(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043120
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/02 20060101AFI20240322BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20240322BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60W10/00 102
F02D29/00 C
F02D29/00 G
B60W10/02
B60W10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148123
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 朝翔
(72)【発明者】
【氏名】小平 和生
(72)【発明者】
【氏名】工藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】千田 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241AA04
3D241AC01
3D241AC09
3D241AC15
3D241AC18
3D241AC19
3D241AD02
3D241AD04
3D241AD05
3D241AD10
3D241AD14
3D241AD41
3D241AD51
3D241AE03
3D241AE22
3G093AA04
3G093BA17
3G093DA01
3G093DA05
3G093DA06
3G093DA07
3G093DA09
3G093DB05
3G093DB15
3G093EA02
3G093EB01
3G093FB02
(57)【要約】
【課題】ロックアップピストンとタービンハブとの摩耗を抑制する。
【解決手段】車両用制御装置は、トルクコンバータのタービンランナに連結されるフランジ部と、タービン軸に連結されるハブ部と、を備えるタービンハブを有する。前記車両用制御装置は、前記ハブ部の外周面に摺動可能に支持される円筒部と、前記円筒部から径方向外側に拡がる円盤部と、を備えるロックアップピストンを有する。前記車両用制御装置は、前記タービンハブと前記ロックアップピストンとの双方に連結されるダンパ機構と、前記トルクコンバータに連結されるエンジンを制御する制御システムと、を有する。前記制御システムは、前記ハブ部と前記円筒部との摺動面圧および摺動速度の積であるPV値を算出する。前記制御システムは、前記PV値が閾値を上回る場合に、前記PV値が前記閾値を下回る場合よりも、エンジントルクを緩やかに変化させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる車両用制御装置であって、
トルクコンバータのタービンランナに連結されるフランジ部と、タービン軸に連結されるハブ部と、を備えるタービンハブと、
前記ハブ部の外周面に摺動可能に支持される円筒部と、前記円筒部から径方向外側に拡がる円盤部と、を備えるロックアップピストンと、
前記タービンハブと前記ロックアップピストンとの双方に連結され、前記ハブ部と前記円筒部との相対回転を許容するダンパ機構と、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記トルクコンバータに連結されるエンジンを制御する制御システムと、
を有し、
前記制御システムは、
前記ロックアップピストンが前記エンジンのクランク軸に締結された状態のもとで、前記ハブ部と前記円筒部との摺動面圧および摺動速度の積であるPV値を算出し、
前記PV値が閾値を上回る場合に、前記PV値が前記閾値を下回る場合よりも、エンジントルクを緩やかに変化させる、
車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、
エンジン回転数およびエンジントルクに基づいて前記摺動面圧を推定し、
エンジントルクの変化速度に基づいて前記摺動速度を推定する、
車両用制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、
エンジン回転数が高くなるほどに前記摺動面圧を高く推定し、
エンジントルクが大きくなるほどに前記摺動面圧を高く推定し、
エンジントルクの変化速度が高くなるほどに前記摺動速度を高く推定する、
車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、
前記PV値が前記閾値を上回る場合に、前記PV値が前記閾値を下回る場合よりも、エンジントルクの目標変化速度を低く設定する、
車両用制御装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、
前記PV値が前記閾値を上回る場合に、前記PV値が前記閾値を下回る場合よりも、エンジントルクの目標変化量を小さく設定する、
車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるパワートレインには、エンジンおよびこれに連結されるトルクコンバータが設けられている。また、トルクコンバータには、入力側のクランク軸と出力側のタービン軸とを直結するロックアップクラッチが設けられている。さらに、トルクコンバータには、ロックアップクラッチ締結中におけるクランク軸とタービン軸との相対回転を許容するダンパ機構、つまりロックアップピストンとタービンハブとの相対回転を許容するダンパ機構が設けられている(特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-113904号公報
【特許文献2】特開2011-64291号公報
【特許文献3】特開2019-44903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロックアップクラッチ締結中にエンジントルクが増減した場合には、ダンパ機構が捩れてロックアップピストンとタービンハブとが相対的に回転する。このとき、ロックアップピストンとタービンハブとの接触部位は互いに摺動することになるが、この接触部位の過度な摩耗はトルクコンバータ内での作動油循環を招いてオイルポンプの仕事量を増加させる要因であった。また、ロックアップピストンとタービンハブとの接触部位の過度な摩耗は、ロックアップクラッチの締結不良を生じさせる要因であった。
【0005】
本発明の目的は、ロックアップピストンとタービンハブとの摩耗を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の車両用制御装置は、車両に設けられる車両用制御装置であって、トルクコンバータのタービンランナに連結されるフランジ部と、タービン軸に連結されるハブ部と、を備えるタービンハブと、前記ハブ部の外周面に摺動可能に支持される円筒部と、前記円筒部から径方向外側に拡がる円盤部と、を備えるロックアップピストンと、前記タービンハブと前記ロックアップピストンとの双方に連結され、前記ハブ部と前記円筒部との相対回転を許容するダンパ機構と、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記トルクコンバータに連結されるエンジンを制御する制御システムと、を有し、前記制御システムは、前記ロックアップピストンが前記エンジンのクランク軸に締結された状態のもとで、前記ハブ部と前記円筒部との摺動面圧および摺動速度の積であるPV値を算出し、前記PV値が閾値を上回る場合に、前記PV値が前記閾値を下回る場合よりも、エンジントルクを緩やかに変化させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、制御システムは、ロックアップピストンがエンジンのクランク軸に締結された状態のもとで、ハブ部と円筒部との摺動面圧および摺動速度の積であるPV値を算出し、PV値が閾値を上回る場合に、PV値が閾値を下回る場合よりも、エンジントルクを緩やかに変化させる。これにより、ロックアップピストンとタービンハブとの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である車両用制御装置を備えた車両の一例を示す図である。
【
図3】制御ユニットの基本構造の一例を示す図である。
【
図4】トルクコンバータおよびその近傍を示す図である。
【
図5】バルブボディと共にトルクコンバータを示す断面図である。
【
図6】
図4のA-A線に沿ってロックアップダンパおよびロックアップピストンの一部を示す図である。
【
図7】ロックアップダンパの作動状況の一例を示す図である。
【
図8】摩耗抑制制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】エンジン回転数およびエンジントルクに基づき推定される摺動面圧の一例を示す図である。
【
図10】ハブ部と円筒部との摺動部位およびその近傍を示す断面図である。
【
図11】ハブ部と円筒部との摺動部位に入力される荷重の一例を示す模式図である。
【
図12】ハブ部と円筒部との摺動部位に入力される荷重の一例を示す模式図である。
【
図13】エンジントルクおよび摺動速度の関係の一例を示す図である。
【
図14】PV値と比較される閾値の一例を示す図である。
【
図15】トルク変化抑制処理の実行状況の一例を示す図である。
【
図16】トルク変化抑制処理における他の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[車両]
図1は本発明の一実施形態である車両用制御装置10を備えた車両11の一例を示す図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12およびトランスミッション13からなるパワートレイン14が搭載されている。トランスミッション13には、トルクコンバータ15が組み込まれるとともに、自動変速機や無段変速機等の変速機構16が組み込まれている。また、トランスミッション13の出力軸17には、プロペラ軸18およびデファレンシャル機構19を介して車輪20が連結されている。なお、図示するパワートレイン14は、後輪駆動用のパワートレインであるが、これに限られることはなく、前輪駆動用や全輪駆動用のパワートレインであっても良い。
【0011】
図2は車両用制御装置10の一例を示す図である。
図2に示すように、パワートレイン14に組み込まれたトルクコンバータ15や変速機構16等を制御するため、パワートレイン14には電磁バルブや油路等からなるバルブボディ21が設けられている。また、バルブボディ21には、エンジン12によって駆動されるオイルポンプ22が接続されている。オイルポンプ22から圧送される作動油は、バルブボディ21を経て調圧された後にトルクコンバータ15や変速機構16等に対して供給される。また、バルブボディ21を介してトルクコンバータ15等を制御するため、バルブボディ21にはミッション制御ユニット23が接続されている。
【0012】
また、エンジン12の吸気マニホールド24には、吸入空気量を調整するスロットルバルブ25が設けられている。さらに、エンジン12には、吸気ポートやシリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ26が設けられており、イグナイタや点火プラグ等からなる点火装置27が設けられている。エンジントルクやエンジン回転数を制御するため、スロットルバルブ25、インジェクタ26および点火装置27等には、エンジン制御ユニット28が接続されている。
【0013】
[制御システム]
図2に示すように、車両用制御装置10には、パワートレイン14等を制御するため、複数の電子制御ユニットからなる制御システム30が設けられている。制御システム30を構成する電子制御ユニットとして、前述したミッション制御ユニット23およびエンジン制御ユニット28が設けられるとともに、これらの制御ユニット23,28に制御信号を出力する車両制御ユニット31が設けられている。これらの制御ユニット23,28,31は、CAN等の車載ネットワーク29を介して互いに通信可能に接続されている。車両制御ユニット31は、各種制御ユニットや後述する各種センサからの入力情報に基づき、エンジン12やトルクコンバータ15等の作動目標を設定する。そして、エンジン12やトルクコンバータ15等の作動目標に応じた制御信号を生成し、これらの制御信号をエンジン制御ユニット28やミッション制御ユニット23に出力する。
【0014】
車両制御ユニット31に接続されるセンサとして、車両11の走行速度である車速を検出する車速センサ32、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルセンサ33、およびブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキセンサ34等がある。また、車両制御ユニット31には、制御システム30を起動する際に運転者によって操作されるスタートスイッチ35が接続されている。さらに、エンジン制御ユニット28に接続されるセンサとして、エンジン12に設けられるクランク軸36の回転角を検出するクランク角センサ37、エンジン12の吸入空気量を検出するエアフローメータ38、エンジン12の冷却水温を検出する水温センサ39、およびスロットルバルブ25の開度を検出するスロットル開度センサ40等がある。なお、エンジン制御ユニット28は、各種センサからの検出信号に基づいて、クランク軸36の出力トルクであるエンジントルクを算出することができ、クランク軸36の回転速度であるエンジン回転数を算出することができる。
【0015】
図3は制御ユニット23,28,31の基本構造の一例を示す図である。
図3に示すように、電子制御ユニットである制御ユニット23,28,31は、プロセッサ50およびメインメモリ(メモリ)51等が組み込まれたマイクロコントローラ52を有している。メインメモリ51には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ50によってプログラムが実行される。プロセッサ50とメインメモリ51とは、互いに通信可能に接続されている。なお、マイクロコントローラ52に複数のプロセッサ50を組み込んでも良く、マイクロコントローラ52に複数のメインメモリ51を組み込んでも良い。
【0016】
また、制御ユニット23,28,31には、入力回路53、駆動回路54、通信回路55、外部メモリ56および電源回路57等が設けられている。入力回路53は、各種センサから入力される信号を、マイクロコントローラ52に入力可能な信号に変換する。駆動回路54は、マイクロコントローラ52から出力される信号に基づき、前述したインジェクタ26等の各種デバイスに対する駆動信号を生成する。通信回路55は、マイクロコントローラ52から出力される信号を、他の制御ユニットに向けた通信信号に変換する。また、通信回路55は、他の制御ユニットから受信した通信信号を、マイクロコントローラ52に入力可能な信号に変換する。さらに、電源回路57は、マイクロコントローラ52、入力回路53、駆動回路54、通信回路55および外部メモリ56等に対し、安定した電源電圧を供給する。また、不揮発性メモリ等からなる外部メモリ56には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。
【0017】
[トルクコンバータ]
図4はトルクコンバータ15およびその近傍を示す図であり、
図5はバルブボディ21と共にトルクコンバータ15を示す断面図である。なお、
図5には、バルブボディ21の一部およびトルクコンバータ15の一部が示されている。
【0018】
図4および
図5に示すように、トルクコンバータ15は、エンジン12に連結されるポンプシェル60を有している。つまり、エンジン12のクランク軸36には、ドライブプレート61を介してポンプシェル60が連結されている。また、トルクコンバータ15は、ポンプシェル60に固定されるポンプインペラ62と、ポンプインペラ62に対向するタービンランナ63とを備えている。タービンランナ63にはタービンハブ64のフランジ部65が連結されており、タービンハブ64のハブ部66にはタービン軸67が連結されている。トルクコンバータ15には作動油が供給されており、ポンプインペラ62からタービンランナ63には作動油を介してエンジントルクが伝達される。なお、タービン軸67には変速機構16が連結されており、ポンプシェル60にはチェーン機構68を介してオイルポンプ22が連結されている。
【0019】
[ロックアップクラッチ]
トルクコンバータ15には、クランク軸36とタービン軸67とを直結するロックアップクラッチ70が設けられている。ロックアップクラッチ70は、ポンプシェル60に収容されるロックアップピストン71を有している。このロックアップピストン71は、ポンプシェル60のフロントカバー72に対向している。また、ロックアップピストン71は、タービンハブ64のハブ部66の外周面66aに摺動可能に支持される円筒部73と、この円筒部73から径方向外側に拡がる円盤部74と、を有している。このようなロックアップピストン71をポンプシェル60内に収容することにより、ポンプシェル60内にはアプライ室75とリリース室76とが区画されている。すなわち、ロックアップピストン71を境に、タービンランナ63側にはアプライ室75が区画されており、フロントカバー72側にはリリース室76が区画されている。
【0020】
アプライ室75やリリース室76に作動油を供給するため、トルクコンバータ15には前述したバルブボディ21が接続されている。
図5に示すように、バルブボディ21には、クラッチ圧制御弁80、ロックアップ制御弁81および流量制御弁82が設けられている。クラッチ圧制御弁80には、オイルポンプ22から吐出された作動油を案内する吐出油路83が接続されている。また、ロックアップ制御弁81には、クラッチ圧制御弁80からの作動油が供給される供給油路84が接続されており、流量制御弁82を介して作動油を排出する排出油路85が接続されている。さらに、ロックアップ制御弁81には、アプライ室75に連通するアプライ油路86が接続されており、リリース室76に連通するリリース油路87が接続されている。
【0021】
ロックアップクラッチ70を締結する際には、油路切替弁であるロックアップ制御弁81の図示しないスプール弁軸が締結位置に制御される。これにより、ロックアップ制御弁81を介して供給油路84とアプライ油路86とが接続され、ロックアップ制御弁81を介して排出油路85とリリース油路87とが接続される。このように、ロックアップ制御弁81を制御することにより、
図5に矢印FL1で示すように、アプライ室75に作動油が供給されてリリース室76から作動油が排出される。そして、アプライ室75の圧力(以下、アプライ圧と記載する)が上昇して、リリース室76の圧力(以下、リリース圧と記載する)が低下すると、圧力差によってロックアップピストン71はフロントカバー72に近づく方向に移動する。これにより、ロックアップピストン71はフロントカバー72に押し付けられ、ロックアップクラッチ70は締結状態に切り替えられる。つまり、ロックアップクラッチ70の締結状態においては、ロックアップピストン71がフロントカバー72を介してクランク軸36に締結される。
【0022】
一方、ロックアップクラッチ70を解放する際には、ロックアップ制御弁81のスプール弁軸が解放位置に制御される。これにより、ロックアップ制御弁81を介して供給油路84とリリース油路87とが接続され、ロックアップ制御弁81を介して排出油路85とアプライ油路86とが接続される。このように、ロックアップ制御弁81を制御することにより、
図5に矢印FL2で示すように、リリース室76に作動油が供給されてアプライ室75から作動油が排出される。そして、アプライ圧が低下してリリース圧が上昇すると、圧力差によってロックアップピストン71はフロントカバー72から離れる方向に移動する。これにより、ロックアップピストン71はフロントカバー72から離され、ロックアップクラッチ70は解放状態に切り替えられる。なお、ロックアップクラッチ70は、車速に応じて切り替えることが可能である。例えば、車速が所定値を上回る場合には、ロックアップクラッチ70が締結状態に切り替えられる一方、車速が所定値を下回る場合には、ロックアップクラッチ70が開放状態に切り替えられる。
【0023】
[ロックアップダンパ]
トルクコンバータ15には、ロックアップダンパ(ダンパ機構)90が設けられている。このロックアップダンパ90は、ロックアップクラッチ締結中のトルク伝達経路に設けられている。ここで、
図6は
図4のA-A線に沿ってロックアップダンパ90およびロックアップピストン71の一部を示す図である。
図4~
図6に示すように、ロックアップダンパ90は、ロックアップピストン71に連結されるアウタプレート91を有している。アウタプレート91の外周部には複数の溝部92が形成されており、ロックアップピストン71の外周部には複数の爪部93が形成されている。アウタプレート91の溝部92にロックアップピストン71の爪部93を係合させることにより、ロックアップピストン71とアウタプレート91とは互いに連結されている。
【0024】
また、ロックアップダンパ90は、タービンハブ64を介してタービン軸67に連結されるインナプレート94を有している。タービンハブ64とインナプレート94とは、複数のピン部材95を用いて互いに連結されている。さらに、ロックアップダンパ90は、周方向に配置される複数のコイルスプリング96,97を有している。コイルスプリング96,97の一端部は、アウタプレート91の内側凸部98に接触しており、コイルスプリング96,97の他端部は、インナプレート94の外側凸部99に接触している。つまり、コイルスプリング96,97は、アウタプレート91とインナプレート94との間に設けられている。
【0025】
このように、ロックアップダンパ90のインナプレート94は、タービンハブ64に対して連結されており、ロックアップダンパ90のアウタプレート91は、ロックアップピストン71に対して連結されている。つまり、ロックアップダンパ90は、タービンハブ64とロックアップピストン71との双方に連結されている。前述したように、ロックアップダンパ90は、ロックアップクラッチ締結中のトルク伝達経路に設けられている。つまり、ロックアップクラッチ70が締結状態に切り替えられると、エンジントルクはフロントカバー72からロックアップピストン71に伝達される。また、ロックアップピストン71に伝達されたエンジントルクは、ロックアップダンパ90のアウタプレート91からコイルスプリング96,97を経てインナプレート94に伝達される。そして、ロックアップダンパ90のインナプレート94に伝達されたエンジントルクは、タービンハブ64を経てタービン軸67に伝達される。このように、ロックアップクラッチ締結中においては、ロックアップダンパ90を介してクランク軸36とタービン軸67との間のトルク伝達が行われている。
【0026】
続いて、ロックアップダンパ90の作動状態について説明する。
図7はロックアップダンパ90の作動状況の一例を示す図である。
図7には、ドライブ状態に作動するロックアップダンパ90が示されるとともに、コースト状態に作動するロックアップダンパ90が示されている。また、
図6および
図7においては、アウタプレート91とインナプレート94との相対位置を明確にするため、アウタプレート91上に目印として仮想点Poが示されており、インナプレート94上に目印として仮想点Piが示されている。なお、
図7に示した矢印αは、アウタプレート91およびインナプレート94の回転方向を示す矢印である。
【0027】
アクセルペダルの踏み込みによってエンジントルクが増加する加速走行時には、クランク軸36からタービン軸67に向けてトルクが伝達される。つまり、
図7のドライブ状態に矢印S1で示すように、アウタプレート91からコイルスプリング96を介してインナプレート94にトルクが伝達されるため、アウタプレート91はコイルスプリング96を圧縮しながらインナプレート94よりも先行する。このようなロックアップダンパ90のドライブ状態においては、矢印Xdで示すように、アウタプレート91はインナプレート94に対してドライブ側に相対回転する。つまり、ロックアップダンパ90はドライブ側に捩られ、アウタプレート91とインナプレート94との相対回転が許容される。
【0028】
一方、アクセルペダルの踏み込み解除によってエンジントルクが減少する減速走行時には、タービン軸67からクランク軸36に向けてトルクが伝達される。つまり、
図7のコースト状態に矢印S2で示すように、インナプレート94からコイルスプリング97を介してアウタプレート91にトルクが伝達されるため、インナプレート94はコイルスプリング97を圧縮しながらアウタプレート91よりも先行する。このようなロックアップダンパ90のコースト状態においては、矢印Xcで示すように、アウタプレート91はインナプレート94に対してドライブ側とは逆のコースト側に相対回転する。つまり、ロックアップダンパ90はコースト側に捩られ、アウタプレート91とインナプレート94との相対回転が許容される。
【0029】
[タービンハブとロックアップピストンとの摩耗]
前述したように、ロックアップクラッチ締結中においてはエンジントルク変動に応じて、ロックアップダンパ90がドライブ状態やコースト状態に作動する。つまり、エンジントルク変動に応じて、アウタプレート91とインナプレート94とがドライブ側やコースト側に相対回転する。ここで、アウタプレート91にはロックアップピストン71の円筒部73が連結されており、インナプレート94にはタービンハブ64のハブ部66が連結されている。このため、アウタプレート91とインナプレート94とが相対回転する際には、ハブ部66とこれに摺動可能に支持される円筒部73とが相対回転することになる。
【0030】
このように、ハブ部66と円筒部73とが相対回転する際に、ハブ部66と円筒部73との摺動面圧や摺動速度が過度に増加した場合には、ハブ部66の外周面66aと円筒部73の内周面73aとの摩耗を進行させてしまう虞がある。ハブ部66と円筒部73との摩耗を進行させることは、ハブ部66と円筒部73との隙間を拡げて作動油を循環させてしまう要因、つまりアプライ室75からリリース室76に作動油を流してオイルポンプ22の仕事量を増加させる要因である。また、ハブ部66と円筒部73との摩耗が進行することは、アプライ室75からリリース室76に作動油が流れる要因であり、ロックアップクラッチ70の締結不良を生じさせる要因である。このため、制御システム30は、ハブ部66と円筒部73とに生じる摩耗を抑制するため、後述する摩耗抑制制御を実行する。
【0031】
[摩耗抑制制御]
図8は摩耗抑制制御の実行手順の一例を示すフローチャートであり、
図9はエンジン回転数およびエンジントルクに基づき推定される摺動面圧Pの一例を示す図である。また、
図10はハブ部66と円筒部73との摺動部位およびその近傍を示す断面図であり、
図11および
図12はハブ部66と円筒部73との摺動部位に入力される荷重の一例を示す模式図である。なお、
図8に示される摩耗抑制制御の各ステップには、制御システム30を構成するプロセッサ50によって実行される処理が示されている。また、
図8に示される摩耗抑制制御は、制御システム30が起動された後に、制御システム30によって所定周期毎に実行される制御である。
【0032】
図8に示すように、ステップS10では、ロックアップクラッチ70が締結中であるか否かが判定される。ステップS10において、ロックアップクラッチ70が締結中であると判定された場合には、ステップS11に進み、エンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、ハブ部66と円筒部73との摺動面圧Pが推定される。つまり、
図9に示すように、エンジン回転数が高くなるほどに摺動面圧Pは高く推定され、エンジントルクが大きくなるほどに摺動面圧Pは高く推定される。ここで、摺動面圧Pとは、ハブ部66と円筒部73との摺動部位に作用する面圧であり、ヘルツの接触理論における平行二円柱の接触に基づき求められる面圧である。つまり、摺動面圧Pとは、ハブ部66と円筒部73との摺動部位に入力されるラジアル荷重、ハブ部66の外周面66aの曲率半径、円筒部73の内周面73aの曲率半径、ポアソン比、ヤング率、およびハブ部66と円筒部73との接触幅を用いることにより、ヘルツの接触理論から求められる面圧である。なお、ハブ部66と円筒部73との接触幅として、例えば、
図10に示すように、ハブ部66と円筒部73とが互いに対向する部位の幅Waから、Oリング溝100の幅Wbを減算した幅(Wa-Wb)が用いられる。
【0033】
摺動部位に入力されるラジアル荷重として、ロックアップピストン71、ロックアップダンパ90およびタービンランナ63からなる回転体アセンブリ101の偏心量によって定まる第1ラジアル荷重W1が考えられる。
図11に示すように、回転体アセンブリ101の重心位置G1が回転中心Ctから外れていた場合には、回転体アセンブリ101には径方向に第1ラジアル荷重W1が発生する。また、第1ラジアル荷重W1の大きさは、回転体アセンブリ101の偏心量および回転速度によって定まっている。ここで、量産される回転体アセンブリ101の偏心量は所定の設計範囲内であることから、制御システム30は、回転体アセンブリ101の回転速度であるエンジン回転数に基づいて第1ラジアル荷重W1を推定することが可能である。つまり、制御システム30は、エンジン回転数が高くなるほどに第1ラジアル荷重W1が大きくなるため、エンジン回転数が高くなるほどに摺動面圧Pを高く推定する。
【0034】
また、摺動部位に入力されるラジアル荷重として、ロックアップダンパ90を構成するコイルスプリング96,97のバラツキによって定まる第2ラジアル荷重W2が考えられる。
図12に示すように、コイルスプリング97のバネ力にバラツキが生じていた場合には、インナプレート94には径方向に第2ラジアル荷重W2が発生する。例えば、コイルスプリング97aのバネ力Fs1が、他のコイルスプリング97b,97cのバネ力Fs2よりも大きい場合には、インナプレート94に作用するバネ力のバランスが崩れることから、インナプレート94には第2ラジアル荷重W2が発生する。ここで、量産されるコイルスプリング96,97に関するバネ力のバラツキは所定の設計範囲内であることから、制御システム30は、コイルスプリング96,97を伸縮させるエンジントルクに基づいて第2ラジアル荷重W2を推定することが可能である。つまり、制御システム30は、エンジントルクが大きくなるほどに第2ラジアル荷重W2が大きくなるため、エンジントルクが大きくなるほどに摺動面圧Pを高く推定する。
【0035】
図8のフローチャートに示すように、ステップS11において、エンジン回転数およびエンジントルクに基づき摺動面圧Pが推定されると、ステップS12に進み、エンジントルクの変化速度に基づいてハブ部66と円筒部73との摺動速度Vが推定される。ここで、
図13はエンジントルクおよび摺動速度Vの関係の一例を示す図である。
図13に示すように、エンジントルクが減少すると(符号a1)、エンジントルクの変化速度(以下、トルク変化速度と記載する)の絶対値が増加する(符号b1)。このように、エンジントルクが減少すると、ロックアップダンパ90がコースト側に捩られ(符号c1)、ロックアップダンパ90の捩り速度の絶対値、つまりハブ部66と円筒部73との摺動速度Vの絶対値が増加する(符号d1)。また、エンジントルクが増加すると(符号a2)、トルク変化速度の絶対値が増加する(符号b2)。このように、エンジントルクが増加すると、ロックアップダンパ90がドライブ側に捩られ(符号c2)、ハブ部66と円筒部73との摺動速度Vの絶対値が増加する(符号d2)。このため、制御システム30は、エンジントルクの増減に伴うトルク変化速度が高くなるほどに摺動速度Vを高く推定する。
【0036】
これまで説明したように、ステップS11において摺動面圧Pが推定され、ステップS12において摺動速度Vが推定されると、ステップS13に進み、摺動面圧Pおよび摺動速度Vの積であるPV値が算出される。続くステップS14では、PV値が所定の閾値Xpvを上回るか否かが判定される。ステップS14において、PV値が閾値Xpvを上回ると判定された場合には、ハブ部66と円筒部73との摩耗が大きく進行する状況であることから、ステップS15に進み、エンジン12に対するトルク変化抑制処理が実行される。つまり、摺動面圧Pや摺動速度Vが高い状況であり、ハブ部66と円筒部73との摩耗を促進させる状況であるため、エンジントルクを緩やかに変化させるトルク変化抑制処理が実行される。一方、ステップS14において、PV値が閾値Xpv以下であると判定された場合には、ハブ部66と円筒部73との摩耗が抑えられる状況であることから、トルク変化抑制処理を実行することなくルーチンを抜ける。
【0037】
[トルク変化抑制処理]
図14はPV値と比較される閾値Xpvの一例を示す図である。
図14に符号x1で示すように、PV値が閾値Xpvを上回る領域では、ハブ部66と円筒部73との摺動面圧Pや摺動速度Vが高いことから、ハブ部66と円筒部73との摩耗を促進させてしまう虞がある。このため、PV値が閾値Xpvを上回る状況のもとで、エンジントルクを増減させる場合には、エンジントルクを緩やかに変化させるトルク変化抑制処理が実行される。後述するように、トルク変化抑制処理を実行することにより、摺動速度Vの過度な上昇を抑制することができ、PV値の過度な上昇を抑制することが可能となる。すなわち、
図14に矢印βで示すように、PV値を減少させるように摺動速度Vの過度な上昇が抑えられている。
【0038】
図15はトルク変化抑制処理の実行状況の一例を示す図である。
図15には、エンジントルクの減少過程においてPV値が閾値Xpvを上回る状況が示されている。また、
図15には、実施例としてトルク変化抑制処理を実行したときのエンジントルク等の推移が実線で示されており、比較例としてトルク変化抑制処理を実行しなかったときのエンジントルク等の推移が破線で示されている。
【0039】
図15に実線で示すように、エンジントルクの減少過程においてPV値が閾値Xpvを上回る場合には(符号a1)、エンジントルクの目標減少速度つまり目標変化速度が第1目標速度Tv1から第2目標速度Tv2に引き下げられる(矢印b1)。すなわち、PV値が閾値Xpvを上回る場合には、PV値が閾値Xpvを下回る場合よりも、エンジントルクの目標変化速度が低く設定される。ここで、第1目標速度Tv1とは、PV値が閾値Xpv以下である場合に設定されるエンジントルクの目標変化速度であり、第2目標速度Tv2とは、PV値が閾値Xpvを上回る場合に設定されるエンジントルクの目標変化速度である。このように、PV値の増加に伴って目標変化速度を第2目標速度Tv2に下げることにより、トルク変化速度の過度な上昇を抑えることができ(符号c1)、エンジントルクを緩やかに減少させることができる(符号d1)。これにより、摺動速度Vの過度な上昇を抑制するとともに(符号e1)、PV値の過度な上昇を抑制することができるため(符号a2)、ハブ部66と円筒部73との摩耗を抑制することができる。
【0040】
一方、
図15に破線で示すように、目標変化速度を第1目標速度Tv1に維持したままエンジントルクを減少させた場合には、トルク変化速度が過度に上昇するとともに(符号f1)、エンジントルクが急速に減少することになる(符号g1)。この場合には、摺動速度Vが過度に上昇するとともに(符号h1)、PV値が過度に上昇することから(符号i1)、ハブ部66と円筒部73との摩耗を進行させてしまう虞がある。前述したように、制御システム30は、PV値が閾値Xpvを上回る場合に、PV値が閾値Xpvを下回る場合よりも、エンジントルクの目標変化速度を低く設定している。これにより、摺動速度Vの過度な上昇つまりPV値の過度な上昇を抑制することができ、ハブ部66と円筒部73との摩耗を抑えることができる。
【0041】
[他実施形態]
前述の説明では、トルク変化抑制処理として、エンジントルクの減少過程においてエンジントルクの目標変化速度を低く設定しているが、これに限られることはなく、他の制御方法によってエンジントルクを緩やかに変化させても良い。ここで、
図16はトルク変化抑制処理における他の制御例1~3を示す図である。
図16には、実施例としてトルク変化抑制処理を実行したときのエンジントルクの推移が実線で示されており、比較例としてトルク変化抑制処理を実行しなかったときのエンジントルクの推移が破線で示されている。
【0042】
図16に制御例1として示すように、エンジントルクを減少させる場合に、トルク変化抑制処理として、エンジントルクの目標減少量(目標変化量)を小さく設定しても良い。つまり、エンジントルクの減少過程においてPV値が閾値Xpvを上回る場合には、エンジントルクの目標減少量を第1目標減少量T1aから第2目標減少量T1bに小さくしても良い。すなわち、PV値が閾値Xpvを上回る場合には、PV値が閾値Xpvを下回る場合よりも、エンジントルクの目標減少量を小さく設定しても良い。このように、PV値の増加に伴ってエンジントルクの目標減少量を小さくした場合であっても、エンジントルクを緩やかに減少させることができるため、摺動速度Vの過度な上昇つまりPV値の過度な上昇を抑えることができ、ハブ部66と円筒部73との摩耗を抑えることができる。なお、第1目標減少量T1aとは、PV値が閾値Xpv以下である場合に設定されるエンジントルクの目標変化量であり、第2目標減少量T1bとは、PV値が閾値Xpvを上回る場合に設定されるエンジントルクの目標変化量である。
【0043】
図16に制御例2として示すように、エンジントルクを増加させる場合に、トルク変化抑制処理として、エンジントルクの目標増加速度(目標変化速度)を低く設定しても良い。つまり、エンジントルクの増加過程においてPV値が閾値Xpvを上回る場合には、エンジントルクの目標増加速度を第1目標速度T2aから第2目標速度T2bに下げても良い。すなわち、PV値が閾値Xpvを上回る場合には、PV値が閾値Xpvを下回る場合よりも、エンジントルクの目標増加速度を低く設定しても良い。このように、PV値の増加に伴ってエンジントルクの目標増加速度を低くした場合であっても、エンジントルクを緩やかに増加させることができるため、摺動速度Vの過度な上昇つまりPV値の過度な上昇を抑えることができ、ハブ部66と円筒部73との摩耗を抑えることができる。なお、第1目標速度T2aとは、PV値が閾値Xpv以下である場合に設定されるエンジントルクの目標変化速度であり、第2目標速度T2bとは、PV値が閾値Xpvを上回る場合に設定されるエンジントルクの目標変化速度である。
【0044】
図16に制御例3として示すように、エンジントルクを増加させる場合に、トルク変化抑制処理として、エンジントルクの目標増加量(目標変化量)を小さく設定しても良い。つまり、エンジントルクの増加過程においてPV値が閾値Xpvを上回る場合には、エンジントルクの目標増加量を第1目標増加量T3aから第2目標増加量T3bに小さくしても良い。すなわち、PV値が閾値Xpvを上回る場合には、PV値が閾値Xpvを下回る場合よりも、エンジントルクの目標増加量を小さく設定しても良い。このように、PV値の増加に伴ってエンジントルクの目標増加量を小さくした場合であっても、エンジントルクを緩やかに増加させることができるため、摺動速度Vの過度な上昇つまりPV値の過度な上昇を抑えることができ、ハブ部66と円筒部73との摩耗を抑えることができる。なお、第1目標増加量T3aとは、PV値が閾値Xpv以下である場合に設定されるエンジントルクの目標変化量であり、第2目標増加量T3bとは、PV値が閾値Xpvを上回る場合に設定されるエンジントルクの目標変化量である。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、3つの制御ユニットによって制御システム30を構成しているが、これに限られることはなく、1つの制御ユニットによって制御システム30を構成しても良く、2つや4つ以上の制御ユニットによって制御システム30を構成しても良い。また、前述の説明では、車速に基づいてロックアップクラッチ70を締結しているが、これに限られることはなく、車速および要求駆動力に基づいてロックアップクラッチ70を締結しても良い。
【0046】
前述の説明では、PV値が閾値Xpvを上回ると、直ちにトルク変化抑制処理を実行しているが、これに限られることはない。例えば、PV値が閾値Xpvを上回る度にカウント処理を実行し、所定回数を超えてPV値が閾値Xpvを上回る場合に、トルク変化抑制処理を実行しても良い。また、前述の説明では、固定値である閾値Xpvを用いているが、これに限られることはない。例えば、摺動速度Vに基づいて閾値Xpvを変化させても良く、摺動面圧Pに基づいて閾値Xpvを変化させても良い。なお、エンジン制御ユニット28がエンジントルクを算出する際には、吸入空気量や燃料噴射量からエンジントルクを算出しても良く、クランク軸36の角加速度からエンジントルクを算出しても良い。また、回転軸の歪みを検出するトルクセンサを用いることにより、回転軸の歪みからエンジントルクを算出しても良い。
【符号の説明】
【0047】
10 車両用制御装置
11 車両
12 エンジン
15 トルクコンバータ
30 制御システム
36 クランク軸
50 プロセッサ
51 メインメモリ(メモリ)
63 タービンランナ
64 タービンハブ
65 フランジ部
66 ハブ部
66a 外周面
67 タービン軸
71 ロックアップピストン
73 円筒部
74 円盤部
90 ロックアップダンパ(ダンパ機構)
P 摺動面圧
V 摺動速度
Xpv 閾値