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特開2024-43058風向風速センサの設置場所を選定する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043058
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】風向風速センサの設置場所を選定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20240322BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G01W1/10 D
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148041
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(71)【出願人】
【識別番号】523286071
【氏名又は名称】株式会社NTTデータ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(72)【発明者】
【氏名】紙本 斉士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮平
(72)【発明者】
【氏名】黛 知也
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 進
(72)【発明者】
【氏名】秋本 了
(72)【発明者】
【氏名】大園 智章
(72)【発明者】
【氏名】篠原 良介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 明彦
(72)【発明者】
【氏名】須田 康介
(72)【発明者】
【氏名】大石 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 睦実
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲央
(57)【要約】
【課題】鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法および装置を提案する。
【解決手段】ドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定し、ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから閾値風速を決定し、所定の鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、閾値風速をドローンの飛行高度での閾値風速に換算し、飛行制限風速および換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算し、所定の鉄塔についての増速率と閾値増速率とを比較し、増速率が閾値増速率以上の場合、所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法であって、
ドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定し、
ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから閾値風速を決定し、
所定の鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、前記閾値風速をドローンの飛行高度での閾値風速に換算し、
前記飛行制限風速および換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算し、
所定の鉄塔についての増速率と前記閾値増速率とを比較し、
前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する、
方法。
【請求項2】
前記増速率は、全風向の増速率のうち最大の増速率である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全風向のうち半分以上の風向で前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値増速率に基づいて、第2の閾値増速率を計算し、
全風向のうち1つ以上の風向で前記増速率が前記第2の閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選定された前記所定の鉄塔が、所定の領域内に複数存在する場合、または、選定された前記所定の鉄塔間の距離が、所定の距離未満の場合、全風向における増速率の最大値または平均値に基づき、選定された前記所定の鉄塔を1つの鉄塔に絞り込む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値増速率は、前記飛行制限風速を換算した閾値風速で除算した値である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する装置であって、
ドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定する飛行制限風速決定部と、
ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから閾値風速を決定する閾値風速決定部と、
所定の鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、前記閾値風速をドローンの飛行高度での閾値風速に換算する閾値風速換算部と、
前記飛行制限風速および換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算する閾値増速率計算部と、
所定の鉄塔についての増速率と前記閾値増速率とを比較する閾値増速率比較部と、
前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する鉄塔選定部と、
を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローン等の無人航空機(以下、ドローンという)を飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンは、宅配サービス、農薬や肥料の散布、災害調査、報道等さまざまな分野に応用されている。
ドローンを飛行させるためにはドローンの飛行ルートにおける風向および風速を測定または予測する必要がある。例えば特許文献1には、小型かつ軽量の計測用ドローンを所定の飛行ルートに沿って飛行させることにより飛行ルートにおける風向および風速の情報を取得し、この情報を参考にして、遭難救助のための大型ドローンの飛行ルートを選定するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-153792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、大型ドローンの飛行に先立ち、計測用ドローンを飛行させることにより、飛行ルートにおける風向および風速を把握するため、強風等により大型ドローンが墜落する危険性は低下するものの、計測用ドローンが墜落する危険性は依然として存在する。
それゆえ、飛行ルートに沿って予めおよび/またはリアルタイムに風向および風速を把握することが望まれる。このためには、風向風速センサによりリアルタイムに風向および風速を測定することが最も有用であるが、ドローンの全飛行ルートに風向風速センサを設置することは現実的ではない。
【0005】
そこで、本発明では、鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法および装置を提案することを目的とする。
【0006】
本発明は、鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法であって、
ドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定し、
ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから閾値風速を決定し、
所定の鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、前記閾値風速をドローンの飛行高度での閾値風速に換算し、
前記飛行制限風速および換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算し、
所定の鉄塔についての増速率と前記閾値増速率とを比較し、
前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【0007】
前記増速率は、全風向の増速率のうち最大の増速率であることが好ましい。
【0008】
全風向のうち半分以上の風向で前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定することが好ましい。
【0009】
前記閾値増速率に基づいて、第2の閾値増速率を計算し、
全風向のうち1つ以上の風向で前記増速率が前記第2の閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定することが好ましい。
【0010】
選定された前記所定の鉄塔が、所定の領域内に複数存在する場合、または、選定された前記所定の鉄塔間の距離が、所定の距離未満の場合、全風向における増速率の最大値または平均値に基づき、選定された前記所定の鉄塔を1つの鉄塔に絞り込むことが好ましい。
【0011】
前記閾値増速率は、前記飛行制限風速を換算した閾値風速で除算した値であることが好ましい。
【0012】
本発明は、鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する装置であって、
ドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定する飛行制限風速決定部と、
ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから閾値風速を決定する閾値風速決定部と、
所定の鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、前記閾値風速をドローンの飛行高度での閾値風速に換算する閾値風速換算部と、
前記飛行制限風速および換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算する閾値増速率計算部と、
所定の鉄塔についての増速率と前記閾値増速率とを比較する閾値増速率比較部と、
前記増速率が前記閾値増速率以上の場合、前記所定の鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する鉄塔選定部と、
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、鉄塔を結ぶ送電線に沿ってドローンを飛行させるために、風向風速センサを設置する場所を選定する方法および装置を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の装置の構成を示すブロック図である。
図2】所定の鉄塔Aについての増速率を説明するための図である。
図3】所定の鉄塔Aの地上80mにおける増速率を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図6】風向風速センサを設置する場所の候補として選定した鉄塔を示す。
図7】候補の鉄塔を絞り込む方法のフローチャートである。
図8】風向風速センサを設置する場所の候補として選定した鉄塔を示す。
図9】候補の鉄塔を絞り込む方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形が可能である。
【0016】
図1は、本発明の装置の構成を示すブロック図である。
装置10は、記憶部1と、飛行制限風速決定部2と、閾値風速決定部3と、閾値風速換算部4と、閾値増速率計算部5と、閾値増速率比較部6と、鉄塔選定部7と、を有する。
装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、タブレット端末およびスマートフォン等の情報処理装置によって実現することができる。装置10は、ハードウェア資源として、CPU、メモリ、入出力装置および通信インタフェース等を有し、ソフトウェアと協働して動作する。すなわち、上述した、記憶部1、飛行制限風速決定部2、閾値風速決定部3、閾値風速換算部4、閾値増速率計算部5、閾値増速率比較部6、および鉄塔選定部7は、装置10を構成するハードウェア資源とソフトウェアとが協働することによって実現される。
【0017】
電力会社である出願人は、自身の所有物である鉄塔および送電線等に関する電力設備情報を保有している。この電力設備情報は、記憶部1に保存されている。
電力設備情報は、送電線名称、線路電圧、設備所管箇所組織、支持物名称、集合設備分類(単、併架)、鉄塔の緯度および経度、鉄塔高、鉄塔の海抜高、鉄塔の腕下高、鉄塔の水平角度、鉄塔繋がり先送電線名称、鉄塔繋がり先送電線支持物番号等を含む。また、電力設備情報は、この他、任意の情報を含むことができる。
【0018】
一般的に、風向および風速の予測には、日本列島全体を対象とするような大域の気象解析が用いられており、本発明においても、気象解析データは、リアルタイムに取得されて、記憶部1に保存される。
本発明では、気象解析データとして電力中央研究所の気象予測システム(解析プログラム:NuWFAS)を利用する。この気象予測システムでは、計算メッシュが約4km四方に設定されている。しかしながら、ドローンの飛行ルートとして検討している山間部では、地形の変化に応じて風向および風速も変化するため、この気象予測システムでは、精度が不十分である。
また、この気象予測システムでは、地上約10mの高さで風向および風速を予測している。しかしながら、本発明では、山間部の送電用の鉄塔(例えば高さ60m)の頂部の5m上方から20m上方までの空間をドローンが飛行することを想定しており、当該空間の風向および風速を測定または予測する必要がある。
【0019】
そこで、本発明では、従来は鉄塔設計の際に用いられている合理的な風況予測手法を利用する。これは、気象解析による風速に簡易増速率(k1-adviser、以下、増速率という)を乗算することにより現地風速を求める手法であり、JEC-TR-00007-2015において提案されている。増速率は、地形による風の増速を単純地形に置き換えたものであり、各鉄塔の高さ別かつ風向別にデータが存在し、記憶部1に保存されている。増速率を用いることにより、気象解析による風速をドローンが飛行する高度の風速に換算し、かつ、精度の問題を解決することができる。
なお、電力中央研究所の気象予測システムの代わりに、任意の気象解析データを利用することができる。
【0020】
図2は、所定の鉄塔Aについての増速率を説明するための図である。
上述したように、気象解析による風速は、地上10mでのデータであるため、鉄塔Aの地点における気象解析による風速に、鉄塔Aについての高さ別かつ風向別の増速率を乗算することにより、所定の高さの風速を求めることができる。
例えば、気象解析による風速が10m/sである場合、地上80mでは、増速率1.2を乗算することにより、風速が12m/sであると求めることができる。
このように、増速率は、地表面からの高さによって異なり、地表付近で大きい傾向がある。
図2は、一方向(風向)における増速率を示しているが、以下、全方向の増速率について説明する。
【0021】
図3は、所定の鉄塔Aの地上80mにおける増速率を示す。
例えば、増速率は、全方位(360度)を5度刻みで計算されるため、全部で72個のデータが存在する。
図3より、鉄塔Aの地上80mでは、120度~140度の5風向の増速率が後述する閾値増速率(1.2)以上であり、その他の67風向の増速率は閾値増速率未満であることが分かる。
このように、1つの鉄塔につき、72風向(5度刻み)の増速率が存在し、さらに、1つの鉄塔につき、高さが15m、60m、70mおよび80mの4パターンにおける増速率が存在するため、1つの鉄塔につき、合計4×72=288個の増速率が記憶部1に保存されている。
なお、72風向(5度刻み)および4パターンの高さという数値は、単なる一例であり、任意の風向数および高さのパターンでの増速率を記憶部1に保存することができる。
また、記憶部1には、ドローンごとの耐風性能および最大飛行速度も保存されている。
【0022】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る方法のフローチャートである。
ドローンの飛行ルートにおける全鉄塔に関して、このフローチャートによる処理を行う。
【0023】
ステップS1において、飛行制限風速決定部2は、記憶部1からドローンの機体に依存する耐風性能および最大飛行速度を読み出し、耐風性能および最大飛行速度に基づいて、飛行制限風速を決定する。
本実施形態では、例えば、ドローンの機体の耐風性能が15m/sであり、最大飛行速度が8m/sであるので、飛行制限風速を7m/sと決定する。
【0024】
ステップS2において、閾値風速決定部3は、ドローンの飛行ルートにおける取得可能な気象データから地上10mでの閾値風速を決定する。
本実施形態では、利用する電力中央研究所の気象予測システムの風速コンタの最小値が5m/sである(風速0m/s~5m/sが5m/sと表現される)ことから、地上10mでの閾値風速を5m/sと決定する。
なお、利用する気象予測システムの風速の最小コンタによって閾値風速は変化するため、5m/sという数値は単なる一例である。
【0025】
ステップS3において、閾値風速換算部4は、鉄塔が立地する地表面粗度を考慮して、地上10mでの閾値風速をドローンの飛行高度(地上80m)での閾値風速に換算する。
表1に示すように、鉄塔設計において地表面粗度は、地表の状況に応じて5区分に分類される。粗度区分に応じて変化する上空高さ(Z)およびべき指数(α)ならびに基準高さ(Z)を用いて、風速の鉛直分布係数Eは、式(1)で表される。
E=1.7×(Z/Zα 式(1)
:基準高さ(m)
:上空風高さ(m)
α:平均風速の鉛直分布を表すべき指数
【0026】
【表1】
【0027】
本実施形態では、ドローンの飛行ルートにおける鉄塔が立地する山間部の地表面粗度はIII(山岳地等)であるので、式(1)から風速の鉛直分布係数Eは、
E=1.7×(80/450)0.2=1.203…≒1.2
と計算することができる。
ここで、地上10mでの閾値風速5m/sにE=1.2を乗算することにより、地上10mでの閾値風速をドローンの飛行高度(地上80m)での閾値風速に換算する。
5m/s(@10m)×1.2=6m/s(@80m)
【0028】
ステップS4において、閾値増速率計算部5は、ステップS2において決定した飛行制限風速およびステップS3において換算した閾値風速に基づいて、閾値増速率を計算する。具体的には、閾値増速率は、飛行制限風速をドローンの飛行高度(地上80m)での閾値風速で除算した値である。
本実施形態では、以下の計算により、閾値増速率は1.2と計算される。
閾値増速率=飛行制限風速(7m/s)÷地上80mでの閾値風速(6m/s)
≒1.2
【0029】
ステップS5において、閾値増速率比較部6は、記憶部1から各鉄塔の増速率を読み出す。
本実施形態では、閾値増速率比較部6は、各鉄塔につき、ドローンの飛行高度(地上80m)の増速率(以下、「増速率@80m」ともいう)のデータを72風向分読み出す。
【0030】
ステップS6において、閾値増速率比較部6は、72風向の増速率@80mのうち最大の増速率@80mと閾値増速率とを比較する。増速率@80mが閾値増速率以上の場合(ステップS6においてYES)、ステップS7において、鉄塔選定部7は、当該鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【0031】
増速率@80mが閾値増速率未満の場合(ステップS6においてNO)、処理を終了し、ドローンの飛行ルートにおける全鉄塔に関して、このフローチャートによる処理を繰り返す。
なお、ステップS6において、72風向における増速率@80mのうちの最大値を用いる代わりに、所定の方向の増速率を用いることもできる。
【0032】
表2は、東京電力管内の鉄塔(43,499基)について、増速率@80mが所定の範囲となる鉄塔の数を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に太枠で示すように、増速率@80mが1.2以上となる鉄塔は、合計6,035基である。本発明により、43,499基の鉄塔のうち6,035基の鉄塔に風向風速センサを設置すればよいことが分かり、風向風速センサの設置コストを大幅に削減することができる。
このように、本発明では、鉄塔を結ぶ送電線に沿ったドローンの全飛行ルートに風向風速センサを設置する代わりに、ドローンの飛行に影響を与える可能性の高い風向および風速に基づいて、風向風速センサを設置する場所を選定することができる。
なお、本実施形態では、地上80mにおける増速率について検討したが、任意の高さにおける増速率についても同様である。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る方法のフローチャートである。
ステップS11からS13は、上述した第1の実施形態のステップS1からS3と同一であるため説明を省略する。
【0036】
ステップS14において、閾値増速率計算部5は、第1の実施形態と同様に閾値増速率を計算し、さらに、閾値増速率に基づいて、第2の閾値増速率を計算する。
本実施形態では、以下の計算により、第2の閾値増速率を1.8と計算する。
第2の閾値増速率=閾値増速率(1.2)×1.5=1.8
なお、第2の閾値増速率は、閾値増速率より大きい任意の数値とすることができ、任意の計算により設定することができる。
【0037】
ステップS15において、閾値増速率比較部6は、第1の実施形態と同様に記憶部1から各鉄塔の増速率を読み出す。
【0038】
ステップS16において、閾値増速率比較部6は、72風向分の増速率@80mと閾値増速率とを比較する。72風向のうち半分(36風向)以上の風向で増速率@80mが閾値増速率以上の場合(ステップS16においてYES)、ステップS18において、鉄塔選定部7は、当該鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【0039】
ステップS16においてNOの場合、ステップS17において、閾値増速率比較部6は、72風向分の増速率@80mと第2の閾値増速率とを比較する。1つ以上の風向で増速率@80mが第2の閾値増速率以上の場合(ステップS17においてYES)、ステップS18において、鉄塔選定部7は、当該鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【0040】
増速率@80mが第2の閾値増速率未満の場合(ステップS17においてNO)、処理を終了し、ドローンの飛行ルートにおける全鉄塔に関して、このフローチャートによる処理を繰り返す。
【0041】
表3は、所定数の鉄塔について、9、18、36風向以上において増速率が所定の範囲となる鉄塔の数を示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に太枠で示すように、36風向以上で増速率が1.2以上となる鉄塔は、149基である。さらに、9風向以上で増速率が1.8以上となる鉄塔は、11基である。それゆえ、本発明により、風向および風速の両方を考慮すると、156基(149+11-4)の鉄塔に風向風速センサを設置すればよいことが分かる。
なお、風向の数(1、9、18、36)は単なる一例であり、任意の風向数を用いることができる。
【0044】
以下、風向風速センサを設置する場所(鉄塔)をさらに絞り込む方法を説明する。
図6は、風向風速センサを設置する場所の候補として選定した鉄塔を示し、図7は、候補の鉄塔を絞り込む方法のフローチャートである。
上述した第1または第2の実施形態に係る方法により、鉄塔a~lのうち、4つの鉄塔a、b、f、jが風向風速センサを設置する場所の候補として選定されたものとする。
【0045】
ステップS21において、鉄塔選定部7は、記憶部1から4つの候補の鉄塔a、b、f、jの位置情報(緯度および経度)を読み出す。
ステップS22において、鉄塔選定部7は、所定の領域内に複数の候補の鉄塔が存在するかを確認する。図示例では、領域R1に候補の鉄塔a、bが存在し、領域R3に候補の鉄塔fが存在し、領域R4に候補の鉄塔jが存在する。
所定の領域内に複数の候補の鉄塔が存在する場合(ステップS22においてYES)、ステップS23において、鉄塔選定部7は、複数の候補の鉄塔の増速率を比較し、ステップS24において、鉄塔選定部7は、増速率に基づいて1つの鉄塔を選定する(複数の候補の鉄塔を1つの鉄塔に絞り込む)。
例えば、領域R1について、鉄塔a、bの72風向における増速率の最大値を比較し、最大値が大きい方の鉄塔を選定してもよいし、または、鉄塔a、bの72風向における増速率の平均値を比較し、平均値が大きい方の鉄塔を選定してもよい。
所定の領域内に複数の候補の鉄塔が存在しない場合(ステップS22においてNO)、例えば、領域R3、R4にはそれぞれ1つの候補の鉄塔f、jしか存在しないため、ステップS24において、鉄塔選定部7は、これらの鉄塔を選定する。
【0046】
ステップS22において、所定の領域内に複数の候補の鉄塔が存在するかを確認する代わりに、図8および図9に示すように、隣接する鉄塔間の距離に基づいて、鉄塔を絞り込むこともできる。
【0047】
図8は、風向風速センサを設置する場所の候補として選定した鉄塔を示し、図9は、候補の鉄塔を絞り込む方法のフローチャートである。
ステップS31において、上述した例と同様に鉄塔選定部7は、記憶部1から4つの候補の鉄塔a、b、f、jの位置情報(緯度および経度)を読み出す。
ステップS32において、鉄塔選定部7は、隣接する鉄塔間の距離を計算する。具体的には、鉄塔選定部7は、鉄塔a、b間の距離Labと、鉄塔b、f間の距離Lbfと、鉄塔f、j間の距離Lfjと、を計算する。
ステップS33において、鉄塔選定部7は、距離Lab、Lbf、Lfjをそれぞれ閾値距離(例えば4km)と比較する。
距離が閾値距離未満の場合(ステップS33においてYES)、ステップS34において、鉄塔選定部7は、両鉄塔の増速率を比較し、ステップS35において、鉄塔選定部7は、上述した例と同様に増速率に基づいて1つの鉄塔を選定する。
距離が閾値距離以上の場合(ステップS33においてNO)、ステップS35において、鉄塔選定部7は、両鉄塔を、風向風速センサを設置する場所として選定する。
【0048】
図6図9において説明したように、所定の領域内に複数の候補の鉄塔が存在する場合、または、隣接する鉄塔間の距離が所定の距離未満の場合、これらの鉄塔における風向および風速は類似していると考えられる。それゆえ、これらの鉄塔をすべて選定するのではなく、いずれか1つを選定することにより、風向風速センサの設置コストをさらに削減することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…記憶部、2…飛行制限風速決定部、3…閾値風速決定部、4…閾値風速換算部、5…閾値増速率計算部、6…閾値増速率比較部、7…鉄塔選定部、10…装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9