(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043131
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】パーキングロック制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20240322BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20240322BHJP
F16H 59/54 20060101ALI20240322BHJP
F16H 63/48 20060101ALI20240322BHJP
F16H 61/22 20060101ALI20240322BHJP
F16H 59/50 20060101ALI20240322BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20240322BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H63/34
F16H59/54
F16H63/48
F16H61/22
F16H59/50
B60T17/22 C
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148138
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】上條 努
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
3J067
3J552
【Fターム(参考)】
3D049BB14
3D049CC07
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH54
3D049RR05
3D049RR11
3D049RR13
3D246BA08
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3J067AA21
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3J067FA57
3J067FA63
3J067FA84
3J067FB45
3J067FB90
3J067GA16
3J552MA01
3J552NA01
3J552NB05
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3J552PB08
3J552QC01
3J552QC07
3J552RB02
3J552TB02
3J552UA05
3J552VA63W
3J552VB16W
3J552VD18W
(57)【要約】
【課題】車両の電源がオフからオンへ切り替えられたとき、パーキングロック機構に異常がないことを確認することにより、車両の運転の安全性をさらに高めることができる車両駆動システムを提供する。
【解決手段】VCU17が、車両の起動時に、アクチュエータセンサ14a及びパーキングギヤセンサ14bによってパーキングロック機構50のロック状態が検出された場合は、当該ロック状態が維持できる範囲内でアクチュエータ51をリリース方向へ作動させる作動指示を行い、アクチュエータ51の実際の作動が当該作動指示に合致するか否かをチェックし、パーキングロック機構50のリリース状態が検出された場合は、当該リリース状態からロック状態にするよう前記アクチュエータ51を作動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの駆動によって変速機のパーキングギヤをロック状態またはリリース状態に切り替えるパーキングロック機構と、前記パーキングロック機構がロック状態またはリリース状態であるかを検出する検出部とを備えたパーキングロック制御装置であって、
車両の起動時に、前記検出部によって前記パーキングロック機構のロック状態が検出された場合、当該ロック状態が維持できる範囲内で前記アクチュエータをリリース方向へ作動させる作動指示を行い、前記アクチュエータの実際の作動が当該作動指示に合致するか否かをチェックし、
前記車両の起動時に、前記検出部によって前記パーキングロック機構のリリース状態が検出された場合、当該リリース状態からロック状態にするよう前記アクチュエータを作動させる、パーキングロック制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のパーキングロックを制御するパーキングロック制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両駆動システムのパーキングロック機構においては、車両の運転席近傍に設けられたパーキングスイッチ又はシフトレバーがパーキングレンジ(P)に切り替わると、制御装置(いわゆるVCU)からの指示(制御信号)によってアクチュエータが駆動し、このアクチュエータに設けられている係合部と変速機内のパーキングギヤとが噛合する。これにより、このパーキングギヤが回転不能になるため(すなわち、パーキングロックが作動するため)、車両を安定して停止させることができる。
【0003】
下記特許文献1には、パーキングロック機構のロック解除制御を開始してからパーキングロック機構が非ロック状態に切り替わるまでの間に何らかの異常が生じた場合、ロック解除制御を適切に終了することを目的として、ロック解除制御の実行中に強制終了条件が満たされた場合にはロック解除制御を終了し、変速機構がニュートラル状態であり且つパーキングロック機構がロック状態である状態に戻す制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の電源がオフの場合、通常では、パーキングスイッチ又はシフトレバーがパーキングレンジ(P)に設定され、この車両のパーキングロック機構が正常に機能することにより、このパーキングロック機構によるパーキングロックが正常に作動した状態に保たれる。しかし、車両の運転の安全性をさらに高めるためには、車両の電源がオフからオン(キーオン)へ切り替えられたとき、このパーキングロック機構に異常がないことを改めて確認することが好ましい。
【0006】
本発明は、車両の電源オン時にパーキングロック機構に異常がないことを確認することし、且つ車両をより安全な状態に保つことができる車両駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る車両駆動システムは、アクチュエータの駆動によって変速機のパーキングギヤをロック状態またはリリース状態に切り替えるパーキングロック機構と、前記パーキングロック機構がロック状態またはリリース状態であるかを検出する検出部とを備えたパーキングロック制御装置であって、車両の起動時に、前記検出部によって前記パーキングロック機構のロック状態が検出された場合、当該ロック状態が維持できる範囲内で前記アクチュエータをリリース方向へ作動させる作動指示を行い、前記アクチュエータの実際の作動が当該作動指示に合致するか否かをチェックし、前記車両の起動時に、前記検出部によって前記パーキングロック機構のリリース状態が検出された場合、当該リリース状態からロック状態にするよう前記アクチュエータを作動させる。
【0009】
このように車両の起動時(キーオン時)に、パーキングロック機構がロック状態かリリース状態であるかを検出し、ロック状態である場合には、ロック状態を維持できる範囲内でアクチュエータを作動させ、アクチュエータの作動が作動指示に適合するか否かをチェックすることでパーキングロック機構に異常がないかを確認できる。一方、パーキングロック機構がリリース状態である場合には、リリース状態からロック状態にするようアクチュエータを作動させる。
【0010】
このようにして、車両の電源起動時にパーキングロック機構の異常がないことを確認し、且つ車両をより安全な状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るパーキングロック制御装置を備える車両駆動システムの一実施形態を示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示す車両駆動システムの断面図である。
【
図3】
図1に示す車両駆動システムに備わっているパーキングロック機構を示す概略斜視図である。
【
図4】
図3に示すパーキングロック機構を別角度で示す概略斜視図である。
【
図5】本発明に係るパーキングロック制御装置の一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】アクチュエータの出力軸のストローク量(横軸)と、アクチュエータセンサの検出電圧(縦軸)との関係を示すグラフである。
【0012】
(車両駆動システムの構成)
次に、本発明に係るパーキングロック制御装置を備える車両駆動システムの一実施形態の構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、車両駆動システム100は、モータ11と、インバータ12と、走行用バッテリ13と、ギヤボックス14と、ドライブシャフト15(15A、15B)と、駆動輪16(16A、16B)と、VCU17(制御部)と、パーキングスイッチセンサ18と、補機バッテリ19と、リレー20と、を備えている。ギヤボックス14は、駆動機構30と、差動機構40と、パーキングロック機構50と、アクチュエータセンサ14a(検出部)と、パーキングギヤセンサ14b(検出部)とを備えている。
【0013】
モータ11は、走行用バッテリ13からインバータ12を介して交流電力が供給されることにより、車両駆動システム100を有する車両の走行に必要な駆動力(トルク)を発生させるものである。
【0014】
ギヤボックス14の各構成要素に関する説明は次の通りである。駆動機構30は、減速機であり、モータ11と連結されており、モータ11で発生する駆動力を差動機構40に伝達するものである。差動機構40は、駆動機構30から伝達された駆動力をそれぞれのドライブシャフト15A、15Bに伝達するものである。パーキングロック機構50は、車両の停止を維持させるためのものである。それぞれのドライブシャフト15A、15Bは、差動機構40から伝達された駆動力をそれぞれの駆動輪16A、16Bに伝達するものである。
【0015】
アクチュエータセンサ14aは、
図3に示すアクチュエータ51の状態を検出し、検出したアクチュエータ情報をVCU17に送信可能なものである。具体的には、アクチュエータセンサ14aは、アクチュエータ51に供給される電力の電圧値を検出する。当該電圧値が
図3及び
図4に示すアクチュエータ51の出力軸51bのストローク量(回転角度)に相当する。
【0016】
パーキングギヤセンサ14bは、
図3及び
図4に示すパーキングギヤ55の噛合状態(ロック状態であるかリリース状態であるか)を判別するものである。
【0017】
また車両には、車内の各種電装品等に電力を供給するための補機バッテリ19を備える。補機バッテリ19は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池からなり、走行用バッテリ13よりも低電圧小容量の二次電池である。本実施形態において、補機バッテリ19はリレー20を介してパーキングロック機構50のアクチュエータ51と接続されており、リレー20がON状態となるとアクチュエータ51に電力を供給する。
【0018】
VCU(Vehicle Control Unit)17は、車両駆動システム100の全体を制御するコンピュータであり、車両駆動システム100を構成する各要素との間で信号を送受信することができる。具体的には、VCU17は、モータ11と、インバータ12と、走行用バッテリ13と、ギヤボックス14の駆動機構30、差動機構40、パーキングロック機構50、アクチュエータセンサ14a及びパーキングギヤセンサ14bと、パーキングスイッチセンサ18と、リレー20との間で信号を送受信することができる。さらには、VCU17は、
図3に示すアクチュエータ51の基部51aとの間でも信号の送受信をすることができる。
【0019】
VCU17は、車両のパーキングスイッチ又はシフトレバーにより、パーキングレンジ以外のレンジ(例えば、ドライブレンジ及びリバースレンジ)からパーキングレンジが選択(シフトチェンジ)されたとき、その旨を伝達する信号をパーキングスイッチセンサ18から受信し、リレー20をON状態として、
図3に示すアクチュエータ51の出力軸51bを駆動させることによって、
図3及び
図4に示すパーキングギヤ55をリリース状態からロック状態に切り替える(具体的な切り替え方法については後述する)。また、VCU17は、車両のパーキングスイッチ又はシフトレバーにより、パーキングレンジからパーキングレンジ以外のレンジ(例えば、ドライブレンジ及びリバースレンジ)が選択(シフトチェンジ)されたとき、その旨を伝達する信号をパーキングスイッチセンサ18から受信し、リレー20をON状態として、
図3に示すアクチュエータ51の出力軸51bを駆動させることによって、
図3及び
図4に示すパーキングギヤ55をロック状態からリリース状態に切り替える(具体的な切り替え方法については後述する)。
【0020】
なお、ドライブレンジは、車両を前進させる場合に選択されるレンジである。リバースレンジは、車両を後退させる場合に選択されるレンジである。パーキングレンジは、車両を停止(駐車)させる場合に選択されるレンジである。
【0021】
図2に示すように、駆動機構30は、筐体31と、入力軸32と、中間軸33と、出力軸34と、第1ギヤ35aと、第2ギヤ35bと、第3ギヤ35cと、第4ギヤ35dと、第5ギヤ35eとを備えている。入力軸32と、中間軸33と、出力軸34とは、それぞれ車幅方向に平行に延びている。モータ11のモータ出力軸11aには入力軸32の一端が連結されている。入力軸32には第1ギヤ35aが設けられている。第1ギヤ35aは第2ギヤ35bと噛合している。第2ギヤ35bは中間軸33に設けられている。中間軸33には第3ギヤ35cが設けられている。第3ギヤ35cは第4ギヤ35dと噛合している。第4ギヤ35dは出力軸34に設けられている。出力軸34には第5ギヤ35eが設けられている。各ギヤの径は、駆動機構30に要求される減速比が実現可能なように設定されている。駆動機構30は、モータ11のモータ出力軸11aから入力される高回転低トルクの回転駆動力を、低回転高トルクに変換して出力可能に構成されている。
【0022】
図2に示すように、差動機構40は、第6ギヤ41(リングギヤ)と、第7ギヤ42と、第8ギヤ43(サイドギヤ)と、動力伝達部材44(例えば、ピニオンギヤ)と、第9ギヤ45(サイドギヤ)とを備えている。駆動機構30の第5ギヤ35eは第6ギヤ41と噛合している。第6ギヤ41は第7ギヤ42と噛合している。第7ギヤ42は第8ギヤ43と噛合している。第8ギヤ43はドライブシャフト15Aに設けられている。ドライブシャフト15Aには駆動輪16A、16Cが設けられている。一方で、上述した第7ギヤ42には動力伝達部材44が設けられている。動力伝達部材44には第9ギヤ45が設けられている。第9ギヤ45はドライブシャフト15Bに設けられている。ドライブシャフト15Bには駆動輪16B、16Dが設けられている。
【0023】
図2の一点鎖線で囲む範囲において、パーキングロック機構50が設けられている。
図3に示すように、パーキングロック機構50は、アクチュエータ51と、パーキングロックリンク52と、パーキングロックシャフト53と、パーキングロックピン54と、パーキングギヤ55と、パーキングロックレバー56とを備える。
【0024】
図3に示すように、アクチュエータ51は、VCU17との間で信号の送受信を行う基部51aと、基部51aから突出していて
図3に示すCの方向(ロック方向)及びこの反対方向(リリース方向)に回転可能な出力軸51bとを備えている。パーキングロックリンク52は、出力軸51bに設けられており、出力軸51bの回転に伴って回動するようになっている。パーキングロックシャフト53は、パーキングロックリンク52に設けられており、パーキングロックリンク52の回動に伴って動作するようになっている。パーキングロックピン54は、パーキングロックシャフト53の先端部外周において設けられている。パーキングロックピン54は、パーキングロックシャフト53の先端側に向かって細くなる円錐台状に形成されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、パーキングギヤ55は、円盤状の基部55aの外周側に係合用の歯部55bが等間隔で複数設けられ、基部55aの周方向における2つの歯部55bの間に凹部55cが形成されたものである。基部55aの内周部には、凹部であるキー部55dが設けられている。パーキングギヤ55は、キー部55dが
図2に示す駆動機構30の入力軸32に嵌合して入力軸32に対して相対回転不能に固定されている。
【0026】
パーキングロックレバー56は、いわゆるカンチレバーであり、
図3及び
図4に示すように、長手方向に伸びているレバー基部56aの一端側において支持軸60により回動自在に支持されている。レバー基部56aの他端側には、レバー基部56aから突出する係合部56bが形成され、係合部56bがパーキングギヤ55の凹部55cに係合可能になっている。パーキングロックレバー56は、その他端側においてパーキングギヤ55の凹部55cから離れる方向(係合を解除する方向)に付勢されている。ピン受部56cは、円錐台状に形成された切欠部である。
図3に示すように、ピン受部56cには、パーキングロックピン54が摺動可能に支持されている。
【0027】
出力軸51bが
図3に示すC方向に回転すると、パーキングロックリンク52が回動し、パーキングロックシャフト53及びパーキングロックピン54が
図3に示すA方向に押動される。すると、パーキングロックレバー56がパーキングロックピン54により
図3に示すB方向に押動され、パーキングロックレバー56の係合部56bがパーキングギヤ55の凹部55cに係合される。すると、パーキングギヤ55の回転がロックされ、かつ、係合部56bが凹部55cの表面に接触したことをパーキングギヤセンサ14bが検出する。さらに、パーキングギヤセンサ14bは、検出結果である、パーキングギヤ55の回転がロック状態になったこと、つまり、車両がパーキングロック状態になったことを示す信号をVCU17に送信する。
【0028】
一方、出力軸51bが
図3に示すC方向とは反対方向に回転すると、パーキングロック機構50においては上記の動作と反対の動作がなされる。これにより、パーキングギヤセンサ14bは、検出結果である、パーキングギヤ55の回転がリリース状態になったこと、つまり、車両がリリース状態になったことを示す信号をVCU17に送信する。
【0029】
(車両駆動システムの動作)
次に、本発明に係るパーキングロック制御装置の一実施形態の動作について説明する。
図5には、パーキングロック制御装置の動作を説明するためのフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って説明する。なお、
図5のフローチャートは、車両始動時の制御であることから、車両停止状態(キーオフ状態)からスタートする。
【0030】
1.車両始動時のパーキングロック機構の状態検出
図5に示すように、ステップS1において、VCU17は、図示しないイグニッションスイッチから受信する信号に基づいて、車両の起動(いわゆるキーオン)を判別する。すなわち、VCU17は、ここで車両始動時であるかを判別する。ステップS1がYesの場合、すなわち車両の起動時である場合は、VCU17はステップS2に処理を進める。一方、ステップS1がNoの場合、すなわち車両停止状態が維持されている場合は、VCU17は当該フローを終了する。
【0031】
ステップS2において、VCU17は、パーキングスイッチセンサ18から受信する信号に基づいて、車両に搭載されているパーキングスイッチ又はパーキングレバー(図示せず)によりパーキングレンジが選択されているか否かを判別する。ステップS2がYesの場合、すなわちパーキングレンジが選択されている場合は、VCU17はステップS3に処理を進める。一方、ステップS2がNoの場合、すなわちパーキングレンジが選択されていない場合は、VCU17は当該フローを終了する。
【0032】
ステップS3において、VCU17はパーキングギヤセンサ14bから受信する信号に基づいて、パーキングギヤ55がロック状態にあるか否かを判別する。ステップS3がYesの場合、すなわちパーキングギヤ55がロック状態にある場合は、VCU17はステップS4に処理を進める。一方、ステップS3がNoの場合、すなわちパーキングギヤ55がリリース状態にある場合は、VCU17はステップS12に処理を進める。
【0033】
2.パーキングギヤのロック状態からの動作チェック
ステップS4において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、アクチュエータセンサ14aにより検出された電圧値V(以下、検出電圧Vという)が第1所定電圧V1以上(V≧V1)であるかを判別する。第1所定電圧V1はアクチュエータ51をリリース方向に動作させてもパーキングギヤの噛合がリリースされない位置に相当する電圧値に設定されている。ステップS4がYesである場合、すなわち検出電圧Vが第1所定電圧V1以上である場合は、VCU17はステップS5に処理を進める。一方、すなわち検出電圧Vが第1所定電圧V1未満である場合は、VCU17はこれ以上動作チェックを進めず、VCU17は当該フローを終了する。
【0034】
ステップS5において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、この時点(動作指示前)においてアクチュエータセンサ14aが検出した検出電圧Vを第1動作前電圧Vaとして記録する。
【0035】
ステップS5の終了後、ステップS6において、VCU17は、アクチュエータ51を動作させるためにリレー20をON状態とする。
【0036】
ステップS6の終了後、ステップS7において、VCU17は、アクチュエータ51を制御(具体的にはPWM制御)して出力軸51bを第1所定時間T1の間、リリース方向に回転させる。この第1所定時間T1は、出力軸51bの回転が、パーキングギヤ55のロック状態を維持できる範囲に設定される。
【0037】
ステップS7の終了後、ステップS8において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、この時点(動作指示後)においてアクチュエータセンサ14aが検出した検出電圧Vを第1動作後電圧Vbとして記録する。
【0038】
そして、ステップS9において、VCU17は、第1動作前電圧Vaと第1動作後電圧Vbとの差分(Va-Vb)を算出し、算出した差分が第1差分閾値ΔD1以上であるか、すなわちアクチュエータ51の出力軸51bの実際の作動がステップS6での動作指示に合致するか否かをチェックする。ステップS9がYesである場合、すなわち動作指示前後の検出電圧の差分が第1差分閾値ΔD1以上の場合、VCU17はステップS10に処理を進める。一方、動作チェック前後の検出電圧の差分が第1差分閾値ΔD1未満の場合、VCU17はステップS11に処理を進める。
【0039】
ステップS10において、VCU17は、パーキングロック機構50が正常に機能していると判別し、ステップS6においてONにしたリレーを開放(OFF)し、当該フローを終了する。
【0040】
ステップS11において、VCU17は、リレーを開放(OFF)し、パーキングロック機構50が正常に機能していないおそれがある(異常あり)と判別して警告を発して、当該フローを終了する。警告としては、例えば、多重表示モニタを赤色に点灯させたり、警告音を発したりすることが挙げられる。
【0041】
3.パーキングギヤのリリース状態からの動作チェック
上述のステップS3がNoであった場合、すなわちパーキングギヤ55がリリース状態であった場合は、ステップS12において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、アクチュエータセンサ14aにより検出された検出電圧Vが第2所定電圧V2未満(V<V2)であるかを判別する。第2所定電圧V2は第1所定電圧V1よりも低い電圧値であり、パーキングギヤ55がリリース状態にある位置に相当する電圧値に設定されている。ステップS12がYesである場合、すなわち検出電圧Vが第2所定電圧V2未満である場合は、VCU17はステップS13に処理を進める。一方、検出電圧Vが第2所定電圧V2以上である場合は、VCU17はこれ以上動作チェックを進めず、VCU17は当該フローを終了する。
【0042】
ステップS13において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、この時点(動作指示前)においてアクチュエータセンサ14aが検出した検出電圧Vを第2動作前電圧Vcとして記録する。なお、図示を省略しているがVCU17は、アクチュエータを動作させるためにリレー20をON状態とする。
【0043】
ステップS14において、VCU17は、アクチュエータ51を制御(具体的にはPWM制御)して出力軸51bを第2所定時間T2の間、ロック方向に回転させる。この第2所定時間T2は、リリース状態にあるパーキングギヤ55をロック状態にするよう、上記ステップS6における第1所定時間T1よりも長い時間に設定されている。
【0044】
ステップS15において、VCU17は、アクチュエータセンサ14aからの信号に基づいて、この時点(動作指示後)においてアクチュエータセンサ14aが検出した検出電圧Vを第2動作後電圧Vdとして記録する。
【0045】
ステップS15の終了後、ステップS16において、VCU17は、第2動作前電圧Vcと第2動作後電圧Vdとの差分(Vc-Vd)を算出し、算出した差分が第2差分閾値ΔD2以上であるか、すなわちアクチュエータ51の出力軸51bの実際の作動がステップS14の動作指示に合致するか否かをチェックする。ステップS16がYesである場合、すなわち動作指示前後の検出電圧の差分が第2差分閾値ΔD2以上の場合、VCU17はステップS10に処理を進める。一方、動作指示前後の検出電圧の差分が第2差分閾値ΔD2未満の場合、VCU17はステップS11に処理を進める。ステップS10及びステップS11の処理は上述した通りである。
【0046】
4.その他
図6には、アクチュエータの出力軸のストローク量(横軸)と、アクチュエータセンサの検出電圧(縦軸)との関係を示すグラフが示されている。
【0047】
図6に示すように、アクチュエータセンサ14aの検出電圧Vと、アクチュエータ51の出力軸51bのストローク量(具体的には回転角度)は相関している。アクチュエータセンサ14aの検出範囲はVminからVmaxまでであるが、アクチュエータ51の出力軸51bのストローク量として使用する範囲はS2minからS1maxまで(検出電圧V2minからV1maxまで)であり、ストローク量S2minが完全なリリース位置、ストローク量S1maxが完全なロック位置である。
【0048】
上述の第1所定電圧V1は、完全なロック位置に相当する検出電圧V1maxよりも低く、ロック状態とリリース状態の境界となる境界ストローク量Sborderに相当する検出電圧Vborderよりも高い、電圧値に設定されている。つまり、キーオン時の出力軸51bのストローク量Sが
図6に示す第1範囲A1にある場合に、リリース方向への動作チェックを実行する。リリース方向への動作チェックは、パーキングギヤ55のロック状態が解除されない範囲、つまり第1範囲A1から境界ストローク量Sborderを超えない範囲の第1動作ストローク量St1分だけ動作させる。この第1動作ストローク量St1がステップS7における動作指示の第1所定時間T1に対応する。
【0049】
一方、上述の第2所定電圧V2は、完全なリリース位置に相当する検出電圧V2minよりも大きく、ロック状態とリリース状態の境界となる境界ストローク量Sborderに相当する検出電圧Vborderよりも低い、電圧値に設定されている。つまり、キーオン時の出力軸51bのストローク量Sが
図6に示す第2範囲A2にある場合に、ロック方向への動作チェックを実行する。ロック方向への動作チェックでは、パーキングギヤ55をリリース状態からロック状態までもっていくよう境界ストローク量Sborderを超える第2動作ストローク量St2分を動作させる。この第2動作ストローク量St2がステップS14における動作指示の第2所定時間T2に対応する。
【0050】
(パーキングロック制御装置の効果)
本実施形態に係るパーキングロック制御装置によれば、車両の電源が起動状態(キーオン)になったとき、パーキングロック機構50がロック状態かリリース状態であるかを判別し、ロック状態である場合には、ロック状態を維持できる範囲内でアクチュエータを作動させ、アクチュエータの作動が作動指示に適合するか否かをチェックしてパーキングロック機構に異常がないかをチェックする。一方、判別部によってリリース状態であると判別された場合、リリース状態からロック状態にするよう前記アクチュエータを作動させて、尚且つパーキングロック機構に異常がないかをチェックする。
【0051】
このようにして、車両の電源起動時にパーキングロック機構の異常がないことを確認することにより、車両をより安全な状態に保つことができる。
【0052】
以上で本発明に係る車両駆動システムの実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記実施形態では、選択できるレンジがパーキングレンジ、ドライブレンジ、リバースレンジの3種類であったが、例えば、ニュートラルレンジ、ファーストレンジ、セカンドレンジ、等のその他のレンジも選択できる構成でもよい。
【符号の説明】
【0054】
11 :モータ
11a :モータ出力軸
12 :インバータ
13 :走行用バッテリ
14 :ギヤボックス
14a :アクチュエータセンサ
14b :パーキングギヤセンサ
18 :パーキングスイッチセンサ
19 :補機バッテリ
20 :リレー
30 :駆動機構
40 :差動機構
50 :パーキングロック機構
51 :アクチュエータ
51a :基部
51b :出力軸
52 :パーキングロックリンク
53 :パーキングロックシャフト
54 :パーキングロックピン
55 :パーキングギヤ
55a :基部
55b :歯部
55c :凹部
55d :キー部
56 :パーキングロックレバー
56a :レバー基部
56b :係合部
56c :ピン受部
60 :支持軸
100 :車両駆動システム