(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042983
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】省エネ型ドレントラップ並びに圧縮空気圧回路
(51)【国際特許分類】
F16T 1/00 20060101AFI20240322BHJP
F04B 39/16 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16T1/00 F
F04B39/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147943
(22)【出願日】2022-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AC02
3H003BG04
3H003CC04
3H003CD07
(57)【要約】
【課題】ドレン流入に伴う水面揺動を軽減させると共に、ドレン排出室内に貯留・滞留する圧縮空気や異物の外部流出を防ぎ得るドレントラップを提供する。
【解決手段】ドレンタンク内に隔壁を内設することで形成されるドレン流入室及びドレン排出室と、制御部と、該制御部によって開閉が制御される電磁弁と、から成るドレントラップであって、浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が、略鉛直状に流入孔と接続される手段を採用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンタンク内に隔壁を内設することで形成されるドレン流入室及びドレン排出室と、制御部と、該制御部によって開閉が制御される電磁弁と、から成るドレントラップであって、
ドレン流入室は、浄化機器にて排出されるドレンをドレン導入管を介してドレン流入室内へ流入させる流入孔と、隔壁を貫通しドレン流入室内のドレンをドレン排出室へ送出する送出孔と、該送出孔に接続される逆L字状の送出エルボと、隔壁を貫通しドレン流入室及びドレン排出室に貯留する圧縮空気の圧力を均一化させるバランス孔と、を備え、
ドレン排出室は、制御部に接続されるセンサと、ドレンを電磁弁へ送出する流出孔と、を備え、
浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が、略鉛直状に流入孔と接続されることを特徴とする省エネ型ドレントラップ。
【請求項2】
前記ドレン導入管が、10mm以上、望ましくは14mm以上の内径を有していることを特徴とする請求項1に記載の省エネ型ドレントラップ。
【請求項3】
前記センサは、ドレン貯留量の上限水位及び下限水位を検知可能な上限センサ並びに下限センサを有する水位センサであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の省エネ型ドレントラップ。
【請求項4】
前記送出孔が、前記下限センサより上方に備えられていることを特徴とする請求項3に記載の省エネ型ドレントラップ。
【請求項5】
前記流出孔が、前記下限センサより下方に備えられると共に、ドレン排出室の底部より上方に備えられていることを特徴とする請求項3に記載の省エネ型ドレントラップ。
【請求項6】
コンプレッサと、浄化機器と、ドレントラップと、を備えてパッケージ化されて成る省エネ型圧縮空気圧回路であって、
ドレントラップは、ドレンタンク内に隔壁を内設することで形成されるドレン流入室及びドレン排出室と、制御部と、該制御部によって開閉が制御される電磁弁と、から成り、
ドレン流入室は、浄化機器にて排出されるドレンをドレン導入管を介してドレン流入室内へ流入させる流入孔と、隔壁を貫通しドレン流入室内のドレンをドレン排出室へ送出する送出孔と、該送出孔に接続される逆L字状の送出エルボと、を備え、
ドレン排出室は、制御部に接続されるセンサと、ドレンを電磁弁へ送出する流出孔と、を備え、
浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が、略鉛直状に流入孔と接続されることを特徴とする省エネ型圧縮空気圧回路。
【請求項7】
前記制御部が、コンプレッサの制御基盤上に配設され、該コンプレッサの運転動作と連動することを特徴とする請求項6に記載の省エネ型圧縮空気圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレントラップに関し、詳しくは、圧縮空気圧回路における各種機器にて発生したドレン水をまとめて排出する省エネ型のドレントラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機にて生成される熱を帯びた圧縮空気は、後段に配設される装置や配管路内での冷却時に、加圧下飽和水蒸気量の低下に伴うドレンが発生する。かかるドレンが発生すると、後段に接続される圧縮空気利用機器に該ドレンが浸入し故障や不具合を起こしてしまう恐れがあるため、従来、圧縮空気圧回路においてドレンの分離・除去を行う手段を有するドレン分離装置を設けると共に、ドレンを外部へ排出させるドレントラップを配置することが一般的であった。
【0003】
かかるドレントラップによれば、ドレンの発生箇所と該ドレントラップとの接続箇所に貯留した圧縮空気により空気の層が形成され、ドレンがドレントラップ内へ流入しないエアロック現象(空気障害)が起きることがあり、対策として、ドレン呼び込み機構を設ける態様や、均圧管を配設する態様が用いられていた。しかし、ドレン呼び込み機構を設けた場合、ドレントラップ内に流入した圧縮空気を排出することでドレンを呼び込む機構であるため、利用する圧縮空気を損失させてしまう。また、均圧管を配設した場合においても、均圧管自体の配設スペースが必要になると共に、該均圧管を配設後も圧力の完全均衡は困難であった。
さらに、ドレンには圧縮空気中に含有される塵埃等の異物が含まれており、配管の詰まり等を防止するため、ドレンの排出と共に異物の除去も必要であった。
【0004】
そのため、センサの計測データ等による制御によって排出弁を開閉することでエアロック現象を防ぎつつ、ドレン中の異物を低減させ排出するドレントラップが求められていた。
【0005】
そこで本出願人は、水位センサの検知に基づいた電磁弁の開閉によってドレンの排出を行う技術を開発し、特許5703519号公報(特許文献1)に記載の技術提案を行っている。かかる技術提案によれば、ドレンタンクに内接した3つの水位センサの検知により、制御手段が電磁弁の開閉を行いつつ、不具合が起きた場合でも、所定の時間だけ強制的に開弁する、といった優れた効果を奏するものであった。
【0006】
しかしながら、特許文献1にかかる技術提案によれば、ほぼリアルタイムでドレンタンク内の水量及び水位センサの不具合を監視しつつ、該水量によって電磁弁を開閉する効果は有用であるものの、流入口から流入するドレンの流入量が急激に増加した場合、ドレンタンク内に貯留するドレンの水面が大きく揺動するため、該ドレンタンクに内接された水位センサの検知を阻害してしまう場合があり、さらに、ドレンタンクの底部に滞留した異物が流出口から排出され、後段に備わる電磁弁の動作を阻害する場合がある、といった問題があった。
【0007】
本出願人は、以上のような従来のドレントラップにおける排出動作の安定性といった問題に着目し、エアロックを防止しつつ異物を分離したドレンを排出可能なドレントラップを提供できないものかという着想のもと、浄化機器から排出されたドレンを、ドレン流入室に一旦貯留させた後に水位センサが備えられるドレン排出室へ送出させることでドレン流入に伴う水面揺動を軽減させると共に、流出孔について、センサの下方に備えることで圧縮空気の排出を防ぎつつ、該ドレン排出室底部よりも上方に備えることで滞留している異物の排出を防ぎ、電磁弁への異物混入を防ぐことが可能なドレントラップを開発し、本発明にかかる「省エネ型ドレントラップ」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、浄化機器から排出されたドレンを、ドレン流入室に一旦貯留させた後にセンサが備えられるドレン排出室へ送出させることで、ドレン流入に伴う水面揺動を軽減させると共に、流出孔をセンサの下方且つ該ドレン排出室底部の上方に備えることで、ドレン排出室内に貯留された圧縮空気及び滞留している異物の排出を防ぎ、電磁弁への異物混入を防ぐことが可能なドレントラップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、ドレンタンク内に隔壁を内設することで形成されるドレン流入室及びドレン排出室と、制御部と、該制御部によって開閉が制御される電磁弁と、から成るドレントラップであって、ドレン流入室は、浄化機器にて排出されるドレンをドレン導入管を介してドレン流入室内へ流入させる流入孔と、隔壁を貫通しドレン流入室内のドレンをドレン排出室へ送出する送出孔と、該送出孔に接続される逆L字状の送出エルボと、隔壁を貫通しドレン流入室及びドレン排出室に貯留する圧縮空気の圧力を均一化させるバランス孔と、を備え、ドレン排出室は、制御部に接続されるセンサと、ドレンを電磁弁へ送出する流出孔と、を備え、浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が、略鉛直状に流入孔と接続される手段を採用する。
【0011】
また、本発明は、前記ドレン導入管が、10mm以上、望ましくは14mm以上の内径を有している手段を採用する。
【0012】
さらに、本発明は、前記センサは、ドレン貯留量の上限水位及び下限水位を検知可能な上限センサ並びに下限センサを有する水位センサである手段を採用する。
【0013】
またさらに、本発明は、前記送出孔が、前記下限センサより上方に備えられている手段を採用する。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記流出孔が、前記下限センサより下方に備えられると共に、ドレン排出室の底部より上方に備えられている手段を採用する。
【0015】
加えて、本発明は、コンプレッサと、浄化機器と、ドレントラップと、を備えてパッケージ化されて成る省エネ型圧縮空気圧回路であって、ドレントラップは、ドレンタンク内に隔壁を内設することで形成されるドレン流入室及びドレン排出室と、制御部と、該制御部によって開閉が制御される電磁弁と、から成り、ドレン流入室は、浄化機器にて排出されるドレンをドレン導入管を介してドレン流入室内へ流入させる流入孔と、隔壁を貫通しドレン流入室内のドレンをドレン排出室へ送出する送出孔と、該送出孔に接続される逆L字状の送出エルボと、を備え、ドレン排出室は、制御部に接続されるセンサと、ドレンを電磁弁へ送出する流出孔と、を備え、浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が、略鉛直状に流入孔と接続される手段を採用する。
【0016】
そしてまた、本発明は、前記制御部が、コンプレッサの制御基盤上に配設され、該エアコンプレッサの運転動作と連動する手段を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる省エネ型ドレントラップによれば、浄化機器の下方所定箇所に設けられたドレン導入管が略鉛直状に流入孔と接続されることで、該浄化機器によるドレン排出時において、ドレンに含有される異物をドレン導入管内に残留させずにドレンタンク内へ流入させることが可能となり、スムーズなドレン流入に資する、といった優れた効果を奏するものである。
【0018】
また、本発明にかかる省エネ型ドレントラップによれば、ドレン導入管が、10mm以上、望ましくは14mm以上の内径を有していることにより、浄化機器の作用により発生したドレンを即座に下方へ垂下させることが可能であって、エアロック現象を起こすことなくスムーズなドレン流入に資する、といった優れた効果を奏するものである。
【0019】
さらに、本発明にかかる省エネ型ドレントラップによれば、ドレン貯留量の上限水位及び下限水位を検知可能な上限センサ並びに下限センサを有する水位センサが使用されることにより、ドレン貯留量を基にした電磁弁の開閉制御が容易となる、といった優れた効果を奏するものである。
【0020】
またさらに、本発明にかかる省エネ型ドレントラップによれば、送出孔が下限センサより上方に備えられていることにより、ドレン排出室へ送出されるドレンは、上方からドレンの水面へ向けて垂下するため水勢が低下し、貯留したドレン水面の揺動が低減されると共に、貯留したドレンの水底に向けた水流が生成されるため、ドレン内に含有された異物がドレン排出室の底部に向け沈下しやすい、といった優れた効果を奏するものである。
【0021】
さらにまた、本発明にかかる省エネ型ドレントラップによれば、流出孔が前記下限センサより下方に備えられると共に、ドレン排出室の底部より上方に備えられていることにより、ドレン排出室内の圧縮空気を外部へ排出することなくドレンを排出しつつ、貯留したドレンの水面及びドレン排出室の底部に存する異物を電磁弁へ流出させる可能性を低下させる、といった優れた効果を奏するものである。
【0022】
加えて、本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路によれば、コンプレッサと、浄化機器と、本発明にかかる省エネ型ドレントラップと、を備えてパッケージ化されて成ることにより、各装置と接続される配管等の減縮が可能となり、設置箇所の省スペース化に資することとなる。
【0023】
そしてまた、本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路によれば、制御部がコンプレッサの制御基盤上に配設され、該コンプレッサの運転動作と連動することにより、制御部として必要な電源をコンプレッサと同一にすることが可能となると共に、制御部にて使用される基板の保護ケースが不要となるため、圧縮空気圧回路自体の部品点数削減に資することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明にかかる省エネ型ドレントラップの実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明にかかる省エネ型ドレントラップは、ドレンタンク内を隔壁によってドレン流入室とドレン排出室に二分割し、送出エルボによって該ドレン流入室に貯留したドレンを該ドレン排出室へ流入させることで、ドレン流入時に発生する水面揺動を軽減させることが可能であることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる省エネ型ドレントラップの実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0026】
尚、本発明にかかる省エネ型ドレントラップは、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0027】
図1は、本発明にかかる省エネ型ドレントラップ1の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる省エネ型ドレントラップ1は、浄化機器5によって分離されたドレンが、流入孔21を介しドレン流入室20へ流入後に一旦貯留され、隔壁11に備わった送出エルボ22によってドレン排出室30へ送出された後、該ドレン排出室30内に設けられたセンサ31によって開閉動作を行う電磁弁42を介して外部へ排出されるドレントラップである。
【0028】
コンプレッサ3は、空気吸入口から大気を吸入し、所定圧(例えば0.7Mpa)へと昇圧して圧縮させる機器である。
大気には水蒸気や異物(塵埃やスラッジ、微生物、窒素酸化物、オイルミストなど)が含まれており、さらに給油式のコンプレッサ3を使用していた場合は、生成される圧縮空気内にオイルミストが多く混入されることとなる。生成された圧縮空気は、吐出口に接続された配管を介して浄化機器5へ送気される。
【0029】
浄化機器5は、コンプレッサ3にて生成された圧縮空気中の水蒸気や異物を分離・除去し、清浄な圧縮空気へと浄化する機器である。
浄化機器5は、圧縮空気圧回路内に配設されることで、コンプレッサ3より送気された圧縮空気を浄化する機器であり、例えば、多段圧縮を行うコンプレッサ3において一次圧縮時に生じる熱を下げるインタークーラや、コンプレッサ3等から吐出される圧縮空気の温度を下げるアフタークーラ、圧縮空気を乾燥させ水分を取り除くエアドライヤ、圧縮空気を一時的に貯留することで水撃作用(ウォータハンマ)を低減させるエアタンク等が考え得る。
浄化機器5の底部には、圧縮空気の温度低下や乾燥の過程で生じたドレンが貯留することとなり、ドレンは、浄化機器5の下方所定箇所(例えば、底面部略中央箇所)に接続されたドレン導入管6を介して外部へ排出されることとなる。
【0030】
省エネ型ドレントラップ1は、ドレン導入管6を介して浄化機器5から排出されたドレンを一時的に貯留させ、任意のタイミングで外部へ排出するためのものである。
省エネ型ドレントラップ1は、ドレンを貯留するドレンタンク10と、該ドレンタンク10内をドレン流入室20とドレン排出室30に区切る隔壁11と、ドレン流入室20からドレン排出室30へドレンを送出させる送出孔24と、該送出孔24に接続される送出エルボ22と、ドレン排出室30内に貯留しているドレン貯留量の計測を行うセンサ31と、該センサ31の計測値により電磁弁42の開閉動作を制御する制御部40と、から構成される。
浄化機器5にて分離・除去された後に該浄化機器5底部に貯留したドレンは、ドレン導入管6を介して省エネ型ドレントラップ1へ流入されることとなるが、該ドレン導入管6の形状を、ドレンタンク10に備えられた流入孔21へ向け略鉛直状に延伸して接続される配管形状とすることで、浄化機器5内に貯留するドレンの垂下と共に圧縮空気の流入及び流出が同時に行われ、エアロック現象を防ぐことが可能となる。
また、この際に使用されるドレン導入管6は、配管内径が10mm以上、望ましくは14mm以上を有し、また、継手等を使用する際は呼び径12A以上、望ましくは呼び径15A以上を有することで、ドレンの垂下がスムーズに行われることとなる。
【0031】
ドレンタンク10は、流入孔21から流入したドレンを貯留するためのタンクである。
ドレンタンク10の容量については特に指定はなく、浄化機器5によって生成されるドレン量等により決定される。
ドレンタンク10にて貯留されたドレンは、電磁弁42の作動により流出孔35を介して排出孔46から外部に排出されることとなる。
【0032】
隔壁11は、ドレンタンク10内に内接されるものであり、ドレンタンク10の内部をドレン流入室20とドレン排出室30に分割するものである。
隔壁11には、ドレン流入室20に貯留したドレンをドレン排出室30に送出する送出孔24と、ドレン流入室20とドレン排出室30に貯留する圧縮空気の圧力を均一にするためのバランス孔12が夫々設けられている。
隔壁11の設置箇所については特に限定はないが、浄化機器5によるドレン生成量や、電磁弁42によるドレン排出量等により決定される。
【0033】
バランス孔12は、ドレン流入室20とドレン排出室30に夫々貯留している圧縮空気の圧力を均一にする孔である。
バランス孔12の大きさや設置箇所については特に限定しないが、隔壁11の上方所定箇所、詳しくは、ドレン排出室30においてドレンの排出を開始する最大貯留量よりも上方に位置する箇所に設けられる態様が好ましい。この態様を採ることにより、ドレンの貯留によってバランス孔12が閉塞され、ドレン流入室内においてエアロック現象が発生することを防ぐことが可能となる。
【0034】
ドレン流入室20は、隔壁11によってドレンタンク10内に形成される一室であり、浄化機器5から排出されるドレンを一時的に貯留する箇所である。
ドレン流入室20には、浄化機器5から排出されるドレンを流入させる流入孔21が天面部所定箇所に備えられると共に、該ドレン流入室20内に貯留したドレンをドレン排出室30内へ送出させるための送出エルボ22が、隔壁11に設けられた送出孔24に接続される態様で配設されている。
【0035】
流入孔21は、浄化機器5にて生成されたドレンを、ドレン導入管6を介してドレン流入室20内に流入させる孔である。
流入孔21の設置箇所についてはドレン流入室20の天面部であれば特に指定はないが、送出エルボ22が備えられた隔壁11から離れた箇所に流入孔21を設ける態様が好適である。この態様を採ることにより、ドレン内に含有される塵埃等の異物は、ドレン流入室20への流入時に水分を含むことで重量が増し、ドレン排出室30へ送出されるまでの間にドレン流入室20の底部に沈下することとなるため、ドレン排出室30へ送出されるドレン内に含有される異物量を低下させることが可能となる。
【0036】
送出孔24は、隔壁11の所定箇所に設けられ、ドレン流入室20に貯留しているドレンをドレン排出室30へ送出させる孔である。
送出孔24の設置箇所は特に限定はないが、後述のセンサ31に水位センサを採用する場合、該送出孔24は下限センサ31bよりも上方に設ける態様が好適である。この際、ドレン流入室20からドレン排出室30へ送出されるドレンは、貯留しているドレンの上方から水面方向へ垂下することとなり、ドレン排出室30底部に向けた水流が発生する。そして、ドレン排出室30へ流入したドレンに含有された異物は、生じた水流によってドレン排出室30底部へ向けて沈下し滞留するため、流出孔35から送出される異物の軽減に資することとなる。
【0037】
送出エルボ22は、取水孔23を下方に向けつつ送出孔24に接続された逆L字状のエルボであり、ドレン流入室20内のドレンをドレン排出室30へ送出させるものである。
取水孔23が逆L字状であることにより、下方側に設けられた孔である取水孔23から送出孔24へドレンが送出される態様となる。そのため、ドレン流入室20内に貯留したドレンをドレン排出室30へ送出させる際は、水面より若干下方に存するドレンが取水孔23へ流入することとなり、水面に浮遊した異物や油分等のドレン排出室30への流入を抑制し得るといった優れた効果を奏する。
取水孔23の口径は特に限定はなく、送出孔24と同径とする態様の他、送出孔24よりも小径の異径とすることで送出孔24から流出するドレンの水量を減少させ、ドレンの最大流出時において送出孔24からのドレン噴出を防ぐことも可能となる。
【0038】
ドレン排出室30は、ドレンタンク10内に形成される一室であり、ドレン流入室20から流入したドレンを貯留した後、電磁弁42を介して外部に排出させる箇所である。
ドレン排出室30には、該ドレン排出室30内に貯留しているドレン量を計測するセンサ31と、電磁弁42へドレンを流出させる流出孔35が備えられる。
【0039】
センサ31は、ドレン排出室30内に流入し貯留されていくドレン量を計測し、計測結果を後述の制御部40へ送信するものである。
センサ31の計測方法は特に指定はなく、例えば、水位センサや圧力センサといった常法手段を用いることで、貯留したドレン量を正確に計測することが可能となる。
【0040】
センサ31に水位センサを用いる場合、最高水位に上限センサ31a及び最低水位に下限センサ31bを夫々ドレン排出室30の内壁部にセンサ31を設けることとなる。この際、下限センサ31bを送出孔24よりも下方に設けることで、ドレン排出室30のドレンがドレン流入室20へ逆流するのを防ぐことが可能となる。
【0041】
流出孔35は、ドレン排出室30内のドレンを電磁弁42へ流出させる孔である。
流出孔35の大きさについて特に限定はないが、電磁弁42と接続される配管と同径とすることで、ドレン流出時の圧力変化を減少させ、接続部材の損耗を軽減させることが可能となる。また、流出孔35の位置についても特に限定はしないが、センサ31よりも下方に備えられることにより、電磁弁42の開閉動作によってドレンのみを排出させることが可能となり、さらに、ドレン排出室30底部よりも上方に備えられることで、該ドレン排出室30底部に沈下した異物の電磁弁42への流出可能性を低下させる。よって、流出孔35からのドレン流出時における省エネ効果並びに清浄化に資することとなる。
【0042】
また、流出孔35の上方所定箇所にドレン排出室30内のドレン量の渇水状態を検知する渇水センサ31cを設ける態様も好適である。渇水センサ31cの設置箇所については、下限センサ31bの下方且つ流出孔35の上方であれば特に限定はない。この態様を採ることにより、ドレン排出室30内のドレンが渇水状態になる前に制御部40へ渇水警告信号を送信することが可能となり、流出孔35からの圧縮空気排出を未然に防ぐことが可能となる。
【0043】
制御部40は、センサ31のデータを基に電磁弁42の開閉等を制御するものである。
制御部40にて判断される制御には、電磁弁42の開閉制御の他に、ドレン排出室30内における満水及び渇水警告の発出も含まれる。例えば、センサ31が水位センサを用いていた場合であれば、上限センサ31aと下限センサ31bがONの時には開放指示を電磁弁42へ送信することでドレン排出室30内のドレン排出を促し、上限センサ31aと下限センサ31bがOFFの時には閉塞指示を電磁弁42へ送信し、ドレン排出室30内のドレンによって下限センサ31aがONになるまで貯留させることとなる。また、上限センサ31aと下限センサ31bのON検出が所定時間継続した時は、ドレンの排出異常が発生している可能性があるため、再度電磁弁42へ開放指示を送信すると共に満水警告を発出することとなる。さらに、下限センサ31bの下部に渇水センサ31cが設けられた場合、渇水センサ31cがON状態からOFFに切り替わり所定時間以上OFF検出を継続した時は、ドレンタンク10や電磁弁42にて不具合が発生しドレンの放出状態が続いている可能性があるため、再度電磁弁42へ閉塞指示を送信すると共に渇水警告を発出することとなる。
満水警告発出時における所定時間とは、上限センサ31aにて水面の揺らぎ等で瞬間的に起こり得る検知時間を考慮しつつ、ドレンタンク10の最大ドレン貯留量に達するまでの時間を基に決定されるものである。また、渇水警告発出時における所定時間も同様に、渇水センサ31cにおける水面の揺らぎ等を考慮しつつ、流出孔35近傍まで水位が低下するまでの時間を基に決定される。
満水警告及び渇水警告の発出方法については特に限定はなく、例えば、省エネ型ドレントラップ1に表示板を設け警告表示灯を点灯させると共に警告音を発生させる方法や、作業端末に警告メッセージを送信する方法等が考え得る。
【0044】
制御部40には、該制御部40とセンサ31と電磁弁42へ給電可能な電源が接続されることとなるが、後述するコンプレッサ3と浄化機器5を一の基板上に配設しパッケージ化した省エネ型圧縮空気圧回路2において、該浄化機器5の下方位置に省エネ型ドレントラップ1を設置する態様を採る場合には、コンプレッサ制御ユニット41の基板上に制御部40を接続し同一の電源を使用することで、パッケージ型コンプレッサ4の起動と併せた省エネ型ドレントラップ1の稼働が可能となる。
【0045】
電磁弁42は、ドレンの排出弁であって、制御部40からの指示のもと開閉を行うものである。
電磁弁42は、制御部40から開放指示を受信した時は、閉塞していた弁を開放することにより、流出孔35から流入するドレンを外部へ排出させることとなる。逆に、制御部49から閉塞指示を受信した時は、開放していた弁を閉塞することにより、ドレンの外部排出を停止する。
【0046】
排出孔46は、ドレンを外部に排出するための孔である。
排出孔46の上流側である流出孔35は、下限センサ31bよりも下方に設けられているため、該排出孔46から排出されるものはドレン排出室30内に貯留していたドレンのみとなる。なお、排出されるドレンは、ドレン流入室20及びドレン排出室30にて異物が分離された清浄なドレンである。
【0047】
また、図示してはいないが、ドレン流入室20及びドレン排出室30の底部や流出孔35と電磁弁42を接続している配管の所定箇所には、省エネ型ドレントラップ1の稼働停止時に貯留している残存ドレンの排出、また、ドレンタンク9や配管内に沈下した異物等の外部排出を行うための異物排出管を設ける態様が好適であり、かかる態様により、コンプレッサ3の起動停止後等に、自動又は手動にて異物排出管に備えられている開閉バルブを開放する等の手段にて、残存ドレン・異物等の外部排出が可能である。異物排出管と各機器との接続箇所について特に限定はないが、底面部略中央箇所に接続することで、各機器に貯留している残留ドレン及び異物等が異物排出管を介して平均的に排出し、各機器内におけるドレンや異物の残留を軽減させることとなる。
【0048】
以上の構成から成る省エネ型ドレントラップについて、その主な動作及び作用を
図1に基づき説明する。なお、ドレン排出室30内に備えられるセンサ31に関しては、水位センサ(上限センサ31a、下限センサ31b、渇水センサ31c)を用いるものとする。
まず、浄化機器5内に流入した圧縮空気から生成されたドレンは、浄化機器5の内壁を垂下し、ドレン導入管6を介して流入孔21からドレン流入室20内へ流入する。ドレン流入室20内へ流入したドレンは、塵埃等の異物を沈下させつつ貯留することとなる。そして、送出エルボ22の下端以上の水位まで貯留されたドレンは、取水孔23から送出エルボ22内へ侵入し、ドレン流入室20内のドレンが送出孔24以上の水位となることで該送出孔24からドレン排出室30へのドレン送出が行われる。その後、送出孔24からドレン排出室30内へ流入したドレンは、隔壁11を伝いながら該ドレン排出室30内に貯留されていくこととなる。この際、ドレン排出室30内に備えられたセンサ31が全てOFF状態である渇水状態であれば、制御部40は水位が上限センサ31aに達するまで電磁弁42への閉塞指示を継続し、ドレン排出室30内のドレンを貯留させることとなる。
【0049】
ドレン排出室30内に貯留するドレンの水位が上限センサ31a以上となり上限センサ31aがON情報を制御部40へ送信した場合、ドレン排出室30内のドレン水位を低下させるため電磁弁42に対して開放指示が制御部40より送信され、ドレン排出室30内に貯留されていたドレンは、流出孔35を介し流路が開放された電磁弁42を通過して、排出孔46から外部へ排出されることとなる。
また、ドレンの水位が下限センサ31b以下となり下限センサ31bがOFF情報を制御部40へ送信した場合、ドレン排出室30内のドレン水位を上昇させるため電磁弁42に対して閉塞指示が制御部40より送信され、ドレン排出室30内に貯留されたドレンが上限センサ31aに達するまで電磁弁42によって流路が閉塞され続けることとなる。
【0050】
次に、本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路2について説明する。
図2は、本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路2の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路2は、コンプレッサ3と浄化機器5とドレントラップを備え、パッケージ化されて構成されている。
【0051】
コンプレッサ3については、既述のとおり、空気吸入口から大気を吸入して所定圧(例えば0.7Mpa)へと昇圧して圧縮させる機器である。
また、浄化機器5についても、既述のとおり、コンプレッサ3にて生成された圧縮空気中の水蒸気や異物を分離・除去して清浄な圧縮空気へと浄化する機器である。
さらに、ドレントラップについては、既述の本発明にかかる省エネ型ドレントラップ1を採用する。
【0052】
本発明にかかる省エネ型圧縮空気圧回路2は、これら各構成機器を一体的にまとめてパッケージ化して成り、所謂パッケージ型コンプレッサ4の形態を採る。各構成機器が一体的にパッケージ化されることで、各機器と接続される配管等の減縮が可能となり、設置箇所の省スペース化にも資する。
パッケージ化のための具体的構造については、特に限定するものではないが、例えば一の台座上や収納BOX内に各機器が載置・固定される態様などが考え得る。
【0053】
ところで、ドレントラップの制御部40について、コンプレッサ3の制御基盤上に配設する態様も好適である。かかる態様を採用することで、ドレントラップの制御をコンプレッサの運転動作と連動させることが可能であって、制御部40として必要な電源をコンプレッサ3と同一にすることができ、また、制御部40にて使用される基盤の保護ケースが不要となって、部品点数削減に資することとなる。
【0054】
以上の構成から成る省エネ型圧縮空気圧回路2について、その主な動作及び作用を
図2に基づき説明する。尚、省エネ型ドレントラップ1の説明として既に説明した部分は省略する。また、制御部40については、コンプレッサ制御ユニット41の基盤内に配設されている場合を想定して説明する。
【0055】
まず、パッケージ型コンプレッサ4の起動と共にコンプレッサ制御ユニット41に配設されている制御部40も起動し、センサ31及び電磁弁42の動作チェックと状態確認が行われる。この際、ドレン排出室30内が渇水状態であれば、電磁弁42の開放条件である上限センサ31aに達する水位まで貯留させることとなる。
そして、パッケージ型コンプレッサ4の稼働停止後に電源が停止されると、コンプレッサ制御ユニット41及び制御部40の稼働も同時に停止することとなるが、該制御部40の停止と共に電磁弁42の開閉動作も現状のまま停止するため、電源停止時に自動で閉塞させる態様や、手動で開閉動作が行える態様が望ましい。
【0056】
以上、本発明にかかる省エネ型ドレントラップ1と省エネ型圧縮空気圧回路2の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、センサ31としてフロートタイプの水位検出器を設け、フロートが規定水位近傍まで浮上すると共にドレンの排出孔を閉塞していた弁が開放されるといった従来のドレントラップにも使用されている態様等が考え得る。
【0057】
以上のように、本発明にかかる省エネ型ドレントラップ1並びに該省エネ型ドレントラップ1を備えた省エネ型圧縮空気圧回路2によれば、ドレンタンク10内を隔壁11によってドレン流入室20とドレン排出室30に二分割し、浄化機器5から排出されるドレンをドレン流入室20へ貯留した後、送出エルボ22を介してドレン流入室20内のドレンをドレン排出室30へ送出し貯留させることで、該ドレン排出室30内へ流入するドレンの水勢を弱め水面の揺動を軽減させることが可能であって、ドレン排出室30内に備えられたセンサ31の検出精度を高めると共に、電磁弁42の開閉動作の制御もスムーズとなる。また、流出孔35をセンサ31の下方且つドレン排出室30底部よりも上方に備えることで、貯留している圧縮空気やドレンタンク内に沈下した異物等を排出させることなく清浄なドレンのみの排出が可能となっている。
さらに、設置態様に関しても、浄化機器5の直下に設置可能であって、エアロック現象を防止するためのドレン呼び込み機構や均圧管が不要となるため、作業区画の省スペース化に資する省エネ型ドレントラップ1並びに省エネ型圧縮空気圧回路2を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、圧縮空気圧回路に使用されるドレントラップにおいて、ドレン流入時の揺動を軽減させることにより、ドレン貯留量を検知させるセンサの検出精度を高めることが可能であるため、ドレンのみならず流体の貯留量検知動作を要する様々な作業に対し応用し得るものである。したがって、本発明にかかる「省エネ型ドレントラップ並びに圧縮空気圧回路」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0059】
1 省エネ型ドレントラップ
2 省エネ型圧縮空気圧回路
3 コンプレッサ
4 パッケージ型コンプレッサ
5 浄化機器
6 ドレン導入管
10 ドレンタンク
11 隔壁
12 バランス孔
20 ドレン流入室
21 流入孔
22 送出エルボ
23 取水孔
24 送出孔
30 ドレン排出室
31 センサ
31a 上限センサ
31b 下限センサ
31c 渇水センサ
35 流出孔
40 制御部
41 コンプレッサ制御ユニット
42 電磁弁
46 排出孔