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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043062
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】吸着ノズルおよび部品装着機
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240322BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B25J15/06 M
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148045
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 仁哉
【テーマコード(参考)】
3C707
5E353
【Fターム(参考)】
3C707AS08
3C707BS02
3C707CT03
3C707CY18
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT06
3C707FT11
3C707FU02
3C707HS27
3C707KS03
3C707KT02
3C707KT05
3C707KT06
3C707NS12
5E353EE02
5E353GG01
5E353HH11
5E353HH51
5E353JJ25
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353QQ01
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】被吸着面に凹凸形状をもつ部品を確実に、かつ安定して吸着することができる吸着ノズルを提供する。
【解決手段】負圧エアを供給されて部品を吸着する吸着ノズルであって、筒状に形成された少なくとも1つのノズル先端部と、ノズル先端部の外周に着脱可能に設けられ、ノズル先端部の開口部よりもノズル先端部の延伸方向に延在し、その先端面が部品の被吸着面に押し当てられたときに被吸着面の凹凸形状に倣うように弾性変形する弾性筒部材と、被吸着面に先端面が押し当てられて弾性筒部材が弾性変形した際に被吸着面に当接する当接面を有し、当接面がノズル先端部の延伸方向における先端面と開口部との間または開口部と同じ位置に配置される少なくとも1つの当接部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧エアを供給されて部品を吸着する吸着ノズルであって、
筒状に形成された少なくとも1つのノズル先端部と、
前記ノズル先端部の外周に着脱可能に設けられ、前記ノズル先端部の前記開口部よりも前記ノズル先端部の延伸方向に延在し、その先端面が前記部品の被吸着面に押し当てられたときに前記被吸着面の凹凸形状に倣うように弾性変形する弾性筒部材と、
前記被吸着面に前記先端面が押し当てられて前記弾性筒部材が弾性変形した際に前記被吸着面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記ノズル先端部の延伸方向における前記先端面と前記開口部との間または前記開口部と同じ位置に配置される少なくとも1つの当接部材と、
を備える吸着ノズル。
【請求項2】
前記弾性筒部材は、前記ノズル先端部の外周に密着して設けられ、前記先端面が前記被吸着面の凹凸形状に倣うように弾性変形したときに内部を気密状態とする、請求項1に記載の吸着ノズル。
【請求項3】
前記ノズル先端部の延伸方向に直交する平面内において、1つのみ備えられた前記ノズル先端部の前記開口部の内部、もしくは複数備えられたすべての前記ノズル先端部の前記開口部を内包して形成される周囲長最小の領域の内部に、吸着対象となる前記部品の重心が位置する、請求項1に記載の吸着ノズル。
【請求項4】
前記ノズル先端部の延伸方向に直交する平面内において、1つのみ備えられた前記ノズル先端部の前記開口部もしくは複数備えられたすべての前記ノズル先端部の前記開口部を内包して形成される周囲長最小の領域の重心位置が、1つのみ備えられた前記当接面の内部もしくは複数備えられたすべての前記当接面を内包して形成される周囲長最小の領域の内部に含まれる、請求項1に記載の吸着ノズル。
【請求項5】
前記ノズル先端部および前記当接部材を一体的に下側に有し、部品装着機に昇降可能に設けられたノズル保持部に取り付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル。
【請求項6】
前記ノズル先端部の延伸方向における前記当接面と、前記先端面との距離を表す第一寸法は、前記先端面が前記凹凸形状に倣うように弾性変形することができ、かつ前記弾性筒部材が弾性変形する際に過大な反力を発生しない範囲内に設定される、請求項1~4のいずれか一項に記載された吸着ノズル。
【請求項7】
前記ノズル先端部の延伸方向における前記先端面と、前記開口部との距離を表す第二寸法は、前記先端面が前記凹凸形状に倣うように弾性変形することができ、かつ前記弾性筒部材に座屈現象が発生しない範囲内に設定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル。
【請求項8】
前記ノズル先端部と前記当接部材が別体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル。
【請求項9】
前記ノズル先端部が前記当接部材を兼ねる、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載された吸着ノズルと、
前記部品を供給する部品供給装置と、
を具備する部品装着機。
【請求項11】
前記ノズル先端部の延伸方向が下向きとなる姿勢で前記吸着ノズルを下方に保持するノズル保持部と、
前記ノズル保持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記吸着ノズルまたは前記ノズル保持部に設けられ、上下方向に伸縮する寸法に応じて前記ノズル保持部に対する前記吸着ノズルの相対高さを変更可能であり、前記昇降駆動部に下降駆動されて前記ノズル保持部が下降を開始する時点で所定の伸長寸法となり、前記当接面が前記被吸着面に当接する時点で所定の短縮寸法と前記伸長寸法との間の途中寸法となる弾性体と、
を具備する、請求項10に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板に装着する部品の吸着処理および装着処理を行う吸着ノズル、およびこの吸着ノズルを含んで構成される部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、負圧エアの供給により部品の吸着処理および装着処理を行う吸着ノズル、および吸着ノズルを保持して水平二方向に移動する装着ヘッドを備える。ここで、吸着対象となる様々な部品には、被吸着面に凹凸形状をもつ部品が含まれる。
【0003】
例えば、スマートフォンなどに用いられる基板製品では、表面および裏面に多数の半球形状のバンプ(凸形状)を有するインターポーザ部品(インターポーザ基板と呼ばれることもある)が多用される。先端面が平坦な普通の吸着ノズルを用いてインターポーザ部品の吸着処理を行うと、バンプの間(凹形状)から負圧エアのリークが発生して吸着状態が不安定化する。このため、負圧が低下しにくい特殊な装着ヘッドが用いられるが、特殊な装着ヘッドは高価である。この種の吸着ノズルに関連する技術例が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1には、下端部の吸着パッドの開口部外周縁を部品に密着させつつ供給される負圧エアにより部品を吸着するパッド付吸着ノズルと、吸着パッドよりも下向きに突出して部品に当接することにより部品を一定の吸着姿勢に保持する突出部を含んでなる吸着ガイドと、を備える部品装着機が開示されている。これによれば、上面(被吸着面)に微細な起伏を有する部品を確実、かつ安定して吸着することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-178287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の構成では、吸着パッドの吸盤状の開口部の外周縁が撓んで部品に密着するので、部品の被吸着面が粗くて微細な起伏を有していても確実な吸着処理が可能となる。しかしながら、吸着パッドは、開口部の外周縁が部品に線接触するものであるので、微細な起伏に密着することができても、インターポーザ部品のバンプに代表される微細でない凹凸形状に密着することができない。仮に、特許文献1の構成を用いてインターポーザ部品の吸着処理を試行すると、負圧エアのリークが顕著となるため、インターポーザ部品を吸着することが難しく、または吸着できても吸着状態が不安定化する。
【0007】
それゆえ、本明細書では、被吸着面に凹凸形状をもつ部品を確実に、かつ安定して吸着することができる吸着ノズルを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、負圧を供給されて部品を吸着する吸着ノズルであって、筒状に形成された少なくとも1つのノズル先端部と、前記ノズル先端部の外周に着脱可能に設けられ、前記ノズル先端部の開口部よりも前記ノズル先端部の延伸方向に延在し、その先端面が前記部品の被吸着面に押し当てられたときに前記被吸着面の凹凸形状に倣うように弾性変形する弾性筒部材と、前記被吸着面に前記先端面が押し当てられて前記弾性筒部材が弾性変形した際に前記被吸着面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記ノズル先端部の延伸方向における前記先端面と前記開口部との間または前記開口部と同じ位置に配置される少なくとも1つの当接部材と、を備える吸着ノズルを開示する。
【0009】
また、本明細書は、前記した吸着ノズルと、前記部品を供給する部品供給装置と、を具備する部品装着機を開示する。
【0010】
なお、本明細書では、出願当初の請求項3において「請求項1に記載の吸着ノズル」を「請求項1または2に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想、出願当初の請求項4において「請求項1に記載の吸着ノズル」を「請求項1~3のいずれか一項に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想、出願当初の請求項6において「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル」を「請求項1~5のいずれか一項に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想、出願当初の請求項7において「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル」を「請求項1~6のいずれか一項に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想、出願当初の請求項8において「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル」を「請求項1~7のいずれか一項に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想、および出願当初の請求項9において「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸着ノズル」を「請求項1~7のいずれか一項に記載の吸着ノズル」に変更した技術的思想を開示している。
【0011】
さらに、本明細書では、出願当初の請求項10において「請求項1~4のいずれか一項に記載された吸着ノズル」を「請求項1~9のいずれか一項に記載された吸着ノズル」に変更した部品装着機の技術的思想を開示している。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する吸着ノズルおよび部品装着機において、ノズル先端部の外周に設けられた弾性筒部材は、その先端面が部品の被吸着面に押し当てられたときに被吸着面の凹凸形状に倣うように弾性変形して密着し、負圧エアのリークを抑制する。これにより、吸着ノズルは、被吸着面に凹凸形状をもつ部品を確実に、かつ安定して吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の吸着ノズルを含んで構成される部品装着機の全体構成を示す平面図である。
図2】被吸着面に凹凸形状をもつ部品の一例であるインターポーザ部品の正面図である。
図3】吸着ノズルを斜め下方から見た斜視図である。
図4】吸着ノズルの一部を拡大した正面部分断面図である。
図5】ノズル先端部を実線で示し弾性筒部材を破線で示した斜視透視図である。
図6】吸着処理時における吸着ノズルとインターポーザ部品との位置関係を示す平面図である。
図7】吸着ノズルが装着ヘッドの下側のノズル保持部に保持された状態を示す正面部分断面図である。
図8】吸着ノズルがインターポーザ部品を吸着した状態を示す正面部分断面図である。
図9図8の部分拡大図である。
図10】第1実施形態の第1応用例において、1組のノズル先端部および弾性筒部材ならびに1つの当接面を備える吸着ノズルと、異形部品との吸着処理時の位置関係を模式的に示す平面図である。
図11】第1実施形態の第2応用例において、2組のノズル先端部および弾性筒部材ならびに2つの当接面を備える吸着ノズルと、異形部品との吸着処理時の位置関係を模式的に示す平面図である。
図12】第2実施形態の吸着ノズルを斜め下方から見た斜視図である。
図13】第2実施形態の吸着ノズルがインターポーザ部品を吸着した状態を示す正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.部品装着機1の全体構成
まず、第1実施形態の吸着ノズル5を含んで構成される部品装着機1の全体構成について、図1を参考にして説明する。部品装着機1は、基板Kに部品を装着する装着作業を実施する。図1の紙面左側から右側に向かう水平方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう水平方向がY軸方向、鉛直方向がZ軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、基台10、および図略の制御装置などを具備する。
【0015】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、図略の一対の搬送ベルト、およびクランプ機構22などで構成される。一対のガイドレール21は、基台10の上面のやや後方寄りを横断してX軸方向に延在し、互いに平行して基台10に組み付けられる。一対の搬送ベルトは、基板Kの平行する二辺が戴置された状態でガイドレール21に沿って輪転し、基板Kを基台10の中央付近の作業実施位置に搬入する。クランプ機構22は、搬入された基板Kを押し上げ、ガイドレール21との間にクランプして位置決めする。部品移載装置4による部品の装着作業が終了した後、クランプ機構22は基板Kを解放し、搬送ベルトは基板Kを機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置3は、基板Kに装着される部品を供給する。部品供給装置3は、複数のテープフィーダ31およびトレイ式フィーダ35を有する。複数のテープフィーダ31の各々は、スロット32にセットされる。テープフィーダ31は、多数の小型部品が収納されたキャリアテープをピッチ送りして、小型部品を採取可能に供給する。トレイ式フィーダ35は、テープフィーダ31のX軸方向に並んで配置される。トレイ式フィーダ35は、大型部品が載置されたトレイ36を収納マガジン37からテーブル38上に引き出して、大型部品を採取可能に供給する。トレイ式フィーダ35は、大型部品の一例であるインターポーザ部品PIを供給する。
【0017】
部品移載装置4は、一対のガイドレール40、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド43、吸着ノズル5、基板認識用カメラ46、および部品認識用カメラ47などで構成される。一対のガイドレール40は、基台10の左縁および右縁に配置され、互いに離隔しつつ平行して、Y軸方向に延在する。Y軸移動体41は、X軸方向に長い部材で形成され、一対のガイドレール40に装架される。Y軸移動体41は、図略のY方向駆動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、図略のX方向駆動機構に駆動されてX軸方向に移動する。
【0018】
装着ヘッド43は、X軸移動体42の前面に設けられ、基板搬送装置2および部品供給装置3よりも上方に配置される。装着ヘッド43は、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。装着ヘッド43の下側に、吸着ノズル5が交換可能に設けられる。吸着ノズル5は、トレイ式フィーダ35からインターポーザ部品PIを吸着する吸着処理、およびインターポーザ部品PIを搬送して基板Kの所定の装着位置に装着する装着処理を行う。基板Kの種類が変更されてインターポーザ部品PIの吸着処理および装着処理が不要になると、吸着ノズル5は、図略のノズルツールに交換される。ノズルツールは、複数の小型吸着ノズルを有して、テープフィーダ31から供給される小型部品の吸着処理および装着処理を行う。
【0019】
基板認識用カメラ46は、装着ヘッド43と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ46は、光軸が下向きとなるように配設され、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの作業実施位置が正確に求められる。さらに、インターポーザ部品PIを装着する基板K上の装着位置が較正される。基板認識用カメラ46として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0020】
部品認識用カメラ47は、基板搬送装置2と部品供給装置3の間の基台10上に設けられる。部品認識用カメラ47は、光軸が上向きとなるように配置される。部品認識用カメラ47は、装着ヘッド43が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル5に保持されたインターポーザ部品PIや複数の小型吸着ノズルに保持された小型部品を下方から撮像して認識する。これにより、インターポーザ部品PIおよび小型部品の種類の正誤が判定されるとともに、部品の吸着姿勢が検出されて装着処理に反映される。部品認識用カメラ47として、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0021】
図略の制御装置は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置は、基板Kの種類ごとに作成された装着作業データに基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、および部品移載装置4を制御し、各種部品の吸着処理および装着処理を進める。装着作業データは、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。
【0022】
2.第1実施形態の吸着ノズル5の構成
次に、第1実施形態の吸着ノズル5の構成について、図2図7を参考にして説明する。吸着ノズル5は、被吸着面に凹凸形状をもつ部品を吸着対象とする。図2に示されるインターポーザ部品PIは、被吸着面に凹凸形状をもつ部品の一例であり、以下に説明する。スマートフォンなどの携帯電話や類似の携帯情報機器に用いられる基板製品では、平行して接近配置された2枚の基板Kの間をインターポーザ部品PI(インターポーザ基板と呼ばれることもある)で接続する構造が多用される。インターポーザ部品PIは、小さな基板に相当する長方形の薄板形状を有して、一般的な角型電子部品よりも大型である。かつ、インターポーザ部品PIは、表裏を貫く多数の導体をもつ。導体の各々の端部には、半球形状のバンプBPが形成される。バンプBPは、被吸着面SPの凸形状に相当し、隣り合うバンプBPの間の平面は、被吸着面SPの凹形状に相当する。バンプBPの最大高さHmは、被吸着面SPの凹凸形状の最大高さHmに相当する。
【0023】
図3に示されるように、吸着ノズル5は、ノズル本体部51、6組のノズル先端部6および弾性筒部材7、ならびに3つの当接部材(81、83、85)などで構成される。ノズル本体部51は、金属製であり、装着ヘッド43に保持された使用状態においてZ軸方向の上側から順番に取り付けフランジ部52、軸部53、および取り付け座部54が一体的に連なって形成される。取り付けフランジ部52は、水平方向に広がる円環形の板状に形成されており、装着ヘッド43に保持される部位である。軸部53は、取り付けフランジ部52よりも小径の円筒状に形成される。
【0024】
取り付け座部54は、平面視でX軸方向に長い概ね十字形状を有する。取り付け座部54は、その下面の中央から下向きに突出する比較的大きな円形の嵌合座55を有する。さらに、取り付け座部54は、その下面のX軸方向の一端付近から下向きに突出する比較的小さな円形の嵌合座56、およびX軸方向の他端付近から下向きに突出する比較的小さな円形の嵌合座57を有する。
【0025】
図7に示されるように、ノズル本体部51の内部に本体流路59が設けられる。本体流路59の上流端は、取り付けフランジ部52の中央で上方に向かって開口し、装着ヘッド43のノズル保持部48に設けられたエア流路4F(後述)に連通される。本体流路59の下流側は、取り付け座部54の内部で分岐されて6つのノズル先端部6に連通されている。本体流路59は、吸着処理時にエア流路4Fから供給される負圧エアを6つのノズル先端部6まで供給する。さらに、本体流路59は、装着処理時にエア流路4Fから供給される正圧エアを6つのノズル先端部6まで供給する。
【0026】
3つの当接部材(81、83、85)は、取り付け座部54の下側に配置される。第一の当接部材81は、平面視で概ね長方形状に形成され、長方形の4つの頂点位置にそれぞれ当接面89を有する。詳細には、当接部材81は、X軸方向およびY軸方向に広がりZ軸方向に薄い概ね直方体形状の外形を有する。当接部材81は、その中央に設けられた円形の嵌合穴82が嵌合座55に嵌合されて、取り付け座部54の下面の中央に固定される。当接部材81の四隅には、直方体形状の側面からY軸前方向またはY軸後方向に突出し、さらにZ軸方向下向きに突出する部位が一体的に設けられている。この部位の先端面(下端面)は、正方形または長方形であり、インターポーザ部品PIの被吸着面SP(バンプBP)に当接する当接面89となる。
【0027】
第二の当接部材83は、第一の当接部材81よりも小さな概ね直方体形状を有する。当接部材83は、その中央に設けられた円形の嵌合穴84が嵌合座56に嵌合されて、取り付け座部54の下面のX軸方向の一端付近に固定される。当接部材83のX軸方向の外側端には、Z軸方向下向きに突出する部位が一体的に設けられている。この部位の先端面は、長方形であり、被吸着面SPに当接する当接面89となる。つまり、当接部材83は、1つの当接面89を有する。
【0028】
第三の当接部材85は、第一の当接部材81よりも小さな概ね直方体形状を有する。当接部材85は、そのX軸方向の内側寄りに設けられた円形の嵌合穴86が嵌合座57に嵌合されて、取り付け座部54の下面のX軸方向の他端付近に固定される。当接部材85のX軸方向の外側端には、Z軸方向下向きに突出する部位が一体的に設けられている。この部位の先端面は、長方形であり、被吸着面SPに当接する当接面89となる。つまり、当接部材85は、1つの当接面89を有する。当接部材85は、ノズル先端部6および弾性筒部材7を配置するスペースとして、直方体形状の一部分に半円柱状の切り欠き部87を有する。なお、合計で6つある当接面89の各々の形状は、前記した正方形や長方形に限定されず、円形などの他形状でもよい。また、当接部材(81、83、85)もしくは当接面89の材質は、弾性筒部材7よりも大きな剛性を有することが好ましい。当接部材(81、83、85)もしくは当接面89の材質として、例えばウレタンゴムを使用することができ、インターポーザ部品PIに当接したときにバンプBPの損傷を防止することができる。
【0029】
6組のノズル先端部6および弾性筒部材7は、互いに同一形状であり、取り付け座部54の下側に配置される。4組のノズル先端部6および弾性筒部材7は、第一の当接部材81においてX軸方向に離隔して配置される2つの当接面89の間の2箇所の位置に、それぞれ2組ずつX軸方向に並んで配置される。5組目のノズル先端部6および弾性筒部材7は、第二の当接部材83の近傍に配置される。6組目のノズル先端部6および弾性筒部材7は、第三の当接部材85の切り欠き部87にその半分程度が入るように配置される。
【0030】
ノズル先端部6および弾性筒部材7は、それぞれ回転対称形状を有する。吸着ノズル5が装着ヘッド43に保持された使用状態において、ノズル先端部6の延伸方向は、Z軸方向(鉛直方向)下向きに一致する。ノズル先端部6は、セラミクス製または金属製である。図4および図5に示されるように、ノズル先端部6は、延伸方向の上側から順番に大径軸部61、フランジ部62、小径軸部63、および錘状部64が一体的に連なって形成される。
【0031】
大径軸部61は、円筒状の部位である。大径軸部61は、取り付け座部54に嵌め込まれて固定され、気密状態を確保する。フランジ部62は、大径軸部61よりも径方向外側に水平方向に拡がる円環形の板状の部位である。小径軸部63は、大径軸部61よりも小径の円筒状の部位である。錘状部64は、外周側が円錐面で、内周側が円筒面の部位である。錘状部64の上部は、その外径が小径軸部63よりも大きく、小径軸部63よりも径方向外側に突出している。錘状部64の下部は、その外径が小径軸部63よりも小さめである。
【0032】
大径軸部61、フランジ部62、小径軸部63、および錘状部64の中心を延伸方向に貫くように内部流路65が設けられる。内部流路65の上端は、取り付け座部54(ノズル本体部51)の本体流路59に連通されている。内部流路65の下端は、錘状部64の下端で開口する開口部66となっている。6つのノズル先端部6の各々の開口部66は、本体流路59から同時に負圧エアが供給される。
【0033】
弾性筒部材7は、弾性材料を用いて肉厚の円筒形状に形成されている。弾性材料として、クロロプレンゴムを始めとする合成ゴムを例示することができ、これに限定されない。弾性筒部材7の内径は、ノズル先端部6の小径軸部63の外径よりも小さめである。弾性筒部材7は、ノズル先端部6の錘状部64からフランジ部62に向かって挿入され、小径軸部63および錘状部64の外周に密着しつつ着脱可能に取り付けられる。このとき、弾性筒部材7は、小径軸部63によってわずかに押し拡げられ、錘状部64によって大きく押し拡げられるように弾性変形するので、延伸方向の移動が防止される。かつ、弾性筒部材7は、錘状部64に密着した箇所で気密性を確保する。弾性筒部材7は、ノズル先端部6の開口部66よりもノズル先端部6の延伸方向に延在する。つまり、弾性筒部材7の延伸方向の下側の先端面71は、開口部66よりも下方に位置する。
【0034】
弾性筒部材7は、延伸方向の長さに個体差をもつ。さらに、弾性筒部材7は、繰り返して弾性変形することにより疲労(へたり)が生じ、永久変形して延伸方向の長さが変化し得る。このため、弾性筒部材7の先端面71の位置を調整する位置調整部73が設けられる。図4に示されるように、位置調整部73は、弾性筒部材7の後端面72と、ノズル先端部6のフランジ部62との間に配置される。位置調整部73は、複数のシム材74およびOリング75で構成される。
【0035】
シム材74は、所定厚さ(例えば0.1mm)を有する円環形の薄板状の部材である。シム材74は、延伸方向に重ねて使用する使用枚数が調整されて、後端面72とフランジ部62との間に挿入される。具体的には、製造時の6つの弾性筒部材7の個体差に応じて、シム材74の使用枚数が調整される。さらに、吸着ノズル5の繰り返し使用による弾性筒部材7の永久変形に応じて、シム材74の使用枚数が調整される。Oリング75は、シム材74の内周と小径軸部63との間に配置され、シム材74の挿入状態を安定化する。位置調整部73は、上記の構成を備えることにより、開口部66に対する先端面71の延伸方向の相対位置を一定に調整することができる。
【0036】
図4に示されるように、当接部材(81、83、85)の当接面89は、弾性筒部材7の先端面71よりも高く配置される。さらに、ノズル先端部6の開口部66は、当接面89よりも高く配置される。先端面71と当接面89との距離を表す第一寸法をL1とし、先端面71と開口部66との距離を表す第二寸法をL2とする。吸着ノズル5がインターポーザ部品PIに向けて下降駆動されると、弾性筒部材7は、その先端面71がインターポーザ部品PIの被吸着面SPに押し当てられ、バンプBPの凸形状に倣うように弾性変形する。弾性筒部材7は、当接面89が被吸着面SPに当接するまで主に圧縮変形する。
【0037】
第一寸法L1は、先端面71がバンプBPの凸形状に倣うように弾性筒部材7が弾性変形することができ、かつ弾性筒部材7が弾性変形する際に過大な反力を発生しない範囲内に設定される。具体的には、第一寸法L1は、バンプBPの最大高さHm(凹凸形状の最大高さHm)の3~5倍程度に設定される。弾性筒部材7は、先端面71に近い表層部分だけが変形するのでなく、錘状部64によって押し拡げられた付近までの部分が変形に関与するので、被吸着面SPに対する密着性が高められる。仮に第一寸法L1が過小に設定されると、先端面71がバンプBPに密着するように変形できず、隙間が生じて負圧エアがリークしやすくなる。また、第一寸法L1が過大に設定されると、弾性筒部材7の圧縮変形量が過大になって上向きの過大な反力が発生するので、吸着ノズル5を下降駆動するために過大な駆動力が必要となる。
【0038】
また、第二寸法L2は、先端面71がバンプBPの凸形状に倣うように弾性変形することができ、かつ弾性筒部材7に座屈現象が発生しない範囲内に設定される。仮に第二寸法L2が過小に設定されると、第一寸法L1が過小に設定された場合と同様、負圧エアがリークしやすくなる。また、第二寸法L2が過大に設定されると、弾性筒部材7が延伸方向以外に大きく変形したり破損したりする座屈現象のおそれが生じる。
【0039】
吸着ノズル5がインターポーザ部品PIを吸着するとき、ノズル先端部6の延伸方向に直交する平面内において図6に示される位置関係となる。図6は、インターポーザ部品PIと、ノズル先端部6、弾性筒部材7、および当接面89との位置関係を平面視した図に相当する。図6において、6つのノズル先端部6の開口部66のすべてを内包して形成される周囲長最小の領域ANが破線で示されている。領域ANは、概ね六角形であり、厳密には開口部66の6つの円弧、および隣り合う開口部66の相互間を結ぶ6本の線分で区画される。この領域ANの内部に、吸着対象となるインターポーザ部品PIの重心G1が位置する。さらに、領域ANの重心位置G2は、6組のノズル先端部6および弾性筒部材7で発生する吸着力の総和が等価的に作用する吸着中心位置を表し、インターポーザ部品PIの重心G1に一致し、または至近に位置する。これによれば、重心G1を囲むように配置される6組のノズル先端部6および弾性筒部材7で発生する吸着力は、共同して効果的にインターポーザ部品PIの重心G1に作用する。
【0040】
また、6つの当接面89のすべてを内包して形成される周囲長最小の領域ATが一点鎖線で示されている。領域ATは、6つの当接面89の各々の辺、および隣り合う当接面89の相互間を結ぶ6本の線分で区画された多角形領域である。この領域ATの内部に、領域ANの重心位置G2が含まれる。さらに、領域ATの中央位置が、領域ANの重心位置G2に一致し、または至近に位置する。これによれば、重心位置G2を囲むように配置される6つの当接面89がインターポーザ部品PIに当接するので、インターポーザ部品PIが吸着されたときの高さ位置および水平姿勢が安定化される。
【0041】
吸着ノズル5は、図7に示されるように、装着ヘッド43の下側に取り付けられる。装着ヘッド43は、ノズル保持部48および昇降駆動部4Hを有する。ノズル保持部48は、保持筒49、保持フランジ4B、および弾性体4Gなどで構成される。保持筒49は、Z軸方向に延びる円筒状に形成されている。保持筒49は、装着ヘッド43に昇降可能に支持される。保持筒49のZ軸方向の途中位置に、径方向内向きに突出する規制ピン4Aが設けられる。
【0042】
保持フランジ4Bは、上側の円筒部4Cおよび下側のフランジ部4Dが一体的に連なって形成される。円筒部4Cは、Z軸方向に延びる円筒状に形成されている。円筒部4Cは、保持筒49の内周に嵌入しつつ、保持筒49との間の気密状態を確保する。保持筒49および保持フランジ4Bの中心をZ軸方向に貫くようにエア流路4Fが設けられる。円筒部4Cの周方向の一箇所に、Z軸方向に延びる長孔4Eが形成される。長孔4Eは、保持筒49の規制ピン4Aが係入している。長孔4Eは、図7に示されるストローク長Sの範囲内で規制ピン4Aに対して相対的に昇降可能となっている。
【0043】
フランジ部4Dは、吸着ノズル5の取り付けフランジ部52と同形同大の円環形状に形成される。フランジ部4Dおよび取り付けフランジ部52は、互いに重ね合わされて着脱可能に結合される。これにより、吸着ノズル5がノズル保持部48に保持される。このとき、エア流路4Fは、吸着ノズル5の本体流路59に連通される。
【0044】
弾性体4Gは、吸着ノズル5や他種の吸着ノズルが下降して部品に当接する際のショックや荷重値を軽減する緩衝機能を発揮して、部品の破損を抑制するための部材である。弾性体4Gとして、例えばコイルばねを圧縮した状態で用いることができる。弾性体4Gは、円筒部4Cの外周に配置され、保持筒49の下端面とフランジ部4Dとの間に挿入される。弾性体4Gは、保持筒49に対して保持フランジ4B(吸着ノズル5)を下方に付勢する。弾性体4Gは、上下方向に伸縮することにより保持筒49に対する吸着ノズル5の相対高さを変更することができる。
【0045】
図7において、規制ピン4Aが長孔4Eの上部に位置し、弾性体4Gは所定の伸長寸法となっている。このとき、保持筒49に対して吸着ノズル5が相対的に下降している。ここで、ノズル保持部48および吸着ノズル5が下降する途中で、吸着ノズル5が部品や障害物に衝突した場合を想定する。この場合、吸着ノズル5から弾性体4Gに上向きの力が作用するので、弾性体4Gは、規制ピン4Aが長孔4Eの下部に移動するまで縮み得る。換言すると、弾性体4Gは、ストローク長Sの分だけ短縮変形して所定の短縮寸法まで縮むことができる。このように、保持筒49に対して吸着ノズル5が相対的に上昇することにより、緩衝機能が発揮される。
【0046】
装着ヘッド43に固定された昇降駆動部4Hは、ノズル保持部48の保持筒49を昇降駆動する。これにより、下降駆動される吸着ノズル5は、インターポーザ部品PIに向かって下降し、吸着処理を行う。昇降駆動部4Hとして、駆動量の調整を高精度かつ容易に行うことができるサーボモータやパルスモータを用いることができる。
【0047】
3.吸着ノズル5を用いたインターポーザ部品PIの吸着処理動作
次に、部品装着機1が吸着ノズル5を用いてインターポーザ部品PIの吸着処理を行う動作について、図8および図9を参考にして説明する。吸着処理の動作は、制御装置からの制御によって進められる。制御装置は、まず、装着ヘッド43をトレイ式フィーダ35の上方まで移動させ、吸着ノズル5をインターポーザ部品PIの上方に位置させる。制御装置は、次に、昇降駆動部4Hを制御して、ノズル保持部48および吸着ノズル5を下降させる。
【0048】
ノズル保持部48が下降を開始する時点で、弾性体4Gは所定の伸長寸法となっている。ノズル保持部48および吸着ノズル5が下降して、弾性筒部材7の先端面71が被吸着面SPに当接すると、それ以降は弾性筒部材7の弾性圧縮変形と弾性体4Gの短縮変形とが並行して進む。弾性筒部材7および弾性体4Gの変形の割合は、両者の弾性強度の大小に依存する。
【0049】
弾性筒部材7の側では、先端面71が被吸着面SPに当接すると、弾性筒部材7のバンプBPに倣う弾性変形が始まる。弾性筒部材7の弾性変形は、当接面89が被吸着面SPのバンプBP(凸形状)に当接するまで継続される。つまり、弾性筒部材7は、第一寸法L1からバンプBPの最大高さHmを引き算した分だけ圧縮変形しながら、その先端面71がバンプBPに倣って変形し、被吸着面SPの凹凸形状に密着する。これにより、弾性筒部材7は、内部が気密状態となり、かつ内部がノズル先端部6の内部流路65に連通された状態となる。
【0050】
制御装置は、弾性筒部材7の内部が気密状態となった以降、または気密状態となる以前から、エア流路4F、本体流路59、内部流路65、および開口部66を経由して、弾性筒部材7の内部まで負圧エアを供給する。これにより、吸着ノズル5は、6つの弾性筒部材7の先端面71の開口部でインターポーザ部品PIを安定的に吸着することができる。さらに、吸着ノズル5は、6つの当接面89でインターポーザ部品PIを水平状態に安定して保つとともに、高さ位置を一定化する。これで、吸着ノズル5の吸着処理が終了する。
【0051】
一方、当接面89が被吸着面SPに当接する時点で、弾性体4Gは、短縮寸法と伸長寸法との間の途中寸法となる。このため、弾性体4Gは、未だ途中寸法から短縮寸法まで短縮変形する緩衝機能を有している。したがって、当接面89が被吸着面SPに当接した後、さらに保持筒49(ノズル保持部48)が下降駆動されても、弾性体4Gが短縮変形し、吸着ノズル5が保持筒49に対して相対的に上昇する。これにより、弾性体4Gの緩衝機能が発揮され、インターポーザ部品PIは、加えられる荷重が低減されて破損が抑制される。
【0052】
この後、制御装置は、昇降駆動部4Hを制御して、インターポーザ部品PIを吸着した吸着ノズル5を上昇させる。さらに、制御装置は、吸着ノズル5を基板Kの上方まで移動させ、昇降駆動部4Hを制御して吸着ノズル5を下降させるとともに、正圧エアを供給する。これにより、吸着ノズル5は、インターポーザ部品PIを基板Kに装着する。この装着処理時に、弾性体4Gの緩衝機能が再び発揮される。
【0053】
弾性体4Gは他種の吸着ノズルにも共通に適用されるものである。したがって、インターポーザ部品PIを対象として弾性体4Gの緩衝機能が確実に発揮されるように、弾性体4Gの弾性強度に合わせて弾性筒部材7の弾性強度が設定される。つまり、弾性体4Gの弾性強度に適合するように、弾性筒部材7の材質が選定されて、弾性筒部材7の形状および寸法の設定が行われる。
【0054】
4.第1実施形態の応用例
吸着ノズル5が吸着対象とする部品は、インターポーザ部品PIに限定されず、スイッチ部品やコネクタ部品などのように被吸着面に穴や凹凸形状をもつ異形部品PJが含まれる。吸着対象とする異形部品PJの大きさ、形状、および重量に応じて、吸着ノズル5のノズル先端部6、弾性筒部材7、および当接面89の数量、寸法、および配置などを適正に変更することができる。
【0055】
例えば、図10に示される第1応用例で、吸着ノズル5は、1組のノズル先端部6および弾性筒部材7、ならびに1つの当接面8Aを備える。この態様では、ノズル先端部6の開口部66の内部に異形部品PJの重心G3が位置するように構成する。さらに、当接面8Aを環形状やC字形状に形成し、ノズル先端部6の開口部66が当接面8Aの内部に含まれるように構成する。
【0056】
次に、図11に示される第2応用例で、吸着ノズル5は、2組のノズル先端部6および弾性筒部材7、ならびに2つの当接面8Bを備える。この態様では、2つのノズル先端部6の開口部66を内包して形成される周囲長最小の細帯形状の領域AN2(破線で表示)の内部に異形部品PJの重心G3が位置するように構成する。領域AN2の重心位置G4は、前記したように吸着中心位置に相当するものであり、概ね異形部品PJの重心G3に一致している。そして、領域AN2の重心位置G4が、2つの当接面8Bを内包して形成される周囲長最小の長方形状の領域AT2(一点鎖線で表示)の内部に含まれるように構成する。なお、吸着ノズル5は、2つの当接面8Bに代えて、太線の破線の位置に配置される2つの当接面8Cを備えてもよい。
【0057】
また、吸着ノズル5は、1組のノズル先端部6および弾性筒部材7、ならびに複数の当接面89を備えてもよい。この態様では、ノズル先端部6の開口部66の内部に異形部品PJの重心G3が位置するように構成する。さらに、ノズル先端部6の開口部66が、複数備えられたすべての当接面89を内包して形成される周囲長最小の領域の内部に含まれるように構成する。
【0058】
また、吸着ノズル5は、複数組のノズル先端部6および弾性筒部材7、ならびに1つの当接面89を備えてもよい。この態様では、複数備えられたすべてのノズル先端部6の開口部66を内包して形成される周囲長最小の領域の内部に異形部品PJの重心G3が位置するように構成する。さらに、複数備えられたすべてのノズル先端部6の開口部66を内包して形成される周囲長最小の領域の重心位置が、1つのみ備えられた当接面89の内部に含まれるように構成する。具体的な配置例として、異形部品PJの重心G3を内部に含むように1つの当接面89を配置し、この当接面89の周りに複数組のノズル先端部6および弾性筒部材7を回転対称に配置する。
【0059】
また、上記した4つの態様において、当接面(89、8A、8B、8C)の材質は、前記したウレタンゴムの他に、異形部品PJに適合する硬質プラスチック製や金属製であってもよい。上記した各態様では、第1実施形態と同様の効果が生じる。すなわち、1組または複数組のノズル先端部6および弾性筒部材7で発生する吸着力が、効果的に異形部品PJの重心G3に作用する。さらに、異形部品PJが吸着されたときの高さ位置および水平姿勢が安定化される。
【0060】
第1実施形態および応用例の吸着ノズル5および部品装着機1において、ノズル先端部6の外周に設けられた弾性筒部材7は、その先端面71が部品(インターポーザ部品PI、異形部品PJ)の被吸着面SPに押し当てられたときに被吸着面SPの凹凸形状(バンプBP)に倣うように弾性変形して密着し、負圧エアのリークを抑制する。これにより、吸着ノズル5は、被吸着面に凹凸形状をもつ部品(インターポーザ部品PI、異形部品PJ)を確実に、かつ安定して吸着することができる。
【0061】
5.第2実施形態の吸着ノズル5A
次に、第2実施形態の吸着ノズル5Aについて、図12および図13を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第1実施形態では、ノズル先端部6と当接部材(81、83、85)が別体とされていた。第2実施形態では、図12に示されるように、吸着ノズル5Aは、ノズル本体部51の取り付け座部54の下側に6組のノズル先端部6Aおよび弾性筒部材7を有し、3つの当接部材(81、83、85)が省略される。そして、ノズル先端部6Aが当接部材を兼ねる。
【0062】
さらに、第2実施形態において、弾性変形していない弾性筒部材7の先端面71(図13に破線で示す)と開口部66との距離を表す第三寸法L3は、第1実施形態の第二寸法L2よりも小さく、かつ、第一寸法L1と同程度もしくは第一寸法L1よりも少し大きめに設定される。そして、吸着ノズル5Aを用いたインターポーザ部品PIの吸着処理において、弾性筒部材7が弾性変形したときに、ノズル先端部6Aの開口部66が被吸着面SPのバンプBPに当接する。つまり、開口部66は、弾性筒部材7の内部に負圧エアを供給する機能に加えて、当接部材の当接面の機能を果たす。
【0063】
第2実施形態において、第1実施形態と同様、吸着ノズル5Aは、インターポーザ部品PIを確実に、かつ安定して吸着することができる。かつ、6組のノズル先端部6Aおよび弾性筒部材7で発生する吸着力が効果的にインターポーザ部品PIの重心G1に作用する。さらに、6つのノズル先端部6Aの開口部66がバンプBPに当接することにより、インターポーザ部品PIが吸着されたときの高さ位置および水平姿勢が安定化される。
【0064】
6.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態で説明した位置調整部73は、省略してもよい。また、ノズル先端部6は、フランジ部62および錘状部64の少なくとも一方が省略されてもよく、大径軸部61と小径軸部63とが同寸法でもよい。ノズル先端部6の最も簡易な形状は、単純な筒形状で内部に内部流路65をもち、先端に開口部66をもつ構成である。さらに、弾性体4Gは、第1実施形態ではノズル保持部48の側に設けられているが、吸着ノズル5の側に設けることもできる。例えば、フランジ部52に結合された外筒部、および取り付け座部54に結合され外筒部に対して摺動する内筒部により軸部53を構成し、フランジ部52と取り付け座部54との間に伸縮する弾性体4Gを設け、フランジ部52(ノズル保持部48)に対する取り付け座部54の相対高さを変更可能とすることができる。
【0065】
また、第1実施形態およびその応用例において、当接面(89、8A、8B、8C)は平面とされているが、これに限定されない。つまり、当接面(8A、8B、8C)は、インターポーザ部品PIや異形部品PJの当接箇所の表面形状に応じて、SR形状(球面の一部)などの曲面形状とされてもよい。さらに、第1実施形態の応用例において、吸着ノズル5の当接面(8A、8B、8C)を省略し、ノズル先端部6を第2実施形態で説明した「当接部材を兼ねるノズル先端部6A」に置き換えてもよい。また、吸着ノズル5を装着ヘッド43に固定的に設けるとともに、テープフィーダ31を省略して、インターポーザ部品PIのみを吸着対象とする専用の部品装着機1としてもよい。第1および第2実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:部品装着機 2:基板搬送装置 3:部品供給装置 35:トレイ式フィーダ 4:部品移載装置 43:装着ヘッド 48:ノズル保持部 49:保持筒 4G:弾性体 4H:昇降駆動部 5、5A:吸着ノズル 51:ノズル本体部 6、6A:ノズル先端部 66:開口部 7:弾性筒部材 71:先端面 73:位置調整部 81、83、85:当接部材 89、8A、8B、8C:当接面 K:基板 PI:インターポーザ部品 BP:バンプ SP:被吸着面 PJ:異形部品 L1:第一寸法 L2:第二寸法 AN、AN2、AT、AT2:周囲長最小の領域 G1:重心 G2:重心位置 G3:重心 G4:重心位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13