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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004311
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H03H9/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103911
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097AA29
5J097BB02
5J097BB11
5J097HA04
5J097JJ04
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK10
5J097LL01
(57)【要約】
【課題】弾性波デバイスにおいて、デバイスチップのパッケージ基板に対するシェア強度を低下させることなく、バンプを合理的に小型化できるようにする。
【解決手段】パッケージ基板2の一面2aにIDT電極7を含む機能素子を有する主面3aを向き合わせて前記パッケージ基板2に実装されるデバイスチップ3と前記パッケージ基板2とを、前記機能素子を含む前記デバイスチップ3側の回路と前記パッケージ基板2側の回路とを電気的に接続させるバンプ4と、このバンプ4の近傍にあって前記パッケージ基板2の前記一面2aと前記デバイスチップ3の前記主面3aとの間に介在される接着層10とからなる主固着部11によって固着させてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ基板の一面にIDT電極を含む機能素子を有する主面を向き合わせて前記パッケージ基板に実装されるデバイスチップと前記パッケージ基板とを、
前記機能素子を含む前記デバイスチップ側の回路と前記パッケージ基板側の回路とを電気的に接続させるバンプと、このバンプの近傍にあって前記パッケージ基板の前記一面と前記デバイスチップの前記主面との間に介在される接着層とからなる主固着部によって固着させてなる、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記接着層を、前記デバイスチップの前記主面における前記回路を構成する配線パターンの形成領域を含む領域に形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る全周を覆い、かつ、前記バンプとの間に隙間を作らないように、前記接着層を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る全周を覆い、かつ、前記バンプとの間に隙間を作るようにして、前記接着層を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記接着層における前記突き出し中心軸に直交する向きの断面輪郭形状を円形又は楕円形状としてなる、請求項3又は請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る4分の一の範囲を覆うようにして前記接着層を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る2分の一の範囲を覆うようにして前記接着層を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記デバイスチップは四角形の板状をなすと共に、少なくともその四隅に前記主固着部を形成しており、かつ、隣り合う前記主固着部間に前記接着層のみよりなる副固着部を形成させてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適した弾性波デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用される弾性波デバイスとして、パッケージ基板にバンプを介してデバイスチップを実装させてなるものがある(図13参照)。
【0003】
図13中、符号100はパッケージ基板、符号101はデバイスチップ、符号102はバンプ、符号103はデバイスチップ側に形成されたバンプパッド(電極パッド)、符号104はパッケージ基板100側に形成されたバンプパッド(電極パッド)、符号105は弾性波デバイスをマザーボードに接続するための外部電極パッドである。デバイスチップ101とパッケージ基板100との間には前記バンプ102及びバンプパッド103、104の厚さ分の隙間が形成される。パッケージ基板100の一面側には封止樹脂層106が前記隙間を気密封止するように形成されており、これにより弾性波デバイスは中空構造部107(内部空間ないしエアキャビティ)を備えている。デバイスチップ101は前記中空構造部107に臨んだ領域にIDT電極を含む機能素子108を有している。
【0004】
ここで、デバイスチップ101のパッケージ基板100に対するシェア強度(接続強度)は、前記封止樹脂層106の形成前にパッケージ基板100に実装されたデバイスチップ101に対しパッケージ基板100の一面に沿う向きの負荷を与えることで測定される。図13に示される構造では、デバイスチップ101とパッケージ基板100との固着はバンプ102によりなされており、シェア強度はバンプ102の断面積(デバイスチップ101からのバンプ102の突き出し中心軸102aに直交する向きのバンプ102の断面積)に依存するためバンプ102を小型化することに限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弾性波デバイスにおいて、デバイスチップのパッケージ基板に対するシェア強度を低下させることなく、バンプを合理的に小型化できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、弾性波デバイスを、パッケージ基板の一面にIDT電極を含む機能素子を有する主面を向き合わせて前記パッケージ基板に実装されるデバイスチップと前記パッケージ基板とを、
前記機能素子を含む前記デバイスチップ側の回路と前記パッケージ基板側の回路とを電気的に接続させるバンプと、このバンプの近傍にあって前記パッケージ基板の前記一面と前記デバイスチップの前記主面との間に介在される接着層とからなる主固着部によって固着させてなる、ものとした。
【0007】
前記接着層を、前記デバイスチップの前記主面における前記回路を構成する配線パターンの形成領域を含む領域に形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る全周を覆い、かつ、前記バンプとの間に隙間を作らないように、前記接着層を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る全周を覆い、かつ、前記バンプとの間に隙間を作るようにして、前記接着層を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記接着層における前記突き出し中心軸に直交する向きの断面輪郭形状を円形又は楕円形状とすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る4分の一の範囲を覆うようにして前記接着層を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記バンプにおける前記デバイスチップの前記主面からの突き出し中心軸を巡る2分の一の範囲を覆うようにして前記接着層を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記デバイスチップは四角形の板状をなすと共に、少なくともその四隅に前記主固着部を形成しており、かつ、隣り合う前記主固着部間に前記接着層のみよりなる副固着部を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、前記主固着部を前記バンプと前記接着層とから構成することから、バンプを小型化しても前記シェア強度の低下を招かないようにすることができる。この結果、デバイスチップの主面に形成されるバンプパッドがこの主面に占める面積を小さくすることができ、これにより第一に、前記バンプパッドが前記主面に占める面積の前記減少分をデバイスチップの小型化に振り向けることができる。また、第二に、前記バンプパッドが前記主面に占める面積の前記減少分をデバイスチップにおける機能素子となるパターンの形成面積の増大に振り向けることができる。これにより、デバイスチップにおけるパターンレイアウトの自由度を高めることができ、素子追加による機能追加や特性安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第一例)の断面構成図であり、図2におけるA-A線位置で断面にしている。
図2図2は、前記第一例の平面構成図である。
図3図3は、前記第一例の主固着部の構成を理解しやすいように同部分とデバイスチップ及びパッケージ基板とを分離して示した斜視構成図である。
図4図4は、前記第一例のデバイスチップに形成される共振器の一例を示した構成図である。
図5図5は、前記第一例のデバイスチップに形成される回路の一例を示した構成図である。
図6図6は、前記第一例の製造工程中のステップの一つを示した平面構成図であり、デバイスチップとなるウエハの一部の様子を示している。
図7図7は、前記第一例の製造工程の各ステップを示した要部断面構成図であり、a図、b図、c図、d図、e図の順で進行する。
図8図8は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第二例)の主固着部を表した要部斜視構成図である。
図9図9は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第三例)の主固着部を表した要部斜視構成図である。
図10図10は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第四例)の主固着部を表した要部斜視構成図である。
図11図11は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第五例)の平面構成図である。
図12図12は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイス(第六例)の平面構成図である。
図13図13は、弾性波デバイスの既存構成例を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0017】
かかる弾性波デバイス1は、パッケージ基板2の一面2aに機能素子(SAWフィルタとなる回路、SAW共振子となる回路、抵抗となる素子、インダクタンスとなる素子、キャパシタンスとなる素子など)を有する主面3aを向き合わせて前記パッケージ基板2に実装されたデバイスチップ3を備えている。
【0018】
それと共に、かかる弾性波デバイス1は、前記機能素子の少なくとも一部をIDT電極7cとしている。
【0019】
典型的には、前記デバイスチップ3は、一辺を0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形の板状をなすように構成される。また、前記パッケージ基板2は、一辺を0.7ないし3mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形の板状をなすように構成される。弾性波デバイス1は厚さを0.4ないし0.6mm程度とする。
【0020】
その断面構造を図1に示す。図中符号3はデバイスチップ、符号3bはデバイスチップ3側のバンプパッド(電極パッド)、符号2はパッケージ基板、符号4は金などの導電性金属からなるバンプ、符号2bはパッケージ基板2側のバンプパッド(電極パッド)、符号2cは弾性波デバイス1をマザーボードに接続するための外部電極パッドである。
【0021】
前記機能素子を含む前記デバイスチップ3側の回路9(図5に一例を示す。)と前記パッケージ基板2側の回路(図示は省略する。)とは、デバイスチップ3側のバンプパッド3bとパッケージ基板2側のバンプパッド2bとの間に介在されて、両バンプパッド2b、3bにそれぞれ固着されたバンプ4によって電気的に接続されている。バンプパッド2b、3bおよびバンプ4はなじみの良い金属同士、典型的には金から構成され、金-金接合される。
【0022】
パッケージ基板2の一面2a(デバイスチップ3の実装側の面)とこの一面2aに向き合うデバイスチップ3の主面3aとの間には、前記バンプ4及びバンプパッド2b、3bの厚さ分の隙間が形成される。
【0023】
このようにパッケージ基板2の一面2a上にデバイスチップ3を実装させた状態から、パッケージ基板2の一面2a側に、封止樹脂層5が形成される。封止樹脂層5は、デバイスチップ3の主面3aに対向する背面3cと、デバイスチップ3の厚さ方向に沿った側面3dとを覆うと共に、デバイスチップ3の縁側においてデバイスチップ3とパッケージ基板2との間の前記隙間に入り込んでデバイスチップ3の全周に亘って前記隙間を気密封止している。これにより、デバイスチップ3の主面3aとパッケージ基板2の一面2aとの間には中空構造部6(内部空間ないしエアキャビティ)が形成されている。
【0024】
デバイスチップ3は、前記主面3aにおける中空構造部6に臨んだ部分に、IDT電極7cを含む機能素子、すなわち、SAWフィルタ、SAW共振子などを備えたものとなっている。
【0025】
デバイスチップ3は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ3には、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの圧電材料が用いられる。また、デバイスチップ3は、これら圧電材料を、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどの支持材に積層させて、構成される場合もある。
【0026】
図4にSAWフィルタとなる共振器7の一例を示す。共振器7はIDT電極7cと、IDT電極7cを挟むようにして形成される反射器7dとを有する。IDT電極7cは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指7e同士をこれらの一端側においてバスバー7fで接続させてなる。反射器7dは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指7eの端部間をバスバー7fで接続させてなる。
かかる共振器7は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
また、かかる共振器7は、一つのデバイスチップ3上に、複数形成される場合もある。
【0027】
図5に一つのデバイスチップ3上に備えられる回路9の一例の概念を示す。符号7aは入出力ポート間に直列に接続された共振器、符号7bは入出力ポート間に並列に接続された共振器、符号8はグランド、符号9aは配線パターンを示す。すなわち、図5の回路によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。
【0028】
この実施の形態にあっては、前記デバイスチップ3と前記パッケージ基板2とは、前記バンプ4と、このバンプ4の近傍にあって前記パッケージ基板2の前記一面2aと前記デバイスチップ3の前記主面3aとの間に介在される接着層10とからなる主固着部11によって固着されるようになっている。
【0029】
具体的には、第一に、デバイスチップ3側のバンプパッド3b上に形成させたバンプ4を、パッケージ基板2側のバンプパッド2bに典型的には超音波接合法により接合させる。そして、第二に、前記接着層10の加熱溶融後の固化により前記接着層10をデバイスチップ3の主面3aとパッケージ基板2の一面2aとにそれぞれ固着させる。これにより、主固着部11によってデバイスチップ3とパッケージ基板2とを強固に一体化させている。
【0030】
デバイスチップ3のパッケージ基板2に対する接続強度(シェア強度)は、パッケージ基板2に実装されたデバイスチップ3に対し前記封止樹脂層5の形成前(図7(e)の段階)にパッケージ基板2の一面2aに沿う向きの負荷を与えることで測定される(この負荷の向きを図1に符号yで示す。)。デバイスチップ3とパッケージ基板2との固着をバンプ4のみによらしめていた従来の手法ではシェア強度はバンプ4の断面積(デバイスチップ3の主面2aからのバンプ4の突き出し中心軸4aに直交する向きのバンプ4の断面積)に依存するためバンプ4を小型化することに限界があった。対し、この実施の形態にかかる弾性波デバイスでは、前記主固着部11をバンプ4と前記のように形成される接着層10とから構成することから、バンプ4を小型化しても前記シェア強度の低下を招かないようにすることができる。この結果、デバイスチップ3の主面3aに形成されるバンプパッド3bがこの主面3aに占める面積を小さくすることができ、これにより第一に、バンプパッド3bが前記主面3aに占める面積の前記減少分をデバイスチップ3の小型化に振り向けることができる。また、第二に、バンプパッド3bが前記主面3aに占める面積の前記減少分をデバイスチップ3における機能素子となるパターンの形成面積の増大に振り向けることができ、デバイスチップ3におけるパターンレイアウトの自由度を高めることができる。
【0031】
具体的には、主固着部11をバンプ4と接着層10とから構成することで、前記突き出し中心軸4aに直交する向きでのバンプ4の直径を30μmないし100μmの範囲に設定可能となる。
【0032】
前記接着層10はデバイスチップ3とパッケージ基板2とを強固に一体化する接着力を備え、また、絶縁性を備える。また、前記接着層10には、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)系樹脂、アクリル系樹脂などの感光性を有する熱硬化型接着剤を用いることが好ましい。
【0033】
前記接着層10を、前記デバイスチップ3の前記主面3aにおける前記回路9(図5に一例を示す。)を構成する配線パターン9aの形成領域3g(図3参照)を含む領域に形成させるようにすれば、デバイスチップ3側のバンプパッド3bの形成箇所以外の箇所で前記シェア強度を向上させる構造を弾性波デバイス1に持たせることができる。
【0034】
図示の例では、前記デバイスチップ3は四角形の板状をなすと共に、少なくともその四隅にそれぞれ前記主固着部11を形成している。
【0035】
図1ないし図7に示される第一例では、接着層10を、前記バンプ4における前記デバイスチップ3の前記主面3aからの突き出し中心軸4aを巡る全周を覆い、かつ、前記バンプ4との間に隙間を作らないように形成させている。この第一例では、接着層10は前記中心軸4aに筒軸を沿わせるように形成された筒状をなし、接着層10の内面10aとバンプ4の外面4bとは、前記中心軸4aを巡るいずれの位置でも密着しており、かつ、この密着状態は前記中心軸4aに沿ったいずれの位置でも同様となっている。
【0036】
より具体的には、第一例では、前記接着層10における前記中心軸4aに直交する向きの内外の断面輪郭形状を円形としている。図示は省略するが、前記接着層10における前記中心軸4aに直交する向きの断面輪郭形状は楕円形状となっていても良い。
【0037】
また、前記接着層10は、前記デバイスチップ3の前記主面3aにあって前記回路9の一部となるバンプパッド3b上に形成されていると共に、図1に示されるように、前記接着層10における前記中心軸4aに直交する向きでの太さ10bを、同じ向きでの前記バンプパッド3bの寸法3hよりも大きくするように形成している。
【0038】
図8に示される第二例では、接着層10を、前記バンプ4における前記デバイスチップ3の前記主面3aからの突き出し中心軸4aを巡る全周を覆い、かつ、前記バンプ4との間に隙間sを作るように形成させている。かかる隙間sは、好ましくは5μm以下、典型的には2ないし3μmに設定される。この第二例では、接着層10は前記中心軸4aに筒軸を沿わせるように形成された筒状をなし、接着層10の内面10aとバンプ4の外面4bとの間には、前記中心軸4aを巡るいずれの位置でも前記のような隙間sが形成され、かつ、この隙間sの形成状態は前記中心軸4aに沿ったいずれの位置でも同様となっている。
【0039】
図9に示される第三例では、接着層10を、前記バンプ4における前記デバイスチップ3の前記主面3aからの突き出し中心軸4aを巡る4分の一の範囲を覆うように形成させている。この第三例では、バンプ4の外面4bと接着層10の内面10aとは密着しているが、図示は省略するが両者の間には前記のような隙間sが形成されていても良い。
【0040】
図10に示される第四例では、接着層10を、前記バンプ4における前記デバイスチップ3の前記主面3aからの突き出し中心軸4aを巡る2分の一の範囲を覆うように形成させている。この第四例では、バンプ4の外面4bと接着層10の内面10aとは密着しているが、図示は省略するが両者の間には前記のような隙間sが形成されていても良い。
【0041】
図11に示される第五例では、デバイスチップ3の四隅にそれぞれ前記主固着部11を形成させると共に、隣り合う主固着部11間にそれぞれデバイスチップ3の縁部に沿って続くように接着層10を形成して、これにより、隣り合う前記主固着部11間に前記接着層10のみよりなる副固着部12を形成させている。この第五例では、主固着部11と副固着部12とによりデバイスチップ3の主面3aの中央側を囲繞する四角形の枠状部を形成させており、この枠状部内に機能素子が位置されるようになっている。
【0042】
図12に示される第六例では、デバイスチップ3の四隅にそれぞれ形成された前記主固着部11の間、つまり、隣り合う前記主固着部11間に前記接着層10のみよりなる副固着部12を形成させている。この第六例では、デバイスチップ3の主面3a中、前記主固着部11を構成するバンプ4の形成領域3eと、機能素子の所定の形成領域3fとを除いた、残りの領域の全体を接着層10で覆っており、これにより、隣り合う主固着部11間にそれぞれ副固着部12を形成させている。
【0043】
以上に説明した弾性波デバイス1は、以下のようにすることで、適切且つ合理的に製造し得る。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1の製造ステップの要部を図6及び図7に示す。
【0044】
先ず、ウエハ13上の一つのデバイスチップ3を構成する領域13bに対してそれぞれ、共振器7などの機能素子、バンプパッド3b、配線パターン(図示は省略する。)を形成させる。(ステップ1/図6)。ウエハ13としては典型的にはタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムの単結晶ウエハや、これらの薄ウエハとスピネルなどの支持体ウエハとを接合してなる、工業規格化された直径4インチウエハが用いられ、直径4インチウエハの場合一つのウエハ13より2万個程度のデバイスチップ3が生成される。図6はウエハ13の一部を示しており、同図中符号13aはダイシングラインである。
【0045】
次いで、前記ウエハ13に接着層10となるフィルム14を重ね、貼り付ける。このフィルム14としては常温でその粘着力によりウエハ13側に張り付く機能を備え、かつ、フォトリソグラフィ技術における露光と現像とを通じて不要部分をウエハ13上から除去可能な機能を備えたものを用いる(ステップ2/図7(a))。
【0046】
次いで、前記各領域13bにおいて、前記露光と現像とを通じて、バンプパッド3bの近傍に接着層10を形成する(ステップ3/図7(b))。
【0047】
次いで、前記各領域16aにおいてそれぞれ、バンプパッド3b上にバンプ4を形成させる(ステップ4/図7(c))。
【0048】
次いで、ウエハ13に対するダイシングにより、ウエハ13から独立したデバイスチップ3を複数生成する(ステップ5/図7(d))。
【0049】
次いで、ステップ5で得られたデバイスチップ3をパッケージ基板2となる集合基板15にフリップチップ実装する。デバイスチップ3のバンプパッド3b上に一体的に形成されたバンプ4は典型的には超音波接合法によりパッケージ基板2となる集合基板15側のバンプパッド2bに固着される。それと共に、デバイスチップ3が実装された集合基板15に対し前記接着層10が溶融硬化する温度への加熱が施され、これにより、前記接着層10をデバイスチップ3及びパッケージ基板2となる集合基板15の双方に固着させる(ステップ6/図7(e))。この段階で前記シェア強度が測定され、バンプ4を小型化しながらも前記シェア強度の低下を招かない弾性波デバイス1の工程管理がなされる。
【0050】
最後に、パッケージ基板2となる集合基板15のデバイスチップ3の実装側に前記封止樹脂層5を形成させると共に、かかる集合基板15にダイシングを施すことで、本発明に係る構造を備えた弾性波デバイス1が生成される。
【0051】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0052】
1 弾性波デバイス
2 パッケージ基板
2a 一面
2b バンプパッド
2c 外部電極パッド
3 デバイスチップ
3a 主面
3b バンプパッド
3c 背面
3d 側面
3e バンプの形成領域
3f 機能素子の形成領域
3g 配線パターンの形成領域
4 バンプ
4a 突き出し中心軸
4b 外面
5 封止樹脂層
6 中空構造部
7、7a、7b 共振器
7c IDT電極
7d 反射器
7e 電極指
7f バスバー
8 グランド
9 回路
9a 配線パターン
10 接着層
10a 内面
11 主固着部
12 副固着部
13 ウエハ
13a ダイシングライン
13b 一つのデバイスチップを構成する領域
14 フィルム
15 集合基板
x 伝搬方向
s 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13