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  • 特開-排気制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043082
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】排気制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240322BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20240322BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20240322BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240322BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F01N3/20 D ZAB
F02D21/08 301Z
F02D23/00 N
F02D9/02 341G
F02D13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148070
(22)【出願日】2022-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 聖
【テーマコード(参考)】
3G065
3G091
3G092
【Fターム(参考)】
3G065CA01
3G065EA02
3G065GA08
3G091BA03
3G091BA04
3G091EA17
3G091EA18
3G091FA04
3G092DA01
3G092DA02
3G092DB03
3G092DC01
3G092DC08
3G092FA20
3G092HD01Z
3G092HD02Z
(57)【要約】
【課題】暖機の途中では触媒温度の昇温を早めることができ、暖機後では触媒温度の低下を抑制できる排気制御装置を提供すること。
【解決手段】排気制御装置は、エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、排気浄化触媒の上流側における排気の温度を取得する取得部と、排気の温度が閾値よりも低いか否かを判定する判定部と、排気の温度が閾値よりも低い場合、排気の流量を低減させる制御を行う制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、
前記排気浄化触媒の上流側における前記排気の温度を取得する取得部と、
前記排気の温度が閾値よりも低いか否かを判定する判定部と、
前記排気の温度が閾値よりも低い場合、前記排気の流量を低減させる制御を行う制御部と、を有する、
排気制御装置。
【請求項2】
前記制御では、
吸気スロットルバルブ、可変ノズルターボ、および排気再循環バルブのうち、少なくとも1つの開度が制御される、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項3】
前記制御では、
気筒に設けられた吸気バルブおよび排気バルブの開度が制御される、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項4】
前記制御は、
前記排気の温度が前記閾値に至るまで行われる、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項5】
前記閾値は、
前記排気浄化触媒の温度である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項6】
前記閾値は、
前記排気浄化触媒の浄化性能の下限値に対応する温度である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出された排気が流れる排気通路において、例えば酸化触媒やSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒といった排気浄化触媒が設けられることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
排気浄化触媒の浄化性能は、その温度(以下、触媒温度という)に大きく影響を受ける。よって、高い浄化性能を維持するためには、触媒温度を精密に制御することが求められる。例えば冷間始動時などでは、できるだけ早く暖機を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-3669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気浄化触媒の温度は、排気の温度(以下、排気温度という)や流量に影響を受ける。
【0006】
例えば、暖機の途中において、排気温度が触媒温度を下回った場合、排気浄化触媒から排気への熱移動が発生することにより、排気浄化触媒が冷却され、触媒温度の昇温が遅れてしまう。
【0007】
また、暖機後においても、排気温度が触媒温度を下回った場合、上記同様に排気浄化触媒が冷却され、触媒温度が低下してしまう。
【0008】
本開示の一態様の目的は、暖機の途中では触媒温度の昇温を早めることができ、暖機後では触媒温度の低下を抑制できる排気制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る排気制御装置は、エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、前記排気浄化触媒の上流側における前記排気の温度を取得する取得部と、前記排気の温度が閾値よりも低いか否かを判定する判定部と、前記排気の温度が閾値よりも低い場合、前記排気の流量を低減させる制御を行う制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、暖機の途中では触媒温度の昇温を早めることができ、暖機後では触媒温度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る排気浄化装置の構成例を示すブロック図
図2】本開示の実施の形態に係る排気流量低減モード時の排気温度、排気流量、および各種開度の例を示す図
図3】本開示の実施の形態に係る排気制御装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態に係る排気制御装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1を用いて、排気制御装置100の構成について説明する。図1は、排気制御装置100の構成例を示すブロック図である。
【0014】
図示は省略するが、排気制御装置100は、エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒が設けられた排気系において用いられる。
【0015】
エンジンは、移動体(例えば、自動車、船舶等)搭載用でもよいし、定置式でもよい。また、エンジンは、ディーゼルエンジンでもよいし、その他のエンジンでもよい。
【0016】
排気浄化触媒は、所定の温度以上で浄化活性を示す触媒である。排気浄化触媒としては、例えば、酸化触媒(例えば、DOC:Diesel Oxidation Catalyst)、NOx浄化触媒(例えば、SCR触媒)等が挙げられるが、これら以外であってもよい。
【0017】
図1に示す吸気スロットルバルブ10は、エンジンへ供給される吸気が流れる吸気通路(図示略)に設けられている。
【0018】
図1に示す可変ノズルターボ(VNT:Variable Nozzle Turbo)20は、排気通路のうち排気浄化触媒よりも上流側に設けられている。なお、可変ノズルターボ20は、可変容量ターボ(VGT:Variable Geometry Turbo)または可変翼ターボ(VGS:Variable Geometry System)とも呼ばれる。
【0019】
図1に示す排気再循環バルブ30は、排気通路と吸気通路とを連結した排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)通路(図示略)に設けられている。
【0020】
吸気スロットルバルブ10、可変ノズルターボ20、および排気再循環バルブ30は、排気制御装置100と電気的に接続されている。
【0021】
排気制御装置100は、図示しないハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、コンピュータプログラムを格納したハードディスク、フラッシュメモリなどの補助記憶装置、それらを接続するバス等を有する。以下に説明する排気制御装置100の機能は、CPUが補助記憶装置から読み出したコンピュータプログラムを主記憶装置のRAMに展開して実行することにより実現される。例えば、排気制御装置100は、ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。
【0022】
図1に示すように、排気制御装置100は、取得部110と、判定部120と、制御部130とを有する。
【0023】
取得部110は、エンジンの駆動中において随時、排気浄化触媒の上流側を流れる排気の温度(以下、排気温度という)と、排気浄化触媒の温度(以下、触媒温度という)を取得する。
【0024】
ここでいう「取得」とは、取得部110がセンサ等から値を「受け取る」という意味のほか、取得部110自身が値を「算出する」という意味を含む。すなわち、取得部110により取得される排気温度および触媒温度は、実測値でもよいし、算出値でもよい。
【0025】
例えば、排気温度は、排気浄化触媒よりも上流側の排気通路に設けられた排気温度センサにより検知された値でもよい。または、例えば、排気温度は、エンジン回転数と燃料噴射量に応じて排気温度が定められたマップデータと、センサ等により実際に検知されたエンジン回転数および燃料噴射量とに基づいて算出された値でもよい。
【0026】
例えば、触媒温度は、排気浄化触媒自体の温度を検知する触媒温度センサにより検知された値でもよい。または、例えば、触媒温度は、排気浄化触媒よりも上流側の排気通路に設けられた排気温度センサにより検知された排気温度に基づいて算出された値でもよい。
【0027】
判定部120は、排気温度が触媒温度(閾値の一例)よりも低いか否かを判定する。
【0028】
なお、この判定は、取得部110によって排気温度および触媒温度が取得される度に行われる。
【0029】
制御部130は、排気温度が触媒温度よりも低い場合、排気の流量を低減させる制御として排気流量低減モードを行う。
【0030】
排気流量低減モードでは、例えば、吸気スロットルバルブ10、可変ノズルターボ20、および排気再循環バルブ30それぞれの開度が制御される。
【0031】
ここで、図2を用いて、排気流量低減モードにおいて制御される開度について説明する。図2は、排気流量低減モード時の排気温度、排気流量、および、吸気スロットルバルブ10、可変ノズルターボ20、および排気再循環バルブ30それぞれの開度の例を示す図である。なお、図2の横軸は、経過時間を示している。
【0032】
図2に示すaは、閾値(例えば、触媒温度)である。図2に示すbは、例えば、排気温度が閾値aを下回ってから再び閾値aに戻るまでの期間である。期間bは、排気流量低減モードが実行される期間である。
【0033】
図2に示すように、期間bにおいて、排気再循環バルブ30の開度は規定値よりも大きくなるように制御され、可変ノズルターボ20の開度は規定値よりも小さくなるように制御され、吸気スロットルバルブ10の開度は規定値よりも小さくなるように制御される。これにより、図2に示すように、排気流量は、低減される。
【0034】
なお、上記各規定値は、例えば、エンジン回転数および燃料噴射量によって決まる開度であるが、これに限定されない。
【0035】
また、吸気スロットルバルブ10および可変ノズルターボ20において、規定値から減少させる開度の量は、排気温度と触媒温度との温度差に応じて決まる値でもよいし、規定値に所定の係数を掛けることで決まる値でもよい。
【0036】
以上、排気制御装置100の構成について説明した。
【0037】
次に、図3を用いて、排気制御装置100の動作について説明する。図3は、排気制御装置100の動作例を示すフローチャートである。図3のフローは、例えば、エンジンの始動直後に開始され、エンジンの駆動中において繰り返し行われる。
【0038】
まず、取得部110は、排気温度および触媒温度を取得する(ステップS1)。
【0039】
次に、判定部120は、排気温度は触媒温度よりも低いか否かを判定する(ステップS2)。
【0040】
排気温度が触媒温度以上である場合(ステップS2:NO)、フローは、再びステップS1から開始する。
【0041】
排気温度が触媒温度より低い場合(ステップS2:YES)、制御部130は、排気流量低減モードを実行する(ステップS3)。その後、フローは、再びステップS1から開始する。
【0042】
なお、ステップS3の後、再度開始されたフローにおいて、排気温度が触媒温度以上となった場合、制御部130は、排気流量低減モードの実行を終了する。
【0043】
以上、排気制御装置100の動作について説明した。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態の排気制御装置100は、エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、排気浄化触媒の上流側における排気の温度を取得する取得部110と、排気の温度が閾値(例えば、排気浄化触媒の温度)よりも低いか否かを判定する判定部120と、排気の温度が閾値よりも低い場合、排気の流量を低減させる制御を行う制御部130と、を有することを特徴とする。
【0045】
この特徴により、排気の温度が閾値よりも低い場合に排気の流量を低減させることができるので、暖機の途中(触媒温度が活性温度に至っていない状態)では触媒温度の昇温を早めることができ、暖機後(触媒温度が活性温度に至った状態)では触媒温度の低下を抑制できる。
【0046】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0047】
[変形例1]
実施の形態では、閾値が排気浄化触媒の温度である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、閾値は、排気浄化触媒の浄化性能の下限値(例えば、パーセンテージ)に対応する温度であってもよい。
【0048】
[変形例2]
実施の形態では、排気流量低減モードにおいて、吸気スロットルバルブ10の開度、可変ノズルターボ20の開度、および排気再循環バルブ30の開度が全て制御される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、排気流量低減モードでは、吸気スロットルバルブ10の開度、可変ノズルターボ20の開度、および排気再循環バルブ30の開度のうち、少なくとも1つの開度が制御されてもよい。
【0049】
[変形例3]
実施の形態では、排気流量低減モードが吸気スロットルバルブ10、可変ノズルターボ20、および排気再循環バルブ30それぞれの開度の制御である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、排気流量低減モードは、エンジンの気筒に設けられた吸気バルブおよび排気バルブそれぞれの開度の制御(いわゆる気筒休止)であってもよい。
【0050】
以上、変形例について説明した。上記変形例は適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示の排気制御装置は、排気浄化触媒の温度制御に有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 吸気スロットルバルブ
20 可変ノズルターボ
30 排気再循環バルブ
100 排気制御装置
110 取得部
120 判定部
130 制御部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、
前記排気浄化触媒の上流側における前記排気の温度を取得する取得部と、
前記排気の温度が閾値よりも低いか否かを判定する判定部と、
前記排気の温度が閾値よりも低い場合、前記排気の流量を低減させるように、気筒に設けられた吸気バルブおよび排気バルブの開度の制御を行う制御部と、を有する、
排気制御装置。
【請求項2】
前記制御は、
前記排気の温度が前記閾値に至るまで行われる、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項3】
前記閾値は、
前記排気浄化触媒の温度である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項4】
前記閾値は、
前記排気浄化触媒の浄化性能の下限値に対応する温度である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示の一態様に係る排気制御装置は、エンジンから排出された排気が流れる排気通路に排気浄化触媒を備えた排気系で用いられる排気制御装置であって、前記排気浄化触媒の上流側における前記排気の温度を取得する取得部と、前記排気の温度が閾値よりも低いか否かを判定する判定部と、前記排気の温度が閾値よりも低い場合、前記排気の流量を低減させるように、気筒に設けられた吸気バルブおよび排気バルブの開度の制御を行う制御部と、を有する。