(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042989
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】感圧センサ、感圧センサの製造方法および導電膜
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01L1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147950
(22)【出願日】2022-09-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
(57)【要約】
【課題】広い圧力範囲を精度よく測定可能な感圧センサを提供する。
【解決手段】
本発明にかかる感圧センサ1は、樹脂11aと加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセル11bと導電性粒子11cとを含む多孔質導電膜である高抵抗層11と、圧力により変化する抵抗値を測定するために形成された一対の電極12a,12bと、樹脂11aと熱膨張性マイクロカプセル11bと高抵抗層11以上の量の導電性粒子11cとを含む多孔質導電膜である低抵抗層13と、を備える。そして、第1の基板14上に高抵抗層11および電極12a,12bが形成された回路基板を第1の感圧抵抗体15とし、第2の基板16上に低抵抗層13が形成された回路基板を第2の感圧抵抗体17とし、第1の感圧抵抗体15の高抵抗層11と第2の感圧抵抗体17の低抵抗層13とを対向させて貼り合わせた構造とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサにおいて、
樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと導電性粒子とを含む多孔質導電膜である第1の抵抗層と、
前記樹脂と前記熱膨張性マイクロカプセルと前記第1の抵抗層以上の量の導電性粒子とを含む多孔質導電膜である第2の抵抗層と、
圧力により変化する抵抗値を測定するために形成された一対の電極と、
を備え、
前記第1の抵抗層と前記第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせた構造とする、
ことを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
第1の基板上に前記第1の抵抗層および前記電極が形成された回路基板を第1の感圧抵抗体とし、
第2の基板上に前記第2の抵抗層が形成された回路基板を第2の感圧抵抗体とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の感圧センサ。
【請求項3】
前記樹脂を熱可塑性樹脂とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の感圧センサ。
【請求項4】
前記導電性粒子をカーボンブラック(CB)とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の感圧センサ。
【請求項5】
加熱膨張後の前記熱膨張性マイクロカプセルの直径を50μm~200μmとする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の感圧センサ。
【請求項6】
前記第1の感圧抵抗体を、前記第1の基板上に前記第1の抵抗層および前記電極がアレイ状に形成された回路基板とし、
前記第2の感圧抵抗体を、前記第2の基板上に前記第2の抵抗層がアレイ状に形成された回路基板とし、
アレイ状に形成された前記第1の抵抗層とアレイ状に形成された前記第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせた構造とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の感圧センサ。
【請求項7】
圧力の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサの製造方法において、
一方で、樹脂と膨張前の熱膨張性マイクロカプセルと第1の量の導電性粒子とを混合することにより第1の導電性樹脂ペーストを生成し、他方で、前記第1の量の導電性粒子に換えて第2の量(≧第1の量)の導電性粒子を混合することにより、前記第1の導電性樹脂ペーストより低抵抗または前記第1の導電性樹脂ペーストと同一の第2の導電性樹脂ペーストを生成するペースト生成工程と、
第1の基板上に、導電性ペーストを使用して電極パターンを印刷し、さらに、当該電極パターンを覆うように、前記第1の導電性樹脂ペーストを使用して第1の抵抗層パターンを印刷する第1の印刷工程と、
第2の基板上に、前記第2の導電性樹脂ペーストを使用して第2の抵抗層パターンを印刷する第2の印刷工程と、
アニーリングにより前記熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、前記第1の基板上に電極および多孔質導電膜である第1の抵抗層が形成された第1の感圧抵抗体と、前記第2の基板上に多孔質導電膜である第2の抵抗層が形成された第2の感圧抵抗体と、を作製するアニーリング工程と、
前記第1の抵抗層と前記第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、
を含むことを特徴とする感圧センサの製造方法。
【請求項8】
前記各パターンの印刷方式をスクリーン印刷とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項9】
樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと導電性粒子とを含む第1の多孔質導電膜と、
前記樹脂と前記熱膨張性マイクロカプセルと前記第1の多孔質導電膜以上の量の導電性粒子とを含む第2の多孔質導電膜と、
を有し、
前記第1の多孔質導電膜と前記第2の多孔質導電膜とを貼り合わせた、
ことを特徴とする導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力(荷重)の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサ、および当該感圧センサの製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軽量で薄型かつ柔軟性を有する感圧センサの開発が進められており、特に、呼吸状態や心拍数といった生体情報の取得や、ロボットハンドへの適応等、医療の分野においては、より検出精度の高いフレキシブルな感圧センサが求められている。
【0003】
フレキシブルな感圧センサとしては、様々なタイプのものがあるが、たとえば、導電性粒子を含む導電層および電極を有し、導電層に対する圧力の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する、抵抗膜式の感圧センサ等が一般的に知られている(下記特許文献1~3参照)。
【0004】
このような感圧センサは、間隔を開けて対向する基板(シート、フィルム等)に加わる圧力の増加に比例して導電層の接触面積が増加するように構成されている。これにより、接触面積の変化に応じた抵抗値の変化を安定的に検出することができるため、結果として、圧力の測定精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-57992号公報
【特許文献2】特開2001-13015号公報
【特許文献3】特開2015-59900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の感圧センサは、導電層に対する圧力の変化(導電層の接触面積の増減)に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定している。
【0007】
しかしながら、比較的軟質の基板(シート、フィルム等)を用いた場合には、小さな圧力で大きく抵抗値が変化するため、センサ感度は高いものの、比較的小さな圧力で導電層の全面が接触することとなり、その結果、測定可能な圧力の範囲が狭くなる。一方、測定可能な圧力の範囲を広くとるために比較的硬質の基板(シート、フィルム等)を用いた場合には、小さな圧力では変形が少なくなるため、小さな圧力を測定しづらくなる。
【0008】
また、従来の感圧センサは、導電層の表面粗さ(凹凸)が小さいことから、圧力の変化に対して導電層の接触面積の変化が急峻になる。そのため、比較的小さな圧力でも抵抗値が大きく低下し、その後、圧力を加え続けても抵抗値変化は微小となり、その結果、測定可能な圧力の範囲が狭くなる。
【0009】
すなわち、従来の感圧センサは、上記それぞれの観点から、圧力の測定範囲を広くとることができない点について、改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、圧力の変化に対する抵抗値変化を緩やかにすることができ、かつ圧力の測定範囲を十分に広く確保可能な感圧センサ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる感圧センサは、圧力の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサであって、たとえば、樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと導電性粒子とを含む多孔質導電膜である第1の抵抗層(後述する高抵抗層11に相当)と、樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと第1の抵抗層以上の量の導電性粒子とを含む多孔質導電膜である第2の抵抗層(後述する低抵抗層13に相当)と、圧力により変化する抵抗値を測定するために形成された一対の電極と、を備え、第1の抵抗層と第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせた構造とすることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる感圧センサにおいては、第1の抵抗層および第2の抵抗層として多孔質導電膜を形成することにより、双方の接触面に凹凸を形成し、接触面の面積を大きくするようにした。これにより、初期状態においては、凹凸面の先端部分どうしが接触した状態となるが、この状態から徐々に圧力を加えると、凸凹面の先端部分以外の部分も徐々に接触し始め、最終的には、双方の凸凹面のすべての表面が接触した状態となる。すなわち、本発明にかかる感圧センサは、従来の感圧センサと比較して接触面の面積を大きくする構造としたので、圧力の変化に対する接触面積の変化を緩やかにすることができ、その結果、抵抗値変化を緩やかにすることができる。そのため、本発明にかかる感圧センサにおいては、圧力の測定範囲を十分に広く確保することができる。
【0013】
また、本発明にかかる感圧センサによれば、第1の抵抗層および第2の抵抗層に含ませる導電性粒子の配合量を調整することにより、測定可能な抵抗値の範囲を任意に設定可能である。さらに、本発明にかかる感圧センサによれば、第1の抵抗層および第2の抵抗層に含ませる熱膨張性マイクロカプセルの配合量を調整し、双方の接触面の面積(凹凸)を任意に設定することにより、測定可能な圧力範囲を自由に制御することが可能である。このように、本発明にかかる感圧センサは、圧力の測定範囲や抵抗値変化範囲を自由に制御することが可能であるため、所望の圧力範囲を高い感度で測定することができる。
【0014】
また、本発明にかかる感圧センサにおいては、樹脂と膨張前の熱膨張性マイクロカプセルと第1の量の導電性粒子とを混合することにより第1の導電性樹脂ペースト(後述する高抵抗導電性樹脂ペースト21aに相当)を生成し、当該第1の量の導電性粒子に換えて第2の量(≧第1の量)の導電性粒子を混合することにより、第1の導電性樹脂ペーストより低抵抗または第1の導電性樹脂ペーストと同一の第2の導電性樹脂ペースト(後述する低抵抗導電性樹脂ペースト21bに相当)を生成し、一方では、第1の基板上に、一対の電極として、導電性ペーストを使用して電極パターンを印刷し、さらに、当該電極パターンを覆うように、第1の導電性樹脂ペーストを使用して第1の抵抗層パターン(後述する高抵抗層パターン23aに相当)を印刷し、他方では、第2の基板上に、第2の導電性樹脂ペーストを使用して第2の抵抗層パターン(後述する低抵抗層パターン23bに相当)を印刷し、その後、アニーリングにより熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、第1の基板上に電極および多孔質導電膜である第1の抵抗層が形成された第1の感圧抵抗体と、第2の基板上に多孔質導電膜である第2の抵抗層が形成された第2の感圧抵抗体と、を作製することとした。そして、上述したように、第1の抵抗層と第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせることにより、本発明にかかる感圧センサを作製することができる。
【0015】
また、本発明にかかる感圧センサにおいては、樹脂をスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)とすることが望ましく、また、導電性粒子をカーボンブラック(CB)とすることが望ましく、さらに、加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルの直径を50μm~200μmとすることが望ましい。また、本発明にかかる感圧センサは、第1の感圧抵抗体を、第1の基板上に第1の抵抗層および電極がアレイ状に形成された回路基板とし、第2の感圧抵抗体を、第2の基板上に第2の抵抗層がアレイ状に形成された回路基板とし、アレイ状に形成された第1の抵抗層とアレイ状に形成された第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせた構造とすることも可能である。
【0016】
また、本発明にかかる感圧センサの製造方法においては、一方で、樹脂と膨張前の熱膨張性マイクロカプセルと第1の量の導電性粒子とを混合することにより第1の導電性樹脂ペーストを生成し、他方で、第1の量の導電性粒子に換えて第2の量(≧第1の量)の導電性粒子を混合することにより、第1の導電性樹脂ペーストより低抵抗または第1の導電性樹脂ペーストと同一の第2の導電性樹脂ペーストを生成するペースト生成工程と、第1の基板上に、導電性ペーストを使用して電極パターンを印刷し、さらに、当該電極パターンを覆うように、第1の導電性樹脂ペーストを使用して第1の抵抗層パターンを印刷する第1の印刷工程と、第2の基板上に、第2の導電性樹脂ペーストを使用して第2の抵抗層パターンを印刷する第2の印刷工程と、アニーリングにより熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、第1の基板上に電極および多孔質導電膜である第1の抵抗層が形成された第1の感圧抵抗体と、第2の基板上に多孔質導電膜である第2の抵抗層が形成された第2の感圧抵抗体と、を作製するアニーリング工程と、第1の抵抗層と第2の抵抗層とを対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる感圧センサの製造方法においては、各パターンの印刷方式をスクリーン印刷とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明にかかる導電膜は、樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと導電性粒子とを含む第1の多孔質導電膜と、樹脂と加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセルと第1の多孔質導電膜以上の量の導電性粒子とを含む第2の多孔質導電膜と、を有し、第1の多孔質導電膜と第2の多孔質導電膜とを貼り合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧力に対する抵抗値変化を緩やかにすることができ、広い圧力範囲を精度よく測定可能な感圧センサ、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明にかかる感圧センサの概要を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる感圧センサの形状の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる感圧センサの抵抗-圧力特性の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる感圧センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、印刷パターンの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、アニーリングにより得られる成形体(感圧抵抗体)の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明にかかる感圧センサの製造方法により作製された感圧センサの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、その他の感圧センサの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例として作成した感圧センサの感度を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例として作成した感圧センサの感度の再現性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる感圧センサ、感圧センサの製造方法および導電膜の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
<概要>
図1は、本実施形態の感圧センサの概要を示す模式図であり、(a)は初期状態(圧力を加える前の状態)を示す図であり、(b)は圧力を加えた状態を示す図である。
【0023】
図1に示すとおり、本実施形態の感圧センサは、圧力(荷重)の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサ1であって、樹脂11aと加熱膨張後の熱膨張性マイクロカプセル(TEM:Thermal Expansion Material)11bと導電性粒子11cとを含む多孔質導電膜である高抵抗層11と、圧力により変化する抵抗値を測定するために形成された一対の電極12(12a,12b)と、樹脂11aと加熱膨張後のTEM11bと高抵抗層11以上の量の導電性粒子11cとを含む多孔質導電膜である低抵抗層13と、を備える。
【0024】
そして、第1の基板14上に高抵抗層11および取り出し電極としての電極12が形成された回路基板を第1の感圧抵抗体15とし、第2の基板16上に低抵抗層13が形成された回路基板を第2の感圧抵抗体17とし、本実施形態の感圧センサ1は、第1の感圧抵抗体15の高抵抗層11と第2の感圧抵抗体17の低抵抗層13とを対向させて貼り合わせた構造とする(
図1(a)参照)。
【0025】
すなわち、本実施形態の感圧センサ1は、高抵抗層11および低抵抗層13を挟んで対向する第1の基板14と第2の基板16との少なくとも一方に加わる圧力の増加に応じて各抵抗層(11,13)の接触面積が増加するように構成され(
図1(b)参照)、接触面積の変化に応じた抵抗値の変化に基づいて圧力を測定する。
【0026】
図2は、本実施形態の感圧センサ1の形状の一例を示す図である。この感圧センサ1は、たとえば、第1の基板14上に円形状の高抵抗層11および一対の電極12(12a,12b)が形成された第1の感圧抵抗体15と、第2の基板16上に高抵抗層11と略同一形状の低抵抗層13が形成された第2の感圧抵抗体17とを、高抵抗層11と低抵抗層13とを対向させて貼り合わせることによって作製したものである。なお、
図2に示す感圧センサ1の形状は、イメージを例示したものであり、これに限るものではなく任意である。
【0027】
図3は、本実施形態の感圧センサ1の抵抗-圧力特性の一例を示す図である。一例として、高抵抗層11の抵抗値が5kΩ、低抵抗層13の抵抗値が1kΩとなるように導電性粒子11cを配合した感圧センサ1(
図1、
図2参照)の、抵抗-圧力特性を示す。この感圧センサ1は、初期状態(圧力なし)の時点では高抵抗層11が導通しているため、電極12aと電力12bとの間の抵抗値は5kΩを計測する。その後、徐々に圧力を加えると、低抵抗層13に導通パスが形成され、それに伴って、緩やかに抵抗値が下がり、最終的には測定可能な最大圧力を加えた時点において1kΩまで抵抗値が低下する。すなわち、この感圧センサ1における測定可能な抵抗値の範囲は、5kΩ~1kΩである。
【0028】
また、本実施形態の感圧センサ1においては、高抵抗層11および低抵抗層13にTEM11bを含ませることにより、すなわち、多孔質導電膜を形成することにより、双方の接触面に凹凸を形成し、高抵抗層11と低抵抗層13の接触面の面積を大きくするようにした(
図1参照)。これにより、初期状態においては、凹凸面の先端部分どうしが接触した状態となるが(
図1(a)参照)、この状態から徐々に圧力を加えると、凸凹面の先端部分以外の部分も徐々に接触し始め、最終的には、双方の凸凹面のすべての表面が接触した状態となる(
図1(b)参照)。
【0029】
すなわち、本実施形態の感圧センサ1においては、導電層の表面粗さ(凹凸)が小さく接触面積の変化が急峻となる従来の感圧センサと比較して、各抵抗層(11,13)双方の接触面の面積を大きくする構造としたので、圧力の変化に対する接触面積の変化を緩やかにすることができる。そして、接触面積の変化を緩やかにすることによって、抵抗値変化を緩やかにすることができる。
【0030】
このように、本実施形態の感圧センサ1においては、圧力の変化に対する抵抗値変化を緩やかにすることができることから、たとえば、圧力を加え続けても、測定可能な最大圧力まで抵抗値変化は緩やかに継続される。そのため、圧力の測定範囲を十分に広く確保することができる。
【0031】
また、上記では、一例として、高抵抗層11の抵抗値を5kΩとし、低抵抗層13の抵抗値を1kΩとすることによって、測定可能な抵抗値の範囲を5kΩ~1kΩとしたが、これに限るものではなく、測定可能な抵抗値の範囲は、各抵抗層(11,13)に混ぜ込む導電性粒子11cの配合量を調整することにより任意に設定可能である。たとえば、測定可能な抵抗値の範囲を高抵抗方向に広げたい場合には、高抵抗層11内の導電性粒子11cの配合量を減らすことで広げることができ、一方で、測定可能な抵抗値の範囲を低抵抗方向に広げたい場合には、低抵抗層13内の導電性粒子11cの配合量を増やすことで広げることができる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、高抵抗層11および低抵抗層13に含ませるTEM11bの配合量を調整し、双方の接触面の面積(凹凸)を任意に設定することにより、測定可能な圧力範囲を制御することが可能である。たとえば、圧力の測定範囲を広げたい場合には、TEM11bの量を増やすことによって接触面の面積を増大させる等、各抵抗層(11,13)におけるTEM11bの配合量の調整により自由に圧力の測定範囲を制御できる。
【0033】
このように、本実施形態の感圧センサ1においては、仕様や用途に応じて、圧力の測定範囲や抵抗値変化範囲を自由に制御することが可能であるため、所望の圧力範囲を高い感度で測定することができる。
【0034】
<感圧センサの製造>
つづいて、本実施形態の感圧センサの製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本実施形態の感圧センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0035】
本実施形態の感圧センサの製造方法においては、まず、樹脂と導電性粒子とTEM(膨張前のTEM11b’)を混合することにより、樹脂中に導電性粒子とTEM11b’が分散して形成された導電性樹脂ペーストを生成する(ステップS1)。この際、導電性粒子の配合量を調整することにより、高抵抗導電性樹脂ペースト21aと低抵抗導電性樹脂ペースト21bを別々に生成する。
【0036】
つぎに、第1の基板14上に、取り出し電極(一対の電極12(12a,12b))として、導電性ペーストを使用して電極パターン22を印刷し、さらに、電極パターン22を覆うように、上記で生成した高抵抗導電性樹脂ペースト21aを使用して高抵抗層パターン23aを印刷する(ステップS2)。また、第2の基板16上に、上記で生成した低抵抗導電性樹脂ペースト21bを使用して、高抵抗層パターン23aと略同一形状の低抵抗層パターン23bを印刷する(ステップS2)。
図5は、印刷パターンの一例を示す図であり、(a)は電極パターン22および高抵抗層パターン23aを示し、(b)は低抵抗層パターン23bを示す。なお、高抵抗層パターン23a(電極パターン22を含む)と低抵抗層パターン23bの印刷順は任意とする。
【0037】
つぎに、アニーリング(加熱処理)により、高抵抗層パターン23aとして形成された高抵抗導電性樹脂ペースト21a中のTEM11b’(
図5(a)参照)、および低抵抗層パターン23bとして形成された低抵抗導電性樹脂ペースト21b中のTEM11b’(
図5(b)参照)、をそれぞれ膨張させる(ステップS3)。
図6は、アニーリングにより得られる成形体(感圧抵抗体)の一例を示す図であり、(a)はアニーリングにより得られる第1の感圧抵抗体15であり、(b)はアニーリングにより得られる第2の感圧抵抗体17である。たとえば、
図6(a)に示すように、アニーリングによりTEM11b’が膨張し(熱膨張後のTEM11b)、第1の基板14上に電極12(12a,12b)および多孔質導電膜である高抵抗層11が形成された第1の感圧抵抗体15が得られる。また、
図6(b)に示すように、アニーリングによりTEM11b’が膨張し(熱膨張後のTEM11b)、第2の基板16上に多孔質導電膜である低抵抗層13が形成された第2の感圧抵抗体17が得られる。
【0038】
最後に、第1の感圧抵抗体15の高抵抗層11と第2の感圧抵抗体17の低抵抗層13とを対向させて貼り合わせることにより、感圧センサ1を作製する(
図1参照)。
図7は、本実施形態の製造方法により作製された感圧センサ1の一例を示す図であり、(a)は第1の感圧抵抗体15側から見た感圧センサ1であり、(b)は第2の感圧抵抗体17側から見た感圧センサ1である。
【0039】
このように、本実施形態の製造方法においては、材料の混合といった簡易な操作で導電性樹脂ペースト(高抵抗導電性樹脂ペースト21a,低抵抗導電性樹脂ペースト21b)を生成でき、また、ペーストを印刷してアニーリングを行うという簡単な作業で感圧抵抗体(第1の感圧抵抗体15、第2の感圧抵抗体17)を作製することができ、さらに、第1の感圧抵抗体15と第2の感圧抵抗体17を貼り合わせるという簡単な作業で安定的に感圧センサ1を作製することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、感圧センサ1を作製する際の製造コストの上昇を大幅に抑制することができる。
【0040】
<詳細な説明>
つづいて、本実施形態の感圧センサ1および感圧センサ1の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0041】
<樹脂材料>
本実施形態において使用可能な樹脂(樹脂11a)については、加熱して多孔質導電膜を形成可能であれば特に制限はないが、たとえば、熱可塑性樹脂(たとえば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等)や、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリフェニルメチルシロキサン(PMPS)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)等)等の伸縮性樹脂が好ましく使用可能であり、本実施形態においてはSBSを特に好ましく使用する。
【0042】
<導電性粒子>
本実施形態において、導電性粒子(導電性粒子11c)は、特に限定するものではないが、たとえば、カーボンブラック(CB)、グラフェン(Gr)、グラファイト(GF)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノワイヤ(CNW)、炭素繊維、黒鉛等の炭素系の粒子が好ましく使用され、これらを2種以上含んでもいてもよい。
【0043】
また、導電性粒子は、金、銀、銅、クロム、チタン、白金、ニッケル、錫、亜鉛、鉛、タングステン、鉄、アルミニウム等の金属からなる金属粒子、これらの金属を含む化合物からなる粒子、導電性樹脂からなる粒子、樹脂製の粒子に無電解ニッケル等の導電性を有する金属を被覆した粒子等の複合粒子等、または、金属ナノワイヤ(MNW)、金属繊維等であってもよい。
【0044】
なお、導電性粒子の大きさ(粒子径)は、TEMよりも小さければ特に制限はなく、たとえば、20nm~50μmであることが好ましい。
【0045】
<熱膨張性マイクロカプセル>
また、TEM(11b,11b’)としては、たとえば、熱膨張性マイクロカプセルの1つであるマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F、FNシリーズ等が使用可能である。
【0046】
<導電性樹脂ペーストの生成>
本実施形態では、上記SBSをテトラリンで溶解した液体に、導電性粒子とTEM11b’を投入し、THINKY(シンキー)にて所定の時間にわたり攪拌する(たとえば、攪拌5分+デガス2分)ことにより、樹脂中に導電性粒子とTEM11b’が分散して形成された導電性樹脂ペーストを生成する。この際、導電性粒子の配合量を調整することにより、高抵抗導電性樹脂ペースト21aと低抵抗導電性樹脂ペースト21bを別々に生成する。
【0047】
<基板材料>
本実施形態において使用する第1の基板14および第2の基板16の材料としては、たとえば、PEN(Polyethylene Naphthalate)やPET(Polyethylene Terephthalate)が好ましいが、これに限定されず他の材料であってもよく、たとえば、Pl(Polyimide)やPC(Polycarbonate)等でもよく、さらに、伸縮性のあるPUやPDMS等を使用することとしてもよい。また、ガラスのようなリジッドな基板材料も使用可能である。
【0048】
<電極の印刷>
本実施形態では、第1の基板14上に、取り出し電極(1対の電極12(12a,12b))として、導電性ペーストを使用して電極パターン22(たとえば、
図7(a)に示す印刷パターン参照)をスクリーン印刷する。導電性ペーストとしては、たとえば、銀(Ag)ペーストを使用することが好ましい。
【0049】
具体的には、一対の電極12の一方の電極12aは、円弧状電極部12a1と、円弧状電極部12a1と一体に形成されかつ円弧状電極部12a1の延伸方向に間隔を開けて配設された複数の直線状電極部12a2とを備える。もう一方の電極12bも同様に、円弧状電極部12b1と、円弧状電極部12b1と一体に形成されかつ円弧状電極部12b1の延伸方向に間隔を開けて配設された複数の直線状電極部12b2とを備える。そして、電極12aおよび電極12bのそれぞれの円弧状電極部が、円形状に形成された高抵抗層11に沿ってそれぞれ対向するように第1の基板14上に印刷され、それぞれの直線状電極部が各円弧状電極部の内側に交互に並ぶように印刷されている。これにより、一対の電極12は、略円形状の輪郭となる。
【0050】
なお、電極12(電極パターン22)のパターン形状は、感圧センサ1において、圧力に応じた抵抗値変化を感度良く測定できる形状であればよく、これに限るものではなく任意である。また、本実施形態においては、導電性ペーストとして銀ペーストを使用することとしたが、これに限るものではなく、たとえば、銅ペーストやカーボンペースト等も使用可能である。また、必ずしも導電性ペーストを使用しなくてもよく、たとえば、従来の真空成膜技術を用いることとしてもよい。また、電極12の印刷は、上記のとおりスクリーン印刷が好ましいが、第1の基板14に電極12を印刷可能であればどのような印刷方式であってもよい。
【0051】
<高抵抗層パターンの印刷>
本実施形態では、たとえば、スクリーン印刷等の印刷法により、第1の基板14上において電極パターン22を覆うように、高抵抗導電性樹脂ペースト21aを使用して高抵抗層パターン23aを印刷することとした(
図5(a)参照)。これにより、第1の基板14上に、銀ペーストの層である電極パターンと高抵抗導電性樹脂ペースト21aの層である高抵抗層パターン23aが形成される。
【0052】
なお、この高抵抗導電性樹脂ペースト21aの層の形成は、スクリーン印刷により形成するものに限定されず、他の印刷方式によって形成することとしてもよい。
【0053】
<低抵抗層パターンの印刷>
本実施形態では、たとえば、スクリーン印刷等の印刷法により、第2の基板16上に、低抵抗導電性樹脂ペースト21bを使用して低抵抗層パターン23bを印刷することとした(
図5(b)参照)。
【0054】
なお、この低抵抗導電性樹脂ペースト21bの層の形成についても、上記同様、スクリーン印刷により形成するものに限定されず、他の印刷方式によって形成することとしてもよい。
【0055】
また、高抵抗導電性樹脂ペースト21aおよび低抵抗導電性樹脂ペースト21bは、印刷が可能であることから、たとえば、任意のパターン印刷を容易に行うことができる。
【0056】
<アニーリング>
本実施形態においては、2段階のアニーリング(加熱処理)を行う。具体的には、プリアニーリング(前段の加熱処理)により、溶媒(テトラリン)を揮発させる。その後、ポストアニーリング(後段の加熱処理)により、高抵抗層パターン23aとして形成された高抵抗導電性樹脂ペースト21a中のTEM11b’、および低抵抗層パターン23bとして形成された低抵抗導電性樹脂ペースト21b中のTEM11b’、をそれぞれ膨張させる。
【0057】
プリアニーリングの温度は、たとえば、溶媒(テトラリン)が揮発する温度である60℃~80℃であることが好ましく、また、プリアニーリングの時間は、10分~60分であることが好ましい。たとえば、溶媒としてテトラリンを使用する場合においては、たとえば、プリアニーリングの温度は70℃、プリアニーリングの時間は30分であってよい。
【0058】
また、ポストアニーリングの温度は、使用するTEMによるが、たとえば、マツモトマイクロスフェアー(登録商標):HF-36Dを使用する場合においては、このTEM(TEM11b’)が膨張する温度である100℃~150℃であることが好ましく、また、ポストアニーリングの時間は、1分~10分であることが好ましい。HF-36Dを使用する場合においては、たとえば、ポストアニーリングの温度は120℃、ポストアニーリングの時間は5分であってよい。
【0059】
上記アニーリングを行うことにより、TEM11b’が膨張し(TEM11bが形成され)、多孔質導電膜である高抵抗層11および低抵抗層13が形成される。すなわち、
図6に示すような凹凸形状の接触面が形成された高抵抗層11および低抵抗層13を作製することができる。
【0060】
<その他>
なお、本実施形態において、熱膨張後のTEM11bの直径は、特に限定するものではないが、たとえば、直径が50μm~200μmであることが好ましく、直径が80μm~120μmであることが特に好ましい。
【0061】
また、本実施形態の製造方法により作製された感圧センサ1において、高抵抗層11および低抵抗層13の厚みは、特に限定されないが、たとえば、50μm~300mmであることが好ましい。
【0062】
<その他の実施形態(1)>
また、上述した実施形態を応用したその他の実施形態として、たとえば、周辺の複数箇所において圧力を測定することができる感圧センサを作製することとしてもよい。
図8は、感圧センサ1を応用したその他の感圧センサの一例を示す図である。
【0063】
図8において、感圧センサ1’は、複数の感圧センサ1がアレイ状に配置された形状を有する。具体的には、第1の基板14’上に複数の高抵抗層11(電極12を含む)がアレイ状に形成された回路基板を第1の感圧抵抗体15’とし、第2の基板16’上に複数の低抵抗層13がアレイ状に形成された回路基板を第2の感圧抵抗体17’とし、感圧センサ1’は、第1の感圧抵抗体15’における複数の高抵抗層11と第2の感圧抵抗体17’における複数の低抵抗層13とを対向させて貼り合わせた構造とする。
【0064】
また、感圧センサ1’は、以下のように作製する。たとえば、
図4に示すペースト生成処理(ステップS1)を実施後、電極パターン22、高抵抗層パターン23aおよび低抵抗層パターン23bを印刷する処理(ステップS2)を複数回にわたり繰り返し実行する。これにより、第1の基板14’上に、高抵抗層パターン23a(電極パターン22を含む)をアレイ状に形成し、第2の基板16’上に、低抵抗層パターン23bをアレイ状に形成する。その後、
図4に示す加熱処理(ステップS3)および貼り合わせ処理(ステップS4)を実施する。これにより、複数の感圧センサ1がアレイ状に配置された形状を有する感圧センサ1’を得ることができる。なお、アレイ状に配置される感圧センサ1の数は、
図8に示す16個に限るものではなく、たとえば、センサの仕様に応じて任意に設定可能である。
【0065】
図8に示す感圧センサ1’によれば、周辺の複数個所において圧力を測定することができるため、より詳細な圧力測定が可能となり、圧力の分布も測定可能である。
【0066】
なお、この実施形態においては、ステップS2の処理(印刷処理)を複数回にわたって繰り返し実行することとしたが、この方法に限るものではなく、たとえば、複数の印刷パターンを同時に印刷可能なステンシルマスク(スクリーンマスク)を使用することによって、パターン毎に一括でスクリーン印刷を行うこととしてもよい。これにより、複数の感圧センサ1がアレイ状に形成された感圧センサ1’を、短い作業時間で簡単に得ることができる。
【0067】
<その他の実施形態(2)>
また、上述した感圧センサ1および感圧センサ1’は、抵抗値の変化を測定するための測定回路およびその測定結果を無線送信するための送信回路をさらに含む構成としてもよい。測定回路としては、たとえば、一般的なブリッジ回路にて構成可能であり、この場合、抵抗値の変化を電圧の変化に置き換えて測定する。また、送信回路の送信方式は、たとえば、近距離無線通信であるBLE(Bluetooth Low Energy)、NFC(Near Field Communication)、無線LAN(WI-FI)、赤外線通信等、既知の無線通信方式を使用することが好ましく、送信回路は、上記測定回路による測定結果を無線通信により外部に送信する。
【0068】
これにより、圧力の変化に応じた抵抗値の変化を受信側(受信回路側)で知ることができるようになるため、たとえば、遠隔においても圧力変化を把握することができる。
【実施例0069】
つづいて、本発明にかかる感圧センサの実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0070】
<1.本実施例の感圧センサ>
図4に示す製造方法に従い、本実施例の感圧センサを作製した。
【0071】
具体的には、まず、高抵抗導電性樹脂ペースト用の材料として、SBS:30mg、粒子径34nmのCB:1.5mg(SBSに対して5%の量)、TEM(マツモトマイクロスフェアー(登録商標):HF-36D):1.5mg(SBSに対して5%の量)、をそれぞれ準備した。その他、溶解液としてテトラリン:170mgも準備した。
【0072】
また、低抵抗導電性樹脂ペースト用の材料として、SBS:30mg、粒子径34nmのCB:3mg(SBSに対して10%の量)、TEM(マツモトマイクロスフェアー(登録商標):HF-36D):1.5mg(SBSに対して5%の量)、をそれぞれ準備した。同様に、溶解液としてテトラリン:170mgも準備した。
【0073】
そして、SBS:30mgをテトラリン:170mgで溶解した液体に、CB:1.5mgとTEM:1.5mgを投入し、THINKY(自転・公転攪拌器)にて5分間にわたり攪拌し、その後、デガスを2分間実施し、樹脂中にCBとTEMが分散して形成された高抵抗導電性樹脂ペーストを生成した。
【0074】
同様に、SBS:30mgをテトラリン:170mgで溶解した液体に、CB:3mgとTEM:1.5mgを投入し、THINKYにて5分間にわたり攪拌し、その後、デガスを2分間実施し、樹脂中にCBとTEMが分散して形成された低抵抗導電性樹脂ペーストを生成した。
【0075】
つぎに、スクリーン印刷機と、高抵抗層用の基板(PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム Q83シリーズ:東洋紡)を準備し、高抵抗層用基板上に、取り出し電極(1対の電極)として、銀ペースト(XA-3609:藤倉化成)を使用して
図7(a)に示す電極パターン(略円形状の輪郭を有する電極パターン)をスクリーン印刷した。
【0076】
つぎに、同じくスクリーン印刷機および上記で生成した高抵抗導電性樹脂ペーストを使用して、電極パターン22を覆うように、高抵抗層用基板上に略円形状の高抵抗層パターンをスクリーン印刷した。
【0077】
さらに、低抵抗層用の基板(PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム Q83シリーズ:東洋紡)を準備し、同じくスクリーン印刷機および上記で生成した低抵抗導電性樹脂ペーストを使用して、低抵抗層用基板上に高抵抗層パターンと略同一形状の低抵抗層パターンをスクリーン印刷した。
【0078】
つぎに、2段階のアニーリング処理を行った。具体的には、70℃、30分のプリアニーリングにより、テトラリンを揮発させた。その後、120℃、5分のポストアニーリングにより、高抵抗層パターンとして形成された高抵抗導電性樹脂ペーストのTEM、および低抵抗層パターンとして形成された低抵抗導電性樹脂ペースト中のTEM、をそれぞれ膨張させた。
【0079】
上記2段階のアニーリングにより、高抵抗層用基板上に取り出し電極および多孔質導電膜である高抵抗層が形成された第1の感圧抵抗体が得られた。また、低抵抗層用基板上に多孔質導電膜である低抵抗層が形成された第2の感圧抵抗体が得られた。
【0080】
最後に、第1の感圧抵抗体の高抵抗層と第2の感圧抵抗体の低抵抗層とを対向させて貼り合わせることにより、本実施例の感圧センサを作製した。なお、SBSは粘着性が弱い樹脂のため、粘着シート(3M製:テガダーム)でカバーした。これにより、
図7に示す感圧センサが得られた。
【0081】
<2.感度>
図9は、本実施例の感圧センサの感度を示す図であり、ここでは、圧力(N)に対する電気抵抗変化率(感度):R/R
0(%)が示されている。R
0は圧力(荷重)をかける前(初期状態)の抵抗値であり、Rは加圧後の抵抗値である。
【0082】
本実施例の感圧センサは、徐々に圧力を大きくしていくと、電気抵抗変化率:R/R0(%)が徐々に下降していった。また、圧力の増加時と減少時において、電気抵抗変化率:R/R0(%)が略一致し、ヒステリシスが小さいことがわかった。以上のことから、本実施例の感圧センサは、圧力の増減に対して良好な感度および応答性を示すことがわかった。
【0083】
<3.再現性>
図10は、本実施例の感圧センサの感度の再現性を示す図であり、下の波形Aは全体波形であり、上の波形A’は部分拡大波形(920秒~1020秒)である。ここでは、本実施例の感圧センサに対して、「0N(圧力なし)→2N→0N」を1サイクルとする加圧を100サイクル(約1500秒間)にわたって繰り返し実施し、感度の再現性を検証した。
【0084】
その結果、
図10の波形Aに示すとおり、100サイクルにわたって電気抵抗変化率:R/R
0(%)が略一定であり、また、
図10の波形A’に示すとおり、各サイクルの波形が略同一形状であった。この検証により、本実施例の感圧センサは、再現性が良好であるといえる。
【0085】
<4.感度の制御>
図11は、CB比率:SBSに対するCBの量(=CB(mg)/SBS(mg))×100)別の感度を示す図である。ここでは、高抵抗層(Bottom layer:B)のCB比率と低抵抗層(Top layer:T)のCB比率とを調整し、上述した本実施例の製造方法により、6種類の感圧センサを作製した。そして、それぞれの感圧センサに対して個別に圧力(N)を加え、各感圧センサの電気抵抗変化率:R/R
0(%)の変化を評価した。
【0086】
なお、
図11(a)において、B3は高抵抗層(B)のCB比率が3であることを示し、T3、T5、T10は低抵抗層(T)のCB比率がそれぞれ3、5、10であることを示す。また、
図11(b)において、B5は高抵抗層(B)のCB比率が5であることを示し、T3、T5、T10は低抵抗層(T)のCB比率がそれぞれ3、5、10であることを示す。
【0087】
図11に示すとおり、CB比率を調整することにより、感度をコントロールできることを確認することができた。
【0088】
また、低抵抗層(T)のCB比率が高抵抗層(B)のCB比率以上の場合には、CB比率の差によって感度に差は見られるが、加圧を継続することによって電気抵抗変化率:R/R0(%)が徐々に下降する傾向を確認することができた。すなわち、高抵抗層(B)の抵抗値が低抵抗層(T)の抵抗値以上であれば、感圧センサとして使用可能であることがわかった。たとえば、低抵抗層(T)と高抵抗層(B)でCB比率が同一の場合には、低抵抗層(T)と高抵抗層(B)の作製時に同一のペーストを使用することができるので、感圧センサの製造コストを抑えることができる。
【0089】
また、高抵抗層(B)のCB比率が一定の場合、低抵抗層(T)のCB比率が高いほど高い感度が得られることを確認することができた。