(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043093
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法および通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H04L12/28 200D
H04L12/28 100S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148088
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相川 大亮
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA08
5K033CB17
5K033DB13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通信制御に関する複数の設定を行わずに通信機器毎の通信の優先順位を制御する通信制御装置、通信制御方法及び通信制御プログラムを提供する。
【解決手段】ビルなどの設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置100であって、情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、パケットの送信先及び送信元の判定を行い、判定部132の判定結果に基づき、パケットに所定のキューを割り当て、キューに含まれる所定の条件に基づき、パケットの送信スケジュールを設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、
前記情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、前記パケットの送信先および送信元の判定を行う判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記パケットに所定のキューを割り当てる割当部と、
前記キューに含まれる所定の条件に基づき、前記パケットの送信スケジュールを設定する設定部と、
を有することを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記パケットのうち受信パケットに含まれる前記通信制御に関する情報としてMACアドレスに含まれるOUIに基づき、前記送信先の機器および前記送信元の機器を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記割当部は、前記送信元および前記送信先の組み合わせと前記キューとが関連付けられた所定の条件に基づき、前記所定の条件を満たす前記パケットに前記所定のキューを割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記キューに設定される前記所定の条件として前記情報通信の優先順位に関する情報に基づいて、前記キューに格納される前記パケットを送信するスケジュールを設定する、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、
前記情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、前記パケットの送信先および送信元の判定を行う工程と、
判定部の判定結果に基づき、前記パケットに所定のキューを割り当てる工程と、
前記キューに含まれる所定の条件に基づき、前記パケットの送信スケジュールを設定する工程と、
を含むことを特徴とする通信制御方法。
【請求項6】
設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、
前記情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、前記パケットの送信先および送信元の判定を行う手順と、
判定部の判定結果に基づき、前記パケットに所定のキューを割り当てる手順と、
前記キューに含まれる所定の条件に基づき、前記パケットの送信スケジュールを設定する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の設備の制御ネットワークにおいて、空調、電気、照明等の各機器の状態を監視したり、設定等を制御したりするシステムが知られている。これらのビル等に設置される機器類は、様々なメーカによって提供されている。したがって、ビル等の制御ネットワークは、各メーカのサブシステムを組み合わせたネットワーク構成となっている場合がある。
【0003】
前述の各メーカのサブシステムを組み合わせたネットワーク構成においては、各メーカの機器の通信時に、あるメーカの通信(例えば、イーサネット(登録商標)通信等)の影響で、他のメーカの通信ができなくなる場合がある。そのため、従来技術として、QoS(Quality of Service)等の技術を用いることで、通信を制御する方法が提供されている。
【0004】
例えば、スイッチングハブ内でフレームの転送量を測定し、基準値を超える場合には優先度の高いキューに待機させているフレームから送信を行う、という技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、イーサネットスイッチにおける送信のキューのパラメータを設定する場合において、優先度の高いキューに割り当てられた優先度の高い通信の遅延および損失を抑制し、所定の品質目標を満たすパラメータを設定することで、通信を行う順番や通信量を制御する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-120015号公報
【特許文献2】特開2021-182694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、通信機器ごとの通信の優先順位の制御のために、通信制御に関する複数の設定が必要である、という問題があった。
【0007】
例えば、従来技術では、通信の分類、分類した通信の優先度設定、通信のスケジューリング、といった設定項目が複数存在している。加えて、前述の複数の設定を行うためには、複数の設定項目に関する知識、ネットワークに関する知識、ネットワーク内の通信内容に関する知識等を有した者でないと、通信制御に関する設定を行うことが難しい場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決し目的を達成するために、本発明の通信制御装置は、設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、前記情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、前記パケットの送信先および送信元の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づき、前記パケットに所定のキューを割り当てる割当部と、前記キューに含まれる所定の条件に基づき、前記パケットの送信スケジュールを設定する設定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信機器ごとの通信の優先順位の制御のために、通信制御に関する複数の設定を不要とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る通信制御の概要の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る通信制御装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るキュー割当条件記憶部が記憶する情報の一例を示すテーブル図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る送信条件記憶部が記憶する情報の一例を示すテーブル図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る通信制御方法についてのフローチャートである。
【
図6】
図6は、従来方法による通信制御方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る通信制御方法の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、従来方法に係る通信制御方法の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る通信制御方法の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、通信制御装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここから、実施の形態(以降、「実施形態」)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、この実施形態の説明は、本発明に係る通信制御装置、通信制御方法および通信制御プログラムを限定するものではない。
【0012】
〔1.通信制御方法の概要〕
本実施形態における通信制御装置100は、設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報を用いて、パケットの送信先および送信元の判定を行う。続けて、通信制御装置100は、判定結果に基づきパケットの送信先および送信元に応じた所定のキューを割り当てる。そして、通信制御装置100は、キューに含まれるパケットの送信優先順位に基づき、パケットの送信スケジュールを設定して、所定の送信先へ順次パケットの送信を行う。
【0013】
ここから、
図1を用いて、通信制御装置100が行う通信制御の概要を説明する。本実施形態においては、各メーカの機器を区別するために、一例として「自社機器」と「他社機器」という表記とし、以下は全て統一して記載する。なお、前述の「自社機器」と「他社機器」という表記は、あくまで一例としての表記であり、本実施形態はこれに限定されない。
【0014】
また、本実施形態の説明における各キューは、それぞれ「送信先が自社機器のOUI、送信元が自社機器のOUIの通信を格納」と、「送信先が自社機器のOUI、送信元が他社機器のOUIの通信を格納」と、「送信先が他社機器のOUI、送信元が自社機器のOUIの通信を格納」と、「送信先が他社機器のOUI、送信元が他社機器のOUIの通信を格納」とする。
【0015】
そして、各キューの通信の優先度については、自社機器間の通信の優先度が最も高く、送信先もしくは送信元が自社と他社機器間の通信が次に高く、他社機器間の通信を最も低く設定する。本実施形態においては、「優先度1:送信先が自社機器、送信元が自社機器」、「優先度2:送信先が自社機器、送信元が他社機器」、「優先度3:送信先が他社機器、送信元が自社機器」、「優先度4:送信先が他社機器、送信元が他社機器」であるとする。なお、優先度については、設定で変更可能である。
【0016】
図1では、送信元が自社機器10Aと他社機器20A、送信先が自社機器10Bと他社機器20Bというネットワークで構成されている。
図1におけるネットワークでは、自社機器10Aは自社機器10Bに対して通信を行い、他社機器20Aは他社機器20Bに対して通信を行う。なお、送信元と送信先の組み合わせについてはあくまで一例であり、その他の組み合わせでも設定可能である。
【0017】
まず、自社機器10Aは送信先を自社機器10Bとして、他社機器20Aは送信先を他社機器20Bとして、通信制御装置100に対してパケットの送信を行う(
図1の(1)を参照)。受信部131は、自社機器10Aと他社機器20Aが送信するパケットを受信パケットとして受信する(
図1の(2)を参照)。
【0018】
続いて、判定部132は、受信パケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、送信先および送信元を判定する(
図1の(3)を参照)。具体的には、判定部132は、受信パケットのMAC(Media Access Control)アドレスに含まれるOUI(Organizationally Unique Identifier)に基づき、送信先の機器および送信元の機器を判定する。なお、前述のMACアドレスとは、ネットワークインタフェースを識別するために使用され、原則として全てのネットワーク機器に一意に割り当てられる48ビットの識別子である。
【0019】
そして、前述のOUIとは、48ビットのMACアドレスの前半部分に該当し、ベンダーコードやベンダーIDとも呼ばれ、機器を提供するメーカごとに一意の識別子として付与されている。従って、OUIを用いることで通信制御装置100は、送信先の機器および送信元の機器を都度の設定等を不要として判定することができる。
【0020】
次に、割当部133は、判定部132の判定結果とキューの割当条件に基づき、受信パケットに対してキューを割り当てる(
図1の(4)を参照)。なお、本実施形態において、キューの割当条件は、送信先と送信元の組み合わせで設定されており、判定部132が判定する送信先と送信元の組み合わせと合致するキューが選択され、受信パケットに対して割り当てが行われる。
【0021】
続けて、設定部134は、キューごとに設定されているパケットの送信優先順位に基づき、パケットの送信スケジュールを設定する(
図1の(5)を参照)。なお、
図1の事例において、各キューに含まれる優先順位は、前述した条件に基づき「優先度高:送信先が自社機器10Aかつ送信元が自社機器10B」と「優先度低:送信先が他社機器20Aかつ送信元が他社機器20B」であるとする。
【0022】
そして、送信部135は、設定部134が設定した送信スケジュールに基づき、受信パケットを各送信先の機器へ送信する(
図1の(6)を参照)。
図1の事例においては、送信部135は、自社機器10Aから自社機器10Bへの通信を優先させて、受信パケットの送信を実施する(
図1の(7)を参照)。
【0023】
〔2.通信制御装置の構成〕
ここから、実施形態に係る通信制御装置100の構成について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、通信制御装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130と、を有する。なお、
図2に図示していないが、通信制御装置100は、各種操作を受け付ける入力部(例えば、タッチパネルや、キーボードや、マウス等)を備えてもよい。
【0024】
(通信部110)
通信部110は、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、必要に応じてネットワークと有線または無線で接続され、双方向に情報の送受信を行うことができる。また、本実施形態において通信制御装置100は、通信部110を介して受信部131によるパケットの受信と、送信部135によるパケットの送信を行う前提とし、以降の記載は省略する。
【0025】
(記憶部120)
記憶部120は、キュー割当条件記憶部121と、送信条件記憶部122と、を有する。なお、記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0026】
(キュー割当条件記憶部121)
キュー割当条件記憶部121は、各パケットに割り当てられるキューの割当条件を記憶する。具体的には、
図3に示すようにキュー割当条件記憶部121は、キューの割当条件として「キューID」と、「送信先」と、「送信元」という項目を記憶する。例えば、
図3においては、キュー割当条件記憶部121は、キューIDとして「Q001」が識別する、送信先が「自社機器」と、送信元が「自社機器」と、という情報を記憶している。
【0027】
なお、前述した「キューID」と、「送信先」と、「送信元」という項目は一例に過ぎず、キュー割当条件記憶部121は、その他の項目を記憶してもよい。キュー割当条件記憶部121は、判定部132がMACアドレスに含まれるOUIを用いて判定する送信先や送信元の情報ではなく、例えば、5tuple(送信元IPアドレス、送信元ポート番号、送信先(宛先)IPアドレス、送信先(宛先)ポート番号、プロトコル番号)や、MACアドレスや、OUIや、プロトコルに関する情報(例えば、TCPや、UDPや、HTTP等)や、制御に関する情報(例えば、センサの場合であれば、温度や空調のON/OFF状態等の情報)等を記憶してよい。
【0028】
(送信条件記憶部122)
送信条件記憶部122は、キューごとに設定される情報通信(パケット)の送信優先順位に関する情報を記憶する。具体的には、
図4に示すように送信条件記憶部122は、「条件ID」と、「キューID」と、「優先度」と、いう項目を記憶する。例えば、
図4においては、送信条件記憶部122は、条件IDとして「P001」が識別する、キューIDが「Q001」で、優先度が「1」で、という情報を記憶している。なお、送信条件記憶部122は、前述の「キューID」をキュー割当条件記憶部121が保持する情報を元に取得してもよい。また、前述した「条件ID」と、「キューID」と、「優先度」と、という項目は一例に過ぎず、送信条件記憶部122は、その他の項目を記憶してもよい。
【0029】
例えば、本実施形態においては、キュー割当条件記憶部121と送信条件記憶部122が記憶する情報に基づき、各キューの優先度は、条件ID P001が識別する「優先度1:キューID Q001が識別する、送信先が自社機器で、送信元が自社機器」と、条件ID P002が識別する「優先度2:キューID Q002が識別する、送信先が自社機器で、送信元が他社機器」と、条件ID P003が識別する「優先度3:キューID Q003が識別する、送信先が他社機器で、送信元が自社機器」と、条件ID P004が識別する「優先度4:キューID Q004が識別する、送信先が他社機器で、送信元が他社機器」と、設定されている。
【0030】
なお、前述した優先度はあくまで一例であり、この組み合わせに限定されるものではない。例えば、キュー割当条件記憶部121と送信条件記憶部122は、「送信先が他社機器」と「送信元が他社機器」という条件で、他社機器間のパケット送信の優先度が高くなるように情報を記憶してもよい。さらに、前述の「優先度」は1から4で段階的に設定されていると記載しているが、同順位の優先度が存在してもよい。
【0031】
さらに、送信条件記憶部122は、通信の優先順位(優先度)の他に、帯域制限に関する条件を記憶してもよい。具体的には、送信条件記憶部122は、所定の分類により識別される条件を満たす通信について、帯域制限を行うように条件を記憶してもよい。また、送信条件記憶部122は、優先度と帯域制御に関する情報を同時に記憶してもよい。
【0032】
(制御部130)
制御部130は、受信部131と、判定部132と、割当部133と、設定部134と、送信部135と、を有する。なお、制御部130は、プロセッサ(Processor)や、MPU(Micro Processing Unit)や、CPU(Central Processing Unit)等が、記憶部120に記憶されている各種プログラムについて、RAMを作業領域として実行することにより、実現される。また、制御部130は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のIC(Integrated Circuit)により実現される。
【0033】
(受信部131)
受信部131は、機器または通信を制御する装置(例えば、スイッチングハブ等)が送信するパケットを受信する。さらに、受信部131は、所定の条件に基づいて受信するパケットを制限してもよい。具体的には、受信部131は、送信条件記憶部122がパケット受信に関する情報を記憶している場合、所定の条件を満たすパケットの受信を受け付けないという処理を行ってもよい。例えば、受信部131は、通信量が所定の閾値を超えている場合に、受信するパケットの上限を制限して、帯域制限を行ってもよい。
【0034】
(判定部132)
判定部132は、情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、パケットの送信先および送信元の判定を行う。具体的には、判定部132は、パケットのうち受信パケットに含まれる通信制御に関する情報として、MACアドレスに含まれるOUIに基づき、該受信パケットの送信先の機器および送信元の機器を判定する。なお、判定部132は、情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報として、MACアドレスを用いて、送信先および送信元の判定を行ってよい。
【0035】
なお、判定部132は、キュー割当条件記憶部121がOUI以外の情報を記憶する場合、前述の情報に基づいて送信先や送信元を判定してよい。例えば、判定部132は、キュー割当条件記憶部121が5tuple(送信元IPアドレス、送信元ポート番号、送信先(宛先)IPアドレス、送信先(宛先)ポート番号、プロトコル番号)や、MACアドレスや、OUIや、プロトコルに関する情報(例えば、TCPや、UDPや、HTTP等)や、制御に関する情報(例えば、センサの場合であれば、温度や空調のON/OFF状態等の情報)等を記憶する場合、前述の情報に基づいて送信先や送信元等を判定してもよい。
【0036】
(割当部133)
割当部133は、判定部132の判定結果に基づき、パケットに所定のキューを割り当てる。具体的には、割当部133は、送信元および送信先の組み合わせとキューとが関連付けられた所定の条件に基づき、所定の条件を満たすパケットに所定のキューを割り当てる。例えば、割当部133は、キュー割当条件記憶部121が記憶する送信元および送信先の組み合わせとキューとが関連付けられた所定の条件に基づき、判定部132が判定する送信先および送信元の組み合わせと合致するキュー割当条件に基づいて、受信部131が受信するパケットに所定のキューを割り当てる。
【0037】
(設定部134)
設定部134は、キューに含まれる所定の条件に基づき、パケットの送信スケジュールを設定する。具体的には、設定部134は、キューに設定される所定の条件として送信条件記憶部122が記憶する情報通信の優先順位に関する情報に基づいて、キューに格納されるパケットを送信するスケジュールを設定する。
【0038】
さらに、設定部134は、前述の情報通信の優先順位に関する情報に基づく送信スケジュールの他に、例えば、帯域制限の実施条件等を設定してもよい。具体的には、設定部134は、送信条件記憶部122が帯域制御に関する情報を記憶している場合、所定の条件を満たす場合通信容量の上限を制限する設定を行ってもよい。
【0039】
(送信部135)
送信部135は、設定部134が設定するパケットの送信スケジュールに基づいて、対象の送信先の機器や通信を制御する装置(スイッチングハブ等)にパケットを送信する。なお、送信部135は、設定部134が帯域制限に関する条件等を設定する場合には、送信パケットの送信の制限等の帯域制限を行ってもよい。
【0040】
〔3.処理手順〕
次に、本実施形態に係る通信制御装置100の通信制御方法の手順を説明する。
図5は、実施形態に係る通信制御処理の手順についての一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、受信部131は、パケットを受信する(工程S101)。続いて、判定部132は、パケットのMACアドレスに含まれるOUIを用いて送信先および送信元を判定する(工程S102)。
【0042】
次に、割当部133は、判定部132の判定結果とキュー割当条件記憶部121が記憶するキュー割当条件に基づいて、所定のキューを割り当てる(工程S103)。続いて、設定部134は、送信条件記憶部122が記憶するキューに設定される送信条件に基づき、パケットの送信スケジュールを設定する(工程S104)。そして、送信部135は、送信スケジュールに基づき、パケットを所定の送信先の機器に順次送信する(工程S105)。
【0043】
〔4.効果〕
前述してきたように、通信制御装置100は、設備の制御システムにおける情報通信を制御する通信制御装置であって、情報通信のパケットに含まれる通信制御に関する情報に基づき、パケットの送信先および送信元の判定を行い、判定部132の判定結果に基づき、パケットに所定のキューを割り当て、キューに含まれる所定の条件に基づき、パケットの送信スケジュールを設定する。そのため、本実施形態によれば、下記の効果を奏する。ここから、
図6から
図9を用いて従来技術と比較を行いながら、通信制御装置100が提供する効果について説明する。
【0044】
〔4-1.制御対象の機器間の通信制御〕
まず、
図6では、従来技術のスイッチングハブ200を介して、自社機器10Aに対して、自社機器10Bと、自社機器10Cと、他社機器20Aと、が通信を行う場面を表している。なお、自社機器10Bが行う通信をパケット10BP、自社機器10Cが行う通信をパケット10CP、他社機器20Aが行う通信をパケット20AP、とする。
【0045】
従来技術のスイッチングハブ200を介する通信では、自社機器10Aに対して、自社機器10Bと自社機器10C、他社機器20Aから高帯域でデータ送信を行った場合、自社機器10Aは帯域100%までしかパケットを受信できない。そのため、所定の通信容量を超えると、自社機器同士であってもうまく通信ができないという問題が発生する場合がある(
図6の(1)を参照)。
【0046】
他方、
図7では、本実施形態の通信制御装置100を介して、自社機器10Aに、自社機器10Bと、自社機器10Cと、他社機器20Aと、が通信を行う場面を表している。なお
図7においても
図6と同様に、自社機器10Bが行う通信をパケット10BP、自社機器10Cが行う通信をパケット10CP、他社機器20Aが行う通信をパケット20AP、とする。
【0047】
図7の場合、通信制御装置100は、予め設定する通信の優先順位の条件に基づき、受信パケットに割り当てられるキューによってパケット送信の優先順位を調整する。その結果、通信制御装置100は、自社機器10Aと自社機器10Bおよび自社機器10Cと間の通信を優先することで、他社機器20Aの通信の影響を抑制して自社機器間の通信を可能とする(
図7の(2)を参照)。
【0048】
〔4-2.通信を制御する装置間の通信制御〕
次に、
図8では、従来技術のスイッチングハブ200Aおよびスイッチングハブ200Bを介して、自社機器10Aと自社機器10Bの間、他社機器20Aと他社機器20Bの間で通信を行われる場面を表している。なお、自社機器10Aが行う通信をパケット10AP、自社機器10Bが行う通信をパケット10BP、他社機器20Aが行う通信をパケット20AP、他社機器20Bが行う通信をパケット20BP、とする。
【0049】
図8の従来技術のスイッチングハブ200を介する通信では、他社機器20Aと他社機器20Bとの間で高帯域の通信を実施すると、スイッチングハブ200Aとスイッチングハブ200Bの間は自社機器10Aと自社機器10Bおよび他社機器20Aと他社機器20Bでネットワークの帯域を共有する状態となる。その結果、自社機器10Aと自社機器10Bの間でうまく通信できないという問題が発生する場合がある(
図8の(1)を参照)。
【0050】
他方、
図9では、本実施形態の通信制御装置100Aと通信制御装置100Bを介して、自社機器10Aと自社機器10B、他社機器20Aと他社機器20Bが通信を行う場面を表している。なお、
図9においても
図8と同様に、なお、自社機器10Aが行う通信をパケット10AP、自社機器10Bが行う通信をパケット10BP、他社機器20Aが行う通信をパケット20AP、他社機器20Bが行う通信をパケット20BP、とする。
【0051】
図8の場合、通信制御装置100は、受信パケットに割り当てられるキューによってパケット送信の優先順位を調整する。その結果、通信制御装置100は、予め設定する通信の優先順位の条件に基づき、自社機器10Aと自社機器10Bと間の通信を優先することで、他社機器20Aと20Bの通信の影響を抑制して自社機器間の通信を可能とする(
図9の(2)を参照)。
【0052】
前述してきた、通信制御装置100の提供する効果をまとめると、通信制御装置100は、予め設定する通信の優先順位の条件に基づき、自社機器間の通信を優先させることで、複数のメーカが混在する設備の制御ネットワークにおいて、他社機器や他社システムが自社機器や自社機器に与える影響を抑制することが可能となる、という効果を提供する。
【0053】
さらに、通信制御装置100が制御する優先順位の条件は、「自社機器」や「他社機器」といった分類に関わらず、パケットから取得可能な情報に基づいて設定可能な分類については、自由に条件を設定できる。従って、設備の制御システムを利用するエンドユーザ等の要望に基づいて柔軟な条件設定を可能とする、という効果を提供する。
【0054】
また、通信制御装置100は、優先順位以外の条件も設定してよく、例えば、帯域制御等を行ってもよい。そのため、設備の制御システムを利用するエンドユーザ等の要望や制御システムの状況に応じて、通信制御の条件を柔軟に設定することができる。
【0055】
加えて、通信制御装置100は、MACアドレスに含まれるOUIに基づき送信先および送信元を判定する。OUIは、前述した通り前半24ビットが各メーカに割り当てられたOUIで、後半24ビットが各メーカの個々の機器に重複しないよう割り当てた装置固有の番号となっている。言い換えると、OUIは各メーカの機器ごとに一意の識別情報である。従って、通信制御装置100は、OUIを利用することにより、設定不要で各メーカの各機器の特定を可能としている。そのため、通信制御装置100は、通信制御のための設定を不要として、各メーカの機器の通信制御(優先度の設定)を可能とする、という効果を提供する。
【0056】
〔5.ハードウェア構成〕
本実施形態に係る通信制御装置100は、例えば、
図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図10は、通信制御装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、補助記憶装置1400、通信I/F(インタフェース)1500、入出力I/F(インタフェース)1600が、バス1800により接続された形態を有する。
【0057】
CPU1100は、ROM1300または補助記憶装置1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0058】
補助記憶装置1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信I/F1500は、所定の通信網NWを介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網NWを介して他の機器へ送信する。CPU1100は、入出力I/F1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、および、キーボードやマウス等の入出力装置1700を制御する。CPU1100は、入出力I/F1600を介して、入出力装置1700からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータについて入出力I/F1600を介して入出力装置1700へ出力する。
【0059】
例えば、コンピュータ1000が本実施形態に係る通信制御装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部130の機能を実現する。
【0060】
〔6.その他〕
前述の実施形態および変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0061】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0062】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0063】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0064】
以上、実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で、本実施形態について実施をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10A 自社機器
10B 自社機器
10C 自社機器
20A 他社機器
20B 他社機器
10AP パケット
10BP パケット
10CP パケット
20AP パケット
20BP パケット
100 通信制御装置
100A 通信制御装置
100B 通信制御装置
110 通信部
120 記憶部
121 キュー割当条件記憶部
122 送信条件記憶部
130 制御部
131 受信部
132 判定部
133 割当部
134 設定部
135 送信部
200 スイッチングハブ
200A スイッチングハブ
200B スイッチングハブ
1000 コンピュータ
1100 CPU
1200 RAM
1300 ROM
1400 補助記憶装置
1500 通信I/F
1600 入出力I/F
1700 入出力装置
1800 バス
NW 所定の通信網