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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043150
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240322BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240322BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02
G02B7/02 D
G03B15/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148172
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平井 教之
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA05
2H044AA15
2H044AC01
2H044AD02
2H044AD03
(57)【要約】
【課題】複数のレンズを鏡筒内に組み付ける際におけるレンズチルトを抑えて、レンズユニットの品質を高めること。
【解決手段】鏡筒(12)の一部であって、最も物体側のレンズ(14)における像側の面の周縁部に対向する部位に、Oリング(28)を収容するための環状の収容溝(30)が形成され、収容溝(30)の底面に、Oリング(28)を位置決めするための環状の位置決め溝(32)が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、
該鏡筒内に光軸方向に沿って設けられた複数のレンズと、を備え、
前記鏡筒の一部であって、前記複数のレンズのうちの最も物体側のレンズにおける像側の面の周縁部に対向する部位に、Oリングを収容するための環状の収容溝が形成され、
前記Oリングは、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されることで、前記鏡筒の内部を密封するように構成され、
前記収容溝の底面に、前記Oリングを位置決めするための環状の位置決め溝が形成されている、レンズユニット。
【請求項2】
前記収容溝の一方の壁面と前記位置決め溝の一方の端縁との間隔、及び前記収容溝の他方の壁面と前記位置決め溝の他方の端縁との間隔は、それぞれ、前記Oリングの線径の半分未満に設定されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記位置決め溝の幅寸法は、前記Oリングの線径の10%以上でかつ200%以下に設定されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記位置決め溝の深さ寸法は、前記Oリングの線径の5%以上でかつ50%以下に設定されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記鏡筒の先端側に、前記最も物体側のレンズにおける物体側の面の周縁部に被さるようにかしめられた環状のカシメ部が形成され、
前記Oリングは、前記カシメ部を形成することで、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されるように構成されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記鏡筒の先端側に螺合して設けられ、前記最も物体側のレンズを像側に押圧する押さえ環を更に備え、
前記Oリングは、前記最も物体側のレンズが前記押さえ環によって押圧されることで、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されるように構成されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラ等のカメラに用いられるレンズユニットは、鏡筒と、該鏡筒内に光軸方向に沿って設けられた複数のレンズとを備える。レンズユニットが防水機能を付加するために、最も物体側のレンズと鏡筒との間にOリングを介在させることがある。Oリングは、最も物体側のレンズと鏡筒との間で光軸方向に押し潰されることで、鏡筒の内部を密封するように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載のレンズユニットは、最も物体側のレンズと鏡筒との間にOリングを介在させることなく、次のような構成によって防水機能を付加している。即ち、鏡筒の一部であって、最も物体側のレンズにおける像側の面の周縁部に対向する部位には、環状の凹部が形成されている。鏡筒の凹部には、塗布した液状組成物を硬化してなる環状の弾性シール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/119296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最も物体側のレンズと鏡筒との間にOリングを介在させる場合には、複数のレンズを鏡筒に組み付ける際に、Oリングを押し潰しながら複数のレンズを鏡筒に対して固定する必要がある。そのため、複数のレンズを鏡筒に組み付ける際に、Oリングの位置ずれに起因してOリングの反力に偏りが生じ、複数のレンズの組ずれ又はレンズチルトが起こり、レンズユニットの品質の低下を招くことがある。
【0006】
また、特許文献1に記載のレンズユニットのように、鏡筒の凹部に環状の弾性シール部材を設ける場合には、次のような問題がある。鏡筒の凹部に液状組成物を塗布して、液状組成物が硬化するまでに時間が長くなり、レンズユニットの製造性が低下する。また、鏡筒の凹部の全周に液状組成物を塗布する際に、液状組成物の厚みにバラツキが発生し易く、その結果、最も物体側のレンズと環状の弾性シール部材との空隙が発生して、レンズユニットの品質の低下することが懸念される。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、最も物体側のレンズと鏡筒との間にOリングを介在させた場合に、複数のレンズを鏡筒に組み付ける際におけるレンズチルトを抑えて、レンズユニットの品質を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様は、鏡筒と、該鏡筒内に光軸方向に沿って設けられた複数のレンズと、を備える。前記鏡筒の一部であって、前記複数のレンズのうちの最も物体側のレンズにおける像側の面の周縁部に対向する部位に、Oリングを収容するための環状の収容溝が形成され、前記Oリングは、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されることで、前記鏡筒の内部を密封(シール)するように構成され、前記収容溝の底面に、前記Oリングを位置決めするための環状の位置決め溝が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、最も物体側のレンズと鏡筒との間にOリングを介在させた場合に、複数のレンズを鏡筒に組み付ける際におけるレンズチルトを抑えて、レンズユニットの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るレンズユニットの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
図2図1のII部の拡大断面図である。
図3】実施形態1に係るレンズユニットの位置決め溝の他の態様を示す拡大断面図である。
図4】実施形態1に係るレンズユニットの位置決め溝の他の態様を示す拡大断面図である。
図5】実施形態1の作用効果の一部を説明するための模式的な断面図である。
図6】実施形態2に係るレンズユニットの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、明細書及び特許請求の範囲において、光軸方向とは、レンズの光軸の方向、又はレンズユニットの光軸の方向のことをいう。径方向とは、レンズの半径方向、鏡筒の半径方向、又はレンズユニットの半径方向のことである。図面中、「AD」は光軸、「B」は物体側(被写体側)、「I」は像側をそれぞれ指している。
【0012】
〔実施形態1〕
図1から図4を参照して、実施形態1に係るレンズユニットの構成について説明する。図1は、実施形態1に係るレンズユニットの光軸方向に沿った模式的な断面図である。図2は、図1のII部の拡大断面図である。図2のIIAは、第1レンズと鏡筒との間で押し潰されたOリングの一部が位置決め溝に係合した状態を示している。図2のIIBは、押し潰される前のOリングの一部が位置決め溝に係合した状態を示している。図3及び図4は、実施形態1に係るレンズユニットの位置決め溝の他の態様を示す拡大断面図である。
図3及び図4は、押し潰される前のOリングの一部が位置決め溝に係合した状態を示している。
【0013】
(レンズユニット10の概要)
図1に示すように、実施形態1に係るレンズユニット10は、車載用カメラに用いられる光学ユニットである。車載用カメラのカメラボディ(不図示)に着脱可能である。レンズユニット10は、入射した光をカメラボディ内の撮像素子面(不図示)に結像する。なお、レンズユニット10が車載用カメラに用いられる代わりに、監視用カメラ等の他のカメラに用いられてもよい。
【0014】
(鏡筒12)
図1に示すように、レンズユニット10は、略円筒状の鏡筒12を備えており、鏡筒12は、光軸方向に延びている。鏡筒12の先端側は、物体側(被写体側)を向き、鏡筒12の基端側は、像側を向く。鏡筒12の先端側及び基端側は、それぞれ、開口されている。
鏡筒12は、最も物体側に位置する第1筒部12aと、第1筒部12aの次に物体側に位置する第2筒部12bと、最も像側に位置する第3筒部12cとを有している。鏡筒12の第1筒部12aの内径は、第2筒部12bの内径及び第3筒部12cの内径よりも大きくなっている。鏡筒12の第2筒部12bの内径は、第3筒部12cの内径よりも大きくなっている。鏡筒12は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の合成樹脂により構成されている。
【0015】
(第1レンズ14、第2レンズ16、第3レンズ18)
図1に示すように、鏡筒12内には、第1レンズ14、第2レンズ16、及び第3レンズ18が光軸方向に沿って設けられている。換言すれば、鏡筒12内には、複数のレンズ14,16,18からなるレンズ群が設けられている。換言すれば、鏡筒12は、複数のレンズ14,16,18からなるレンズ群を収容する。
【0016】
第1レンズ14は、鏡筒12の第1筒部12aに嵌合するように収容されている。第1レンズ14は、複数のレンズ14,16,18の中で最も物体側に位置している。第1レンズ14の外径は、鏡筒12の第1筒部12aの内径より僅かに小さくなっている。第1レンズ14の外径は、第2レンズ16の外径及び第3レンズ18の外径よりも大きくなっている。換言すれば、第1レンズ14は、複数のレンズ14,16,18の中で外径が最も大きくなっている。第1レンズ14は、物体側に凸面14aを有しかつ像側に凹面14bを有している。第1レンズ14は、ガラス又はプラスチックにより構成されている。
【0017】
第2レンズ16は、鏡筒12の第2筒部12bに嵌合するように収容されている。第2レンズ16は、第1レンズ14に接触した状態で光軸方向に隣接しており、第1レンズ14よりも像側に位置している。第2レンズ16の外径は、鏡筒12の第2筒部12bの内径より僅かに小さくなっている。第2レンズ16の外径は、第3レンズ18の外径よりも大きくなっている。第2レンズ16は、物体側に凹面16aを有しかつ像側に凹面16bを有している。第2レンズ16は、ガラス又はプラスチックにより構成されている。
【0018】
第3レンズ18は、鏡筒12の第3筒部12cに嵌合するように収容されている。第3レンズ18は、第2レンズ16に離隔した状態で光軸方向に隣接しており、介在させた場合に中で最も像側に位置している。第3レンズ18の外径は、鏡筒12の第3筒部12cの内径より僅かに小さくなっている。第3レンズ18の外径は、第1レンズ14の外径及び第2レンズ16の外径よりも小さくなっている。換言すれば、第3レンズ18は、複数のレンズ14,16,18の中で外径が最も小さくなっている。第3レンズ18は、物体側に凸面18aを有しかつ像側に凹面18bを有している。第3レンズ18は、ガラス又はプラスチックにより構成されている。
【0019】
なお、レンズ群を構成する複数のレンズ14,16,18の個数は、3つに限るものでなく、2つ又は4つ以上であってもよい。また、複数のレンズ14,16,18の表面には、必要に応じて、それぞれ反射防止膜、親水膜、撥水膜等を形成してもよい。
【0020】
(第1スペーサ20、第2スペーサ22)
図1に示すように、鏡筒12内における第2レンズ16と第3レンズ18の間には、環状の第1スペーサ20が設けられている。換言すれば、鏡筒12の第3筒部12c内には、環状の第1スペーサ20が嵌合して収容されており、第1スペーサ20は、第2レンズ16と第3レンズ18との間に位置している。第1スペーサ20は、鏡筒12の第3筒部12cの内径よりも僅かに小さくなっている。第1スペーサ20は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。
【0021】
鏡筒12内における第3レンズ18よりも像側には、環状の第2スペーサ22が設けられている。換言すれば、鏡筒12の第3筒部12c内には、環状の第2スペーサ22が嵌合して収容されており、第2スペーサ22は、第3レンズ18に接触した状態で第3レンズ18よりも像側に位置している。第2スペーサ22は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂により構成されている。
【0022】
なお、スペーサ20,22の個数は、2つに限るものでなく、1つでもよい。換言すれば、必要に応じて、複数のレンズ14,16,18のうち光軸方向に隣接するいずれかのレンズ間に1つの環状のスペーサを設ければよい。
【0023】
(フランジ部24、カシメ部26)
図1に示すように、鏡筒12の基端側には、径方向内側に突出した環状のフランジ部(突起部)26が形成されており、フランジ部24は、鏡筒12の一部である。フランジ部24は、第2スペーサ22の像側の面の周縁部に係止する。換言すれば、フランジ部24は、第3レンズ18の像側の面の周縁部に第2スペーサ22を介して係止する。フランジ部24は、鏡筒12内において複数のレンズ14,16,18を光軸方向に位置決めする。
【0024】
鏡筒12の先端側には、第1レンズ14の物体側の面の周縁部に被さるようにかしめられた環状のカシメ部26が形成されており、カシメ部26は、鏡筒12の一部である。カシメ部26は、フランジ部24と協働して、複数のレンズ14,16,18及び複数のスペーサ20,22を挟持する。換言すれば、カシメ部26は、フランジ部24と協働して、複数のレンズ14,16,18及び複数のスペーサ20,22を鏡筒12に対して固定する。
【0025】
(その他の光学部品)
鏡筒12のフランジ部24の像側には、所定の周波数成分の光(例えば、近赤外線領域の光)を除去する円板状の光学フィルタ(不図示)が設けられている。また、複数のレンズ14,16,18のうち光軸方向に隣接するいずれのレンズ間には、通過光量を制限する環状の絞り部材が設けられている。
【0026】
(Oリング28、収容溝30)
図1図2のIIA、及び図2のIIBに示すように、鏡筒12の一部であって、第1レンズ14の像側の面の周縁部に対向する部位には、Oリング28を収容するための環状の収容溝30が形成されている。Oリング28は、カシメ部26を形成することで、第1レンズ14と鏡筒12との間で光軸方向に押し潰されるように構成されている。Oリング28は、第1レンズ14と鏡筒12との間で光軸方向に押し潰されることで、鏡筒12の内部を密封(シール)するように構成されている。これにより、第1レンズ14と鏡筒12との間に介在させたOリング28によって、レンズユニット10に防水機能を付加することができる。
【0027】
(位置決め溝32)
図1図2のIIA、及び図2のIIBに示すように、収容溝30の底面30bには、Oリング28を位置決めするための環状の位置決め溝32が形成されている。位置決め溝32の断面形状は、V字形状を呈している。位置決め溝32の溝中心は、収容溝30の溝中心と同じ位置に位置している。
【0028】
収容溝30の一方の壁面30fと位置決め溝32の一方の端縁32eとの間隔K(所定の間隔K)と、収容溝30の他方の壁面30sと位置決め溝32の他方の端縁32vとの間隔S(所定の間隔S)は、同じ間隔に設定されている。なお、所定の間隔Kと所定の間隔Kが異なる間隔であってもよい。
【0029】
所定の間隔K及び所定の間隔Sは、それぞれ、Oリング28の線径Dの1/5以上であってかつOリング28の線径Dの半分未満に設定されている。所定の間隔K及び所定の間隔SをそれぞれOリング28の線径Dの1/5以上に設定したのは、所定の間隔K及び所定の間隔SがOリング28の線径Dの1/5未満であると、幅Wが広くなり相対的に深さHが小さくなり過ぎることで後述のセンタリング作用を損なう懸念があるためである。所定の間隔K及び所定の間隔SをそれぞれOリング28の線径Dの半分未満に設定したのは、後述のセンタリング作用を発揮させるためである。Oリング28の線径とは、Oリング断面におけるOリング28の直径(太さ)のことをいう。
【0030】
位置決め溝32の幅寸法Wは、Oリング28の線径Dの10%以上でかつ200%以下に設定されている。位置決め溝32の幅寸法WをOリング28の線径Dの10%以上に設定したのは、位置決め溝32の幅寸法WがOリング28の線径Dの10%未満であると、Oリング28における位置決め溝32に嵌入する部分の体積が少なくなり、位置決め溝32の位置決め性能が低下することが懸念されるからである。位置決め溝32の幅寸法WをOリング28の線径Dの200%以下に設定したのは、位置決め溝32の幅寸法WがOリング28の線径Dの200%を超えると、幅Wと相対的に深さHが小さくなり過ぎることで後述のセンタリング作用を損なうためである。また、鏡筒12が径方向(鏡筒12の径方向)に拡大して、レンズユニット10の小型化が阻害されるからである。
【0031】
位置決め溝32の深さ寸法Hは、Oリング28の線径Dの5%以上でかつ50%以下に設定されている。位置決め溝32の深さ寸法HをOリング28の線径Dの5%以上に設定したのは、位置決め溝32の深さ寸法HがOリング28の線径Dの5%未満であると、Oリング28における位置決め溝32に嵌入する部分の体積が少なくなり、位置決め溝32の位置決め性能が低下することが懸念されるからである。位置決め溝32の深さ寸法Hを50%以下に設定したのは、位置決め溝32の深さ寸法Hが50%を超えると、収容溝30が結果的に狭くなるためOリング28が収容溝30の容積に対して充填率が高くなり過ぎてしまうからである。
【0032】
位置決め溝32の断面形状は、V字状を呈する代わりに、図3のIIIAに示すように、矩形状を呈してもよく、図3のIIIBに示すように、台形状を呈してもよい。また、位置決め溝32の断面形状は、V字状を呈する代わりに、図4のIVAに示すように、U字形状を呈してもよい。
【0033】
図4のIVBに示すように、収容溝30の底面30bに2つの環状の位置決め突起34,36を形成することで、2つの位置決め突起34,36との間に位置決め溝32を形成してもよい。換言すれば、収容溝30の底面30bに2つの位置決め突起34,36を介して位置決め溝32を形成してもよい。
【0034】
(作用効果)
続いて、図1図2、及び図5を参照して、実施形態1の作用効果について説明する。図5は、実施形態1の作用効果の一部を説明するための模式的な断面図である。
【0035】
レンズユニット10においては、前述のように、収容溝30の底面30bに環状の位置決め溝32が形成されている。そのため、複数のレンズ14,16,18を鏡筒12内に介在させた場合に、Oリング28を収容溝30の所定位置に位置決めして、Oリング28の反力の偏りを無くす又は低減することができる。よって、実施形態1によれば、第1レンズ14と鏡筒12との間にOリング28を介在させた場合に、複数のレンズ14,16,18の組ずれ及びレンズチルトを抑えて、レンズユニット10の品質を高めることができる。
【0036】
レンズユニット10の構成においては、前述のように、所定の間隔K及び所定の間隔Sは、それぞれ、Oリング28の線径Dの半分未満に設定されている。そのため、Oリング28を収容溝30に挿入すると、Oリング28の中心が位置決め溝32上に位置することになる。それゆえ、図5に示すように、Oリング28を収容溝30に偏った状態で挿入されても、第1レンズ14側から押圧荷重FがOリング28にかかると、Oリング28の中心を位置決め溝32の中心に寄せるようにセンタリング作用が発揮され、Oリング28は矢印A方向に移動する。これにより、複数のレンズ14,16,18を鏡筒12内に組み付ける際に、Oリング28の中心が位置決め溝32の中心に位置するように、Oリング28を収容溝30の所定位置に位置決めして、Oリング28の反力の偏りを無くす又は十分に低減することができる。よって、実施形態1によれば、レンズチルトをより抑えて、レンズユニット10の品質をより高めることができる。
【0037】
レンズユニット10において、前述のように、位置決め溝32の幅寸法Wは、Oリング28の線径Dの10%以上でかつ200%以下に設定されている。そのため、レンズユニット10の小型化を図りつつ、Oリング28における位置決め溝32に嵌入する部分の体積を十分に確保して、位置決め溝32の位置決め性能を高めることができる。
【0038】
レンズユニット10において、前述のように、位置決め溝32の深さ寸法Hは、Oリング28の線径Dの5%以上でかつ50%以下に設定されている。そのため、Oリング28における位置決め溝32に嵌入する部分の体積を十分に確保して、位置決め溝32の位置決め性能を高めることができる。
【0039】
〔実施形態2〕
図6を参照して、実施形態2に係るレンズユニットの構成について説明する。図6は、実施形態2に係るレンズユニットの光軸方向に沿った模式的な断面図である。
【0040】
(レンズユニット38の概要)
図6に示すように、実施形態2に係るレンズユニット38は、車載用カメラに用いられる光学ユニットであり、入射した光をカメラボディ内の撮像素子面(不図示)に結像する。レンズユニット38は、一部を除き、実施形態1に係るレンズユニット10(図1参照)と同様の構成を有している。レンズユニット38の構成のうち、レンズユニット10の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0041】
(段部14d、雄ネジ部40)
図6に示すように、第1レンズ14の物体側の面の周縁部には、環状の段部14dが設けられている。また、鏡筒12の第1筒部12aの外周面から第2筒部12bの外周面にかけて、雄ネジ部40が形成されている。換言すれば、鏡筒12の先端側の外周面には、雄ネジ部40が形成されている。
【0042】
(押さえ環42、雌ネジ部44、押圧部46)
図6に示すように、鏡筒12の先端側には、第1レンズ14を像側に押圧する押さえ環42が螺合して設けられている。押さえ環42の内周面には、鏡筒12の雄ネジ部40と螺合する雌ネジ部44が形成されている。また、押さえ環42の先端側(物体側)には、第1レンズ14の段部14dを像側に押圧する環状の押圧部46が形成されている。押さえ環42は、フランジ部24と協働して、複数のレンズ14,16,18及び複数のスペーサ20,22を挟持する。換言すれば、押さえ環42は、フランジ部24と協働して、複数のレンズ14,16,18及び複数のスペーサ20,22を鏡筒12に対して固定する。
【0043】
(Oリング28)
Oリング28は、第1レンズ14が押さえ環42によって押圧されることで、第1レンズ14と鏡筒12との間で光軸方向に押し潰されるように構成されている。Oリング28は、第1レンズ14と鏡筒12との間で光軸方向に押し潰されることで、鏡筒12の内部を密封(シール)するように構成されている。これにより、第1レンズ14と鏡筒12との間に介在させたOリング28によって、レンズユニット38に防水機能を付加することができる。
【0044】
(作用効果)
レンズユニット38は、前述のように、実施形態1に係るレンズユニット10と同様の構成を有している。そのため、実施形態2においても、前述の実施形態1の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0045】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るレンズユニットは、鏡筒と、該鏡筒内に光軸方向に沿って設けられた複数のレンズと、を備え、前記鏡筒の一部であって、前記複数のレンズのうちの最も物体側のレンズにおける像側の面の周縁部に対向する部位に、Oリングを収容するための環状の収容溝が形成され、前記Oリングは、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されることで、前記鏡筒の内部を密封(シール)するように構成され、前記収容溝の底面に、前記Oリングを位置決めするための環状の位置決め溝が形成されている。
【0046】
前記の構成によれば、前述のように、前記収容溝の底面に環状の前記位置決め溝が形成されている。そのため、前記複数のレンズを前記鏡筒に組み付ける際に、前記Oリングを前記収容溝の所定位置に位置決めして、前記Oリングの反力の偏りを無くす又は低減することができる。これにより、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間に前記Oリングを介在させた場合に、前記複数のレンズの組ずれ及びレンズチルトを抑えて、前記レンズユニットの品質を高めることができる。
【0047】
本発明の態様2に係るレンズユニットは、前記態様1において、前記収容溝の一方の壁面と前記位置決め溝の一方の端縁との間隔、及び前記収容溝の他方の壁面と前記位置決め溝の他方の端縁との間隔は、それぞれ、前記Oリングの線径の半分未満に設定されてもよい。
【0048】
前記の構成によれば、前記Oリングを前記収容溝に挿入すると、前記Oリングの中心が前記位置決め溝上に位置することになり、前記Oリングの中心を前記位置決め溝の中心に寄せるセンタリング作用が発揮される。これにより、前記複数のレンズを前記鏡筒に組み付ける際に、前記Oリングの中心が前記位置決め溝の中心に位置するように、前記Oリングを前記収容溝の所定位置に位置決めして、前記Oリングの反力の偏りを無くす又は十分に低減することができる。
【0049】
本発明の態様3に係るレンズユニットは、前記態様1又は2において、前記位置決め溝の幅寸法は、前記Oリングの線径の10%以上でかつ200%以下に設定されてもよい。
【0050】
前記の構成によれば、前記レンズユニットの小型化を図りつつ、前記Oリングにおける前記位置決め溝に嵌入する部分の体積を十分に確保して、前記位置決め溝の位置決め性能を高めることができる。
【0051】
本発明の態様4に係るレンズユニットは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記位置決め溝の深さ寸法は、前記Oリングの線径の5%以上でかつ50%以下に設定されてもよい。
【0052】
前記の構成によれば、前記Oリングにおける前記位置決め溝に嵌入する部分の体積を十分に確保して、前記位置決め溝の位置決め性能を高めることができる。
【0053】
本発明の態様5に係るレンズユニットは、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記鏡筒の先端側に、前記最も物体側のレンズにおける物体側の面の周縁部に被さるようにかしめられたカシメ部が形成され、前記Oリングは、前記カシメ部を形成することで、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されるように構成されてもよい。
【0054】
前記の構成によれば、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間に介在させた前記Oリングによって、前記レンズユニットに防水機能を付加することができる。
【0055】
本発明の態様6に係るレンズユニットは、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記鏡筒の先端側に螺合して設けられ、前記最も物体側のレンズを像側(光軸方向の一方側)に押圧する押さえ環を更に備え、前記Oリングは、前記最も物体側のレンズが前記押さえ環によって押圧されることで、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間で光軸方向に押し潰されるように構成されてもよい。
【0056】
前記の構成によれば、前記最も物体側のレンズと前記鏡筒との間に介在させた前記Oリングによって、前記レンズユニットに防水機能を付加することができる。
【0057】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 レンズユニット
12 鏡筒
12a 第1筒部
12b 第2筒部
12c 第3筒部
14 第1レンズ
14a 凸面
14b 凹面
16 第2レンズ
16a 凹面
16b 凹面
18 第3レンズ
18a 凸面
18b 凹面
20 第1スペーサ
22 第2スペーサ
24 フランジ部
26 カシメ部
28 Oリング
30 収容溝
30b 底面
30f 一方の壁面
30s 他方の壁面
32 位置決め溝
32e 一方の端縁
32v 他方の端縁
34 位置決め突起
36 位置決め突起
38 レンズユニット
40 雄ネジ部
42 押さえ環
44 雌ネジ部
46 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6