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特開2024-4314非水系電解質二次電池用電極、非水系電解質二次電池用集電体、及び非水系電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004314
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】非水系電解質二次電池用電極、非水系電解質二次電池用集電体、及び非水系電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/70 20060101AFI20240109BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240109BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240109BHJP
【FI】
H01M4/70 A
H01M4/13
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103915
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】羽田 龍一
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE01
5H017HH05
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM11
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029HJ12
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA14
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB11
5H050FA15
5H050GA22
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】活物質層と集電体との間の剥離及び脱離が発生する虞が低い非水系電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。
【解決手段】非水系電解質二次電池用電極103は、少なくとも片面に複数の第1凹凸構造11を有する電極用の集電体1と、複数の第1凹凸構造に接するように配置された活物質層132と、複数の第1凹凸構造11に設けられた活物質層132を保持するための保持構造15と、を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に複数の第1凹凸構造を有する電極用の集電体と、
前記複数の第1凹凸構造に接するように配置された活物質層と、
前記複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造と、
を有する、ことを特徴とする非水系電解質二次電池用電極。
【請求項2】
前記保持構造は、前記第1凹凸構造の内側側面に配置された1つ又は複数の第2凹凸構造である、請求項1に記載の非水系電解質二次電池用電極。
【請求項3】
前記保持構造は、前記第1凹凸構造の先端部から底部に向かって形成された傾斜面であって、前記傾斜面は、前記第1凹凸構造の先端部から、前記第1凹凸構造の内側に向かうように傾斜している、請求項1に記載の非水系電解質二次電池用電極。
【請求項4】
前記保持構造は、第1凹凸構造の先端部から底部に向かって形成された傾斜面に配置された1つ又は複数の第2凹凸構造である、請求項1に記載の非水系電解質二次電池用電極。
【請求項5】
前記第2凹凸構造の凹部の内側に、前記活物質層の少なくとも一部が入り込むように、前記集電体に対して前記活物質層が配置されている、請求項2又は4に記載の非水系電解質二次電池用電極。
【請求項6】
平板状の基部と、
前記基部の少なくとも片面に配置される複数の第1凹凸構造と、
前記複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造と、
を有する、ことを特徴とする非水系電解質二次電池用集電体。
【請求項7】
正極と
前記正極と対向して配置される負極と、
前記正極と前記負極との間に配置される固体電解質層と、を有し、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、
少なくとも片面に複数の第1凹凸構造を有する電極用の集電体と、
前記複数の第1凹凸構造に接するように配置された活物質層と、
前記複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造と、
を有する、ことを特徴とする非水系電解質二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質二次電池用電極、非水系電解質二次電池用集電体、及び非水系電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水系電解質二次電池は、出力特性及びエネルギ密度の向上が望まれており、電極用の集電体の上に活物質層を設けた電極及び電解質層を積層した構造を有する全固体電池などが開発されている。
【0003】
全固体電池では、充放電反応に伴う活物質層の膨張及び収縮によって、活物質層が集電体から剥離又は脱離する虞がある。全固体電池において、活物質層と集電体とが接する面に凹凸構造を形成し、活物質層と集電体との間の剥離及び脱離を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-123535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の全固体電池用負極では、凹凸構造により活物質層は充放電反応に伴う膨張・収縮による面方向の剥離及び脱離が抑制可能であるが、活物質層の積層方向の剥離及び脱離が発生し、電池性能及びサイクル特性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、活物質層と集電体との間の剥離及び脱離が発生する虞が低い非水系電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非水系電解質二次電池用電極は、少なくとも片面に複数の第1凹凸構造を有する電極用の集電体と、複数の第1凹凸構造に接するように配置された活物質層と、複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造とを有する。
【0008】
さらに、本発明に係る非水系電解質二次電池用電極では、保持構造は、第1凹凸構造の内側側面に配置された1つ又は複数の第2凹凸構造であることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る非水系電解質二次電池用電極では、保持構造は、第1凹凸構造の先端部から底部に向かって形成された傾斜面であって、傾斜面は、第1凹凸構造の先端部から、第1凹凸構造の内側に向かうように傾斜していることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る非水系電解質二次電池用電極では、保持構造は、第1凹凸構造の先端部から底部に向かって形成された傾斜面に配置された1つ又は複数の第2凹凸構造であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る非水系電解質二次電池用電極では、第2凹凸構造の凹部の内側に、活物質層の少なくとも一部が入り込むように、集電体に対して活物質層が配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る非水系電解質二次電池用集電体は、平板状の基部と、基部の少なくとも片面に配置される複数の第1凹凸構造と、複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造とを有する。
【0013】
また、本発明に係る非水系電解質二次電池は、正極と、正極と対向して配置される負極と、正極と負極との間に配置される固体電解質層と、を有し、正極及び負極の少なくとも一方は、少なくとも片面に複数の第1凹凸構造を有する電極用の集電体と、複数の第1凹凸構造に接するように配置された活物質層と、複数の第1凹凸構造に設けられた活物質層を保持するための保持構造とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る非水系電解質二次電池用電極は、活物質層と集電体との間の剥離及び脱離が発生する虞を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る負極集電体を有する全固体電池の概略断面図である。
図2】(a)は図1に示す負極集電体の斜視図であり、(b)は(a)において矢印Aで示される部分の拡大斜視図である。
図3図2(a)に示すB-Bに沿う断面図である。
図4】(a)は第2実施形態に係る負極集電体の斜視図であり、(b)は(a)において矢印Cで示される部分の拡大斜視図である。
図5図4(a)に示すD-Dに沿う断面図である。
図6】(a)は第3実施形態に係る負極集電体の斜視図であり、(b)は(a)において矢印Eで示される部分の拡大斜視図である。
図7図6(a)に示すF-Fに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る非水系電解質二次電池用電極、非水系電解質二次電池用集電体、及び非水系電解質二次電池について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
(第1実施形態に係る負極集電体を有する全固体電池の構成及び機能)
図1は、第1実施形態に係る負極集電体を有する全固体電池の概略断面図である。
【0018】
全固体電池100は、正極101と、固体電解質層102と、負極103とを有するリチウム電池である全固体の二次電池である。正極101は、正極集電体111と、正極活物質層112とを有する。正極集電体111は、SUS、Ni、Cr、Au、Pt、Al、Fe、Ti及びZn等の導電性の材料により形成される板状の箔部材である。全固体電池100は、例えば、正極101、固体電解質層102及び負極103をそれぞれ積層し、プレスする等の公知の方法により製造することができる。全固体電池100をプレスにより製造するときに、正極101と負極103との間に印加される圧力は、一例は10MPaである。
【0019】
正極活物質層112は、正極活物質及び固体電解質を含み、電池としての充放電を担う電気化学反応に関与する物質層であり、正極集電体111の片面上に積層される。正極活物質層112は必要に応じて、導電材及びバインダを備えてもよい。正極活物質層112に含まれる正極活物質は、例えば、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの何れかである。正極活物質層112に含まれる正極活物質は、例えば、Li3PO4等の酸化物固体電解質、Li2S-P25等の硫化物固体電解質、及びLiBH4等の水素化物固体電解質である。
【0020】
正極活物質層112は、導電材及びバインダを更に含んでもよい。正極活物質層112に含まれる導電材は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素材料、並びにニッケル、アルミニウム及びステンレス鋼等の金属材料である。正極活物質層112に含まれるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ブチレンゴム(BR)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)である。
【0021】
正極101は、積層された正極集電体111及び正極活物質層112を所定の圧力でプレスすることにより製造してもよく、正極活物質層112の成分を含むスラリーを正極集電体111に塗布した後に、乾燥させることにより製造してもよい。
【0022】
固体電解質層102は、固体電解質を含み、正極活物質層112の正極集電体111と反対の面に積層される。固体電解質層102に含まれる固体電解質は、例えば、Li3PO4等の酸化物固体電解質、Li2S-P25等の硫化物固体電解質、及びLiBH4等の水素化物固体電解質である。固体電解質層102は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ブチレンゴム(BR)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)であるバインダ、並びに他の添加剤を更に含んでもよい。
【0023】
負極103は、負極活物質層132と、負極集電体1とを有する。負極活物質層132は、負極活物質及び固体電解質を含み、電池としての充放電を担う電気化学反応に関与する物質層であり、固体電解質層102の正極活物質層112の反対の面に積層される。負極活物質層132に含まれる負極活物質は、例えば、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭化物、ケイ素窒化物、及びケイ素含有合金等のケイ素化合物、並びにスズ、スズ酸化物、スズ窒化物及びスズ含有合金等のスズ化合物である。負極活物質層132に含まれる負極活物質は、充電時にリチウムイオンを吸蔵することにより膨張し、放電時にリチウムイオンを放出して収縮する。
【0024】
負極活物質層132は、導電材及びバインダ、並びに他の添加剤を更に含んでもよい。負極活物質層132に含まれる導電材は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素材料、並びにニッケル、アルミニウム及びステンレス鋼等の金属材料である。負極活物質層132に含まれるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ブチレンゴム(BR)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)である。
【0025】
負極活物質層132における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、10wt%~99wt%であることが好ましい。固体電解質層102に接する面と負極集電体1の基部の表面との間の距離である負極活物質層132の厚さは、特に限定されないが、0.1μm~1000μmであることが好ましい。
【0026】
負極集電体1は、SUS、Cu、Ni、Fe、Ti、Co及びZn等の導電性の材料により形成される板状の箔部材であり、負極活物質層132の固体電解質層102の反対の面に積層される。負極集電体1の負極活物質層132に接する面には凹凸が形成される。
【0027】
(第1実施形態に係る負極集電体の構成及び機能)
図2(a)は負極集電体1の斜視図であり、図2(b)は図2(a)において矢印Aで示される部分の拡大斜視図である。
【0028】
負極集電体1は、SUS、Cu、Ni、Fe、Ti、Co及びZn等の導電性の材料により形成され、基部10と複数の第1凹凸構造11とを有する。基部10は、板状の形状を有し、片面に、複数の第1凹凸構造11がアレイ状に配置される。複数の第1凹凸構造11は、基部10の片面から直立して正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向に延伸するように配置される。
【0029】
基部10の複数の第1凹凸構造11が配置される面に対向する基部10の下面と、複数の第1凹凸構造11の上面との間の距離である負極集電体1の厚さは、特に限定されないが、10μm~1000μmであることが好ましい。
【0030】
複数の第1凹凸構造11は、基部10の角に配置される4つの角凹凸構造12と、基部10の長辺及び短辺に沿って配置される辺凹凸構造13と、角凹凸構造12及び辺凹凸構造13に囲まれた領域に配置される内凹凸構造14とを含む。
【0031】
図3は、図2(a)に示すB-Bに沿う断面図である。
【0032】
角凹凸構造12、辺凹凸構造13及び内凹凸構造14のそれぞれは、角凹凸構造12、辺凹凸構造13及び内凹凸構造14の直立方向に直交する方向に延伸する凸部16及び凸部16の間に配置される凹部17により形成される複数の第2凹凸構造15が設けられる。複数の第2凹凸構造15のそれぞれは、角凹凸構造12、辺凹凸構造13及び内凹凸構造14の内側側面に配置され、負極活物質層132を保持するための保持構造として機能する。第2凹凸構造15の凹部17の内側に、負極活物質層132の少なくとも一部が入り込むように、負極集電体1に対して負極活物質層132が配置されている。
【0033】
角凹凸構造12は、隣接して配置される辺凹凸構造13に対向する2つの面に複数の第2凹凸構造15が設けられる。辺凹凸構造13は、隣接して配置される角凹凸構造12、辺凹凸構造13及び内凹凸構造14に対向する3つの面に複数の第2凹凸構造15が設けられる。内凹凸構造14は、隣接して配置される辺凹凸構造13及び内凹凸構造14に対向する4つの面に複数の第2凹凸構造15が設けられる。
【0034】
第2凹凸構造15の頂部と第2凹凸構造15の頂部の底部との間の距離である第2凹凸構造15の溝部の深さLは、特に限定されないが、第2凹凸構造15の頂部の間の距離である第1凹凸構造11の幅Wよりも短ければよい。第2凹凸構造15の溝部の深さLは、第1凹凸構造11の幅Wの20%以上であり且つ30%以下であることが好ましい。
【0035】
第2凹凸構造15の溝部の深さLは、第1凹凸構造11の幅Wの20%未満であると、複数の第1凹凸構造11の間に充填される負極活物質層132の中で第2凹凸構造15の溝部に充填される負極活物質層132の割合が低くなる。複数の第1凹凸構造11の間に充填される負極活物質層132の中で第2凹凸構造15の溝部に充填される負極活物質層132の割合が低い場合、充放電により膨張及び収縮を繰り返す負極活物質層132を第2凹凸構造15により保持する保持力が小さくなる。負極活物質層132を第2凹凸構造15により保持する保持力が小さくなると、正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制されない虞がある。
【0036】
第2凹凸構造15の溝部の深さLは、第1凹凸構造11の幅Wの30%を超えると、第2凹凸構造15の凸部は、負極活物質層132の膨張及び収縮により生じる応力により変形を繰り返し、第2凹凸構造15の凸部が破損する虞がある。第2凹凸構造15の凸部が破損すると、負極活物質層132を第2凹凸構造15により保持する保持力が小さくなり、正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制されない虞がある。
【0037】
負極集電体1は、負極集電体1の原材料である金属板の片面を格子状にダイシングすることで形成される。金属板のダイシングに使用されるダイシングブレードは、砥粒が露出した切刃部を有する。砥粒が露出した切刃部を有するダイシングブレードによって金属板がダイシングされることで、負極集電体1の片面に複数の第1凹凸構造11が形成されると共に、複数の第1凹凸構造11の内側側面に複数の第2凹凸構造15が形成される。
【0038】
負極103は、積層された負極活物質層132及び負極集電体1を所定の圧力でプレスすることにより製造してもよく、負極活物質層132の成分を含むスラリーを負極集電体1に塗布した後に、乾燥させることにより製造してもよい。
【0039】
(第1実施形態に係る負極集電体の作用効果)
負極集電体1は、第2凹凸構造15を有することで、正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向の保持力が向上し、積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制され、負極活物質層132との間の密着性が向上する。
【0040】
また、負極集電体1は、第2凹凸構造15の溝部の深さLは、第1凹凸構造11の幅Wの20%以上であり且つ30%以下とすることで、積層方向の保持力が更に向上し、負極活物質層132との間の密着性が更に向上する。
【0041】
(第2実施形態に係る負極集電体の構成及び機能)
図4(a)は第2実施形態に係る負極集電体の斜視図であり、図4(b)は図4(a)において矢印Cで示される部分の拡大斜視図である。
【0042】
負極集電体2は、負極集電体1と同様に、SUS、Cu,Ni、Fe、Ti、Co及びZn等の導電性の材料により形成され、正極101、固体電解質層102及び負極活物質層132と共に、全固体電池100を形成する。負極集電体2は、基部20と複数の第1凹凸構造21とを有する。基部20は、基部10と同様に、板状の形状を有し、片面に、複数の第1凹凸構造21がアレイ状に配置される。複数の第1凹凸構造21は、基部20の片面から直立して正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向に延伸するように配置される。
【0043】
複数の第1凹凸構造21は、基部20の角に配置される4つの角凹凸構造22と、基部20の長辺及び短辺に沿って配置される辺凹凸構造23と、角凹凸構造22及び辺凹凸構造23に囲まれた領域に配置される内凹凸構造24とを含む。
【0044】
図5は、図4(a)に示すD-Dに沿う断面図である。
【0045】
角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24のそれぞれは、角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24の直立方向から傾斜しながら延伸する傾斜面25が設けられる。傾斜面25のそれぞれは、角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24の内側側面に配置され、第2凹凸構造15と同様に、負極活物質層132を保持するための保持構造として機能する。
【0046】
角凹凸構造22は、隣接して配置される辺凹凸構造23に対向する2つの面に傾斜面25が設けられる。辺凹凸構造23は、隣接して配置される角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24に対向する3つの面に傾斜面25が設けられる。内凹凸構造24は、隣接して配置される辺凹凸構造23及び内凹凸構造24に対向する4つの面に傾斜面25が設けられる。角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24のそれぞれに設けられる傾斜面25は、角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24の先端部から、角凹凸構造22、辺凹凸構造23及び内凹凸構造24の内側に向かうように傾斜している。
【0047】
傾斜面25の基部20の表面に対して成す角である傾斜角θは、0°より大きく且つ90°未満の範囲にあればよいが、45°以上であり且つ85°以下であることが好ましい。傾斜角θが45°未満であるとき、基部20の表面と傾斜面25との間の空間への負極活物質層132の充填が容易でなくなり、基部20の表面と傾斜面25との間の空間に充填される負極活物質層132の量が減少する。基部20の表面と傾斜面25との間の空間に充填される負極活物質層132の量が減少すると、傾斜面25により負極活物質層132を保持する保持力が減少して、正極101~負極103の積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制されない虞がある。
【0048】
傾斜角θが85°を超えると、正極101~負極103の積層方向に負極活物質層132を係止して保持する保持力が小さくなり、正極101~負極103の積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制されない虞がある。
【0049】
負極集電体2は、負極集電体2の原材料である金属板の片面を逆テーパーエンドミルによって格子状にダイシングすることで形成される。金属板の片面を逆テーパーエンドミルによって格子状にダイシングすることで、負極集電体2の片面に複数の第1凹凸構造21が形成されると共に、複数の第1凹凸構造21の内側側面に傾斜面25が形成される。
【0050】
(第2実施形態に係る負極集電体の作用効果)
負極集電体2は、傾斜面25を有することで、正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向の保持力が向上し、積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制され、負極活物質層132との間の密着性が向上する。
【0051】
(第3実施形態に係る負極集電体の構成及び機能)
図6(a)は第3実施形態に係る負極集電体の斜視図であり、図6(b)は図6(a)において矢印Eで示される部分の拡大斜視図である。
【0052】
負極集電体3は、負極集電体1及び2と同様に、SUS、Cu、Ni、Fe、Ti、Co及びZn等の導電性の材料により形成され、正極101、固体電解質層102及び負極活物質層132と共に、全固体電池100を形成する。負極集電体3は、基部30と複数の第1凹凸構造31とを有する。基部30は、基部10及び20と同様に、板状の形状を有し、片面に、複数の第1凹凸構造31がアレイ状に配置される。複数の第1凹凸構造31は、基部30の片面から直立して正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向に延伸するように配置される。
【0053】
複数の第1凹凸構造31は、基部30の角に配置される4つの角凹凸構造32と、基部30の長辺及び短辺に沿って配置される辺凹凸構造33と、角凹凸構造32及び辺凹凸構造33に囲まれた領域に配置される内凹凸構造34とを含む。
【0054】
図7は、図6(a)に示すF-Fに沿う断面図である。
【0055】
角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34のそれぞれは、角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34の直立方向から傾斜しながら延伸する複数の傾斜面35が設けられる。また、角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34のそれぞれは、角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34の直立方向に直交する方向に延伸する凸部37及び凸部37の間に配置される凹部38により形成される複数の第2凹凸構造36が設けられる。傾斜面35及び複数の第2凹凸構造36のそれぞれは、角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34の内側側面に配置され、第2凹凸構造15及び傾斜面25と同様に、負極活物質層132を保持するための保持構造として機能する。
【0056】
角凹凸構造32は、隣接して配置される辺凹凸構造33に対向する2つの面に傾斜面35及び複数の第2凹凸構造36が設けられる。辺凹凸構造33は、隣接して配置される角凹凸構造32、辺凹凸構造33及び内凹凸構造34に対向する3つの面に傾斜面35及び複数の第2凹凸構造36が設けられる。内凹凸構造34は、隣接して配置される辺凹凸構造33及び内凹凸構造34に対向する4つの面に傾斜面35及び複数の第2凹凸構造36が設けられる。
【0057】
傾斜面35の基部30の表面に対して成す角である傾斜角θは、0°より大きく且つ90°未満の範囲にあればよいが、45°以上であり且つ85°以下であることが好ましい。第2凹凸構造36の頂部と第2凹凸構造36の頂部の底部との間の距離である第2凹凸構造36の溝部の深さLは、特に限定されないが、最上部の第2凹凸構造36の頂部の間の距離である第1凹凸構造31の幅Wよりも短ければよい。第2凹凸構造36の溝部の深さLは、第1凹凸構造31の幅Wの20%以上であり且つ30%以下であることが好ましい。
【0058】
負極集電体3は、負極集電体3の原材料である金属板の片面を砥粒が露出した切刃部を有するダイシングブレードによって格子状にダイシングした後に、ダイシングにより形成された溝を逆テーパーエンドミルによって更にダイシングすることで形成される。
【0059】
(第3実施形態に係る負極集電体の作用効果)
負極集電体3は、第2凹凸構造36及び傾斜面35を有することで、正極101、固体電解質層102及び負極103の積層方向の保持力が向上し、積層方向への負極活物質層132の剥離及び脱離が抑制され、負極活物質層132との間の密着性が向上する。
【0060】
(実施形態に係る負極集電体の変形例)
全固体電池100は、全固体のリチウム電池であるが、実施形態に係る全固体電池は、リチウム電池以外の非水系電解質二次電池であってもよい。
【0061】
また、全固体電池100では、正極集電体111の構造は、特に規定されていないが、実施形態に係る全固体電池では、正極集電体は、負極集電体1~3の構造と同一の構造を有してもよい。また、実施形態に係る全固体電池では、正極集電体及び負極集電体の双方は、負極集電体1~3の構造と同一の構造を有してもよく、正極集電体及び負極集電体の何れかは、負極集電体1~3の構造と同一の構造を有してもよい。負極集電体1~3の構造は、非水系電解質二次電池用電極として使用可能である。
【0062】
また、全固体電池100は、一対の電極である正極集電体111及び負極集電体1~3を有するが、実施形態に係る全固体電池は、バイポーラ型の全固体電池であってもよい。実施形態に係る全固体電池がバイポーラ型の全固体電池であるとき、実施形態に係る非水系電解質二次電池用電極は、正極集電体111及び負極集電体に加えて正極活物質層と負極活物質層との間に配置されるバイポーラ電極として使用されてもよい。実施形態に係る非水系電解質二次電池用電極は、バイポーラ電極として使用されるとき、正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれに接する両面に負極集電体1~3と同様な構造が形成される。
【0063】
また、全固体電池100では、第1凹凸構造11は、5つの第2凹凸構造15を1つの面に有するが、実施形態に係る全固体電池では、第1凹凸構造は、1つ以上であり且つ4つ以下の第2凹凸構造15を1つの面に有してもよい。また、実施形態に係る全固体電池では、第1凹凸構造は、6つ以上の第2凹凸構造15を1つの面に有してもよい。
【0064】
また、全固体電池100では、第2凹凸構造15は、高さ及び幅が均一である凸部16を有するが、実施形態に係る全固体電池では、第2凹凸構造は、高さ及び幅が相違する凸部を有してもよい。また、第2凹凸構造15は、深さ及び幅が均一である凹部17を有するが、実施形態に係る全固体電池では、第2凹凸構造は、深さ及び幅が相違する凹部を有してもよい。
【実施例0065】
全固体電池を作製し、作製した全固体電池を所定の条件で充放電サイクルを繰り返した後に、充放電サイクル後の全固体電池の直流抵抗値の増加率を測定した。
【0066】
(負極集電体の作製)
負極集電体の原材料としてステンレス箔を準備し、150μmの厚みを有するダイシングブレードにて溝加工が実施され、第1凹凸構造と第2凹凸構造を備えた電極用の集電体を作製した。実施例1~4に使用される負極集電体の溝加工には、第2凹凸構造の凹部の深さの平均値が50μmとなるように、粒度の小さい(表面の粗い)ダイシングブレードが使用された。実施例1~4では、第1凹凸構造の幅がそれぞれ500μm、250μm、160μm及び125μmとなるように溝加工が実施された。第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率は、実施例1では10%であり、実施例2では20%であり、実施例3では30%であり、実施例4では40%である。
【0067】
比較例1~4に使用される負極集電体の溝加工には、第2凹凸構造が形成されないように、粒度の大きい(表面の細かい)ダイシングブレードが使用された。比較例1~4では、第1凹凸構造の幅がそれぞれ500μm、250μm、160μm及び125μmとなるように溝加工が実施された。
【0068】
(負極の作製)
負極活物質としてのLi4Ti512(LTO)、導電助剤としてのVGCF、硫化物固体電解質としてのとしてのLi3PS4-LiI-LiBr、分散媒としての酪酸ブチル、及びバインダとしてのPVDFを秤量し、十分に混合して負極活物質層用スラリーを作製した。この負極活物質層用スラリーを、第1凹凸構造及び第2凹凸構造が形成されたステンレス箔上に、溶媒除去後の膜厚が15μmとなるように塗工すると共に、乾燥して負極を作製した。
【0069】
(正極の作製)
正極活物質としての炭素コーティングを有するLiFePO4、導電助剤としての気相法炭素繊維(VGCF)、硫化物固体電解質としてのLi3PS4-LiI-LiBr、分散媒としての酪酸ブチル、及びバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を秤量し、十分に混合して正極活物質層用スラリーを作製した。この正極活物質層用スラリーを第1凹凸構造及び第2凹凸構造が形成されていないステンレス箔上に溶媒除去後の膜厚が15μmとなるように塗工すると共に、乾燥して正極を作製した。
【0070】
(固体電解質層の作製)
硫化物固体電解質、バインダ、及び分散媒としての脱水へプタンを十分に混合して、固体電解質層用スラリーを作製した。この固体電解質層用スラリーを塗工し、乾燥させることにより固体電解質層を作製した。
【0071】
(全固体電池の組立)
作製された負極上に所定量秤量した固体電解質層を載置し、負極上に設置された固体電解質層上に、作製された正極を載置した状態で、負極、固体電解質層及び正極をプレスして全固体電池が組み立てられた。なお、全固体電池を組み立てるときのプレス圧は、充放電サイクルによる負極活物質層の剥離及び脱離を生じさせ易くするために、1MPaと低くした。
【0072】
(充放電サイクル)
作製された実施例1~4及び比較例1~4に係る全固体電池に対して、放電下限電位、充電上限電位、充放電レート、及び温度を同一の条件として充放電サイクルを800回に亘って繰り返した。
【0073】
(充放電サイクル後の全固体電池の評価)
表1は、充放電サイクル後の全固体電池の評価を示す。表1において、「充放電サイクル後の直流抵抗の増加率〔%〕」は、充放電サイクル前の全固体電池の抵抗値に対する充放電サイクル後の全固体電池の直流抵抗値の増加率を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1~4に係る全固体電池において、充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率は、実施例1では2.7%であり、実施例2では1.3%であり、実施例3では2.0%であり、実施例4では2.7%である。一方、比較例1~4に係る全固体電池において、充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率は、比較例1では4.0%であり、比較例2では4.7%であり、比較例3では4.0%であり、比較例4では3.3%である。
【0076】
実施例1~4に係る全固体電池の充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率は、第1凹凸構造の幅が同一である比較例1~4に係る全固体電池の充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率の何れよりも小さく、第2凹凸構造を形成することで、実施例1~4に係る全固体電池の積層方向の剥離が抑制されることが確認された。
【0077】
充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率は、第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率が10%である実施例1では2.7%であり、第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率が40%である実施例4では2.7%である。一方、充放電サイクル後の直流抵抗値の増加率は、第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率が20%である実施例2では1.3%であり、第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率が30%である実施例3では2.0%である。
【0078】
第1凹凸構造の幅に対する第2凹凸構造の凹部の深さの比率が20%以上であり且つ30%以下であるとき、負極活物質層は第2凹凸構造の凹部に十分に充填され、負極活物質層132を第2凹凸構造15により保持する保持力が大きくなり、密着性が向上する。
【符号の説明】
【0079】
1~3 負極集電体
10、20、30 基部
11、21、31 第1凹凸構造
12、22、32 角凹凸構造
13、23、33 辺凹凸構造
14、24、34 内凹凸構造
15、36 第2凹凸構造
25、35 傾斜面
100 全固体電池
101 正極
102 固体電解質層
103 負極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7