一方、50g/cm3を超えると通気性が低下する虞がある。
【0084】
本実施形態においては、シートクッション2は直方体形状を有するが、本発明の効果が損なわれない範囲で、前後方向の厚みを変えたり、表面に凹凸を設けるなど、シートクッションを異形状にしてもよい
【0085】
図7は、シートクッション2の上に使用者が座ることにより、シートクッション2が臀部Bに押されて変形したときの様子を示す断面図である。本図に示すようにシートクッション2は、各クッション部材21,22,23の上面で臀部Bを支持する。
【0086】
矢印F1~F3で模式的に示されるように、臀部Bがシートクッション2から受ける圧力は、臀部Bが最も深く沈む中央部近傍(より正確には座骨部)において小さくなり(矢印F1を参照)、臀部Bが浅くしか沈み込まない左右方向両端部近傍において、使用者の方向に向けて大きくなっている(矢印F3を参照)。
【0087】
以上に説明したとおり、シートクッション2においては、左サイドクッション22の右側面22dcは、左に進むと下る方向に傾斜しているとともに、センタークッション21の左側面21cに面接触しており、右サイドクッション23の左側面23cは、右に進むと下る方向に傾斜しているとともに、センタークッション21の右側面21dに面接触している。
【0088】
センタークッション21の圧縮時反発力が左サイドクッション22および右サイドクッション23の圧縮時反発力より小さいことに加えて、センタークッション21と左サイドクッション22および右サイドクッション23との接触面が各々左右方向外側に進むと下る方向に傾斜していることから、シートクッション2に使用者の臀部の荷重が加わった際に、左右のサイドクッション22,23の上面が使用者の方に向かって内側に押す向きに傾斜しやすくなる。その結果、センタークッション21の上面の高密度平滑表面層の密度を過度に低くしなくても、トランポリン現象を抑えることができるので、ホールド性と耐久性および滑らかな座り心地を両立できる。
【0089】
また、上記のように各接触面が傾斜していることから、センタークッション21の容積を過度に減らすことなく、使用者の臀部を支持するシートクッション2の上面において圧縮時反発力の高いサイドクッション22,23の占有率を高くすることが可能となる。その結果、使用者の臀部の左右両サイド近傍が圧縮時反発力の高い左右のサイドクッション22,23で支持されるので、使用者の臀部幅が狭くてもホールド性が得られやすくなり、良好なホールド性が得られる臀部幅の許容範囲がさらに広がる。例えば、臀部幅の狭い使用者が使用する場合であっても、左右のサイドクッション22,23を臀部の支持に活かすことができ、乗り物がカーブを曲がる際の遠心力等により体が左右に揺れやすくなったり、ホールド性が損なわれたりする事態を極力防ぐことができる。
【0090】
3.第3実施形態
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
【0091】
図8は、第3実施形態に係るシートクッション3の断面図である。シートクッション3は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション31と、センタークッション31の左側面に篏合状態で面接触して設けられる左サイドクッション32と、センタークッション31の右側面に篏合状態で面接触して設けられるして右サイドクッション33と、ベースクッション34と、を備える。ベースクッション34は、センタークッション31、左サイドクッション32、および右サイドクッション33の下側全体覆うように、シートクッション3の下側に配置されている。シートクッション3は全体として略直方体の形状を有し、シートクッション3の上面3aで使用者の臀部を支持する。
【0092】
センタークッション31は、上底が下底より短い台形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面31aと下面31bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション31の左側面31cは、鉛直面から約45度の角度で左へ進むと下る方向に傾斜するように形成され、センタークッション31の右側面31dは、鉛直面から約45度の角度で右へ進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0093】
左サイドクッション32は、上底が下底より長い台形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面32aと下面32bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション32の左側面32cは左右方向と直交する平面状に形成され、左サイドクッション32の右側面32dは、鉛直面から約45度の角度で左へ進むと下る方向に傾斜するように形成されている。
【0094】
右サイドクッション33は、上底が下底より長い台形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面33aと下面33bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション33の左側面33cは、鉛直面から約45度の角度で右へ進むと下る方向に傾斜するように形成され、右サイドクッション33の右側面33dは左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0095】
ベースクッション34は、略直方体のフィラメント3次元結合体で形成され、上面34aと下面34bに高密度平滑表面層を有する。シートクッション3の厚さとしては、80mm以上200mm以下が好ましい。80mm未満の場合、ホールド性が得られ難く、200mmを超えるとシートクッションが嵩張りやすくなる。
【0096】
シートクッション3が良好なホールド性を得るためには、センタークッション31の圧縮時反発力は、左サイドクッション32の圧縮時反発力および右サイドクッション33の圧縮時反発力より小さくする必要がある。センタークッション31、左サイドクッション32の圧縮時反発力、右サイドクッション33およびベースクッション34の圧縮時反発力としては、使用者の体重やシートクッション3の厚みに応じて最適な圧縮時反発力を決定すればよいが、例えば、センタークッション31においては50N以上かつ80N以下とし、左サイドクッション32の圧縮時反発力および右サイドクッション33においては100N以上かつ300N以下とし、ベースクッション34においては100N以上かつ200N以下とすると良い。
【0097】
良好なホールド性を得るためには、左サイドクッション32の圧縮時反発力および右サイドクッション33の圧縮時反発力を、センタークッション31の圧縮時反発力に対して1.5倍以上かつ4倍以下とすることが好ましく、2倍以上かつ3倍以下とすることがさらに好ましい。
【0098】
シートクッション3においては、センタークッション31の上側の高密度平滑表面層の密度が、左サイドクッション32の上側の高密度平滑表面層の密度および右サイドクッション33の上側の高密度平滑表面層の密度より小さくなるように設定されている。センタークッション31の上面31aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として5g/cm3以上かつ20g/cm3以下であることが好ましい。5g/cm3未満の場合、平滑性と強度が低下しやすくなり、20g/cm3を超えると表面張力が大きくなりトランポリン現象が生じやすくなる。
【0099】
左サイドクッション32の上面32aおよび右サイドクッション33の上面33aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として20g/cm3以上かつ50g/cm3以下であることが好ましい。20g/cm3未満の場合、ホールド性が低下しやすくなり、50g/cm3を超えると体圧分散性が低下し、ゴワゴワした座り心地になる。
【0100】
センタークッション31の下面31b、左サイドクッション32の下面32b、および右サイドクッション33の下面33bの高密度平滑表面層の密度としては特に制限はないが、平均値として25g/cm3以上かつ50g/cm3以下であることが好ましい。25g/cm3未満の場合、十分な強度が得られ難くなり、50g/cm3を超えると通気性が低下する。
【0101】
ベースクッション34の上面34aの高密度平滑表面層の密度としては、平均値として10g/cm3以上かつ30g/cm3以下であることが好ましい。10g/cm3以上とすることで、シートクッション3の中間層に張力の高い高密度平滑表面層が形成されるので、センタークッション31の中央部に膝などの局所的な荷重が加わった際にもトランポリン現象により、底付き感を抑えることができる。30g/cm3を超えると表面張力が大きくなりすぎるため、座り心地が硬く感じる傾向がある。
【0102】
ベースクッション34の厚さとしては、40mm以上かつ80mm以下であることが好ましい。40mm未満の場合、局所的な荷重に対する底付き感が抑えにくくなり、80mmを超えると座り心地が硬く感じる傾向がある。
【0103】
本実施形態においては、シートクッション3は直方体形状を有するが、本発明の効果が損なわれない範囲で、前後方向の厚みを変えたり、表面に凹凸を設けるなど、異形状にしてもよい。
【0104】
4.第4実施形態
次に本発明の第4実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。第4実施形態のシートクッションは、各クッション部材どうしの接触面の形状が異なる点を除いて、基本的に第1実施形態のシートクッションと同等の構成となっている。
【0105】
図9は、第4実施形態に係るシートクッション4の断面図である。シートクッション4は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション41と、センタークッション41の左側面に篏合状態で面接触して設けられる左サイドクッション42と、センタークッション41の右側面に篏合状態で面接触して設けられる右サイドクッション43と、を備える。
【0106】
センタークッション41は、六角形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面41aと下面41bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション41の左側面41cと右側面41dそれぞれは、
図9に示すように、上下方向端部から中央部に進むと左右方向外側へ向かうように傾斜した二つの傾斜面を有する。
【0107】
左サイドクッション42は、五角形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面42aと下面42bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション42の左側面42cは左右方向と直交する平面状に形成され、左サイドクッション42の右側面42dは、センタークッション41の左側面41cと全体的に面接触可能となる形状に形成されている。
【0108】
右サイドクッション43は、五角形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面43aと下面43bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション43の左側面43cは、センタークッション41の右側面41dと全体的に面接触可能となる形状に形成され、右サイドクッション43の右側面43dは左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0109】
5.第5実施形態
次に本発明の第5実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。第5実施形態のシートクッションは、各クッション部材どうしの接触面の形状が異なる点を除いて、基本的に第1実施形態のシートクッションと同等の構成となっている。
【0110】
図10は、第5実施形態に係るシートクッション5の断面図である。シートクッション5は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション51と、センタークッション51の左側面に篏合状態で面接触して設けられる左サイドクッション52と、センタークッション51の右側面に篏合状態で面接触して設けられる右サイドクッション53と、を備える。
【0111】
センタークッション51は、略長方形(但し左右の各辺は円弧状)の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面51aと下面51bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション51の左側面51cと右側面51dの断面形状は左右方向外側に膨らむ円弧状に形成されている。
【0112】
左サイドクッション52は、略長方形(但し右辺は円弧状)の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面52aと下面52bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション52の左側面52cは左右方向と直交する平面状に形成され、左サイドクッション52の右側面52dの断面形状は、センタークッション51の左側面51cと全体的に面接触可能となるように左方向に膨らむ円弧状に形成されている。
【0113】
右サイドクッション53は、略長方形(但し左辺は円弧状)の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面53aと下面53bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション53の左側面53cの断面形状は、センタークッション51の右側面51dと全体的に面接触可能となるように右方向に膨らむ円弧状に形成され、右サイドクッション53の右側面53dは左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0114】
6.第6実施形態
次に本発明の第6実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
第6実施形態のシートクッションは、複数の円柱状の空洞hを設けた点を除いて、基本的に第2実施形態のシートクッションと同等の構成となっている。
【0115】
図11は、第6実施形態に係るシートクッション6の断面図である。シートクッション6は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション61と、センタークッション61の左側面に篏合状態で面接触して設けられる左サイドクッション62と、センタークッション61の右側面に篏合状態で面接触して設けられる右サイドクッション63と、を備える。
【0116】
センタークッション61は、上底が下底より短い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面61aと下面61bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション61の内部には、それぞれ前側(膝側)から後側(腰側)の方向に延びる複数の円柱状の空洞hが形成されている。
【0117】
左サイドクッション62は、上底が下底より長い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面62aと下面62bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション62の内部には、それぞれ前側(膝側)から後側(腰側)の方向に延びる複数の円柱状の空洞hが形成されている。
【0118】
右サイドクッション63は、上底が下底より長い台形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面63aと下面63bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション63の内部には、それぞれ前側(膝側)から後側(腰側)の方向に延びる複数の円柱状の空洞hが形成されている。
【0119】
7.第7実施形態
次に本発明の第7実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
第7実施形態のシートクッションは、センタークッションの左右両側寄りの一部を空洞hとした点を除いて、基本的に第4実施形態のシートクッションと同等の構成となっている。
【0120】
図12は、第7実施形態に係るシートクッション7の断面図である。シートクッション7は、左右方向中央部に配設されるセンタークッション71と、センタークッション71の左側に設けられる左サイドクッション72と、センタークッション71の右側に設けられるして右サイドクッション73と、を備える。
【0121】
センタークッション71は、長方形の断面形状であるフィラメント3次元結合体で形成され、上面71aと下面71bに高密度平滑表面層を有する。センタークッション71の右側面71cと左側面71dは、左右方向と直交する平面状に形成されている。
【0122】
左サイドクッション72は、五角形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面72aと下面72bに高密度平滑表面層を有する。左サイドクッション72は、第4実施形態の左サイドクッション42と同等の形状に形成されている。
【0123】
右サイドクッション73は、五角形断面のフィラメント3次元結合体で形成され、上面73aと下面73bに高密度平滑表面層を有する。右サイドクッション73は、第4実施形態の右サイドクッション43と同等の形状に形成されている。
【0124】
なお、左サイドクッション72および右サイドクッション73の上側の高密度平滑表面層は、センタークッション71の上側の高密度平滑表面層と左右方向に隣接しており、左サイドクッション72および右サイドクッション73の下側の高密度平滑表面層は、センタークッション71の下側の高密度平滑表面層と左右方向に隣接している。このような構成によりシートクッション7においては、センタークッション71の左右それぞれに三角柱状の空洞hが設けられている。
【0125】
8.第8実施形態
次に本発明の第8実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
【0126】
図13は、第8実施形態に係るシートクッション8およびその各変形例の断面図を示している。なお、
図13に示す各シートクッションの各クッション層は、第2実施形態のシートクッション2と同様に上部と下部に高密度平滑表面層が設けられているが、
図13では高密度平滑表面層の表示を省略している。また
図13において、「H」は圧縮時反発力が相対的に大きいフィラメント3次元結合体からなる高反発クッションを示し、「S」は圧縮時反発力が相対的に小さいフィラメント3次元結合体からなる低反発クッションを示す。
【0127】
図13(a)は、シートクッション8の断面図である。シートクッション8は、上クッション層と下クッション層からなる2層構造を有し、各クッション層の基本的な構成は、第2実施形態のシートクッション2と同等である。
【0128】
図13(b)は、シートクッション8の変形例となるシートクッション81の断面図である。シートクッション81は、下クッション層における高反発クッションおよび低反発クッションの形状が異なる点を除いてシートクッション8と同じ構成となっている。
【0129】
図13(c)は、シートクッション8の別の変形例となるシートクッション82の断面図である。シートクッション82は、シートクッション8の下クッション層が上下反転している点を除いてシートクッション8と同じ構成となっている。
【0130】
図13(d)は、シートクッション8の更に別の変形例となるシートクッション83の断面図である。シートクッション83は、上クッション層における高反発クッションおよび低反発クッションの形状が異なる点を除いてシートクッション82と同じ構成となっている。
【0131】
9.第9実施形態
次に本発明の第9実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項について説明を省略することがある。
【0132】
図14は、第9実施形態に係るシートクッション9およびその各変形例の断面図である。なお、
図14に示す各シートクッションの各クッション層は、第2実施形態のシートクッション2と同様に上部と下部に高密度平滑表面層が設けられているが、
図14では高密度平滑表面層の表示を省略している。また
図14において、「H」は圧縮時反発力が相対的に大きいフィラメント3次元結合体からなる高反発クッションを示し、「S」は圧縮時反発力が相対的に小さいフィラメント3次元結合体からなる低反発クッションを示す。
【0133】
図14(a)は、シートクッション9の断面図である。シートクッション9は、上クッション層、中クッション層および下クッション層からなる3層構造を有し、各クッション層の基本的な構成は、第2実施形態のシートクッション2と同等である。
【0134】
図14(b)は、シートクッション9の変形例となるシートクッション91の断面図である。シートクッション91は、中クッション層および下クッション層における高反発クッションおよび低反発クッションの形状が異なる点を除いてシートクッション9と同じ構成となっている。
【0135】
図14(c)は、シートクッション9の別の変形例となるシートクッション92の断面図である。シートクッション92は、上クッション層の上下が反転している点を除いてシートクッション9と同じ構成となっている。
【0136】
図14(d)は、シートクッション9の更に別の変形例となるシートクッション93の断面図である。シートクッション93は、上クッション層が低反発クッションのみで構成されている点を除いてシートクッション9と同じ構成となっている。
【0137】
図14(e)は、シートクッション9の更に別の変形例となるシートクッション94の断面図である。シートクッション93は、下クッション層が高反発クッションのみで構成されている点を除いてシートクッション9と同じ構成となっている。
【0138】
図14(f)は、シートクッション9の更に別の変形例となるシートクッション95の断面図である。シートクッション93は、下クッション層の上下が反転している点を除いてシートクッション9と同じ構成となっている。
【0139】
10.その他
以上に説明した本発明の各実施形態に係るシートクッションは、各々フィラメント3次元結合体で形成されたセンタークッション、センタークッションの左側に配置される左サイドクッション、および、センタークッションの右側に配置される右サイドクッションの各クッション部材を用いて構成され、上面で使用者の臀部を支持するものとなっている。更に当該シートクッションにおいて、センタークッションの圧縮時反発力が、左サイドクッションの圧縮時反発力および右サイドクッションの圧縮時反発力より小さく、各クッション部材の上部に形成された高密度平滑表面層どうしは左右方向に隣接している。そのため当該シートクッションは、蒸れにくく、座り心地が良く、耐久性に優れるとともに、トランポリン現象を抑えてホールド性にも優れるシートクッションとなっている。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、各種乗り物用のシートクッションに利用可能である。
【符号の説明】
【0142】
1,2,3,4,5,6,7,8,9 シートクッション
11,21,31,41,51,61,71 センタークッション
12,22,32,42,52,62,72 左サイドクッション
13,23,33,43,53,63,73 右サイドクッション
100 製造装置
110 溶融フィラメント供給部
111 加圧溶融部
111a シリンダー
111b シリンダー排出口
112 フィラメント排出部
112a 導流路
113 材料投入部
114 スクリュー
115 スクリューモーター
116 ノズル部
116a ノズル開口部
118 ダイヒータ
120 融着結合形成部
121 受け板
121a 傾斜面
121b 鉛直面
122 冷却水供給装置
123 冷却水槽
124 水中引取機
125a~125h 搬送ローラ