(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043164
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】熱交換隔壁
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240322BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20240322BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20240322BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D25/12 E
F02C7/18 A
F02C7/18 C
F02C7/18 E
F01D9/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148192
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 有空
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA07
3G202CB01
3G202GA08
3G202GB01
3G202JJ02
3G202JJ06
3G202JJ07
3G202JJ08
3G202JJ09
3G202JJ29
(57)【要約】
【課題】航空エンジンの高温部品に対する冷却効果を向上させることができる。
【解決手段】航空エンジンの高温部品を空冷するための熱交換隔壁は、高温部品の冷却面との間に冷却風が第1方向に沿って流通する冷却流路を画定する壁と、高温部品の冷却面に設けられ、冷却面に対向する方向から視た場合に少なくとも前縁端を含む前面が第1方向の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有する少なくとも1つのフィンと、少なくとも1つのフィンの前面から冷却面に接続するまで第1方向の上流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する湾曲面を有する上流側フィレットと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空エンジンの高温部品を空冷するための熱交換隔壁であって、
前記高温部品の冷却面との間に冷却風が第1方向に沿って流通する冷却流路を画定する壁と、
前記高温部品の前記冷却面に設けられ、前記冷却面に対向する方向から視た場合に少なくとも前縁端を含む前面が前記第1方向の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有する少なくとも1つのフィンと、
前記少なくとも1つのフィンの前記前面から前記冷却面に接続するまで前記第1方向の上流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する湾曲面を有する上流側フィレットと、を備える、
熱交換隔壁。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端と後縁端とを通過する仮想の直線を第1ラインとし、前記第1ラインと直交するとともに、前記少なくとも1つのフィンの前記第1方向と直交する方向における最大幅を画定する両端を通過する仮想の直線を第2ラインとし、前記第1ラインと前記第2ラインとが互いに交差する交差点から前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端までの長さをL1とし、前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端から前記上流側フィレットの前記第1方向の上流側の上流端までの長さをL2とすると、
前記交差点は、前記少なくとも1つのフィンの前記後縁端よりも前記前縁端に近接し、
L2≧0.7L1を満たす、
請求項1に記載の熱交換隔壁。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフィンの少なくとも後縁端を含む後面から前記冷却面に接続するまで前記第1方向の下流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する後側湾曲面を有する下流側フィレット、をさらに備える、
請求項1又は2に記載の熱交換隔壁。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフィンは、前記第1方向において互いに重なり合って配置されるとともに、前記第1方向と直交する方向において互いに間隔を空けて配置される第1フィン及び前記第1フィンとは別の第2フィンを含み、
前記第1フィンと前記第2フィンとの間に形成される隙間の内、最小の長さを有する部分をスロートと定義した場合に、
前記冷却面のうち前記隙間に面する隙間面には、前記第1方向において、前記スロートが形成されている範囲と重なるように凹部が形成されている、
請求項1又は2に記載の熱交換隔壁。
【請求項5】
前記凹部の最も深くなる位置を最深点とし、前記第1方向における前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端から後縁端までの長さをL3とすると、
前記最深点は、前記第1方向において、前記スロートの位置からL3/10ずれた範囲内に位置している、
請求項4に記載の熱交換隔壁。
【請求項6】
前記凹部は、前記隙間を前記第1方向と直交する方向から切断した流路断面の大きさの変化率が5%以下となるように前記隙間面に形成されている、
請求項4に記載の熱交換隔壁。
【請求項7】
前記凹部は、前記最深点から前記凹部の前記第1方向の下流側の下流点に向かうにつれて浅くなる下流面を含む、
請求項5に記載の熱交換隔壁。
【請求項8】
前記高温部品は、前記航空エンジンの燃焼器の燃焼空間に面する燃焼器パネルを含む、
請求項1又は2に記載の熱交換隔壁。
【請求項9】
前記高温部品は、前記航空エンジンの燃焼器から排出される燃焼ガスと接触するタービン翼を含む、
請求項1又は2に記載の熱交換隔壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空エンジンの高温部品を空冷するための熱交換隔壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱交換隔壁は、高温部品と気体状の冷媒(冷却風)との間の伝熱効率を向上させるための工夫がなされている。例えば、特許文献1には、燃焼器ライナの内壁部(高温部品)にピンを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、内壁部から延びる方向にピンを視た場合に、ピンは矩形状を有している。このため、ピンの外周面の全体において冷却風の剥離が発生する虞がある。冷却風の剥離が発生すると、高温部品と冷却風との間の伝熱効率が低減し、高温部品に対する冷却効果が低減してしまう。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、航空エンジンの高温部品に対する冷却効果を向上させることができる熱交換隔壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る熱交換隔壁は、航空エンジンの高温部品を空冷するための熱交換隔壁であって、前記高温部品の冷却面との間に冷却風が第1方向に沿って流通する冷却流路を画定する壁と、前記高温部品の前記冷却面に設けられ、前記冷却面に対向する方向から視た場合に少なくとも前縁端を含む前面が前記第1方向の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有する少なくとも1つのフィンと、前記少なくとも1つのフィンの前記前面から前記冷却面に接続するまで前記第1方向の上流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する湾曲面を有する上流側フィレットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の熱交換隔壁によれば、航空エンジンの高温部品に対する冷却効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】航空エンジンの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る熱交換隔壁の構成を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るフィンの外形形状を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る上流側フィレットの構成を概略的に示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る下側側フィレットの構成を概略的に示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る上流側フィレット及び下流側フィレットの構成の説明図である。
【
図7】従来のフィンの周囲における圧縮空気の速度分布を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る上流側フィレットが未設置の場合のフィンの根元における圧縮空気の流れを示す図である。
【
図9】幾つかの実施形態に係るフィンの配置を示す図である。
【
図10】幾つかの実施形態に係る熱交換隔壁の構成を概略的に示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る熱交換隔壁の構成を概略的に示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る凹部の構成を概略的に示す図である。
【
図13】幾つかの実施形態に係る熱交換隔壁の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による熱交換隔壁について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(航空エンジン)
図1は、航空エンジン100の構成の一例を概略的に示す図である。
図1に例示する形態では、航空エンジン100は、圧縮空気G1を生成するための圧縮器110と、圧縮空気G1及び燃料Fを用いて燃焼ガスG2を生成するための燃焼器120と、燃焼ガスG2によって回転駆動されるように構成されるタービン130と、を含む。
【0011】
圧縮器110は、圧縮器ロータ112と、圧縮器動翼114と、圧縮器静翼116と、を含んでいる。圧縮器ロータ112は、棒形状を有しており、軸線ODを中心として回転可能に構成されている。圧縮器ロータ112は、軸線ODが延在する軸線方向に沿って長手方向を有している。
【0012】
図1に例示する形態では、圧縮器ロータ112と後述するタービンロータ132とは軸線OD上に一体に連結されている。つまり、航空エンジン100は、圧縮器ロータ112とタービンロータ132とで構成される回転軸102を含む。航空エンジン100は、軸線ODを中心とする径方向において、この回転軸102を径方向外側から囲うケーシング104をさらに含む。
【0013】
圧縮器動翼114は、圧縮器ロータ112に植設されており、タービンロータ132とともに回転する。圧縮器静翼116は、ケーシング104に固定されている。圧縮器110は、航空エンジン100の外部から取り込んだ空気Aを、圧縮器動翼114と圧縮器静翼116との間で圧縮して昇圧させ、この圧縮空気G1を燃焼器120に供給する構成となっている。
図1に例示する形態では、ケーシング104には、内部に圧縮空気G1が供給される圧縮空気室109が形成されている。そして、燃焼器120は、圧縮空気室109に配置されている。
【0014】
タービン130は、燃焼器120から供給される燃焼ガスG2によって回転駆動される。
図1に例示するように、タービン130は、タービンロータ132と、タービン動翼134と、タービン静翼136と、を含んでいる。タービンロータ132は、棒形状を有しており、軸線ODを中心として回転可能に構成されている。タービン動翼134は、タービンロータ132に植設されている。タービン静翼136は、ケーシング104に固定されている。タービン130は、燃焼器120から供給された燃焼ガスG2をタービン動翼134及びタービン静翼136のそれぞれに通過させることで、タービンロータ132を回転駆動させる。そして、上述の圧縮器110は、タービンロータ132を介してタービン130の回転力が伝達されて、圧縮器110内を流通する空気Aを圧縮する。また、タービン130は、タービン動翼134及びタービン静翼136を通過した燃焼ガスG2を航空機の推進力として航空エンジン100の外部に排気する。
【0015】
<第1実施形態>
(熱交換隔壁)
本開示に係る熱交換隔壁1は、航空エンジン100の高温部品101を空冷する。第1実施形態では、高温部品101は、燃焼器120の燃焼器パネル122(101)を含む。
図2は、第1実施形態に係る熱交換隔壁1の構成を概略的に示す図である。
【0016】
熱交換隔壁1の説明の前に、燃焼器120の構成について説明する。
図2に例示するように、燃焼器120は、燃焼器ライナ121と、燃焼器パネル122と、燃料ノズル124と、を含む。燃焼器ライナ121は、圧縮空気室109内に配置されている。この燃焼器ライナ121は、軸線ODの周りに沿って延びるリング形状を有しており、いわゆるアニュラ型のライナである。燃焼器パネル122は、内部に燃料ノズル124から噴出された燃料Fと圧縮空気G1とが混合され燃焼する燃焼空間125が形成されている。つまり、燃焼器パネル122の内周面128がこの燃焼空間125に面している。燃焼器パネル122は、軸線ODが延在する軸線方向において燃焼器ライナ121との間に隙間(後述する冷却流路10)が形成されるように、燃焼器ライナ121によって支持されている。このような燃焼器120は、燃料Fと圧縮空気G1とを混合して燃焼させることで、タービン130の作動流体である燃焼ガスG2を生成し、この燃焼ガスG2をタービン130に供給する構成となっている。
【0017】
図2に例示する形態では、燃焼器120は、燃料ノズル124の周りに設けられるスワラ126をさらに含んでいる。スワラ126は、圧縮器110から供給された圧縮空気G1に対して旋回流を与えて、燃焼空間125に渦を形成し、高温の燃焼ガスを再循環させることで、火炎を安定化させる。
【0018】
熱交換隔壁1について説明する。
図2に例示するように、熱交換隔壁1は、壁2と、フィン4と、上流側フィレット6と、を含む。壁2は、燃焼器パネル122の外周面129(以下、冷却面8とする)との間に圧縮空気G1が第1方向D1に沿って流通する冷却流路10を画定している。第1実施形態では、壁2は燃焼器ライナ121を含む。このような第1実施形態では、熱交換隔壁1は、燃焼器ライナ121と燃焼器パネル122とで構成される2重冷却構造を有している。第1実施形態において、第1方向D1は、軸線ODが延びる方向であって、第1方向D1の上流側とは圧縮器110側を意味し、第1方向D1の下流側とはタービン130側を意味する。
【0019】
尚、第1実施形態では、燃料ノズル124の軸線124Oと軸線ODとが互いに同一方向に延在しているが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、燃料ノズル124の軸線124Oと軸線ODとが互いに異なる方向に延在し、第1方向D1は燃料ノズル124の軸線124Oが延びる方向である。
【0020】
第1実施形態では、
図2に例示するように、壁2にはインピンジ冷却孔12が形成されており、インピンジ冷却孔12を介して、圧縮空気G1が圧縮空気室109から冷却流路10に導き入れられる。熱交換隔壁1は、圧縮空気G1を燃焼器パネル122に向けて噴射・衝突させることで、燃焼器パネル122を冷却するようになっている。
【0021】
第1実施形態では、
図2に例示するように、燃焼器パネル122にはエフュージョン冷却孔13が形成されている。エフュージョン冷却孔13は、冷却面8側の開口13aが内周面128側の開口13bよりも第1方向D1の上流側に位置するように直線状に延びている。つまり、エフュージョン冷却孔13は、第1方向D1に対して傾斜している。熱交換隔壁1は、エフュージョン冷却孔13を介して、圧縮空気G1を燃焼空間125に流出させ、高温の燃焼ガスG2に曝されている内周面128にガスフィルムを形成することで、燃焼器パネル122を冷却するようになっている。尚、
図2に例示する形態では、エフュージョン冷却孔13は、直線状に延びていたが、本開示はこの形態に限定されない。例えば、エフュージョン冷却孔13は、湾曲状に延びていていもよい。
【0022】
フィン4は、冷却面8に設けられる。第1実施形態では、
図2に例示するように、複数のフィン4が冷却面8に設けられており、複数のフィン4のそれぞれが燃焼器パネル122から壁2まで延びている。尚、フィン4の設置方法は、特に限定されない。フィン4は、例えば、燃焼器パネル122に一体で形成されてもよいし、燃焼器パネル122に溶接されてもよいし、あるいは別部品として燃焼器パネル122に嵌合されてもよい。
【0023】
以下では、フィン4が延びる方向(フィン4の高さ方向)を第2方向D2とする。この第2方向D2は、第1方向D1(フィン4の長さ方向)と互いに直交している。第2方向D2のうち冷却面8側の方向を第2方向D2の下方とし、下方と反対の方向を上方とする。また、第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれと互いに直交する方向(フィン4の幅方向)を第3方向D3とする。第3方向のうちの一方を左方とし、左方と反対の方向を右方とする。
【0024】
図3は、第1実施形態に係るフィン4の外形形状を示す図(平面図)であって、フィン4を冷却面8に対向する対向方向から視ている。この対向方向は、第2方向D2(フィン4の高さ方向)である。
図3に例示するように、フィン4は、第2方向D2から視た場合に少なくとも前縁端14を含む前面16が第1方向D1の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有する。つまり、フィン4は、前縁端14から第1方向D1の下流側に向かうにつれて第3方向D3における長さが大きくなっている(幅が広くなっている)。
【0025】
フィン4の前面16は、第1方向D1の上流側に向いている。第1実施形態では、フィン4の前面16は、フィン4の最大幅を画定する両端20a、20bよりも第1方向D1の上流側に位置している。第2方向D2において、フィン4の前面16と上流側フィレット6(
図3において点線で示す)とは互いに重なりあっている。幾つかの実施形態では、フィン4の前面16は、フィン4の両端20a、20bを含んでいる。
【0026】
第1実施形態では、
図3に例示するように、フィン4は、第2方向D2から視た場合に少なくとも後縁端18を含む後面22が第1方向D1の下流側に向かって凸となる湾曲形状を有する。つまり、フィン4は、後縁端18に向かうにつれて第3方向D3における長さが小さくなっている(幅が狭くなっている)。
【0027】
フィン4の後面22は、第1方向D1の下流側に向いている。第1実施形態では、フィン4の後面22は、フィン4の両端20a、20bよりも第1方向D1の下流側に位置している。第3方向D3において、フィン4の後面22と後述する下流側フィレット(
図3において点線で示す)とは互いに重なりあっている。幾つかの実施形態では、フィン4の後面22は、フィン4の両端20a、20bを含んでいる。
【0028】
第1実施形態では、
図3に例示するように、フィン4は、前面16と後面22とを接続する側面24を含んでいる。側面24は、第1方向D1において、前面16と後面22との間に位置しており、フィン4の両端20a、20bを含んでいる。フィン4の側面24は、フィン4の両端20a、20bから前縁端14に向かうにつれて第3方向D3における長さが小さくなるとともに、フィン4の両端20a、20bから後縁端18に向かうにつれて第3方向D3における長さが小さくなっている。そして、第1方向D1において、フィン4の両端20a、20bは、後縁端18よりも前縁端14側に位置している。フィン4の両端20a、20bは、第1方向D1において互いに同じ位置である。フィン4は、後述する第1ライン19(
図6参照)を中心とする線対称の形状を有している。つまり、このような前面16、後面22、及び側面24を有するフィン4は、涙滴型に形成されている。
【0029】
図4は、第1実施形態に係る上流側フィレット6の構成を概略的に示す図であって、
図2に示す第1領域X1を拡大している。
図4に例示するように、上流側フィレット6は、フィン4の前面16から冷却面8に接続するまで第1方向D1の上流側に沿って延びる。より具体的には、上流側フィレット6は、フィン4の前面16のうち下端部16aから第1方向D1の上流側に沿って延びている。つまり、上流側フィレット6は、フィン4の根元に設けられている。そして、上流側フィレット6は、冷却流路10に対して凹状に湾曲する湾曲面26を有する。
【0030】
第1実施形態では、
図2に例示するように、熱交換隔壁1は、下流側フィレット30をさらに含んでいる。
図5は、第1実施形態に係る下流側フィレット30の構成を概略的に示す図であって、
図2に示す第2領域X2を拡大している。
図5に例示するように、下流側フィレット30は、フィン4の後面22から冷却面8に接続するまで第1方向D1の下流側に沿って延びる。より具体的には、下流側フィレット30は、フィン4の後面22のうち下端部22aから第1方向D1の下流側に沿って延びている。つまり、下流側フィレット30は、フィン4の根元に設けられている。そして、下流側フィレット30は、冷却流路10に対して凹状に湾曲する後側湾曲面32を有する。
【0031】
図6は、第1実施形態に係る上流側フィレット6及び下流側フィレット30の構成の説明図である。
図6に例示するように、上流側フィレット6は、第1方向D1の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有している。下流側フィレット30は、第1方向D1の下流側に向かって凸となる湾曲形状を有している。フィン4の前縁端14と後縁端18とを通過する仮想の直線を第1ライン19とし、第1ライン19と直交するとともに、フィン4の両端20a、20bを通過する仮想の直線を第2ライン21とし、第1ライン19と第2ライン21とが互いに交差する交差点36からフィン4の前縁端14までの長さをL1とし、フィン4の前縁端14から上流側フィレット6の第1方向D1の上流側の上流端38までの長さをL2とする。交差点36は、フィン4の後縁端18よりも前縁端14に近接している。そして、熱交換隔壁1は、L2≧0.7L1を満たす大型の上流側フィレット6を含んでいる。
【0032】
図6に例示するように、フィン4の後縁端18から下流側フィレット30の第1方向D1の下流側の下流端40までの長さをL3とすると、L2>L3を満たす。つまり、上流側フィレット6は、下流側フィレット30よりも大きい。
【0033】
(作用・効果)
第1実施形態に係る熱交換隔壁1の作用・効果について説明する。
図7は、従来のフィン200の周囲における圧縮空気G1の速度分布を示す図である。
図7において、速度の違いは濃淡で示されており、色が濃くなるにつれて圧縮空気G1の速度が遅くなっている。従来のフィン200は第2方向D2から視たときに矩形状を有しており、
図7に示すように、圧縮空気G1の速度は従来のフィン200の付近で最も遅くなっている。つまり、圧縮空気G1の剥離が発生している。
【0034】
第1実施形態によれば、
図3に例示したように、フィン4は涙滴型に形成されているので、圧縮空気G1をフィン4の前面16、側面24、及び後面22の順番に沿って第1方向D1の下流側にスムーズに流通させ、フィン4の周囲における圧縮空気G1の剥離を抑制することができる。
【0035】
図8は、第1実施形態に係る上流側フィレット6が未設置の場合のフィン4の根元における圧縮空気G1の流れを示す図である。フィン4を涙滴型に形成しても、
図8に示すように、フィン4の根元には圧縮空気G1の二次流れ210が発生する虞がある。第1実施形態によれば、フィン4の根元に上流側フィレット6及び下流側フィレット30のそれぞれが設けられることで、フィン4の根元における圧縮空気G1の二次流れ210を抑制することができる。
【0036】
よって、第1実施形態によれば、フィン4の周囲における圧縮空気G1の剥離、及びフィン4の根元における圧縮空気G1の二次流れ210のそれぞれが抑制されるので、圧縮空気G1と燃焼器パネル122との間の伝熱効率を向上させ、燃焼器パネル122に対する冷却効果を向上させることができる。
【0037】
また、第1実施形態によれば、冷却効果の向上によって熱交換隔壁1に供給する圧縮空気G1の量を低減させることができる。そして、この低減させた圧縮空気G1を燃料ノズル124に供給することで、燃焼空間125内の希薄燃焼を促進させ、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0038】
圧縮空気G1には砂塵などの粉体が含まれている場合がある。第1実施形態によれば、熱交換隔壁1は、上流側フィレット6及び下流側フィレット30を含んでいるので、フィン4の根元における圧縮空気G1の二次流れ210の発生を抑制する。このため、フィン4の根元への粉体の堆積が抑制されて、粉体の堆積による伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0039】
第1実施形態によれば、熱交換隔壁1は、L2≧0.7L1を満たす大型の上流側フィレット6を含んでいるので、冷却面8のフィン4の前面16に近接する部分(フィン4の第1方向D1の上流側の根元)における圧縮空気G1の二次流れの抑制効果を高めることができる。幾つかの実施形態では、上流側フィレット6は、圧縮空気G1の速度解析に基づいて設計される。
【0040】
尚、第1実施形態では、熱交換隔壁1は、上流側フィレット6及び下流側フィレット30のそれぞれを含んでいたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、熱交換隔壁1は、上流側フィレット6を含んでいるが、下流側フィレット30を含んでいない。不図示であるが、幾つかの実施形態では、熱交換隔壁1は、側面24から冷却面8に接続するまで第3方向D3に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する横側湾曲面を有する横側フィレットをさらに含む。幾つかの実施形態では、フィン4は、第2方向D2から視た場合に、外周全体が上流側フィレット6、下流側フィレット30、及び横側フィレットによって囲われている。
【0041】
尚、第1実施形態では、燃焼器パネル122の外周面129が冷却面8であり、フィン4は冷却流路10内に位置していたが、本開示はこの形態に限定されない。
図9は、幾つかの実施形態に係るフィン4の配置を示す図である。
図9に例示するように、幾つかの実施形態では、フィン4、上流側フィレット6、及び下流側フィレット30のそれぞれは、エフュージョン冷却孔13内に位置している。
【0042】
具体的に説明すると、
図9に例示する形態では、エフュージョン冷却孔13は、燃焼器パネル122の内周面128側の開口13bが外周面129側の開口13aよりも第1方向D1の下流側(燃料ノズル124側)に位置している。このようなエフュージョン冷却孔13は、燃焼器パネル122の外周面129側の開口13aから内周面128に向かって延びる第1延在部13cと、内周面128側の開口13bから外周面129に向かって延びる第2延在部13dと、第1延在部13cの先端と第2延在部13dの先端とを接続する接続部13eと、を含む。
【0043】
接続部13eは、燃焼器パネル122が延びる方向に沿って直線状に延びている。
図9に例示する形態において、第1方向D1は、軸線ODが延びる方向であって、第1方向D1の下流側とは圧縮器110側(燃料ノズル124側)を意味する(第1実施形態の第1方向D1の下流側とは反対の方向である)。そして、エフュージョン冷却孔13の接続部13eが冷却流路10を含んでいる。冷却面8は、接続部13eに面するとともに内周面128とは反対側に向く面である。この場合、壁2は接続部13eを画定する燃焼器パネル122の一部である。
【0044】
尚、エフュージョン冷却孔13の構成は、
図9に例示する形態に限定されない。不図示であるが、幾つかの実施形態では、エフュージョン冷却孔13は、1つの接続部13eに対して第1方向D1における位置が互いに異なる複数の第2延在部13dを含む。不図示であるが、幾つかの実施形態では、燃焼器パネルは、第1燃焼器パネルと、第1燃焼器パネルよりもタービン130側に位置する第2燃焼器パネルと、を含む。そして、第1燃焼器パネルのエフュージョン冷却孔13は、第2燃焼器パネルの内周面にガスフィルムを形成するように圧縮空気G1を流出するように構成されている。
【0045】
尚、第1実施形態では、熱交換隔壁1は燃焼器パネル122を空冷していたが、本開示はこの形態に限定されない。熱交換隔壁1は、燃焼器パネル122以外の航空エンジン100の高温部品101を空冷してもよい。幾つかの実施形態では、高温部品101は、航空エンジン100の燃焼器120から排出される燃焼ガスG2と接触するタービン翼135を含む。
図10は、幾つかの実施形態に係る熱交換隔壁1の構成を概略的に示す図であって、タービン翼135の内部を示している。タービン翼135は、
図1に例示して説明したタービン動翼134であってもよいし、あるいはタービン静翼136であってもよい。
【0046】
図10に例示する形態では、タービン翼135の内部にタービン翼135を空冷するための圧縮空気G1が流通する冷却流路10が形成されている。そして、この冷却流路10にフィン4、上流側フィレット6、及び下流側フィレット30のそれぞれが配置されている。
【0047】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る熱交換隔壁1について説明する。第2実施形態に係る熱交換隔壁1は、冷却面8に凹部50が形成されている点で第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
(構成)
図11は、第2実施形態に係る熱交換隔壁1の構成を概略的に示す図である。第2実施形態では、
図11に例示するように、熱交換隔壁1は、第1フィン4A(4)と、第2フィン4B(4)と、を含む。第1フィン4Aと第2フィン4Bとのそれぞれは、第1方向D1において互いに重なり合って配置されている。第1フィン4Aと第2フィン4Bとのそれぞれは、第2方向D2において互いに間隔を空けて配置されている。
【0049】
不図示であるが、幾つかの実施形態では、熱交換隔壁1は、第1フィン4A及び第2フィン4Bよりも第1方向D1の上流側又は下流側に配置される第3フィンをさらに含む。この第3フィンは、第3方向D3において、第1フィン4Aと第2フィン4Bとの間に位置している。幾つかの実施形態では、熱交換隔壁1は、千鳥状に配置される複数のフィン4を含む。
【0050】
第2実施形態では、第1フィン4Aと第2フィン4Bとのそれぞれは互いに同一の形状を有しており、涙滴型に形成されている。そして、第1方向D1において、第1フィン4Aの前縁端14Aの位置と第2フィン4Bの前縁端14Bの位置とが互いに同じである。同様に、第1方向D1において、第1フィン4Aの後縁端18Aの位置と第2フィン4Bの後縁端18Bの位置とが互いに同じである。幾つかの実施形態では、第1フィン4Aと第2フィン4Bとのそれぞれは、第1方向D1において互いに一部が重なり合っている。
【0051】
隙間52のうち、第3方向D3における最小の長さを有する部分をスロート54と定義する。冷却面8のうち隙間52に面する隙間面56には、第1方向D1において、スロート54が形成されている範囲と重なるように下方に凹む凹部50が形成されている。
【0052】
凹部50の最も深くなる位置を最深点60とし、第1方向D1における第1フィン4Aの前縁端14Aから後縁端18Aまでの長さをL4とする。
図11に例示するように、最深点60は、第1方向D1において、スロート54の位置から第1方向D1の上流側及び下流側のそれぞれにL3/10ずれた範囲R内に位置している。第2実施形態では、最深点60とスロート54とのそれぞれは、第1方向D1において互いに同じ位置である。
【0053】
図12は、第2実施形態に係る凹部50の構成を概略的に示す図である。
図12に例示するように、最深点60は、第1方向D1において、凹部50の第1方向D1の下流側の下流点62よりも上流側の上流点64に近接している。第2実施形態では、上流点64を上流点64から下流点62までの長さL5に対する0%の位置とし、下流点62に向かうにつれて増加し、下流点62を長さL5に対する100%の位置として定義した場合に、最深点60は0%より大きく45%以下の範囲内に位置している。凹部50は、最深点60から下流点62に向かうにつれて滑らかに浅くなる下流面66を含む。
【0054】
第2実施形態では、
図11に例示するように、第1フィン4A及び第2フィン4Bのそれぞれは涙滴型に形成されているので、隙間52を第2方向D2から切断した流路断面Sは、第1フィン4Aの前縁端14A及び第2フィン4Bの前縁端14Bによって画定される隙間52の入口53からスロート54に向かうにつれて小さくなる。そして、この流路断面Sは、スロート54から第1フィン4Aの後縁端18A及び第2フィン4Bの後縁端18Bによって画定される隙間52の出口55に向かうにつれて大きくなる。凹部50は、流路断面Sの大きさの変化率が5%以下となるように隙間面56に形成されている。
【0055】
第2実施形態では、
図11に例示するように、第1方向D1において、上流側フィレット6と凹部50の上流点64とのそれぞれは、互いに重なり合っている。
図11に例示する形態では、上流側フィレット6は、第1方向D1において、フィン4と互いに重なり合う下流側部70を含む。そして、第1方向D1において、上流側フィレット6の下流側部70と凹部50の上流点64とのそれぞれが、互いに重なりあっている。幾つかの実施形態では、凹部50は、上流側フィレット6よりも第1方向D1の下流側に位置している。
【0056】
(作用・効果)
第2実施形態に係る熱交換隔壁1の作用・効果について説明する。第2実施形態によれば、隙間面56には凹部50が形成されているので、流路断面Sの大きさを凹部50によって調整し、隙間52を流通する圧縮空気G1の速度変化による圧縮空気G1の剥離や圧縮空気G1と隙間面56との間の摩擦損失を好適に抑制することができる。
【0057】
特に、第2実施形態によれば、隙間面56には流路断面Sの大きさの変化率が5%以下となるように凹部50が形成されているので、隙間52を流通する圧縮空気G1の速度がほぼ一定となる。このため、圧縮空気G1の速度変化による圧縮空気G1の剥離を抑制しつつ、圧縮空気G1と隙間面56との間の摩擦損失を低減することができる。
【0058】
スロート54は、凹部50が非形成である場合、流路断面Sの大きさが最小となるため、圧縮空気G1はスロート54を流通する際に最も速くなる。第2実施形態によれば、凹部50の最深点60は範囲R内に位置しているので、第1方向D1におけるスロート54付近の流路断面Sが凹部50によって拡げられ、圧縮空気G1の最大流速を小さくし、圧縮空気G1と隙間面56との間の摩擦損失を抑制することができる。
【0059】
第2実施形態によれば、第1方向D1における上流側フィレット6の下流側部70と凹部50の上流点64とのそれぞれが互いに重なりあっているので、圧縮空気G1に砂塵などの粉体が含まれていても、上流側フィレット6に衝突した粉体を凹部50にまで案内することができる。そして、この粉体を凹部50内に溜めることができる。よって、粉体による圧縮空気G1と燃焼器パネル122との間の伝熱効率の低減を抑制することができる。
【0060】
特に、第2実施形態によれば、
図13に例示して説明したように、最深点60は長さL5の0%より大きく45%以下の範囲内に位置している。このため、凹部50に流入した圧縮空気G1は、下流面66の再付着点68に再付着し、下流面66に沿って第1方向D1の下流側に流通する。つまり、凹部50は、圧縮空気G1が流通しない、又は、ほとんど流通しないため圧縮空気G1と燃焼器パネル122との間の伝熱効率への寄与が非常に小さい非流通空間72を含む。そして、圧縮空気G1に含まれる粉体は、凹部50の非流通空間72に溜められて堆積物Wを形成するので、伝熱効率の低減をゼロ、又は非常に僅かにすることができる。
【0061】
第2実施形態によれば、下流面66は最深点60から下流点62に向かうにつれて滑らかに浅くなっているので、再付着点68に再付着した圧縮空気G1を第1方向D1の下流側にスムーズに案内することができる。再付着した圧縮空気G1は、凹部50よりも第1方向D1の上流側の境界層74よりも薄い境界層76を形成する。このため、圧縮空気G1と燃焼器パネル122との間の伝熱効率を向上させることができる。
【0062】
尚、第2実施形態では、隙間面56には1つの凹部50が形成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。隙間面56には、複数の凹部50が形成されてもよい。このような構成によれば、隙間面56上に形成される死水域を小さくし、圧縮空気G1と隙間面56との間の摩擦損失を抑制するとともに、凹部50への粉体の堆積が有利になる。
【0063】
図13は、幾つかの実施形態に係る熱交換隔壁1の構成を概略的に示す図である。
図13に例示するように、熱交換隔壁1は、千鳥状に配置される複数のフィン4を含んでおり、上述した第1フィン4A及び第2フィン4Bに加え、第1フィン4A及び第2フィン4Bよりも第1方向D1の上流側に配置される第3フィン4C(4)をさらに含んでいる。この第3フィン4Cは、第3方向D3において、第1フィン4Aと第2フィン4Bとの間に位置している。第3フィン4Cは、第1フィン4Aと第2フィン4Bとのそれぞれと同様に涙滴型に形成されている。このため、
図13に例示するように、第1フィン4A、第2フィン4B、及び第3フィン4Cのそれぞれは、隙間52の中央よりも左側を流通する圧縮空気G1、及び隙間52の中央よりも右側を流通する圧縮空気G1のそれぞれが、隙間52の中央を流通する圧縮空気G1よりも流速が大きくなってしまうように配置されている。
【0064】
幾つかの実施形態では、
図13に例示するように、隙間面56には、2つの凹部50が形成されている。2つの凹部50は、第3方向D3において互いに間隔を空けて配置されている。2つの凹部50のうち第1凹部50A(50)は、第2凹部50B(50)より第1フィン4A側に位置している。
【0065】
第1凹部50Aは、第3方向D3における隙間52の中心を通過する中心線52Oよりも第3方向D3の右側(第1フィン4A側)に位置している。第1凹部50Aは、隙間52に面する第1フィン4Aの側面24に沿って延びている。より具体的には、第1凹部50Aは、隙間52に面する第1フィン4Aの側面24のオフセットラインに沿って延びている。
【0066】
第2凹部50Bは、中心線52Oよりも第3方向D3の左側(第2フィン4B側)に位置している。第2凹部50Bは、隙間52に面する第2フィン4Bの側面24に沿って延びている。より具体的には、第2凹部50Bは、隙間52に面する第2フィン4Bの側面24のオフセットラインに沿って延びている。
【0067】
隙間52を流通する圧縮空気G1の流速が不均一であると、流速が遅い部分に死水域、又は剥離領域が生じ、圧縮空気G1と隙間面56との間の摩擦損失(圧力損失)の増大や隙間面56への粉体の堆積を招く虞がある。
図13に例示する構成によれば、第1凹部50Aが形成されることで、隙間52の中央よりも左側を流通する(隙間52に面する第1フィン4Aの側面24に沿って流通する)圧縮空気G1の流速を下げることができる。同様に、第2凹部50Bが形成されることで、隙間52の中央よりも右側を流通する(隙間52に面する第2フィン4Bの側面24に沿って流通する)圧縮空気G1の流速を下げることができる。このため、隙間52を流通する圧縮空気G1の流速の均一化を図り、圧縮空気G1と隙間52の中央に面する隙間面56の一部との間の摩擦損失を抑制するとともに、隙間52の中央に面する隙間面56の一部への粉体の堆積を抑制することができる。
【0068】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0069】
[1]本開示に係る熱交換隔壁(1)は、
航空エンジン(100)の高温部品(101)を空冷するための熱交換隔壁であって、
前記高温部品の冷却面(8)との間に冷却風(G1)が第1方向(D1)に沿って流通する冷却流路(10)を画定する壁(2)と、
前記高温部品の前記冷却面に設けられ、前記冷却面に対向する方向から視た場合に少なくとも前縁端(14)を含む前面(16)が前記第1方向の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有する少なくとも1つのフィン(4)と、
前記少なくとも1つのフィンの前記前面から前記冷却面に接続するまで前記第1方向の上流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する湾曲面(26)を有する上流側フィレット(6)と、を備える。
【0070】
上記[1]に記載の構成によれば、フィンの前面は冷却面に対向する方向から視た場合に第1方向の上流側に向かって凸となる湾曲形状を有するので、冷却風をフィンの前面に沿って第1方向の下流側にスムーズに流通させ、フィンの周囲における冷却風の剥離(
図8参照)を抑制することができる。さらに、上流側フィレットが設けられることで、冷却面のフィンの前面に近接する部分(フィンの根元)における冷却風の二次流れ(
図9参照)を抑制することができる。よって、フィンの周囲における冷却風の剥離、及びフィンの根元における冷却風の二次流れのそれぞれが抑制されるので、冷却風と高温部品との間の伝熱効率を向上させ、高温部品に対する冷却効果を向上させることができる。
【0071】
さらに、上記[1]に記載の構成によれば、冷却風に砂塵などの粉体が含まれていても、フィンの根元における冷却風の二次流れが抑制されているので、フィンの根元への粉体の堆積が抑制される。よって、粉体の堆積による伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0072】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端と後縁端(18)とを通過する仮想の直線を第1ライン(19)とし、前記第1ラインと直交するとともに、前記少なくとも1つのフィンの前記第1方向と直交する方向における最大幅を画定する両端(20a、20b)を通過する仮想の直線を第2ライン(21)とし、前記第1ラインと前記第2ラインとが互いに交差する交差点(36)から前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端までの長さをL1とし、前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端から前記上流側フィレットの前記第1方向の上流側の上流端(38)までの長さをL2とすると、
前記交差点は、前記少なくとも1つのフィンの前記後縁端よりも前記前縁端に近接し、
L2≧0.7L1を満たす。
【0073】
上記[2]に記載の構成によれば、熱交換隔壁はL2≧0.7L1を満たす大型の上流側フィレットを備えているので、冷却面のフィンの前面に近接する部分(フィンの第1方向の上流側の根元)における冷却風の二次流れの抑制効果を高めることができる。
【0074】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィンの少なくとも後縁端(18)を含む後面(22)から前記冷却面に接続するまで前記第1方向の下流側に沿って延びるとともに、凹状に湾曲する後側湾曲面(32)を有する下流側フィレット(30)、をさらに備える。
【0075】
上記[3]に記載の構成によれば、冷却面のフィンの後面に近接する部分(フィンの第1方向の下流側の根元)における冷却風の二次流れを抑制することができる。
【0076】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィンは、前記第1方向において互いに重なり合って配置されるとともに、前記第1方向と直交する方向において互いに間隔を空けて配置される第1フィン(4A)及び前記第1フィンとは別の第2フィン(4B)を含み、
前記第1フィンと前記第2フィンとの間に形成される隙間(52)の内、最小の長さを有する部分をスロート(54)と定義した場合に、
前記冷却面のうち前記隙間に面する隙間面(56)には、前記第1方向において、前記スロートが形成されている範囲(R)と重なるように凹部(50)が形成されている。
【0077】
上記[4]に記載の構成によれば、隙間を第1方向と直交する方向から切断した流路断面の大きさを凹部によって調整し、隙間を流通する冷却風の速度変化による冷却風の剥離や冷却風と隙間面との間の摩擦損失を好適に抑制することができる。
【0078】
さらに、上記[4]に記載の構成によれば、冷却風に砂塵などの粉体が含まれていても、伝熱効率への寄与が非常に小さい凹部に粉体が溜められて堆積物を形成するので、伝熱効率の低減をゼロ、又は非常に僅かにすることができる。
【0079】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]に記載の構成において、
前記凹部の最も深くなる位置を最深点(60)とし、前記第1方向における前記少なくとも1つのフィンの前記前縁端から後縁端までの長さをL3とすると、
前記最深点は、前記第1方向において、前記スロートの位置からL3/10ずれた範囲内に位置している。
【0080】
スロートは隙間のうち最小の長さとなる部分であるため、冷却風が流通する流路断面の大きさが最小となる。このため、冷却風はスロートを流通する際に最も速くなる。上記[5]に記載の構成によれば、凹部の最深点が第1方向において、スロートの位置からL3/10ずれた範囲内に位置しているので、スロート付近の流路断面が凹部によって拡げられ、冷却風の最大流速を小さくすることができる。このため、冷却風と隙間面との間の摩擦損失を抑制することができる。
【0081】
[6]幾つかの実施形態では、上記[4]又は[5]に記載の構成において、
前記凹部は、前記隙間を前記第1方向と直交する方向から切断した流路断面(S)の大きさの変化率が5%以下となるように前記隙間面に形成されている。
【0082】
上記[6]に記載の構成によれば、隙間を流通する冷却風の速度変化による冷却風の剥離を抑制しつつ、冷却風と隙間面との間の摩擦損失を低減することができる。
【0083】
[7]幾つかの実施形態では、上記[5]又は[6]に記載の構成において、
前記凹部は、前記最深点から前記凹部の前記第1方向の下流側の下流点(64)に向かうにつれて浅くなる下流面(66)を含む。
【0084】
上記[7]に記載の構成によれば、下流面に冷却風を再付着させる再付着点を形成するとともに、再付着した冷却風を第1方向の下流側にスムーズに案内することができる。再付着した冷却風は、凹部よりも第1方向の上流側の境界層よりも薄い境界層を形成する。このため、冷却風と高温部品との間の伝熱効率を向上させることができる。
【0085】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記高温部品は、前記航空エンジンに供給された燃料(F)を燃焼させる燃焼空間(125)に面する燃焼器パネル(122)を含む。
【0086】
上記[8]に記載の構成によれば、燃焼器パネルに対する冷却効果を向上させることができる。
【0087】
[9]幾つかの実施形態では、上記[1]から[8]の何れか1つに記載の構成において、
前記高温部品は、前記航空エンジンから排出される燃焼ガス(G2)と接触するタービン翼(135)を含む。
【0088】
上記[9]に記載の構成によれば、タービン翼に対する冷却効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 熱交換隔壁
2 壁
4 フィン
4A 第1フィン
4B 第2フィン
6 上流側フィレット
8 冷却面
10 冷却流路
14 前縁端
14A 第1フィンの前縁端
14B 第2フィンの前縁端
16 前面
18 後縁端
18A 第1フィンの後縁端
18B 第2フィンの後縁端
19 第1ライン
21 第2ライン
22 後面
26 湾曲面
30 下流側フィレット
32 後側湾曲面
36 交差点
38 上流端
40 下流端
50 凹部
52 隙間
54 スロート
56 隙間面
60 最深点
62 下流点
64 上流点
66 下流面
68 再付着点
100 航空エンジン
101 高温部品
130 タービン
110 圧縮器
120 燃焼器
122 燃焼器パネル
124 燃料ノズル
125 燃焼空間
128 内周面
129 外周面
135 タービン翼
D1 第1方向(長さ方向)
D2 第2方向(高さ方向)
D3 第3方向(幅方向)
F 燃料
G1 圧縮空気
G2 燃焼ガス
S 流路断面