(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043088
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】管理システム、管理装置、及び電力調整方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240322BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240322BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240322BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240322BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240322BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240322BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240322BHJP
B60L 53/50 20190101ALI20240322BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240322BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240322BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240322BHJP
B60L 53/14 20190101ALN20240322BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14
H02J3/32
H02J3/46
H02J7/00 P
G06Q50/06
B60L50/60
B60L53/50
B60L58/13
G16Y10/40
G16Y20/20
B60L53/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148082
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】内田 詠子 メガン
(72)【発明者】
【氏名】田中 正史
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】豊良 幸男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】森島 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】松原 卓司
(72)【発明者】
【氏名】中村 達
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】宮下 功嗣
(72)【発明者】
【氏名】落合 崇
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H125
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA05
5G066AA03
5G066HA15
5G066HA17
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA12
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC12
5H125BC21
5H125BE01
5H125CC04
5H125CC07
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE51
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なう。
【解決手段】管理システムが、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースと、複数のリソースを管理する管理装置1000とを含む。管理装置1000は、計画部と管理部とを含む。計画部は、複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、複数のリソースの各々の電力調整計画を決定するように構成される。管理部は、外部電源の電力調整において複数のリソースの各々が電力調整計画又は修正された電力調整計画に従って動作するように複数のリソースを管理するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースと、前記複数のリソースを管理する管理装置とを含む管理システムであって、
前記管理装置は、
前記複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、前記外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、前記複数のリソースの各々の電力調整計画を決定する計画部と、
前記外部電源の電力調整において前記複数のリソースの各々が前記電力調整計画又は修正された前記電力調整計画に従って動作するように前記複数のリソースを管理する管理部と、
を含む、管理システム。
【請求項2】
前記複数のリソースは、複数の車両を含み、
前記複数の車両の各々は、蓄電装置と、前記蓄電装置の充電制御を行なう充電制御装置とを備え、
前記電力調整計画は、前記蓄電装置の充電計画であり、
前記車両の前記充電制御装置は、当該車両の利用開始予定時刻と、前記充電制御における前記蓄電装置の目標SOCとを設定可能に構成され、
前記第1情報は、前記充電制御装置に設定された前記利用開始予定時刻及び前記目標SOCを示す、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記第2情報は、前記外部電源が供給する電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を時間帯ごとに示し、
前記計画部は、各車両において前記蓄電装置のSOCが前記利用開始予定時刻に前記目標SOC以上になっていることと、各車両の前記充電計画で使用される電力の生成過程で排出された前記二酸化炭素量の合計値が所定の目標レベル以下になっていることとが満たされるように、各車両の前記充電計画を決定する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記管理システムは、前記外部電源の電力調整を前記管理装置に要請する要請装置をさらに含み、
前記外部電源は、所定エリアに電力を供給する電力系統であり、
前記管理装置には、前記複数の車両の各々について前記所定エリア内の充電場所が登録されており、
前記管理装置は、前記電力調整の内容を時間帯ごとに示す要請信号と、前記第2情報とを、前記要請装置から受信するように構成され、
前記管理装置は、前記車両、又は前記車両のユーザによって携帯される携帯端末から、前記充電制御装置に設定された前記利用開始予定時刻及び前記目標SOCを受信するように構成され、
前記計画部は、前記要請信号が電力需要の増加を要請する時間帯に前記複数の車両の各々の前記蓄電装置の総充電電力量が多くなり、前記要請信号が電力需要の低減を要請する時間帯に前記複数の車両の各々の前記蓄電装置の総充電電力量が少なくなるように、各車両の前記充電計画を決定する、請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記計画部によって決定された各車両の前記充電計画を、前記要請装置からの要請に従って修正する修正部をさらに含み、
前記管理部は、前記充電計画が修正されない前記車両を、前記計画部によって決定された前記充電計画に従って動作させ、前記修正部によって前記充電計画が修正された前記車両を、修正された前記充電計画に従って動作させる、請求項4に記載の管理システム。
【請求項6】
前記第2情報は、前記外部電源が供給する電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を時間帯ごとに示し、
前記計画部は、各車両において前記蓄電装置のSOCが前記利用開始予定時刻に前記目標SOC以上になっていることを満たし、かつ、各車両の前記充電計画で使用される電力の生成過程で排出された前記二酸化炭素量の合計値が最も少なくなるように、各車両の前記充電計画を決定する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項7】
前記充電制御装置は、複数種の充電モードのうちユーザからの入力に応じた充電モードが設定されるように構成され、
前記複数種の充電モードは、第1充電モードを含み、
前記管理部は、前記充電制御装置に前記第1充電モードが設定された前記車両については、前記外部電源の電力調整のための充電制御を行なわせないように構成され、
前記管理部は、前記充電制御装置に前記第1充電モード以外の充電モードが設定された前記車両の中から制御対象を選び、選ばれた前記制御対象へ前記充電計画又は修正された前記充電計画に従う制御指令を送信することにより、前記外部電源の電力調整のための充電制御を前記制御対象に行なわせるように構成される、請求項2~6のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記複数の車両の各々の移動予測を行なう予測部をさらに含み、
前記複数種の充電モードは、第2充電モード及び第3充電モードをさらに含み、
前記計画部は、前記充電制御装置に前記第2充電モードが設定された前記車両については、ユーザによって前記充電制御装置に設定された前記利用開始予定時刻及び前記目標SOCと、前記第2情報とを用いて、当該車両の前記充電計画を決定するように構成され、
前記計画部は、前記充電制御装置に前記第3充電モードが設定された前記車両については、前記移動予測の結果を用いて前記利用開始予定時刻及び前記目標SOCを前記充電制御装置に設定し、設定された前記利用開始予定時刻及び前記目標SOCと、前記第2情報とを用いて、当該車両の前記充電計画を決定するように構成される、請求項7に記載の管理システム。
【請求項9】
前記管理部は、前記複数の車両の中から制御対象を選び、選ばれた前記制御対象の前記充電制御装置に前記充電計画又は修正された前記充電計画を設定するように構成され、
前記充電制御装置は、設定された前記充電計画に従って前記蓄電装置の充電制御を行なうように構成される、請求項2~6のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項10】
外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理する管理装置であって、
前記管理装置は、
前記複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、前記外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、前記複数のリソースの各々の電力調整計画を決定する計画部と、
前記外部電源の電力調整において前記複数のリソースの各々が前記電力調整計画又は修正された前記電力調整計画に従って動作するように前記複数のリソースを管理する管理部と、
を含む、管理装置。
【請求項11】
外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理する管理装置であって、
前記管理装置は、
前記複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、前記外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、前記複数のリソースが前記外部電源のために調整可能な総電力量を時間帯ごとに決定する決定部と、
前記決定部によって決定された前記時間帯ごとの前記総電力量を送信する送信部と、
を含む、管理装置。
【請求項12】
外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理する管理装置が、前記複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、前記外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、前記複数のリソースの各々の電力調整計画を決定することと、
前記外部電源の電力調整において、前記複数のリソースの各々が、前記電力調整計画又は修正された前記電力調整計画に従って動作することと、
を含む、電力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システム、管理装置、及び電力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2007-185083号公報(特許文献1)には、外部電源(より特定的には、商用電源)が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す環境情報を用いて、その外部電源から供給される電力によって電動車両のバッテリを充電することを許可するか否かを決定する技術が開示されている。特許文献1では、電力を生成するのに排出された二酸化炭素量を示す情報が、環境情報として採用されている。排出される二酸化炭素(CO2)が多いほど地球温暖化が促進されるため、環境負荷(自然環境に対する負荷)は大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される技術では、電力の生成に伴う二酸化炭素量が予め設定された閾値を下回っているときに電動車両の充電が許可される。しかしながら、こうした技術では、外部電源が環境負荷の小さい電力を供給しているときにしか外部電源を用いて電動車両を充電できない。ユーザが電動車両の利用を予定しているにもかからわず、外部電源による電動車両の充電が禁止されると、ユーザの利便性が損なわれる可能性がある。また、上記特許文献1では、外部電源の電力調整のために電動車両を利用することについて十分な検討がなされていない。蓄電装置を備える電動車両は、外部電源に対して蓄電装置の充放電を行なうことにより、外部電源の調整力(たとえば、電力需給を平準化させる調整力)として動作し得る。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る管理システムは、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースと、複数のリソースを管理する管理装置とを含む。管理装置は、計画部と管理部とを含む。計画部は、複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、複数のリソースの各々の電力調整計画を決定するように構成される。管理部は、外部電源の電力調整において複数のリソースの各々が上記電力調整計画又は修正された電力調整計画に従って動作するように複数のリソースを管理するように構成される。
【0007】
上記の管理装置は、各リソースの利用予定と環境負荷の大きさとの両方を考慮して電力調整計画を決定することができる。外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷(以下、単に「電力の環境負荷」とも称する)の大きさは、時間帯によって変動し得る。電力の環境負荷は、電力供給に伴う環境負荷に相当する。各リソースの利用予定に合わせて電力調整計画を決定すると、リソースによっては、電力の環境負荷が大きい時間帯に外部電源から電力の供給を受けることになるかもしれない。しかしながら、上記管理システムでは、リソース群(複数のリソース)を用いて外部電源の電力調整を行なうため、リソース間で補完し合うように各リソースの電力調整計画を決定することで、リソース群全体が受ける電力の総合的な環境負荷を小さくすることができる。具体的には、一部のリソースが電力の環境負荷が大きい時間帯に外部電源から電力の供給を受けたとしても、他のリソースが、電力の環境負荷が小さい時間帯に外部電源から電力の供給を受けたり、電力の環境負荷が大きい時間帯に外部電源へ電力の供給を行なったりすることで、リソース群全体が受ける電力の総合的な環境負荷を小さくすることができる。このように、上記構成によれば、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【0008】
リソースは、自動車であってもよいし、あるいは、自動車以外の乗り物(鉄道車両、船、飛行機等)、無人の移動体、電気機械器具(照明装置、空調設備等)、又は定置式の蓄電システムであってもよい。リソースは蓄電装置を備えてもよい。リソースは、AC/DC変換を行なうインバータと、DC/DC変換を行なうDC/DCコンバータとの少なくとも一方を含んでもよい。管理装置は複数種のリソースを管理してもよい。
【0009】
外部電源は、小売電気事業者の商用電源であってもよいし、電力網(たとえば、マイクログリッド、又はインフラストラクチャとして整備された大規模な電力網)であってもよい。外部電源は、交流電力を供給してもよいし、直流電力を供給してもよい。
【0010】
外部電源の電力調整は、外部電源の需給バランス調整であってもよいし、外部電源の周波数制御であってもよい。リソースは、外部電源から供給される電力を蓄電又は消費することによって外部電源の電力需要を促進してもよい。リソースは、外部電源から受け取る電力量(たとえば、充電量又は消費量)を減らすことによって外部電源の電力需要を抑制してもよい。リソースは、外部電源へ電力を供給すること(逆潮流)によって外部電源の電力供給量を増やしてもよい。
【0011】
電力調整計画は1日の計画であってもよい。1日が複数の時間帯に分割されてもよい。電力調整計画は、1日の分割された複数の時間帯の各々について、外部電源からの電力の消費量もしくは充電量、又は外部電源への放電量を示してもよい。第1情報は、リソースの利用開始予定時刻を示してもよい。第1情報は、リソースの利用開始予定時刻に加えて、リソースの利用終了予定時刻を示してもよい。第2情報は、1日の分割された複数の時間帯の各々について電力の環境負荷の大きさを示してもよい。上記管理装置の計画部は、複数のリソースの各々についてリソースの利用開始予定時刻にリソースが利用可能な状態になっているように、各リソースの電力調整計画を決定してもよい。
【0012】
管理装置によって管理される上記複数のリソースは、複数の車両を含んでもよい。複数の車両の各々は、蓄電装置と、蓄電装置の充電制御を行なう充電制御装置とを備えてもよい。電力調整計画は、蓄電装置の充電計画であってもよい。車両の充電制御装置は、当該車両の利用開始予定時刻と、充電制御における蓄電装置の目標SOCとを設定可能に構成されてもよい。第1情報は、充電制御装置に設定された利用開始予定時刻及び目標SOCを示してもよい。
【0013】
上記構成によれば、車両ユーザの十分な利便性を確保しやすくなる。具体的には、車両の利用開始予定時刻に十分な量の電力(たとえば、目標SOC以上の電力)を車両の蓄電装置に蓄えやすくなる。これにより、ユーザが車両を利用している最中に車両が電欠状態になることが抑制される。車両の利用開始予定時刻は、車両の出発予定時刻であってもよい。充電計画は、蓄電装置のSOC又は充電電力の推移を示してもよい。なお、SOC(State Of Charge)は、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0014】
第2情報は、外部電源が供給する電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を時間帯ごとに示してもよい。計画部は、各車両において蓄電装置のSOCが利用開始予定時刻に目標SOC以上になっていること(以下、「ユーザ要件」とも称する)と、各車両の充電計画で使用される電力の生成過程で排出された二酸化炭素量の合計値が所定の目標レベル以下になっていること(以下、「環境要件」とも称する)とが満たされるように、各車両の充電計画を決定するように構成されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、ユーザ要件と環境要件との両方が満たされるように、各車両の充電計画が決定される。これにより、車両ユーザの十分な利便性が確保されやすくなるとともに、電力供給に伴う環境負荷が抑制されやすくなる。上記第2情報は、外部電源のCO2排出係数を時間帯ごとに示してもよい。
【0016】
上述したいずれかの管理システムは、外部電源の電力調整を管理装置に要請する要請装置をさらに含んでもよい。外部電源は、所定エリアに電力を供給する電力系統であってもよい。管理装置には、複数の車両の各々について所定エリア内の充電場所が登録されてもよい。管理装置は、電力調整の内容を時間帯ごとに示す要請信号と、第2情報とを、要請装置から受信するように構成されてもよい。管理装置は、車両、又は車両のユーザによって携帯される携帯端末から、充電制御装置に設定された利用開始予定時刻及び目標SOCを受信するように構成されてもよい。計画部は、要請信号が電力需要の増加を要請する時間帯に複数の車両の各々の蓄電装置の総充電電力量が多くなり、要請信号が電力需要の低減を要請する時間帯に複数の車両の各々の蓄電装置の総充電電力量が少なくなるように、各車両の充電計画を決定するように構成されてもよい。
【0017】
外部電源から供給される電力を用いた各車両の蓄電装置の総充電電力量を増やすほど外部電源の電力需要は促進される。また、外部電源から供給される電力を用いた各車両の蓄電装置の総充電電力量を減らすほど外部電源の電力需要は抑制される。上記構成によれば、各車両の充電計画に従い、要請信号が要請する外部電源の電力調整が適切に行なわれやすくなる。上記携帯端末は、スマートフォン、ラップトップ、タブレット端末、携帯型ゲーム機、ウェアラブルデバイス、又は電子キーであってもよい。
【0018】
上述したいずれかの管理システムにおいて、管理装置は、計画部によって決定された各車両の充電計画を、要請装置からの要請に従って修正する修正部をさらに含んでもよい。管理部は、充電計画が修正されない車両を、計画部によって決定された充電計画に従って動作させ、修正部によって充電計画が修正された車両を、修正された充電計画に従って動作させるように構成されてもよい。
【0019】
上記構成によれば、管理装置が、要請装置からの要請に従う外部電源の電力調整を行ないやすくなる。
【0020】
上述したいずれかの管理システムにおいて、計画部は、外部電源が供給する電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を時間帯ごとに示す第2情報を用いて、各車両において蓄電装置のSOCが利用開始予定時刻に目標SOC以上になっていることを満たし、かつ、各車両の充電計画で使用される電力の生成過程で排出された二酸化炭素量の合計値が最も少なくなるように、各車両の充電計画を決定するように構成されてもよい。
【0021】
上記構成によれば、ユーザ要件を満たし、かつ、充電計画で使用される電力の生成過程で排出された二酸化炭素量が最も少なくなるように、各車両の充電計画が決定される。これにより、車両ユーザの十分な利便性が確保されやすくなるとともに、電力供給に伴う環境負荷が抑制されやすくなる。
【0022】
充電制御装置は、複数種の充電モードのうちユーザからの入力に応じた充電モードが設定されるように構成されてもよい。複数種の充電モードは、第1充電モードを含んでもよい。管理部は、充電制御装置に第1充電モードが設定された車両については、外部電源の電力調整のための充電制御を行なわせないように構成されてもよい。管理部は、充電制御装置に第1充電モード以外の充電モードが設定された車両の中から制御対象を選び、選ばれた制御対象へ充電計画又は修正された充電計画に従う制御指令を送信することにより、外部電源の電力調整のための充電制御を制御対象に行なわせるように構成されてもよい。
【0023】
上記構成によれば、管理装置による制御(より特定的には、外部電源の電力調整のためのリモート制御)を許可するか否かを、ユーザが選ぶことが可能になる。これにより、ユーザの利便性が向上する。上記第1充電モードが設定された充電制御装置は、ユーザによって当該充電制御装置に設定された利用開始予定時刻及び目標SOCに基づく充電スケジュールに従い、蓄電装置の充電制御を行なってもよい。
【0024】
管理装置は、複数の車両の各々の移動予測を行なう予測部をさらに含んでもよい。複数種の充電モードは、第2充電モード及び第3充電モードをさらに含んでもよい。計画部は、充電制御装置に第2充電モードが設定された車両については、ユーザによって充電制御装置に設定された利用開始予定時刻及び目標SOCと、第2情報とを用いて、当該車両の充電計画を決定するように構成されてもよい。計画部は、充電制御装置に第3充電モードが設定された車両については、移動予測の結果を用いて利用開始予定時刻及び目標SOCを充電制御装置に設定し、設定された利用開始予定時刻及び目標SOCと、第2情報とを用いて、当該車両の充電計画を決定するように構成されてもよい。
【0025】
上記構成によれば、車両の利用予定に関する設定(利用開始予定時刻及び目標SOCの設定)を管理装置に任せるか否かを、ユーザが選ぶことが可能になる。具体的には、第3充電モードの車両については、管理装置の計画部が、予測部による移動予測の結果を用いて、当該車両にとって適切な利用開始予定時刻及び目標SOCを設定する。車両の利用予定に関する設定が自動的に行なわれることで、ユーザの利便性が向上する。ただし、車両の状況によっては、予測部による移動予測の精度が低下する可能性がある。こうした状況においては、ユーザが第2充電モードを選ぶことで、ユーザ自身によって利用開始予定時刻及び目標SOCを設定することが可能になる。ユーザは、状況に応じて、所望の充電モードを選ぶことができる。
【0026】
管理部は、複数の車両の中から制御対象を選び、選ばれた制御対象の充電制御装置に充電計画又は修正された充電計画を設定するように構成されてもよい。充電制御装置は、設定された充電計画に従って蓄電装置の充電制御を行なうように構成されてもよい。
【0027】
上記構成によれば、外部電源の電力調整のための制御が車両側(充電制御装置)のローカル制御で実行されるようになる。上記構成によれば、各車両の充電制御装置に設定された電力調整計画に従い、外部電源の電力調整が適切に行なわれやすくなる。
【0028】
本開示の第2の観点に係る管理装置は、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理するように構成される。管理装置は、計画部と管理部とを含む。計画部は、複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、複数のリソースの各々の電力調整計画を決定するように構成される。管理部は、外部電源の電力調整において複数のリソースの各々が電力調整計画又は修正された電力調整計画に従って動作するように複数のリソースを管理するように構成される。
【0029】
上記管理装置によっても、前述した管理システムと同様、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【0030】
本開示の第3の観点に係る管理装置は、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理するように構成される。管理装置は、決定部と送信部とを含む。決定部は、複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、複数のリソースが外部電源のために調整可能な総電力量を時間帯ごとに決定するように構成される。送信部は、決定部によって決定された時間帯ごとの上記総電力量を送信するように構成される。
【0031】
上記複数のリソースが外部電源のために調整可能な総電力量を時間帯ごとに示す情報(以下、「調整情報」とも称する)は、電力調整量の限界値を示す。上記構成によれば、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制することができる電力調整量の限界値を示す調整情報を、管理装置が取得可能になる。上記送信部は、こうした調整情報を前述の要請装置へ送信してもよい。要請装置は、こうした調整情報に基づき、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【0032】
本開示の第4の観点に係る電力調整方法は、外部電源と電気的に接続可能に構成される複数のリソースを管理する管理装置が、複数のリソースの各々の利用予定に関する第1情報と、外部電源が供給する電力の生成過程における環境負荷の大きさを示す第2情報とを用いて、複数のリソースの各々の電力調整計画を決定することと、外部電源の電力調整において、複数のリソースの各々が、電力調整計画又は修正された電力調整計画に従って動作することとを含む。
【0033】
上記電力調整方法によっても、前述した管理システムと同様、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、リソースのユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、リソースを用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の実施の形態に係る管理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した車両及びコンセント装置の構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態において小売電気事業者が電力を調達する方法について説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る電力調整方法について説明するための図である。
【
図5】本開示の実施の形態において小売電気事業者によって調達される電力に関する情報の第1例を示す図である。
【
図6】本開示の実施の形態において小売電気事業者によって調達される電力に関する情報の第2例を示す図である。
【
図7】
図1に示したユーザ端末(携帯端末)が表示する充電モード設定画面を示す図である。
【
図8】
図1に示した車両に設定可能な3種類の充電モードについて説明するための図である。
【
図9】本開示の実施の形態におけるスマート充電計画及びDR可能量について説明するための図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係る管理装置によって実行される外部電源の電力調整に係る処理について説明するための図である。
【
図11】
図1に示したユーザ端末(携帯端末)がDR実績を表示する画面の一例を示す図である。
【
図12】
図6に示した環境指数の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0037】
図1は、本開示の実施の形態に係る管理システムの概略的な構成を示す図である。
図1を参照して、この実施の形態に係る管理システムは、サーバ700と、管理装置1000とを含む。管理装置1000は、サーバ200及び500を含む。
【0038】
サーバ200,500,700の各々は、たとえばHMI(Human Machine Interface)及び通信I/F(インターフェース)を具備するコンピュータである。各コンピュータは、プロセッサと記憶装置とを備える。プロセッサはCPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶装置には、プロセッサに実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。HMIは入力装置及び表示装置を含む。HMIは、タッチパネルディスプレイであってもよい。
【0039】
電力系統PS1は、電力網PG1と、発電システム710と、変電システム720とを含む。電力系統PS1は、所定のエリアPS2に電力を供給する。この実施の形態では、電力会社が電力系統PS1のTSO(系統運用者)に相当する。電力系統PS1は、交流電力(たとえば、単相または三相交流電力)を供給する。この実施の形態に係る電力系統PS1は、本開示に係る「外部電源」の一例に相当する。
【0040】
電力網PG1は送配電設備によって構築される。電力網PG1には、発電システム710と、変電システム720と、電力網PG2とが接続されている。電力網PG2は、エリアPS2とは異なるエリア(図示せず)に電力を供給する電力網である。電力網PG1(電力系統PS1)と電力網PG2とではTSOが異なる。電力網PG1は連系線PLを介して電力網PG2と接続されている。電力網PG1と電力網PG2との間で相互に電力融通が行なわれる。電力網PG1は、発電システム710から電力の供給を受けている。
【0041】
発電システム710は、火力発電所711と、再エネ発電所712と、揚水発電所713とを含む。火力発電所711は、火力(石炭火力、LNG火力、石油火力など)を利用して発電するように構成される。LNGは、液化天然ガスを意味する。火力発電は、他の発電方式に比べて、発電に伴うCO2(二酸化炭素)排出量が多い傾向がある。再エネは、再生可能エネルギー(RE:Renewable Energy)を意味する。再エネ発電所712は、再生可能エネルギーを利用して発電するように構成される。再エネ発電所712は、太陽光発電所と、風力発電所(たとえば、陸上風力発電所又は洋上風力発電所)と、水力発電所と、地熱発電所と、バイオマス発電所との少なくとも1つを含んでもよい。この実施の形態では、再エネ発電所712が太陽光発電所と風力発電所と水力発電所とを含む。揚水発電所713は、電力網PG1の電力が余ったときに、その余剰電力(揚水動力)を使って揚水することによりエネルギーを貯蔵し、電力網PG1の電力が不足したときに、貯蔵された位置エネルギー(水力)を使って揚水発電するように構成される。
【0042】
電力系統PS1は、火力発電所711、再エネ発電所712からそれぞれ電力網PG1へ供給される電力に関する情報(たとえば、電圧、電流、及び電力量)を取得する検出器711a、712aを含む。また、電力系統PS1は、揚水発電所713、電力網PG2と電力網PG1との間でやり取りされる電力に関する情報(たとえば、電圧、電流、及び電力量)をそれぞれ取得する検出器713a、714aをさらに含む。検出器は発電所ごとに設けられている。
図1には、再エネ発電所712に対して1つの検出器712aのみを図示しているが、検出器712aは、再エネ発電所712に含まれる太陽光発電所と風力発電所と水力発電所との各々に対して設けられている。各検出器による検出結果は、サーバ700へ出力される。なお、発電システム710の電源構成は、
図1に示した構成に限られず、適宜変更可能である。発電システム710は、他の発電所(たとえば、原子力発電所)をさらに含んでもよい。
【0043】
電力網PG1は、変電システム720を介して、エリアPS2に電力を供給する。変電システム720は、発電システム710が発電した電力を需要家ごとに適した電力に変換するために各種の変電設備を含む。変電システム720は、一次変電所と、配電用変電所と、柱上変圧器とを含んでもよい。変電所フィーダごとにUFR(周波数低下リレー)が設置されてもよい。
【0044】
エリアPS2は、住宅300を含む。住宅300は、車両100のユーザの自宅に相当する。住宅300は、分電盤320を含む。分電盤320は、電力系統PS1から電力の供給を受け、屋内に設置された複数のコンセント(図示せず)と、屋外へ電力を出力するコンセント装置330との各々に電力を供給する。住宅300は、屋内のコンセントから電力の供給を受ける各種の家庭用電気機械器具(たとえば、照明装置、空調設備、暖房器具、調理器具、情報機器、テレビ、冷蔵庫、及び洗濯機)を含む。ユーザは、充電ケーブル340を用いて、車両100とコンセント装置330とを電気的に接続することができる。詳細は後述するが、コンセント装置330は、充電ケーブル340を介して、車両100に電力を供給する。
【0045】
電力系統PS1と分電盤320との間にはスマートメータ310が設置されている。電力系統PS1から住宅300に供給される電力量は、受電点に設置されたスマートメータ310によって計測される。サーバ700は、スマートメータ310による計測値を所定の間隔で(たとえば、30分ごとに)逐次受信する。なお、住宅300は、自然変動電源(たとえば、屋根に設置される太陽光パネル)と、コージェネレーションシステム(たとえば、ヒートポンプ給湯機)と、HEMS(Home Energy Management System)との少なくとも1つをさらに含んでもよい。住宅300は、電力系統PS1へ電力を供給(逆潮流)可能に構成されてもよい。
【0046】
図2は、車両100及びコンセント装置330の構成を示す図である。
図2を参照して、車両100は、バッテリ11と、SMR(System Main Relay)12と、MG(Motor Generator)20と、PCU(Power Control Unit)22と、インレット60と、充電器61と、充電リレー62と、起動スイッチ70と、HMI81と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)82と、通信装置90と、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)150とを備える。SMR12、PCU22、インレット60、充電器61、及び充電リレー62の各々は、ECU150によって制御される。
【0047】
ECU150は、プロセッサと記憶装置とを備えるコンピュータである。記憶装置には、プロセッサに実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、ECU150による各種の車両制御(たとえば、バッテリ11の充電制御及び放電制御)が実行される。車両100に搭載された各種センサの検出結果は、ECU150へ出力される。
【0048】
バッテリ11は、車両100の走行用の電力を蓄電する。車両100は、バッテリ11に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。車両100は、バッテリ11の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を監視するセンサモジュール11aをさらに備える。センサモジュール11aはBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、センサモジュール11aの出力に基づいてバッテリ11の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。この実施の形態に係る車両100は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)である。バッテリ11としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。この実施の形態に係るバッテリ11は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0049】
コンセント装置330は、電力系統PS1から電力の供給を受けて給電を行なうように構成される。コンセント装置330は、電圧100V又は200Vの交流電力を出力してもよい。充電器61は、コンセント装置330から充電ケーブル340を通じてインレット60に入力された電力を用いてバッテリ11を充電する。充電器61は電力変換回路を含む。この実施の形態では、コンセント装置330はAC/DC変換回路を備えず、充電器61(車載充電器)がAC/DC変換回路(インバータ)を備える。充電リレー62は、インレット60からバッテリ11までの電路の接続/遮断を切り替える。車両100は、充電器61の状態(たとえば、電流、電圧、及び温度)を監視するセンサモジュール61aをさらに備える。充電器61及び充電リレー62は、インレット60とバッテリ11との間に位置する。この実施の形態では、インレット60、充電器61、及び充電リレー62を含む充電ラインが、SMR12とPCU22との間に接続されている。しかしこれに限られず、バッテリ11とSMR12との間に充電ラインが接続されてもよい。
【0050】
充電ケーブル340は、プラグ341と、制御ボックス342と、コネクタ343とを備え、ケーブル内部に通信線及び電力線を含む。コンセント装置330は、プラグ341と着脱可能なコンセントを備える。プラグ341は、コンセント装置330のコンセントに接続され、接続されたコンセントから交流電力を受電する。コンセント装置330がプラグ341(入力端)に出力した交流電力は、制御ボックス342を経てコネクタ343(出力端)に出力される。
【0051】
車両100は、コネクタ343が着脱可能なインレット60を備える。プラグ341がコンセント装置330のコンセントに差し込まれ、コネクタ343が駐車状態の車両100のインレット60に接続されると、車両100がコンセント装置330を介して電力系統PS1と電気的に接続された状態(以下、「プラグイン状態」とも称する)になる。一方、たとえば車両100の走行中においては、車両100が電力系統PS1と電気的に接続されていない状態(以下、「プラグアウト状態」とも称する)になる。なお、車両100は、複数種の給電方式(たとえば、AC方式及びDC方式)に対応できるように複数のインレットを備えてもよい。
【0052】
充電ケーブル340の制御ボックス342は、制御装置及び電力変換回路(いずれも図示せず)を内蔵する。制御装置は、ケーブル内部の通信線を介して車両100と通信し、サーバ200,500,700とは通信しない。制御ボックス342内の電力変換回路によって適切な電圧及び電流に調整された交流電力がコネクタ343から出力される。プラグイン状態において、制御装置は、車両100からの指令に基づいて電力変換回路を制御し、コネクタ343に給電電力(たとえば、交流電力)を出力する。
【0053】
車両100は、外部充電(すなわち、車両外部からの電力によるバッテリ11の充電)を実行可能に構成される。プラグイン状態の車両100は、外部充電によって電力系統PS1の電力調整を行なうことができる。外部充電のための電力は、たとえば電力系統PS1からコンセント装置330及び充電ケーブル340を通じてインレット60に供給される。充電器61は、インレット60が受電した電力(たとえば、交流電力)をバッテリ11の充電に適した直流電力に変換し、変換された直流電力をバッテリ11へ出力する。
【0054】
PCU22は、バッテリ11から供給される電力を用いてMG20を駆動する。PCU22は、たとえばインバータ及びDC/DCコンバータを含む。MG20は、車両100の走行用モータとして機能する。MG20は、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG20は、PCU22によって駆動され、車両100の駆動輪を回転させる。また、MG20は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ11へ出力する。車両100は、MG20の状態(たとえば、電流、電圧、及び温度)を監視するモータセンサ21をさらに備える。なお、車両100が備える走行用モータの数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行用モータはインホイールモータであってもよい。
【0055】
SMR12は、バッテリ11からPCU22までの電路の接続/遮断を切り替える。車両100の走行時には、SMR12が閉状態(接続状態)にされ、充電リレー62が開状態(遮断状態)にされる。バッテリ11とインレット60との間で電力のやり取りが行なわれるときには、SMR12及び充電リレー62の両方が閉状態(接続状態)にされる。
【0056】
HMI81は、入力装置及び表示装置を含む。HMI81は、タッチパネルディスプレイを含んでもよい。HMI81は、メータパネル及び/又はヘッドアップディスプレイを含んでもよい。HMI81は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0057】
NAVI82は、タッチパネルディスプレイと、GPS(Global Positioning System)センサと、プロセッサと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、ユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。NAVI82は、GPSセンサを用いて車両100の位置を検出し、地図上に車両100の位置をリアルタイムで表示可能に構成される。NAVI82は、地図情報を参照して、車両100の現在位置から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なう。NAVI82は、OTA(Over The Air)によって地図情報を逐次更新してもよい。
【0058】
通信装置90は、各種通信I/Fを含んで構成される。ECU150は、通信装置90を通じて車両100の外部の装置と通信を行なう。通信装置90は、サーバ200及び500の各々と通信するための無線通信機を含む。通信装置90は、通信ネットワーク(たとえば、インターネットと無線基地局とによって構築される広域ネットワーク)を介してサーバ200及び500の各々と通信を行なう。無線通信機は、上記通信ネットワークにアクセス可能に構成される。無線通信機は、たとえばDCM(Data Communication Module)を含む。無線通信機は、5G又は6G(第5又は第6世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。車両100は、プラグイン状態とプラグアウト状態との両方においてサーバ500と無線通信を行なう。また、車両100は、走行中にもサーバ500と無線通信を行なう。車両100は、プラグイン状態においてサーバ200と無線通信を行なう。この実施の形態では、車両100が、サーバ200及び500の各々からの指令又は通知を上記無線通信機で受信する。
【0059】
携帯端末UTは、車両100のユーザによって携帯される端末である。この実施の形態では、携帯端末UTとして、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。スマートフォンはコンピュータを内蔵する。通信装置90は、車内又は車両周辺の範囲内に存在する携帯端末UTと直接通信するための通信I/Fを含む。通信装置90と携帯端末UTとは、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信を行なってもよい。なお、携帯端末UTとしては、任意の携帯端末を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ又はスマートグラス)、又は電子キーなども採用可能である。また、車両100と携帯端末UTとの通信方式としても任意の通信方式を採用可能である。
【0060】
携帯端末UTは、予めサーバ200,500に登録され、サーバ200,500と無線通信可能に構成される。携帯端末UTには所定のアプリケーションソフトウェア(以下、「モバイルアプリ」と称する)がインストールされている。サーバ200,500は、携帯端末との通信を開始する前に所定の認証を行ない、認証に成功した携帯端末のみと通信を行なう。これにより、サーバ200,500に登録されていない携帯端末が不正な通信を行なうことを抑制できる。車両100のユーザは、所定の認証情報(上記認証に成功するための情報)を携帯端末UTに入力することで、サーバ200,500との通信を開始できる。また、モバイルアプリに所定の認証情報を登録しておくことで、上記認証情報の入力を省略できる。
【0061】
携帯端末UTは、上記モバイルアプリを通じてサーバ200,500と情報のやり取りを行なうことができる。この実施の形態では、携帯端末UTが位置センサを備える。位置センサは、GPSを利用したセンサであってもよい。携帯端末UTは、ユーザの位置を示す情報を、定期的に又はサーバ500からの要求に応じて、サーバ500へ送信する。
【0062】
ECU150を含む車両システム(車両100を制御するシステム)のオン(作動)/オフ(停止)は、ユーザが起動スイッチ70を操作することによって切り替わる。起動スイッチ70は、たとえば車両100の車室内に設置される。起動スイッチ70がオン操作されることによって車両システムが起動する。また、車両システムが作動しているときに、起動スイッチ70がオフ操作されると、車両システムは停止状態になる。ただし、走行中の車両100においては、起動スイッチ70のオフ操作が禁止される。一般に、車両の起動スイッチは「パワースイッチ」又は「イグニッションスイッチ」などと称される。
【0063】
図3は、小売電気事業者による電力調達方法について説明するための図である。
図3を参照して、小売電気事業者は、たとえば電力市場と発電システム710と所定のDER(車群VGを含む)との少なくとも1つから電力を調達し、調達した電力を販売する。サーバ700は、小売電気事業者に帰属するコンピュータに相当する。サーバ700は、電力市場と発電システム710と車群VGとの各々から電力を調達可能に構成される。
【0064】
サーバ700(小売電気事業者)は、スポット市場(1日前市場)及び時間前市場(当日市場)で電力を調達してもよい。スポット市場及び時間前市場は、JEPX(日本卸電力取引所)のような卸電力取引所によって開設及び運営される。各市場では、電力を商品とした取引きが行なわれる。各商品は、たとえば入札方式によって売買される。各市場では、コマ単位の商品が取引きされる。コマは、単位時間ごとに1日が分割されたフレームである。卸電力取引所では、1日を30分単位に区切った48コマについて取引きが行なわれる。スポット市場に対する入札は、対象コマの前日10時で締め切られる。一方、時間前市場は、対象コマの前日17時に開場し、対象コマ開始時刻の1時間前に閉場する。
【0065】
サーバ700(小売電気事業者)は、発電システム710から電力を調達してもよい。たとえば、サーバ700は、直接的に発電システム710を制御することによって、発電システム710から電力を調達してもよい。あるいは、サーバ700は、発電システム710の発電制御を他のサーバ(たとえば、小売電気事業者と相対契約を結んだ発電事業者に帰属するサーバ)に要求してもよい。
【0066】
この実施の形態では、サーバ700(小売電気事業者)が、所定のDERから電力を調達する。所定のDERは、車群VGを含み、車群VG以外のリソースをさらに含んでもよい。サーバ700が車群VGから電力を調達する場合には、車群VGの制御を管理装置1000に要求する。車群VGは、複数の車両を含み、管理装置1000(サーバ200及び500)によって管理される。サーバ200は、プロセッサ201と、記憶装置202と、通信装置203と、HMI204とを備える。この実施の形態では、サーバ200が、本開示に係る「計画部」、「管理部」、「予測部」、「決定部」、「送信部」、及び「修正部」として機能する。この実施の形態では、記憶装置202に記憶されたプログラムをプロセッサ201が実行することによって、上記各部が具現化される。ただしこれに限られず、上記各部は、サーバ200が備えるハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0067】
車群VGは、前述した車両100(
図2)を含む。この実施の形態では、車群VGに含まれる各車両が、電力系統PS1(
図1)と電気的に接続可能に構成され、エリアPS2(
図1)内で電力系統PS1から供給される電力を用いて充電可能な蓄電装置を備える。車群VGに含まれる各車両は、蓄電装置を備えるxEV(電動車両)であり、より詳しくは、個人が所有する車両(POV)である。車群VGに含まれる車両の数は、10台以上100台未満であってもよいし、100台以上500台未満であってもよいし、500台以上であってもよい。車群VGにおける車両100と他の車両との構成は同じでも異なってもよい。図示していないが、車両100以外の各車両のユーザも、携帯端末UTに準ずる携帯端末を携帯している。各車両ユーザに携帯される携帯端末は、車両ユーザごとに登録された「ユーザ端末」に相当する。
【0068】
サーバ200は、アグリゲータに帰属するコンピュータに相当する。アグリゲータは、複数の分散型エネルギーリソース(以下、「DER(Distributed Energy Resources)」とも称する)を束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者である。車群VGに含まれる各車両は、DERとして機能し得る。サーバ200は、複数のDERを遠隔・統合制御することによって、これらのDERをVPP(仮想発電所)として機能させてもよい。この実施の形態に係るアグリゲータは電動車充電制御者に相当する。なお、サーバ500は、アグリゲータに帰属してもよいし、自動車メーカに帰属してもよい。
【0069】
サーバ200は、複数のDERをVPPとして統合制御するために、各DERに対してDR(デマンドレスポンス)を実施してもよい。DRにより、DERに電力系統PS1の電力調整が要請される。サーバ200は、DRを利用して、サーバ700から要請された電力系統PS1の電力調整、又は電力市場で落札した電力系統PS1の電力調整を、複数のDERに行なわせてもよい。
【0070】
DERがDR(電力調整)に参加することによって、電力系統PS1に柔軟性及びアカデシーを付与することができる。DRに参加するDERの管理者は、サーバ200にリモート制御を許可する。サーバ200は、リモート制御により、電力系統PS1の電力調整のための充電、電力消費、又は放電をDERに行なわせることができる。たとえば、車両100において、ECU150がサーバ200からの指令に従って充電器61の制御を実行することで、電力系統PS1の電力調整が行なわれる。ただし、サーバ200がDERへ指令を送信しても、電力調整のためのDERの準備が完了していなければ、DERはリモート制御による電力調整を行なうことができない。このため、DRに参加するDERの管理者には、DRの開始前にDERの準備を完了させておくことが要求される。
【0071】
なお、電力調整の種類は任意である。電力調整は、たとえば需給調整、電源安定化、負荷追従、周波数調整のいずれかであってもよい。DERは、リモート制御によって電力系統PS1の調整力として動作してもよい。調整力は「予備力」と称されることもある。
【0072】
図4は、上述のDRが実施されるときの、管理装置1000、サーバ700、車両、及びユーザ端末の各々による処理について説明するための図である。以下では、
図4中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0073】
図1~
図3とともに
図4を参照して、S1では、車群VGに含まれる各車両と、それら各車両のユーザとが、サーバ200,500,700の各々に登録される。登録された個々の車両には固有の車両ID(車両の識別情報)が付与され、登録された個々のユーザには固有のユーザID(ユーザの識別情報)が付与される。ユーザIDは、ユーザ端末(たとえば、携帯端末UT)の識別情報としても機能する。車両IDは、VIN(Vehicle Identification Number)であってもよい。
【0074】
この実施の形態では、車群VGに含まれる各車両のユーザ(管理者)が、予めアグリゲータ及び小売電気事業者の各々と契約を結び、アグリゲータが小売電気事業者からの要請に応じてDRを実施し、DRに参加した車両ユーザに対して、小売電気事業者から所定のインセンティブが付与される。上記の登録(S1)は契約時に行なわれてもよい。
【0075】
この実施の形態では、サーバ200,500,700が、共通の識別情報(車両ID及びユーザID)を用いて、車両及びそのユーザを特定する。サーバ200,500,700の各々は、登録された各車両に関する情報(以下、「車両情報」とも称する)と、登録された各ユーザに関する情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)とを保有する。各サーバは、ユーザ情報として、ユーザに帰属する車両の識別情報(車両ID)と、ユーザ端末のアドレスと、ユーザが獲得したインセンティブを示す情報とを保有する。また、各サーバは、車両情報として、車両の仕様(たとえば、充電に関するスペック)及び充電場所(電力供給地点)を保有する。車両情報、ユーザ情報は、それぞれ車両ID、ユーザIDに紐付けられた状態で各サーバの記憶装置に記憶されている。このため、各サーバは、指定された車両、ユーザにそれぞれ対応する車両情報、ユーザ情報を抽出できる。
【0076】
上記のように、サーバ200,500,700の各々には、車群VGに含まれる各車両の充電場所が登録されている。充電場所はエリアPS2内に位置する。
図1に示した車両100の充電場所は、車両ユーザの自宅(住宅300)である。ただしこれに限られず、充電場所は、エリアPS2内の任意の位置に設定できる。たとえば、充電場所は、車両ユーザの職場であってもよい。充電場所は、座標値(緯度及び経度)によって特定されてもよいし、充電場所に設置された電力量計(たとえば、
図1に示したスマートメータ310)の識別情報によって特定されてもよい。また、充電場所に加えて、充電場所のブレーカ容量(たとえば、
図1に示した分電盤320のブレーカ容量)が、各サーバに登録されてもよい。
【0077】
S21では、車群VGに含まれる各車両及びそれらのユーザに帰属する各ユーザ端末が、車両情報及びユーザ情報をサーバ500へ送信する。サーバ500は、各車両と周期的に通信を行ない、各車両から車両情報を逐次取得する。サーバ500は、各ユーザ端末とも周期的に通信を行ない、各ユーザ端末からユーザ情報を逐次取得する。こうした車両情報及びユーザ情報は、サーバ500の記憶装置に保存され、逐次更新される。
【0078】
各ユーザ端末からサーバ500へ送信されるユーザ情報には、ユーザの位置と、ユーザの行動に関するデータ(たとえば、毎日のユーザの行動に関してユーザの位置と時刻とを紐付けたデータ)とが含まれる。
【0079】
各車両からサーバ500へ送信される車両情報には、車両の位置と、蓄電装置の状態(たとえば、電圧、電流、温度、及びSOC)と、系統接続状態(プラグイン状態/プラグアウト状態)と、車両システムの状態(オン/オフ)と、ナビゲーションシステムに設定された情報(たとえば、目的地までの走行ルート)と、車両の移動に関するデータ(たとえば、毎日の車両の移動に関して車両の位置と時刻とを紐付けたデータ)とが含まれる。
【0080】
この実施の形態では、車両100の走行中において、車両100の位置とバッテリ11のSOCとの各々が、リアルタイムで車両100からサーバ500へ逐次送信される。また、車両100においてプラグイン状態とプラグアウト状態とが切り替わったタイミングで、車両100からサーバ500へ最新の系統接続状態が送信される。また、車両100において車両システムのオン/オフが切り替わったタイミングで、車両100からサーバ500へ最新の車両システムの状態が送信される。また、NAVI82に目的地が設定されると、NAVI82によって探索された走行ルートが車両100からサーバ500へ送信される。
【0081】
サーバ200は、サーバ500から上述の車両情報及びユーザ情報を取得できる。サーバ500は、たとえば定期的に又はサーバ200からの要求に応じて、サーバ200へ車両情報及びユーザ情報を送信する。
【0082】
S22では、サーバ200が、上述の車両情報及びユーザ情報を用いて、車群VGに含まれる各車両の移動予測を行なう。サーバ200は、サーバ500から新しい情報を受信するたびに予測を実行する。サーバ200は、最新の情報に基づいて予測を行なうことで、予測精度を高める。
【0083】
サーバ200は、ナビゲーションシステムに設定された情報から車両の走行計画を取得してもよい。走行計画の例としては、出発地、出発地からの発車時刻、目的地、目的地への到着時刻、目的地までの走行ルートが挙げられる。サーバ200は、車両の走行計画から、車両の移動スケジュール(今後の車両の位置の推移)を予測できる。サーバ200は、車両システムがオンからオフに切り替わったときに、車両が駐車状態になったと推定してもよい。サーバ200は、車両の駐車状態が所定時間以上継続した場合に、その車両はユーザの自宅又は職場に存在すると推定してもよい。サーバ200は、車両システムがオフからオンに切り替わったときに、所定時間後に車両が発車すると予測してもよい。サーバ200は、車両の位置情報及びSOC情報を用いて、車両の位置を追跡しながら、車両の目的地への到着時刻及び到着時のSOCを予測してもよい。サーバ200は、車両の移動に関する履歴データ(たとえば、気象情報、渋滞情報、及び曜日によって区別して管理される過去の位置データ)から車両の移動スケジュールを予測してもよい。
【0084】
サーバ200は、ユーザの行動スケジュール(今後のユーザの位置の推移)を予測して、予測されるユーザの行動スケジュールから車両の移動スケジュールを予測してもよい。サーバ200は、車両及びユーザの各々の位置情報に基づいて、ユーザが車両に乗っているか否かを判断してもよい。サーバ200は、ユーザの位置情報を用いて、車両を降りた後のユーザの位置を追跡しながら、今後のユーザの行動を予測してもよい。サーバ200は、ユーザの行動に関する履歴データ(たとえば、気象情報、渋滞情報、及び曜日によって区別して管理される過去の位置データ)からユーザの行動スケジュールを予測してもよい。
【0085】
S3では、サーバ700が、DRを実施する日に関するCO2排出情報を取得し、取得したCO2排出情報をサーバ200へ送信する。以下、S3の処理について説明する。
【0086】
サーバ700は、まず、DRを実施する日を決定する。以下では、ここで決定された日を、「対象日」とも称する。対象日は、「DR当日」に相当する。
【0087】
サーバ700は、1日を分割した48コマの各々で電力系統PS1に関する同時同量を達成するためにDRを実施してもよい。サーバ700は、48コマの各々について電力系統PS1に関してインバランスが生じるか否かを判断し、少なくとも1つのコマでインバランスが生じると予測される日を、上記対象日としてもよい。ただしこれに限られず、対象日の決め方(ひいては、DRの目的)は任意である。サーバ700は、市場取引で利益を得るためにDRを実施してもよいし、停電を防ぐためにDRを実施してもよいし、環境負荷を低減するためにDRを実施してもよい。
【0088】
次に、サーバ700は、対象日(DRを実施する日)に調達する予定の電力について各種電源の割合(電源構成)を取得する。電源種別は、発電方式によって分類されてもよい。前述したとおり、小売電気事業者は、たとえば電力市場と発電システム710とDERとの少なくとも1つから電力系統PS1のための電力を調達する(
図3参照)。電力の調達は所定の時間単位(コマ)ごとに行なわれる。このため、1日の電源構成は、時間帯ごとに異なり得る。
【0089】
そして、サーバ700は、取得した時間帯ごとの電源構成に基づいて、時間帯ごとのCO2排出係数を算出する。CO2排出係数は、電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を、単位電力量あたりに換算して示す係数である。生成された電力量にCO2排出係数を乗算すると、その電力の生成過程で排出された二酸化炭素量が得られる。CO2排出情報は、時間帯ごとのCO2排出係数を示す情報に相当する。この実施の形態では、CO2排出情報が、本開示に係る「第2情報」の一例に相当する。
【0090】
以下、
図5及び
図6を用いて、小売電気事業者(サーバ700)によって調達される予定の1日の電力の電源構成及びCO
2排出情報の具体例について説明する。
図5は、小売電気事業者によって調達される電力に関する情報の第1例を示す図である。
図6は、小売電気事業者によって調達される電力に関する情報の第2例を示す図である。
【0091】
図5及び
図6の各々において、「需要」は、対象日においてエリアPS2で使用される電力系統PS1の需要電力量(MWh)を示している。需要電力量は、サーバ200,500,700に登録された各充電場所で使用される電力量の合計値であってもよい。また、「火力」は、対象日において小売電気事業者が火力発電所711から調達予定の電力量(MWh)を示している。「水力」、「太陽」、「風力」はそれぞれ、対象日において小売電気事業者が再エネ発電所712(水力発電所、太陽光発電所、風力発電所)から調達予定の電力量(MWh)を示している。「揚水」は、対象日において小売電気事業者が揚水発電所713から調達予定(正の値)又は揚水発電所713に貯蔵予定(負の値)の電力量(MWh)を示している。「連系線」は、対象日において小売電気事業者が電力網PG2から調達予定(正の値)又は電力網PG2に送電予定(負の値)の電力量(MWh)を示している。これらの電力量の実績値は、
図1に示したエリアPS2内の各電力量計(スマートメータ310を含む)及び検出器711a~714aによって計測される。
【0092】
この実施の形態では、サーバ700が、対象日の前日又はそれよりも前に、
図5及び
図6の各々に示す需要、火力、水力、太陽、風力、揚水、及び連系線の各々の電力量を予測する。サーバ700は、たとえば、過去の需要履歴(たとえば、季節、気象情報、及び時間帯によって区別して管理される過去の需要電力量の実績データ)に基づいて、時間帯ごとの需要電力量を予測してもよい。小売電気事業者は、対象日の前日又はそれよりも前に、発電システム710及び電力網PG2の各々から電力を調達するための電力取引(売買契約)を行なってもよい。売買契約は、電力市場で約定されてもよいし、相対契約であってもよい。サーバ700は、電力取引の結果に基づいて、時間帯ごとの火力、揚水、及び連系線の各々の電力量を予測してもよい。再エネ発電所712による発電電力量は、気象条件によって変動し得る。このため、サーバ700は、気象情報(たとえば、天気、雲の動き、及び気温)を用いて、時間帯ごとの水力、太陽、及び風力の各々の電力量を予測してもよい。サーバ700は、AI(人工知能)を用いた機械学習により得た学習済みモデルを用いて、上記予測を行なってもよい。
【0093】
図5及び
図6の各々において、「環境指数」は、CO
2排出係数(kg-CO
2/kWh)に相当する。この実施の形態では、電力網PG2が火力主体の電源構成を有する。そこで、
図5及び
図6に示す各種電源のうち、火力発電所711及び電力網PG2をCO
2排出源とみなす。サーバ700は、式「CO
2排出係数=係数W×(火力+連系線)/総供給電力量」に従って時間帯ごとのCO
2排出係数を算出する。上記式において、「火力+連系線」は、火力発電所711及び電力網PG2から供給される合計電力量に相当する。「総供給電力量」は、全ての電源(火力、水力、太陽、風力、揚水、及び連系線)から供給される総電力量に相当する。係数Wは、CO
2排出源で単位電力量を生成するときに排出される二酸化炭素量を示す係数である。サーバ700は、CO
2排出源から供給される電力量を総供給電力量で除算した値に係数Wを乗算することによってCO
2排出係数を算出する。係数Wは、CO
2排出源に関する実験又はシミュレーションにより予め求められてもよい。また、サーバ700は、統計データ(たとえば、ビッグデータ)を利用し、公知の機械学習技術又は人工知能によって、係数Wを求めてもよい。
【0094】
なお、CO2排出係数の算出方法は、上記に限られない。たとえば、上記方法では、電力量を二酸化炭素量に換算する係数として、火力発電所711と電力網PG2とで共通の係数Wが使用されている。しかしこれに限られず、火力発電所711と電力網PG2とで異なる係数が使用されてもよい。また、火力発電所の種別(石炭火力、LNG火力、石油火力など)によって異なる係数が使用されてもよい。また、電力網PG2がRE100(再エネ100%)の電力網である形態(変形例)においては、電力網PG2がCO2排出源にならないため、火力発電による電力量のみをCO2排出源とみなしてもよい。
【0095】
図5に示すデータ例1では、天気が曇りであり、太陽光による発電量は少ない。このため、揚水発電所713に対するエネルギー貯蔵はほとんど行なわれていない。一方、
図6に示すデータ例2では、天気が快晴であり、日中(昼頃)において、太陽光による発電量が多く、CO
2排出係数(ひいては、環境負荷)が小さくなっている。そして、多くの余剰電力が揚水発電所713に貯蔵されている。サーバ700は、たとえばDRを実施することにより、こうした余剰電力を揚水発電所713に貯蔵させる代わりに、車群VGに貯蔵させることができる。
【0096】
サーバ700は、上記のように取得したCO
2排出情報をサーバ200へ送信する。なお、CO
2排出情報の送信間隔は、1日ごとに限られず、より長い間隔(たとえば、1週間ごと)であってもよい。
図5及び
図6に示したデータ例1,2では、CO
2排出情報が1時間ごとのCO
2排出係数を示している。しかしこれに限られず、CO
2排出情報は、電力市場におけるコマの長さに合わせて30分ごとのCO
2排出係数を示してもよい。また、上記CO
2排出係数に代えて、調整後CO
2排出係数(CO
2排出係数に非化石証書などの環境価値による調整を反映した値)が採用されてもよい。
【0097】
再び
図4を参照して、S4では、サーバ200が、対象日の前日に、翌日(対象日)の車群VGの成行充電量を時間帯ごとに予測し、予測された時間帯ごとの成行充電量をサーバ700へ送信する。車群VGの成行充電量は、DR(電力調整)が実施されないと仮定した場合の車群VGの充電量に相当する。以下、
図7及び
図8を用いて、成行充電量の算出方法について説明する。
【0098】
図7は、携帯端末UTが表示する充電モード設定画面を示す図である。
図7を参照して、携帯端末UTにおいてモバイルアプリが起動すると、モバイルアプリがユーザ認証(ログイン)を要求する。ユーザは、所定の認証情報を携帯端末UTに入力することによってログインできる。携帯端末UTは、モバイルアプリにログインしたユーザに関するユーザ情報をサーバ200又は500から取得することができる。ログイン後、携帯端末UTは、充電モード設定画面Sc1を表示する。
【0099】
充電モード設定画面Sc1は、操作部OP11~OP14と、情報部IN11~IN13とを含む。情報部IN11は、バッテリ11の現在のSOCを示す。情報部IN12は、バッテリ11の充電状態(たとえば、充電待ち/充電中/充電完了のいずれか)を示す。情報部IN13は、次回充電に関する情報(たとえば、充電終了時刻、及び充電終了時SOC)を示す。この実施の形態では、情報部IN13に表示される次回充電に関する情報が、車両100の利用予定に関する情報(第1情報)に相当する。詳しくは、次回充電に関する充電終了時刻は、車両100の利用開始予定時刻(出発予定時刻)に相当する。次回充電に関する充電終了時SOCは、次回充電制御におけるバッテリ11の目標SOCに相当する。
【0100】
ユーザは、操作部OP11(設定ボタン)を操作することにより、車両100の利用予定を携帯端末UTに設定できる。具体的には、充電モード設定画面Sc1(タッチパネル画面)においてユーザが操作部OP11に触れると、利用予定設定画面Sc2が表示される。利用予定設定画面Sc2は、操作部OP21及びOP22(ドラムロール)と、操作部OP23(決定ボタン)とを含む。ユーザは、操作部OP21(ドラムロール)によって車両100の出発予定時刻を入力できる。入力された出発予定時刻は、次回充電の充電終了時刻として設定される。また、ユーザは、操作部OP22(ドラムロール)によって出発予定時刻の目標SOC(充電終了時SOC)を入力できる。これらの情報が入力された後に操作部OP23(決定ボタン)が操作されると、入力された内容で次回充電が携帯端末UTに設定(予約)されるとともに、設定された次回充電に関する情報が情報部IN13に表示される。
【0101】
ユーザは、操作部OP12(キャンセルボタン)を操作することにより、携帯端末UTに設定された車両100の利用予定をキャンセルできる。次回充電が設定されていない場合には、携帯端末UTは、次回充電が設定されていないことを知らせるメッセージを情報部IN13に表示してもよい。
【0102】
この実施の形態では、
図2に示した車両100のECU150が、複数種の充電モードのうちユーザからの入力に応じた充電モードが設定されるように構成される。具体的には、携帯端末UTが、充電モード設定画面Sc1において、ユーザからの充電モードの入力を受け付け、入力された充電モードを車両100(ECU150)に設定する。
図8は、車両100に設定可能な3種類の充電モードについて説明するための図である。
【0103】
図7及び
図8を参照して、ユーザは、
図7に示した充電モード設定画面Sc1の操作部OP13及びOP14(トグルスイッチ)により、3種類の充電モードから任意の充電モードを選んで車両100に設定できる。たとえば、操作部OP13及びOP14の両方がOFF状態であることは、ユーザが第1充電モード(以下、「通常充電モード」とも称する)を選んだことを意味する。操作部OP13がON状態であり、かつ、操作部OP14がOFF状態であることは、ユーザが第2充電モード(以下、「スマート充電モード」とも称する)を選んだことを意味する。操作部OP13がOFF状態であり、かつ、操作部OP14がON状態であることは、ユーザが第3充電モード(以下、「おまかせ充電モード」とも称する)を選んだことを意味する。なお、操作部OP13と操作部OP14とは相互に連動する。操作部OP13がON操作されると操作部OP14がOFF状態になり、操作部OP14がON操作されると操作部OP13がOFF状態になる。携帯端末UTに次回充電が設定されていない場合には、スマート充電モードへの移行操作(たとえば、操作部OP13のON操作)が禁止される。
【0104】
携帯端末UTは、ユーザが選んだ充電モードを車両100(ECU150)に設定する。携帯端末UTは、操作部OP13及びOP14によって設定された充電モードを、設定された次回充電に関する情報(出発予定時刻及び目標SOC)とともに、車両100へ送信する。車両100が受信した充電モード及び充電予定(たとえば、次回充電の充電終了時刻及び目標SOC)は、ECU150に設定される。ECU150は、設定された充電モードに従ってバッテリ11の充電制御を行なう。この実施の形態に係るECU150は、本開示に係る「充電制御装置」の一例に相当する。車群VGに含まれる各車両は、ECU150に準ずる態様で以下に説明する充電制御を行なう充電制御装置を備える。
【0105】
サーバ200及び500の少なくとも一方は、車群VGに含まれる各車両、又は各車両のユーザ端末から、充電制御装置に設定された充電モード、及び次回充電に関する情報(出発予定時刻及び目標SOC)を受信する。以下では、車群VGのうち、充電制御装置に通常充電モードが設定された車両を「第1モード車両」、充電制御装置にスマート充電モードが設定された車両を「第2モード車両」、充電制御装置におまかせ充電モードが設定された車両を「第3モード車両」とも称する。
【0106】
第1モード車両は、サーバ200によるリモート制御を許可せず、ローカル制御で蓄電装置の充電を実行する。車両100が第1モード車両である場合には、ECU150に次回充電が設定されているか否かに応じて、異なる充電制御が実行される。通常充電モードが設定され、かつ、次回充電が設定されていないECU150(タイマ設定無しのECU)は、線L1で示すように即時充電を実行する。即時充電は、車両がプラグイン状態になると、すぐに開始される外部充電である。この実施の形態に係る即時充電は、蓄電装置(たとえば、バッテリ11)が満充電状態になると終了する。
【0107】
通常充電モード及び次回充電が設定されたECU150(タイマ設定有りのECU)は、線L2で示すように、設定された次回充電を実行する。
図8では、ユーザによってECU150に設定された次回充電の充電終了時刻及び目標SOCが、時間及びSOCの二次元グラフ中に座標値S
A(終了時刻A1及び目標値A2)で示されている。座標値S
Aによってユーザ要件が規定される。座標値S
Aに従うユーザ要件は、バッテリ11のSOCが終了時刻A1に目標値A2以上になっていることである。タイマ設定有りのECUは、終了時刻A1の直前の期間に充電を実行する。バッテリ11のSOCが終了時刻A1に目標値A2に達するように充電が開始される。これにより、ユーザ要件が満たされる。終了時刻A1の直前に充電が実行されることで、バッテリ11のSOCが高い状態で車両100が放置される時間が短くなり、バッテリ11の劣化が抑制される。充電量A3は、座標値S
Aに従う充電によってバッテリ11に入力される電力量を示している。
【0108】
第2モード車両がDRに参加する場合には、サーバ200がリモート制御で第2モード車両の蓄電装置のスマート充電を実行する。スマート充電モードが設定されたECU150は、車両100の帰宅時(プラグイン時点)から終了時刻A1までのスマート充電期間A4において、バッテリ11のスマート充電をサーバ200に許可する。第2モード車両のスマート充電では、座標値SAに従うユーザ要件が満たされる限り、サーバ200が自由に充電制御を行なうことができる。バッテリ11のSOCは、スマート充電により、車両100の帰宅時のSOCから充電量A3の分だけ上昇する。
【0109】
サーバ200が第2モード車両をDRに参加させない場合には、サーバ200は第2モード車両をリモート制御しない。この場合、第2モード車両は、第1モード車両と同様の充電制御を実行する。
【0110】
おまかせ充電モードが設定されたECU150は、充電予定の設定と、設定された充電予定に基づくバッテリ11のスマート充電とを、サーバ200に許可する。サーバ200は、前述した車両100の移動予測(
図4のS22)の結果を用いて、たとえば以下に説明するように車両100の充電予定(次回充電の充電終了時刻及び目標SOC)を設定する。サーバ200は、AI(人工知能)を用いた機械学習により得た学習済みモデルを用いて、車両100の移動予測を行なってもよい。学習が完了するまでは、おまかせ充電モードへの移行操作(たとえば、
図7に示した操作部OP14のON操作)が禁止されてもよい。携帯端末UTは、移動予測のための学習が完了したら、おまかせ充電モードの概要説明をポップアップ表示してもよい。
【0111】
サーバ200は、第3モード車両に関しては、車両の移動予測の結果を用いて、車両の利用予定(利用開始予定時刻、及び次の利用で使用する電力量)を取得し、得られた利用予定に対応する充電予定を充電制御装置に設定する。車両100が第3モード車両である場合には、サーバ200は、車両100に関して、予測された移動スケジュールから、利用開始予定時刻と、次の利用で使用される電力量(たとえば、次の走行に必要な電力量)とを取得する。そして、サーバ200は、取得された利用開始予定時刻を次回充電の充電終了時刻として設定し、次の利用に合った電力量(過不足のない電力量)がバッテリ11に蓄えられるように、次回充電の目標SOCを設定する。
図8では、サーバ200によってECU150に設定された次回充電の充電終了時刻及び目標SOCが、時間及びSOCの二次元グラフ中に座標値S
B(終了時刻B1及び目標値B2)で示されている。すでに充電予定(座標値S
A)が設定されている場合には、サーバ200は、充電予定を座標値S
Aから座標値S
Bに変更する。座標値S
Bによってユーザ要件が規定される。座標値S
Bに従うユーザ要件は、バッテリ11のSOCが終了時刻B1に目標値B2以上になっていることである。
【0112】
第3モード車両がDRに参加する場合には、サーバ200がリモート制御で第3モード車両の蓄電装置のスマート充電を実行する。車両100が第3モード車両である場合には、サーバ200は、車両100の帰宅時(プラグイン時点)から終了時刻B1までのスマート充電期間B4において、バッテリ11のスマート充電をリモート制御で実行する。第3モード車両のスマート充電では、座標値SBに従うユーザ要件が満たされる限り、サーバ200が自由に充電制御を行なうことができる。バッテリ11のSOCは、スマート充電により、車両100の帰宅時(プラグイン時点)のSOCから充電量B3の分だけ上昇する。
【0113】
サーバ200が第3モード車両をDRに参加させない場合には、サーバ200は第3モード車両をリモート制御しない。この場合、第3モード車両は、第1モード車両と同様の充電制御を実行する。
【0114】
サーバ200は、上述のスマート充電によってDRを実施する。以下、車群VGのうちDRに参加しない車両を、「非VPP車両」と称する。たとえば、第1モード車両は、DRに参加しないため、非VPP車両になる。また、車群VGのうち、DRに参加する車両を「VPP車両」と称する。
【0115】
再び
図4を参照して、この実施の形態では、車群VGに含まれる全ての車両が非VPP車両であると仮定した場合の車群VGの充電量が、車群VGの成行充電量(S4)に相当する。車群VGの充電量は、車群VGに含まれる全ての車両による外部充電の電力量の合計値を意味する。非VPP車両は、前述した通常充電モードの充電制御を実行する。サーバ200は、車群VGに含まれる各車両に関して、タイマ設定(次回充電の設定)の有無と、設定された次回充電の充電終了時刻及び目標SOCとに基づいて、通常充電モードの充電制御に従う充電量(成行充電量)を時間帯ごとに求める。この実施の形態では、対象日を分割した48コマの各々について成行充電量が算出される。そして、サーバ200は、各車両について得られた成行充電量を時間帯ごとに加算することにより、対象日における車群VGの時間帯ごとの成行充電量(成行充電計画)を算出する。その後、サーバ200は、算出された車群VGの成行充電計画をサーバ700へ送信する。
【0116】
S5では、サーバ700が、サーバ200から受信した車群VGの成行充電計画と、対象日の需給予測及び調達計画(たとえば、
図5及び
図6参照)とに基づいて、対象日の各時間帯についてサーバ200(アグリゲータ)にDRを要請するか否かを決定する。サーバ700は、電力系統PS1に関する時間帯ごとの需給バランスをチェックし、インバランスが生じると予測される時間帯についてDR(インバランスを解消するための上げDR又は下げDR)をサーバ200に要請してもよい。サーバ700は、サーバ200に要請するDRに関する情報(以下、「DR情報」)を含むDR要請信号を、サーバ200へ送信する。サーバ700は、DR要請信号を送信することにより、電力系統PS1の電力調整をサーバ200に要請する。サーバ700、DR要請信号は、それぞれ本開示に係る「要請装置」、「要請信号」の一例に相当する。
【0117】
DR情報は、要請される電力調整の内容を時間帯ごとに示す。詳しくは、DR情報は、DR要請の有無を時間帯ごとに示す。また、DR情報は、DR要請有りの時間帯については、要請されるDRの種類も示す。この実施の形態に係るDR情報は、対象日を分割した48コマの各々について、DR無し/上げDR/下げDRのいずれかを示す。上げDRは、基本的には需要増加を要請するDRである。ただし、要請を受けるDERが発電設備である場合には、上げDRはDERに供給抑制を要請することもある。一方、下げDRは、需要抑制又は逆潮流を要請するDRである。なお、DR情報は、DRの目的(CO2低減、コスト低減、需給逼迫など)と、DR要請量と、DRの優先順位と、コスト情報との少なくとも1つをさらに示してもよい。
【0118】
S6では、サーバ200が、車群VGに含まれる各車両の充電計画を決定し、決定された各車両の充電計画に基づいて、車群VGの時間帯ごとのDR可能量を決定する。そして、サーバ200は、決定された車群VGの時間帯ごとのDR可能量をサーバ700へ送信する。車群VGのDR可能量は、車群VGが電力系統PS1のために調整可能な電力量に相当する。以下、S6の処理について説明する。
【0119】
サーバ200は、車群VGに含まれる第1モード車両に関しては、前述した通常充電モードの充電計画(すなわち、ユーザが設定した充電予定に従う充電計画)を、対象日の充電計画として決定する。サーバ200は、前述した車両の移動予測(S22)の結果を用いて、車群VGに含まれる各車両の対象日の帰宅時刻(プラグイン時刻)を予測する。また、サーバ200は、サーバ700から受信したDR要請信号(S5)と、車両の利用予定に関する情報(たとえば、
図8に示した座標値S
A又はS
B)と、CO
2排出情報(S3)とを用いて、車群VGに含まれる第2及び第3モード車両の各々の対象日の充電計画(より特定的には、スマート充電計画)を決定する。スマート充電計画は、第2又は第3モード車両がDRに参加するときに実行されるスマート充電の予定を示す。車群VGに含まれる各車両の充電計画は、本開示に係る「電力調整計画」の一例に相当する。
【0120】
具体的には、サーバ200は、車群VGのうち第2モード車両については、ユーザによって充電制御装置に設定された終了時刻A1(利用開始予定時刻)及び目標値A2(目標SOC)と、CO
2排出情報とを用いて、対象日のスマート充電計画を決定する(
図8参照)。サーバ200は、車群VGのうち第3モード車両については、移動予測の結果を用いて終了時刻B1(利用開始予定時刻)及び目標値B2(目標SOC)を充電制御装置に設定し、設定された終了時刻B1及び目標値B2と、CO
2排出情報とを用いて、対象日のスマート充電計画を決定する(
図8参照)。
【0121】
この実施の形態に係るサーバ200は、上げDRが要請される時間帯(DR要請信号が電力需要の増加を要請する時間帯)に車群VGの充電量(全ての車両の総充電電力量)が車群VGの成行充電量(基準値)よりも多くなり、下げDRが要請される時間帯(DR要請信号が電力需要の低減を要請する時間帯)に車群VGの充電量(全ての車両の総充電電力量)が車群VGの成行充電量(基準値)よりも少なくなるように、車群VGに含まれる各車両の対象日の充電計画を決定する。また、サーバ200は、所定のユーザ要件と所定の環境要件との両方が満たされるように、車群VGに含まれる第2及び第3モード車両の各々の対象日のスマート充電計画を決定する。この実施の形態では、車群VGに含まれる全ての車両において蓄電装置のSOCが利用開始予定時刻に目標SOC以上になっている場合に、上記ユーザ要件が満たされる。また、車群VGに含まれる全ての車両の充電計画で使用される電力(充電電力)の生成過程で排出された二酸化炭素量の合計値が所定の目標レベル以下になっている場合に、上記環境要件が満たされる。
【0122】
サーバ200は、第2及び第3モード車両の各々に関して、上記ユーザ要件が満たされるように各車両の利用予定に合わせてスマート充電計画を調整する。一方、第1モード車両については、前述した通常充電モードの充電制御が実行されるため、ユーザ要件は満たされる。また、サーバ200は、第1モード車両の利用予定(ひいては、第1モード車両の充電計画)と、CO2排出情報(S3)とに基づいて、第1モード車両の充電計画で使用される電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を取得できる。サーバ200は、第2及び第3モード車両の各々に関して、上記環境要件が満たされるように各車両のスマート充電計画(すなわち、時間帯ごとの充電量)を調整する。たとえば、サーバ200が、各車両のスマート充電計画について、CO2排出係数が大きい時間帯の充電量を小さくしたり、CO2排出係数が小さい時間帯の充電量を大きくしたりすることで、電力の環境負荷が小さくなり、上記環境要件が満たされやすくなる。
【0123】
上記環境要件における目標レベルは固定値であってもよい。あるいは、サーバ200は、電気料金に応じて目標レベルを可変設定してもよい。サーバ200は、電気料金の単価(たとえば、単位電力量あたりの電気料金)が高いほど目標レベルを高くしてもよい。また、サーバ200は、各車両の充電計画の決定に先立ち、電力の環境負荷を小さくするための車両の利用予定の変更を、当該車両のユーザに促してもよい。たとえば、サーバ200は、車両の利用予定を電力の環境負荷が小さくなるように変更することを要請する通知を、ユーザ端末へ送信してもよい。
【0124】
なお、各車両の充電計画の決定方法は上記に限られない。たとえば、サーバ200は、ユーザ要件を満たし、かつ、各車両の充電計画で使用される電力の生成過程で排出された二酸化炭素量の合計値が最も少なくなるように、車群VGに含まれる各車両の充電計画を決定してもよい。あるいは、サーバ200は、上述のDR情報、ユーザ要件、及び環境要件に加えて、電気料金に関するコスト情報をさらに用いて、各車両の充電計画を決定してもよい。サーバ200は、環境負荷と電気料金との総合的な評価結果に基づいて、各車両の充電計画を決定してもよい。サーバ200は、ユーザ要件と環境要件との両方を満たしつつ各車両の充電計画に従う充電にかかる電気料金の合計値が最も安くなるように、各車両の充電計画を決定してもよい。サーバ200は、目的関数を用いて、各車両の充電計画を作成してもよい。サーバ200は、AI(人工知能)を用いた機械学習により得た学習済みモデルを用いて、各車両の充電計画を作成してもよい。
【0125】
S6では、サーバ200が、上記のようにして車群VGに含まれる各車両の充電計画を決定する。決定された各車両の充電計画は、サーバ200の記憶装置202(
図3)に登録される。この実施の形態に係る充電計画は、蓄電装置のSOCの推移を示す。ただしこれに限られず、充電計画は、蓄電装置の充電電力の推移を示してもよい。
【0126】
図9は、この実施の形態におけるスマート充電計画及びDR可能量について説明するための図である。
【0127】
図9を参照して、線L3は、車群VGに含まれる車両100Aのスマート充電計画を示している。車両100Aのスマート充電計画では、
図9中に示す期間T10で1回の充電が実行される。具体的には、通常充電モードの充電制御よりも早いタイミングで蓄電装置の充電が開始され、車両100Aの出発予定時刻よりも前に蓄電装置のSOCが目標SOCに到達する。一方、線L4は、車群VGに含まれる車両100Bのスマート充電計画を示している。車両100Bのスマート充電計画では、
図9中に示す期間T21と期間T22とに分けて2回の充電が実行される。2回の充電により、蓄電装置のSOCが目標SOCに到達する。なお、スマート充電計画は、これらに限られず、充電タイミング、充電スピード、充電回数などは、サーバ200によって任意に決定される。
【0128】
上記のように、スマート充電では、ユーザ要件が満たされる限り、サーバ200が自由に充電制御を行なうことができる。サーバ200は、たとえばDR情報、ユーザ要件、及び環境要件に基づいて、スマート充電計画における充電期間及び非充電期間を決定する。充電期間及び非充電期間が変更されることによって、時間帯ごとの充電量が変わる。サーバ200は、第2及び第3モード車両の各々のスマート充電計画における時間帯ごとの充電量を調整することにより、時間帯ごとの車群VGの充電量を調整できる。
【0129】
サーバ200は、前述の方法で決定された車群VGに含まれる各車両の対象日の充電計画に基づいて、車群VGの対象日の時間帯ごとのDR可能量を決定する。詳しくは、サーバ200は、車群VGに含まれる各車両が充電計画どおりに動作したと仮定した場合の車群VGの時間帯ごとの充電量を、車群VGの時間帯ごとのDR可能量とする。サーバ200は、各車両の充電場所のブレーカ容量を考慮して、各車両の充電量を算出してもよい。
図9において、グラフM1は、車群VGの時間帯ごとのDR可能量の一例を示している。この実施の形態では、車群VGのDR可能量が、車群VGの成行充電量を基準(ゼロ点)として表わされる。すなわち、この実施の形態に係る車群VGのDR可能量(kWh)は、各車両の上記充電計画に従う車群VGの充電量と車群VGの成行充電量との差分に相当する。グラフM1において、データM11は、車群VGが充電促進側(正側)に調整可能な電力量を示しており、上げDRが要請される時間帯に位置する。また、データM12は、車群VGが充電抑制側(負側)に調整可能な電力量を示しており、下げDRが要請される時間帯に位置する。サーバ200は、上記のように決定された車群VGの対象日の時間帯ごとのDR可能量をサーバ700へ送信する。
【0130】
再び
図4を参照して、S7では、サーバ700が、サーバ200から受信した車群VGの対象日の時間帯ごとのDR可能量に基づいて、対象日の時間帯ごとのDR要請量(DR計画)を決定する。サーバ700は、車群VG以外のDERの状況を考慮して、車群VGに対するDR計画を決定する。DR要請量は、DRによって要請される電力調整量を意味する。この実施の形態に係るDR計画は、対象日を分割した48コマの各々についてDR要請量を示す。車群VGに対するDR計画は、サーバ700(小売電気事業者)がサーバ200(アグリゲータ)に要請する時間帯ごとの電力調整量を示す。DR可能量とDR要請量(電力調整量)とは、共通の基準で表わされる。すなわち、車群VGによる電力調整量は、車群VGの成行充電量(基準)に対する車群VGの充電量の増減分に相当する。DR計画は、各時間帯においてDR要請量がDR可能量の範囲内になるように決定される。そして、サーバ700は、決定された車群VGに対するDR計画をサーバ200へ送信する。なお、サーバ700は、車群VGに加えて他のDERにもDRを要請してもよい。
【0131】
上記S4~S7の処理は、DR前日(対象日の前日)に行なわれる。そして、DR当日(対象日)になると、以下に説明するS8~S11の処理が順に実行される。
【0132】
S8では、サーバ700が、エリアPS2の需給状況と、電力の調達状況と、電力の取引状況とに基づいて、DR前日にサーバ200に送信したDR計画(S7)を修正するか否かを決定する。たとえばDR当日になって、DR前日の需要予測又は発電予測について誤差が生じた場合には、サーバ700は、予測誤差に応じてDR計画を修正してもよい。また、サーバ700は、経済的なメリットを得るために、時間前市場で電力を売買するとともに、車群VGに対するDR計画を修正してもよい。サーバ700は、車群VGに対するDR計画を修正すると決定した場合には、DR計画を修正し、修正後のDR計画を含むDR修正信号をサーバ200へ送信する。他方、サーバ700は、車群VGに対するDR計画を修正しないと決定した場合には、DR確定信号をサーバ200へ送信する。
【0133】
S9では、サーバ200が、サーバ700から受信したDR修正信号又はDR確定信号と、車群VGに含まれる各車両の現在の状況とに基づいて、サーバ700からの要請に応じてDRを実施するか否かを判断する。サーバ200がDR修正信号を受信した場合には、DR修正信号が示す修正後のDR計画が最終的なDR計画になる。他方、サーバ200がDR確定信号を受信した場合には、S7で受信したDR計画が最終的なDR計画になる。以下、最終的なDR計画を、「当日計画」とも称する。
【0134】
サーバ200は、車群VGに含まれる各車両の最新の利用予定及び車両情報に基づいて、車群VGの時間帯ごとのDR可能量(S6)を更新する。そして、サーバ200は、更新された車群VGの時間帯ごとのDR可能量を当日計画と比較して、要請されるDRを車群VGが実施できるか否かを判断する。車群VGがDRを実施できないと判断された場合には、サーバ200は、DR不参加信号をサーバ700へ送信する。この場合、
図4に示すDRに関する一連の処理は終了する。
【0135】
なお、サーバ200は、当日計画に対してDR可能量が不足している場合に、DR可能量を増やすための車両の利用予定の変更を、当該車両のユーザに促してもよい。たとえば、サーバ200は、車両の利用予定をDR可能量が増えるように変更することを要請する通知を、ユーザ端末へ送信してもよい。通知において、変更の対価(インセンティブ)が示されてもよい。そして、サーバ200からの要請にユーザが応じることによってDR可能量の不足が解消した場合には、サーバ200は、上記DR不参加信号ではなく、以下に説明するDR参加信号をサーバ700へ送信してもよい。
【0136】
車群VGがDRを実施できると判断された場合には、サーバ200は、DR参加信号をサーバ700へ送信する。その後、サーバ200は、DR実施のための処理を実行する。また、サーバ200は、DR修正信号(サーバ700からの修正要請)を受信した場合には、DR修正信号が示す修正後のDR計画(当日計画)に従ってDRが実施されるように、S6で決定された各車両の充電計画の少なくとも1つを修正する。さらに、サーバ200は、前述した充電計画の決定方法(S6)と同様に、車両の利用予定に関する情報(利用開始予定時刻及び目標SOC)とCO2排出情報(S3)とを用いて、ユーザ要件及び環境要件が満たされるように各車両の充電計画を修正してもよい。また、サーバ200がDR確定信号を受信した場合にも、サーバ200は、当日計画と、車両の利用予定に関する情報と、CO2排出情報とを用いて、当日計画に従ってDRが実施され、かつ、ユーザ要件及び環境要件が満たされるように、S6で決定された各車両の充電計画の少なくとも1つを修正する。ただし、S6で決定された各車両の充電計画によって、当日計画に従ってDRが実施され、かつ、ユーザ要件及び環境要件が満たされる場合には、上記修正は実行されない。
【0137】
サーバ200は、続くS10において、S9で充電計画が修正されなかった車両を、S6で決定された充電計画に従って動作させ、S9で充電計画が修正された車両を、S9で修正された充電計画に従って動作させる。このように、車群VGに含まれる各車両は、S6で決定された充電計画又はS9で修正された充電計画に従って動作する。
図10は、サーバ200によって実行される電力系統PS1(外部電源)の電力調整に係る処理(
図4のS10)について説明するための図である。
【0138】
図10を参照して、グラフM2は、当日計画の一例を示している。グラフM2において、データM21は、充電促進側(正側)のDR要請量を示しており、データM22は、充電抑制側(負側)のDR要請量を示している。いずれのDR要請量も、車群VGのDR可能量(
図9参照)の範囲内に設定されている。
【0139】
図4のS10では、サーバ200が、制御対象のリモート制御を実行する。これに先立ち、サーバ200は、車群VGに含まれる第2及び第3モード車両の中から、電力系統PS1の電力調整のための制御対象を選ぶ。制御対象の選定は、S9において各車両の充電計画が決定されるときに行なわれてもよい。サーバ200は、非VPP車両についてはスマート充電を実行しない。このため、非VPP車両の充電計画は、ユーザによって設定された充電計画(前述した通常充電モードと同様の充電計画)となる。上記制御対象は、VPP車両に相当する。サーバ200は、当日計画に基づいて時間帯(コマ)ごとに制御対象を選ぶ。制御対象の数は、当日計画が示すDR要請量に応じて決定される。サーバ200は、こうして選ばれた各制御対象に対して、対応するスマート充電計画に従う制御指令を送信することにより、電力系統PS1の電力調整のための充電制御を制御対象に行なわせる。電力系統PS1の電力調整は、前述したスマート充電(
図9参照)によって行なわれる。
【0140】
サーバ200は、上記のようにVPP車両(制御対象)をリモート制御する。詳しくは、VPP車両の充電制御装置は、サーバ200から逐次送信されてくる制御指令に従って車載充電器(たとえば、
図2に示した充電器61)を制御する。充電制御装置は、制御指令に従って充電のON(実行)/OFF(停止)を切り替えてもよいし、制御指令が示す値に追従するように充電電力を調整してもよい。ただし、充電制御の態様は適宜変更可能である。たとえば、車載充電器の代わりに電磁接触器(たとえば、
図2に示した充電リレー62)が制御されてもよい。
【0141】
サーバ200は、非VPP車両については、電力系統PS1の電力調整のための充電制御を行なわせない。第1モード車両のほか、制御対象として選ばれなかった第2及び第3モード車両も、非VPP車両に相当する。車群VGのうち、VPP車両は、サーバ200による上記リモート制御により、非VPP車両は、車載制御装置(充電制御装置)によるローカル制御により、所定の充電計画(S6で決定された充電計画、又はS9で修正された充電計画)に従って動作する。非VPP車両は、ユーザによって設定された充電予定に従い、蓄電装置の成行充電(前述した通常充電モードの充電制御)を実行する。ただし、サーバ200は、当日計画を遂行するために、DRの最中にVPP車両を変更してもよい。たとえば、DRの最中にいずれかのVPP車両(制御対象)が充電できなくなった場合には、サーバ200は、代わりの制御対象として、いずれかの非VPP車両をVPP車両に変更してもよい。
【0142】
上記のように、サーバ200は、車群VGに含まれる各車両が、S6で決定された充電計画、又はS9で修正された充電計画に従って動作するように各車両を管理する。この実施の形態では、電力系統PS1(外部電源)の電力調整が、リモート制御により行なわれる。ただしこれに限られず、サーバ200は、ローカル制御により外部電源の電力調整が行なわれるように車群VGを管理してもよい。たとえば、サーバ200が、選ばれた制御対象(VPP車両)の充電制御装置に所定の充電計画(S6で決定された充電計画、又はS9で修正された充電計画)を設定し、VPP車両の充電制御装置が、サーバ200によって設定された充電計画に従って蓄電装置の充電制御を行なってもよい。
【0143】
再び
図4を参照して、S10の処理により、当日計画に基づく対象日のDRが実施されてDRが完了すると、サーバ200は、続くS11において、車群VGに含まれる各車両の対象日の制御実績をサーバ500から取得する。そして、サーバ200は、各車両の制御実績及び車両IDを含む制御実績情報を、サーバ700へ送信する。
【0144】
上記制御実績は、蓄電装置の充電開始時刻、充電終了時刻、単位時間あたりの充電電力量、及びSOCの推移、さらには車両の位置の推移を含む。これらは、対象日において車載センサによって検出されたデータである。また、制御実績情報は、車両ごとに、対象日におけるDR参加/不参加(VPP車両/非VPP車両)を示す。各車両の情報は、車両IDによって区別されている。なお、車両IDの代わりにユーザIDが採用されてもよい。また、制御実績情報は、各車両の充電場所を含んでもよい。また、サーバ200は、車群VG全体ではなく、VPP車両のみの制御実績をサーバ700へ送信してもよい。
【0145】
S12では、サーバ700が、サーバ200から受信した各車両の車両IDに基づいて、各車両の充電場所を特定する。そして、サーバ700は、各車両の充電場所に設置された電力量計(たとえば、スマートメータ)の計測値に基づいて、各充電場所のDR実績を取得する。DR実績は、DR実績量と、環境指数(たとえば、DR実施に伴うCO2排出量の大小を示す指数)と、コスト指数(たとえば、DR実施に要した電気料金の高低を示す指数)とを含む。DR実績量は、DR要請量に対する実績値(電力調整量)である。下げDRでは、充電しなかったことが、DR実績(電力調整の実績)となり得る。サーバ700は、各充電場所のDR実績を、各充電場所に対応するユーザIDとともに、サーバ200へ送信する。
【0146】
S13では、サーバ200がユーザ端末にDR実績を表示させる。具体的には、サーバ200は、サーバ700から受信した各充電場所のDR実績を、各充電場所に対応するユーザ端末へ送信する。そして、各ユーザ端末は、サーバ200から受信したDR実績を表示する。これにより、各ユーザが自身のDR実績を見て確認することが可能になる。
図11は、ユーザ端末(たとえば、携帯端末UT)がDR実績を表示する画面の一例を示す図である。
【0147】
図11を参照して、携帯端末UTは、サーバ200から新規のDR実績を受信すると、画面Sc3を表示する。画面Sc3は、情報部IN40と、操作部OP41~OP46とを含む。携帯端末UTは、ユーザが指定したデータを情報部IN40に表示する。具体的には、携帯端末UTは、操作部OP41~OP46によって指定されたデータを、情報部IN40に表示する。
図11に示す例では、データが棒グラフで表示されているが、情報部IN40の表示形態は、棒グラフに限られず適宜変更可能である。たとえば、折れ線グラフでデータが表示されてもよいし、表の形式でデータが表示されてもよい。また、携帯端末UTは、ユーザからの要求に応じて表示形態を変更してもよい。
【0148】
操作部OP41~OP43は、情報部IN40に表示するデータの種類の入力を受け付ける。操作部OP41~OP43によって、表示されるデータの種類が切り替わる。操作部OP41、OP42、OP43が操作されると、それぞれ情報部IN40にDR実績量、コスト指数、環境指数が表示される。操作部OP44~OP46は、情報部IN40に表示するデータ期間の入力を受け付ける。操作部OP44~OP46によってグラフの横軸が切り替わる。操作部OP44、OP45、OP46が操作されると、それぞれ直近1か月、直近1週間、前日のデータが情報部IN40に表示される。携帯端末UTは、上述のDR実績に加えて、以下に説明するインセンティブ情報をさらに表示してもよい。
【0149】
再び
図4を参照して、S14では、サーバ700が、DR実績に対応するインセンティブを、各VPP車両のユーザに付与する。サーバ700は、VPP車両のDR実績量及び環境指数に基づいて、そのユーザに付与するインセンティブの価値を決定してもよい。サーバ700は、DR実施に伴う環境負荷が小さいほど、インセンティブの価値を高くしてもよい。サーバ700は、DR実績(S12)だけでなく、制御実績情報(S11)も考慮して、各VPP車両に対するインセンティブの価値を決定してもよい。サーバ700は、車両ユーザが獲得したインセンティブの価値(たとえば、金額又はポイント数)を示すインセンティブ情報を、ユーザ端末へ送信する。ユーザに対してインセンティブを付与する方法の例としては、電気料金への割当て、口座振込み、ポイント付与、物品送付、ユーザ名義での寄付が挙げられる。なお、小売電気事業者(サーバ700)はアグリゲータ(サーバ200)を介して各ユーザにインセンティブを付与してもよい。たとえば、小売電気事業者が、インセンティブをアグリゲータに渡し、アグリゲータが各ユーザにインセンティブを分配してもよい。
【0150】
以上説明したように、この実施の形態に係る電力調整方法は、
図4に示したS1~S14の処理を含む。S6では、管理装置1000(より特定的には、サーバ200)が、車群VGに含まれる各車両の利用予定に関する情報(第1情報)と、電力系統PS1の電力供給に関するCO
2排出情報(第2情報)とを用いて、各車両の蓄電装置の充電計画(電力調整計画)を決定する。S10では、DR(電力系統PS1の電力調整)において、車群VGに含まれる各車両が、S6で決定された充電計画、又はS9で修正された充電計画に従って動作する。
【0151】
上記電力調整方法によれば、各車両の利用予定と電力の環境負荷(電力供給に伴う環境負荷)の大きさとの両方を考慮して充電計画を決定することができる。上記電力調整方法では、車群VG(複数の車両)を用いて外部電源の電力調整を行なうため、車両間で補完し合うように各車両の充電計画を決定することで、車群VG全体が受ける電力の総合的な環境負荷を小さくすることができる。上記電力調整方法によれば、車両ユーザの十分な利便性を確保し、かつ、電力供給に伴う環境負荷を抑制しつつ、車両を用いて外部電源の電力調整を適切に行なうことが可能になる。
【0152】
図4に示した一連の処理は、適宜変更可能である。たとえば、サーバ200は、S4において算出した車群VGの成行充電計画をサーバ700へ送信しなくてもよい。また、上記実施の形態では、成行充電量を基準にしてDR可能量が規定されているが、DR可能量の基準は適宜変更可能である。DR可能量は、予め定められた値(固定値)を基準にして規定されてもよい。たとえば、車群VGに含まれる全ての車両が充電も放電もしていない状態を基準(ゼロ点)にして、DR可能量が規定されてもよい。
【0153】
上記実施の形態では、次回充電の予定のみがユーザ端末(携帯端末UT)に設定される。ただしこれに限られず、所定期間(たとえば、1週間)における複数回の充電の予定がまとめてユーザ端末に設定されてもよい。また、携帯端末の代わりに、車両ユーザの自宅もしくは職場に設置された端末、又は車載端末(たとえば、HMI81)が、ユーザ端末として採用されてもよい。
【0154】
環境情報(第2情報)は、
図5及び
図6に示したCO
2排出情報に限られない。環境情報に含まれる時間帯ごとの環境指数は、電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を段階評価するものであってもよい。たとえば、
図6に示した環境指数に代えて
図12に示す環境指数が採用されてもよい。
図12は、
図6に示した環境指数の変形例を示す図である。
【0155】
図12を参照して、この変形例に係る環境指数は、電力の生成過程で排出された二酸化炭素量を、「A(少ない)」、「B(普通)」、「C(多い)」で区別して表わしている。こうした環境指数によっても、電力の生成過程における環境負荷の大きさを示すことは可能である。なお、区分の数は、3つ(A~C)に限られず、4つ以上であってもよい。
【0156】
上記実施の形態及び変形例では、環境負荷の大きい物質として二酸化炭素が例示されている。しかしこれに限られず、環境情報(第2情報)は、二酸化炭素に代えて又は加えて、二酸化炭素以外の環境負荷の大きい物質(メタン、亜酸化窒素、フロン類など)の排出量を示してもよい。
【0157】
上記実施の形態に係る電力調整計画(充電計画)は、1日が30分単位で分割された48コマの各々について、外部電源からの電力の充電量を示している。しかし、計画の期間は、1日に限られず、適宜変更可能である。また、電力調整計画を構成するコマ(時間帯)の長さは適宜変更可能である。たとえば、1日を、1時間単位で24コマに分割してもよいし、10分単位で144コマに分割してもよい。また、電力調整計画が規定する電力調整量は、リソースの種類に応じて適宜変更可能である。たとえば、電力調整計画は、外部電源からの電力の消費量、又は外部電源への放電量を示してもよい。
【0158】
車群VGに含まれる少なくとも1台の車両は、電力系統PS1に対して逆潮流可能に構成されてもよい。車両は、外部給電(すなわち、車両に搭載された蓄電装置の電力による車両外部への給電)を実行可能に構成されてもよい。車両は、充電器の代わりに充放電器を備えてもよい。車両は、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)を介して、電力系統PS1と電気的に接続されてもよい。車両は、外部給電によって電力系統PS1の電力調整を行なってもよい。第2及び第3モード車両の各々は、スマート充電に代えてスマート充放電をサーバ200に許可してもよい。スマート充放電は、ユーザ要件が満たされる限り、蓄電装置の充放電電力をサーバ200が自由に調整できる制御であってもよい。サーバ200は、EVSE及び/又はHEMSを介して、車両制御(たとえば、充放電制御)を実行してもよい。
【0159】
電力系統PS1(外部電源)は、大規模な交流グリッドに限られず、マイクログリッドであってもよいし、DC(直流)グリッドであってもよい。また、管理システムの構成は、
図1に示した構成に限られない。サーバ700とサーバ200との間に他のサーバ(たとえば、上位アグリゲータのサーバ)が設けられてもよい。また、サーバ200が車群VGと直接的に無線通信を行なってもよい。サーバ500の機能がサーバ200に実装され、サーバ500が割愛されてもよい。上記実施の形態では、オンプレミスサーバ(
図1に示したサーバ200及び500)が管理装置1000(管理コンピュータ)として機能する。しかしこれに限られず、クラウドコンピューティングによってクラウド上にサーバ200及び500の機能(特に、車両管理に係る機能)が実装されてもよい。管理装置1000は、アグリゲータではなく、他の電気事業者(たとえば、小売電気事業者又はTSO)に帰属してもよい。
【0160】
車両の構成は、前述した構成(
図2参照)に限られない。たとえば、BEV以外のxEV(PHEV、FCEV、レンジエクステンダーEVなど)が採用されてもよい。車両は非接触充電可能に構成されてもよい。車両はソーラーパネルを備えてもよい。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、4輪の乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、MaaS(Mobility as a Service)車両であってもよい。MaaS車両は、MaaS事業者が管理する車両である。車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、ロボタクシー、無人搬送車(AGV)、又は農業機械)であってもよい。車両は、無人又は1人乗りの小型BEV(たとえば、3輪のBEV、ラストワンマイル用のBEV、又は電動スケータ)であってもよい。
【0161】
リソースは、自動車以外の移動体(鉄道車両、船、飛行機、歩行ロボット、ドローン、ロボットクリーナ等)であってもよい。リソースは、各種の家庭用電気機械器具であってもよいし、屋外で使用される定置式の蓄電装置及び発電設備の少なくとも一方であってもよい。上記実施の形態では、
図1に示したスマートメータ310が設置された受電点について、車両100のみにDR(電力調整)が要請されているが、分電盤320につながる全ての電気機器を含む住宅300全体にDR(電力調整)が要請されてもよい。
【0162】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
11 バッテリ、20 MG、60 インレット、61 充電器、62 充電リレー、81 HMI、82 NAVI、90 通信装置、100 車両、150 ECU、200,500,700 サーバ、201 プロセッサ、202 記憶装置、300 住宅、310 スマートメータ、320 分電盤、330 コンセント装置、340 充電ケーブル、710 発電システム、711 火力発電所、712 再エネ発電所、713 揚水発電所、1000 管理装置、PG1,PG2 電力網、PL 連系線、PS1 電力系統、PS2 エリア、UT 携帯端末、VG 車群。