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特開2024-43174演奏システム、制御システムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043174
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】演奏システム、制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/02 20060101AFI20240322BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20240322BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G10G1/02
G10H1/00 102Z
G09B15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148209
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜尾 安樹絵
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 宗一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】前澤 陽
(72)【発明者】
【氏名】藤島 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】薄羽 涼彌
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AA03
5D478FF03
5D478FF06
5D478FF12
5D478FF23
(57)【要約】
【課題】演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内する。
【解決手段】演奏システム100は、複数の鍵Kと、複数の鍵Kに沿って配列された複数の発光部Eと、複数の発光部Eのうち1以上の発光部Eの発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵Kのうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵と、
前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部と、
前記複数の発光部のうち1以上の発光部の発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部と
を具備する演奏システム。
【請求項2】
前記案内制御部は、前記複数の鍵のうちの第1鍵から、前記第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に向かう方向に、前記複数の発光部のうち2以上の発光部の発光を経時的に変化させる
請求項1の演奏システム。
【請求項3】
前記2以上の発光部は、前記複数の発光部のうち、前記第1鍵に対応する第1発光部と前記第2鍵に対応する第2発光部との間の発光部を含む
請求項2の演奏システム。
【請求項4】
前記案内制御部は、前記第1鍵から前記第2鍵に向かう方向に、前記2以上の発光部の各々を順次に発光させる
請求項3の演奏システム。
【請求項5】
前記案内制御部は、
前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる動作の実行後に、前記第2発光部を発光させる
請求項4の演奏システム。
【請求項6】
前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる動作を反復する
請求項2の演奏システム。
【請求項7】
前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる速度を、楽曲の演奏速度に応じて制御する
請求項2の演奏システム。
【請求項8】
前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる速度を、楽曲において前記第1鍵に対応する音符の継続長に応じて制御する
請求項2の演奏システム。
【請求項9】
前記案内制御部は、前記複数の発光部のうち操作されるべき鍵に対応する発光部の発光特性を経時的に変化させる
請求項1の演奏システム。
【請求項10】
複数の鍵と、
前記複数の鍵のうちの第1鍵から、前記第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に向かう方向に経時的に変化する案内表示を、利用者に提示する演奏案内部と
を具備する演奏システム。
【請求項11】
複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御するシステムであって、
前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定する楽曲処理部と、
前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部と
を具備する制御システム。
【請求項12】
複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御する方法であって、
前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定し、
前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する
コンピュータシステムにより実現される制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、楽器の演奏を案内する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏者による鍵盤楽器の演奏を案内するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、相異なる鍵の近傍に設置された複数のLED(Light Emitting Diode)のうち、演奏者が操作すべき鍵に対応する1個のLEDを発光させる演奏教習装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4496882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、操作すべき鍵に対応するLEDを単純に発光させるだけでは、演奏に不慣れな演奏者が円滑に演奏することは、実際には容易ではない。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る演奏システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部と、前記複数の発光部のうち1以上の発光部の発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部を具備する。
【0006】
本開示の他の態様に係る演奏システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵のうちの第1鍵から、前記第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に向かう方向に経時的に変化する案内表示を、利用者に提示する演奏案内部とを具備する。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る演奏システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御するシステムであって、前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定する楽曲処理部と、前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部とを具備する。
【0008】
本開示のひとつの態様に係る制御方法は、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御する方法であって、前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定し、前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における演奏システムの平面図である。
図2】制御システムの構成を例示するブロック図である。
図3】制御システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
図4】遷移案内動作の説明図である。
図5】遷移案内動作の説明図である。
図6】演奏案内処理のフローチャートである。
図7】第4実施形態における案内制御部の動作の説明図である。
図8】第4実施形態における演奏案内処理のフローチャートである。
図9】第4実施形態における各発光部の発光に関する説明図である。
図10】第5実施形態における演奏システムの構成を例示するブロック図である。
図11】第6実施形態における鍵盤楽器の斜視図である。
図12】鍵盤蓋の断面図である。
図13】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図14】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図15】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図16】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図17】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図18】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図19】変形例における遷移案内動作の説明図である。
図20】変形例における演奏システムの構成を例示するブロック図である。
図21】変形例における演奏システムの構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る演奏システム100の平面図である。演奏システム100は、演奏者による演奏に応じて楽音を放射する電子楽器であり、鍵盤楽器10と制御システム50とを具備する。鍵盤楽器10は、筐体11と鍵盤ユニット20と再生システム30と案内装置40とを具備する電子鍵盤楽器である。制御システム50は、鍵盤楽器10の動作を制御するコンピュータシステムである。鍵盤楽器10の筐体11は、鍵盤ユニット20と再生システム30と案内装置40と制御システム50とを支持および収容する中空の構造体である。
【0011】
鍵盤ユニット20は、鍵盤21と検出装置22とを具備する。鍵盤21は、相異なる音高に対応する複数の鍵Kで構成される。各鍵Kは、演奏者による操作(具体的には押鍵および離鍵)を受付ける演奏操作子である。複数の鍵Kは、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含む。複数の鍵Kは、X軸に沿って配列される。X軸は、演奏者の左右の方向に延在する軸線である。以下の説明においては、X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X軸に沿う他方向をX2方向と表記する。X1方向は演奏者の右方向に相当し、X2方向は演奏者の左方向に相当する。
【0012】
検出装置22は、複数の鍵Kの各々に対する操作を検出するセンサである。具体的には、検出装置22は、演奏者が各鍵Kを演奏する操作(すなわち押鍵)と、当該操作の解除(すなわち離鍵)とを検出する。検出装置22は、例えば、各鍵Kの変位を光学的、機械的または磁気的に検出するセンサで構成される。
【0013】
再生システム30は、演奏者による演奏に応じた楽音を再生する。具体的には、再生システム30は、音源装置31と放音装置32とを具備する。音源装置31は、演奏者による演奏に応じた音響信号を生成する。音響信号は、演奏者が操作した鍵Kに対応する楽音を表す信号である。すなわち、音源装置31は、複数の音高のうち演奏者が操作した鍵Kに対応する音高の音響信号を生成する。
【0014】
放音装置32は、音響信号が表す楽音を放射する。例えば単数または複数のスピーカが、放音装置32として利用される。なお、演奏者の頭部に装着されるヘッドホンが、放音装置32として利用されてもよい。また、鍵盤楽器10とは別体で構成された再生システム30または放音装置32が、鍵盤楽器10に有線または無線により接続されてもよい。
【0015】
案内装置40は、複数の鍵Kのうち演奏者が操作すべき鍵Kを順次に案内する出力機器である。案内装置40は、鍵盤21の相異なる鍵Kに対応する複数の発光部Eと、各発光部Eを駆動する駆動回路41とを含む。複数の発光部Eの各々は、例えばLED等の1個以上の発光素子により構成される。なお、発光部Eの形状は任意である。各発光部Eの発光/消灯と発光色とが発光部E毎に可変に制御される。
【0016】
制御システム50は、鍵盤楽器10の各要素を制御する。図2は、制御システム50の構成を例示するブロック図である。制御システム50は、制御装置51と記憶装置52と操作装置53とを具備するコンピュータシステムで実現される。
【0017】
制御装置51は、鍵盤楽器10の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、制御装置51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより構成される。
【0018】
記憶装置52は、制御装置51が実行するプログラムと制御装置51が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置52は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。なお、複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置52が構成されてもよい。また、制御システム50に着脱可能な可搬型の記録媒体、または、鍵盤楽器10が通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)が、記憶装置52として利用されてもよい。
【0019】
記憶装置52は、楽曲データMを記憶する。楽曲データMは、楽曲を構成する複数の音符の時系列(すなわち楽譜)を指定するデータである。具体的には、楽曲データMは、楽曲の複数の音符の各々について音高と発音期間とを指定する。音高は、音階音を表す番号により指定される。音高は、鍵盤21の1個の鍵Kを指定する情報とも表現される。発音期間は、音符の始点および終点の時刻により指定される。
【0020】
以上の説明から理解される通り、楽曲データMは、演奏者が操作すべき鍵Kを時系列に指定するデータである。例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格に準拠した形式のファイルが楽曲データMとして利用される。音符の発音期間の始点はノートオンイベントにより指定され、発音期間の終点はノートオフイベントにより指定される。
【0021】
操作装置53は、演奏者からの指示を受付ける入力機器である。例えば、図1に例示される通り、利用者が操作する複数の操作子が操作装置53として例示される。なお、演奏者による接触を検知するタッチパネルが、操作装置53として採用されてもよい。
【0022】
なお、記憶装置52に記憶されたプログラムを実行することで制御装置51が音源装置31の機能を実現してもよい。すなわち、音響信号を生成する要素(音源部)は、汎用の制御装置51により実現されるソフトウェア音源、および専用の電子回路(音源装置31)により実現されるハードウェア音源の何れでもよい。
【0023】
図3は、制御システム50の機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置51は、記憶装置52に記憶されたプログラムを実行することで、鍵盤21の各鍵の操作を演奏者に案内するための複数の機能(楽曲処理部511,案内制御部512)を実現する。
【0024】
楽曲処理部511は、楽曲データMを解析することで、演奏者が操作すべき鍵Kを順次に特定する。楽曲処理部511による各鍵Kの特定は、演奏者による演奏に並行して実行される。なお、相異なる楽曲に対応する複数の楽曲データMが記憶装置52に記憶された形態において、楽曲処理部511は、操作装置53に対する操作で演奏者が選択した1個の楽曲データMを処理する。
【0025】
案内制御部512は、楽曲データMに応じて案内装置40を制御する。具体的には、案内制御部512は、案内装置40の複数の発光部Eの各々を楽曲データMに応じて順次に発光させることで、楽曲の演奏のために演奏者が操作すべき鍵Kを案内する。なお、案内制御部512が各発光部Eを発光させる動作は、演奏者による楽曲の演奏を補助する動作、または、演奏者に楽曲の演奏を教習する動作とも表現される。
【0026】
図4は、案内制御部512の動作の説明図である。図4においては、図面内の下方を時間軸の方向として、各発光部Eによる発光状態の時間的な遷移が例示されている。図4においては、案内装置40の9個の発光部E(E1~E9)が便宜的に図示されている。
【0027】
案内制御部512は、案内装置40の複数の発光部Eのうち、演奏者が次に演奏すべき鍵Kに対応する発光部Eを、第1色により発光させる。すなわち、第1色による発光部Eの発光は、当該発光部Eに対応する鍵Kの操作を事前に案内する表示である。第1色の発光により案内された鍵Kが演奏者により実際に操作された場合、案内制御部512は、当該鍵Kの発光色を第1色から第2色に変更する。第1色と第2色とは相異なる発光色である。また、鍵Kの操作が解除された場合(離鍵)、案内制御部512は、当該鍵Kに対応する発光部Eを消灯させる。なお、案内制御部512は、演奏者が鍵Kを操作した場合に、当該鍵Kに対応する発光部Eを消灯させてもよい。
【0028】
演奏者が第1鍵K1および第2鍵K2を順番に操作する場合を想定する。第2鍵K2は、第1鍵K1の直後に演奏されるべき鍵Kである。すなわち、第1鍵K1に対応する音高と、第2鍵K2に対応する音高とが、楽曲データMにより順番に指定される。第2鍵K2の音高は、第1鍵K1の音高よりも高い。したがって、第2鍵K2は、第1鍵K1よりもX1方向(右方向)に位置する。
【0029】
図4においては、演奏者が時刻t1と時刻t2との間に第1鍵K1を操作した場合が想定されている。したがって、複数の発光部Eのうち第1鍵K1に対応する発光部E(以下「第1発光部Ea1」という)の発光色は、時刻t2において第1色から第2色に変化する。また、第1鍵K1が実際に操作された結果、演奏者が次に演奏すべき鍵Kは、第1鍵K1から第2鍵K2に更新される。したがって、複数の発光部Eのうち第2鍵K2に対応する発光部E(以下「第2発光部Ea2」という)は、時刻t2において第1色による発光を開始する。また、第1鍵K1の操作が解除される時刻t6において、第1発光部Ea1は消灯する。
【0030】
図4においては、演奏者が時刻t6と時刻t7との間に第2鍵K2を操作した場合が想定されている。したがって、第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2の発光色は、時刻t7において第1色から第2色に変化する。以上の動作が楽曲の全体にわたり反復される。したがって、演奏者は、各発光部Eの発光/消灯および発光色を随時に確認しながら、案内装置40による案内に沿って楽曲を演奏できる。
【0031】
演奏者が操作すべき鍵Kを発光部Eの発光により順次に案内する以上の動作に並行して、案内制御部512は、演奏者が操作すべき鍵Kの遷移を案内する動作(以下「遷移案内動作」という)を実行する。遷移案内動作は、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう遷移を演奏者に通知する動作である。
【0032】
遷移案内動作は、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に、2個以上の遷移発光部Eb(Lb1~Lb5)の各々を順番に発光させる動作である。複数の遷移発光部Ebは、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間に位置する発光部Eである。遷移発光部Ebの個数は、第1鍵K1と第2鍵K2との音高差に応じた可変値である。遷移案内動作において、案内制御部512は、複数の遷移発光部Ebの各々を順番に第3色に発光させる。第3色は、第1色および第2色とは相違する発光色である。
【0033】
図4の例示においては、第2鍵K2が第1鍵K1よりもX1方向に位置する。したがって、案内制御部512は、5個の遷移発光部Eb1~Lb5の各々をX1方向に沿う配列の順番で順次に発光させる。すなわち、遷移案内動作が開始される時刻t2では、5個の遷移発光部Eb1~Lb5のうち左端の遷移発光部Eb1が発光し、時刻t3においては遷移発光部Eb2が発光し、時刻t4においては遷移発光部Eb3が発光し、時刻t5においては遷移発光部Eb4が発光し、時刻t6においては5個のうち右端の遷移発光部Eb5が発光する。すなわち、第3色で発光する状態が、複数の遷移発光部Ebの各々に経時的に遷移する。以上の説明から理解される通り、遷移発光部Ebの発光が遷移する方向(X1方向)は、第1鍵K1を操作している演奏者が次の第2鍵K2の操作のために手指を移動させるべき方向である。
【0034】
図4に例示される通り、複数の遷移発光部Ebのうち第1発光部Ea1に最も近い左端の遷移発光部Eb1は、当該第1発光部Ea1と並列に発光する。すなわち、案内制御部512は、遷移発光部Eb1が発光する時点(時刻t3)を少なくとも含む期間において第1発光部Ea1を発光させる。同様に、複数の遷移発光部Ebのうち第2発光部Ea2に最も近い右端の遷移発光部Eb5は、当該第2発光部Ea2と並列に発光する。すなわち、案内制御部512は、遷移発光部Eb5が発光する時点(時刻t6)を少なくとも含む期間において第2発光部Ea2を発光させる。したがって、演奏者は、複数の遷移発光部Ebの各々が順次に発光する様子を視認することで手指を移動させるべき方向を把握できるほか、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2の発光を視認することで、相前後して操作すべき第1鍵K1および第2鍵K2も把握できる。
【0035】
図4の矢印Aで図示される通り、遷移案内動作は、第2鍵K2が操作されるまで反復される。すなわち、案内制御部512は、第2鍵K2が操作された場合に遷移案内動作を終了する。したがって、演奏者は、第2鍵K2の操作のために自身の手指を移動させるべき方向および距離を確実かつ容易に把握できる。
【0036】
図5には、第2鍵K2の音高が第1鍵K1の音高よりも低い場合が例示されている。すなわち、第2鍵K2は第1鍵K1よりもX2方向(左方向)に位置する。したがって、図5の状況において、案内制御部512は、5個の遷移発光部Eb1~Lb5の各々をX2方向に沿う配列の順番で順次に発光させる。以上に説明した通り、第1実施形態においては、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に複数の遷移発光部Ebの発光が経時的に変化する。
【0037】
図6は、制御装置51が各発光部Eを制御する処理(以下「演奏案内処理」という)のフローチャートである。演奏案内処理は、操作装置53に対する演奏者からの指示を契機として開始される。音響信号の生成に並行して演奏案内処理が実行される。制御装置51が演奏案内処理を実行することで、図4の案内制御部512が実現される。
【0038】
制御装置51は、遷移案内動作を実行する(Sa1)。すなわち、制御装置51は、直前に操作されるべきであった第1鍵K1から次に操作されるべき第2鍵K2に向かう方向に、複数の遷移発光部Ebの各々を順番に発光させる。
【0039】
制御装置51は、第2鍵K2が操作されたか否かを判定する(Sa2)。第2鍵K2が操作されない場合(Sa2:NO)、制御装置51は、処理をステップSa1に移行する。すなわち、第2鍵K2が操作されるまで遷移案内動作(Sa1)が反復される。
【0040】
他方、第2鍵K2が操作された場合(Sa2:YES)、制御装置51は、各発光部Eの発光状態を更新する(Sa3)。具体的には、制御装置51は、現時点の第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1を消灯する。制御装置51は、演奏者が操作した第2鍵K2を新たな第1鍵K1に更新し、更新後の第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1を第1色から第2色に変更する。また、制御装置51は、楽曲データMの参照により新たな第2鍵K2を特定し、第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2を第1色で発光させる。
【0041】
以上の手順により発光状態を更新すると、制御装置51は、処理をステップSa1に移行して遷移案内動作を実行する(Sa1)。遷移案内動作においては、更新後の第1鍵K1から更新後の第2鍵K2に向かう方向に、複数の遷移発光部Ebの各々が順番に発光する。
【0042】
以上の説明の通り、第1実施形態においては、複数の発光部Eの各々の発光を経時的に変化させることで、演奏者が操作すべき第2鍵K2が案内される。したがって、演奏者が操作すべき鍵Kに対応する発光部Eの発光/消灯が制御されるだけの構成と比較して、演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内できる。
【0043】
第1実施形態においては特に、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に複数の遷移発光部Ebの発光が経時的に変化する。演奏者は、第2鍵K2の操作のために自身の手指を移動させるべき方向を視覚的および直観的に把握できる。したがって、例えば複数の発光部Eのうち操作すべき鍵Kに対応する1個の発光部Eを発光させるだけの形態と比較して、演奏者による鍵盤楽器10の演奏を効果的に案内できる。
【0044】
また、第1実施形態においては、第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1と、第1鍵K1の次に操作されるべき第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2との間に位置する複数の遷移発光部Ebについて、経時的に発光が変化する。したがって、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2とは無関係に選択された複数の遷移発光部Ebの発光が制御される形態と比較して、演奏者は、第2鍵K2の操作のために自身の手指を移動させるべき方向および距離を、視覚的かつ直観的に把握し易い。
【0045】
B:第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0046】
第2実施形態の制御装置51は、第1実施形態と同様に、楽曲処理部511および案内制御部512として機能する。第2実施形態の楽曲処理部511は、楽曲の演奏速度T(テンポ)を設定する。例えば、楽曲処理部511は、操作装置53に対する演奏者からの指示に応じて演奏速度Tを設定する。なお、演奏速度Tの設定の方法は任意である。例えば、楽曲処理部511は、楽曲データMにより指定された数値に演奏速度Tを設定してもよい。
【0047】
第2実施形態の案内制御部512は、遷移案内動作において、複数の遷移発光部Ebの発光を経時的に変化させる速度(以下「遷移速度」という)Vaを、楽曲の演奏速度Tに応じて制御する。
【0048】
遷移速度Vaは、例えば、第3色に発光する状態が複数の遷移発光部Ebの各々に順次に移行する速度である。遷移速度Vaは、単位時間内において各遷移発光部Ebの発光が遷移する頻度の指標とも表現される。例えば、各遷移発光部Ebが消灯してから次の遷移発光部Ebが発光するまでの期間、または、各遷移発光部Ebが発光する期間は、遷移速度Vaが高いほど短縮される。
【0049】
具体的には、案内制御部512は、演奏速度Tが高いほど遷移速度Vaを高い速度に設定する。例えば、演奏速度Tが数値T1と数値T2とに設定され得る場合を想定する。数値T1は数値T2を上回る(T1>T2)。演奏速度Tが数値T1に設定された場合の遷移速度Va1は、演奏速度Tが数値T2に設定された場合の遷移速度Va2を上回る(Va1>Va2)。
【0050】
なお、演奏速度Tに対する遷移速度Vaの変化は、直線的な変化でも曲線的な変化でもよい。また、演奏速度Tの変化に対して遷移速度Vaが変化しない範囲が、演奏速度Tの数値範囲に含まれてもよい。
【0051】
遷移速度Vaの制御以外の動作は、第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、演奏者は、複数の遷移発光部Ebの発光が変化する速度(遷移速度Va)を視覚的に確認することで、楽曲の演奏速度Tを概略的に把握できる。
【0052】
C:第3実施形態
第3実施形態の制御装置51は、第1実施形態と同様に、楽曲処理部511および案内制御部512として機能する。第3実施形態の楽曲処理部511は、各音符の継続長Lを特定する。継続長Lは、1個の音符が継続する時間長である。具体的には、楽曲処理部511は、楽曲データMが音符毎に指定する発音期間の始点の時刻と終点の時刻とから継続長Lを算定する。
【0053】
第3実施形態の案内制御部512は、遷移案内動作において、複数の遷移発光部Ebの発光を経時的に変化させる遷移速度Vaを、楽曲において第1鍵K1に対応する音符の継続長Lに応じて制御する。すなわち、演奏者が操作している第1鍵K1に対応する音符の継続長Lに応じて、当該第1鍵K1から第2鍵K2に向かう遷移速度Vaが変化する。
【0054】
具体的には、案内制御部512は、継続長Lが短いほど遷移速度Vaを高い速度に設定する。例えば、継続長Lが数値L1と数値L2とに設定され得る場合を想定する。数値L1は数値L2を下回る(L1<L2)。第1鍵K1に対応する音符の継続長Lが数値L1である場合の遷移速度Va1は、当該継続長Lが数値L2である場合の遷移速度Va2を上回る(Va1>Va2)。
【0055】
なお、継続長Lに対する遷移速度Vaの変化は、直線的な変化でも曲線的な変化でもよい。また、継続長Lの変化に対して遷移速度Vaが変化しない範囲が、継続長Lの数値範囲に含まれてもよい。
【0056】
遷移速度Vaの制御以外の動作は、第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態においては、演奏者は、複数の遷移発光部Ebの発光が変化する速度(遷移速度Va)を視覚的に確認することで、第1鍵K1の操作を継続すべき時間(継続長L)の長短を把握できる。
【0057】
D:第4実施形態
第1実施形態から第3実施形態においては、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に複数の遷移発光部Ebの各々を順番に発光させる形態を例示した。第4実施形態においては、演奏者が次に操作すべき鍵K(以下「目標鍵K」という)に対応する1個の発光部E(以下「目標発光部E」という)の発光特性を経時的に変化させる。発光特性は、発光色または発光強度である。第4実施形態の目標発光部Eは、第1実施形態から第3実施形態における第2発光部Ea2に相当する。
【0058】
なお、演奏システム100の構成は、第1実施形態と同様である。第1実施形態から第3実施形態に例示した複数の遷移発光部Ebの制御は、第4実施形態において省略される。ただし、第1実施形態から第3実施形態における遷移発光部Ebの制御は、第4実施形態にも適用されてよい。
【0059】
図7は、第4実施形態における案内制御部512の動作の説明図である。図7の時間軸上における目標時点tcは、演奏者が目標鍵Kを操作すべき時点である。具体的には、目標時点tcは、目標鍵Kに対応する音符について楽曲データMが指定する発音期間の始点(ノートオン)である。
【0060】
案内制御部512は、制御期間C内において目標発光部Eの発光特性を経時的に変化させる。具体的には、案内制御部512は、制御期間Cの始点taにおいて目標発光部Eを発光させ、制御期間Cの終点tbにおいて目標発光部Eを消灯させる。制御期間Cは、目標時点tcに対応する期間である。具体的には、制御期間Cは、目標時点tcを内包する期間である。制御期間Cは、目標時点tcを境界として第1期間Q1と第2期間Q2とに区分される。
【0061】
第1期間Q1は、目標時点tc以前の期間である。具体的には、第1期間Q1は、目標時点tcよりも所定の時間(例えば1秒)だけ過去の時点taから目標時点tcまでの期間である。他方、第2期間Q2は、目標時点tc以降の期間である。具体的には、第2期間Q2は、目標時点tcから所定の時間が経過する時点tbまでの期間である。
【0062】
案内制御部512は、第1期間Q1において目標発光部Eの発光色を経時的に変化させる。具体的には、第1期間Q1において、案内制御部512は、目標発光部Eの発光色を第1色から第2色に連続的に変化させる。第1色から第2色までの過程における発光色は任意である。
【0063】
また、第2期間Q2において、案内制御部512は、目標発光部Eを第3色により発光させる。第3色は、任意の発光色である。第3色と、第1色または第2色との異同は不問である。第2期間Q2において、目標発光部Eの発光強度は一定である。例えば、第2期間Q2における目標発光部Eの発光強度は、第1期間Q1における目標発光部Eの発光強度を下回る。
【0064】
なお、図7においては、演奏者が目標鍵Kを操作しない場合における目標発光部Eの発光特性の変化が便宜的に図示されている。制御期間C内の任意の時点で演奏者が目標鍵Kを操作した場合、案内制御部512は、当該時点において目標発光部Eを消灯する。すなわち、第1期間Q1または第2期間Q2において目標鍵Kが操作された時点で、当該時点における目標発光部Eの発光特性に関わらず目標発光部Eは消灯する。
【0065】
図8は、第4実施形態における演奏案内処理のフローチャートである。複数の鍵Kの各々について演奏案内処理が順次または並列に実行される。第1実施形態と同様に、制御装置51が演奏案内処理を実行することで案内制御部512が実現される。
【0066】
制御装置51は、複数の鍵Kのうち特定の鍵K(目標鍵K)について制御期間Cの開始の時点taが到来するまで待機する(Sb1:NO)。時点taが到来した場合(Sb1:YES)、制御装置51は、目標時点tcが到来するまで(Sb3:NO)、目標発光部Eの発光特性を経時的に変化させる(Sb2)。具体的には、目標発光部Eの発光色が第1色から第2色まで経時的に変化する。
【0067】
目標時点tcが到来すると(Sb3:YES)、制御装置51は、目標発光部Eを第3色で発光させる(Sb4)。制御装置51は、第2期間Q2の終点の時点tbが到来するまで(Sb5:NO)、目標発光部Eによる第3色の発光を維持する。時点tbが到来すると(Sb5:YES)、制御装置51は、目標発光部Eを消灯する(Sb6)。
【0068】
以上の説明の通り、第4実施形態においては、複数の発光部Eの各々の発光を経時的に変化させることで、演奏者が操作すべき目標鍵Kが案内される。したがって、演奏者が操作すべき鍵Kに対応する発光部Eの発光/消灯が制御されるだけの構成と比較して、演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内できる。
【0069】
第4実施形態においては特に、複数の発光部Eのうち演奏者が操作すべき目標鍵Kに対応する目標発光部Eの発光色が経時的に変化する。したがって、演奏者が操作すべき鍵Kに対応する発光部Eの発光/消灯が2値的に制御されるだけの構成と比較して、演奏者による複数の鍵Kの操作を効果的に案内できる。
【0070】
図9は、1個の鍵Kについて短い間隔で2回の操作が発生する場合の説明図である。図9のケース1は、目標鍵Kに対応する制御期間C1が時点ta1から開始する場合である。図9のケース2は、目標鍵Kに対応する制御期間C1が時点ta2から開始する場合である。時点ta2は時点ta1の後方の時点である。
【0071】
図9のケース3は、目標鍵Kに対応する2個の音符(第1音符および第2音符)が短い間隔で相前後する場合である。具体的には、ケース3においては、目標鍵Kに対応する第1音符の制御期間C1が時点ta1から開始し、かつ、当該目標鍵Kに対応する第2音符の制御期間C2が時点ta2から開始する。具体的には、第2音符に対応する制御期間C2の開始の時点ta2が、第1音符に対応する制御期間C1の途中の時点である場合が想定されている。すなわち、制御期間C1と制御期間C2とは部分的に重複する。
【0072】
図9に例示される通り、第1音符の演奏のために演奏者が時点txにおいて目標鍵Kを操作したと仮定する。時点txは、制御期間C1と制御期間C2とが相互に重複する期間内の時点である。以上の状態において、目標発光部Eの発光特性が、時点txにおいてケース1の発光状態からケース2の発光状態に変化する形態(以下「対比例」という)では、時点txの前後において目標発光部Eの発光が途切れなく継続される。すなわち、目標鍵Kの操作による目標発光部Eの消灯を演奏者が視認できない。したがって、演奏者は、第2音符に対応した目標発光部Eの発光を明確に認識できない可能性がある。
【0073】
以上の事情を考慮して、第4実施形態の案内制御部512は、演奏者による操作の時点txにおいて目標発光部Eを消灯し、所定長の期間(以下「消灯期間」という)δが経過するま時点tyまで目標発光部Eの消灯を維持する。消灯期間δは、例えば100ミリ秒程度の期間である。
【0074】
そして、消灯期間δの終点tyにおいて、案内制御部512は、制御期間C2に対応する目標発光部Eの発光を開始する。具体的には、案内制御部512は、制御期間C2の始点ta2から目標発光部Eの発光特性の制御を開始したと仮定した場合(ケース2)における時点ty以降の発光動作を、時間軸上の時点tyにおいて目標発光部Eに実行させる。すなわち、目標発光部Eは、時点tyから発光を開始する。
【0075】
以上の説明から理解される通り、第1音符の制御期間C1と第2音符の制御期間C2とが相互に重複する期間内の時点txにおいて演奏者が目標鍵Kを操作した場合、案内制御部512は、時点txから時点tyまでの消灯期間δにおいて目標発光部Eを消灯する。そして、案内制御部512は、制御期間C2の始点ta1から目標発光部Eの発光特性を経時的に変化させたと仮定した場合における時点tyの発光状態を初期状態として、時点tyから目標発光部Eを発光させる。
【0076】
以上の形態によれば、消灯期間δにおいて目標発光部Eが消灯される。したがって、第1音符に対応する目標発光部Eの発光と、第2音符に対応する目標発光部Eの発光とを、演奏者が明確に区別できるという利点がある。
【0077】
なお、第2実施形態または第3実施形態と同様に、目標発光部Eの発光特性が経時的に変化する速度(以下「変化速度」という)Vbを、楽曲の演奏速度Tまたは音符の継続長Lに応じて制御してもよい。例えば、制御期間Cのうち第1期間Q1内における変化速度Vbが、演奏速度Tまたは継続長Lに応じて制御される。
【0078】
具体的には、案内制御部512は、演奏速度Tが高いほど変化速度Vbを高い速度に設定する。例えば、演奏速度Tが数値T1と数値T2とに設定され得る場合を想定する(T1>T2)。演奏速度Tが数値T1に設定された場合の変化速度Vb1は、演奏速度Tが数値T2に設定された場合の変化速度Vb2を上回る(Vb1>Vb2)。
【0079】
なお、演奏速度Tに対する変化速度Vbの変化は、直線的な変化でも曲線的な変化でもよい。また、演奏速度Tの変化に対して変化速度Vbが変化しない範囲が、演奏速度Tの数値範囲に含まれてもよい。
【0080】
また、案内制御部512は、直前に演奏者が演奏した音符の継続長Lが短いほど変化速度Vbを高い速度に設定する。例えば、継続長Lが数値L1と数値L2とに設定され得る場合を想定する(L1<L2)。直前の音符の継続長Lが数値L1である場合の変化速度Vb1は、当該継続長Lが数値L2である場合の変化速度Vb2を上回る(Va1>Va2)。
【0081】
なお、継続長Lに対する変化速度Vbの変化は、直線的な変化でも曲線的な変化でもよい。また、継続長Lの変化に対して変化速度Vbが変化しない範囲が、継続長Lの数値範囲に含まれてもよい。
【0082】
第1実施形態から第3実施形態においては、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に複数の遷移発光部Ebの発光特性を経時的に変化させる形態を例示した。第4実施形態においては、目標鍵Kに対応する目標発光部Eの発光特性を経時的に変化させる形態を例示した。第1実施形態から第4実施形態における案内制御部512は、複数の発光部Eのうち1以上の発光部Eの発光を経時的に変化させることで、演奏者が操作すべき鍵Kを案内する要素として包括的に表現される。
【0083】
E:第5実施形態
図10は、第5実施形態における演奏システム100の構成を例示するブロック図である。第1実施形態においては、制御システム50が鍵盤楽器10の筐体11に搭載された形態を例示した。第5実施形態の演奏システム100においては、制御システム50が鍵盤楽器10とは別体の装置として実現される。例えば、スマートフォン、タブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置が、制御システム50として利用されてもよい。
【0084】
具体的には、制御システム50は、第1実施形態と同様の要素(制御装置51,記憶装置52,操作装置53)に加えて通信装置54を具備する。他方、鍵盤楽器10は、第1実施形態と同様の要素に加えて通信装置60を具備する。通信装置54と通信装置60とは、有線または無線により相互に通信可能である。
【0085】
制御システム50の制御装置51は、通信装置54により鍵盤楽器10と通信することで、鍵盤楽器10の動作を制御する。制御システム50が実行する動作(例えば演奏案内処理)、および制御システム50による制御に応じて実行される鍵盤楽器10の動作は、第1実施形態と同様である。
【0086】
第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、以上の説明においては第1実施形態を基礎として第5実施形態を説明したが、第5実施形態の構成は、第2実施形態から第4実施形態にも同様に適用されてよい。また、再生システム30(音源装置31および放音装置32)は、鍵盤楽器10とは別体の制御システム50に搭載されてもよい。
【0087】
F:第6実施形態
図11は、第6実施形態における鍵盤楽器10の斜視図である。第6実施形態の鍵盤楽器10は、第1実施形態と同様の要素に加えて鍵盤蓋12を具備する。鍵盤蓋12は、開閉可能な状態で筐体11に設置された板状部材である。鍵盤蓋12は、閉状態および開状態の一方から他方に回転する。閉状態は、鍵盤蓋12が鍵盤21を被覆する状態である。開状態は、鍵盤21が露出する状態である。演奏者は、鍵盤蓋12を閉状態から開状態に移動して鍵盤楽器10を演奏し、演奏が終了すると鍵盤蓋12を開状態から閉状態に移動する。
【0088】
図12は、X軸に直交する断面における鍵盤蓋12の部分的な断面図である。第6実施形態の案内装置40は、鍵盤蓋12に設置される。具体的には、鍵盤蓋12の内面13に案内装置40が設置される。鍵盤蓋12の内面13は、閉状態において鍵盤21に対向する表面である。鍵盤蓋12の内面13のうち筐体11に近い下辺に沿って取付溝14が形成される。取付溝14は、X軸の方向に直線状に延在する窪みである。案内装置40は取付溝14に収容される。
【0089】
第6実施形態の案内装置40は、長尺状の実装基板42の表面に複数の発光部Eが配列された構造体である。駆動回路41(図12では図示略)も実装基板42に設置される。取付溝14の底面に実装基板42が接触した状態で、案内装置40は鍵盤蓋12に設置される。したがって、複数の発光部Eは、鍵盤21の近傍において鍵盤蓋12の下辺に沿ってX軸の方向に配列する。
【0090】
図12から理解される通り、案内装置40の厚さHは取付溝14の深さDを下回る(H<D)。したがって、各発光部Eは鍵盤蓋12の内面13から突出しない。すなわち、鍵盤蓋12の内面13と取付溝14の底面との段差内に、案内装置40が収容される。なお、案内装置40の厚さHは、実装基板42の厚さと発光部Eの厚さとの合計値である。
【0091】
第6実施形態における鍵盤楽器10の動作は第1実施形態と同様である。したがって、第6実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第6実施形態においては、鍵盤蓋12の内面13に複数の発光部Eが設置される。すなわち、閉状態では複数の発光部Eが鍵盤21に対向した状態に隠れる。したがって、複数の発光部Eが筐体11の外装上に常に露出する形態と比較して、不使用の状態(すなわち閉状態)における鍵盤楽器10の美観を維持できるという利点がある。
【0092】
なお、以上の説明においては第1実施形態を基礎として第6実施形態を説明したが、第6実施形態の構成は、第2実施形態から第5実施形態にも同様に適用されてよい。
【0093】
G:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。前述の各実施形態および以下に例示する変形例から任意に選択された複数の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0094】
(1)第1実施形態から第3実施形態においては、第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1と第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2との間の複数の発光部Eを、遷移案内動作の対象となる遷移発光部Ebとして特定したが、複数の遷移発光部Ebの位置は以上の例示に限定されない。遷移案内動作の他例としては以下の各態様が想定される。なお、以下の例示においては、第2鍵K2が第1鍵K1のX1方向に位置する場合を想定する。第2鍵K2が第1鍵K1のX2方向に位置する場合、各発光部Eの発光の態様は、以下の例示における左右を反転した態様となる。
【0095】
[態様1]
第1発光部Ea1および第2発光部Ea2が複数の遷移発光部Ebに含まれてもよい。例えば、図13に例示される通り、第1発光部Ea1が複数の遷移発光部Ebの配列における一端を構成し、第2発光部Ea2が当該配列の他端を構成してもよい。以上の構成における遷移案内動作は、第1発光部Ea1から第2発光部Ea2までの複数の遷移発光部Ebの各々を順番に第3色に発光させる動作である。
【0096】
[態様2]
第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間の途中の地点の発光部Eが、遷移案内動作の対象となる複数の遷移発光部Ebの端点とされてもよい。例えば、図14および図15には、発光部E1から発光部E9までの9個の発光部Eが図示されている。発光部E1が第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1であり、発光部E9が第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2である。
【0097】
図14に例示される通り、発光部E2から発光部E5までの4個の発光部Eを遷移発光部Ebとして、遷移案内動作が実行されてもよい。すなわち、発光部E2から発光部E5までの各遷移発光部Ebが順番に第3色で発光する。発光部E6から発光部E8の3個の発光部Eは発光しない。すなわち、図14の形態は、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間の途中の地点の発光部E5を、複数の遷移発光部Ebの配列のうち第2発光部Ea2に近い端部とした形態である。
【0098】
また、図15に例示される通り、発光部E5から発光部E8までの4個の発光部Eを遷移発光部Ebとして、遷移案内動作が実行されてもよい。すなわち、発光部E5から発光部E8までの各遷移発光部Ebが順番に第3色で発光する。発光部E2から発光部E4の3個の発光部Eは発光しない。すなわち、図15の形態は、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間の途中の地点の発光部E5を、複数の遷移発光部Ebの配列のうち第1発光部Ea1に近い端部とした形態である。
【0099】
[態様3]
第1発光部Ea1から第2発光部Ea2までの範囲の外側に位置する発光部Eが、複数の遷移発光部Ebに含まれてもよい。例えば、図16および図17には、発光部E1から発光部E9までの9個の発光部Eが図示されている。発光部E3が第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1であり、発光部E7が第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2である。
【0100】
図16に例示される通り、第1発光部Ea1に隣合う発光部E4から発光部E9までの6個の発光部Eを遷移発光部Ebとして、遷移案内動作が実行されてもよい。発光部E4から発光部E9までの各遷移発光部Ebが順番に第3色で発光する。発光部E9は、第2発光部Ea2よりもX1方向に位置する。すなわち、図16の形態は、第3色による発光が第2発光部Ea2を通過する形態である。
【0101】
また、図17に例示される通り、発光部E1から発光部E6までの6個の発光部Eを遷移発光部Ebとして、遷移案内動作が実行されてもよい。発光部E1から発光部E6までの各遷移発光部Ebが順番に第3色で発光する。発光部E1は、第1発光部Ea1よりもX2方向に位置する。すなわち、図17の形態は、第3色による発光が第1発光部Ea1を通過する形態である。
【0102】
[態様4]
以上の例示においては、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2に応じて複数の遷移発光部Ebが特定される形態を例示したが、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2と、複数の遷移発光部Ebとの関係は任意である。すなわち、第1鍵K1および第2鍵K2の位置とは無関係に、複数の遷移発光部Ebが特定されてもよい。
【0103】
例えば、複数の発光部Eの配列においてX2方向の端部を含む所定個の発光部Eを、複数の遷移発光部Ebとして遷移案内動作が実行されてもよい。すなわち、鍵盤21のうちX2方向の端部に対応する複数の遷移発光部Ebの各々が第3色により順番に発光する。また、複数の発光部Eの配列においてX1方向の端部を含む所定個の発光部Eを、複数の遷移発光部Ebとして遷移案内動作が実行されてもよい。すなわち、鍵盤21のうちX1方向の端部に対応する複数の遷移発光部Ebの各々が第3色により順番に発光する。
【0104】
[態様5]
第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間において相互に隣合う全部の発光部Eを、遷移案内動作の対象である遷移発光部Ebとして利用する必要はない。例えば、図18には、発光部E1から発光部E9までの9個の発光部Eが図示されている。発光部E1が第1鍵K1に対応する第1発光部Ea1であり、発光部E9が第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2である。
【0105】
第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間に位置する7個の発光部E2~E8のうち1個おきに選択された4個の発光部E(E2,E4,E6,E8)を遷移発光部Ebとして、遷移案内動作実行されてもよい。すなわち、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2との間に位置する複数の発光部Eのうちの一部が、遷移案内動作に利用されてもよい。
【0106】
態様1から態様5の例示から理解される通り、案内制御部512は、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に、複数の遷移発光部Ebの各々を順番に発光させる。鍵盤21に対する複数の遷移発光部Ebの位置、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2に対する複数の遷移発光部Ebの位置、または、第1発光部Ea1および第2発光部Ea2が複数の遷移発光部Ebに含まれるか否か等の事項は、本開示において任意である。
【0107】
(2)前述の各形態においては、1個の第1鍵K1に対応する発光部Eを第1発光部Ea1として例示したが、例えば和音の演奏時には演奏者が複数の鍵Kを並列に操作する場合がある。案内制御部512は、演奏者が並列に演奏する複数の鍵Kの組合せに対応する発光部Eを、第1発光部Ea1として選択してもよい。
【0108】
例えば、複数の鍵Kを代表する1個の鍵K(以下「代表鍵K」という)に対応する発光部Eが、第1発光部Ea1として選択されてよい。代表鍵Kは、演奏者が並列に演奏する複数の音高の代表値に対応する鍵Kである。代表値は、例えば複数の音高の中央値である。例えば、演奏者が「ド」「ミ」「ソ」を並列に演奏する場合、案内制御部512は、代表値「ミ」の鍵Kを代表鍵Kとして選択し、当該代表鍵Kに対応する発光部Eを第1発光部Ea1として特定する。以上の形態において、代表鍵Kを第1鍵K1と解釈してもよいし、演奏者が並列に演奏する複数の鍵Kの各々を第1鍵K1と解釈してもよい。
【0109】
同様に、案内制御部512は、演奏者が並列に演奏すべき複数の鍵Kの組合せに対応する発光部Eを、第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2として選択してもよい。例えば、複数の鍵Kの代表鍵Kに対応する発光部Eが、第2発光部Ea2として選択されてよい。以上の形態において、代表鍵Kを第2鍵K2と解釈してもよいし、演奏者が並列に演奏する複数の鍵Kの各々を第2鍵K2と解釈してもよい。
【0110】
(3)各発光部Eの発光色は前述の各形態の例示に限定されない。例えば、第1実施形態から第3実施形態においては、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2と各遷移発光部Ebとが相異なる発光色(色相)で発光する形態を例示したが、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2と各遷移発光部Ebとは同じ発光色で発光してもよい。すなわち、第1実施形態から第3実施形態において、第1色と第2色と第3色とは、同色および別色の何れでもよい。
【0111】
各鍵Kの操作に使用する手指に応じて各発光部Eの発光色を相違させてもよい。例えば、楽曲データMが楽曲内の運指を指定する形態を想定する。すなわち、楽曲データMは、楽曲内の各音符の演奏に使用されるべき手指の番号を指定する。案内制御部512は、第1鍵K1を操作すべき手指に応じた発光色で第1発光部Ea1を発光させ、第2鍵K2を操作すべき手指に応じた発光色で第2発光部Ea2を発光させる。また、案内制御部512は、第1鍵K1または第2鍵K2を操作すべき手指に応じた発光色で各遷移発光部Ebを発光させる。
【0112】
また、黒鍵と白鍵とで発光部Eの発光色を相違させてもよい。例えば、案内制御部512は、第1鍵K1が黒鍵である場合と白鍵である場合とで、第1発光部Ea1の発光色を相違させる。案内制御部512は、第2鍵K2が黒鍵である場合と白鍵である場合とで、第2発光部Ea2の発光色を相違させる。また、案内制御部512は、第1鍵K1または第2鍵K2が黒鍵である場合と白鍵である場合とで、各遷移発光部Ebの発光色を相違させる。
【0113】
(4)第1実施形態から第3実施形態においては、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2とを相異なる発光色で発光させたが、発光色以外の発光特性を第1発光部Ea1と第2発光部Ea2とで相違させてもよい。例えば発光部Eによる出射光の強度(発光強度)、または発光部Eの発光パターンが、第1発光部Ea1と第2発光部Ea2とで相違してもよい。発光パターンは、例えば発光部Eの点滅の態様である。例えば点滅の周期、または発光および消灯の時間的な比率が、発光パターンとして例示される。
【0114】
また、前述の各形態においては、第1発光部Ea1または第2発光部Ea2と各遷移発光部Ebとを相異なる発光色で発光させたが、発光色以外の発光特性を、第1発光部Ea1または第2発光部Ea2と各遷移発光部Ebとの間で相違させてもよい。例えば、発光強度または発光パターンが、第1発光部Ea1または第2発光部Ea2と各遷移発光部Ebとの間で相違してもよい。
【0115】
以上の説明から理解される通り、「発光特性」は、発光部Eの発光に関する任意の特性として包括的に表現される。例えば発光色、発光強度および発光パターン等の特性は、「発光特性」の例示である。
【0116】
(5)第1実施形態から第3実施形態においては、演奏者が操作している第1鍵K1と次に操作すべき第2鍵K2との間の遷移を演奏者に案内する形態を例示したが、演奏者が第2鍵K2以降に操作すべき各鍵Kに対する遷移をさらに演奏者に案内する形態も想定される。
【0117】
例えば、図19には、第2鍵K2の次に演奏者が操作すべき第3鍵K3が例示されている。案内制御部512は、第3鍵K3に対応する第3発光部Ea3を第4色により発光させる。第4色は、第1色から第3色とは相違する発光色である。また、案内制御部512は、第1鍵K1と第2鍵K2との間の各遷移発光部Ebを順番に発光させるほか、第2鍵K2と第3鍵K3との間の各遷移発光部Ebを、第3鍵K3に向かう方向に順番に発光させる。第1鍵K1と第2鍵K2との間の各遷移発光部Ebの発光色と、第2鍵K2と第3鍵K3との間の各遷移発光部Ebの発光色との異同は不問である。
【0118】
なお、以上の説明においては、3個の鍵K(K1~K3)を便宜的に例示したが、演奏者に案内される鍵Kの個数は任意である。例えば、案内制御部512は、楽曲のうち特定の区間内の音符に対応する複数の鍵Kを、各鍵Kに対応する発光部Eの発光により演奏者に案内してもよい。案内の対象となる区間は、例えば、楽曲のうち所定個の小節に相当する区間である。
【0119】
(6)第1実施形態から第3実施形態においては、遷移案内動作が反復される形態を例示したが、遷移案内動作は1回だけ実行されてもよい。1回の遷移案内動作は、例えば、複数の遷移発光部Ebの各々を特定の方向に1回ずつ発光させる動作である。すなわち、案内制御部512は、第2鍵K2の選択毎に1回の遷移案内動作を実行してもよい。
【0120】
(7)第1実施形態から第3実施形態においては、複数の遷移発光部Ebの各々を択一的に発光させる形態を例示したが、X軸の方向に隣合う2個以上を単位として複数の遷移発光部Ebを順次に発光させてもよい。例えば、図4を参照すると、案内制御部512は、時刻t2において発光部E3と発光部E4とを発光させ、時刻t3において発光部E4と発光部E5とを発光させ、時刻t4において発光部E5と発光部E6とを発光させる。なお、各時点で発光させる2個以上の発光部Eは相互に重複しなくてもよい。例えば、案内制御部512は、時刻t2において発光部E3と発光部E4とを発光させ、時刻t3において発光部E5と発光部E6とを発光させてもよい。
【0121】
(8)第1実施形態から第3実施形態において、第1鍵K1を操作している演奏者が第2鍵K2に対応する第2発光部Ea2の発光を認識し難いのは、第1鍵K1と第2鍵K2とが充分に離間している状態である。以上の事情を考慮すると、第1鍵K1と第2鍵K2との間の音高差が所定の閾値を上回る場合に、案内制御部512が遷移案内動作を実行する構成が好適である。音高差が閾値を下回る場合、案内制御部512は遷移案内動作を実行しない。以上の形態によれば、複数の発光部Eによる発光が簡素化されるという利点がある。
【0122】
(9)前述の各形態においては、演奏者が鍵Kを操作するたびに次の鍵Kを案内する形態を例示したが、演奏者による演奏に連動して案内を進行させる方法は、以上の例示に限定されない。
【0123】
例えば、制御装置51(案内制御部512)は、楽曲内において演奏者が演奏している位置(以下「演奏位置」という)の進行に連動して、楽曲演奏の案内を進行させてもよい。例えば、第4実施形態において、制御装置51は、楽曲内の各音符の始点よりも所定の時間だけ手前の時点に演奏位置が到達した場合に、当該音符に対応する制御期間C(第1期間Q1)を開始する。以上の形態によれば、演奏者の演奏に連動した適切なタイミングで各音符の操作を案内できる。なお、演奏位置の解析には、特開2016-099512号公報に開示された技術等、公知の演奏解析技術(スコアアライメント技術)が任意に採用される。
【0124】
(10)第1実施形態から第3実施形態においては、複数の遷移発光部Ebの各々を順番に発光させる形態を例示したが、第1鍵K1に対する第2鍵K2の方向を演奏者に案内するための方法は、以上の例示に限定されない。例えば、案内制御部512は、複数の遷移発光部Ebを発光させた状態において、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に各遷移発光部Ebを順番に消灯させてもよい。すなわち、各遷移発光部Ebが消灯する状態が、複数の遷移発光部Ebの各々に経時的に遷移する。
【0125】
また、案内制御部512は、複数の遷移発光部Ebを特定の発光色で発光させた状態において、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に各遷移発光部Ebの発光色を変化させてもよい。すなわち、各遷移発光部Ebがの発光色が変化する状態が、複数の遷移発光部Ebの各々に経時的に遷移する。
【0126】
以上の形態においても、第2鍵K2の方向を演奏者に案内することが可能である。以上の例示から理解される通り、案内制御部512は、複数の遷移発光部Ebの発光を経時的に変化させる要素として包括的に表現される。「発光の経時的な変化」は、発光および消灯の一方から他方への変化、および、発光色等の発光特性の変化を含む。
【0127】
(11)楽曲の演奏を表す動画が、演奏者による鍵盤楽器10の演奏に連動して再生されてもよい。図20は、変形例に係る演奏システム100のブロック図である。演奏システム100は、第5実施形態と同様に、相互に別体で構成された鍵盤楽器10と制御システム50とを具備する。ただし、制御システム50は鍵盤楽器10に搭載されてもよい。なお、鍵盤楽器10の案内装置40により演奏者に演奏を案内する動作は、前述の各形態と同様である。
【0128】
制御システム50の記憶装置52は、楽曲の動画データZを記憶する。動画データZは、楽曲の演奏に関する動画を表すデータである。動画データZが表す動画は、鍵盤楽器10とは別種の楽器(以下「補助楽器」という)により楽曲が演奏される様子を表す。また、動画データZが表す動画は、補助楽器の楽音を含む。動画データZが表す楽音は、楽曲の演奏により補助楽器から発音される演奏音である。
【0129】
補助楽器は、例えば、楽曲の相異なる演奏パートに対応する複数種の楽器のうち鍵盤楽器10以外の楽器である。例えば鍵盤楽器10が楽曲の主旋律の演奏パートに対応し、補助楽器は、当該楽曲の伴奏音の演奏パートに対応する弦楽器等の楽器である。例えば、補助楽器の演奏に習熟した演奏者が当該補助楽器により楽曲を演奏する様子を収録することで、動画データZが生成される。
【0130】
制御システム50は、前述の各形態と同様の要素(制御装置51、記憶装置52、操作装置53、通信装置54)に加えて表示装置55および放音装置56を具備する。表示装置55および放音装置56は、動画データZを再生するための再生機器として利用される。
【0131】
表示装置55は、制御装置51による制御のもとで、動画データZが表す動画を表示する。表示装置55は、例えば液晶パネルまたは有機ELパネルで構成される。放音装置56は、制御装置51による制御のもとで、動画データZが表す楽音を放射する。放音装置56は、例えばスピーカである。なお、制御システム50とは別体で構成された表示装置55または放音装置56が、制御システム50に有線または無線により接続されてもよい。
【0132】
制御システム50の制御装置51は、演奏者による鍵盤楽器10の演奏に連動して、動画データZの再生を進行する。制御装置51は、動画データZが表す動画のうち任意の位置(以下「再生位置」という)を表示装置55および放音装置56に再生させることが可能である。制御装置51は、演奏者による鍵盤楽器10の演奏位置を推定し、演奏位置に連動するように動画データZの再生位置を制御する。具体的には、楽曲のうち演奏位置に対応する箇所を補助楽器が演奏する動画が、表示装置55および放音装置56により再生される。したがって、演奏者は、補助楽器と恰も合奏しているような感覚で、案内装置40による案内に沿って鍵盤楽器10を演奏できる。
【0133】
なお、動画データZの再生に複数の表示装置55が利用されてもよい。例えば、複数の表示装置55の各々が、相異なる種類の補助楽器に関する動画を表示してもよい。同様に、複数種の補助楽器の各々に対応する楽音が、相異なる複数の放音装置56により放射されてもよい。
【0134】
(12)前述の通り、再生システム30は、鍵盤楽器10とは別体の装置として構成されてよい。図21は、再生システム30が鍵盤楽器10とは別体で構成された変形例における演奏システム100のブロック図である。図21の再生システム30は、通信装置35と発音機構36と駆動装置37とを具備する自動演奏楽器である。例えば自動演奏ピアノが再生システム30として利用される。なお、鍵盤楽器10からは再生システム30が省略された形態が図21には例示されているが、音源装置31および放音装置32が鍵盤楽器10に搭載されてもよい。
【0135】
通信装置35は、制御システム50の通信装置54との間で有線または無線により通信する。制御システム50は、演奏指示を再生システム30に送信する。演奏指示は、例えば演奏者が操作した鍵Kに対応する音高の発音を指示するデータである。例えばMIDIに準拠したイベントデータが演奏指示として例示される。なお、楽曲の複数の演奏パートのうち鍵盤楽器10以外の演奏パートに対応する音符の演奏指示が、制御システム50から送信されてもよい。例えば、鍵盤楽器10以外の演奏パートを構成する複数の音符のうち、鍵盤楽器10の演奏者の演奏位置に対応する音符の演奏指示が、制御システム50から送信される。通信装置35は、制御システム50から送信された演奏指示を受信する。
【0136】
発音機構36は、複数の部材の組合せにより構成され、各部材の機械的な運動により複数の楽音の何れかを発音する。発音機構36は、例えば、相異なる音高に対応する複数の弦を打撃する打弦機構である。駆動装置37は、通信装置35が制御システム50から受信した演奏指示に応じて発音機構36を駆動する。すなわち、駆動装置37は、演奏指示により指定された楽音が発音されるように発音機構36を駆動する。以上の形態によれば、演奏者による鍵盤楽器10の演奏に応じた楽音が、再生システム30により発音される。
【0137】
(13)前述の各形態においては、鍵Kと発光部Eとが1対1に対応する形態を例示したが、各鍵Kと各発光部Eとの対応関係は以上の例示に限定されない。具体的には、発光部Eの個数が鍵Kの個数を上回る形態も想定される。例えば、各鍵Kの近傍に1個の発光部Eが設置されるほか、相互に隣合う2個の鍵Kの間にも1個の発光部Eが設置されてよい。発光部Eの個数が鍵Kの個数を上回る構成によれば、各発光部Eの発光を連続的に遷移させることが可能である。
【0138】
(14)第1実施形態から第3実施形態においては、複数の遷移発光部Ebの各々の発光を経時的に変化させる形態を例示したが、第2鍵K2の方向を演奏者に案内するための方法は、発光部Eを利用した方法に限定されない。例えば、以下に例示する態様1から態様3が想定される。
【0139】
[態様1]
投射型の表示装置(プロジェクタ)による投射画像を利用して、第1鍵K1に対する第2鍵K2の方向を演奏者に案内してもよい。例えば、投射型の表示装置は、X軸の方向に長尺な案内画像を鍵盤楽器10の投射面に投射する。案内制御部512は、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に案内画像が変化するように、投射型の表示装置を制御する。以上の形態によっても、案内画像を視認する演奏者は、直後に操作すべき第2鍵K2の方向を視覚的に把握できる。
【0140】
[態様2]
直視型の表示装置による表示画像を利用して、第1鍵K1に対する第2鍵K2の方向を演奏者に案内してもよい。例えば、X軸の方向に長尺な表示装置が鍵盤21に沿って設置される。表示装置は、例えば液晶パネルまたは有機EL(Electroluminescence)パネルで構成される。表示装置は、案内画像を表示する。第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に案内画像が変化するように、表示装置を制御する。以上の形態によっても、案内画像を視認する演奏者は、直後に操作すべき第2鍵K2の方向を視覚的に把握できる。
【0141】
[態様3]
利用者の頭部に装着される表示装置(HMD:Head Mounted Display)の表示画像を利用して、第1鍵K1に対する第2鍵K2の方向を演奏者に案内してもよい。HMDは、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に経時的に変化する案内画像を、演奏者が視認する鍵盤楽器10に重ねて表示する。例えば演奏者が案内画像の背景として現実空間を視認可能な透過型のHMD、または、鍵盤楽器10を撮像装置により撮像した画像に案内画像を重畳する非透過型のHMDが利用される。すなわち、すなわち、HMDは、拡張現実(AR:Augmented Reality)または複合現実(MR:Mixed Reality)により案内画像を表示する。
【0142】
なお、態様1から態様3においては、第1鍵K1に対する第2鍵K2の方向を案内する案内画像の表示(第1実施形態から第3実施形態)を想定したが、演奏者に目標鍵Kを案内する第4実施形態にも、態様1から態様3は適用されてよい。具体的には、目標鍵Kを案内する案内画像が、態様1から態様3の表示装置により表示される。
【0143】
以上の説明から理解される通り、本開示のひとつの態様は、第1鍵K1から第2鍵K2に向かう方向に経時的に変化する案内表示を利用者に提示する要素(演奏案内部)、を具備する構成として包括的に表現される。第1実施形態から第3実施形態の構成に着目すると、演奏案内部は、案内制御部512と複数の発光部Eとにより構成され、案内表示は、複数の発光部Eの発光により実現される。また、投射型の表示装置が利用される態様1において、演奏案内部は、投射型の表示装置と案内制御部512とにより構成される。直視型の表示装置が利用される態様2において、演奏案内部は、直視型の表示装置と案内制御部512とにより構成される。表示装置が利用される形態において、案内表示は、表示装置により表示される画像により実現される。
【0144】
(15)第4実施形態においては、制御期間Cの第1期間Q1において目標発光部Eの発光色を経時的に変化させる形態を例示したが、第1期間Q1において経時的に変化する発光特性は発光色に限定されない。例えば、案内制御部512は、第1期間Q1において目標発光部Eの発光強度を経時的に変化させてもよい。また、案内制御部512は、第1期間Q1において目標発光部Eの発光パターン(例えば点滅周期)を経時的に変化させてもよい。
【0145】
また、第4実施形態においては、制御期間Cの第2期間Q2において目標発光部Eを第3色で発光させる形態を例示したが、第2期間Q2における目標発光部Eの発光の態様は以上の例示に限定されない。例えば、案内制御部512は、第2期間Q2において目標発光部Eの発光色または発光強度を経時的に変化させてもよい。また、案内制御部512は、第2期間Q2において目標発光部Eの発光パターン(例えば点滅周期)を経時的に変化させてもよい。
【0146】
以上の説明から理解される通り、第4実施形態における案内制御部512は、目標発光部Eの発光特性を経時的に変化させる要素として包括的に表現される。「発光特性」は、前述の通り、発光部Eの発光に関する任意の特性である。例えば発光色、発光強度および発光パターン等の特性は、「発光特性」の例示である。
【0147】
(16)第4実施形態において、制御期間Cの第1期間Q1は可変長でもよい。すなわち、制御装置51は、第1期間Q1の時間長を変更してもよい。例えば、第1期間Q1の時間長が、楽曲データMにより指定される形態が想定される。例えば、楽曲データMにおけるコントロールチェンジまたはベロシティの数値として、第1期間Q1の時間長が指定される。また、楽曲の演奏速度Tに応じて第1期間Q1の時間長を設定する形態が想定される。具体的には、制御装置51は、演奏速度Tが速いほど第1期間Q1を短い時間長に設定する。
【0148】
楽曲内において相前後する拍点の間隔(以下「拍周期」という)に応じて、第1期間Q1の時間長を設定する形態も想定される。例えば、制御装置51(案内制御部512)は、演奏者による鍵盤楽器10の演奏を解析することで楽曲の拍点を推定する。そして、制御装置51(案内制御部512)は、第1期間Q1の時間長を、例えば拍周期の整数倍に設定する。以上の形態によれば、楽曲のうち相前後する音符の間隔が短い箇所においては、各発光部Eの発光が継続する第1期間Q1が短い時間に制御される。したがって、相互に並列に発光する発光部Eの個数が低減され、結果的に演奏者が案内を確認する負荷を軽減できる。
【0149】
なお、以上の説明においては第1期間Q1の時間長に便宜的に着目したが、制御期間Cまたは第2期間Q2の時間長についても同様に可変長でよい。制御期間Cまたは第2期間Q2の時間長の制御には、第1期間Q1の時間長の制御について前述したのと同様の方法が採用される。
【0150】
(17)第4実施形態においては、演奏者が目標鍵Kを操作すべき時点を目標時点tcとして例示したが、目標鍵Kが操作されるべき時点と、目標発光部Eの発光が制御される制御期間Cとの関係は、以上の例示に限定されない。例えば、目標鍵Kが操作されるべき時点から制御期間Cが開始されてもよい。目標鍵Kが操作されるべき時点において制御期間Cが終了してもよい。また、第4実施形態においては制御期間Cが第1期間Q1と第2期間Q2とを含む形態を例示したが、第1期間Q1と第2期間Q2との区別は省略されてよい。すなわち、制御期間Cの始点から終点にかけて目標発光部Eの発光が連続的に制御されてもよい。
【0151】
(18)第6実施形態においては、複数の発光部Eが実装された実装基板42が鍵盤蓋12に設置された形態を例示したが、複数の発光部Eは、鍵盤蓋12に直接的に設置されてもよい。例えば、鍵盤蓋12の内面13に設置された複数の取付孔の各々に発光部Eが収容されてもよい。すなわち、実装基板42は省略されてよい。
【0152】
(19)案内装置40が設置される位置は前述の各形態における例示に限定されない。例えば、各鍵Kが光透過性の材料で形成された形態においては、各鍵Kに対応する発光部Eが当該鍵Kの内部に設置されてもよい。すなわち、案内装置40は鍵盤ユニット20に搭載されてもよい。
【0153】
(20)案内装置40が鍵盤蓋12に設置される第6実施形態において、案内装置40に対して無線により給電する無線給電装置が、筐体11に設置されてもよい。案内装置40に対する無線給電には、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式または電磁波方式等の任意の給電方式が採用される。
【0154】
鍵盤蓋12の変位に連動して案内装置40に対する無線給電が開始されてもよい。例えば、鍵盤蓋12の開閉を検知するセンサが鍵盤楽器10に設置される。無線給電装置は、鍵盤蓋12が閉状態から開状態に遷移することを契機として、案内装置40に対する無線給電を開始する。また、無線給電装置は、鍵盤蓋12が開状態から閉状態に遷移することを契機として、案内装置40に対する無線給電を停止する。以上の形態によれば、鍵盤蓋12の状態に関わらず案内装置40に給電される形態と比較して消費電力を低減できる。
【0155】
(21)前述の各形態に例示した動作に並行して、演奏者が右手および左手を配置すべき概略的な位置を、複数の発光部Eの発光により演奏者に案内してもよい。例えば、案内制御部512は、前述の演奏案内処理における各発光部E(Ea1,Ea2,Eb)とは別個の発光色により、演奏者の右手および左手の位置に対応する発光部Eを発光させる。
【0156】
(22)前述の各形態においては、音響信号を生成する音源装置31が搭載された電子楽器を鍵盤楽器10として例示したが、音源装置31が搭載されない自然楽器にも本開示は適用される。例えば、各鍵Kの操作に連動して発音する発音機構を具備する鍵盤楽器にも、本開示は適用される。発音機構は、例えば鍵Kの変位に連動して打弦する打弦機構である。なお、鍵盤楽器10は、音源装置31と発音機構とを兼備してもよい。
【0157】
(23)前述の各形態に係る制御システム50の機能は、前述の通り、制御装置51を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置52に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
【0158】
H:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0159】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る演奏システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部と、前記複数の発光部のうち1以上の発光部の発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部とを具備する。以上の態様においては、複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、複数の鍵のうち操作されるべき鍵が案内される。したがって、演奏者が操作すべき鍵に対応する発光部の発光/消灯が制御されるだけの構成と比較して、演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内できる。
【0160】
なお、ある時点で操作すべき第1鍵と直後に操作すべき第2鍵とが充分に離間している状態では、利用者は、第1鍵を操作してから、第2鍵に対応する発光部の発光を迅速に把握できない場合がある。以上の事情を考慮して、態様1の具体例(態様2)において、前記案内制御部は、前記複数の鍵のうちの第1鍵から、前記第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に向かう方向に、前記複数の発光部のうち2以上の発光部の発光を経時的に変化させる。以上の態様においては、第1鍵から第2鍵に向かう方向に2以上の発光部の発光が経時的に変化する。演奏者は、第1鍵の次の第2鍵の操作のために自身の手指を移動させるべき方向を視覚的および直観的に把握できる。したがって、例えば複数の発光部のうち操作すべき鍵に対応する1個の発光部を発光させるだけの形態と比較して、演奏者による演奏を効果的に案内できる。例えば、第1鍵と第2鍵とが充分に離間している状態では、利用者は、第1鍵を操作してから、第2鍵に対応する発光部の発光を迅速に把握できない場合がある。本開示によれば、第2鍵の操作のために手指を移動させるべき方向が案内されるから、演奏者は、第2鍵を容易に把握できる。
【0161】
態様2の具体例(態様3)において、前記2以上の発光部は、前記複数の発光部のうち、前記第1鍵に対応する第1発光部と前記第2鍵に対応する第2発光部との間の発光部を含む。以上の態様によれば、第1鍵に対応する第1発光部と、第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に対応する第2発光部との間の発光部を含む2以上の発光部について、経時的に発光が変化する。したがって、第1発光部および第2発光部とは無関係に選択された2以上の発光部の発光が制御される形態と比較して、演奏者は、第1鍵の次の第2鍵の操作のために自身の手指を移動させるべき方向および距離を視覚的かつ直観的に把握し易い。なお、2以上の発光部は、第1発光部または第2発光部を含んでもよい。
【0162】
態様2または態様3の具体例(態様4)において、前記案内制御部は、前記第1鍵から前記第2鍵に向かう方向に、前記2以上の発光部の各々を順次に発光させる。以上の態様によれば、2以上の発光部の各々が順番に発光する様子を視認することで、演奏者は、第2鍵の操作のために自身の手指を移動させるべき方向を視覚的かつ直観的に把握できる。
【0163】
態様2から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる動作の実行後に、前記第2発光部を発光させる。以上の態様によれば、演奏者は、2以上の発光部の各々が順次に発光する様子を視認することで、自身の手指を移動させるべき方向を把握できるほか、第2発光部の発光を視認することで、直後に操作すべき第2鍵の位置を正確に把握できる。
【0164】
態様2から態様5の何れかの具体例(態様6)において、前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる動作を反復する。以上の態様においては、第1鍵から第2鍵に向かう方向に2以上の発光部の発光が経時的に変化する動作が、複数回にわたり反復される。したがって、演奏者は、第2鍵の操作のために自身の手指を移動させるべき方向および距離を確実かつ容易に把握できる。
【0165】
態様2から態様5の何れかの具体例(態様7)において、前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる速度を、楽曲の演奏速度に応じて制御する。以上の態様によれば、演奏者は、2以上の発光部の発光が変化する速度を視覚的に確認することで、楽曲の演奏速度を概略的に把握できる。
【0166】
態様2から態様7の何れかの具体例(態様8)において、前記案内制御部は、前記2以上の発光部の発光を経時的に変化させる速度を、楽曲において前記第1鍵に対応する音符の継続長に応じて制御する。以上の態様によれば、演奏者は、2以上の発光部の発光が変化する速度を確認することで、第1鍵の操作を継続すべき時間の長短を把握できる。
【0167】
態様1の具体例(態様9)において、前記案内制御部は、前記複数の発光部のうち操作されるべき鍵に対応する発光部の発光特性を経時的に変化させる。以上の態様においては、複数の発光部のうち操作されるべき鍵に対応する発光部の発光特性が経時的に変化する。したがって、演奏者が操作すべき鍵に対応する発光部の発光/消灯が2値的に制御されるだけの構成と比較して、演奏者による複数の鍵の操作を効果的に案内できる。
【0168】
本開示の他の態様(態様10)に係る演奏システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵のうちの第1鍵から、前記第1鍵の次に操作されるべき第2鍵に向かう方向に経時的に変化する案内表示を、利用者に提示する演奏案内部とを具備する。以上の態様においては、第1鍵から第2鍵に向かう方向に案内表示が経時的に変化する。演奏者は、第1鍵の次の第2鍵の操作のために自身の手指を移動させるべき方向を視覚的および直観的に把握できる。したがって、例えば複数の発光部のうち操作すべき鍵に対応する1個の発光部を発光させるだけの形態と比較して、演奏者による演奏を効果的に案内できる。
【0169】
本開示のひとつの態様(態様11)に係る制御システムは、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御するシステムであって、前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定する楽曲処理部と、前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する案内制御部とを具備する。
【0170】
本開示のひとつの態様(態様12)に係る制御方法は、複数の鍵と、前記複数の鍵に沿って配列された複数の発光部とを具備する鍵盤楽器を制御する方法であって、前記複数の鍵のうちの操作されるべき鍵を特定し、前記複数の発光部のうち1以上の発光部による発光を経時的に変化させることで、前記複数の鍵のうち操作されるべき鍵を案内する。
【符号の説明】
【0171】
100…演奏システム、10…鍵盤楽器、11…筐体、12…鍵盤蓋、13…内面、14…取付溝、20…鍵盤ユニット、21…鍵盤、22…検出装置、K…鍵、30…再生システム、31…音源装置、32…放音装置、35…通信装置、36…発音機構、37…駆動装置、40…案内装置、E…発光部、41…駆動回路、42…実装基板、50…制御システム、51…制御装置、511…楽曲処理部、512…案内制御部、52…記憶装置、53…操作装置、54…通信装置、55…表示装置、56…放音装置、60…通信装置。
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