(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000430
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】汚泥乾燥方法、汚泥乾燥装置及び汚泥の含水率の測定方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/13 20190101AFI20231225BHJP
C02F 11/143 20190101ALI20231225BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
C02F11/143
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099196
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マハズン ヤヒヤ
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 一将
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA30
4D059BD12
4D059BD15
4D059BD34
4D059BJ17
4D059DA19
4D059DA22
4D059DA61
4D059EA01
4D059EB01
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】所望の含水率の乾燥汚泥を、早期且つ簡易に効率良く得ることが可能な汚泥乾燥方法、汚泥乾燥装置及び汚泥の含水率の測定方法を提供する。
【解決手段】含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を被処理汚泥に混合した後、被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることを含む汚泥乾燥方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を被処理汚泥に混合した後、前記被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることを含む汚泥乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥助剤を前記被処理汚泥の湿重量に対して1重量%超20重量%以下混合することを含む請求項1に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項3】
前記乾燥助剤が、粒径1μm~1mmの活性炭である請求項1又は2に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥助剤が、含水率40重量%以下、粒径1mm~10mmの乾燥汚泥である請求項1又は2に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項5】
前記乾燥助剤が、水よりも熱伝導率の高い金属化合物で形成されている請求項1又は2に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項6】
前記被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることが、内部に前記被処理汚泥を乾燥させるための熱媒体が流通するシャフトと、前記シャフトに取り付けられた複数のパドルとを備える撹拌シャフトによって、前記乾燥機内の供給側から排出側へ前記被処理汚泥を搬送しながら前記シャフトから伝達される熱によって前記被処理汚泥を乾燥させることを含む請求項1又は2に記載の汚泥乾燥方法。
【請求項7】
被処理汚泥に含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を混合させる混合部と、
前記乾燥助剤の混合量を制御する制御部と、
前記乾燥助剤を混合した前記被処理汚泥を乾燥させて乾燥汚泥を得る乾燥機と、
を備える汚泥乾燥装置。
【請求項8】
前記乾燥汚泥の含水率を測定する含水率計を更に備え、
前記制御部が、前記乾燥汚泥の前記含水率の測定結果に基づいて、前記乾燥機の運転条件又は前記乾燥助剤の混合量を制御することを含む請求項7に記載の汚泥乾燥装置。
【請求項9】
前記乾燥機が、
前記被処理汚泥を供給する供給口及び前記乾燥汚泥を排出する排出口を備える本体部と、
前記本体部の内部に配置され、前記被処理汚泥を乾燥させるための熱媒体が内部を流通する中空構造のシャフトと、前記シャフトに取り付けられ、前記被処理汚泥を供給側から排出側へ搬送する複数のパドルとを備える1又は複数の撹拌シャフトと
を備える請求項7又は8に記載の汚泥乾燥装置。
【請求項10】
含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を測定対象とする汚泥に混合する工程と、
前記乾燥助剤を混合した後の前記汚泥の含水率を水分計で測定する工程と
を含む汚泥の含水率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥乾燥方法、汚泥乾燥装置及び汚泥の含水率の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場やし尿処理場等の各種処理場で発生する汚泥を輸送するために汚泥乾燥機等を用いて汚泥を乾燥し、焼却することが行われている。例えば、特開昭60-075399号公報(特許文献1)では、脱水汚泥を無砂式流動層乾燥機で乾燥したのち、無砂式流動層焼却炉で焼却する脱水汚泥の乾燥焼却法において、乾燥機での乾燥工程の前処理として脱水汚泥を焼却炉の発生熱を利用した予備乾燥造粒機で乾燥造粒する脱水汚泥の乾燥焼却法が記載されている。
【0003】
また、特開2017-223396号公報(特許文献2)では、下水汚泥やし尿汚泥、食品廃棄物のように、脂肪分やタンパク質分を含む有機性含水廃棄物等の被処理体を乾燥する乾燥機システムにおいて、乾燥機中の汚泥の含水率を調整して乾燥機内における汚泥のこびり付きを防ぐために、含水率計の含水率の測定結果に基づいて返送ポンプを制御し、乾燥機外へ排出される汚泥を乾燥機へ返送する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-075399号公報
【特許文献2】特開2017-223396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ふるいにより選別された予備乾燥後の小粒径および大粒径の造粒汚泥を、再度投入口から予備乾燥造粒機のケーシング内に投入する方式を採用する特許文献1では、造粒の容易化には一定の効果があるが、投入原料の含水率によっては効果が限定的となり、乾燥汚泥を早期且つ簡易に得る点に関してはまだ検討の余地がある。また、特許文献1に記載された発明では、予備乾燥機と乾燥機を備えるため、装置が大型化する。
【0006】
特許文献2に記載された方法では、乾燥機で乾燥させて得られる乾燥汚泥を乾燥機へ返送することにより、汚泥乾燥の為の動力の無駄が発生する。特に、乾燥機へ投入される脱水汚泥の含水率が高い場合は、特許文献2の手法によって乾燥機内部への汚泥のこびり付きは抑制できたとしても、汚泥の乾燥のための動力の無駄が大きくなるため、乾燥汚泥を効率良く得るための手法としては未だ検討の余地がある。
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、所望の含水率の乾燥汚泥を、早期且つ簡易に効率良く得ることが可能な汚泥乾燥方法、汚泥乾燥装置及び汚泥の含水率の測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、脱水汚泥に対し、所定の乾燥助剤を混合することが有効であるとの知見を得た。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本開示は一側面において、含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を被処理汚泥に混合した後、被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることを含む汚泥乾燥方法である。
【0010】
本発明に係る汚泥乾燥方法は一実施態様において、乾燥助剤を被処理汚泥の湿重量に対して1重量%超20重量%以下混合する。
【0011】
本発明に係る汚泥乾燥方法は別の一実施態様において、乾燥助剤が、粒径1μm~1mmの活性炭である。
【0012】
本発明に係る汚泥乾燥方法は更に別の一実施態様において、乾燥助剤が、含水率40重量%以下、粒径1mm~10mmの乾燥汚泥である。
【0013】
本発明に係る汚泥乾燥方法は更に別の一実施態様において、乾燥助剤が、水よりも熱伝導率の高い金属化合物で形成されている。
【0014】
本発明に係る汚泥乾燥方法は更に別の一実施態様において、被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることが、内部に被処理汚泥を乾燥させるための熱媒体が流通するシャフトと、シャフトに取り付けられた複数のパドルとを備える撹拌シャフトによって、乾燥機内の供給側から排出側へ被処理汚泥を搬送しながらシャフトから伝達される熱によって被処理汚泥を乾燥させることを含む。
【0015】
本開示は別の一側面において、被処理汚泥に含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を混合させる混合部と、乾燥助剤の混合量を制御する制御部と、乾燥助剤を混合した被処理汚泥を乾燥させて乾燥汚泥を得る乾燥機とを備える汚泥乾燥装置である。
【0016】
本発明に係る汚泥乾燥装置は一実施態様において、乾燥汚泥の含水率を測定する含水率計を更に備え、制御部が、乾燥汚泥の含水率の測定結果に基づいて、乾燥機の運転条件又は乾燥助剤の混合量を制御することを含む。
【0017】
本発明に係る汚泥乾燥装置は別の一実施態様において、乾燥機が、被処理汚泥を供給する供給口及び乾燥汚泥を排出する排出口を備える本体部と、本体部の内部に配置され、被処理汚泥を乾燥させるための熱媒体が内部を流通する中空構造のシャフトと、シャフトに取り付けられ、被処理汚泥を供給側から排出側へ搬送する複数のパドルとを備える1又は複数の撹拌シャフトとを備える。
【0018】
本開示は更に別の一側面において、含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を測定対象とする汚泥に混合する工程と、乾燥助剤を混合した後の汚泥の含水率を水分計で測定する工程とを含む汚泥の含水率の測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に効率良く得ることが可能な汚泥乾燥方法、汚泥乾燥装置及び汚泥の含水率の測定方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る汚泥乾燥装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る乾燥機の一例を示す部分断面図である。
【
図3】脱水消化汚泥に粉末活性炭を混合し、加熱温度200℃とした場合の含水率と乾燥時間との関係を表すグラフである。
【
図4】脱水消化汚泥に粉末活性炭を0~10重量%混合した場合の含水率と乾燥時間との関係を表すグラフである。
【
図5】脱水消化汚泥に粉末活性炭を0~3重量%混合し、加熱温度165℃とした場合の含水率と乾燥時間との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
(汚泥乾燥装置)
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る汚泥乾燥装置は、被処理汚泥に微粉末状又は粒状の乾燥助剤を混合させる混合部1と、混合部1で得られる被処理汚泥を乾燥させて乾燥汚泥を得る乾燥機2と、乾燥助剤の混合量を制御する制御装置5とを備える。
【0023】
被処理汚泥としては、特に限定されないが、典型的には、脱水汚泥が好適に用いられる。例えば、下水処理場等で発生する脱水汚泥は、粘着性が強いため、そのまま乾燥させると塊状態となる場合がある。塊状態の脱水汚泥をそのまま乾燥させると、表面は乾燥するが内部は含水率が高いままとなるため、乾燥のための動力が多く必要となる。よって、このような脱水汚泥に対して後述する乾燥助剤を混合させることで、乾燥機2内での乾燥時間を短時間化し、より効率の良い乾燥を行うことができる。
【0024】
本実施形態で用いられる被処理汚泥の含水率は、限定されるものではないが、下水処理場から発生する脱水汚泥に関しては70~90重量%、より典型的には75~90重量%、更に典型的には80~90重量%、し尿処理場から発生する脱水汚泥に関しては、60~80重量%、より典型的には65~80重量%、更に典型的には70~80重量%である。本実施形態では、後述する乾燥助剤を添加することにより、含水率が比較的高い被処理汚泥も効率良く乾燥処理を行うことができる。
【0025】
混合部1では、含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤が被処理汚泥中に供給されて混合される。混合部1の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、乾燥助剤と被処理汚泥とを撹拌しながら混合するための撹拌装置等を備えることができる。混合部1を省略し、乾燥機2内に投入する被処理汚泥と一緒に乾燥助剤を乾燥機2内へ供給するようにしてもよい。
【0026】
乾燥助剤としては、粒径1μm~1mmの粒状活性炭又は粉末活性炭を用いることが好ましい。粒状活性炭又は粉末活性炭を被処理汚泥に混合することで、活性炭が備える細孔中に汚泥の水分を吸収させることができるため、短い乾燥時間で所望の含水率の乾燥汚泥を生成できる。活性炭は、粒径が小さい粉末活性炭を乾燥助剤として用いるほど、活性炭の表面積を増大でき、水分の吸着を促すことができる点で好ましいが、小さすぎると空気中に飛散し、取り扱いが難しい場合がある。
【0027】
粒状活性炭の大きさは特に限定されないが、好ましくは、有効径(10%通過径)が0.3mm~1.0mm、均等係数が1.2~2.0である。活性炭の原料は特に限定されず、ヤシ殻、木炭、オガ屑、松、竹、硬質木材チップ、草炭、セルロースなどの植物系亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などの石炭系、または、オイルカーボン、フェノール樹脂、レーヨン、石炭ピッチ、石油ピッチなどの石油系など、多様な原料を1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
活性炭は、加工していない原料(未加工原料)、または、未加工原料の破砕品をそのまま使用してもよいし、原料を成形加工した成形品であってもよい。成形加工方法は特に限定されないが、通常、活性炭原料を粉砕し、必要であれば結着剤(有機バインダー、無機結着剤)、水、その他添加剤等と混練し、造粒又はプレス成形後に焼成(炭化、賦活)して成形する。
【0029】
なお、活性炭は、市販品や製造直後の未使用品(新品)でもよく、浄水処理、廃水処理、汚泥処理などに一度以上使用した使用済活性炭を賦活再生した再生炭でもよい。ここで、活性炭の粒径は、JIS K1474(2014)に基づいて測定した粒度分布の有効径(10%通過径)を意味する。
【0030】
乾燥助剤としては、含水率40重量%以下、粒径1mm~10mmの乾燥汚泥を用いることもまた好ましい。例えば、乾燥機2内に残存し、乾燥機2内で粉塵の原因となり得るハンドリングの悪い乾燥汚泥の微粉末を取り出し、これを乾燥助剤として利用することも好ましい。乾燥汚泥は、含水率が低いほど、乾燥汚泥生成までの時間を短縮できる効果を有する。乾燥汚泥としては、含水率が40重量%以下のものを利用することがより好ましく、30重量%以下のものが更に好ましい。なお、乾燥汚泥の含水率の下限値は特に限定されないが、例えば20重量%以上である。
【0031】
乾燥汚泥の粒径は、大きすぎると、乾燥機2内で塊状の汚泥を生じさせ、被処理汚泥中の水分の吸着効果も小さくなることがある。乾燥汚泥は、粒径1mm~10mmのものを用いることが好ましく、粒径1mm~5mmのものがより好ましい。
【0032】
乾燥助剤としては、水よりも熱伝導率が高い金属化合物で形成されることもまた好ましい。金属化合物の中でも金属酸化物が好ましく、特に、酸化鉄、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化銀等が好適である。熱伝導率の高い金属化合物を被処理汚泥に混合させることで、乾燥機2内の汚泥全体の伝熱性を高め、乾燥時間を短くできる。水よりも熱伝導率が高い材料としては熱伝導率が80~500W/m・K程度の酸化鉄、酸化銅、酸化アルミニウムや酸化銀等からなる群の中から選択される1種類以上を用いることができる。
【0033】
中でも、酸化鉄又は酸化銅は、乾燥時間短縮に加えて被処理汚泥からの硫化水素の発生を抑制することができる点で特に好ましい。被処理汚泥中に十分に混合するために、例えば粒径0.1μm~1mm程度の粒状又は微粉末状の金属化合物を用いることが好ましい。金属化合物の粒径は、例えば、JIS K1474(2014)に基づいて測定した粒度分布の有効径(10%通過径)で評価できる。なお、乾燥助剤としては、上述の材料の他に吸水ポリマーや塩化物等の乾燥剤を利用することもできる。使用目的にあわせて上述の乾燥助剤を1又は複数種類適宜組み合わせて使用してもよい。
【0034】
乾燥助剤の被処理汚泥への混合量(混合率)は、被処理汚泥の含水率にもよるが、典型的には、被処理汚泥の湿重量に対して1重量%超20重量%以下が望ましいが、コストや機械の設計の都合を鑑みると、1~10重量%とすることが好ましく、より更には1~3重量%とすることが好ましい。
【0035】
乾燥機2は、乾燥助剤が混合された被処理汚泥を乾燥させることが可能な装置であれば特に限定されず、周知の装置を用いることができる。中でも、乾燥機2として、汚泥の搬送と乾燥とを同時に行うことが可能な間接加熱乾燥機を用いることが好ましい。この間接加熱乾燥機は、内部に熱媒体を通すことが可能なシャフトを用いて汚泥を撹拌しながら汚泥の水分を効率よく蒸発させて乾燥する乾燥機である。
【0036】
間接加熱乾燥機を用いることにより、数百℃の熱風を用いて乾燥させる従来の乾燥機に比べて熱エネルギーの消費量を少なくでき、仮に、従来の乾燥機よりも伝熱性が劣るといった課題がある場合でも、より効率的な乾燥を行うことができる。というのも、本発明の実施の形態に係る乾燥助剤の添加処理と、間接加熱乾燥機とを組み合わせることによって、被処理汚泥に均一かつ速やかに熱を伝え、短時間で所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に得ることが実現可能となるためである。また、従来の乾燥機よりも内部構造が複雑で、乾燥汚泥が付着・堆積しやすいといった課題が有る場合でも、被処理汚泥に均一かつ速やかに熱を伝えることができるため、乾燥機内(時にパドル)への汚泥の付着と堆積をも防止することができる。
【0037】
図2は、乾燥機2として間接加熱乾燥機を用いた場合の装置の概略図である。乾燥機2は、被処理汚泥を供給する供給口21及び乾燥汚泥を排出する排出口22を備える本体部20と、本体部20の内部に略水平方向に延在する撹拌シャフト23と、撹拌シャフト23を駆動する駆動装置24とを備える。本体部20の排出口22の上部には、本体部20内に循環気を供給するための給気口25が配置され、供給口21に隣接する本体部20の上部には本体部20内を流れる循環気を外部へ排出するための排気口26が設けられている。
【0038】
撹拌シャフト23は、被処理汚泥を乾燥させるための熱媒体が内部を流通する中空構造のシャフト231と、シャフト231に取り付けられ、被処理汚泥を供給側から排出側へ搬送するための複数のパドル232とを備える。シャフト231の内側には、熱媒体として蒸気が供給され、蒸気による熱で撹拌シャフト23が温められ、撹拌シャフト23によって被処理汚泥が供給口21側から排出口22側へ搬送されながら乾燥処理される。本体部20の上方から循環気が供給され、排気口26から循環気が排気されるようになっている。
【0039】
図1に示すように、乾燥機2には、乾燥機2で生成された乾燥汚泥を混合部1及び乾燥機2へ返送するための返送経路L1が接続されている。返送経路L1には、混合部1へ返送される乾燥汚泥の含水率を測定するための含水率計S2が接続されている。含水率計S2は制御装置5に接続されており、含水率計S2の測定結果に基づいて、混合部1へ供給される乾燥汚泥の混合量を制御できるようになっている。
図1に示すように、乾燥助剤の含水率を測定するための含水率計S3、被処理汚泥の含水率を測定するための含水率計S1が更に設けられていてもよい。
【0040】
制御装置(制御部)5は、混合制御部3及び乾燥制御部4を備える。混合制御部3は、被処理汚泥の湿重量と、乾燥助剤の含水率とに基づいて、被処理汚泥へ供給される乾燥助剤の混合量が最適となるように制御する。例えば、混合制御部3は、被処理汚泥の湿重量に対して最適な乾燥助剤の含水量を表す混合量情報に基づいて、被処理汚泥の湿重量に対して1重量%超20重量%以下乾燥助剤を混合するように、乾燥助剤の混合量を制御する。
【0041】
混合制御部3は、被処理汚泥の含水率等のデータを含む所定の説明変数を取得し、被処理汚泥へ供給する乾燥助剤の最適な混合量を含む所定の目的変数を出力する学習済モデルを用いた機械学習アルゴリズムを用いて、被処理汚泥へ供給する乾燥助剤の混合量を予測してもよい。混合量の制御に機械学習アルゴリズムを用いた予測を用いることにより、乾燥助剤の混合量を最適化でき、効率のよい乾燥処理を行うことができる。
【0042】
ここで、説明変数には、含水率の他に、少なくとも、強熱減量、熱伝導度のいずれかを含むこととするのが望ましい。例えば、被処理汚泥の強熱減量は、限定されるものではないが、下水処理場から発生する脱水汚泥に関しては65~95乾燥重量%、より典型的には75~85乾燥重量%で、し尿処理場から発生する脱水汚泥に関しては、70~90乾燥重量%、より典型的には75~85乾燥重量%である。しかしながら、含水率は同等であっても、この強熱減量や熱伝導度の値は異なる場合がある。
【0043】
含水率に加えて強熱減量と熱伝導度には相関がある。例えば、乾燥助剤の混合量は、含水率が低いほど、また、強熱減量や熱伝導度が高いほど少なくできる。よって、被処理汚泥へ供給する乾燥助剤の混合量の予測において、説明変数として、含水率に加えて更に、強熱減量、熱伝導度の少なくともいずれかのデータを学習済モデルに含めることにより、乾燥助剤の混合量のより正確な予測が可能になる。なお、発明者らの検討の結果、強熱減量と熱伝導度の相関として、強熱減量が高い汚泥ほど熱伝導度は低いといった傾向もあることを見出しており、この相関情報を用いることによって、強熱減量と熱伝導度のいずれかを含めるだけでも予測の精度は上がるし、強熱減量と熱伝導度の両方を含めればさらに予測度の精度は上がる。このような予測では、同等の含水率を有している場合、し尿処理場から発生する脱水汚泥、下水処理場から発生する混合生汚泥、下水処理場から発生する消化汚泥の順に乾燥助剤の混合量は低くなる傾向がある。
【0044】
乾燥制御部4は、乾燥汚泥の含水率の測定結果に基づいて、乾燥機の運転条件を制御する。例えば、乾燥汚泥の含水率の測定結果が設定値に対して高い場合、乾燥制御部4は、乾燥機2の乾燥時間をより長くし、乾燥汚泥の含水率の測定結果が設定値に対して低い場合、乾燥時間を短くするように、乾燥機2の運転条件を制御できる。これにより、所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に得ることが可能となる。
【0045】
ふるい7は、乾燥助剤を所定の粒径範囲に篩別するための装置であり、1又は複数のふるい器で構成されることができる。ふるい7で含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤が篩い分けされ、篩分け後の乾燥助剤が混合部1へ供給される。
【0046】
本発明の実施の形態に係る汚泥乾燥装置によれば、被処理汚泥を乾燥機2へ投入する前に所定の含水率及び粒径の乾燥助剤が混合されることにより、所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に効率良く得ることが可能となる。特に、粘性の高い汚泥は、乾燥機2において熱を加えても乾燥しにくく、所望の含水率に調整するために乾燥時間が長くなる場合がある。本実施形態に係る汚泥乾燥装置によれば、粘性の高い汚泥に対しても所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に効率良く得ることが可能となる。
【0047】
本発明の実施の形態に係る汚泥乾燥方法は、含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を被処理汚泥に混合した後、被処理汚泥を乾燥機内で乾燥させて乾燥汚泥を得ることを含む。乾燥助剤としては上述の種々の材料を用いることができ、
図1に示す汚泥乾燥装置を用いて乾燥助剤の混合量を調整することが好ましい。本発明の実施の形態に係る汚泥乾燥方法によれば、従来の汚泥乾燥方法に比べて所望の含水率の乾燥汚泥を早期且つ簡易に効率良く得ることが可能となる。
【0048】
本発明の実施の形態に係る汚泥の含水率の測定方法は、含水率40重量%以下、粒径0.1μm~10mmの微粉末状又は粒状の乾燥助剤を、測定対象とする汚泥に混合する工程と、乾燥助剤を混合した後の汚泥を水分計で測定することを含む。
【0049】
汚泥の含水率の測定の際に用いられる乾燥助剤としては、上述の汚泥乾燥装置で用いられる乾燥助剤と同様の乾燥助剤を用いることができる。水分計としては、試料を乾燥させ、乾燥前後の重量変化に基づき含水率を測定可能な測定器であれば制限されない。例えば、加熱乾燥式水分計の他に、土壌水分計、電気容量式水分計、電気抵抗式水分計、マイクロ波水分計や近赤外線水分計等を用いることができる。測定前に、所定量の乾燥助剤を測定対象とする汚泥に混合させ、乾燥助剤を混合させた汚泥を例えば加熱乾燥式水分計が備える試験皿へ入れて加熱乾燥させ、その水分量の変化を測定することで、乾燥助剤を混合しない場合に比べて含水率の測定結果を得るまでの時間を短縮化することができる。
【0050】
このように、本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【実施例0051】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0052】
(実施例1)
含水率81.0~85.1重量%の脱水消化汚泥に表1の混合率で粉末活性炭を混合し、乾燥機で脱水汚泥を200℃に加熱し、乾燥重量1~2gの乾燥汚泥を得る際の乾燥時間を評価した。粉末活性炭の粒径は約1μmであった。結果を表1及び
図3に示す。
【0053】
【0054】
含水率が81.0~85.1重量%の脱水消化汚泥を200℃で乾燥して乾燥重量1~2gの乾燥汚泥を得る場合、約9~12分の乾燥時間を要した。乾燥重量を1gから2gにすることで、乾燥時間が9.8分から11.7分と約2分長くなり、乾燥に必要なエネルギーが約20%増加することが分かった。活性炭を1重量%添加することで、乾燥時間が12.1分となり、乾燥時間への良好な影響はみられなかったが、活性炭の添加率を2重量%と3重量%に上げることによって、乾燥時間が10.9分、9.2分と短時間化した。つまり、活性炭をわずか3重量%添加することによって、乾燥重量1gの乾燥汚泥を得る場合と同等又はそれ以下の乾燥時間とすることができ、乾燥機の省エネ化や省スペース化が実現できることが分かる。
【0055】
(実施例2)
含水率82~84重量%の脱水消化汚泥の湿重量に対して粒径約1μmの活性炭を10重量%添加した場合と活性炭を添加しない場合とにおいて、200℃で乾燥重量1gの乾燥汚泥を得る際の乾燥時間を測定した。結果を
図4に示す。脱水消化汚泥に活性炭を10重量%添加することによって、活性炭を添加しない場合に比べて乾燥時間を半減させることができた。このように、活性炭の添加は汚泥の乾燥に大きな影響を与えることが分かる。
【0056】
(実施例3)
乾燥温度を165℃にした以外は、実施例1と同様に、脱水消化汚泥の乾燥処理を行った。結果を
図5及び表2に示す。表2に示すように、実施例1よりも低温で乾燥させた場合、活性炭の混合率を高くするほど乾燥時間が短縮化できることが分かる。
【0057】
【0058】
(実施例4)
含水率82.6~85.3重量%の脱水消化汚泥に粒径約1μmの酸化鉄又は酸化銅を表3に示す混合率で添加し、2gの乾燥汚泥を得る際の乾燥時間を求めた。乾燥時間は各汚泥に対して4~5回乾燥処理を行った場合の平均値とした。結果を表3に示す。
【0059】
【0060】
200℃で含水率82.6~83.7重量%の脱水消化汚泥を乾燥して2gの乾燥汚泥を得る場合、約11~13分の乾燥時間がかかることがわかる。酸化鉄の混合率を10重量%、20重量%と添加することで、乾燥時間が12.4分から11.0分へ短縮できることが分かる。酸化銅の混合率も10重量%、20重量%と添加することによって、乾燥時間が10.9分と9.7分と短縮される。よって酸化鉄と酸化銅の添加は脱水汚泥の乾燥時間に良好な影響を及ぼすことが確認できた。