IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トランストロンの特許一覧

特開2024-43146浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム
<>
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図1
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図2
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図3
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図4
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図5
  • 特開-浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043146
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20240322BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20240322BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60R21/00 310N
G08B21/10
B60R21/00 340
B60G17/015 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148166
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠
(72)【発明者】
【氏名】神宮 大祐
【テーマコード(参考)】
3D301
5C086
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301AA65
3D301DA14
3D301EA81
3D301EB04
5C086AA11
5C086AA60
5C086BA22
5C086CA03
5C086CA30
5C086CB08
5C086DA03
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA11
5C086FA17
5C086FA18
(57)【要約】
【課題】車両内部に浸水が起こったり浸水のおそれがあったりする場合に不注意な扱いを未然に防ぐことができる。
【解決手段】車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知システムである。浸水を検知する検知部は、機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部と、を有する。また、検知部による検知結果に基づいて、浸水に対する処理を行う出力部と、検知部による検知結果に基づいて前記機器の浸水に関する判定を行う判定部と、前記出力部に前記出力部の動作を制御する指示を出力する出力制御部と、を有する制御部と、を備える。判定部は、第1浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には機器の浸水の予兆があり、第2浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には機器が浸水したと判定し、出力制御部は、判定部により機器の浸水の予兆があると判定された場合と、機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知システムであって、
浸水を検知する検知部であって、前記機器のうちの第1機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記第1機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部と、を有する検知部と、
前記検知部による検知結果に基づいて、浸水に対する処理を行う出力部と、
前記検知部による検知結果に基づいて前記機器の浸水に関する判定を行う判定部と、前記出力部の動作を制御する指示を前記出力部に出力する出力制御部と、を有する制御部と、
を備え、
前記判定部は、前記第1浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には前記機器の浸水の予兆があり、前記第2浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には前記機器が浸水したと判定し、
前記出力制御部は、前記判定部により前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力する
ことを特徴とする浸水検知システム。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記判定部により浸水の予兆があることが判定された場合には、浸水の予兆を警告する浸水事前警報を出力し、前記判定部により浸水したことが判定された場合には、浸水したことを警告する浸水発生警報を出力し、
前記出力部は、前記出力制御部から前記浸水事前警報が出力された場合と前記浸水発生警報が出力された場合とで異なる態様で警報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の浸水検知システム。
【請求項3】
前記出力部は、エアサスペンションを有し、
前記出力制御部は、前記判定部により浸水の予兆があることが判定された場合には、前記車両の車高を上昇させることを示す制御命令を前記エアサスペンションに出力する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の浸水検知システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記第2浸水検知部に水が到達していることが検知されているが、前記第1浸水検知部に水が到達していることが検知されていない場合には、浸水であるとの判定を行わない
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の浸水検知システム。
【請求項5】
前記検知部は、前記機器のうちの前記第1機器とは異なる第2機器の端近傍に設けられた第3浸水検知部と、前記第2機器の上端近傍に設けられた第4浸水検知部と、を有し、
前記判定部は、前記第1浸水検知部、前記第2浸水検知部、前記第3浸水検知部及び前記第4浸水検知部のうちの最も下方に設けられている浸水検知部に水が到達していることが検知されていない場合には、浸水の予兆がある又は浸水であるとの判定を行わない
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の浸水検知システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検知部から取得した検知結果又は前記判定部による判定結果を記憶する記憶部と、ユーザからの入力を受け付ける受付部と、を有し、
前記出力制御部は、前記受付部が入力を受け付けたときに前記記憶部に記憶された結果を前記出力部に出力する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の浸水検知システム。
【請求項7】
車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知方法であって、
前記機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部を有する検知部における検知結果に基づいて、前記機器の浸水に関する判定を行う判定ステップと、
前記検知部による検知結果に基づいて浸水に対する処理を行う出力部の動作を制御する指示を出力する出力ステップと、
を備え、
前記出力ステップでは、前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力する
ことを特徴とする、浸水検知方法。
【請求項8】
車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知プログラムであって、
コンピュータを、
少なくとも
浸水を検知する検知部であって、前記機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部と、を有する検知部による検知結果に基づいて前記機器の浸水に関する判定を行う判定部、
出力部の動作を制御する指示を前記出力部に出力する出力制御部、
として機能させ、
前記出力制御部は、前記判定部により前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力する
ことを特徴とする、浸水検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンルーム内に浸水センサを設けて浸水を検知する、車両の安全制御方法及び安全制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-286213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、集中豪雨や台風等により車両が水没する事故事例が多く発生している。車両に搭載されるエンジンルームやバッテリ等の電気部品は、浸水により重大な故障をし得る。また、一度浸水してから水が引いた場合であっても、浸水の際に電気部品が故障していたり、内部に残った水分が後日故障を招いたりするおそれがある。このような場合には、電気部品が浸水したか否か、外部からの確認が困難である。このため、電気部品が浸水したことを知らずに不注意な扱いをした結果、車両の重大な故障を招いてしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、車両内部に浸水が起こったり浸水のおそれがあったりする場合に不注意な扱いを未然に防ぐことができる浸水検知システム、浸水検知方法、及び浸水検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る浸水検知システムは、例えば、車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知システムであって、浸水を検知する検知部であって、前記機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部と、を有する検知部と、前記検知部による検知結果に基づいて、浸水に対する処理を行う出力部と、前記検知部による検知結果に基づいて前記機器の浸水に関する判定を行う判定部と、前記出力部の動作を制御する指示を前記出力部に出力する出力制御部と、を有する制御部と、を備え、前記判定部は、前記第1浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には前記機器の浸水の予兆があり、前記第2浸水検知部に水が到達していることが検知された場合には前記機器が浸水したと判定し、前記出力制御部は、前記判定部により前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力することを特徴とする。
【0007】
本発明の他態様に係る浸水検知方法は、例えば、車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知方法であって、前記機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部を有する検知部における検知結果に基づいて、前記機器の浸水に関する判定を行う判定ステップと、前記検知部による検知結果に基づいて浸水に対する処理を行う出力部の動作を制御する指示を出力する出力ステップと、を備え、前記出力ステップでは、前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の他態様に係る浸水検知プログラムは、例えば、車両に搭載される機器の浸水を検知する浸水検知プログラムであって、コンピュータを、少なくとも浸水を検知する検知部であって、前記機器の下端近傍に設けられた第1浸水検知部と、前記機器の上端近傍に設けられた第2浸水検知部と、を有する検知部による検知結果に基づいて前記機器の浸水に関する判定を行う判定部、出力部の動作を制御する指示を前記出力部に出力する出力制御部、として機能させ、前記出力制御部は、前記判定部により前記機器の浸水の予兆があると判定された場合と、前記機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力することを特徴とする。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0009】
本発明の上記いずれかの態様では、検知部が機器の下端部又は下方に設けられており、機器の浸水の予兆がある、または、機器が浸水したことを判定し、判定結果に応じて出力部に異なる指示を出力する。これにより、車両のユーザにとっても浸水の状況が詳細に把握できる。したがって、車両内部に浸水が起こったり浸水のおそれがあったりする場合に不注意な扱いを未然に防ぐことができる。
【0010】
前記出力制御部は、前記判定部により浸水の予兆があることが判定された場合には、浸水の予兆を警告する浸水事前警報を出力し、前記判定部により浸水したことが判定された場合には、浸水したことを警告する浸水発生警報を出力し、前記出力部は、前記出力制御部から前記浸水事前警報が出力された場合と前記浸水発生警報が出力された場合とで異なる態様で警報を出力してもよい。これにより、ユーザは車両の状況をより明確に把握できる。
【0011】
前記出力部は、エアサスペンションを有し、前記出力制御部は、前記判定部により浸水の予兆があることが判定された場合には、前記車両の車高を上昇させることを示す制御命令を前記エアサスペンションに出力してもよい。これにより機器が浸水するのを防ぐことができる。
【0012】
前記判定部は、前記第2浸水検知部に水が到達していることが検知されているが、前記第1浸水検知部に水が到達していることが検知されていない場合には、浸水であるとの判定を行わなくてもよい。これにより、誤検知を防ぎ、検知の精度を担保することができる。
【0013】
前記検知部は、前記機器のうちの前記第1機器とは異なる第2機器の端近傍に設けられた第3浸水検知部と、前記第2機器の上端近傍に設けられた第4浸水検知部と、を有し、前記判定部は、前記第1浸水検知部、前記第2浸水検知部、前記第3浸水検知部及び前記第4浸水検知部のうちの最も下方に設けられている浸水検知部に水が到達していることが検知されていない場合には、浸水の予兆がある又は浸水であるとの判定を行わなくてもよい。これにより、検知の精度を高くすることができる。
【0014】
前記制御部は、前記検知部から取得した検知結果又は前記判定部による判定結果を記憶する記憶部と、ユーザからの入力を受け付ける受付部と、を有し、前記出力制御部は、前記受付部が入力を受け付けたときに前記記憶部に記憶された結果を前記出力部に出力してもよい。これにより、所望のタイミングで浸水の状況を詳細に把握することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両内部に浸水が起こったり浸水のおそれがあったりする場合に不注意な扱いを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る浸水検知システム1が車両に搭載されている様子の一例を示す概略側面図である。
図2】浸水検知システム1が備える水検知センサの一例を示す模式図である。
図3】浸水検知システム1の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4】浸水検知システム1による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る浸水検知システム2の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】浸水検知システム2による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る浸水検知システムの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。浸水検知システムは、車両に搭載される、エンジンルームやバッテリ等の部品の浸水を検知し、浸水に対する措置を講じる装置である。また、浸水検知システムは、部品が徐々に浸水していく状況において、浸水の予兆を検知し、措置を講じる。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施の形態に係る浸水検知システム1が車両100に搭載されている様子の一例を示す概略側面図である。車両100は、例えばトラックの他、乗用車やその他の走行機械であってよい。車両100は、エンジン110及びバッテリ120を有する。図1では、エンジン110は、運転席の下方かつ前輪上方に設けられており、バッテリ120は、前輪と後輪の間付近に搭載されている。なお、エンジン110及びバッテリ120は浸水の機器の一例であり、機器はエンジン110やバッテリ120に限られない。
【0019】
なお、図1におけるエンジン110及びバッテリ120の配置は、あくまで一例であり、これに限られない。例えば、バッテリ120がエンジン110よりも高い位置に配置されていてもよい。
【0020】
エンジン110の下端部には浸水検知部11が設けられており、エンジン110の上端部には浸水検知部12が設けられている。また、バッテリ120の下端部には浸水検知部13が設けられており、バッテリ120の上端部には浸水検知部14が設けられている。
【0021】
なお、図1では、浸水検知部11、12は、エンジン110の下端部及び上端部にそれぞれ設けられており、浸水検知部13、14は、バッテリ120の下端部及び上端部にそれぞれ設けられているが、浸水検知部11~14の配置はこれに限られない。浸水検知部11~14は、機器(エンジン110及びバッテリ120)の上端近傍及び下端近傍に設けられていればよく、機器の上方及び下方に機器から少し(例えば、数cm)離れて設けられていてもよい。
【0022】
図2は、浸水検知システム1が備える浸水検知部11~14の一例を示す模式図である。浸水検知部11~14は、浸水、すなわち所定の高さまで液面が到達しているかを検知するセンサである。浸水検知部11~14は同様の構成を有するため、以下浸水検知部11を例に説明する。
【0023】
浸水検知部11は、主として、水検知センサ111及びカバー112を有する。水検知センサ111は、水の接触を検知するセンサである。水検知センサ111は、2本の電極を有し、この2本の電極に水等の液体が接触して液体を介して電流が流れることで、液体が接触していることを検知する。ただし、水検知センサ111の形態はこれに限られない。
【0024】
カバー112は、例えば細長い箱状体であり、その内側の上端部に水検知センサ111が収容されている。カバー112は、少なくとも上端が覆われた筒状の収容部を備える任意の形状であればよい。例えば、カバー112の側面が円筒状や多角筒状であってもよい。カバー112の下端部には、水取入口113が形成されている。
【0025】
車両100が浸水している場合には、水取入口113を介して水がカバー112内に侵入し、水検知センサ111に水が接触し、浸水検知部11が浸水を検知する。一方、雨や水撥ねなど、通常の運用中に浸水以外の要因で車両100に水がかかるような場合には、カバー112が水を遮り、水検知センサ111に水が到達するのを防止できる。これにより、浸水以外の場合を浸水と検知する誤検知を防ぐことができる。
【0026】
水取入口113からカバー112内に水を侵入させるにあたり、カバー112の上端近傍には、カバー112内部の空気をカバー112の外に逃がす空気孔(図示省略)が形成されている。このようなカバー112の構成は技術常識であり、カバー112の具体的な態様に応じて適宜構成されていてよい。
【0027】
なお、浸水検知部11~14の形態はこれに限られない。例えば、水圧で水の侵入を感知する装置を浸水検知部として用いてもよい。
【0028】
図3は、浸水検知システム1の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。図3に示されるように、例えば、浸水検知システム1は、主として、検知部10と、制御部20と、出力部30と、を備える。検知部10、制御部20、及び出力部30は、有線又は無線により互いに通信可能に構成されている。
【0029】
検知部10は、主として、複数の浸水検知部11~14を有する。エンジン110の下端部に設けられている浸水検知部11は、水面がエンジン110の下端部付近まで到達していることを検知する。エンジン110の上端部に設けられている浸水検知部12は、水面がエンジン110の上端部付近まで到達していることを検知する。同様に、バッテリ120の下端部に設けられている浸水検知部13は、水面がバッテリ120の下端部付近まで到達していることを検知する。バッテリ120の上端部に設けられている浸水検知部14は、水面がバッテリ120の上端部付近まで到達していることを検知する。検知部10での検知結果は、制御部20に出力される。
【0030】
制御部20は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ等の情報処理装置を用いて実現することができる。具体的には、制御部20は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備える。演算装置は、記憶装置に格納されたプログラムにしたがって動作する。なお、プログラムは、ネットワークを介したダウンロードによって提供したり、コンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0031】
制御部20は、ソフトウェア資源として、主として、判定部21、及び出力制御部22等の各機能部を有する。
【0032】
判定部21は、検知部10による検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて機器(エンジン110、バッテリ120)の浸水に関する判定を行う機能部である。例えば、判定部21は、機器(エンジン110、バッテリ120)と浸水検知部11~14との位置関係に関する情報を取得し、当該情報と検知部10による検知結果に基づいて浸水に関する判定を行う。
【0033】
本実施の形態では、判定部21は、浸水検知部11、13に水が到達していることが検知された場合には、エンジン110やバッテリ120の浸水の予兆があることを判定する。また、判定部21は、浸水検知部12、14に水が到達していることが検知された場合には、エンジン110やバッテリ120が浸水したと判定する。
【0034】
なお、判定部21は、浸水検知部11~14が対象とする機器(エンジン110、バッテリ120)の種類及び機器と浸水検知部11~14との位置関係に関する情報を、図示しない記憶部に記憶しておいてもよいし、検知結果と共に検知部10から取得してもよい。
【0035】
出力制御部22は、判定部21による判定結果に基づいて、出力部30の動作を制御する指示を出力部30に出力する機能部である。出力制御部22は、判定部21により機器に浸水の予兆があると判定された場合と、機器が浸水したと判定された場合とで異なる指示を出力する。本実施の形態では、出力制御部22は、判定部21により浸水の予兆があることが判定された場合には、浸水の予兆を警告する浸水事前警報を出力する。また、出力制御部22は、判定部21により浸水したことが判定された場合には、浸水したことを警告する浸水発生警報を出力する。
【0036】
なお、制御部20は、単一の情報処理装置により構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されるものであってもよい。制御部20は、検知部10及び出力部30が搭載される車両100とは異なる場所に設けられていてもよいし、検知部10及び出力部30とともに車両に搭載されていてもよい。また、制御部20及び出力部30は、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。また、制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、通信装置、記憶装置等の主要なハードウェア構成の他、サーバ装置が一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0037】
出力部30は、主として、警報灯31と、スピーカ32と、通信モジュール33と、を有する。出力部30は、制御部20からの制御命令に基づいて、浸水に対する各種の動作を行う機能部である。
【0038】
出力部30は、出力制御部22からの制御命令に基づいて複数種類の警告の発報が可能である。例えば、出力部30は、判定部21の判定結果に応じて、浸水の予兆があると判定された場合(浸水事前警報)と浸水したと判定された場合(浸水発生警報)とで異なる態様で警報を出力する。
【0039】
警報灯31は、車両100に設けられたランプ等の表示器であり、車両100の内部又は外部から視認可能である。警報灯31は、判定部21の判定結果に基づいて異なる複数の態様で警報を発報する。例えば、警報灯31は、浸水事前警報と浸水発生警報とで異なる色(例えば、浸水事前警報のときは黄色、浸水発生警報の時は赤)で点灯又は点滅することで警報を発報してもよい。また例えば、警報灯31は、浸水事前警報と浸水発生警報とで異なる態様(光量や明滅パターン)で警報を発報してもよい。また、警報灯31がディスプレイを有し、浸水事前警報と浸水発生警報と異なる文字を表示させるような構成であってもよい。
【0040】
スピーカ32は、車両100に設けられており、車両100の内部又は外部に向けて音を鳴らすことができる。スピーカ32は、判定部21の判定結果に基づいて異なる複数の態様で警報を発報する。例えば、スピーカ32は、浸水事前警報と浸水発生警報とで、通知する音、音声、メッセージの内容等を変えて警報を発報してもよい。
【0041】
通信モジュール33は、例えば外部装置と通信を行い、警報を送信する機能部である。通信モジュール33は、車両100に設けられていてもよいし、制御部20に設けられていてもよい。通信モジュール33は、例えば車両100のユーザの端末に対して電子メールを送信してもよいし、近距離通信等の適宜の技術を用いて、管理者の端末にメッセージを通知してよい。
【0042】
通信モジュール33は、判定部21の判定結果に基づいて異なる複数の態様で警報を発報する。例えば、通信モジュール33は、電子メール又は適宜のメッセージにおいて、浸水事前警報と浸水発生警報とで内容を異ならせてよいし、警報の送信先を異ならせてもよい。このような構成によれば、ユーザは車両100の状況をより明確に把握できる。
【0043】
ここで、図4を参照して、浸水検知システム1が警報を報知する処理の流れを説明する。
図4は、浸水検知システム1による警報処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4の処理は、例えば車両100の電子機器が動作している状態で、連続して繰り返し行われる。
【0044】
(ステップSP11)
制御部20(ここでは、判定部21)は、検知部10から権利結果を取得し、機器(エンジン110、バッテリ120)の下端部に設けられた浸水検知部11、13で浸水が検知されたか否かを判定する。浸水検知部11、13で浸水が検知された場合(ステップSP11でYes)には、制御部20は処理をステップSP13に進める。浸水検知部11、13で浸水が検知されなかった場合(ステップSP11でNo)には、制御部20は処理を終了する。
【0045】
(ステップSP13)
制御部20(ここでは、出力制御部22)は、判定部21による判定結果に基づいて、浸水事前警報を出力する指示を出力部30に出力し、出力部30はこれを取得する。そして、出力部30は、警報灯31、スピーカ32及び通信モジュール33の少なくとも1つにより、浸水の予兆を警告する浸水事前警報を発報する。制御部20は、処理をステップSP15に進める。
【0046】
(ステップSP15)
制御部20(ここでは、判定部21)は、検知部10から検知結果を取得し、機器(エンジン110、バッテリ120)の上端部に設けられた浸水検知部12、14で浸水が検知されたか否かを判定する。浸水検知部12、14で浸水が検知された場合(ステップSP15でYes)には、制御部20は処理をステップSP17に進める。浸水検知部12、14で浸水が検知されなかった場合(ステップSP15でNo)には、制御部20は処理を終了する。
【0047】
(ステップSP15)
制御部20(ここでは、出力制御部22)は、判定部21による判定結果を出力部30に出力し、出力部30は、判定部21による判定結果、すなわち浸水検知部12、14で浸水が検知されたことを取得する。そして、出力部30は、警報灯31、スピーカ32及び通信モジュール33の少なくとも1つにより、浸水を警告する浸水発生警報を発報する。そして、浸水検知システム1は一連の処理を終了する。
【0048】
なお、図4に示す処理の流れにおいて、ステップの順番は、適宜、変更することができる。例えば、ステップSP13とステップSP15を同時に行ってもよい。
【0049】
本実施の形態によれば、ユーザが車両の状況を明確に把握することができる。したがって、車両内部に浸水が起こったり浸水のおそれがあったりする場合に、エンジン110を起動する等の不注意な扱いによる車両100の重大な故障を未然に防ぐことができる。また、ユーザは、浸水事前警報が通知された場合には、一層の浸水が起こらないよう退避行動をとることもできる。また、ユーザは、浸水発生警報が通知された場合には、運転を中止できる。このように、車両100の内部に浸水が起こった場合に車両100の故障や運転手の安全を確保することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、判定部21は、浸水検知部11、13に水が到達していることが検知された場合には、エンジン110やバッテリ120の浸水の予兆があり、浸水検知部12、14に水が到達していることが検知された場合には、エンジン110やバッテリ120が浸水したと判定したが、判定部21が浸水の予兆や有無を判定する方法はこれに限られない。
【0051】
例えば、判定部21は、同じ機器に対して設けられている、互いに対をなす浸水検知部の検知結果に基づいて、浸水に関する判定を行ってもよい。例えば、判定部21は、エンジン110の上端部に設けられている浸水検知部12に水が到達していることが検知されているが、浸水検知部12と対をなして配置されている浸水検知部11(エンジン110の下端部に設けられている)に水が到達していることが検知されていない場合には、誤検知とみなして浸水であるとの判定を行わないものとしてもよい。これにより、検知の精度を高くすることができる。
【0052】
また、例えば、判定部21は、複数の機器に対して設けられている全ての浸水検知部の検知結果に基づいて、浸水に関する判定を行ってもよい。例えば、判定部21は、車両100に設けられている浸水検知部11~14の高さに基づいて、最も下方に設けられている浸水検知部(ここでは、浸水検知部13)に水が到達していることが検知されていない場合は、他の浸水検知部(ここでは、浸水検知部11、12、14)に水が到達していることが検知されたとしても、浸水の予兆がある又は浸水であるとの判定を行わないものとしてもよい。これにより、検知の精度を高くすることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、判定部21により浸水が判定されたときに出力部30から警報を発報したが、出力部30から警報を発報するタイミングはこれに限られない。例えば、車両の運転者又は管理者等のユーザからの入力等に応じて、判定部21による判定結果を出力部30に出力してもよい。この場合には、制御部20が記憶部及び入力を受け付ける受付部を有し、検知部10から取得した検知結果又は判定部21による判定結果を記憶部に記憶させておき、受付部が入力を受け付けたときに記憶部に記憶された結果を出力制御部22が出力部30に出力する。ユーザからの操作入力は、例えば、検知履歴の表示命令であってもよいし、車両100の電源を入れる操作等の運転開始に至る適宜の操作であってよい。これにより、浸水が判定されたとき以外の所望のタイミングでも、ユーザが浸水の状況を詳細に把握することができる。
【0054】
浸水の履歴がある場合に運転を開始すると、事故や車両100の故障につながるおそれがあるため、運転開始に至る動作のいずれかにより検知結果が制御部20から出力部30に送信されることが望ましい。このような構成によれば、浸水時点での通知をユーザが確認していない場合であっても、浸水後の不注意な扱いをより確実に防止することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、機器が2つ(エンジン110及びバッテリ120)であり、機器のそれぞれに2つずつの合計4つの浸水検知部11~14を有したが、機器の数は2つに限られないし、浸水検知部の数も4つに限られない。
【0056】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施の形態に係る浸水検知システム2について説明する。
浸水検知システム2は、第1実施形態に係る浸水検知システム1と同様の要素や構造を備えている。そのため、以降の説明においては、第1実施形態に係る浸水検知システム1と同様の要素や構造には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0057】
浸水検知システム2は、車両100に設けられたエアサスペンションと連携し、浸水を検知するとエアサスペンションを介して車高を上昇させる点で、第1実施形態に係る浸水検知システム1と異なる。
【0058】
図5は、第2実施形態に係る浸水検知システム2の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。浸水検知システム2は、主として、検知部10と、制御部20Aと、出力部30Aと、を備える。検知部10、制御部20A、及び出力部30Aは、有線又は無線により互いに通信可能に構成されている。
【0059】
出力部30Aは、出力部30と同様に、制御部20Aからの制御命令に基づいて浸水に対する各種の動作を行う機能部である。出力部30Aは、主として、警報灯31と、スピーカ32と、通信モジュール33と、エアサスペンション34とを有する。
【0060】
エアサスペンション34は、車両100に設けられており、浸水検知システム2が搭載された車両100の車高を調整する。なお、エアサスペンション34は、各種車両に搭載されている公知のエアサスペンションを用いることができる。例えば、エアサスペンション34はアクチュエータを有し、アクチュエータによりアッパーシート部を上下させることで車高の上げ下げを行うようにしてもよい。
【0061】
制御部20Aは、主として、ソフトウェア資源として、主として、判定部21、及び出力制御部22A等の各機能部を有する。出力制御部22Aは、エアサスペンション34に指示を出力する点が出力制御部22と異なり、その他は出力制御部22と同様である。
【0062】
図6は、浸水検知システム2による処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6の処理は、例えば車両100の電子機器が動作している状態で、連続して繰り返し行われる。
ステップSP11、13は、図4を用いて説明した浸水検知システム1と同様である。ステップSP13の後で、制御部は処理をステップSP14に進める。
【0063】
(ステップSP14)
制御部20A(ここでは、出力制御部22A)は、判定部21による判定結果(浸水の予兆があるとの判定)に基づいて、車両100の車高を上昇させることを示す制御命令をエアサスペンション34に出力する。エアサスペンション34は、これを取得し、車両100の車高を上昇させる。制御部20は、処理をステップSP15に進める。
【0064】
なお、ステップSP15、17は、図4を用いて説明した浸水検知システム1と同様である。
【0065】
本実施の形態によれば、浸水の予兆を検知したときに車高を上げることで、機器(エンジン110、バッテリ120)の浸水を未然に防止することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、浸水事前警報を発報させるとともに車両100の車高を上げる処理を行ったが、浸水事前警報を発報させる処理に代えて、車両100の車高を上げてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、浸水検知部11、13で浸水が検知されたときにエアサスペンション34を介して車両100の車高を上げたが、車両100の車高を上げるタイミングはこれに限られない。例えば、出力制御部22Aは、浸水検知部11、13で浸水が検知された場合及び浸水検知部12、14で浸水が検知された場合のそれぞれにおいて車両100の車高を上げる指示をエアサスペンション34に出力してもよい。このとき、出力制御部22Aは、浸水検知部11、13で浸水が検知された場合には、走行に支障がない程度の任意の値だけ車両100の車高を上げる指示をエアサスペンション34に出力し、浸水検知部12、13で浸水が検知された場合には、車両100の車高を最大限上げる指示をエアサスペンション34に出力してもよい。これにより、浸水のリスクを減らして車両100を走行させつつ、機器が長時間浸水するのを防ぐことができる。
【0068】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1、2 :浸水検知システム
10 :検知部
11、12、13、14:浸水検知部
20、20A:制御部
21 :判定部
22、22A:出力制御部
30、30A:出力部
31 :警報灯
32 :スピーカ
33 :通信モジュール
34 :エアサスペンション
100 :車両
110 :エンジン
111 :水検知センサ
112 :カバー
113 :水取入口
120 :バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6